医学部医学科でいちばん差がつくのは場合の数と確率|吉永学司先生の主張を藤原進之介が考察する

今日の一問
★★
赤玉3個と白玉2個が入った袋から、2個を同時に取り出す。2個とも赤である確率を求めよ。
——「同時」と書いてあるのに、なぜ「1個ずつ順番に取り出した」ことにして計算してよいのか。
この一問に即答できても、理由を説明できる受験生は多くありません。医学部の合否は、そこで分かれます。答えはこの記事の第4章・第5章で。

「数学は全部やれ」は正しい。ただし、やった時間がそのまま点数に変わる単元と、時間をかけても変わらない単元があります。医学部医学科の入試で後者に当たるのが、場合の数と確率です。

数強塾代表の藤原進之介です。累計3,500名以上の中高一貫校生・受験生を指導してきました。この記事は、数強塾グループで数学を担当する吉永学司先生が指導の現場で繰り返し口にしている主張——「医学部医学科でいちばん合否に直結する単元は、場合の数と確率だ」——を出発点に、なぜそう言えるのかを私なりに掘り下げたものです。

吉永先生の主張は、経験に裏打ちされた実感として語られます。私はそれを、数学の構造の問題として説明できると考えています。感覚の話で終わらせず、「なぜこの単元だけ勉強量が点数に変換されないのか」を、標本空間・対称性・状態設計という三つの言葉で分解していきます。約1万7千字あります。手を動かせる問題も5題入れました。腰を据えて読んでください。

1. 吉永学司先生の主張——「場合の数と確率で差がつく」

まず、吉永先生の主張をそのまま並べます。指導の現場で語られた言葉を、論点ごとに整理したものです。

医学部医学科を目指すなら、いちばん重要な単元は場合の数と確率です。ここが合否に直結します。

数え上げの対象が確定している大学——たとえば金沢医科大学のような出題なら、まだいい。訓練でどうにかなります。しかし慶應義塾大学医学部のような大学は、確率漸化式をはじめとして、その場での思考力が要求される場合があります。

場合の数が難しいのは、区別の仕方が変わるからです。「同様に確からしい」かどうかを確認していない答案が本当に多い。取り出す順番が違うだけで、まったく違う問題になってしまう。かと思えば、3つ同時に取り出すのと、取り出す順番があるのとが、同じになる場合もある。ここで差がつきます。

ベクトルや微積分は、迷わずしっかり勉強していれば満点を狙えます。場合の数は、そうはいきません。

数強塾グループ 数学講師 吉永学司先生

この短い言葉のなかに、高校数学の中でも特異な単元の性質が、ほぼすべて含まれています。以下、一つずつ展開します。

2. なぜベクトルと微積分は「満点が狙える」のか

吉永先生の主張のうち、最後の一文から始めます。「ベクトルや微積分は、迷わずしっかり勉強していれば満点を狙える」。これは受験生の実感とも一致するはずですが、なぜそう言えるのかを言葉にできる人は少ない。理由は明確です。

2-1. 微積分には「必ず前に進む手続き」がある

定積分の値を求めよ、という問題を考えます。やることは決まっています。

  1. 被積分関数の原始関数を1つ見つける
  2. 上端と下端で評価して差を取る

「原始関数を見つける」の部分も、実は有限個の型に分類されています。置換積分・部分積分・部分分数分解・三角関数の次数下げ・有理化。高校範囲で必要な道具はこれでほぼ尽きます。しかも、どの道具を使うかは被積分関数の見た目から機械的に決まる。根号があれば置換を疑い、多項式と指数関数の積なら部分積分、分母が因数分解できるなら部分分数分解。

つまり微積分の学習とは、有限個の手続きを身体に入れる作業です。手続きの数は決まっていて、選択の分岐も少ない。だから練習量が点数に線形に効きます。100題解いた人は、50題解いた人より確実に強い。

2-2. ベクトルには「困ったら成分」という最終手段がある

ベクトルはもっと露骨です。図形の問題で手が止まったら、座標を入れればいい。適当な点を原点に取り、適当な方向を x 軸に取る。すると、すべての幾何的条件が連立方程式に化けます。式は汚くなるかもしれませんが、必ず答えに到達します

これは強力です。ベクトルの問題を前にして、受験生は「うまい解き方が見つからなくても、成分計算で押し切れる」という保険を持っている。だから精神的に迷わない。迷わないから、時間内に処理できる。

「迷わない」の正体

ベクトルと微積分に共通するのは、解答方針の分岐が浅いことです。方針を決める判断は問題の冒頭で1回か2回。しかもその判断は、問題文の形(根号の有無、条件の与えられ方)から半ば自動的に決まる。判断を誤っても、別ルートに乗り換えるコストが小さい。

これが「しっかり勉強していれば満点を狙える」の中身です。学習の成果が、手続きの在庫という形で蓄積し、蓄積がそのまま得点力になる。

2-3. では、場合の数の「困ったら」は何か

場合の数にも、一見すると同じような最終手段があります。全部書き出す。樹形図を描く、表を作る、辞書式に並べる。確かにこれは常に正しい答えを出します。

しかし、この手段には決定的な制約があります。n が大きいと使えない。10人の並べ方は3,628,800通りあり、書き出せません。ベクトルの成分計算は n が大きくても原理的には最後まで進みますが、全列挙は n とともに指数的に破綻します。

つまり場合の数には、「必ず前に進む手続き」が存在しない。存在するのは検算の手段としての全列挙だけで、本番の解法にはならない。ここが、この単元を他と隔てている一つ目の壁です。

3. 場合の数だけが、問題文に「何を数えるか」を書いていない

高校で習う確率の定義を、正確に書き下してみます。

(事象 A の確率)=(A の起こる場合の数)÷(起こりうるすべての場合の数)

この定義には、教科書が必ず添える但し書きがあります。「ただし、どの場合も同様に確からしいとする」。この一行が、単元全体の急所です。

確率という量は、「何を1つの場合と数えるか」を決めた瞬間に決まります。数学の用語では、この「起こりうるすべての場合の集合」を標本空間と呼びます。同じ現象でも、標本空間の取り方は無数にあり、そのうち「どの元も同じ重みを持つ」ものだけが、上の定義に使える

ここで問題文の側を見てください。入試問題は、標本空間を指定しません。「赤玉3個と白玉2個から2個取り出す」としか書いていない。何を1つの場合と数えるかは、解答者が決めるのです。

ここが他の単元との決定的な違いです。ベクトルの問題で「座標系を自分で決めろ」と言われても、どの座標系を選んでも答えは同じになります。ところが場合の数では、標本空間の選び方を間違えると、答えそのものが変わります。しかも、間違えたことに気づく仕組みが答案の中に用意されていない。計算はきれいに進み、それらしい数字が出て、そのまま丸ごと失点します。

吉永先生の言う「区別の仕方が変わるから」「同様に確からしいかを確認していない」は、まさにこの点を指しています。次章から、実際に壊してみましょう。

4. 実験1——「区別しない」で数えると、答えは壊れる

冒頭の問題に戻ります。

問題1

赤玉3個と白玉2個が入った袋から、2個を同時に取り出す。2個とも赤である確率を求めよ。

4-1. 壊れた解答

「同時に取り出すのだから、順番は関係ない。玉は色でしか区別できないのだから、起こりうる場合は次の3通り」——こう考えた受験生は毎年います。

{赤, 赤} {赤, 白} {白, 白}

「このうち2個とも赤なのは1通り。よって確率は 1/3」。これは誤りです

4-2. 正しい解答

5個の玉を、同じ色でもすべて別のものとして扱います。赤を R1, R2, R3、白を W1, W2 とする。2個の選び方は

C(5, 2) = 10 通り

そのうち2個とも赤であるのは、R1, R2, R3 から2個を選ぶ場合で

C(3, 2) = 3 通り

よって求める確率は 3/10

4-3. なぜ最初の解答が壊れたのか

3通りという数え方が間違っているわけではありません。「場合の数」としては3通りで正しい。壊れているのは、その3つが同様に確からしいと思い込んだところです。実際に重みを計算してみましょう。

取り出した結果 区別して数えた通り数 実際の確率
{赤, 赤} C(3,2) = 3 3/10 = 0.3
{赤, 白} 3 × 2 = 6 6/10 = 0.6
{白, 白} C(2,2) = 1 1/10 = 0.1

0.3 : 0.6 : 0.1。まったく等しくありません。赤白が出る確率は、白白が出る確率の6倍です。それを「3つのうちの1つ」と数えれば、当然おかしくなります。

実務的な鉄則:場合の数を数えるときは区別してよいが、確率を計算するときは区別しなければならない。同じ色の玉、同じ形のサイコロ、同じ顔のカード——物理的に見分けがつかないものにも、心の中で番号を貼る。これが「同様に確からしい」を保証する唯一の一般的な方法です。

4-4. 歴史上の数学者も、同じ場所で転んだ

この誤りは受験生固有のものではありません。確率論の草創期に、一流の数学者が同じ穴に落ちています。

ダランベールの誤り(1754年)

『百科全書』の「表か裏か」の項で、ジャン・ル・ロン・ダランベールは次のように論じました。硬貨を投げて表が出たら終わり、裏なら もう一度投げる。2回以内に表が出る確率はいくらか。彼は起こりうる結果を

(表) (裏, 表) (裏, 裏)

の3つとして、答えを 2/3 としました。表が出た時点で試行が終わるのだから、(表, 表)や(表, 裏)は起こらない——確かにその通りです。しかし、この3つは同様に確からしくない。(表)の確率は 1/2、(裏, 表)と(裏, 裏)は各 1/4 です。正解は 3/4

ダランベールほどの数学者が、「場合を正しく列挙する」ことと「同様に確からしくする」ことは別の作業だという一点で誤った。この事実は、受験生にとってむしろ励みになるはずです。難しいのはあなただけではない。

シュヴァリエ・ド・メレの問い(1654年)

もう一つ、確率論そのものの出発点になった有名な例を挙げます。賭博師ド・メレは、次の2つの賭けが同じ有利さだと信じていました。

  1. サイコロを4回投げて、6の目が少なくとも1回出る
  2. サイコロ2個を24回投げて、6のゾロ目が少なくとも1回出る

理由は「6分の1のことを4回やるのと、36分の1のことを24回やるのは、比が同じ(4/6 = 24/36)だから」。もっともらしい。しかし経験上、前者では勝ち越し、後者では負け越す。彼はこれをパスカルに問い、パスカルとフェルマーの往復書簡(1654年)が確率論を生みました。

実際に計算します。余事象を使うのが定石です。

1 − (5/6)4 = 1 − 625/1296 ≒ 0.5177

1 − (35/36)24 ≒ 1 − 0.5086 = 0.4914

前者は5割を超え、後者は5割を切る。直感の「比例」は、確率では通用しない。この差は約2.6ポイントですが、賭けを何百回も繰り返せば決定的な差になります。ド・メレはそれを体感で知っていたのに、理屈を作れなかった。

この2つの例が示しているのは、「場合の数と確率は、直感が最も裏切る分野だ」という事実です。ベクトルや微積分では、直感が外れても計算が救ってくれます。場合の数では、間違った直感がそのまま間違った計算式になります

5. 実験2——「同時に取り出す」と「順番に取り出す」はなぜ一致するのか

吉永先生の言葉のなかで、私がいちばん重要だと思うのはここです。「取り出す順番が違うだけで全く違う。かと思えば、3つ同時に取り出すのと、取り出す順番があるのとが同じ場合もある」。この二つは矛盾していません。一致する条件があるのです。それを説明できるかどうかが、この単元の分水嶺になります。

5-1. まず、一致することを確かめる

問題1を、今度は「1個ずつ順番に取り出す」として解いてみます。

1個目、2個目の順に取り出す並べ方は

P(5, 2) = 5 × 4 = 20 通り

2個とも赤であるのは

P(3, 2) = 3 × 2 = 6 通り

確率は 6/20 = 3/10。同時に取り出したときと一致しました。

5-2. なぜ一致するのか——「割る数が同じ」という構造

偶然ではありません。理由は、順序をつけた数え方と、つけない数え方が、ちょうど r! 倍でつながっていることにあります。

5個から2個を取り出す場面で考えます。順序つきの結果(R1, R2)と(R2, R1)は、順序を忘れれば同じ {R1, R2} になります。つまり

順序つきの20通りを、2個ずつ束ねると、順序なしの10通りになる。どの束も、ちょうど 2! = 2 個からできている。

「2個とも赤」という事象も同じ構造です。順序つきで6通り、順序なしで3通り。やはりちょうど2倍。

6 ÷ 20 = (2 × 3) ÷ (2 × 10) = 3 ÷ 10

分子と分母の両方が同じ数(r!)倍されているので、割り算をすると消える。だから確率は変わりません。

一般に r 個を取り出す場合、束の大きさは r! です。3個同時に取り出す問題を「順番に3個取り出す」として解いてよいのは、分子も分母も 3! = 6 倍になり、比が保存されるから。吉永先生の言う「同じになる場合がある」の、これが正体です。

5-3. では、いつ壊れるのか

いま使った議論には、明示していない前提があります。考えている事象が、順序を入れ替えても変わらないことです。「2個とも赤」は、(R1, R2)でも(R2, R1)でも同じく成り立ちます。だから束ごとまるごと事象に入り、きれいに r! 倍になった。

ところが、次のような事象では成り立ちません。

問題2

赤玉3個と白玉2個が入った袋から、玉を1個ずつ取り出して戻さない操作を続ける。

(1) 2個目に取り出した玉が赤である確率を求めよ。

(2) 5個すべてを取り出すとき、k 番目に取り出した玉が赤である確率を、k = 1, 2, 3, 4, 5 について求めよ。

解答

(1) 「2個目が赤」は、順序を入れ替えたら壊れる条件です。そもそも順序なしの標本空間ではこの事象を書くことすらできない。だから順序つきで考えるしかありません。

1個目が赤で2個目も赤:(3/5) × (2/4) = 6/20

1個目が白で2個目が赤:(2/5) × (3/4) = 6/20

合計して 12/20 = 3/5

(2) 5個を1列に並べる並べ方 5! = 120 通りを標本空間に取ります(玉はすべて区別する)。k 番目が赤である並べ方は、k 番目に赤3個のいずれかを置き(3通り)、残り4個を並べる(4! = 24通り)ので 3 × 24 = 72 通り。

72 ÷ 120 = 3/5 (k によらない)

どの k についても 3/5

くじ引きは、引く順番によらず公平である——この有名な事実の証明が、いま出てきました。「先に引いたほうが有利」という直感は誤りです。(1) で 3/5 が出たとき、それが1個目に赤を引く確率 3/5 と一致したことに気づけたでしょうか。気づけたなら、あなたはこの単元の勘所を掴んでいます。

5-4. 判断の基準を、ひとことで

順序を無視してよいか、の判定法

問われている事象が、取り出した順番を入れ替えても真偽が変わらないなら、順序を無視してよい。変わるなら、順序つきで数えるしかない。

・「3個とも赤」→ 入れ替えても真偽不変 → 同時でも順番でも同じ

・「2個目が赤」→ 入れ替えると崩れる → 順序つき必須

・「赤が2個、白が1個」→ 不変 → どちらでもよい

・「最初に赤、最後に白」→ 崩れる → 順序つき必須

・「k回目に初めて赤が出る」→ 崩れる → 順序つき必須

受験生の多くは、「同時に取り出す問題は組合せ C を使う」と型で覚えています。それは大半の問題で当たりますが、なぜ当たるのかを知らないので、外れる問題を見分けられない。吉永先生が「差がつく」と言うのは、この見分けのことです。

6. 三つの「区別」——問題文を読むときのチェックリスト

吉永先生の「区別の仕方が変わるから」を、実用的な形に落とします。場合の数の問題を読むとき、確認すべき区別は三つあります。

  • 対象を区別するか——玉・カード・人・ボールに個体差があるか
  • 位置や順序を区別するか——並べるのか、組にするのか
  • グループを区別するか——箱や部屋に名前があるか、単に「3組に分ける」なのか
  • この三つは独立に切り替わります。しかも、日本語の問題文はこれらを露骨には書きません。「3つの箱に入れる」「3組に分ける」「3人に配る」——似た表現で、答えがまったく変わります。

    6-1. 同じ「分ける」で、4通りの答えが出る

    典型的な混乱を、表で並べます。6個のボールを3つのまとまりに、各2個ずつ入れるという同じ状況で、区別のつけ方だけを変えます。

    問題文 ボール まとまり 答え
    相異なる6個のボールを、A・B・Cの3つの箱に2個ずつ入れる 区別する 区別する C(6,2)C(4,2)C(2,2) 90
    相異なる6個のボールを、2個ずつ3組に分ける 区別する 区別しない 90 ÷ 3! 15
    同じ6個のボールを、A・B・Cの3つの箱に2個ずつ入れる 区別しない 区別する 1
    同じ6個のボールを、2個ずつ3組に分ける 区別しない 区別しない 1

    90 と 15 と 1。同じ「6個を2個ずつ3つに」でも、答えは6倍違い、90倍違う。問題文の中で区別を指定しているのは、「A・B・C」という名前があるかどうか、「相異なる」と書いてあるかどうか、それだけです。読み落とせば終わりです。

    6-2. 「÷3!」はいつやるのか——最も多い誤答

    組分けで階乗で割る操作は、機械的に覚えている人がいちばん多い場所です。正しい基準は一つだけ。

    同じ大きさの組が k 個あるとき、その k 個について k! で割る。大きさが違う組どうしは、名前がなくても区別がついてしまうので割らない。

    3つのケースで確認します。

    6人を… 計算 割る理由・割らない理由
    2人・2人・2人の3組に分ける C(6,2)C(4,2)C(2,2) ÷ 3! = 90 ÷ 6 = 15 同じ大きさの組が3つ。3! で割る
    3人・2人・1人の3組に分ける C(6,3)C(3,2)C(1,1) = 20 × 3 × 1 = 60 大きさが全部違う。人数そのものが組の名前になっているので割らない
    2人・2人・1人・1人の4組に分ける C(6,2)C(4,2)C(2,1)C(1,1) ÷ (2! × 2!) = 180 ÷ 4 = 45 2人組が2つ、1人組が2つ。大きさごとに別々に割る

    3行目が急所です。「4組だから 4! で割る」としてしまう答案を、私は毎年見ます。割るのは入れ替えても同じ分け方になってしまう組どうしであって、組の総数ではありません。2人組と1人組を入れ替えたら別の分け方になるのだから、割ってはいけない。

    6-3. 検算せよ——小さい数で全列挙する

    いま述べた規則を暗記する必要はありません。小さい数で確かめられるからです。4人(a, b, c, d)を2人ずつ2組に分ける場合を、手で書き出してみましょう。

    {ab, cd} {ac, bd} {ad, bc}

    3通りです。公式では C(4,2)C(2,2) ÷ 2! = 6 ÷ 2 = 3。一致しました。もし ÷2! を忘れれば6となり、実際には {ab, cd} と {cd, ab} を二重に数えていることが、書き出せば即座に見えます。

    場合の数だけが持つ強み——自分で答え合わせができる

    微積分の答えが合っているかは、微分して戻すくらいしか確かめようがありません。ところが場合の数は、問題の n を小さくして全列挙すれば、必ず真の値が手に入ります。公式で出した値と全列挙が食い違えば、公式の使い方が間違っている。

    この検算法を習慣にしている受験生は、この単元で崩れません。逆に言えば、検算の手段がある単元なのに使わないから、崩れるのです。

    7. 金沢医科大学型と慶應医学部型——二つの出題

    吉永先生は、医学部の出題を大きく二つに分けています。数え上げの対象が確定している出題と、その場で組み立てを要求する出題です。

    7-1. 「確定している」とは、標本空間が問題文から一意に読めること

    訓練で満点が狙えるタイプの出題は、標本空間が問題文から一意に決まります。「相異なる10個の球」「A, B, C の3人に配る」「1個ずつ取り出して戻す」——区別の三軸がすべて明示されている。この場合、受験生に残された仕事は正しい公式を選んで計算することだけです。

    ここは、まさにベクトルや微積分と同じ構造になります。手続きの在庫が勝負を決める。だから演習量が点数に変わります。数強塾が金沢医科大学医学部の数学の過去問を6年度ぶん公開しているのも、この型は反復で仕上がるからです。

    医学部の数学は、時間に対して問題量が多く、途中で詰まった1問が全体を崩しやすい試験です。過去問を解くときは正答率だけを見ず、どの問題を後回しにするかの判断が正しかったかまで振り返ってください。この判断は年度をまたいで似た形で問われます。

    7-2. 「その場での思考力」が要る出題

    もう一方の型では、標本空間や状態の設計そのものが受験生に委ねられます。吉永先生が名前を挙げた確率漸化式は、その代表です。慶應義塾大学医学部の数学のように、長い試行の途中経過を追わせる出題では、何を「状態」と呼ぶかを自分で決めるところから始まります。

    ここが本当の分岐点です。手続きの在庫がいくらあっても、状態の設計を誤れば式が立たない。逆に設計さえ正しければ、そのあとの漸化式を解く作業は数列の標準問題に落ちます。つまりこのタイプの問題は、最初の5分で勝負が決まる

    ※入試制度・出題範囲・配点・試験時間は年度により変更されます。受験にあたっては必ず各大学が発表する最新の入学者選抜要項をご確認ください。以下に掲載する問題は、出題傾向を踏まえて数強塾が独自に作成したオリジナル問題であり、実際の入試問題の転載ではありません。

    8. 確率漸化式は「状態の設計」がすべて

    8-1. 状態とは何か

    確率漸化式で言う「状態」とは、この先の展開を決めるのに必要な、最小限の情報のことです。もっと厳密に言えば、いまの状態さえ分かれば、そこに至るまでの経緯を知らなくても次の1歩の確率が計算できる——そういう情報の切り方を探す作業です。

    この性質を数学ではマルコフ性と呼びます。高校生に必要なのは名前ではなく、設計するときの二つの失敗を知ることです。

  • 情報が足りない——次の確率を計算しようとすると、状態だけでは決まらず「そこに至る経緯」が必要になってしまう。式が立たない。
  • 情報が多すぎる——本来まとめられる場合をばらばらに扱ってしまい、連立漸化式が5本も6本もできて処理しきれない。時間切れになる。
  • 優秀な受験生とそうでない受験生の差は、ほぼここに出ます。次の問題で体験してください。

    8-2. 状態を2つに減らす——正四面体の問題

    問題3

    正四面体 ABCD の頂点上を、点 P が動く。P は最初、頂点 A にある。1秒ごとに、いま P がある頂点と辺で結ばれた3つの頂点のうち1つを等確率 1/3 で選んで移動する。

    n 秒後に P が A にある確率 pn を求めよ。

    解答

    状態の設計。素朴には「A にいる」「B にいる」「C にいる」「D にいる」の4状態を考えたくなります。しかし B・C・D はA から見て完全に対称です。どこにいても、次に A へ行く確率は 1/3、他の2頂点へ行く確率も各 1/3。区別する必要がありません。

    そこで状態を 「A にいる」「A にいない」の2つに縮約します。これがこの問題の急所です。

    漸化式を立てる。n 秒後に A にいる確率が pn、A にいない確率が 1 − pn

    A にいる状態から次に A へ行くことはできない(自分自身へは移動しない)。A にいない状態からは、3つの行き先のうち1つが A なので確率 1/3 で A に来る。したがって

    pn+1 = (1 − pn) × 1/3

    解く。特性方程式 x = (1 − x)/3 を解くと x = 1/4。よって

    pn+1 − 1/4 = −(1/3)(pn − 1/4)

    p0 = 1 より p0 − 1/4 = 3/4 なので

    pn = 1/4 + (3/4)(−1/3)n

    検算を3つ通す。ここまでやって初めて答案が完成します。

    n = 1:p1 = 1/4 − 1/4 = 0。1秒後に A にいることはあり得ないので正しい。

    n = 2:p2 = 1/4 + (3/4)(1/9) = 1/4 + 1/12 = 1/3。1秒後は B・C・D のどれかにいて、そこから A へ戻る確率は 1/3。正しい。

    n → ∞:pn → 1/4。長時間経てば4頂点のどこにいるかは等確率になるはずで、正しい。

    この問題の難所は、漸化式を解く計算ではありません。「B・C・D を区別しなくてよい」と判断するところです。ここでも出てくるのは「区別」です。場合の数の冒頭で扱った区別の話が、そのまま確率漸化式の状態設計につながっている。この単元が一本の線でつながっていることが見えたでしょうか。

    8-3. 状態を3つに減らす——正六角形の問題

    もう一段難しい設計を体験します。医学部の上位校で問われるのは、この水準です。

    問題4

    正六角形 ABCDEF の頂点上を、点 P が動く。P は最初、頂点 A にある。1秒ごとに、いま P がある頂点と辺で結ばれた2つの頂点のうち1つを等確率 1/2 で選んで移動する。

    2m 秒後に P が A にある確率 xm を求めよ。

    解答

    まず観察する。P は1秒ごとに隣へ移ります。正六角形の頂点を A から順に 0, 1, 2, 3, 4, 5 と番号づけると、1秒ごとに番号の偶奇が必ず入れ替わる。A は偶数側なので、P が A に戻れるのは偶数秒後だけです。奇数秒後の確率は 0。問題が「2m 秒後」と偶数を指定しているのは、このためです。

    2秒をひとまとまりにする。偶数秒だけを追うことにすると、P がいられるのは A, C, E の3頂点だけです。A から2秒でどこへ行くかを数えます。

    ・A → B → A、A → F → A:確率 1/4 + 1/4 = 1/2(A に戻る)

    ・A → B → C:確率 1/4(C へ)

    ・A → F → E:確率 1/4(E へ)

    C から2秒でも、E から2秒でも、対称性からまったく同じ形になります(元の位置に 1/2、他の2頂点に各 1/4)。

    状態を2つに縮約して漸化式を立てる。2m 秒後に A にいる確率を xm とすると、A にいない確率は 1 − xm。A 以外(C または E)から次の2秒で A に来る確率は 1/4 です。

    xm+1 = (1/2)xm + (1/4)(1 − xm) = (1/4)xm + 1/4

    解く。特性方程式 xx/4 + 1/4 より x = 1/3。x0 = 1 だから

    xm = 1/3 + (2/3)(1/4)m

    検算。m = 1 で 1/3 + 1/6 = 1/2。上で数えた通り。m = 2 で 1/3 + 1/24 = 3/8。m → ∞ で 1/3。

    最後の 1/3 に違和感を持った人は、正しく考えています。頂点は6つあるのに、なぜ 1/6 に収束しないのか。理由は上で見た偶奇性です。偶数秒には A, C, E の3頂点にしかいられないので、その3つで等確率になり 1/3。奇数秒は B, D, F で 1/3 ずつ。時間全体で平均すれば 1/6 になります。矛盾していません。

    この2問から取り出すべきもの

    問題3も問題4も、漸化式そのものは数学Bの標準レベルです。差がついたのは、その手前の3つの判断でした。

    1. どの頂点どうしが対称かを見抜いて、状態をまとめる

    2. 偶奇のような周期性に気づいて、時間の刻み方を変える

    3. 立てた式を、小さい n と極限の両方で検算する

    この3つは、公式集には載っていません。問題を解いた経験からしか蓄積されない。だから吉永先生は「その場での思考力が要求される」と言うのです。より体系的な演習は確率漸化式の完全攻略事典(解き方35項・演習52題)にまとめてあります。

    9. 医師になってからも使う——条件付き確率という関門

    場合の数と確率が医学部で重く問われるのには、もう一つ理由があると私は考えています。この単元だけが、医師の仕事と直接つながっているからです。

    問題5

    ある病気の有病率が 0.1%(1,000人に1人)である集団を考える。この病気を調べる検査があり、病気の人が正しく陽性と判定される確率(感度)は 99%、病気でない人が正しく陰性と判定される確率(特異度)は 99% であるとする。

    この集団から無作為に1人を選んで検査したところ陽性であった。この人が実際に病気である確率を求めよ。

    解答

    10万人で考えるのが最も確実です。割合のまま計算すると分母を取り違えます

    検査陽性 検査陰性
    病気である 99 1 100
    病気でない 999 98,901 99,900
    1,098 98,902 100,000

    陽性となった 1,098 人のうち、実際に病気なのは 99 人。

    99 ÷ 1,098 ≒ 0.090

    約 9.0%

    感度99%・特異度99%という高性能な検査で陽性が出ても、実際に病気である確率は1割に届かない。多くの人の直感は「99%くらいだろう」と答えます。この落差の原因は、分母をどの集団に取るかを取り違えていることにあります。

    「病気の人のうち陽性となる割合」と「陽性の人のうち病気である割合」は、まったく別の量です。前者は 99%、後者は 9%。日本語ではどちらも「陽性である確率」と言えてしまう。条件付き確率とは、分母を正しく指定する技術です。

    上の設定は説明のための架空の数値です。実在の検査の性能を表すものではありません。ただし、有病率が低い集団では陽性的中率が大きく下がるという構造そのものは、実際の医療現場で検診の設計を左右する重要な事実です。

    受験の話に戻すと、この構造を扱う出題は医学部で頻出です。そしてこの分野の失点は、公式の暗記では防げません。防げるのは、「いま分母は何か」を毎回言葉にする習慣だけです。

    10. なぜこの単元だけ、勉強量が点数に変わらないのか

    ここまでの議論を、学習の構造という視点でまとめ直します。

    10-1. 手続きの在庫が効く単元と、効かない単元

    ベクトル・微積分 場合の数・確率
    解法の分岐 浅い。問題文の形からほぼ自動で決まる 深い。何を数えるかの決定が先にある
    最終手段 成分計算・定義に戻る。必ず前に進む 全列挙。n が大きいと使えない
    誤りの気づきやすさ 途中で式が破綻して気づく 最後まで綺麗に進み、気づかない
    演習量との関係 ほぼ線形に伸びる 階段状。設計を掴むまで伸びない
    暗記の効き方 公式と型が直接得点になる 公式は道具にすぎない

    3行目が、この単元をいちばん危険にしています。ベクトルの計算を誤れば、たいてい途中でおかしな式になって気づきます。ところが場合の数では、誤った標本空間の上でも計算は最後まで整合的に進みます。分数もきれいに約分され、それらしい答えが出る。だから見直しても気づけない。

    10-2. 何が転移して、何が転移しないのか

    「場合の数は問題ごとに違うから、演習しても意味がない」と言う受験生がいます。半分正しく、半分間違っています。

    転移しないのは、個々の問題の解法そのものです。玉の問題を100題解いても、サイコロの問題が自動的に解けるようにはならない。設定が変われば、標本空間の作り方も変わるからです。

    しかし、転移するものが確かにあります。

  • 区別の三軸——対象・位置・グループのどれを区別するか、を毎回確認する視点
  • 「同様に確からしい」の検証——数えた場合の重みが等しいかを疑う習慣
  • 順序の入れ替えに対する不変性の判定——順序を落としてよいかの判断基準
  • 状態設計——対称なものをまとめ、周期性を見抜く目
  • 小さい n での検算——公式の適用が正しかったかを自力で確かめる技術
  • この5つは、どんな設定の問題にも持ち越せます。演習の目的をこの5つの獲得に置き換えた瞬間から、場合の数の勉強は点数に変わり始めます。解いた問題数を数えるのをやめて、「今日の問題で、区別の判断はどこにあったか」を言葉にする。それだけで質が変わります。

    10-3. 数強塾が答案に書かせていること

    数強塾のマンツーマン指導では、場合の数の答案に「なぜその数え方を選んだか」を一行書かせます。「玉はすべて区別する」「順序は問われていないので組合せで数える」「B・C・D は対称なのでまとめる」。この一行があるかどうかで、次に似た問題に出会ったときの再現性がまったく違ってきます。

    正解した問題でも、この一行が書けなければ、それはたまたま当たったのです。当たったことにして先へ進むと、本番で外します。逆に、間違えた問題でもこの一行が書けていれば、どこで判断を誤ったかが特定でき、次に活きます。

    私たちが目指しているのは、公式を配ることではありません。一人ひとりの可能性を最大限に引き出し、本質を理解し、自ら考え続けられる人を育てること。場合の数という単元は、そのための最良の教材です。答えが合ったかどうかではなく、判断が言語化できているかどうかで自分を評価する——その姿勢は、医師になってから患者の前で確率を語るときに、そのまま効いてきます。

    11. 8週間で「差がつく側」に立つ学習設計

    具体的な進め方を示します。医学部志望で、数学I・A の基本は一通り終わっている受験生を想定しています。

    やること その週の検算課題
    第1週 和の法則・積の法則・全単射の考え方。順列と組合せを、公式ではなく「束ねる操作」として理解し直す P(5,2) と C(5,2) の関係を、20通りを実際に書き出して確かめる
    第2週 区別の三軸。相異なるものと同じもの、名前のある箱とない組を、4パターンすべてで解く 4人を2人ずつ2組に分ける場合を全列挙し、公式と一致させる
    第3週 組分けと重複組合せ。÷k! の基準を、大きさが違う組を含む問題で確認する 同じ6個を3つの箱に分ける(空を許す)を全列挙し、C(8,2)=28 と照合する
    第4週 確率の定義に戻る。同様に確からしい標本空間を毎回明示して答案に書く 1つの問題を「順序つき」「順序なし」の両方で解き、一致を確認する
    第5週 余事象・独立・反復試行。「少なくとも」の処理を型にする ド・メレの2つの賭けを自分で計算し、直感とのずれを実感する
    第6週 条件付き確率とベイズ。分母を毎回言葉にする。2×2 の表を必ず書く 有病率を 0.1% から 10% に変えて、陽性的中率がどう動くか計算する
    第7週 確率漸化式の基礎。状態の設計を最優先し、対称性でまとめる練習に集中する 正四面体・正六角形の問題を、状態設計だけ書いて漸化式まで立てる
    第8週 志望校の過去問。時間を計り、標本空間の設計に何分かけたかを記録する 解いた各問について「区別の判断はどこにあったか」を一行で書く

    この8週間で最も重要なのは、右列の検算課題です。左列だけをこなすと「解いた気になる」に終わります。右列を飛ばさないでください。自分で答えを検証した経験だけが、本番での自信になります

    12. 場合の数・確率でよくある誤答7選

  • 「同時に取り出す」を「区別しない」と読む——同時かどうかは順序の話であって、対象を区別するかどうかとは無関係です。確率を計算する以上、同じ色の玉も必ず区別します。
  • 組分けで階乗を機械的に割る/割らない——割るのは大きさが同じ組どうしだけ。組の総数で割るのではありません。2人・2人・1人・1人なら 2! × 2! で割ります。
  • 「少なくとも1つ」で余事象を取らない——場合分けが増えて時間を失い、数え漏らします。「少なくとも」を見たら、まず余事象を検討する。
  • 円順列とじゅず順列の違いを判断しない——(n−1)! を暗記していても、裏返して一致するものを同一視するかどうかは問題文の設定です。ネックレスなら さらに 2 で割ります。判断であって暗記ではありません。
  • 条件付き確率で分母を取り違える——「A のうち B」と「B のうち A」を混同します。必ず 2×2 の表を書き、どの行・どの列で割るのかを目で確認してください。
  • 確率漸化式で状態を取りすぎる——対称な頂点を別々に扱って、連立漸化式を5本立ててしまう。まず「まとめられないか」を疑うのが先です。
  • 重複組合せと「同じものを含む順列」を混同する——同じもの n 個を k 個の箱に入れる重複組合せは C(n+k−1, k−1)、同じものを含む順列は n!/(p! q! r!)。仕切りを使う発想は似ていますが、数えている対象が違います。小さい数で書き出せば区別できます。
  • 13. まとめ

    • ベクトルと微積分は解法の分岐が浅く、必ず前に進む手続きがあるため、演習量が点数に線形に変わる。だから「迷わずしっかり勉強すれば満点が狙える」。
    • 場合の数と確率だけは、問題文が標本空間を指定しない。何を1つの場合と数えるかを解答者が決めるため、判断を誤ると計算が正しくても失点する。
    • 誤りの多くは「同様に確からしい」の検証を飛ばしたことに起因する。物理的に見分けがつかない対象にも、必ず番号を貼って数える。
    • 「同時に取り出す」を「順番に取り出す」で計算してよいのは、問われている事象が順序の入れ替えで変わらないときだけ。分子も分母も r! 倍になるので比が保存される。
    • 区別には対象・位置・グループの三軸がある。同じ「6個を2個ずつ3つに」でも、答えは 90・15・1 と変わる。
    • 確率漸化式は状態の設計で勝負が決まる。対称なものをまとめ、周期性を見抜き、小さい n と極限で検算する。
    • 場合の数は自分で答え合わせができる唯一の単元である。小さい n で全列挙して公式と照合する習慣が、この単元の伸びを決める。
    • 演習の目的を「解いた問題数」から「区別の判断を言語化した回数」に置き換えたとき、勉強量が初めて点数に変わり始める。

    あわせて読みたい

    数学を、一対一で強くする。藤原進之介が厳選した一流のプロ講師が、お子さんの担任になります。場合の数と確率は、答えが合ったかどうかだけを見ていても伸びません。「なぜその数え方を選んだのか」を毎回言葉にさせ、標本空間の設計から答案を組み立て直す——それができるのは、一対一の指導だけです。体験授業(税込3,000円)のお申し込みはこちらから。医学部を志望される方は医学部専門コースもご覧ください。

    よくある質問

    Q. 場合の数と確率が苦手です。まず何から手をつけるべきですか。
    A. 公式の復習ではなく、小さい数で全列挙する練習から始めてください。4人を2人ずつ2組に分ける、3個の玉から2個取り出す——手で書き出せる大きさの問題を、必ず書き出してから公式で解き直す。この往復を20題ほど繰り返すと、公式が何を数えているのかが体感で分かります。急がば回れで、これが最短です。

    Q. 「同時に取り出す」と書いてあったら、必ず組合せ C を使ってよいのですか。
    A. 問われている事象が順序を入れ替えても真偽が変わらない場合に限り、組合せで数えて構いません。「3個とも赤」なら大丈夫です。「2個目が赤」「最初に赤で最後に白」のように順序に言及する条件が入ったら、順序つきで数える必要があります。判断の基準は本文の第5章にまとめました。

    Q. ベクトルや微積分と、場合の数のどちらを優先すべきですか。
    A. 入試までの残り時間によります。半年以上あるなら、場合の数を先に着手してください。伸びるまでに時間がかかる単元だからです。逆に直前期であれば、確実に点になるベクトル・微積分を仕上げ、場合の数は「標本空間を明示して答案に書く」ことだけを徹底するほうが失点を減らせます。

    Q. 確率漸化式は独学でも身につきますか。
    A. 漸化式を解く計算は独学で十分です。難しいのは状態の設計で、ここは自分の設計が最適だったかを一人で判定しにくい。式が立って答えが出てしまうと、もっと簡単な設計があったことに気づけません。解答例と自分の設計を比較し、なぜまとめられたのかを説明できるまで詰める作業を、必ず入れてください。

    Q. 「同様に確からしい」かどうかを、試験中に確認する方法はありますか。
    A. あります。数えた各場合に、区別したときの通り数を書き添えるのが最も確実です。本文4-3の表のように、{赤赤} が3通り、{赤白} が6通り、{白白} が1通りと分かれば、等しくないことが一目で分かります。この確認に必要な時間は30秒ほどで、失点のリスクに比べれば安いものです。

    Q. 医学部を目指していますが、数学が全体的に不安です。何が足りていないのでしょうか。
    A. 医学部の数学は、時間に対して問題量が多く、途中で詰まった1問が全体を崩しやすい試験です。単元の穴よりも「どの問題を後回しにするか」の判断が甘いことのほうが多い。過去問を解いたあと、正答率だけでなく取捨選択の判断が正しかったかまで振り返ってください。それでも原因が特定できない場合は、答案を見せていただければ具体的にお伝えできます。

    出典・注記

    • Pascal, B. および Fermat, P. の往復書簡(1654年)——シュヴァリエ・ド・メレの提起した賭けの問題をめぐる議論。確率論の出発点とされる。
    • d’Alembert, J. le R.「Croix ou Pile」Encyclopédie, ou Dictionnaire raisonné des sciences, des arts et des métiers, tome 4 (1754)——2回以内に表が出る確率を 2/3 と論じた記述。同様に確からしい標本空間の取り違えの古典例として広く引かれる。
    • Kolmogorov, A. N. (1933) Grundbegriffe der Wahrscheinlichkeitsrechnung——確率を標本空間上の測度として定義した公理化。高校で学ぶ「同様に確からしい」は、有限集合上で各元に等しい測度を与える特別な場合にあたる。
    • 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 数学編 理数編』——「場合の数と確率」は数学A、「統計的な推測」は数学Bに位置づけられている。
    • 本文中の入試傾向に関する記述は、数強塾が公開している慶應義塾大学医学部金沢医科大学医学部の過去問解説ページの掲載内容に基づく。

    ※本文中の問題1〜5は、すべて数強塾が独自に作成したオリジナル問題であり、実際の入試問題の転載ではありません。※問題5の有病率・感度・特異度は説明のための架空の数値です。※入試制度・出題範囲・配点・試験時間は年度により変更されます。受験にあたっては必ず各大学が発表する最新の入学者選抜要項をご確認ください。

    著者:藤原進之介(数強塾グループ代表)。本記事は、数強塾グループ数学講師 吉永学司先生の指導現場での主張を出発点に、代表・藤原進之介が高校数学の構造の観点から考察したものです。数学的な内容は執筆時点で検証しています。

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