中高一貫校の中学2年生に配られる夏休みの数学の宿題には、「場合の数・順列」「組合せ」という講座が入っていることがあります。、、円順列、重複順列——見慣れない記号が急に出てきて、手が止まった人も多いはずです。
安心してください。これは本来なら高校1年生で習う「数学A」の内容です。中2で扱っているのは、中高一貫校が先取りをしているからです。難しく感じて当然ですが、逆に言えばここを本質から理解しておくと、高校に入ってから2年分のアドバンテージになります。この記事では、記号の暗記ではなく「数える」という行為そのものから積み上げていきます。
この記事で身につくこと
- 樹形図から積の法則へ進む道すじが分かる
- と を「順番を区別するか」だけで見分けられる
- という関係の意味を説明できる
- 円順列で になる理由、重複順列で になる理由が図で分かる
1.すべては「樹形図」から始まる
公式の前に、まず手を動かして数えます。
【まず考えてみる】
A、B、C の3人を1列に並べる方法は何通りあるか。
図1:樹形図。1番目に誰が来るかで3通り、そのそれぞれで2番目は残り2人から選ぶので2通り、3番目は残った1人で決まる。
数えると6通りです。ここで大事なのは答えではなく、枝の増え方です。
3 × 2 × 1 = 6(通り)
積の法則
「Aの決め方が 通り、そのそれぞれに対してBの決め方が 通りあるなら、全部で 通り」
樹形図で枝分かれしていく様子を、掛け算に置き換えたものが積の法則です。公式はすべて、この掛け算を短く書く工夫にすぎません。迷ったら樹形図に戻る——これがこの単元の唯一の避難場所です。
2.順列:選んで「並べる」
3人全員ではなく、5人から3人を選んで1列に並べる場合を考えます。1番目は5通り、2番目は残り4通り、3番目は残り3通り。
この「 から始めて 個分だけ掛ける」という計算に名前をつけたものが順列で、記号で と書きます。
( から始めて 個掛ける)
【 の覚え方】 は Permutation(並べること)の頭文字。「何個掛けるか」は右下の数()と一致します。 なら「5から3個」なので 。ここさえ押さえれば、公式を思い出せなくても書けます。
特に 個すべてを並べるときは となり、これを階乗といって と書きます。図1の3人の例は でした。
3.組合せ:ただ「選ぶ」だけ
ここが最大の分かれ道です。次の2つは、まったく違う問題です。
| 問題 | 順番を区別するか | 使うもの |
|---|---|---|
| 3人から委員長と副委員長を選ぶ | する(役割が違う) | 順列 |
| 3人から代表2人を選ぶ | しない(2人はただの2人) | 組合せ |
図2:3人から2人を選ぶとき、選び方(組合せ)は3通り。その1つ1つから、並べ方が2通りずつ生まれるので、順列は6通りになる。
組合せと順列の関係
順列 = 組合せ × 並べ方
選んだ 個を並べる方法は 通りあるので、
は「順列を作ってから、並び順の違いで重複して数えた分( 通り)で割り戻している」だけ。この一文が言えれば、この単元は半分終わったようなものです。
実際に計算してみます。
【便利な性質】 です。5人から3人を「選ぶ」ことは、残す2人を「選ぶ」ことと同じだからです。一般に 。 のような計算は と読み替えると一瞬で終わります。
4.円順列:なぜ になるのか
【問題】
5人が円形のテーブルに座る方法は何通りか(回転して同じ並びになるものは同じとみなす)。
1列に並べるなら 通りです。しかし円形では、全員が1つずつ右にずれても「同じ並び」とみなします。
そのずらし方は5通り(1人分ずらす、2人分ずらす、…、5人分=元に戻る)。つまり1つの円の並びを、1列の並びとしては5回ずつ重複して数えていることになります。だから5で割ります。
円順列の本質
は暗記する公式ではなく、 を計算した結果。
「回転で重なるものを同じとみなす → その分( 通り)で割る」。組合せで で割ったのとまったく同じ発想です。この単元の割り算は、すべて「重複して数えた分を打ち消す」ためにあります。
5.重複順列:同じものを何度でも使えるとき
【問題】
1、2、3 の3種類の数字を使って3桁の整数を作る。同じ数字を何回使ってもよいとき、何個できるか。
順列との違いは、使ったものが減らない点です。百の位で1を使っても、十の位でまた1が使えます。
| 状況 | 2回目以降の選択肢 | 式 |
|---|---|---|
| 使ったら減る(順列) | 1つずつ減る | |
| 使っても減らない(重複順列) | ずっと同じ |
【見分け方】問題文に「同じものを繰り返し使ってよい」「重複を許す」とあれば重複順列。サイコロを3回振る、コインを5回投げる、といった問題も同じ構造です(サイコロは何度でも1が出る)。
6.同じものを含む並べ方
【問題】
A、A、B、B、C の5文字をすべて使って1列に並べる方法は何通りか。
もし5文字がすべて違えば 通りです。しかし A が2つ、B が2つあるので、A どうしを入れ替えても見た目が変わりません。
A の入れ替えが 通り、B の入れ替えが 通り。合わせて 回ずつ重複して数えているので、
【またしても割り算】組合せ、円順列、同じものを含む順列——3つとも「重複して数えた分で割る」という同じ考え方です。公式を3つ覚えるのではなく、「何回ずつ重複して数えたか」を毎回自分で考えるようにしてください。それができれば、公式は忘れても導けます。
7.この単元で落としやすい3か所
ミス1 順列か組合せかを取り違える
判定は「入れ替えたら別のものになるか」の1点だけ。委員長と副委員長は入れ替えると別(順列)、代表2人は入れ替えても同じ(組合せ)。迷ったら、具体的に2つ書き出して同じかどうか確かめるのが確実です。
ミス2 「少なくとも」を正面から数える
「少なくとも1人は女子」のような問題は、場合分けが増えて必ず数え漏れが出ます。全体から「1人も女子がいない」を引く(余事象)ほうが圧倒的に速い。
ミス3 公式に当てはめようとして手が止まる
分からなくなったら樹形図を3本だけ書く。全部書く必要はありません。3本書けば規則が見えて、掛け算に翻訳できます。
8.確認問題(解答つき)
【確認1】
6人の生徒がいる。(1) 3人を選んで1列に並べる方法は何通りか。(2) 3人を選ぶ方法は何通りか。
【解答1】
(1) 並べるので順列。(通り)
(2) 選ぶだけなので組合せ。(通り)
(1)の答えが(2)の答えの 倍になっていることを確認してください。順列=組合せ×並べ方が、そのまま数字に現れています。
【確認2】
男子4人、女子3人の中から代表3人を選ぶ。女子が少なくとも1人含まれる選び方は何通りか。
【解答2】
正面から数えると「女子1人・2人・3人」の3通りに分けることになり、面倒です。余事象を使います。
・7人から3人を選ぶ方法は (通り)
・女子が1人も入らない(=男子4人から3人)方法は (通り)
よって (通り)
検算:女子1人()+女子2人()+女子3人()= 。一致しました。
【確認3】
(1) 6人が円形に並ぶ方法は何通りか。(2) 0、1、2、3 の4種類の数字を使って3桁の整数を作る。同じ数字を何回使ってもよいとき、何個できるか。
【解答3】
(1) (通り)
(2) 百の位は0を使えないので3通り。十の位・一の位は0も使えて4通りずつ。
よって 48個。
(2)は「最初の位だけ条件が違う」という頻出パターンです。制限のあるところから先に決める——これは場合の数全体を通じての鉄則です。
9.中2でこれを学ぶ意味
場合の数と確率は、高校では数学Aという科目で扱われます。中高一貫校が中2で先取りするのは、この分野が計算力ではなく考え方の訓練だからです。ここで「なぜ割るのか」を考える習慣がつけば、高校の確率、さらには大学入試の難問にもそのまま通用します。
逆に、公式だけ覚えて中2をやり過ごすと、高校で同じ単元に再会したときに「一度やったのに解けない」という一番つらい状態になります。夏休みは、その分かれ道です。
答えが合っていても、ここで止まったら「まだ理解していない」
- でなぜ で割るのか、言葉で説明できるか
- 円順列でなぜ で割るのか、説明できるか
- 順列と組合せを、具体例を書き出して見分けられるか
10.「聞ける相手がいない」だけで止まっているなら
場合の数は、答えが合っているかどうかだけでは理解しているかが判定できない単元です。数え漏れや重複は、自分では気づけません。だからこそ、途中の考え方を見てもらう価値が大きい分野でもあります。
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- プロ講師だけが教えます。学生アルバイトは在籍していません。中高一貫校の先取りカリキュラムに合わせて指導します。
- 数え方そのものを見ます。答えではなく、どう数えたかを確認して、数え漏れの癖を直します。
体験授業は有料3,000円(税込)です。その1回で、実際に手が止まっている問題を一緒に解きます。
11.よくある質問
Q. 中2でこんな内容をやるのは普通ですか?
A. 中高一貫校では珍しくありません。 や は高校1年で習う数学Aの内容ですが、先取りカリキュラムの学校では中2〜中3で扱います。難しく感じるのは当然で、理解が遅いわけではありません。
Q. 順列と組合せの見分け方が、どうしても身につきません。
A. 「AとBを入れ替えたら、別の答えとして数えるか?」と自分に聞いてください。入れ替えて別になるなら順列、同じなら組合せです。それでも迷うときは、実際に2つ書き出して見比べるのが確実です。
Q. 公式が多すぎて覚えられません。
A. 覚えるのは積の法則ひとつで十分です。組合せも円順列も同じものを含む順列も、すべて「掛け算で数えてから、重複した分で割る」という同じ形をしています。割る理由を毎回考えるほうが、結果的に速く正確になります。
Q. 夏休みの宿題が終わりそうにありません。
A. まずどの講座で止まっているかを特定してください。場合の数でつまずいている場合、その先の「確率」もほぼ確実に止まります(確率は場合の数の割り算だからです)。ここを先に解決すると、残りが一気に進みます。

