中2の夏休みの数学の宿題で、多くの人がいちばん時間を取られるのが1次関数です。計算はできるのにグラフになると分からない、文章題になると手が止まる——毎年、同じ相談を受けます。
この単元は、中学数学の中でもっとも「その先」につながる単元です。高校の2次関数も、微分も、大学入試の問題も、ここでの見方がそのまま土台になります。だからこそ、公式を覚えて終わりにしてはいけません。この記事では、「変化の割合とは何を測った数なのか」という一点から、グラフ・連立方程式・文章題までを一本の線でつなぎます。
この記事で身につくこと
- 変化の割合が「 が1増えたときの の増え方」だと図で言える
- 2点を通る直線の式を、迷わず求められる
- 連立方程式の解=2直線の交点という関係を説明できる
- 文章題で、グラフの傾きが何を表しているか読み取れる
1.1次関数とは「一定の割合で増える関係」
1次関数は の形で表されます。中1で習った比例 に、定数 が付いただけです。
| 関係 | 式 | 特徴 |
|---|---|---|
| 比例 | 原点を通る直線。 が2倍になれば も2倍 | |
| 1次関数 | 直線。増え方が一定だが、原点は通らないことがある | |
| 反比例 | 直線にならない。増え方が一定ではない |
1次関数の正体
「 がどこにいても、1増えるごとに が同じだけ増える」——この一定さが1次関数のすべて。
グラフが直線になるのは結果であって、理由ではありません。増え方が一定だから、まっすぐになるのです。反比例は増え方が変わるので曲がります。
2.変化の割合=1増えたときの増え方
教科書には次のように書かれています。
変化の割合 =( の増加量)÷( の増加量)
割り算の形だと分かりにくいので、言い換えます。「 が1増えたとき、 はいくつ増えるか」——それが変化の割合です。
図1: のグラフ。緑の矢印( が )に対して、赤の矢印( が )。どこで測っても同じ——これが1次関数の性質。
では、 が のとき は で 。 が のときも は で 。どこで測っても です。この が の にあたり、グラフでは傾きと呼ばれます。
そして は のときの の値、つまりグラフが 軸と交わる高さで、切片といいます。
と の役割は完全に別
(傾き)=グラフの「向き」を決める。大きいほど急、負なら右下がり。
(切片)=グラフの「高さ」を決める。傾きは変えずに上下に平行移動させる。
この2つを混同すると、グラフも式も書けなくなります。向きと高さは別々に決まる——ここは高校の2次関数(頂点と凸の向き)でもまったく同じ構造です。
3.2点から式を求める(最頻出)
【例題1】
2点 、 を通る直線の式を求めよ。
手順は2ステップです。先に傾き、あとで切片。
STEP 1 傾きを求める
【なぜ】傾きは「 が増えた分に対する の増え方」なので、2点があれば計算できるから。
は で 増え、 は で 増えています。
STEP 2 通る点を代入して切片を求める
【なぜ】傾きが決まっても、上下の位置がまだ決まっていないから。通る点を1つ入れれば高さが確定する。
に を代入します。
【答】
【検算】もう一方の点 を入れて確かめます。。使わなかったほうの点で検算する——これが1次関数の答案で最も確実な確認方法です。30秒でできて、計算ミスをほぼ確実に潰せます。
4.連立方程式の解は、2直線の交点
ここが、中2数学でいちばん美しく、いちばん見落とされる部分です。
【例題2】
連立方程式 を解け。また、その意味をグラフで説明せよ。
計算で解きます。2つの式の右辺どうしを等しいとおいて、
。よって 。
図2:2本の直線と、その交点 。連立方程式の解は、この交点の座標そのもの。
なぜ交点なのか
1本目の式は「この直線上の点の と の関係」。2本目も同じ。
両方を同時に満たす点=両方の直線の上にある点=交点。
「方程式を解く」=「条件を満たす点を探す」。この見方は、高校の2次関数と 軸の交点、円と直線の共有点、大学入試の図形問題まで、ずっと続きます。中2でこの一言を理解できるかどうかで、その後の見通しが変わります。
【交わらないとき】2直線の傾きが同じで切片が違えば、平行なので交点はありません。このとき連立方程式は解なし。逆に完全に同じ直線なら、交点は無数にあります。「解がない」「解が無数にある」の意味が、グラフで見れば当たり前になります。
5.文章題は「傾きが何を表すか」で決まる
【例題3】
水が20L入っている水そうに、毎分4Lの割合で水を入れる。水を入れ始めてから 分後の水の量を Lとする。
(1) を の式で表せ。 (2) 水の量が60Lになるのは何分後か。
文章題で最初にやるのは、「何が傾きで、何が切片か」を決めることです。
| 文章の中の言葉 | 数学での役割 | 今回の値 |
|---|---|---|
| 「最初に入っている量」 | 切片( のときの値) | |
| 「毎分〜ずつ」 | 傾き(1分あたりの増え方) |
したがって (1) の答えは、
(2) は を代入して、
【答】
(1) (2) 分後
【文章題の急所】「毎分」「1個あたり」「1kmあたり」といった「〜あたり」の言葉が出てきたら、それが傾きです。そして「はじめに」「もともと」は切片。この2語を探すだけで、1次関数の文章題の半分は式が立ちます。
6.この単元で落としやすい3か所
ミス1 傾きと切片を取り違える
の「1」を傾きだと思ってしまう典型ミス。 にくっついている数が傾き、単独の数が切片。式を見たら指で を隠して確認する癖を。
ミス2 変化の割合を「 の増加量」だけで答える
変化の割合は割り算です。 が2増えて が4増えたなら、変化の割合は4ではなく 。
ミス3 グラフを点で描かずに、勘で線を引く
まず切片の点を打つ。そこから「右に1、上に 」で2つ目の点を打つ。2点が決まれば線は1本に決まります。定規で当てずっぽうに引かないこと。
7.確認問題(解答つき)
【確認1】
2点 、 を通る直線の式を求めよ。
【解答1】
傾きは 。
に を代入して 、。
検算:もう一方の を入れると 。合っています。傾きが負なので、グラフは右下がりです。
【確認2】
2直線 と の交点の座標を求めよ。
【解答2】
より 、。。
交点は
検算:もう一方の式でも 。両方の式で同じ が出ることを確認すれば、交点で間違いありません。
【確認3】
兄は家を出発して分速60mで歩く。弟は兄が出発してから5分後に、同じ道を分速90mで追いかける。弟が兄に追いつくのは、弟が出発してから何分後か。
【解答3】
弟が出発してから 分後の、家からの距離を mとします。
・兄:すでに m進んでいるので (切片300、傾き60)
・弟:(切片0、傾き90)
追いつく=同じ時刻に同じ位置にいる=2直線の交点。 より 、。
10分後
検算:弟は m、兄は m。一致します。「追いつく」「出会う」はすべて交点の問題だと分かれば、この手の文章題は一気に易しくなります。
8.中2の1次関数が、その先どこへつながるか
| 中2で学ぶこと | その先で使う場所 |
|---|---|
| 変化の割合(一定の増え方) | 高校の微分(変化の割合が変わる関数の傾き) |
| 傾きと切片でグラフが決まる | 高校の2次関数(頂点と凸の向きでグラフが決まる) |
| 連立方程式の解=交点 | 2次関数と 軸の共有点、円と直線、領域 |
| 文章題の「〜あたり」=傾き | 物理の速度・加速度、化学の反応速度 |
中高一貫校では中2でこれを終え、中3では2乗に比例する関数()へ進みます。1次関数の見方が固まっていないまま次に進むと、そこで必ず止まります。夏休みは、その土台を作り直せる最後のまとまった時間です。
答えが合っていても、ここで止まったら「まだ理解していない」
- 変化の割合を、グラフの絵で説明できるか
- 連立方程式の解が交点である理由を言えるか
- 文章題で、傾きが何を表しているか答えられるか
9.「聞ける相手がいない」だけで止まっているなら
1次関数は、計算だけならできてしまう単元です。だからこそ「本当は分かっていない」ことに気づかないまま次へ進みがちで、中3・高1で急に成績が落ちる原因になります。
数強塾は、オンラインの完全1対1です
- 誰にも会いません。校舎に通わないので、同じ学校の友だちや先輩に見られる心配がありません。
- 恥ずかしくありません。1対1なので、他の生徒の前で間違える心配がない。「全然分からない」と言える場所です。
- すぐ始められます。自宅から、今日つまずいた宿題の1問を持ち込むところから始められます。
- プロ講師だけが教えます。学生アルバイトは在籍していません。中高一貫校の進度・教材に合わせて指導します。
- グラフを一緒に描きます。完成した図を見せるのではなく、どの順番で描くかを手を動かしながら確認します。
体験授業は有料3,000円(税込)です。その1回で、実際に手が止まっている問題を一緒に解きます。
10.よくある質問
Q. 変化の割合と傾きは、違うものですか?
A. 1次関数では同じ数です。「変化の割合」は増え方に注目した呼び方、「傾き」はグラフの見た目に注目した呼び方で、指しているものは同じ です。(高校で2次関数を学ぶと、変化の割合は場所によって変わるようになります。)
Q. グラフから式を読み取るのが苦手です。
A. 順番を固定してください。① 軸と交わる高さを読む(=切片)②そこから右に1進んで、上下にいくつ動くかを読む(=傾き)。この2つだけで式が決まります。格子点(グラフが方眼の交点をきれいに通る場所)を探すのがコツです。
Q. 文章題で式が立てられません。
A. 先に「 は何、 は何」を書き出すことです。そのうえで「はじめに」=切片、「〜あたり」=傾き、と当てはめます。式を先に作ろうとすると必ず詰まります。
Q. 中2の夏休みの宿題が終わりません。
A. 全部を均等に進めようとしないでください。1次関数と連立方程式は、その後の学年に直結する最重要単元です。ここを優先して固めるほうが、結果的に9月以降が楽になります。

