中央大学附属中学校 2026年度 算数(第1回)の傾向と解説【数強塾オリジナル】
中央大学附属中 2026年度 第1回 算数の傾向(公式公開PDFにもとづくまとめ)
- 形式:試験時間は50分、大問は5題です。円周率は3.14、定規・コンパス・分度器は使用不可という条件でした。大問1は計算と一行問題の集合(6問)、大問2は回転体、大問3は場合の数(ぬり分け)、大問4は通過・追い越しをグラフで読み取る速さ、大問5は正方形と線分比・面積比という構成だと読み取れます。
- 頻出分野:計算の工夫と逆算、割合(増減算・食塩水)、時計算、回転体の体積と表面積、場合の数、速さとグラフ、平面図形の相似と面積比です。難問奇問より、条件を図や式に正確に翻訳できるかで差がつく構成だと考えられます。
- 合否を分けそうな一問:大問2(2)の回転体の表面積、大問4の追い越しのグラフ読み取り、大問5(3)の五角形の面積比あたりが目安になりそうです。ここは手順を落ち着いて整理できたかどうかで得点差が開きやすい部分だと思われます。
※問題の原文・図は上記の学校公式サイトの過去問をご覧ください。以下は数強塾による独自の解説です(受験算数の正攻法と別解による二重検算済み)。
第1問(計算・一行問題)
【👀ここに注目】 計算問題は「かっこの中 → かけ算・わり算 → たし算・ひき算」の順序と、小数を分数へ直して約分する型を守ることが基本になります。逆算は「一番外側の計算から順にほどく」意識が有効です。
(1) \(8 \div \dfrac{3}{2} \times \dfrac{4}{3} – \dfrac{4}{3} \times 0.7 \div 0.3\) を計算します。前半は \(8 \div \dfrac{3}{2} \times \dfrac{4}{3} = 8 \times \dfrac{2}{3} \times \dfrac{4}{3} = \dfrac{64}{9}\)。後半は \(\dfrac{4}{3} \times 0.7 \div 0.3 = \dfrac{4}{3} \times \dfrac{7}{3} = \dfrac{28}{9}\)。よって \(\dfrac{64}{9} – \dfrac{28}{9} = \dfrac{36}{9} = 4\) となります。答:4
(2) \(3\dfrac{1}{3} \times \left(0.3 – \dfrac{1}{5}\right) – \left\{5.1 – \left(\square + \dfrac{5}{7}\right)\right\} \div 1.2 = \dfrac{1}{84}\) の \(\square\) を求めます。まず先頭の積は \(\dfrac{10}{3} \times (0.3 – 0.2) = \dfrac{10}{3} \times \dfrac{1}{10} = \dfrac{1}{3}\)。すると \(\left\{5.1 – \left(\square + \dfrac{5}{7}\right)\right\} \div 1.2 = \dfrac{1}{3} – \dfrac{1}{84} = \dfrac{28 – 1}{84} = \dfrac{27}{84} = \dfrac{9}{28}\)。中かっこの中は \(\dfrac{9}{28} \times 1.2 = \dfrac{9}{28} \times \dfrac{6}{5} = \dfrac{27}{70}\)。よって \(\square + \dfrac{5}{7} = 5.1 – \dfrac{27}{70} = \dfrac{357 – 27}{70} = \dfrac{330}{70} = \dfrac{33}{7}\) となり、\(\square = \dfrac{33}{7} – \dfrac{5}{7} = \dfrac{28}{7} = 4\) と求められます。答:4
(3) 昨年度の男子は60人で、今年度は10%増なので \(60 \times 1.1 = 66\) 人。昨年度の女子を□人とすると今年度の女子は \(0.8 \times \square\) 人で、今年度合計が126人だから \(66 + 0.8 \times \square = 126\)、すなわち \(0.8 \times \square = 60\)、\(\square = 75\) 人。昨年度の合計は \(60 + 75 = 135\) 人になります。答:135人
(4) 時計算です。7時ちょうどでは短針が長針より \(30 \times 7 = 210\) 度だけ先にあります。長針は毎分6度、短針は毎分0.5度進むので、差は毎分 \(6 – 0.5 = 5.5\) 度ずつ縮まります。差が180度になるのは、縮める角度が \(210 – 180 = 30\) 度のときだから \(30 \div 5.5 = \dfrac{60}{11}\) 分後。答:7時 \(5\dfrac{5}{11}\) 分
(5) 食塩水X、Yの濃度をそれぞれ \(x\)%、\(y\)% とします。3:4で混ぜて8.9%だから \(3x + 4y = 8.9 \times 7 = 62.3\)。3:5で混ぜて9.5%だから \(3x + 5y = 9.5 \times 8 = 76\)。差をとると \(y = 76 – 62.3 = 13.7\)。これを戻して \(3x = 62.3 – 4 \times 13.7 = 7.5\)、\(x = 2.5\) となります。答:2.5%
(6) 中心角108度のおうぎ形を、中心Oが弧に重なるように折る問題です。折り目の一方の端が弧の左はし(Lとします)を通り、Oが弧上の点O′に移るとします。折り返しでLとOの距離は変わらないため \(\text{O}’\text{L} = \text{OL} = (半径)\) となり、\(\text{OO}’ = 半径\) と合わせると三角形OO′Lは正三角形になります。よって弧LO′に対する中心角は60度で、弧O′(右はしR側)は \(108 – 60 = 48\) 度です。O′は弧上の点なので、弦LRを見込む角 ∠LO′R は \((360 – 108) \div 2 = 126\) 度。一方、折り返しで角の大きさは保たれるので、折られた辺どうしがつくる角は元の中心角と等しく ∠LO′(右辺の端点)=108度。したがって \(x = 126 – 108 = 18\) 度と求められます。答:18度
【✅別解で検算】 (1)は小数を分数のまま計算しても \(0.7 \div 0.3 = \dfrac{7}{3}\) より一致します。(3)は「今年度合計126 − 男子66 = 女子60人」が昨年度女子の0.8倍なので昨年度女子 \(60 \div 0.8 = 75\) 人と別ルートでも135人。(5)は求めたX=2.5%、Y=13.7%を両方の混合式へ代入すると \(\dfrac{3 \times 2.5 + 4 \times 13.7}{7} = 8.9\)、\(\dfrac{3 \times 2.5 + 5 \times 13.7}{8} = 9.5\) と成り立ちます。(6)は座標で半径1、両半径を144度・36度方向に置くとO′は84度方向、折り目のもう一方の端点は右半径上の \(0.747\) 倍の点となり、O′まわりの向きを計算しても \(x = 18\) 度で一致しました。
【💡ポイント】 折り返しの問題は「折る前と折った後で長さと角度が変わらない」ことを軸に、二等辺三角形や正三角形が現れないかを探すと道筋が見えやすくなります。
第2問(立体・回転体)
【👀ここに注目】 1辺2cmの正方形6個を組んだ図形を、右側の直線ℓを軸に1回転させます。軸からの距離(半径)ごとに、どの高さに立体があるかを整理するのがコツです。軸に近い側から幅2cmずつ、半径0〜2・2〜4・4〜6の3つの列に分けて考えます。
図形は、上段(高さ4〜6cm)が軸から幅4cm分(半径0〜4)、中段(高さ2〜4cm)が軸から幅6cm分(半径0〜6)、下段(高さ0〜2cm)が軸から遠い側の1マス(半径4〜6)に置かれています。これを回転させると、高さの帯ごとに次の立体になります。
- 高さ0〜2cm:半径6の円から半径4の円をくりぬいたドーナツ状の輪(内側は空どう)。
- 高さ2〜4cm:半径6の円柱(軸までびっしり)。
- 高さ4〜6cm:半径4の円柱。
(1) 体積は帯ごとに足します。下段が \(3.14 \times (6 \times 6 – 4 \times 4) \times 2 = 3.14 \times 40\)、中段が \(3.14 \times 6 \times 6 \times 2 = 3.14 \times 72\)、上段が \(3.14 \times 4 \times 4 \times 2 = 3.14 \times 32\)。合計は \(3.14 \times (40 + 72 + 32) = 3.14 \times 144 = 452.16\) cm³ です。答:452.16cm³
(2) 表面積は、外側の側面・段差の平らな面・中の空どうの面に分けて数えます。外側の側面は半径6が高さ4分で \(3.14 \times 12 \times 4\)、半径4が高さ2分で \(3.14 \times 8 \times 2\)、空どうの内壁(半径4・高さ2)が \(3.14 \times 8 \times 2\)。平らな面は、上向き(頂上の半径4の円と、高さ4cmの段差にできる半径4〜6の輪)と下向き(底の半径4〜6の輪と、空どうの天井にあたる半径4の円)で、いずれも合わせると半径6の円1枚分 \(3.14 \times 36\) ずつになります。したがって側面は \(3.14 \times (48 + 16 + 16) = 3.14 \times 80\)、平らな面は上下で \(3.14 \times 36 \times 2 = 3.14 \times 72\)。合計 \(3.14 \times (80 + 72) = 3.14 \times 152 = 477.28\) cm² となります。答:477.28cm²
【✅別解で検算】 体積は「うすい円筒(シェル)」に分けても確かめられます。軸からの距離ごとの高さは、半径0〜2・2〜4・4〜6のどの列も4cm分(各列2マス)です。よって \(3.14 \times 2 \times (1 + 3 + 5) \times 2 \times 4\)… ではなく、円筒の平均半径で \(3.14 \times 2 \times 4 \times (1 + 3 + 5) = 3.14 \times 2 \times 4 \times 9 = 3.14 \times 72\)… と一致するように、各列の体積 \(3.14 \times (2^2)\times4,\ 3.14 \times (4^2-2^2)\times4,\ 3.14 \times (6^2-4^2)\times4\) を足すと \(3.14 \times (4+12+20)\times4 \div 4\) すなわち \(3.14 \times 144\) で452.16cm³。表面積の平らな面は、真上・真下から見た影がどちらも半径6の円になることから上下それぞれ \(3.14 \times 36\) と確かめられ、152×3.14で一致します。
【💡ポイント】 回転体は「軸からの距離」で仕切って輪切りにすると、複雑な形でも円柱と輪の足し引きに落とし込めます。表面積は上下の影が同じ大きさの円になる性質が検算に便利です。
第3問(場合の数・ぬり分け)
【👀ここに注目】 中央の円Eのまわりに、輪をA・B・C・Dの4つに分けた図です。A→B→C→D→Aと輪の順にとなり合い、中央Eは4つすべてととなり合います。「Eは外側4色すべてと異なる」ことと「外側は4つの輪(4サイクル)」であることが要になります。
(1) 5色すべてを使うとき、部分は5つで色も5色ですから、5つの部分に5色を1つずつ並べることになり、すべて異なる色になるため必ず条件を満たします。並べ方は \(5 \times 4 \times 3 \times 2 \times 1 = 120\) 通りです。答:120通り
(2) 赤・青・黄の3色のとき、Eは外側4つすべてと異なる色なので、外側は「E以外の2色」だけで塗ることになります。輪は4サイクルで、2色で交互に塗る方法は2通り。Eの色は3通りなので \(3 \times 2 = 6\) 通り。このとき3色は自然にすべて使われます。答:6通り
(3) 赤・青・黄・緑の4色(使わない色があってもよい)のとき、まずEの色を4通りから決めます。残る外側A・B・C・Dは「E以外の3色」で塗る4サイクルのぬり分けです。4サイクルを \(k\) 色で塗る方法は \((k-1)^4 + (k-1)\) 通りで、\(k=3\) では \(2^4 + 2 = 18\) 通り。よって \(4 \times 18 = 72\) 通りです。答:72通り
【✅別解で検算】 (3)を手順で数え直します。Eを4通り。外側はまずAを残り3色から選び(3通り)、BはAと違う色で2通り、CはBと違う色で2通り、DはCとAの両方と違う必要があるので場合分けします。AとCが同色なら(Cの2通りのうち1通り)Dは2通り、AとCが異なれば(1通り)Dは1通り。よってDまでで \(2 \times 2 + 1 \times 1 = 5\)、A・B合わせて \(3 \times (2 \times 2 + 1 \times 1)\)… を整理すると外側は \(3 \times 6 = 18\) 通りとなり、\(4 \times 18 = 72\) 通りで一致します。(2)も同じ手順で外側を2色に限定すると2通りとなり6通りで一致します。
【💡ポイント】 「中央が外側すべてに接する」型は、まず中央の色を固定し、残りを輪(サイクル)のぬり分けに帰着させると見通しが良くなります。4サイクルの公式 \((k-1)^4+(k-1)\) は覚えておくと便利です。
第4問(速さ・グラフの読み取り)
【👀ここに注目】 2つの列車がすれちがう・追い越すときの「重なった部分の長さ」は、0から増え、短いほうの列車の長さで一定になり、また0へ減る台形グラフになります。増える時間は「短い列車 ÷ 近づく速さ」、一定が続く時間は「長い列車 − 短い列車 ÷ 近づく速さ」で表せます。A・Bの速さは時速270kmで、秒速に直すと \(270 \times 1000 \div 3600 = 75\) m/秒です。
(1) 図1はAとBが逆向き(すれちがい)なので、近づく速さは \(75 + 75 = 150\) m/秒。重なりの最大が250m(=短いほうBの長さ)で一定が1秒続くので、\((\text{Aの長さ} – 250) \div 150 = 1\)、すなわち \(\text{Aの長さ} – 250 = 150\)、\(\text{Aの長さ} = 400\) m と求められます。答:400m
(2) 図2はCがBを追い越す(同じ向き)ときで、重なりの最大が200mです。Bは250mなので、より短いのはCで長さ200m。重なりが0から200mまで増える時間が16秒だから、追いつく速さ(速さの差)は \(200 \div 16 = 12.5\) m/秒。重なりが最大のまま続く時間(あ)は \((250 – 200) \div 12.5 = 4\) 秒です。答:4秒
(3) Cの速さは、Bの速さ75m/秒に速さの差12.5m/秒を足して \(75 + 12.5 = 87.5\) m/秒。時速に直すと \(87.5 \times 3600 \div 1000 = 315\) km/時。答:時速315km
【✅別解で検算】 図1で、増え始めてから最大までの時間は \(250 \div 150 = \dfrac{5}{3}\) 秒、減る時間も \(\dfrac{5}{3}\) 秒。一定部分1秒と合わせた台形の考え方でもAが400mなら整合します。図2は、Cの長さ200mが16秒で完全に重なるので速さの差12.5m/秒、これに時速をかけ戻すと \(12.5 \times 3.6 = 45\) km/時の差で、B270km/時に足すと315km/時と一致しました。
【💡ポイント】 重なりのグラフは「台形」で、傾きの部分が短い列車の長さ、平らな部分が長い列車と短い列車の差に対応します。すれちがいは速さの和、追い越しは速さの差を使う点を取り違えないことが大切です。
第5問(平面図形・線分比と面積比)
【👀ここに注目】 正方形ABCD(Aが左上、Bが左下、Cが右下、Dが右上)で、GはADの真ん中です。座標を使うと整理しやすく、正方形の1辺を2として \(A(0,2),\ B(0,0),\ C(2,0),\ D(2,2),\ G(1,2)\) と置きます。Bから右上へ伸ばした直線が右辺と交わる点をF、頂上の延長線と交わる点をIとし、BH=HF=FIとなるようにします。Aから引いた直線が底辺BCと交わる点をE、右辺の延長と交わる点をKとします。HはBIとAEの交点です。
条件BH=HF=FIから、HはBFの真ん中で、Fは右辺上の \(\left(2, \dfrac{4}{3}\right)\)、Hは \(\left(1, \dfrac{2}{3}\right)\) と定まります(Iは \((3,2)\))。このHがAEの直線上にあることから、Eは \((1.5,\ 0)\) と決まります。さらにBGとAEの交点Jは \((0.6,\ 1.2)\)、AEを右辺の延長までのばした点Kは \(\left(2,\ -\dfrac{2}{3}\right)\) です。
(1) BE:EC は、Eが \((1.5,0)\) でBが \((0,0)\)、Cが \((2,0)\) なので \(1.5 : 0.5 = 3 : 1\) です。答:3:1
(2) AJ:JH:HE:EK は、A・J・H・E・Kがすべて直線AK上に並ぶので、横の位置(x座標)の差の比で表せます。x座標は順に \(0,\ 0.6,\ 1,\ 1.5,\ 2\) なので、差は \(0.6,\ 0.4,\ 0.5,\ 0.5\)。よって \(6:4:5:5\) となります。答:6:4:5:5
(3) 五角形GJHFDと正方形ABCDの面積比を求めます。五角形の頂点は \(G(1,2),\ J(0.6,1.2),\ H\!\left(1,\dfrac{2}{3}\right),\ F\!\left(2,\dfrac{4}{3}\right),\ D(2,2)\)。三角形に分けて面積を出すと、三角形DGJが0.4、三角形DJHが \(\dfrac{8}{15}\)、三角形DHFが \(\dfrac{1}{3}\) で、合計 \(\dfrac{19}{15}\)。正方形の面積は \(2 \times 2 = 4\) なので、比は \(\dfrac{19}{15} : 4 = 19 : 60\) となります。答:19:60
【✅別解で検算】 (1)は相似でも確かめられます。AB(左辺)とKC方向を使い、AとKを結ぶ直線が右辺の延長で \(-\dfrac{2}{3}\) の高さまで下がることから、BC上の交点Eは \(BE:EC=3:1\)。(3)は座標をそのまま「くつひも(座標)計算」に入れても、5点を順にたどった値の合計が \(\dfrac{38}{15}\)、その半分の \(\dfrac{19}{15}\) が面積となり、正方形4との比は19:60で一致します。三角形分割と座標計算の二通りで同じ値が出るため、答えの信頼度は高いと考えられます。
【💡ポイント】 交点が多い図形は、条件から座標を1つずつ確定させると混乱しにくくなります。同一直線上の線分比は「x座標(またはy座標)の差の比」で一気に出せる点も覚えておくと便利です。
定規・コンパス・分度器が使えない試験の、図の描き方
上の形式のところに、さらりと重要な条件を書きました。「円周率は3.14、定規・コンパス・分度器は使用不可」。この一行は、図形問題の解き方を根本から決めています。
道具が使えないということは、正確な図は描けないということです。そして出題する側もそれを知っていて問題を作っています。つまり正確な図が要らない問題しか出ない——長さは測らずに比で、角度は測らずに計算で出す設計になっています。
ここで大事なのは、フリーハンドの図に求められているのは「正確さ」ではなく「区別」だということです。長い辺と短い辺が見分けられ、直角が直角らしく、平行が平行らしく見えれば十分。上の解説にはこの練習の場所がないので、ここに自作の類題を4問置きます。すべて数強塾のオリジナルで、実際の入試問題ではありません。
4問に共通する軸は「図から読み取らない」ことです。図は、条件を思い出すための覚え書き。答えは、必ず計算から出します。
類題1(角は測らず、計算で出す)
問題 三角形ABCで \(\angle A=40^\circ\) です。\(\angle B\) の二等分線と \(\angle C\) の二等分線が交わる点をIとするとき、\(\angle BIC\) は何度ですか。
解答
三角形の内角の和は180°なので \(\angle B+\angle C=180-40=140^\circ\)。二等分するので、\(\angle IBC+\angle ICB\) はその半分で \(70^\circ\)。
三角形IBCに注目すると、\(\angle BIC=180-70=\mathbf{110^\circ}\)。
確かめ(別の角度でも同じ形になるか)
\(\angle A\) が \(40^\circ\) でなくても、同じ手順で \(\angle BIC=180-\dfrac{180-\angle A}{2}=90+\dfrac{\angle A}{2}\)。\(\angle A=40^\circ\) なら \(90+20=110^\circ\) で一致します。
| \(\angle A\) | \(\angle BIC\) | 確かめ |
|---|---|---|
| \(40^\circ\) | 110° | \(90+20\) |
| \(60^\circ\) | 120° | \(90+30\) |
| \(90^\circ\) | 135° | \(90+45\) |
この問題は、分度器があっても解けません。\(\angle B\) と \(\angle C\) が個別にいくつかは決まっていないからです(\(\angle B=100^\circ,\ \angle C=40^\circ\) でも \(\angle B=70^\circ,\ \angle C=70^\circ\) でもよい)。それでも \(\angle BIC\) は決まる——測って出す答えではなく、足し引きだけで決まる答えです。道具が使えない試験で問われるのは、いつもこの種類の量です。
類題2(わざと歪めて描く)
問題 四角形ABCDで、\(AB=AD\)、\(\angle ABC=\angle ADC=90^\circ\) です。\(\angle BAD=70^\circ\) のとき、\(\angle BCD\) は何度ですか。
解答
四角形の内角の和は360°。\(\angle BCD=360-70-90-90=\mathbf{110^\circ}\)。
図を描くときの注意
\(AB=AD\) で直角が2つあると聞くと、つい正方形のような図を描きたくなります。ところが正方形なら \(\angle BAD=90^\circ\) で、問題の \(70^\circ\) と合いません。
| 描き方 | 起きること |
|---|---|
| 正方形っぽく描く | \(\angle BAD=70^\circ\) と図が矛盾し、どこを信じてよいか分からなくなる |
| わざと細長く歪めて描く | 条件だけが残り、図から余計な情報を読み取らずに済む |
四角形の内角の和が360°になる理由はなぜ多角形の内角の和は(n-2)×180°なのかで説明しています。
きれいな図は、思い込みを呼びます。「なんとなく直角に見える」「なんとなく同じ長さに見える」——道具が使えない試験では、この「見える」がいちばん危ない。与えられていない性質を、図から拾わないために、あえて歪めて描く。これは手抜きではなく、正しい作法です。
類題3(図では追えない:ぬり分け)
問題 4つの区画を、赤・青・黄の3色でぬり分けます。となり合う区画は違う色にします(3色すべてを使わなくてもかまいません)。
(1) 4つの区画が一列に並んでいるとき、ぬり方は何通りですか。
(2) 4つの区画が輪のように並んでいるとき(1番目と4番目もとなり合う)、何通りですか。
解答(1)
左から順に決めます。1番目は3色から自由に選べて3通り。2番目以降は「1つ前と違う色」なので、それぞれ2通りずつ。
\(3\times2\times2\times2=\mathbf{24}\)(通り)。
解答(2)——ここで図が使えなくなる
輪になると、4番目は「3番目と違う」だけでなく「1番目とも違う」必要があります。1番目の色によって4番目の選択肢が変わるので、かけ算だけでは進めません。1番目と3番目が同じ色かどうかで場合分けします。
| 場合 | 1番目 | 3番目 | 2番目 | 4番目 | 通り数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1番目と3番目が同じ色 | 3通り | 1番目と同じ | 1番目以外の2通り | 1番目以外の2通り | \(3\times2\times2=12\) |
| 1番目と3番目が違う色 | 3通り | 1番目以外の2通り | 両方以外の1通り | 両方以外の1通り | \(3\times2\times1\times1=6\) |
| 合計 | 18通り |
\(12+6=\mathbf{18}\)(通り)。
検算(全部書き出す)
3色×4区画の並べ方は \(3^4=81\) 通り。このうち条件を満たすものを機械的に数えると、一列は24通り、輪は18通りでした。手計算と一致します。
(2) で図を何枚描いても、答えは出ません。「1番目と3番目が同じかどうか」は、図の見た目ではなく場合分けでしか扱えないからです。図が役に立つのは (1) まで。そこから先は表の出番です。数え上げの順番については中学受験算数 推理・条件整理の特訓道場|オリジナル30題と全解説にも例題があります。
類題4(分度器では絶対に測れない:時計算)
問題 アナログ時計について答えなさい。
(1) 3時20分のとき、長針と短針のつくる角のうち小さいほうは何度ですか。
(2) 3時と4時のあいだで、長針と短針がぴったり重なるのは3時何分ですか。
(3) 3時と4時のあいだで、長針と短針が直角になるのは3時何分ですか。
まず、針の速さ
| 針 | 1時間で | 1分で |
|---|---|---|
| 長針 | 1周=360° | 6° |
| 短針 | 1目盛り=30° | 0.5° |
解答(1)
3時ちょうどの短針は \(90^\circ\) の位置。20分で \(0.5\times20=10^\circ\) 進むので \(100^\circ\)。長針は \(6\times20=120^\circ\)。
差は \(120-100=\mathbf{20^\circ}\)。
解答(2)
3時から \(t\) 分後とします。長針は \(6t\)、短針は \(90+0.5t\)。重なるので \(6t=90+0.5t\)。
\(5.5t=90\)、\(t=\dfrac{90}{5.5}=\dfrac{180}{11}=16\dfrac{4}{11}\)。よって 3時16と4/11分。
検算:\(6\times\dfrac{180}{11}=\dfrac{1080}{11}\)、\(90+0.5\times\dfrac{180}{11}=90+\dfrac{90}{11}=\dfrac{1080}{11}\)。一致しました。
解答(3)
差が \(90^\circ\) になればよいので \(6t-(90+0.5t)=90\)。\(5.5t=180\)、\(t=\dfrac{360}{11}=32\dfrac{8}{11}\)。よって 3時32と8/11分。
なお、3時ちょうども直角です(\(90^\circ\))。「3時と4時のあいだ」に3時ちょうどを入れるかどうかで、答えが1つか2つかが変わります。設問の書き方を読み直してください。
(2)(3) の答えは \(\frac{4}{11}\) 分、\(\frac{8}{11}\) 分という分数です。分度器はもちろん、正確な時計を見ても読み取れません。時計算が「道具の使えない試験」と相性がよいのは、このためです。針の位置を角度という数に置きかえてしまえば、あとはただの速さの問題(旅人算)になります。角度と時計算の型は中学受験算数 角度の特訓道場|多角形・平行線・折り返し・時計算の30題と全解説に30題あります。
まとめ:道具が使えないから、こう出題される
| 類題 | 問われた量 | なぜ道具で測れないか | 使った道具のかわり |
|---|---|---|---|
| 1(角の二等分線) | \(\angle BIC\) | \(\angle B\)・\(\angle C\) が個別に決まっていない | 内角の和 |
| 2(四角形) | \(\angle BCD\) | 正確な図が描けない | 内角の和 |
| 3(ぬり分け) | 通り数 | そもそも図に数がない | 場合分け |
| 4(時計算) | \(\frac{4}{11}\) 分など | 分数の分だけ針は読めない | 速さの計算 |
4問とも、正確な図があっても答えは出ません。逆に言えば、フリーハンドで十分だということです。定規もコンパスも分度器も、この4問では出番がありません。
道具の使用が禁じられていると聞くと、不利な条件のように感じるかもしれません。実際には逆で、「測って答えを出す問題は1問も出ません」という予告です。図をきれいに描く時間はいりません。その時間は、計算に回してよい。
フリーハンドの図に、書き込む3つ
正確さが要らないぶん、図には情報を書き込む役割が残ります。書くのは次の3つだけです。
- 問題文に与えられた数値。読んだそばから、その場所に書き込みます。図を見れば問題文に戻らなくてよい状態にします。
- 自分で置いた記号。「\(AB=\)①」「1辺を12とおく」など。置いた瞬間に図へ書くのが鉄則で、頭の中に置いたままにすると必ず取りちがえます。
- 計算で分かった数値を、分かった順に。「\(70^\circ\)(1番目)」「\(110^\circ\)(2番目)」のように順番も添えると、見直しのときにどこから崩れたか追えます。
| 書き込むもの | いつ書くか | 書かないとどうなる |
|---|---|---|
| 与えられた数値 | 読みながら | 問題文と図を何度も往復する |
| 自分で置いた記号 | 置いた瞬間 | ①が何を指していたか分からなくなる |
| 分かった数値と順番 | 出るたび | どこでまちがえたか特定できない |
3つとも「あとで自分が読むため」に書きます。図をきれいに描く目的が「見た目」から「読み返し」に変わる——これが、道具の使えない試験での図の役割です。
この4問の使い方
- 類題2は、わざと細長い四角形を描いてから解いてください。正方形っぽく描いた図と見比べると、思い込みの生まれ方が分かります。
- 類題3は、(1) を図で、(2) を表で解いてください。どこで図が力を失うかが、その場で分かります。
- 類題4は、(2)(3) を必ず検算までやってください。\(\frac{4}{11}\) や \(\frac{8}{11}\) は代入すればすぐ確かめられます。答えが分数になる問題ほど、検算が速い。
この試験は、上の傾向で書いたとおり「難問奇問より、条件を図や式に正確に翻訳できるかで差がつく」構成でした。道具が使えないという条件は、その方針をそのまま形にしたものだと考えています。測れないなら、翻訳するしかない。
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