田園調布学園中等部 算数の傾向と対策【数強塾オリジナル】
田園調布学園中等部(東京都世田谷区東玉川)は、「捨我精進」を教育の柱にすえる歴史ある女子校です。中学入試の算数は、他教科と並んで合否を左右する重要教科であり、とくに午後入試では算数1教科で合否が決まります。この記事では、田園調布学園中等部が公式サイトで公開している募集要項の情報をもとに算数の枠組みを整理したうえで、オンライン数学専門塾「数強塾」が独自に作成したオリジナル類題5問を、考え方・解答・検算つきで掲載します。実在の過去問を書き写したものは一切なく、受験算数の標準的な題材をふまえて数強塾が新しく作った問題です。答えはすべて、正攻法とは別の方法による二重検算で一致を確認しています。
公式の募集要項からわかる算数のポイント
- 2026年度の一般入試は、公式の募集要項によれば第1回(2月1日午前・募集80名)、午後入試(2月1日午後・募集20名)、第2回(2月2日午前・募集70名)、第3回(2月4日午前・募集30名)の4回が案内されています。
- 第1回・第2回・第3回は国語・算数・社会・理科の4教科で、算数の試験時間は50分・配点100点と案内されています(国語も50分・100点、社会・理科は各40分・60点です)。
- 国語と算数の配点(各100点)が、社会・理科(各60点)より高く設定されており、算数の出来が合否に大きく影響する配点構成です。
- 午後入試は算数1教科の入試で、試験時間60分・配点100点と案内されています。算数だけで合否が決まる回があるのが特徴です。
- 試験当日の注意事項として、三角定規・分度器など角度が測れる機能のついたものや計算機能付きの時計は使用できないと案内されています。作図や計算は自分の手で行う前提です。
- 公式サイトの入試結果ページでは、各回の問題と解答例がPDFで公開されています。
※試験時間・配点・入試回・募集人員は執筆時点で公式サイトに掲載の2026年度内容です。年度により変わる場合があるため、受験の際は必ず最新の 田園調布学園中等部・入試情報(公式) と 募集要項(公式) をご確認ください。過去の問題と解答例は 公式の入試結果ページ で公開されています。
※本ページは公開情報にもとづく傾向分析と、数強塾オリジナルの自作類題による対策です。実際の問題文・図は学校公式サイトでご確認ください。
出題分野の傾向
ここでの記述は特定年度の問題の解説ではなく、算数50分・100点(午後入試は60分・100点)という枠組みと、女子進学校で一般的に問われる力から読み取れる方向づけの整理です。断定は避け、学習の道しるべとしてお読みください。実際の出題形式や難度は、公式サイトで公開されている問題・解答例でご確認ください。
- 計算力と一行問題を確実に得点する力:50分・100点という枠組みでは、序盤の計算問題や標準的な一行問題を、速く正確に処理できることが得点の土台になります。分数・小数の混じった計算、逆算、単位換算をミスなく仕上げる練習が最優先です。
- 受験算数の主要分野を広く:割合(濃度・売買損益)、速さ(旅人算・通過算・流水算)、平面図形(面積比・相似・角度)、数の性質・規則性、場合の数など、主要分野を「なぜその式になるのか」まで理解して使いこなせる状態を目指しましょう。
- 途中の考え方を書いて整理する力:答えのみを書く問題だけでなく、考え方や式を書かせる形式に備え、線分図・面積図・表・ダイヤグラムを自分の手でかいて状況を整理する習慣が支えになります。角度を測る道具が使えない前提なので、図は「性質を使って求める」意識が大切です。
- 午後入試は算数一本での勝負:午後入試は算数1教科・60分・100点です。時間がやや長いぶん、1問あたりに使える時間も増えます。丁寧に読み取り、見直しと検算まで含めて解ききる姿勢が、算数一本の入試ではとくに効いてきます。
- 見直し・検算の習慣:算数の配点が高く、午後は算数のみという構成では、取れる問題を確実に取り切ることが合否を分けます。別の方法で答えを確かめる検算の習慣を、日ごろの演習から身につけておきましょう。
オリジナル類題で対策
※以下の類題5問は、上記の傾向をふまえて数強塾が独自に作成したオリジナル問題です。実在の過去問の複製ではありません。全問、正攻法で解いたうえで別の方法による二重検算を行い、答えの一致を確認しています。図がなくても読み解けるよう、状況は文章で説明しています。
類題1(割合・濃度)
【問題】 容器Aには濃度5%の食塩水が300g、容器Bには濃度12%の食塩水が400g入っています。
(1) AとBの食塩水をすべて混ぜ合わせると、濃度は何%になりますか。
(2) (1)で作った食塩水に水を何g加えると、濃度7%になりますか。
【方針】 濃度の問題は「ふくまれる食塩の重さ」を主役にして考えるのが基本です。(1) はA・Bそれぞれの食塩の重さを出して合計し、食塩水全体の重さで割ります。(2) は、水を加えても食塩の重さは変わらないことを使い、濃度7%になるときの食塩水全体の重さから逆算します。(1)で求めた食塩の量を(2)でそのまま使う流れです。
【解答】 (1) 容器Aの食塩は 300×0.05=15(g)、容器Bの食塩は 400×0.12=48(g)。合わせると食塩は 15+48=63(g)、食塩水全体は 300+400=700(g)。濃度は 63÷700=0.09=9%。
(2) 水を加えても食塩63gは変わりません。濃度7%になったときの食塩水全体の重さを□gとすると、□×0.07=63 なので □=63÷0.07=900(g)。もとが700gだから、加える水は 900−700=200(g)。
【別解による検算】 (1) は「てんびん(面積図)」でも確かめられます。5%と12%を、量300gと400g(比3:4)で混ぜるので、混ぜた濃度は5%と12%を 4:3 に内分した位置になります。5+(12−5)×4/7=5+4=9%で一致。
(2) の答えを逆向きに確かめます。700gの食塩水(食塩63g)に水を200g加えると全体は900g。食塩は63gのままなので、濃度は 63÷900=0.07=7%。たしかに条件どおりで、200gで一致しました。
類題2(速さ・通過算)
【問題】 一定の速さで走る電車があります。この電車が、長さ300mの鉄橋を渡り始めてから渡り終えるまでに34秒かかりました。また、長さ348mのトンネルに完全にかくれている時間は20秒でした。
(1) この電車の速さは秒速何mですか。
(2) この電車の長さは何mですか。
【方針】 通過算では「電車が進んだ道のり」を、鉄橋やトンネルの長さと電車の長さで言い表すのがポイントです。鉄橋を渡り終えるまでに電車が進む道のりは「鉄橋の長さ+電車の長さ」。トンネルに完全にかくれている間に進む道のりは「トンネルの長さ−電車の長さ」。2つの式を並べ、和や差をとって速さと長さを求めます。
【解答】 電車の長さを□mとします。
・鉄橋:34秒で進む道のりは 300+□(m)。
・トンネル:20秒で進む道のりは 348−□(m)。
この2つを足すと、電車の長さ□が消えて 300+348=648(m)になり、これを 34+20=54(秒)で進んだことになります。
(1) 速さは 648÷54=秒速12m。
(2) 鉄橋の式より 300+□=12×34=408 なので、□=408−300=108(m)。
【別解による検算】 求めた「秒速12m・長さ108m」を、2つの式の差でも確かめます。鉄橋で進む道のり(300+108=408m)とトンネルで進む道のり(348−108=240m)の差は 408−240=168(m)、時間の差は 34−20=14(秒)。168÷14=秒速12mで、速さが一致します。
さらに条件に代入すると、鉄橋:408÷12=34秒、トンネル:240÷12=20秒。どちらも問題の数値どおりで、秒速12m・長さ108mで一致しました。
類題3(平面図形・面積比)
【問題】 面積が60cm²の三角形ABCがあります。辺AB上に AD:DB=2:1 となる点Dを、辺AC上に AE:EC=3:2 となる点Eをとります。
(1) 三角形ADEの面積を求めなさい。
(2) 四角形DBCEの面積を求めなさい。
【方針】 三角形ADEと三角形ABCは、頂点Aの角を共有しています。このように1つの角を共有する2つの三角形の面積比は、その角をはさむ2辺の積の比(隣辺比)で求められます。AD:AB と AE:AC の割合をかけ合わせれば、三角形ADEが三角形ABCの何倍かがわかります。(2) は全体から三角形ADEを引くだけです。
【解答】 (1) 角Aを共有するので、三角形ADEの面積は三角形ABCの (AD/AB)×(AE/AC) 倍です。AD:DB=2:1 より AD/AB=2/3、AE:EC=3:2 より AE/AC=3/5。
かけ合わせると 2/3×3/5=2/5。よって三角形ADEの面積は 60×2/5=24(cm²)。
(2) 四角形DBCEは、三角形ABCから三角形ADEを取り除いた部分なので 60−24=36(cm²)。
【別解による検算】 座標を使って確かめます。A(0,0)、B(3,0)、C(0,5)とすると、三角形ABCの面積は 3×5÷2=7.5。AD:DB=2:1 より D=(2,0)、AE:EC=3:2 より E=(0,3)。三角形ADEの面積は 2×3÷2=3。3÷7.5=0.4=2/5 なので、三角形ADEは三角形ABCの 2/5倍。60×2/5=24cm²で一致しました。四角形DBCEは 60−24=36cm²で一致します。
類題4(規則性・循環小数)
【問題】 1÷7 を小数で表すと 0.142857142857… となり、「142857」の6個の数字が同じ順にくり返されます。
(1) 小数第40位の数字は何ですか。
(2) 小数第1位から第40位までの40個の数字の和を求めなさい。
【方針】 くり返しの1周期(142857)は6個です。何番目の数字かを知りたいときは、位の番号を6で割ったあまりに注目します。あまりが1なら周期の1番目「1」、2なら「4」…、割り切れる(あまり0)なら周期の最後「7」です。(2) は「1周期分の和」を先に出しておくと、まとめて計算できます。
【解答】 1周期「142857」の数字は順に 1,4,2,8,5,7 です。
(1) 40÷6=6あまり4。あまりが4なので、小数第40位は周期の4番目の数字、すなわち8。
(2) 1周期6個の数字の和は 1+4+2+8+5+7=27。40位までには周期が6回(6×6=36位まで)ちょうど入り、その和は 27×6=162。残りは第37位から第40位の4個で、周期の1〜4番目「1,4,2,8」なので和は 1+4+2+8=15。合計は 162+15=177。
【別解による検算】 (2) を別の区切りで数え直します。第40位までを「6個ずつの周期6回(36個)+4個」ではなく、まず40個の数字を書き出したときの各数字の登場回数で計算します。第1〜40位のうち、周期が6回(36個)と、はみ出す4個「1,4,2,8」。数字1は6+1=7回、4は6+1=7回、2は6+1=7回、8は6+1=7回、5は6回、7は6回。和は (1+4+2+8)×7+(5+7)×6=15×7+12×6=105+72=177。解答と一致しました。(1)も、周期の4番目が8であることは書き出し「1,4,2,8,5,7」から直接確認でき、一致します。
類題5(場合の数)
【問題】 0,1,2,3,4,5 と書かれた6枚のカードがあります。この中から3枚を選んで並べ、3けたの整数をつくります。
(1) 3けたの整数は全部で何個できますか。
(2) そのうち、偶数は何個できますか。
【方針】 3けたの整数なので百の位に0は使えません。ここに注意して位ごとに選び方を数えます。(2) の偶数は一の位が0,2,4のいずれかである必要があります。一の位が0のときと、0でない偶数のときで場合を分けて数えるのがコツです(0を先に置くか置かないかで、百の位の選び方の個数が変わるためです)。
【解答】 (1) 百の位は0以外の5通り。十の位は、百の位で使った1枚を除く残り5枚(0を含む)から5通り。一の位は、残り4枚から4通り。よって 5×5×4=100(個)。
(2) 偶数は一の位が0,2,4のいずれか。
・一の位が0のとき:百の位は残り5枚から5通り、十の位は残り4枚から4通りで 5×4=20(個)。
・一の位が2のとき:百の位は0と2を除く4通り、十の位は残り4枚(0を含む)から4通りで 4×4=16(個)。
・一の位が4のとき:同様に 4×4=16(個)。
合計は 20+16+16=52(個)。
【別解による検算】 (2) を「全体−奇数」で確かめます。奇数は一の位が1,3,5のいずれか。一の位が1のとき、百の位は0と1を除く4通り、十の位は残り4枚から4通りで 4×4=16(個)。3のとき、5のときも同じく16個ずつなので、奇数は 16×3=48(個)。
全体100個から奇数48個を引くと 100−48=52(個)。偶数の個数が一致しました。
学習アドバイス
【時期別】
- 6年生の夏まで:計算力と各分野の標準解法を穴なく仕上げることが最優先です。割合・比・速さ・図形・数の性質・規則性・場合の数を、この時期に一通り正確にしておきましょう。算数の配点が高い学校なので、計算は毎日、時間を計って正確さを鍛えます。
- 秋(9〜11月):応用問題への対応力と、50分・100点(午後は60分・100点)という時間配分の感覚を養う時期です。過去問は公式サイトで公開されている問題・解答例や市販の問題集で演習してください。答えのみを書く問題と考え方を書かせる問題の両方に慣れ、図をかいて状況を整理する練習を意識しましょう。角度を測る道具は使えないので、図形は「性質を使って求める」練習を積みます。
- 直前期(12月〜1月):これまでの問題を反復し、精度と再現性を高める時期です。本記事の【別解による検算】のように、別のルートで自分の答えを確かめる習慣を試験運びに組み込むと、本番での取りこぼしを減らせます。とくに算数1教科の午後入試を受ける場合は、序盤〜中盤の問題を確実に取り切ることを最優先にしましょう。
【分野別】
- 割合・濃度:食塩水の問題は「食塩の重さは変わらない」を軸に考えるのが定石です(類題1)。てんびん(面積図)を併用すると検算にも役立ちます。売買損益では「仕入れ値・定価・売り値」の関係を線分図で整理しましょう。
- 速さ:通過算では「進んだ道のり=橋やトンネルの長さ±電車の長さ」の言い換えが要です(類題2)。旅人算・流水算も含め、線分図やダイヤグラムにかいて状況を整理する習慣を大切にしましょう。
- 平面図形:1つの角を共有する三角形の「隣辺比」(類題3)や、平行線がつくる相似から線分の比を求め、それを面積比につなげる発想は図形問題の強力な武器です。「高さが等しい三角形の面積比=底辺の比」を自在に使えるようにしましょう。
- 数の性質・規則性:くり返しの問題は「1周期の個数」と「あまり」に注目します(類題4)。周期の和を先に求めておくと、和の計算もまとめて処理できます。
- 場合の数:0を含むカードの並べ方は「百の位に0は使えない」ことと、条件(偶数・奇数など)による場合分けが決め手です(類題5)。数え上げたあと「全体−余事象」で検算する習慣をつけましょう。
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【補講】足すと速さ、引くと長さ
類題2は、鉄橋の式とトンネルの式を足して電車の長さを消し、速さを出しました。では引いたらどうなるのか。答えは「電車の長さだけの式になる」です。足すと速さ、引くと長さ——この役割分担が見えると、通過算の \(2\) 式は最後まで機械的に処理できます。
① なぜ片方は「+」で、もう片方は「-」なのか
電車の先頭だけを目で追います。\(4\) つの場面を分けて書くと、はっきりします。
| 場面 | そのとき先頭はどこ | 鉄橋(長さ \(L\)) | トンネル(長さ \(L\)) |
|---|---|---|---|
| 先頭が入る | 入口 | スタート | — |
| 最後尾が入る | 入口から電車の長さだけ先 | — | スタート |
| 先頭が出る | 出口 | — | ゴール |
| 最後尾が出る | 出口から電車の長さだけ先 | ゴール | — |
「渡り始めてから渡り終える」は、先頭が入口からスタートして、出口を \(x\) だけ通り過ぎるまで。進む道のりは \(L + x\)。
「完全にかくれている」は、最後尾が入口に入った瞬間から、先頭が出口に着くまで。このとき先頭は、入口から \(x\) 進んだところから出口までなので \(L – x\)。
「どちらが+でどちらが-か」を暗記しないこと。毎回先頭がどこからどこまで進むかを言葉にすれば、その場で決まります。「渡り終える」は最後尾が基準、「かくれ終わる」は先頭が基準——基準が入れかわるから、符号も入れかわります(なぜ速さ=距離÷時間なのか)。
② 足すと速さ、引くと長さ
電車の長さを \(x\)、速さを \(v\) とします。記事の \(2\) つの式はこうです。
| 進む道のり | 時間 | |
|---|---|---|
| 鉄橋 | \(300 + x\) | \(34\) 秒 |
| トンネル | \(348 – x\) | \(20\) 秒 |
足すと:\((300+x) + (348-x) = 648\)。\(x\) が消えて、\(648 \div 54 = 12\)(秒速)。引くと:\((300+x) – (348-x) = 2x – 48\)。一方この差は \(v \times (34-20) = 12 \times 14 = 168\)m。よって \(2x – 48 = 168\)、\(2x = 216\)、\(x = 108\)。
足し算では \(x\) が消え、引き算では \(x\) だけが残りました。これは和差算とまったく同じ形です(なぜ和差算では「和+差」を2で割るのか、なぜ連立方程式は文字を消去して解いてよいのか)。
記事は「足して速さ → 鉄橋の式に代入して長さ」という順でした。引き算を使えば、代入せずに長さが直接出ます。どちらでも同じ答えになるので、\(2\) 通りやれば検算になります(記事の別解も、この引き算を使って速さを確かめています)。
③ \(1\) つの電車で、時間は何通りあるか
速さ \(12\)、長さ \(108\)m と分かったので、いろいろな長さの構造物で\(2\) 種類の時間を出してみます。
| 構造物の長さ | 通過(\(L+108\)) | 完全に中(\(L-108\)) | 差 |
|---|---|---|---|
| \(0\)(人の前) | \(9\) 秒 | なし | — |
| \(100\) | \(17.33\cdots\) 秒 | なし | — |
| \(300\)(鉄橋) | \(34\) 秒 | \(16\) 秒 | \(18\) 秒 |
| \(348\)(トンネル) | \(38\) 秒 | \(20\) 秒 | \(18\) 秒 |
| \(600\) | \(59\) 秒 | \(41\) 秒 | \(18\) 秒 |
右はしの差が、どの行も \(18\) 秒で同じです。差は \((L+x) – (L-x) = 2x\) で構造物の長さによらず電車 \(2\) つ分。\(2 \times 108 \div 12 = 18\) 秒。「通過の時間と、完全に中にいる時間の差」を聞かれたら、構造物の長さを見なくても答えられます。
④ 「人の前を通過」は、長さ \(0\) の橋
③の表のいちばん上を見てください。「長さ \(0\) の構造物」を通過する時間は \(108 \div 12 = 9\) 秒。これはそのまま「線路のわきに立っている人の前を通り過ぎる時間」です。
人には長さがないので \(L = 0\)。別の公式を覚える必要はなく、\(L+x\) の式に \(0\) を入れるだけです(なぜ文字を使うと「いつでも成り立つ」ことを証明できるのか)。
| 何の前を通るか | 長さ | 通過にかかる時間 |
|---|---|---|
| 立っている人 | \(0\) | \(9\) 秒 |
| 電柱 | \(0\) | \(9\) 秒 |
| 長さ \(12\)m のホーム | \(12\) | \(10\) 秒 |
| 長さ \(108\)m の橋 | \(108\) | \(18\) 秒 |
いちばん下の行に注目します。構造物の長さが電車と同じ \(108\)m のとき、通過に \(18\) 秒。そしてこのとき「完全に中にいる時間」は \((108-108) \div 12 = 0\) 秒——一瞬だけ、ちょうどぴったり収まります。
⑤ 式が負になったら、その場面は起きない
③の表で、長さ \(100\)m の行の「完全に中」が「なし」になっています。式に入れると \(100 – 108 = -8\)。道のりが負になるのは、その場面が起きないという意味です。
| トンネルの長さ | \(L – 108\) | どうなるか |
|---|---|---|
| \(100\) | \(-8\) | 完全にはかくれない(前後がはみ出す) |
| \(108\) | \(0\) | ちょうど一瞬だけ収まる(\(0\) 秒) |
| \(120\) | \(12\) | \(1\) 秒だけ完全にかくれる |
| \(348\) | \(240\) | \(20\) 秒(記事の条件) |
「トンネルより電車のほうが長い」ときは、問題文が成り立ちません。答えを出したあと、\(L – x\) が正かどうかを見るだけで、設定に無理がないかを確かめられます(検算のしかた7つ|答えを出したあと30秒で間違いを見つける技術)。
逆に言えば、問題を作る側は「トンネルは電車より長く」しなければなりません。記事の設定は電車 \(108\)m にトンネル \(348\)m なので、余裕があります。数を変えて自作の問題を作るときは、ここを必ず確かめてください。「\(20\) 秒かくれた」と書いたのに、計算すると電車のほうが長かった——という自作問題は、意外とよく生まれます。
⑥ 時間の比から、長さの比が読める
おまけをひとつ。記事の \(2\) つの時間 \(34\) 秒と \(20\) 秒の比は \(17:10\)。速さが同じなので、時間の比はそのまま道のりの比です(なぜ比は同じ数を掛けても変わらないのか)。
\((300+x) : (348-x) = 17 : 10\)
内側と外側をかけて \(10(300+x) = 17(348-x)\)、\(3000 + 10x = 5916 – 17x\)、\(27x = 2916\)、\(x = 108\)。速さを求めずに、いきなり長さが出ました。
これで長さの出し方は \(3\) 通りになりました。②の引き算、記事の代入、⑥の比。どれでも \(108\)m。\(3\) 通りとも同じ数になれば、まず安心してよい状態です(なぜ反比例ではxyが一定になるのか)。
数強塾オリジナル類題(4問)
すべて当塾で作成し、答えは「足して速さ・引いて長さ」と、求めた値を条件に代入し直す方法の両方で照合してあります。電車の速さはどれも一定とします。
類題1 同じ電車で長いトンネルを
記事の電車(秒速 \(12\)m、長さ \(108\)m)が、長さ \(600\)m のトンネルを通ります。(1) 入り始めてから完全に出るまで何秒かかりますか。(2) 完全にかくれている時間は何秒ですか。(3) (1)と(2)の差を求め、③の値と合うか確かめなさい。
答え
(1) \((600+108) \div 12 = 708 \div 12 = \mathbf{59}\) 秒。(2) \((600-108) \div 12 = 492 \div 12 = \mathbf{41}\) 秒。(3) \(59 – 41 = \mathbf{18}\) 秒。③の「電車 \(2\) つ分 \(= 216 \div 12 = 18\) 秒」と一致します。
(3)はトンネルの長さを使わずに出せるのがポイントです。\(600\) でも \(348\) でも \(1000\) でも、差はいつも \(18\) 秒。「差だけ聞かれたら、構造物の長さは読まなくてよい」と分かっていると、時間が短い試験で効きます。
類題2 数を変えて、速さと長さを求める
ある電車が、長さ \(480\)m の鉄橋を渡り始めてから渡り終えるまでに \(40\) 秒、長さ \(600\)m のトンネルに完全にかくれている時間が \(32\) 秒でした。(1) 電車の速さを求めなさい。(2) 電車の長さを、②の引き算で求めなさい。(3) 答えを \(2\) つの条件に代入して確かめなさい。
答え
(1) 足すと \(480 + 600 = 1080\)(m)を \(40 + 32 = 72\) 秒で進むので\(1080 \div 72 = \mathbf{15}\)(秒速 \(15\)m)。(2) 引くと \((480+x) – (600-x) = 2x – 120\)。一方これは \(15 \times (40-32) = 120\)m。\(2x – 120 = 120\) より \(2x = 240\)、\(x = 120\)(m)。(3) 鉄橋 \((480+120) \div 15 = 40\) 秒 ○、トンネル \((600-120) \div 15 = 32\) 秒 ○。どちらも条件どおり。
(2)で \(2x – 120\) の \(120\) は \(600-480\) です。記事では \(348-300 = 48\) でした。「引くと \(2x -\)(構造物の長さの差)が残る」と形で覚えておくと、数が変わっても迷いません。また \(600 > 120\) なので、トンネルに完全にかくれる設定にも無理がありません。
類題3 長さ \(0\) の橋を渡る
記事の電車(秒速 \(12\)m、長さ \(108\)m)について。(1) 線路のわきに立っている人の前を通り過ぎるのに何秒かかりますか。(2) 長さ \(12\)m のホームを通過するのに何秒かかりますか。(3) 長さ \(108\)m の橋の上に、電車が完全にのっている時間は何秒ですか。
答え
(1) 人は長さ \(0\) なので \((0+108) \div 12 = \mathbf{9}\) 秒。(2) \((12+108) \div 12 = \mathbf{10}\) 秒。(3) \((108-108) \div 12 = \mathbf{0}\) 秒。一瞬だけぴったり収まりますが、時間の長さは \(0\) です。
(1)は「電車の長さ \(\div\) 速さ」という別公式のように見えますが、\(L+x\) に \(L=0\) を入れただけです。(3)は⑤の境目そのもの。橋が \(108\)m より少しでも短ければ、電車は完全にはのりません。たとえば \(100\)m の橋なら、必ず前か後ろがはみ出しています。
類題4 比で長さを直接出す
類題2の電車(鉄橋 \(480\)m に \(40\) 秒、トンネル \(600\)m に完全に \(32\) 秒)について、速さを求めずに長さを出します。(1) \(2\) つの時間の比を、もっとも簡単な整数の比にしなさい。(2) その比を使って電車の長さを求めなさい。(3) (2)の答えが類題2と合うか確かめなさい。
答え
(1) \(40 : 32 = \mathbf{5:4}\)。(2) 速さが同じなので、道のりの比も \(5:4\)。\((480+x) : (600-x) = 5 : 4\) より \(4(480+x) = 5(600-x)\)。\(1920 + 4x = 3000 – 5x\)、\(9x = 1080\)、\(x = 120\)。(3) 類題2の \(120\)m と一致します。
速さを一度も使っていないのが(2)のよさです。同じ速さで進むなら、時間の比はそのまま道のりの比。これで長さの出し方が \(3\) 通りになりました——②の引き算、代入、⑥の比。記事の \(108\)m も、この \(3\) 通りすべてで確かめてあります。
\(4\) 問に共通するのは、先頭がどこからどこまで進むかを言葉にすることです。そこさえ決まれば \(L+x\) か \(L-x\) かは自動的に決まり、足せば速さ、引けば長さが出ます。公式を \(4\) つ覚えるのではなく、\(1\) つの図から \(4\) つの場面を読み分けるほうが確実です。
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