フェリス女学院の高校1年生には、夏休みの課題として問題冊子が配られます。その中でとくに手が止まりやすいのが、「軸が動く」タイプの2次関数の最大・最小です。文字 が入っただけで、急に何をすればいいのか分からなくなる——毎年、夏の終わりに同じ相談を受けます。
結論から言うと、この型は覚える公式が1つもありません。必要なのは「グラフのどこを見ているか」を意識することだけです。この記事では、答えを出すまでの1手1手について、そのとき頭の中でグラフがどう動いているかを図で示しながら進めます。答えを写して終わらせるのではなく、9月以降ずっと使える形で持って帰ってください。
この記事で扱う「型」
軸が動く型=定義域は固定されているのに、 以外の係数に文字が入っていて軸の位置だけが動くタイプ。フェリスの夏課題、2学期の定期テスト、そして共通テストまで、繰り返し出続けます。
1.この記事で解く問題
【例題】軸が動く2次関数の最大・最小
2次関数 ()について、
(1) 最小値 を を用いて表せ。
(2) がすべての実数値をとって変化するとき、 の最大値を求めよ。
【答えだけ先に】
(1) のとき 、 のとき 、 のとき
(2) の最大値は ( のとき)
※ここで答え合わせを終えると、この問題から得られるものはゼロになります。以下、なぜ3つに分かれるのかを見ていきます。
2.準備:平方完成は「軸からの距離」への翻訳
まず、この型を解くための唯一の道具を確認します。平方完成した形
y = a ×(軸からの距離)2 +(頂点の高さ)
は、「 の値は、 が軸からどれだけ離れているかだけで決まる」と言っています。だから下に凸( の係数が正)なら、軸に近いほど低く、遠いほど高い。この一行に、これから使う判断がすべて入っています。
今回の関数を平方完成しましょう。 の係数は 、その半分は です。
頂点は 、軸は 。 の係数は なので下に凸です。ここで大事なのは、軸の位置が そのものになっているという点です。 を動かすと、放物線は形を変えずに左右へスライドします。一方、見なければいけない範囲は に固定されたままです。
場合分けが起きる理由
動く軸()と、動かない窓()。軸が窓の中にあるか、左に外れているか、右に外れているかで、一番低い場所が変わってしまう。だから3つに分けます。「なんとなく3つ」ではありません。
3.例題(1)|窓の外に軸が出たら、頂点は使えない
【問題(再掲)】
()の最小値 を で表せ。
次の3枚の絵を、順番に頭の中で作ってください。青い帯が「見なければいけない範囲」、点線が軸です。
図1:左=軸が範囲の左に外れた場合()。中=軸が範囲の中にある場合()。右=軸が範囲の右に外れた場合()。●が最小値をとる点。
(i) のとき(軸が左に外れている)
軸が範囲より左にあるので、 の部分は右上がりの坂の途中だけを切り取った形になります。坂を左から右へ登っていく形なので、一番低いのは左端 。
【なぜこうするか】ここで頂点の を答えにしてしまうミスが非常に多い。頂点は範囲の外にあるので、そもそもグラフとして存在していない場所です。窓の外の景色は見えません。
(ii) のとき(軸が範囲の中)
軸が窓の中に入っているので、一番低い点=頂点がそのまま見えています。
(iii) のとき(軸が右に外れている)
今度は範囲全体が、頂点より左の下り坂の部分にあります。左から右へ下っていくので、一番低いのは右端 。
【答】
のとき
のとき
のとき
【検算】境目で値がつながるかを必ず見ます。:(i)は 、(ii)は 。:(ii)は 、(iii)は 。どちらの境目でもぴったり一致しました。ここがずれていたら、どこかで計算を間違えています。この検算は30秒でできて、失点を確実に減らします。
4.例題(2)|答えが「関数」になったら、もう一度グラフにする
【問題(再掲)】
が変化するとき、(1)で求めた の最大値を求めよ。
(1)の答えをよく見てください。 は が決まるたびに値が決まる量、つまり の関数です。3つの式に分かれてはいますが、1本のグラフとして描けます。
図2:横軸を 、縦軸を にして描いた「最小値のグラフ」。 では水平、 では上に凸の放物線、 では右下がりの直線。3本がなめらかにつながっている。
この絵があれば、答えは見るだけです。
| の範囲 | の式 | そこでの の動き |
|---|---|---|
| ずっと のまま(一定) | ||
| で 、そこから下がって で | ||
| からさらに下がり続ける |
どこまで大きくなれるかを見ると、天井は 。それを超える場面はありません。
【答】
の最大値は ( のとき)
【本質】この問題は「最小値の最大値」を聞いています。日本語だけ見ると混乱しますが、やっていることは単純で、「答えが文字の式になったら、それをもう一度グラフにする」だけ。大学入試ではこの二段構えが頻出で、そこで初めて出会うと必ず時間を取られます。高1の夏にこの形を1回通しておく価値は、そこにあります。
5.最大値は「中点」で決まる(一緒に押さえる)
最小値ができたら、同じ問題で最大値も出せるようにしておきましょう。ここには別の判断基準が登場します。
【確認問題】
()の最大値 を で場合分けして求めよ。
下に凸のグラフでは、最大値は軸から遠いほうの端でとります。端は と の2つ。どちらが軸 から遠いかは、2つの端のちょうど真ん中=と軸を比べれば決まります。
最小値と最大値で、見る場所が違う
・最小値を決めるのは「軸が範囲の中か外か」(頂点が使えるかどうか)
・最大値を決めるのは「軸が範囲の中点より左か右か」(どちらの端が遠いか)
【解答】
・ のとき:軸が中点より左 → 遠い端は →
・ のとき:軸が中点より右 → 遠い端は →
・ のとき:両端が同じ距離 → ( で一致)
まとめると、 のとき 、 のとき 。境目 で値が一致しているので、どちらに を付けても正解になります。
6.この型でよく落とす3か所
ミス1 軸が範囲の外なのに頂点の値を答える
頂点は「グラフの一番低い点」ですが、範囲外の頂点は答えになりません。まず軸の位置を数直線に書いてから式を書く癖をつける。
ミス2 場合分けの境目を書き忘れる/二重に数える
、、 のように、すべての が必ずどれか1つに入るように分ける。境目の値が両方に入っていても、値が一致していれば減点されませんが、抜けていると失点します。
ミス3 最大値でも「軸が中か外か」で分けてしまう
最大値の分かれ目は中点です。最小値の判断基準をそのまま流用すると、必ず間違えます。
7.フェリスの高1へ:この1問が入試までつながっている
フェリス女学院は中高一貫で数学を先に進めていくため、高1の夏に扱う内容が、そのまま大学入試の答案で問われます。「軸が動く最大・最小」は、共通テストでも国公立2次でも私大でも、形を変えて出続ける最重要テーマの1つです。
だから、夏の課題冊子の使い方を変えてほしいのです。丸をつけて終わりにするのではなく、次の3つを自分に聞いてください。
答えが合っていても、ここで止まったら「まだ理解していない」
- なぜ3つに場合分けしたのか、グラフの絵で説明できるか
- 境目の値が一致するか、自分で検算したか
- 最大値のときに見る場所が変わる理由を言えるか
8.「聞ける相手がいない」だけで止まっているなら
ここまで読んで理屈はつかめても、冊子の残りを一人で進めるのはまた別の話です。分からない1問の前で30分止まる——それが夏休みでいちばん失われやすい時間です。
学校の友だちには聞きにくい。塾に行けば知っている子に会うかもしれない。そういう理由で聞けないまま9月を迎える人を、私は毎年見てきました。
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- 誰にも会いません。校舎に通わないので、同じ学校の友だちや先輩に見られる心配がありません。
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- プロ講師だけが教えます。学生アルバイトは在籍していません。フェリスの進度・教材に合わせて指導します。
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体験授業は有料3,000円(税込)です。その1回で、実際に手が止まっている問題を一緒に解きます。
9.よくある質問
Q. 場合分けは、いくつに分ければ正解ですか?
A. 数は決まっていません。「グラフの見え方が変わる境目」の数だけ分かれます。今回は軸が範囲の左・中・右の3通りなので3つ。範囲の端が動く問題なら、また別の数になります。
Q. 境目の値( など)は、どちらの場合に入れればいいですか?
A. どちらでも構いません。ただし境目で両方の式の値が一致することを確認してください。一致していれば、 をどちらに付けても答えは同じです。
Q. 「最小値の最大値」がどうしても飲み込めません。
A. 2段階に分けて考えてください。まず を1つ固定すると、グラフが1本決まり、その中での最小値が1つ決まります。次に を動かすと、その最小値が動きます。1段目は の話、2段目は の話で、見ているグラフが別物です。
Q. 夏休みの残りが少ないのですが、今からでも間に合いますか?
A. 間に合います。冊子が途中で止まっている段階のほうが、原因を特定して立て直しやすいです。オンラインなので申し込みからすぐ開始できます。
10.関連ページ
次のステップ(発展編)
2次関数の最大・最小【発展編】|2変数・最大値と最小値の差・絶対値つきを本質から解く
基本型を終えた人へ。1文字消去で変域を引き継ぐ2変数の問題、最大値と最小値の差から係数を逆算する4区間の場合分け、絶対値つきの折り返しと解の個数まで、入試レベルの考え方を図解しています。

