フェリス女学院中学校 2021年度 算数の傾向と対策【数強塾オリジナル類題つき】
2021年度 フェリス女学院中 算数の概要(公開情報より)
- フェリスの算数は試験時間50分・100点満点。問題用紙の空欄に式や考え方ごと書きこむ記述形式で、単位も自分で書く必要があるとされています。
- 大問5題・総設問数15問前後の構成が近年の定番とされ、第1問が計算と小問集合、第2問以降が応用問題という組み立てが多いと紹介されています。
- 2021年度は本校としては取り組みやすい問題が多く、受験者平均点は57点(100点満点)まで上昇したと伝えられています(合格者平均点・合格最低点は非公表とされています)。
- 過去問データベース等の公開情報では、2021年度に「数の性質(分数・約分・素因数分解)」や「小数と分数の混合計算」の出題が確認できます。
- 例年の頻出分野としては、平面図形(角度・面積の和や差・三角定規の性質)、速さ、割合などが挙げられています。
※以下の解説はオンライン数学専門塾「数強塾」による独自作成です(全問、受験算数の正攻法と別解による二重検算済み)。本ページの類題はすべて数強塾のオリジナル問題です。実際の入試問題はフェリス女学院中学校の公式サイトでご確認ください。
2021年度のフェリスは、受験者平均点が57点まで上がったと伝えられる「取り組みやすい年」でした。こうした年に合否を分けるのは、難問への対応力よりも標準問題をノーミスで取りきる精度です。平均点が上がる年は1問の失点の重みが増すため、計算の正確さ、条件の読み落としのなさ、そして検算の習慣がそのまま合格可能性に直結します。また、フェリスは式や考え方を書かせる学校なので、「答えは合っているのに書き方で損をする」ことのない答案作りも欠かせません。ここでは、フェリス対策として鍛えておきたい分野から数強塾が自作した5つのオリジナル類題に挑戦しましょう。なお、2025年度版では「数の性質・平面図形と比・旅人算・ニュートン算・規則性」を、2024年度版では「時計算・場合の数・水そう・図形の移動・食塩水」を、2023年度版では「つるかめ算・立体図形・売買算・約束記号・論理推理」を、2022年度版では「仕事算・流水算・求積・日暦算・道順」を扱ったので、本ページではそれらと重ならない5分野(植木算と等差数列・相当算・角度・濃度のてんびん法・過不足算)を取り上げます。
類題1(植木算と等差数列)
問題(数強塾オリジナル):まっすぐな道の片側に、道のはしからはしまで木を等間隔に植えます。間隔を6mにして植えると、間隔を8mにして植えるときよりも木が9本多く必要になります。
(1) この道の長さは何mですか。
(2) 間隔を6mにして植えるとき、植える費用は1本目が500円で、2本目からは1本ごとに前の木より20円ずつ高くなります。木を全部植えるのにかかる費用は合わせて何円ですか。
【📖大切な考え方】植木算の基本は「両はしに植えるとき、木の本数=間の数+1」。本数どうしを直接比べるのは難しくても、どちらの植え方でも「+1」は共通なので、本数の差はそのまま「間の数の差」になります。
【👀ここに注目】道の長さを、6と8の最小公倍数である24mごとのまとまりで考えてみましょう。24mの中に、6m間隔なら間が4つ、8m間隔なら間が3つ。つまり24mごとに間の数の差が1つずつ生まれるのです。
方針:本数の差9本=間の数の差9個 → 24mごとに差が1個 → 道の長さが求まる。(2)は等差数列の和の公式を使います。
解答
(1) 両はしに植えるので、どちらの植え方でも「本数=間の数+1」。本数の差が9本だから、間の数の差も9個。
道の長さ24mごとに、6m間隔の間は4つ、8m間隔の間は3つできるので、差が1つ生まれる。
差が9つになるのは 24 × 9 = 216m。
(確かめ:216 ÷ 6 + 1 = 37本、216 ÷ 8 + 1 = 28本で、差は 37 − 28 = 9本。)
(2) (1)より木は37本。費用は 500円、520円、540円、… と20円ずつ増える等差数列で、
37本目の費用は 500 + 20 × (37 − 1) = 500 + 720 = 1220円。
等差数列の和は「(はじめの数+終わりの数)× 個数 ÷ 2」だから、
(500 + 1220) × 37 ÷ 2 = 1720 × 37 ÷ 2 = 860 × 37 = 31820円。
【✅検算】道の長さを□mとして □ ÷ 6 − □ ÷ 8 = 9 を解く別解でも、□ ÷ 24 = 9 から □ = 216 で一致。費用も、500から1220まで20円きざみの37個をコンピュータ的に1つずつ全部たし上げると31820円になり、公式の結果と一致します。
【💡ポイントコラム】植木算は「木」の問題に見えて、本当の主役は「間」。両はし(+1)、片はしだけ(そのまま)、池のまわり(間=本数)の3パターンを、丸暗記ではなく図をかいて確かめられるようにしておくと、電柱・くい・テープのつなぎ目など、どんな着せかえ問題にも対応できます。
類題2(相当算)
問題(数強塾オリジナル):ある本を、1日目に全体の4分の1より10ページ多く読み、2日目に残りの5分の2より6ページ少なく読んだところ、90ページ残りました。この本は全部で何ページありますか。
【📖大切な考え方】相当算は「もとにする量 × 割合 = くらべる量」の関係を、最後の場面からさかのぼって使うのが定石。「〜より10ページ多い」「〜より6ページ少ない」のような端数は、先に足し引きして「ちょうど何分のいくつ」の形に整えてから割合の計算をします。
【👀ここに注目】1日目の「全体の4分の1」と2日目の「残りの5分の2」は、もとにする量がちがいます。全体を①とする比と、1日目の残りを①とする比を混ぜないよう、線分図を2段に分けてかくのが安全です。
方針:2日目の場面から逆算して「1日目の残り」を求め、次に1日目の場面から逆算して全体を求めます。
解答
まず2日目。1日目の残りを[1]とすると、2日目に読んだ量は[5分の2]− 6ページだから、2日目のあとに残るのは
[1]−([5分の2]− 6ページ)=[5分の3]+ 6ページ。
これが90ページなので、[5分の3]= 90 − 6 = 84ページ。
よって1日目の残り[1]は 84 ÷ 3 × 5 = 140ページ。
次に1日目。全体を〈1〉とすると、1日目に読んだのは〈4分の1〉+ 10ページだから、残りは
〈4分の3〉− 10ページ = 140ページ。
よって〈4分の3〉= 140 + 10 = 150ページ。
全体〈1〉は 150 ÷ 3 × 4 = 200ページ。
【✅検算】200ページで最初から順にたどると、1日目は 200 × 4分の1 + 10 = 60ページ読んで残り140ページ。2日目は 140 × 5分の2 − 6 = 50ページ読んで残り 140 − 50 = 90ページ。問題の条件とぴったり一致。(全体を□ページとおいて方程式で解く別解、および1〜2000ページを全部ためす全探索でも□=200だけが条件に合い、一致)
【💡ポイントコラム】相当算のミスの大半は「もとにする量のすり替え」に気づかないこと。「残りの5分の2」と出てきたら、線分図の2段目を新しくかき始める——この習慣だけで正答率は大きく変わります。フェリスのように考え方を書かせる学校では、線分図そのものが得点力のある答案になります。
類題3(角度・正五角形と対角線)
問題(数強塾オリジナル):正五角形ABCDEがあります。
(1) 対角線ACと対角線BDの交わる点をPとするとき、角APBの大きさを求めなさい。
(2) 正五角形の5本の対角線をすべてひくと、内側に星形(星形五角形)ができます。星の5つの先端の角の大きさの和を求めなさい。
(図は数強塾作成のイメージ図です)
【📖大切な考え方】正五角形の内角は 540 ÷ 5 = 108度。対角線をひいてできる三角形は、正五角形の辺どうしが等しいことから二等辺三角形だらけになります。「二等辺三角形を見つけて底角を求める」をくり返すのが正多角形の角度問題の王道です。
【👀ここに注目】(2)で5つの先端の角を1つずつ求めてたすのは、じつは遠回り。三角形の外角の定理(外角=となり合わない2つの内角の和)を使うと、5つの角を1つの三角形に集められます。1つずつ求める方法と両方で解いて、答えが合うことを確かめましょう。
方針:(1)は二等辺三角形の底角から三角形ABPの内角をそろえる。(2)は先端の角を計算で求める方法と、外角の定理で集める方法の2通り。
解答
(1) 三角形ABCは AB = BC の二等辺三角形で、角ABC = 108度だから、
角BAC = 角BCA = (180 − 108) ÷ 2 = 36度。
同じように三角形BCDでも 角CBD = 36度なので、
角ABD = 角ABC − 角CBD = 108 − 36 = 72度。
三角形ABPの内角の和より、
角APB = 180 − 角PAB − 角ABP = 180 − 36 − 72 = 72度。
(2) 先端Aの角は、角EAB = 108度から両わきの 角BAC = 36度と 角DAE = 36度を引いて、
角CAD = 108 − 36 − 36 = 36度。
正五角形の対称性から、5つの先端の角はすべて36度なので、和は 36 × 5 = 180度。
【✅検算】(1)は、正五角形の頂点の位置を座標で決めて対角線の交わる角度を計算する別解でも72.0度となり一致。(2)は外角の定理を使う別解——星の先端の角2つ分が、対角線どうしの作る三角形の外角1つに集まることを利用して、1つの三角形の内角の和180度に5つの角がちょうど集められる——でも180度となり、36 × 5の計算と一致します。
【💡ポイントコラム】「36度・72度・108度」は正五角形ファミリーの角度3兄弟。この3つの数がお互いに 36 + 72 = 108、72 × 2 − 36 = 108 のようにつながっていることを知っていると、正五角形がらみの角度問題は初見でも見通しが立ちます。フェリスで挙げられることの多い「三角定規の30・45・60・90度」とあわせて、特別な角度のセットとして頭に入れておきましょう。
類題4(濃度・てんびん法)
問題(数強塾オリジナル):
(1) 濃度4%の食塩水と濃度9%の食塩水を混ぜて、濃度6%の食塩水を600g作ります。それぞれ何gずつ混ぜればよいですか。
(2) (1)でできた6%の食塩水600gに、さらに9%の食塩水を加えて濃度7%の食塩水にします。9%の食塩水を何g加えればよいですか。
(図は数強塾作成のイメージ図です)
【📖大切な考え方】食塩水を混ぜる問題は、てんびん法(うでの長さとおもりのつり合い)で整理すると速く正確です。うでの長さ=濃度の差、おもりの重さ=食塩水の重さで、「うでの長さの比」と「おもりの重さの比」は逆比になります。
【👀ここに注目】(1)のうでの長さは、6 − 4 = 2 と 9 − 6 = 3 で比は2:3。だからおもり(食塩水の重さ)の比はその逆比の3:2。「薄いほうをたくさん入れるのに、なぜか薄いほうのうでは短い」——この逆転を体で覚えるのがてんびん法マスターへの道です。
方針:(1)は逆比で600gを比例配分。(2)も同じてんびんで、支点を7%に移して考えます。
解答
(1) うでの長さの比は (6 − 4):(9 − 6) = 2:3。
おもり(重さ)の比はその逆比で 3:2。
合わせて600gだから、4%の食塩水は 600 × 5分の3 = 360g、9%の食塩水は 600 × 5分の2 = 240g。
(2) 6%と9%を混ぜて7%にするので、うでの長さの比は (7 − 6):(9 − 7) = 1:2。
おもりの比はその逆比で 2:1。
6%の食塩水が600gだから、9%の食塩水は 600 × 2分の1 = 300g。
【✅検算】食塩の重さで確かめます。(1) 360gの4%には 360 × 0.04 = 14.4g、240gの9%には 240 × 0.09 = 21.6g の食塩が入っていて、合計 36g。600gに対して 36 ÷ 600 = 0.06 = 6%で一致。(2) 6%600gの食塩36gに、9%300gの食塩 27g を加えると 63g。全体は 600 + 300 = 900gで、63 ÷ 900 = 0.07 = 7%で一致。(加える量を□gとして食塩の重さの方程式 36 + 0.09 × □ = 0.07 × (600 + □) を解く別解でも□=300で一致)
【💡ポイントコラム】てんびん法は「速い」だけでなく「検算しやすい」のが本当の強み。てんびんで出した答えを、食塩の重さの合計で確かめる——この往復をセットにすれば、濃度問題での失点はほぼ防げます。記述式のフェリス型答案では、てんびん図をかいたうえで食塩の重さの式を添えると、考え方が採点者に伝わりやすくなります。
類題5(過不足算)
問題(数強塾オリジナル):あめを何人かの子どもに配ります。1人に7個ずつ配ると15個足りず、1人に5個ずつ配ると13個余ります。子どもの人数とあめの個数を求めなさい。
【📖大切な考え方】過不足算は「配り方を変えたときの、必要な個数の差」に注目します。1人あたり 7 − 5 = 2個ずつ多く配ると、全体では「15個足りない」と「13個余る」の間の開き、つまり 15 + 13 = 28個だけ多く必要になります。
【👀ここに注目】「足りない」と「余る」が両方出てきたら、差は引き算ではなくたし算。数直線で「持っているあめの個数」を真ん中にかくと、必要量が上に15、下に13ずれている——差が28になる理由が目で見てわかります。
方針:全体の差28個 ÷ 1人あたりの差2個 = 人数。人数が出たら、余りのほうの式であめの個数を求めます。
解答
1人あたりの差は 7 − 5 = 2個。
全体で必要な個数の差は 15 + 13 = 28個。
よって子どもの人数は 28 ÷ 2 = 14人。
あめの個数は、5個ずつ配ると13個余ることから、
5 × 14 + 13 = 70 + 13 = 83個。
【✅検算】7個ずつ配るには 7 × 14 = 98個必要で、83個しかないから 98 − 83 = 15個足りない——問題の条件と一致。(人数を□人として 7 × □ − 15 = 5 × □ + 13 を解く方程式の別解でも□=14、あめ83個で一致。1〜1000人を全部ためす全探索でも条件に合うのはこの組だけ)
【💡ポイントコラム】過不足算は「不足と不足」「余りと余り」の組み合わせなら差は引き算、「不足と余り」ならたし算。丸暗記ではなく、毎回数直線をかいて確かめる習慣にしておくと、長いす問題(1脚に座る人数を変える)や部屋割り問題への応用でも迷いません。
2021年度から学ぶフェリス算数の教訓
2021年度は受験者平均点が57点まで上がったと伝えられる、フェリスとしては取り組みやすいセットの年でした。こうした年は「難問で差をつける」のではなく「標準問題を落とした人から順に不利になる」試験になりがちです。易化の年に強いのは、①計算・条件読み取り・単位の3点でミスをしない基本動作が身についている子、②植木算・相当算・過不足算のような典型分野を、根拠から説明しながら解ける子、③検算を答案の中に組みこんで、取った点を絶対に失わない子です。翌2022年度は一転して難化したと伝えられており、フェリス対策では「易しい年はノーミス、難しい年は取捨選択」という2つの顔をもつ準備が求められます。日々の学習では「解けた問題こそ、別の解き方でもう一度解く」習慣が、そのどちらにも効く土台になります。
▶ 関連:フェリス女学院 算数 過去問の傾向と対策(年度一覧)|2022年度 算数の傾向|フェリス女学院の数学カリキュラム解説(中高)
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本ページが扱う入試問題の著作権は フェリス女学院中学校 に帰属します。出典:フェリス女学院中学校 2021年度 入学試験問題「算数」。
掲載しているのは、受験生の学習支援を目的として数強塾が独自に作成した解答・解説です。学校が公表した公式解答ではありません(一般的な解答例と照合した場合は本文中にその旨を明記しています)。問題文の引用は解法の説明に必要な最小限にとどめています。
掲載内容について権利者の方からご連絡がある場合は、お問い合わせより速やかに対応いたします。
【補講】星の先端の和が \(180^\circ\) になるのは、なぞると \(2\) 周するから
類題3(2)で、星形五角形の \(5\) つの先端の角の和を求めました。正五角形からは各先端が \(36^\circ\) と分かるので、\(36 \times 5 = 180^\circ\) です。ただし、これが \(180^\circ\) というきりのよい数になるのは、正五角形だからではありません。どんな五角形から作った星でも、先端の和は必ず \(180^\circ\) になります。その理由を書いておきます。
① 多角形を \(1\) 周すると、向きは \(1\) 回転する
まず土台になる事実を確認します。多角形の辺にそって \(1\) 周歩くと、角のたびに外角のぶんだけ向きを変え、出発点に戻ったとき体の向きは最初と同じになります。つまり向きの変化を全部足すと、ちょうど \(1\) 回転。
(外角の和)\(=\) \(1\) 回転 \(=\) \(360^\circ\)
角の数は関係ありません。三角形でも百角形でも \(360^\circ\) です。この事実はなぜ多角形の外角の和は必ず360°になるのかで詳しく扱っています。
② 星形をなぞると、\(2\) 周する
ここが今回の要です。星形五角形の \(5\) 本の線を、先端から先端へペンを止めずになぞってみてください。\(1\) つおきに頂点を結んでいくので、出発点に戻るまでに中心のまわりを \(2\) 周します。
| ふつうの五角形 | 星形五角形 | |
|---|---|---|
| 結び方 | となりの頂点へ | \(1\) つ飛ばして向こうの頂点へ |
| 出発点に戻るまでの周回数 | \(1\) 周 | \(2\) 周 |
| 向きの変化の合計 | \(360^\circ\) | \(720^\circ\) |
「\(2\) 周する」というのが実感しにくければ、星を一筆書きするときに自分がどれだけ回るかを体で考えてみてください。先端に来るたびに大きく向きを変えるので、\(5\) 回で \(2\) 回転ぶん回ります。
③ 式にすると \(180^\circ\) が出る
\(5\) つの先端の角を \(\alpha_1,\; \alpha_2,\; \ldots,\; \alpha_5\) とします。各先端での向きの変化は \(180^\circ – \alpha_i\)。それを \(5\) つ足すと \(720^\circ\) になるので
\((180^\circ – \alpha_1) + \cdots + (180^\circ – \alpha_5) = 720^\circ\)
\(900^\circ – (\alpha_1 + \cdots + \alpha_5) = 720^\circ\)
\(\alpha_1 + \cdots + \alpha_5 = 180^\circ\)
正五角形という条件はどこにも使っていません。使ったのは「\(5\) つの先端がある」ことと「\(2\) 周する」ことだけです。
正五角形の場合は、各先端が等しく \(36^\circ\) になります。\(180 \div 5 = 36\)。合計が先に決まっていて、対称だから \(5\) 等分されるという順序です。類題3(1)で角 \(APB\) を求めるときに使った二等辺三角形の性質はなぜ二等辺三角形の底角は等しいのかにまとめました。
④ 正五角形でなくても成り立つ
③の議論に正五角形は出てきませんでした。本当にそうなのか、当塾で確かめました。
| 五角形の作り方 | 先端の角の和 |
|---|---|
| 正五角形 | \(180.000000^\circ\) |
| 円周上に \(5\) 点をでたらめに取ったもの(\(4\) 例) | すべて \(180.000000^\circ\) |
| 円に内接しない、でたらめな凸五角形(\(5\) 例) | すべて \(180.000000^\circ\) |
形をどれだけ崩しても \(180^\circ\) のままです。先端の角は \(1\) つずつ大きく変わっているのに、足すと必ず同じ値に戻る——これが「\(2\) 周する」という構造から来ています。
なお、円に内接する場合は別の説明もできます。各先端の角は向かい側の弧に対する円周角になっていて、\(5\) つの弧を合わせると円 \(1\) 周ぶん。円周角は中心角の半分なので \(360^\circ \div 2 = 180^\circ\)。同じ答えに、まったく別の道から着きます。円周角の性質は体系数学2 幾何編 第3章 円 章末テスト20題+オリジナル類題20題|円周角・接弦定理・方べきの定理までにまとめてあります。
⑤ 七角形の星なら、いくつになるか
同じ考え方で、頂点の数と飛ばし方を変えられます。\(n\) 個の頂点を \(k\) 個ずつ飛ばして結ぶ星形を考えると、出発点に戻るまでに \(k\) 周します。すると③と同じ計算で
\(180^\circ \times n – (\text{先端の和}) = 360^\circ \times k\)
(先端の和)\(= 180^\circ (n – 2k)\)
五角形の星は \(n=5,\; k=2\) なので \(180(5-4) = 180^\circ\)。たしかに合っています。ほかの場合も並べてみます。
| 星の形 | \(n\) | \(k\) | 周回数 | 先端の和 |
|---|---|---|---|---|
| 五角形の星 | \(5\) | \(2\) | \(2\) 周 | \(180^\circ\) |
| 七角形の星(\(2\) つ飛ばし) | \(7\) | \(2\) | \(2\) 周 | \(540^\circ\) |
| 七角形の星(\(3\) つ飛ばし) | \(7\) | \(3\) | \(3\) 周 | \(180^\circ\) |
| 八角形の星(\(3\) つ飛ばし) | \(8\) | \(3\) | \(3\) 周 | \(360^\circ\) |
| 九角形の星(\(4\) つ飛ばし) | \(9\) | \(4\) | \(4\) 周 | \(180^\circ\) |
当塾で、実際に正七角形の頂点から \(2\) つ飛ばし・\(3\) つ飛ばしの星を作って角を測ったところ、\(540.0000^\circ\) と \(180.0000^\circ\) となり、式と一致しました。
表を見ると、\(n = 2k+1\) のときに \(180^\circ\) になると分かります。\((5,2)\)、\((7,3)\)、\((9,4)\)——「頂点の数が、飛ばし方のちょうど \(2\) 倍より \(1\) だけ多い」とき、つまりいちばん細い星のときです。
\(180(n-2k)\) という式は、\(k=1\)(飛ばさずに結ぶ、ふつうの多角形)を入れると \(180(n-2)\) になります。これは多角形の内角の和の公式そのものです。星形の話と、教科書で習う \(180 \times (n-2)\) が、\(1\) つの式の中に同居している。ふつうの多角形は「\(1\) 周する星」だったと見ることもできます。
⑥ 一筆書きにならない場合
この見方には、注意すべき場合があります。
| 状況 | 一筆書きになるか | \(180(n-2k)\) は使えるか |
|---|---|---|
| \(n\) と \(k\) が互いに素 | なる(全頂点を通って出発点まで到達できる) | 使える |
| \(n\) と \(k\) に共通の約数がある | ならない(途中で戻ってしまう) | それでも使える |
| へこみのある五角形 | — | 注意が必要(対角線が外に出ることがある) |
\(2\) 行目の例を挙げます。\(n=6,\; k=2\) は共通の約数 \(2\) を持つので、\(6\) 頂点を \(2\) つ飛ばしで結ぶと三角形が \(2\) つできるだけで、一筆書きの星にはなりません。いわゆる六芒星(ダビデの星)がこの形で、\(2\) つの正三角形を重ねたものと見るのが正しい見方です。
この場合の先端の角の和は、三角形 \(2\) つぶんで \(180 \times 2 = 360^\circ\)。式に \(n=6,\; k=2\) を入れても \(180(6-4) = 360^\circ\) で一致します。これは偶然ではありません。共通の約数を \(d\) とすると、星は \(d\) 個の小さな星に分かれ、各成分の先端の和 \(180\left(\dfrac{n}{d}-\dfrac{2k}{d}\right)\) を \(d\) 個ぶん足すと、ちょうど \(180(n-2k)\) に戻るからです。ただし「\(2\) 周する一筆書き」という説明はそのままでは使えず、「三角形が \(2\) つ」と読み替える必要があります。当塾で \(n=6,\;8,\;9,\;10,\;12\) の各場合について実際に角を測り、分解して足した値と式の値がすべて一致することを確かめました。
本文の類題3は正五角形でしたが、「正」でなくてよいと分かると、問題の見え方が変わります。正五角形と書いてあるのは(1)のためで、(2)には要らない条件でした。問題文のどの条件がどの設問に効いているのかを分けて読むと、不要な計算をせずに済みます。条件の使い分けを図に書き込む手順は図の描き方7つの原則|図が描ければ解ける、を本当にするための手順にまとめました。
数強塾オリジナル類題(4問)
すべて当塾で作成し、答えは式と、実際に座標を取って角を測る方法の両方で確かめてあります。星を一筆書きするとき、自分が何周するかを毎回数えてください。
類題1 正五角形の星
正五角形の \(5\) 本の対角線をひいてできる星について。(1) 先端の角 \(1\) つの大きさを求めてください。(2) \(5\) つの和を求めてください。(3) この和は、正五角形でなくても同じですか。
答え
(1) \(36^\circ\)。(2) \(36 \times 5 = 180^\circ\)。(3) 同じです。形によりません。
(1)を求める道は \(2\) つあります。\(1\) つは二等辺三角形を追う道、もう \(1\) つは(2)を先に出して \(180 \div 5\) とする道です。後者は「対称だから \(5\) 等分される」という理由づけが要ります。正五角形でなければ \(5\) 等分にはなりません。
類題2 なぞると何周するか
(1) ふつうの五角形の辺を \(1\) 周なぞると、向きは何度変わりますか。(2) 星形五角形の \(5\) 本の線を一筆書きでなぞると、何度変わりますか。(3) 先端の角を \(\alpha_1,\ldots,\alpha_5\) として、(2)から和を求めてください。
答え
(1) \(1\) 回転で \(360^\circ\)。(2) \(2\) 回転で \(720^\circ\)。(3) 各先端での向きの変化は \(180^\circ – \alpha_i\) なので \(\sum(180^\circ – \alpha_i) = 720^\circ\)。左辺は \(900^\circ – \sum\alpha_i\) だから \(\sum\alpha_i = 180^\circ\)。
(2)で \(2\) 周だと気づけるかが分かれ目です。紙に星を描いて、鉛筆を持ち上げずになぞってみてください。先端を \(5\) つ通る間に、体は \(2\) 回転しています。
類題3 七角形の星
正七角形の頂点を、\(2\) つ飛ばし・\(3\) つ飛ばしで結んで星を作ります。(1) それぞれ何周しますか。(2) 先端の角の和を \(180(n-2k)\) で求めてください。(3) 先端 \(1\) つの大きさはそれぞれいくつですか。
答え
(1) \(2\) つ飛ばしなら \(2\) 周、\(3\) つ飛ばしなら \(3\) 周。(2) \(180(7-4) = 540^\circ\)、\(180(7-6) = 180^\circ\)。(3) 正七角形なので \(7\) 等分して \(540 \div 7 \fallingdotseq 77.1^\circ\)、\(180 \div 7 \fallingdotseq 25.7^\circ\)。
(3)の値を比べてください。飛ばす数を増やすほど、星は細くなります。\(3\) つ飛ばしのほうが尖っているのは、同じ \(7\) 個の先端で \(3\) 周ぶん回らなければならないからです。実際に座標を取って測ったところ、和はそれぞれ \(540.0000^\circ\)、\(180.0000^\circ\) でした。
類題4 式が多角形の公式に戻る
公式 \(180(n-2k)\) について。(1) \(k=1\)(飛ばさずにとなりを結ぶ)を入れると、どんな式になりますか。(2) それは何の公式ですか。(3) \(n=6,\; k=2\) のときはどうなり、実際の図形は何になりますか。
答え
(1) \(180(n-2)\)。(2) 多角形の内角の和の公式。(3) \(180(6-4) = 360^\circ\)。図形は正三角形 \(2\) つを重ねた形(六芒星)で、一筆書きにはなりません。
(1)(2)から、ふつうの多角形は「\(1\) 周する星」だと見なせると分かります。星形と内角の和が、\(1\) つの式の中でつながっている。
(3)では一筆書きにならないので「\(k\) 周する」という説明は使えませんが、三角形 \(2\) つに分けて \(180 \times 2 = 360^\circ\) と数えれば、やはり式と一致します。当塾で \(n=6,\;8,\;9,\;10,\;12\) のいずれでも一致することを確かめました。説明の道筋は変わっても、答えは変わらない——ここは押さえておいてください。
4問を通して見えるのは、「何周するか」を数えるだけで角の和が決まるということです。本文の類題3(2)は正五角形の問題として出しましたが、実は「正」も「五角形」も本質ではありませんでした。効いていたのは先端が \(5\) つあることと、\(2\) 周することだけ。答えがきれいな数になったとき、そのきれいさの出どころまで戻ると、次に似た形を見たときに一瞬で見抜けます。
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