フェリス女学院中学校 2024年度 算数の傾向と対策【数強塾オリジナル類題つき】
2024年度 フェリス女学院中 算数の概要(公開情報より)
- 2024年度の算数は50分・100点満点です。問題構成や記述欄など年度固有の形式は、学校が公開する当該年度の入試問題で確認してください。
- 学校公式の入試結果による2024年度データ:志願者431名・受験者415名・合格者205名(受験者÷合格者は約2.02)、算数の受験生平均点は57点。
- 公式公表の平均点だけでは、問題の難易度や合格最低点を断定できません。本記事では数値を事実として示し、難易度の断定は避けます。
- 以下では時計算・場合の数・水量変化・図形の移動・食塩水を、フェリス対策に使える独自類題として扱います。実際の2024年度問題の再現・網羅ではありません。
※以下の5題と解答・解説はすべて数強塾のオリジナルです。2024年度の実際の入試問題・一般的な解答例の転載ではありません。年度固有の問題はフェリス女学院中学校の公式入試情報でご確認ください。
フェリス対策では、答えだけでなく、なぜその式になるのかを自分の言葉と図で説明する練習が役立ちます。ここでは、5つのオリジナル類題を通して考え方を筋道立てて書く練習をします。なお、2025年度版のページでは「数の性質」「平面図形と比」「旅人算」「ニュートン算」「規則性」を扱ったので、本ページでは重複しない別の5分野を取り上げます。
類題1(時計算)
問題(数強塾オリジナル):3時から4時の間について、次の時刻を求めなさい。
(1) 時計の長針と短針がぴったり重なる時刻
(2) 長針と短針が、文字盤の「12」と「6」を結ぶ直線について線対称の位置になる時刻
【📖大切な考え方】長針は1分間に6度、短針は1分間に0.5度進みます。だから2つの針の間の角度は、1分間に 6 − 0.5 = 5.5度ずつ縮まります(追いかけ算)。時計算は「角度の旅人算」と考えるのがコツです。
【👀ここに注目】(2)の「線対称」は一見むずかしそうですが、12を0度として時計回りに角度を測ると、2つの針の角度の和がちょうど360度になる瞬間と言いかえられます。左右対称なら、片方が12から右回りに進んだ分だけ、もう片方は12から左回りに進んでいるからです。
方針:(1)は追いかけ算、(2)は「角度の和」が一定の速さで増える出会い算として処理します。
解答
(1) 3時ちょうどのとき、短針は長針より90度先にいます。
差が縮まる速さ:6 − 0.5 = 5.5度/分
追いつくまでの時間:90 ÷ 5.5 = 900 ÷ 55 = 180/11 = 16と4/11(分)
よって 3時16と4/11分。
(2) 3時ちょうどのとき、長針の角度は0度、短針の角度は90度なので、角度の和は90度。
和が増える速さ:6 + 0.5 = 6.5度/分
和が360度になるまでの時間:(360 − 90) ÷ 6.5 = 270 ÷ 6.5 = 2700 ÷ 65 = 540/13 = 41と7/13(分)
よって 3時41と7/13分。
【✅検算】(2)で長針は 6 × 540/13 = 3240/13度、短針は 90 + 0.5 × 540/13 = 1440/13度、和は 4680/13 = 360度となり条件と一致。
【💡ポイントコラム】時計算で出てくる 5.5 と 6.5 は「差の速さ」と「和の速さ」。重なる・一直線・対称など、条件を「差」か「和」のどちらで表すかを最初に決めると、式が一本で済みます。
類題2(場合の数)
問題(数強塾オリジナル):0、1、2、3、4の数字が1つずつ書かれた5枚のカードがあります。この中から3枚を選んで並べ、3けたの整数をつくります。
(1) 3の倍数は全部で何個できますか。
(2) (1)のうち、偶数は何個ありますか。
【📖大切な考え方】3の倍数の判定は「各位の数字の和が3の倍数」。並べる前に、まず「どの3枚を選ぶか」を決めてから、並べ方を数えるのが場合の数の鉄則です(選ぶ→並べる、の2段階)。
【👀ここに注目】0のカードが入ると「百の位に0は置けない」という制限がつきます。0を含む組と含まない組に分けて数えましょう。
方針:和が3の倍数になる3枚の組をすべて書き出し、組ごとに並べ方を数えます。
解答
(1) 3枚の和が3の倍数になる組を調べます。
{0,1,2}(和3)、{0,2,4}(和6)、{1,2,3}(和6)、{2,3,4}(和9)の4組。
・0を含む組(2組):並べ方は 3×2×1 = 6通りのうち、0が百の位にくる 2×1 = 2通りを除いて 6 − 2 = 4個ずつ → 4 × 2 = 8個
・0を含まない組(2組):3×2×1 = 6個ずつ → 6 × 2 = 12個
合わせて 8 + 12 = 20個。
(2) 偶数は一の位が0、2、4のもの。組ごとに数えます。
・{0,1,2}:一の位が0のとき残り2枚の並べ方2通り、一の位が2のとき百の位は1のみ(0は不可)で1通り → 3個
・{0,2,4}:一の位が0で2通り、一の位が2で百の位は4のみの1通り、一の位が4で百の位は2のみの1通り → 4個
・{1,2,3}:一の位が2のとき残りの並べ方2通り → 2個
・{2,3,4}:一の位が2で2通り、一の位が4で2通り → 4個
合わせて 3 + 4 + 2 + 4 = 13個。
【✅検算】3けたの整数を全部書き出して数え直しても、3の倍数20個・うち偶数13個で一致。
【💡ポイントコラム】フェリスの場合の数は「もれなく・重複なく」の書き出し整理が得点の分かれ目。組を辞書順(小さい順)に書き出すクセをつけると、抜けを防げます。
類題3(立体図形・水そうの水量変化)
問題(数強塾オリジナル):横50cm、たて40cm、高さ36cmの直方体の水そうがあります。底面に垂直な仕切り板で、底面を横20cmの部分(左側)と横30cmの部分(右側)に分けます。仕切り板の高さは24cmです。左側の真上から毎分4Lの割合で水を入れます。仕切り板の厚みは考えません。
(1) 左側の水面の高さが仕切り板の高さに達するのは、水を入れ始めてから何分後ですか。
(2) 右側の水面の高さが12cmになるのは何分後ですか。
(3) 水そうがいっぱいになるのは何分後ですか。
【📖大切な考え方】仕切りのある水そうは、水の入り方が「段階」に分かれます。①左側だけがたまる → ②あふれて右側がたまる → ③仕切りをこえて全体が一緒に上がる。段階の切りかわる瞬間の時刻と水量を先に押さえるのがコツです。
【👀ここに注目】1L = 1000立方cmなので毎分4L = 毎分4000立方cm。左側の底面積は 20 × 40 = 800平方cm、右側は 30 × 40 = 1200平方cm、全体は 50 × 40 = 2000平方cmです。
方針:各段階で「必要な体積 ÷ 毎分の水量」を計算します。
解答
(1) 左側が仕切りの高さ24cmまでたまるのに必要な体積:800 × 24 = 19200立方cm
19200 ÷ 4000 = 4.8 → 4.8分後。
(2) 4.8分後からは、あふれた水がすべて右側にたまります。右側が12cmになるのに必要な体積:1200 × 12 = 14400立方cm
14400 ÷ 4000 = 3.6分かかるので、4.8 + 3.6 = 8.4 → 8.4分後。(12cmは仕切りの高さ24cmより低いので、この段階の計算でよい)
(3) 満水の体積は 2000 × 36 = 72000立方cm。途中の段階に関係なく、入れた水の合計で決まるので
72000 ÷ 4000 = 18 → 18分後。
【✅検算】時刻ごとに水量を追う別計算でも、4.8分で左側24cm、8.4分で右側12cm、18分で満水となり一致。
【💡ポイントコラム】水そう問題でグラフが与えられたら、「折れ目」=段階の切りかわり。逆に文章題では、自分で折れ線グラフをかくと状況が一目でわかります。フェリス頻出の型なので、グラフと段階分けはセットで練習しましょう。
類題4(図形の移動)
問題(数強塾オリジナル):たて16cm、よこ20cmの長方形と、半径2cmの円があります。円周率は3.14とします。
(1) 円が長方形の外側を、辺にそってすべらずに1周するとき、円の中心が動いてできる線の長さを求めなさい。
(2) (1)のとき、円が通った部分の面積を求めなさい。
(3) 円が長方形の内側を、辺にそって1周するとき、長方形の内部で円が通らない部分の面積を求めなさい。
【📖大切な考え方】円が図形のまわりを回るときは、「まっすぐ進む部分」と「角を曲がる部分」に分けて考えます。外側の角では、中心は半径2cmのおうぎ形をえがき、4つの角を合わせるとちょうど1つの円になります。
【👀ここに注目】(3)の内側では、円は長方形の角のすみまでは入りこめません。「正方形から四分円を除いた形」が四すみに残ることに注意しましょう。
方針:直線部分と角部分を分けて計算し、たし合わせます。
解答
(1) 直線部分:長方形の周と同じ長さで (16 + 20) × 2 = 72cm
角の部分:4つ合わせて半径2cmの円1周分 → 2 × 2 × 3.14 = 12.56cm
合わせて 72 + 12.56 = 84.56cm。
(2) 円が通った部分は、はば4cm(直径分)の帯です。
直線部分:72 × 4 = 288平方cm
角の部分:4つ合わせて半径4cmの円1つ分 → 4 × 4 × 3.14 = 50.24平方cm
合わせて 288 + 50.24 = 338.24平方cm。
(3) 円が通れるのは、辺から4cm以内の帯の部分(ただし四すみは除く)。通らないのは、
・中央の長方形:(16 − 8) × (20 − 8) = 8 × 12 = 96平方cm
・四すみ:1辺2cmの正方形から半径2cmの四分円を除いた形が4つ
(2 × 2 − 2 × 2 × 3.14 ÷ 4) × 4 = (4 − 3.14) × 4 = 0.86 × 4 = 3.44平方cm
合わせて 96 + 3.44 = 99.44平方cm。
【✅検算】(3)は「長方形全体 320平方cm − 円が通った部分 220.56平方cm = 99.44平方cm」と逆から求めても一致。
【💡ポイントコラム】「外側を回ると角で円1つ分おまけがつく」「内側だと四すみに入れない」──この対比を1枚の図にまとめて覚えておくと、初見の形(L字型など)でも同じ発想で切り分けられます。
類題5(割合・食塩水のやりとり)
問題(数強塾オリジナル):容器Aには10%の食塩水300g、容器Bには4%の食塩水300gが入っています。
(1) Aから100gを取り出してBに入れ、よくかき混ぜました。Bの濃度は何%になりますか。
(2) 次に、Bから100gを取り出してAにもどし、よくかき混ぜました。Aの濃度は何%になりますか。
(3) さらにこのあと、AとBから同じ重さの食塩水を同時に取り出して交換し、よくかき混ぜたところ、AとBの濃度が等しくなりました。何gずつ交換しましたか。
【📖大切な考え方】食塩水の問題は、濃度ではなく「食塩の重さ」を追いかけるのが基本。食塩の重さ = 食塩水の重さ × 濃度、で各容器の食塩を表にして整理します。
【👀ここに注目】(3)の「濃度が等しくなった」は、AとBを全部混ぜたときの濃度(平均の濃度)に両方がそろった、ということ。まず全体の平均濃度を求めるのが近道です。
方針:(1)(2)は食塩の重さの移動を追い、(3)はてんびん図(混ぜ合わせの比)で求めます。
解答
(1) はじめの食塩:Aは 300 × 0.1 = 30g、Bは 300 × 0.04 = 12g。
Aから100g取り出すと、その中の食塩は 30 × 100/300 = 10g。
Bは食塩 12 + 10 = 22g、食塩水 300 + 100 = 400gになるので、濃度は 22 ÷ 400 = 0.055 → 5.5%。
(2) このときAは食塩 30 − 10 = 20g、食塩水200g。
Bから100g取り出すと、その中の食塩は 22 × 100/400 = 5.5g。
Aは食塩 20 + 5.5 = 25.5g、食塩水 200 + 100 = 300gになるので、濃度は 25.5 ÷ 300 = 0.085 → 8.5%。
(3) このときAは8.5%が300g、Bは5.5%が300g。ふたつを全部混ぜると食塩は 25.5 + 16.5 = 42g、食塩水600gだから、平均の濃度は 42 ÷ 600 = 0.07 → 7%。
交換後のAは「Aの食塩水(300 − □)g」と「Bの食塩水□g」を混ぜたものだから、てんびん図で考えると、8.5%と5.5%を混ぜて7%にする比は
(7 − 5.5):(8.5 − 7) = 1.5:1.5 = 1:1
つまり残す量と入れる量が等しいので、□ = 300 ÷ 2 = 150gずつ。
【✅検算】150g交換後:Aの食塩は 25.5 × 150/300 + 16.5 × 150/300 = 12.75 + 8.25 = 21g、300g中で7%。Bも同様に21gで7%となり、確かに等しい。
【💡ポイントコラム】「やりとり」問題は、移した食塩水の中に食塩が濃度の割合で入っていることがすべて。1回のやりとりごとに(食塩水の重さ、食塩の重さ)のペアを書き出せば、何往復しても迷いません。
2024年度の公式結果と独自類題から考える学習方針
2024年度の公式発表では算数の受験者平均点は57点でした。ただし、平均点だけで出題難度や合否の分かれ目を断定することはできません。学習では、①典型問題の解法を「なぜそうなるか」まで説明する、②線分図・面積図・グラフ・てんびん図で整理する、③年度ごとの問題構成に合わせて50分の使い方を振り返る、という3点を大切にしましょう。
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入試結果・試験情報は、フェリス女学院中学校の公式入試結果および公式入試情報を参照しています。
本ページの問題・解答・解説はすべて数強塾が独自に作成した学習用類題で、2024年度の実際の入試問題または一般的な解答例の転載ではありません。
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【補講】「\(4\) つの角を合わせると円 \(1\) つ」は、なぜ何角形でも成り立つのか
類題4で、円が長方形の外側を \(1\) 周するとき「外側の角では中心は半径 \(2\) cm のおうぎ形をえがき、\(4\) つの角を合わせるとちょうど \(1\) つの円になる」と書きました。この「ちょうど」には、はっきりした理由があります。そして理由が分かると、長方形でなくても、三角形でも五角形でも同じことが言えると分かります。
① 角のところで、中心は何度まわるか
円が辺にそって転がってきて、角にさしかかると、円は角の頂点に接したまま、その場で向きを変えます。このとき中心は、頂点を中心とする半径 \(r\) のおうぎ形をえがきます。
問題はそのおうぎ形の中心角が何度かです。答えはその頂点の外角。長方形なら内角が \(90^\circ\) なので、外角は \(180^\circ – 90^\circ = 90^\circ\)。\(4\) つ合わせると \(90 \times 4 = 360^\circ\) で、ちょうど円 \(1\) つぶんになります。
なぜ外角なのかは、円の進む向きで考えると見えます。辺にそって進んでいた円は、次の辺にそって進むために向きを変えなければなりません。その向きの変化量が、ちょうど外角です。中心も同じだけ回るので、おうぎ形の中心角が外角になります。
② 外角の和は、何角形でも \(360^\circ\)
ここが今回の中心です。凸な多角形なら、外角の和はいつでも \(360^\circ\)。
| 多角形 | 内角 \(1\) つ(正多角形のとき) | 外角 \(1\) つ | 外角の和 |
|---|---|---|---|
| 正三角形 | \(60^\circ\) | \(120^\circ\) | \(120 \times 3 = 360^\circ\) |
| 長方形 | \(90^\circ\) | \(90^\circ\) | \(90 \times 4 = 360^\circ\) |
| 正五角形 | \(108^\circ\) | \(72^\circ\) | \(72 \times 5 = 360^\circ\) |
| 正六角形 | \(120^\circ\) | \(60^\circ\) | \(60 \times 6 = 360^\circ\) |
| 正十二角形 | \(150^\circ\) | \(30^\circ\) | \(30 \times 12 = 360^\circ\) |
なぜ何角形でも \(360^\circ\) なのか
多角形のまわりを、辺にそって \(1\) 周歩くところを想像してください。角に来るたびに、外角のぶんだけ向きを変えます。
\(1\) 周して出発点に戻ったとき、体の向きは最初と同じです。つまり向きの変化を全部足すと、ちょうど \(1\) 回転ぶん。
(外角の和)\(=\) \(1\) 回転 \(=\) \(360^\circ\)
角の数は関係ありません。\(3\) 角形でも \(100\) 角形でも、\(1\) 周は \(1\) 周です。角が増えれば \(1\) つあたりの外角が小さくなるだけで、合計は変わりません。
正多角形でなくてもかまいません。いびつな四角形でも、外角の和は \(360^\circ\)。だから類題4の \(4\) つのおうぎ形は、どんな形の四角形でも合わせて円 \(1\) つになります。
内角の和は \(180^\circ \times (n-2)\) で角の数によって変わるのに、外角の和だけは \(n\) によらず一定。この対比は、多角形の問題を解くときの強い道具になります。角のまわりの性質は体系数学1 幾何編 第3章 図形の性質と合同 章末テスト20題|平行線と角・多角形・証明の型にまとめました。
③ だから公式は「周 \(+\; 2\pi r\)」の \(1\) 本
①②を合わせると、外側を \(1\) 周するときの中心の軌跡が計算できます。
| 部分 | 長さ |
|---|---|
| 直線部分 | 各辺と同じ長さ。合計すると多角形の周 |
| 角の部分 | 外角の和 \(360^\circ\) ぶんのおうぎ形 \(=\) 半径 \(r\) の円 \(1\) つ |
| 合計 | (周)\(+\; 2\pi r\) |
類題4で確かめます。長方形の周は \(2 \times (16+20) = 72\)、半径は \(2\) なので
\(72 + 2 \times 3.14 \times 2 = 72 + 12.56 = 84.56\)(cm)
通った部分の面積も同じ構造です。直線部分は幅 \(2r\) の帯、角の部分はおうぎ形を合わせた円 \(1\) つなので
(周)\(\times 2r + \pi r^2 = 72 \times 4 + 3.14 \times 4 = 288 + 12.56 = 300.56\)(cm\(^2\))
どちらも \(1\) 本の式で、多角形の形によりません。三角形でも五角形でも、周の長さだけ入れかえれば同じ式が使えます。
④ 内側を回ると、話がまったく変わる
類題4の(3)は内側を \(1\) 周する問題でした。外側と同じつもりで解くと必ず間違えます。理由を並べます。
| 外側を1周 | 内側を1周 | |
|---|---|---|
| 中心が動ける範囲 | 多角形の外側 | 各辺から \(r\) だけ内側に縮めた長方形の周 |
| 角での動き | 外角ぶんのおうぎ形をえがく | 直角に曲がるだけ(おうぎ形は無い) |
| 中心の軌跡の長さ | (周)\(+\;2\pi r\) | 縮めた長方形の周 |
| 円が届かない場所 | なし | 四すみと中央 |
類題4の数値で見ます。長方形は \(16 \times 20\)、円の半径は \(2\)。中心が動けるのは \((16-4) \times (20-4) = 12 \times 16\) の長方形の周で、長さは \(2 \times (12+16) = 56\) cm。外側のときの \(84.56\) cm とはまったく別の値です。
通らない部分は \(2\) 種類あります。
| 場所 | 形 | 面積 |
|---|---|---|
| 四すみ(\(4\) か所) | \(1\) 辺 \(r\) の正方形から四分円を除いた形 | \(4(r^2 – \frac14 \pi r^2) = 16 – 12.56 = 3.44\) |
| 中央 | \((16-4r) \times (20-4r)\) の長方形 | \(8 \times 12 = 96\) |
| 合計 | \(99.44\)(cm\(^2\)) |
この値を、当塾で乱数 \(300\) 万点を長方形内にばらまいて数える方法でも確かめました。「中心の軌跡から距離 \(2\) より遠い点」の割合から面積を求めると 約 \(99.5\) となり、式から出した \(99.44\) と一致します(乱数によるずれの範囲内です)。
外側と内側でいちばん違うのは、角でおうぎ形ができるかどうかです。外側では円が頂点に引っかかって回り込むのに対し、内側では壁にぶつかって向きを変えるだけで、中心は角を素直に曲がります。図を描けば一目で分かりますが、描かずに公式だけ当てはめると必ず外します。描き方の手順は図の描き方7つの原則|図が描ければ解ける、を本当にするための手順にまとめました。
⑤ 「\(4\) つ合わせて円 \(1\) つ」が使えない場合
②で「凸な多角形なら」と書きました。この条件が外れる場合を挙げておきます。
| 形 | 外角の和 | 角のおうぎ形 |
|---|---|---|
| 凸多角形(へこみなし) | \(360^\circ\) | 合わせて円 \(1\) つ |
| へこみのある多角形 | へこんだ角を負として数えれば \(360^\circ\) | へこんだ角では円が入り込めない |
| 円や曲線でできた図形 | 角が無い | そもそも角の場合分けが不要 |
まん中の行が要注意です。たとえば L 字型の \(6\) 角形なら、外角は \(90,\,90,\,-90,\,90,\,90,\,90\) で、足せばやはり \(360^\circ\)(当塾で確かめました)。ただし、へこんだ頂点(内角が \(180^\circ\) を超える点)では円は外側から回り込めず、逆に通れる範囲が削られます。角度の合計は変わらなくても、円の動きは別に考える必要があります。中学入試で出るのはほとんどが凸多角形ですが、「へこみがないか」を最初に確認する習慣はつけておいてください。
いちばん下の行も面白い場合です。たとえば円のまわりを円が回るなら、角が \(1\) つも無いのでおうぎ形の足し算は不要。中心の軌跡はもとの円より半径が \(r\) だけ大きい円になり、長さは \(2\pi(R+r)\) です。「周 \(+\; 2\pi r\)」の式と比べてみてください。もとの円の周が \(2\pi R\) なので、\(2\pi R + 2\pi r = 2\pi(R+r)\)。角が無い図形でも、同じ式がそのまま成り立ちます。
角のある図形とない図形で、同じ式が出てくるのは偶然ではありません。曲線を「小さな角がたくさん並んだもの」と見れば、外角の和が \(360^\circ\) という性質はそのまま生きています。多角形の角を増やしていくと円に近づく、という見方は図形(幾何)学習ロードマップ|中学受験の角度から三角比・図形の性質・空間の計量まで一本でつなぐ地図で扱う道筋の入り口にあたります。
数強塾オリジナル類題(4問)
すべて当塾で作成し、答えは式と乱数による面積計算の両方で確かめてあります。円周率は \(3.14\) とします。解く前に必ず図を描いてください。
類題1 三角形のまわりを回る
\(1\) 辺 \(10\) cm の正三角形の外側を、半径 \(2\) cm の円が辺にそって \(1\) 周します。(1) 角 \(1\) つでのおうぎ形の中心角は何度ですか。(2) \(3\) つ合わせると何度ですか。(3) 円の中心が動いてできる線の長さを求めてください。
答え
(1) 内角が \(60^\circ\) なので外角は \(120^\circ\)。(2) \(120 \times 3 = 360^\circ\)。やはり円 \(1\) つぶんです。(3) 周は \(10 \times 3 = 30\) cm なので \(30 + 2 \times 3.14 \times 2 = 30+12.56 = 42.56\) cm。
(2)で \(4\) つでも \(3\) つでも合計 \(360^\circ\) になることを確かめてください。角が少ない図形では \(1\) つあたりの外角が大きくなるので、合計は変わりません。「角の数×外角」ではなく、いつも \(360^\circ\) と覚えるのが正しい形です。
類題2 辺の長さが違っても
\(3\) 辺が \(15,\; 20,\; 25\) cm の三角形の外側を、半径 \(2\) cm の円が \(1\) 周します。(1) 中心が動いてできる線の長さを求めてください。(2) 円が通った部分の面積を求めてください。(3) この三角形は正三角形ではありませんが、角の部分の合計は変わりますか。
答え
(1) 周は \(15+20+25 = 60\) cm。よって \(60 + 12.56 = 72.56\) cm。(2) \(60 \times 4 + 3.14 \times 4 = 240 + 12.56 = 252.56\) cm\(^2\)。(3) 変わりません。外角の和はどんな凸多角形でも \(360^\circ\) だからです。
(3)が今回いちばん大事な確認です。\(3\) つの外角はそれぞれ違う大きさですが、足すと必ず \(360^\circ\)。だから角ごとの大きさを調べる必要はなく、周の長さだけ分かれば答えが出ます。
類題3 内側を回る
たて \(16\) cm、よこ \(20\) cm の長方形の内側を、半径 \(2\) cm の円が辺にそって \(1\) 周します。(1) 中心が動ける範囲は、どんな図形の周ですか。(2) その長さを求めてください。(3) 長方形の内部で円が通らない部分の面積を求めてください。
答え
(1) 各辺から \(2\) cm 内側に縮めた \(12 \times 16\) の長方形の周。(2) \(2 \times (12+16) = 56\) cm。(3) 四すみが \(4 \times (2 \times 2 – 3.14 \times 2 \times 2 \div 4) = 16-12.56 = 3.44\)、中央が \((16-8) \times (20-8) = 96\)。合計 \(99.44\) cm\(^2\)。
(2)の \(56\) cm と、外側のときの \(84.56\) cm を比べてください。外側では角でおうぎ形をえがくぶんだけ長くなり、内側では角を直角に曲がるだけなので短くなります。さらに内側では、縮めた長方形そのものが小さくなっている。\(2\) つの効果が同じ向きに働くので、差が大きくつきます。
類題4 角のない図形
半径 \(10\) cm の円の外側を、半径 \(2\) cm の円がすべらずに \(1\) 周します。(1) 中心が動いてできる線は、どんな図形ですか。(2) その長さを求めてください。(3) 「周 \(+\; 2\pi r\)」の式と合うか確かめてください。
答え
(1) 半径 \(10+2 = 12\) cm の円。(2) \(2 \times 3.14 \times 12 = 75.36\) cm。(3) もとの円の周は \(2 \times 3.14 \times 10 = 62.8\)。これに \(2\pi r = 12.56\) を足すと \(62.8+12.56 = 75.36\)。一致します。
(3)は少し不思議に感じるかもしれません。角が \(1\) つも無いのに、「角の部分」にあたる \(2\pi r\) がちゃんと出てくるからです。曲線を「とても小さな角がびっしり並んだもの」と見れば、その小さな向きの変化を全部足すと、やはり \(1\) 回転ぶんになります。多角形の角を増やしていったときの行き先が、この円です。
4問に共通するのは、「\(1\) 周すれば向きは元に戻る」という当たり前の事実です。そこから外角の和 \(360^\circ\) が出て、おうぎ形の合計が円 \(1\) つになり、形によらない \(1\) 本の式ができあがりました。図形の問題で「たまたまきれいな数になった」と思ったときは、たいてい背後に、形によらない理由があります。
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