富士見中学校 算数の傾向と対策【数強塾オリジナル】
富士見中学校(学校法人山崎学園・東京都練馬区中村北、西武池袋線中村橋駅から徒歩3分)は、「純真・勤勉・着実」を校訓にすえる歴史ある女子進学校です。中学入試では複数の入試回に加えて算数1教科入試も用意されており、算数の力が合否に直結する場面が多いのが特徴です。この記事では、富士見中学校が公式サイトで公開している募集要項の情報をもとに算数入試の枠組みを整理したうえで、オンライン数学専門塾「数強塾」が独自に作成したオリジナル類題5問を、考え方・解答・検算つきで掲載します。実在の過去問を書き写したものは一切なく、受験算数の標準的な題材をふまえて数強塾が新しく作った問題です。答えはすべて、正攻法とは別の方法による二重検算で一致を確認しています。
公式の募集要項からわかる算数のポイント
- 2026年度の一般入試は、公式の募集要項によれば第1回(2月1日)・第2回(2月2日)・第3回(2月3日)の3回が案内されており、いずれも国語・算数・社会・理科の4教科で実施されます。
- 4教科入試における算数は試験時間50分・配点100点と案内されています(国語も50分・100点、社会・理科は各40分・60点です)。
- 国語と算数の配点(各100点)が、社会・理科(各60点)より高く設定されており、算数の出来が合否に大きく影響する配点構成です。
- これらに加えて算数1教科入試(2月2日実施)があり、算数のみ・試験時間60分・配点100点と案内されています。算数だけで合否が決まる回があるのが大きな特徴です。
- そのほか、国語・算数の2科に英検の級に応じたみなし得点を加える英語資格利用入試も案内されています。
- 公式サイトの「過去の入試問題」ページでは、算数・社会・理科などの問題と解答が年度ごとに公開されています(算数1教科入試の分も含みます)。
※試験時間・配点・入試回・実施日は執筆時点で公式サイトに掲載の2026年度内容です。年度により変わる場合があるため、受験の際は必ず最新の 富士見中学校・入試情報(公式) と 募集要項(公式) をご確認ください。過去の問題と解答は 公式の過去の入試問題ページ で公開されています。
※本ページは公開情報にもとづく傾向分析と、数強塾オリジナルの自作類題による対策です。実際の問題文・図は学校公式サイトでご確認ください。
出題分野の傾向
ここでの記述は特定年度の問題の解説ではなく、4教科入試の算数50分・100点、そして算数1教科入試60分・100点という枠組みと、女子進学校で一般的に問われる力から読み取れる方向づけの整理です。断定は避け、学習の道しるべとしてお読みください。実際の出題形式や難度は、公式サイトで公開されている問題・解答でご確認ください。
- 計算力と一行問題を確実に得点する力:50分・100点という枠組みでは、序盤の計算問題や標準的な一行問題を、速く正確に処理できることが得点の土台になります。分数・小数の混じった計算、逆算、単位換算をミスなく仕上げる練習が最優先です。円周率を使う面積・体積の計算も、丁寧に速く行える状態にしておきましょう。
- 受験算数の主要分野を広く:割合(濃度・売買損益)、速さ(旅人算・通過算・流水算)、平面図形(面積・角度・相似)、円やおうぎ形をふくむ図形、数の性質・規則性、場合の数、立体図形・水量など、主要分野を「なぜその式になるのか」まで理解して使いこなせる状態を目指しましょう。
- 途中の考え方を書いて整理する力:線分図・面積図・表・ダイヤグラムを自分の手でかいて状況を整理する習慣が、応用問題を解ききる支えになります。図をていねいにかく練習を、日ごろから積んでおきましょう。
- 算数1教科入試は算数一本での勝負:算数1教科入試は60分・100点です。時間がやや長いぶん、1問あたりに使える時間も増えます。丁寧に読み取り、見直しと検算まで含めて解ききる姿勢が、算数一本の入試ではとくに効いてきます。この回を受ける場合は、算数の総合力を早めに完成させておくことがカギです。
- 見直し・検算の習慣:算数の配点が高く、算数1教科の回もある構成では、取れる問題を確実に取り切ることが合否を分けます。別の方法で答えを確かめる検算の習慣を、日ごろの演習から身につけておきましょう。
オリジナル類題で対策
※以下の類題5問は、上記の傾向をふまえて数強塾が独自に作成したオリジナル問題です。実在の過去問の複製ではありません。全問、正攻法で解いたうえで別の方法による二重検算を行い、答えの一致を確認しています。図がなくても読み解けるよう、状況は文章で説明しています。
類題1(割合・売買損益)
【問題】 ある品物に、仕入れ値の2割の利益を見込んで定価をつけました。ところが売れ残ったので、定価の1割引きで売ったところ、1個あたりの利益は56円になりました。
(1) この品物1個の仕入れ値はいくらですか。
(2) この品物を100個仕入れ、80個を定価で、残り20個を定価の1割引きで売り切りました。全体の利益はいくらですか。
【方針】 売買損益は仕入れ値を「1」とおいて、定価や売り値が仕入れ値の何倍にあたるかを整理するのが基本です。定価は仕入れ値の1.2倍、その1割引きは 1.2×0.9=1.08 倍。売り値が仕入れ値の1.08倍だから、利益は仕入れ値の0.08倍にあたります。これが56円という関係から仕入れ値を逆算します。(2) は「定価で売った分の利益」と「1割引きで売った分の利益」を別々に出して合計します。
【解答】 (1) 定価は仕入れ値の1.2倍、その1割引きは 1.2×0.9=1.08倍です。売り値1.08倍から仕入れ値1倍を引くと利益は0.08倍。これが56円なので、仕入れ値は 56÷0.08=700(円)。
(2) 定価は 700×1.2=840(円)、1割引き値は 840×0.9=756(円)。
・定価で売った80個の利益:1個あたり 840−700=140(円)、80個で 140×80=11200(円)。
・1割引きで売った20個の利益:1個あたり 756−700=56(円)、20個で 56×20=1120(円)。
合計は 11200+1120=12320(円)。
【別解による検算】 (2) を「売上の合計−仕入れの合計」で確かめます。売上は 840×80+756×20=67200+15120=82320(円)。仕入れは 700×100=70000(円)。利益は 82320−70000=12320(円)で一致しました。(1) も、仕入れ値700円のとき1割引き値は756円で、利益は 756−700=56円。問題の条件どおりで一致します。
類題2(速さ・旅人算)
【問題】 1800m離れたA地点とB地点があります。兄はA地点から分速90mで、弟はB地点から分速60mで、向かい合って同時に出発します。二人はそれぞれ相手の出発点に着いたら、すぐに向きを変えて同じ速さで引き返します。
(1) 二人が最初に出会うのは、出発してから何分後ですか。
(2) 二人が2回目に出会うのは、出発してから何分後ですか。
【方針】 向かい合って進む旅人算では「2人が近づく速さ=速さの和」を使います。(1) は 1800m を「速さの和」で進む時間です。(2) の2回目の出会いまでには、2人が進んだ道のりの合計が、区間の長さ1800mのちょうど3倍になります(1回目の出会いで合計1800m、以降は出会うたびに合計が1800mずつ増えるためです)。この考え方で時間を求めます。
【解答】 (1) 2人が近づく速さは 90+60=分速150m。1800mを近づくのにかかる時間は 1800÷150=12(分)。
(2) 2回目の出会いまでに2人が進んだ道のりの合計は、1800×3=5400(m)。2人の速さの和は分速150mなので、かかる時間は 5400÷150=36(分)。
【別解による検算】 位置を追って確かめます。兄はA地点(0m地点)から分速90mなので、1800m地点(B)に着くのは 1800÷90=20分後、そこから引き返します。弟はB地点(1800m地点)から分速60mなので、0m地点(A)に着くのは 1800÷60=30分後、そこから引き返します。
出発36分後、兄はB到着後16分引き返した位置なので、Bから 90×16=1440m もどり、A地点から 1800−1440=360(m)の位置。弟はA到着後6分引き返した位置なので、A地点から 60×6=360(m)の位置。二人ともA地点から360mの同じ位置におり、たしかにここで出会います。36分後で一致しました。
類題3(平面図形・円とおうぎ形)
【問題】 1辺が10cmの正方形ABCDがあります。頂点Aを中心とする半径10cmの円の一部(頂点Bから頂点Dまでの弧)と、頂点Cを中心とする半径10cmの円の一部(頂点Bから頂点Dまでの弧)を、正方形の内部にかきます。この2つの弧で囲まれた「葉っぱ形」(2つのおうぎ形が重なる部分)について答えなさい。円周率は3.14とします。
(1) 葉っぱ形の面積を求めなさい。
(2) 正方形から葉っぱ形を取り除いた残りの部分の面積を求めなさい。
【方針】 葉っぱ形は、頂点Aを中心とする四分円(中心角90°のおうぎ形)と、頂点Cを中心とする四分円が重なった部分です。「重なりの面積=おうぎ形2つの面積の和−正方形の面積」という関係(重なった分を2回数えているので、はみ出しの正方形1つ分を引く)で求められます。(2) は正方形から(1)を引くだけです。
【解答】 (1) 半径10cm・中心角90°のおうぎ形(四分円)1つの面積は 10×10×3.14×1/4=78.5(cm²)。おうぎ形は2つあるので合計 78.5×2=157(cm²)。この2つは正方形の内部にあり、葉っぱ形の部分を2回数えているので、正方形1つ分(10×10=100cm²)を引くと重なりが出ます。葉っぱ形の面積は 157−100=57(cm²)。
(2) 正方形の面積100cm²から葉っぱ形57cm²を引いて 100−57=43(cm²)。
【別解による検算】 (1) を対角線BDで2つに分けて確かめます。葉っぱ形は対角線BDによって、合同な2つの弓形(おうぎ形から三角形を除いた形)に分かれます。頂点Aを中心とするおうぎ形ABD(中心角90°)の面積は78.5cm²、三角形ABDの面積は 10×10÷2=50cm²なので、弓形1つは 78.5−50=28.5(cm²)。葉っぱ形はその2つ分で 28.5×2=57(cm²)で一致しました。(2) も 100−57=43(cm²)で一致します。
類題4(数の性質・あまりと規則性)
【問題】 3で割ると2余り、7で割っても2余る整数について考えます。
(1) このような2けたの整数のうち、最も小さいものを求めなさい。
(2) このような2けたの整数は全部で何個ありますか。また、それらの和を求めなさい。
【方針】 「3で割っても7で割っても2余る」という数は、2を引くと3でも7でも割り切れる、つまり3と7の最小公倍数21で割り切れることを意味します。よって、この整数は「21の倍数に2をたした数」=2, 23, 44, 65, … と、21ずつ増える等差数列になります。この並びの中から2けたのものを拾い出します。
【解答】 3でも7でも2余る数は、2を引くと21で割り切れるので、21の倍数に2をたした数です。小さい順に 2, 23, 44, 65, 86, 107, … と21ずつ増えていきます。
(1) このうち2けた(10以上99以下)で最も小さいものは23。
(2) 2けたのものは 23, 44, 65, 86 の4個。その和は 23+44+65+86=218。
【別解による検算】 和を「両端をペアにする」方法で確かめます。23, 44, 65, 86 は等差数列なので、両端どうしをたすと 23+86=109、内側どうしをたすと 44+65=109 と等しくなります。109が2組なので、和は 109×2=218で一致しました。個数も、等差数列の個数は (86−23)÷21+1=63÷21+1=3+1=4個で一致します。念のため各数を確かめると、23=3×7+2=7×3+2、86=3×28+2=7×12+2 で、どちらも3でも7でも2余っています。
類題5(立体図形・水量)
【問題】 直方体の形をした空の水そうがあります。底面は縦20cm・横30cmの長方形で、高さは40cmです。この水そうに、毎分1.2Lの割合で水を入れます。
(1) この水そうを満水にするには何分かかりますか。
(2) 水を入れ始めてから、水の深さがちょうど25cmになるのは何分後ですか。
【方針】 水量の問題は「体積=底面積×高さ(深さ)」と「体積=1分あたりの水量×時間」を結びつけて考えます。1L=1000cm³の単位換算に注意しましょう。満水や深さ25cmのときの水の体積を出し、それを毎分の水量で割れば時間が求められます。
【解答】 底面積は 20×30=600(cm²)。毎分1.2L=1200cm³の水を入れます。
(1) 満水のときの体積は 600×40=24000(cm³)=24L。かかる時間は 24000÷1200=20(分)。
(2) 深さ25cmのときの体積は 600×25=15000(cm³)。かかる時間は 15000÷1200=12.5(分)。
【別解による検算】 「水面が1分に何cm上がるか」で確かめます。毎分1200cm³の水が底面積600cm²に広がるので、水面は毎分 1200÷600=2(cm)ずつ上がります。
(1) 満水は深さ40cmだから 40÷2=20(分)。
(2) 深さ25cmになるのは 25÷2=12.5(分)。どちらも解答と一致しました。逆に、12.5分間に入る水は 1.2×12.5=15L=15000cm³、深さは 15000÷600=25cm で、条件どおりです。
学習アドバイス
【時期別】
- 6年生の夏まで:計算力と各分野の標準解法を穴なく仕上げることが最優先です。割合・比・速さ・平面図形・円やおうぎ形・数の性質・規則性・場合の数・立体図形を、この時期に一通り正確にしておきましょう。算数の配点が高い学校なので、計算は毎日、時間を計って正確さを鍛えます。
- 秋(9〜11月):応用問題への対応力と、50分・100点(算数1教科入試は60分・100点)という時間配分の感覚を養う時期です。過去問は公式サイトで公開されている問題・解答や市販の問題集で演習してください。図をかいて状況を整理する練習を意識し、ミスの出やすい分野を洗い出しておきましょう。
- 直前期(12月〜1月):これまでの問題を反復し、精度と再現性を高める時期です。本記事の【別解による検算】のように、別のルートで自分の答えを確かめる習慣を試験運びに組み込むと、本番での取りこぼしを減らせます。とくに算数1教科入試を受ける場合は、序盤〜中盤の問題を確実に取り切ることを最優先にしましょう。
【分野別】
- 割合・売買損益:仕入れ値を「1」とおき、定価・売り値が何倍にあたるかを整理するのが定石です(類題1)。「仕入れ値・定価・売り値・利益」の関係を線分図でかいて確認する習慣をつけましょう。
- 速さ:旅人算では「近づく速さ=速さの和」「はなれる速さ=速さの差」を軸に、往復や複数回の出会いは進んだ道のりの合計で考えると見通しがよくなります(類題2)。線分図やダイヤグラムにかいて状況を整理しましょう。
- 平面図形・円:おうぎ形の重なりは「面積の和−はみ出し分」で求める発想が強力です(類題3)。円周率のかけ算は最後にまとめて行うと計算が速く正確になります。図形は「性質を使って求める」意識を大切にしましょう。
- 数の性質・規則性:「◯で割っても△で割っても同じ余り」の問題は、余りを引いて最小公倍数の倍数に直すのが基本です(類題4)。等差数列の個数と和の公式も自在に使えるようにしておきましょう。
- 立体図形・水量:「体積=底面積×深さ」と「体積=毎分の水量×時間」を結びつけ、単位換算(1L=1000cm³)に注意します(類題5)。水面の上がる速さで考える別解も、検算の武器になります。
▶ 関連:中学受験 算数 学校別まとめ
【補講】\(57 = 78.5 \times 2 – 100\) の引き算が使える条件
類題3で葉っぱ形を \(78.5 \times 2 – 100 = 57\) と求めました。「重なりは、\(2\) つの和から全体を引けば出る」という考え方です。とても速いのですが、この式には成り立つための条件があります。条件を外れると、面積なのに負の数が出ます。
① なぜ「和 \(-\) 全体」で重なりが出るのか
\(2\) つの四分円を足すと、重なった部分だけ \(2\) 回数えたことになります。
(四分円A)\(+\)(四分円C)\(=\)(\(2\) つが合わさった形)\(+\)(重なり)
ここで「\(2\) つが合わさった形」がちょうど正方形になるので、\(78.5 \times 2 = 100 +\) 重なり。つまり重なりは \(157 – 100 = 57\)。
大事なのは、合わせると正方形をすきまなくおおいつくすという部分です。これは、正方形の中のどの点も、A から \(10\) cm 以内か、C から \(10\) cm 以内のどちらかに必ず入るということ。いちばんきわどいのは頂点 B と D で、A からも C からもちょうど \(10\) cm。ぎりぎりで届いています(なぜ円の方程式は(x-a)²+(y-b)²=r²なのか)。
② 残りの \(43\) も、\(2\) つに分かれる
(2)の \(43\) cm² は、じつは合同な \(2\) つの部分でできています。弧 BD(A 中心)より外側の部分と、弧 BD(C 中心)より外側の部分です。
| 部分 | 求め方 | 面積 |
|---|---|---|
| A の四分円の外がわ | \(100 – 78.5\) | \(21.5\) cm² |
| C の四分円の外がわ | \(100 – 78.5\) | \(21.5\) cm² |
| 合計(葉っぱ形以外) | \(21.5 \times 2\) | \(43\) cm² |
この \(2\) つは重なりません。「A から遠く、かつ C からも遠い点」は正方形の中にないからです(①の裏返し)。だから単純に足せます。葉っぱ形は \(100 – 43 = 57\) cm²。\(3\) つ目の道すじでも同じ答えです(なぜ「少なくとも1つ」は余事象で考えると速いのか)。
図形の重なりでは、「重なり」「外がわ」「全体」の \(3\) つを行き来できると強いです。重なりを求めよと言われたら外がわを、外がわを求めよと言われたら重なりを、それぞれ計算して \(100\) から引く。どちらか計算しやすいほうを選べます。
③ 半径が変わっても、割合は変わらない
\(1\) 辺を \(a\) cm にすると、四分円 \(1\) つは \(a \times a \times 3.14 \div 4 = 0.785 \times a \times a\)。葉っぱ形は
\(0.785 \times a \times a \times 2 – a \times a = 0.57 \times a \times a\)
つまりいつでも正方形の \(57\) %。残りは \(43\) %。
\(1\) 辺が \(20\) cm でも \(100\) cm でも、割合は同じ \(57:43\) です。面積そのものは \(1\) 辺の \(2\) 乗に比例するので、\(1\) 辺を \(2\) 倍にすれば面積は \(4\) 倍になります(なぜ相似比を2乗すると面積比、3乗すると体積比になるのか、なぜ円周率は円の大きさによらず一定なのか)。
この \(0.57\) の正体は \(3.14 \div 2 – 1\)。円周率の半分から \(1\) を引いた数です。だから円周率の取り方が変われば、この割合も変わります(類題4)。
④ 半径を小さくすると、式は負の数を返す
同じ正方形(\(1\) 辺 \(10\) cm)で、A と C を中心とする半径 \(5\) cm の四分円を \(2\) つかいてみます。記事と同じ式をあてはめると
\(5 \times 5 \times 3.14 \div 4 = 19.625\)(四分円 \(1\) つ)
\(19.625 \times 2 – 100 = -60.75\)
面積が負になりました。式のどこかがまちがっているのではなく、前提が壊れています。
半径 \(5\) cm の四分円 \(2\) つは、正方形をおおいつくしません。それどころか、\(2\) つはまったく重なりません。A と C の間は正方形の対角線です。対角線を \(1\) 辺とする正方形をかくと、その面積はもとの正方形の \(2\) 倍の \(200\) cm² になります(もとの正方形を対角線で切った直角二等辺三角形が \(4\) つ入るからです)。\(14 \times 14 = 196\)、\(15 \times 15 = 225\) なので、対角線は \(14\) cm より長く \(15\) cm より短い。半径 \(5\) が \(2\) つでも \(10\) cm しか届かないので、重なりは \(0\) cm² です。
面積を求めて負の数が出たら、まちがい探しの前に「前提」を疑ってください。「和 \(-\) 全体」は、\(2\) つを合わせて全体をおおいつくすときにしか使えません。おおいつくさないときは、\(2\) つの和が全体より小さくなり、引き算がそのまま負になります。負の面積は、式が「その使い方はできません」と教えてくれている合図です。
⑤ 記事の検算について
記事の【別解による検算】は、弓形 \(1\) つを \(78.5 – 50 = 28.5\) cm² と出し、\(2\) 倍して \(57\) cm² としました。切り分け方がまったくちがうので、よい検算です(なぜ三角形の面積は底辺×高さ÷2なのか)。
ただし \(1\) つだけ共通点があります。どちらも「四分円 \(= 78.5\) cm²」に乗っていることです。②の \(21.5 \times 2\) も同じ。\(10 \times 10 \times 3.14 \div 4\) の計算をまちがえたら、\(3\) つとも同じだけずれます。
| 道すじ | 式 | 答え | \(78.5\) を使うか |
|---|---|---|---|
| 解答(和 \(-\) 全体) | \(78.5 \times 2 – 100\) | \(57\) | 使う |
| 記事の検算(弓形 \(2\) つ) | \((78.5-50) \times 2\) | \(57\) | 使う |
| ②(外がわ \(2\) つ) | \(100 – (100-78.5) \times 2\) | \(57\) | 使う |
| 当塾の確認(帯で数える) | 細長い帯に分けて足す | \(57.08\) | 使わない |
そこで当塾では、正方形を横 \(2000\) 本の細い帯に分け、各帯で葉っぱ形になっている部分の長さを足し上げました。結果は \(57.08\) cm²。円周率をより正確に取ったときの値 \(57.0796\ldots\) と合います。\(3.14\) で計算した \(57\) との差 \(0.08\) は、円周率を \(3.14\) で切ったことによる差です(なぜ円の面積はπr²なのか、なぜ円周は2πrなのか)。
同じ数を土台にしている検算は、その数のまちがいを見つけられません。図形の問題なら、切り分け方を変えるだけでなく、使う数そのものを変えた確認を \(1\) つ持っておくと安心です。円周率を \(\dfrac{22}{7}\) で計算し直して近い値になるか見る、というのも手軽な方法です(なぜ扇形の面積は弧の長さ×半径÷2なのか)。
数強塾オリジナル類題(4問)
すべて当塾で作成し、「和 \(-\) 全体」と「外がわ \(2\) つ」の両方で照合してあります。断りがなければ円周率は \(3.14\)、図は類題3と同じで、正方形の向かい合う \(2\) つの頂点を中心とする四分円を \(2\) つかいたものです。
類題1 正方形を大きくする
\(1\) 辺 \(20\) cm の正方形で、同じように葉っぱ形をつくります。(1) 四分円 \(1\) つの面積 (2) 葉っぱ形の面積 (3) 残りの面積 (4) 葉っぱ形は正方形の何 % か を求めなさい。
答え
(1) \(20 \times 20 \times 3.14 \div 4 = \mathbf{314}\) cm²。(2) \(314 \times 2 – 400 = \mathbf{228}\) cm²。(3) \(400 – 228 = \mathbf{172}\) cm²。(4) \(228 \div 400 = 0.57\) で \(57\) %。
「外がわ \(2\) つ」でも確かめます。外がわ \(1\) つは \(400 – 314 = 86\) cm² で、\(2\) つ分は \(172\) cm²。葉っぱ形は \(400 – 172 = 228\) cm² で一致します。\(1\) 辺が \(2\) 倍になって面積は \(4\) 倍(\(57 \to 228\))ですが、割合は \(57\) % のまま変わりません。
類題2 半径を小さくする
\(1\) 辺 \(10\) cm の正方形の中に、向かい合う \(2\) つの頂点を中心とする半径 \(5\) cm の四分円をかきます。(1) 記事と同じ式を使うといくつになりますか。(2) \(2\) つが重なる部分の面積は本当は何 cm² ですか。(3) (1)がおかしい理由を書きなさい。
答え
(1) 四分円 \(1\) つは \(5 \times 5 \times 3.14 \div 4 = 19.625\) cm² なので \(19.625 \times 2 – 100 = \mathbf{-60.75}\)。(2) \(0\) cm²(重なりません)。(3) 「和 \(-\) 全体」は\(2\) つで正方形をおおいつくすときの式で、半径 \(5\) cm ではおおいつくせないからです。
正方形の中心 \((\)対角線の交点\()\) は、どちらの中心からも \(7\) cm より遠い位置にあります(対角線は \(14\) cm より長いので、その半分は \(7\) cm より長い)。半径 \(5\) cm ではそこに届かないので、\(2\) つは出会えません。面積の式が負を返したら、その式の前提を確かめる。これは図形の問題での大事な習慣です。
類題3 残りの \(1\) つ分
\(1\) 辺 \(10\) cm のもとの図にもどります。(1) 葉っぱ形以外の部分は、合同な \(2\) つに分かれます。\(1\) つ分の面積は何 cm² ですか。(2) それが「正方形 \(-\) 四分円 \(1\) つ」と等しくなる理由を書きなさい。
答え
(1) \(43 \div 2 = \mathbf{21.5}\) cm²。(2) A の四分円の外がわの部分は、C の四分円の中にすっぽり入っています。なぜなら正方形のどの点も、A か C のどちらかから \(10\) cm 以内だからです。よって「A の四分円の外がわ」は「正方形 \(-\) A の四分円」そのもので、\(100 – 78.5 = 21.5\) cm²。
この見方を使うと、葉っぱ形は引き算 \(2\) 回だけで出せます。\(100 – 21.5 \times 2 = 57\) cm²。さらに「四分円 \(-\) 葉っぱ形」も \(78.5 – 57 = 21.5\) cm² で、同じ \(21.5\) になります。これも「おおいつくす」という性質から出てくることで、数が合うことが図の正しさの確かめにもなっています。
類題4 円周率を \(3\) にすると
\(1\) 辺 \(10\) cm の同じ図で、円周率を \(3\) として計算します。(1) 葉っぱ形の面積 (2) 残りの面積 (3) 円周率 \(3.14\) で計算したときとの差 を求めなさい。
答え
(1) 四分円 \(1\) つは \(10 \times 10 \times 3 \div 4 = 75\) cm² なので \(75 \times 2 – 100 = \mathbf{50}\) cm²。(2) \(100 – 50 = \mathbf{50}\) cm²。(3) \(57 – 50 = \mathbf{7}\) cm²。
(1)(2)がどちらも \(50\)、つまりちょうど半分ずつになりました。③のとおり割合は「円周率 \(\div\ 2 – 1\)」なので、円周率が \(3\) ちょうどだと \(1.5 – 1 = 0.5\) になるからです。(3)の差 \(7\) cm² は、円周率のちがい \(0.14\) の半分の \(0.07\) に \(100\) をかけた数。円周率のわずか \(0.14\) のちがいが、\(7\) cm² を動かします。なお、より正確な円周率で計算すると \(57.08\) cm² で、\(3.14\) を使った \(57\) cm² にとても近い値です。
\(4\) 問に共通するのは、「和 \(-\) 全体」がいつでも使えるわけではないということです。\(2\) つを合わせて全体をおおいつくすかどうか。ここを確かめずに式だけ覚えると、類題2のように負の面積を書いてしまいます。図形の重なりでは、まず「すきまはないか」を目で見てください。
つながる記事
- なぜ円の面積はπr²なのか(四分円 \(78.5\) の土台)
- なぜ扇形の面積は弧の長さ×半径÷2なのか(おうぎ形の別の見方)
- なぜ円周は2πrなのか(円周率が面積に効く仕組み)
- なぜ円周率は円の大きさによらず一定なのか(③の割合が変わらない理由)
- なぜ相似比を2乗すると面積比、3乗すると体積比になるのか(類題1の \(4\) 倍)
- なぜ「少なくとも1つ」は余事象で考えると速いのか(②の外がわから攻める)
- なぜ三角形の面積は底辺×高さ÷2なのか(記事の検算の弓形)
- なぜ円の方程式は(x-a)²+(y-b)²=r²なのか(「\(10\) cm 以内」を式で書く)


