場合の数とは|和の法則・積の法則・樹形図をわかりやすく解説【数学用語】
定義
場合の数とは、あることがらの起こり方が全部で何通りあるか、その総数のことです。
数えるときの基本は「もれなく、重複なく」。そのための2大原則が和の法則と積の法則で、樹形図をかくと数え落としを防げます。
① 場合の数の意味|「もれなく・重複なく」数える
場合の数は、起こりうるパターンをすべて数え上げた総数です。大切なのは、同じものを2回数えない(重複なし)、数え落としをしない(もれなし)の2点です。数が少ないうちは全部書き出せますが、増えると書き切れません。そこで、数え上げを整理するための道具として、和の法則・積の法則・樹形図を使います。
② 和の法則と積の法則
2つの法則は「同時に起こるかどうか」で使い分けます。
| 法則 | 使う場面 | 数え方 |
|---|---|---|
| 和の法則 | 2つが同時には起こらないとき(「または」) | \( m+n \) 通り |
| 積の法則 | 2つが続けて起こるとき(「そして」) | \( m\times n \) 通り |
和の法則:起こり方が \(m\) 通りのことがらと \(n\) 通りのことがらが同時に起こらないとき、そのどちらかが起こる場合は \( m+n \) 通り。
積の法則:あることがらが \(m\) 通り、続いて別のことがらが \(n\) 通り起こるとき、両方が続いて起こる場合は \( m\times n \) 通りです。
③ 樹形図|数え落としを防ぐ図
樹形図は、選び方を枝分かれの図でかき出す方法です。1つ目の選択肢から枝を分け、その先にさらに2つ目の選択肢の枝を分けて…と、順番に整理します。すべての枝の先端の数が場合の数です。「どの順で、どこまで数えたか」が目で追えるので、もれ・重複の発見にとても有効です。数が多い問題でも、まず樹形図で数え方の規則をつかんでから法則で計算すると安全です。
④ 具体例(検算つき)
例1(積の法則):A→B→Cの行き方は何通りか
A町からB町へ行く道が \(3\) 本、B町からC町へ行く道が \(2\) 本あります。Bを経由してAからCへ行く行き方は、道を続けて選ぶので積の法則を使います。
\[ 3\times 2 = 6 \ (\text{通り}) \]
検算(樹形図):AからBの3本を \(a,b,c\)、BからCの2本を \(p,q\) とすると、\( (a,p),(a,q),(b,p),(b,q),(c,p),(c,q) \) の \(6\) 通り。数え上げと一致します。
例2(和の法則):大小2個のサイコロで目の和が5または6
和が \(5\) になるのは \( (1,4),(2,3),(3,2),(4,1) \) の \(4\) 通り。和が \(6\) になるのは \( (1,5),(2,4),(3,3),(4,2),(5,1) \) の \(5\) 通りです。和が5と和が6は同時には起こらないので、和の法則を使います。
\[ 4+5 = 9 \ (\text{通り}) \]
検算:2つの場合に重なり(同時に和が5かつ6)はないので、単純に足して \(9\) 通りで正しいと確認できます。
⑤ よくある失敗
- 和と積を取り違える:「または(同時に起こらない)」なら足し算、「そして(続けて起こる)」なら掛け算です。問題文のつながり方を見極めましょう。
- 重複を二重に数える:和の法則は、2つの場合に重なりがないときに使えます。重なりがある場合は、重複分を引く必要があります。
- 大小・区別を無視する:2個のサイコロは「大・小」で区別するのが基本です。\( (1,4) \) と \( (4,1) \) を同じと数えると数え落とします。
- 樹形図を途中でやめる:規則が見えたつもりで書くのをやめると、後半でパターンが変わり数え落とすことがあります。
⑥ よくある質問(FAQ)
Q. 和の法則と積の法則は、どう見分ければよいですか?
2つのことがらが「同時に起こらない(どちらか一方)」なら和の法則で足し算、「続けて両方起こる」なら積の法則で掛け算です。問題文が「または」でつながるか、「そして・続いて」でつながるかを手がかりにすると見分けやすくなります。
Q. 樹形図はいつ使えばよいですか?
数え方の規則がまだ見えていないときや、条件が複雑で数え落としが心配なときに使います。すべての場合を枝分かれで書き出すと、もれや重複に気づけます。規則がつかめたら、和の法則・積の法則で計算に切り替えると速く解けます。
Q. 場合の数と確率はどう関係しますか?
確率は「起こりうる全体の場合の数」と「注目することがらの場合の数」の割合で求めます。つまり場合の数を正しく数えられることが、確率を求める土台になります。まず場合の数を確実にしてから確率へ進むのがおすすめです。
監修・執筆:藤原進之介(オンライン数学専門塾 数強塾)
数強塾オリジナル 追加演習4題——「引く」数え方
⑤の2番目に、こう書きました。
重複を二重に数える:和の法則は、2つの場合に重なりがないときに使えます。重なりがある場合は、重複分を引く必要があります
正しい注意です。ところが④の例2は、わざわざ「和が5」と「和が6」という、重なりようのない2つを選んでいます。この記事には、重なりがある例が1つもありません。つまり「引く」を一度もやっていない。
定義に書いた「もれなく、重複なく」のうち、「重複なく」を実際に処理する場面が抜けています。数え上げで難しいのは足すことではなく、数えすぎた分をどう取り除くかです。取り除き方は4つあります——重なりを引く/3つ以上で足し引きする/重複した回数で割る/「でない」を全体から引く。この4題で1つずつやります。
追加第1問 足すと全体を超えてしまう
大小2個のさいころを投げるとき、少なくとも一方が偶数になる出方は何通りか。
まず、やってはいけない数え方
「大が偶数」は大が \(2,\ 4,\ 6\) の \(3\) 通り、小は何でもよいので \(6\) 通り。積の法則で \(3 \times 6 = 18\) 通り。「小が偶数」も同じく \(18\) 通り。ここで和の法則を使って足すと
\[ 18+18 = 36\ \text{通り} \]
ところが、2個のさいころの出方は全部で \(6 \times 6 = 36\) 通りしかありません。「少なくとも一方が偶数」が全体と同じ \(36\) 通りになるはずがない——両方奇数の場合があるからです。
正しい数え方
この2つには重なりがあります。「大も小も偶数」の場合は、両方に数えられています。それが \(3 \times 3 = 9\) 通り。1回ぶん引きます。
\[ 18+18-9 = 27\ \text{通り} \]
⑤の2番目が言っているのはこれです。「または」でも、重なりがあれば単純に足せません。②の表の「同時には起こらないとき」という条件を読み飛ばすと、この誤りが出ます(なぜ排反なら確率を足してよいのか)。
検算
反対側から数えます。「少なくとも一方が偶数」でないのは「両方とも奇数」だけ。\(3 \times 3 = 9\) 通りなので
\[ 36-9 = 27\ \text{通り} \]
一致しました。○(なぜ「少なくとも1つ」は余事象で考えると速いのか)
「少なくとも」と書いてあったら、まず反対側を数える——このほうが速く、しかも重なりの処理が要りません。今回は \(9\) 通りを数えるだけで済みました。
追加第2問 3つあると、引いてから足し戻す
\(1\) から \(60\) までの整数のうち、
(1) \(2,\ 3,\ 5\) のいずれかで割り切れるものは何個か。
(2) \(2,\ 3,\ 5\) のどれでも割り切れないものは何個か。
解答
(1) まず1つずつ数えます。\(60 \div 2 = 30\)、\(60 \div 3 = 20\)、\(60 \div 5 = 12\)。単純に足すと \(62\) で、もう \(60\) を超えています。数えすぎです。
2つずつの重なりを引きます。\(2\) と \(3\) の両方で割り切れるのは \(6\) の倍数で \(10\) 個、\(2\) と \(5\) なら \(10\) の倍数で \(6\) 個、\(3\) と \(5\) なら \(15\) の倍数で \(4\) 個。
\[ 30+20+12-\left(10+6+4\right) = 62-20 = 42 \]
ところが、今度は引きすぎです。\(2,\ 3,\ 5\) の3つすべてで割り切れる数(\(30\) の倍数、\(2\) 個)は、最初に3回足して、次に3回引いたので、いま \(0\) 回ぶんになっています。1回ぶん足し戻します。
\[ 42+2 = 44\ \text{個} \]
(2) 全体から引きます。
\[ 60-44 = 16\ \text{個} \]
2つなら1回引く、3つなら引いてから足し戻す。この足し引きの交代を包除の原理といいます。追加第1問と同じことを3つに広げただけです。数えすぎ→引きすぎ→足し戻す、と行ったり来たりしながら正しい数に近づくのがこの原理の姿です。
検算
(2) を直接書き出せます。\(1\) から \(60\) までで \(2,\ 3,\ 5\) のどれでも割り切れないのは
1, 7, 11, 13, 17, 19, 23, 29, 31, 37, 41, 43, 47, 49, 53, 59
数えると \(16\) 個。○ \(60 = 2 \times 3 \times 5 \times 2\) なので、\(30\) ごとに同じパターンが2回くり返され、\(30\) までに \(8\) 個、\(60\) までで \(8 \times 2 = 16\) 個——こう数えても合います。○
包除で出した答えは、必ず小さい範囲の書き出しで裏を取ってください。足し引きの符号を1か所まちがえても、答えはもっともらしい数になります。
追加第3問 区別してから、重複した回数で割る
赤玉 \(2\) 個と白玉 \(3\) 個を1列に並べる。同じ色の玉は区別しないとき、並べ方は何通りか。
解答
いきなり数えようとすると手が止まります。そこでいったん全部を区別して数え、あとで数えすぎた分を取り除きます。
赤を \(2\) 個、白を \(3\) 個すべて別物とみなせば、\(5\) 個の並べ方は \(5! = 120\) 通り。ところがこの数え方だと、赤どうしを入れかえただけの並びを別物として数えています。その入れかえは \(2! = 2\) 通り、白どうしは \(3! = 6\) 通り。つまり同じ見た目の並びを \(2 \times 6 = 12\) 回ずつ数えていることになります。
\[ \frac{5!}{2!\,3!} = \frac{120}{12} = 10\ \text{通り} \]
ここは引くのではなく割ります。重なりが「何個か余分」ではなく「ちょうど何倍か」の形で起きているからです。⑤の3番目は「大小・区別を無視する」を失敗として挙げていますが、逆に区別してはいけない場面もあります。見分け方は簡単で、問題文に「同じ色」「同じ数字」「区別しない」と書いてあるかです。
検算
\(10\) 通りなら全部書けます。赤の入る位置だけ決めれば並びが決まるので、\(5\) か所から \(2\) か所を選ぶ数と同じです。
赤赤白白白/赤白赤白白/赤白白赤白/赤白白白赤/白赤赤白白/白赤白赤白/白赤白白赤/白白赤赤白/白白赤白赤/白白白赤赤
ちょうど \(10\) 通り。○ 「並べ方」を「位置の選び方」に言いかえられたら、それ自体が検算になります(\({}_5\mathrm{C}_2 = 10\))。
追加第4問 「でない」は、全体から引く
生徒 \(\mathrm{A},\ \mathrm{B},\ \mathrm{C},\ \mathrm{D},\ \mathrm{E}\) の \(5\) 人が1列に並ぶとき、\(\mathrm{A}\) と \(\mathrm{B}\) が隣り合わない並び方は何通りか。
解答
「隣り合わない」を直接数えようとすると、\(\mathrm{A}\) の位置で場合分けが始まって長くなります。反対の「隣り合う」を数えて、全体から引きます。
全体は \(5! = 120\) 通り。
「隣り合う」場合は、\(\mathrm{A}\) と \(\mathrm{B}\) をひとかたまりとみなします。かたまり1つと残り \(3\) 人の合わせて \(4\) つを並べるので \(4! = 24\) 通り。さらにかたまりの中で \(\mathrm{AB}\) と \(\mathrm{BA}\) の \(2\) 通りがあるので、積の法則で
\[ 4! \times 2 = 48\ \text{通り} \]
よって
\[ 120-48 = 72\ \text{通り} \]
ここでは②の2つの法則が両方とも使われています。「かたまりと残りを並べる」と「かたまりの中を並べる」が続けて起こるので積の法則。そして最後に全体から引く。「〜でない」と書いてあったら、まず反対側の数え方を考える——追加第1問と同じ発想です。
検算
別の数え方でも出します。先に \(\mathrm{A},\ \mathrm{B}\) 以外の \(3\) 人を並べ(\(3! = 6\) 通り)、その並びが作るすき間 \(4\) か所(両端を含む)から \(2\) か所を選んで \(\mathrm{A}\) と \(\mathrm{B}\) を入れます。順序があるので \(4 \times 3 = 12\) 通り。
\[ 6 \times 12 = 72\ \text{通り} \]
一致しました。○ 「隣り合わない」は、引くほかに「すき間に入れる」という直接の数え方もあります。2つの道が同じ数に着けば、まず間違いありません。
この4題で確認したこと
| 取り除き方 | 使う場面 | 今回の例 | |
|---|---|---|---|
| 重なりを引く | 2つの場合に共通部分があるとき | \(18+18-9=27\) | 追加第1問 |
| 引いて足し戻す | 3つ以上が重なるとき(包除) | \(62-20+2=44\) | 追加第2問 |
| 重複した回数で割る | 同じものを区別せずに並べるとき | \(\dfrac{5!}{2!\,3!}=10\) | 追加第3問 |
| 「でない」を引く | 「〜でない」「少なくとも」と書いてあるとき | \(120-48=72\) | 追加第4問 |
- 足した結果が全体を超えたら、必ず数えすぎ。まずそれに気づくこと(追加第1問)。
- ②の表の「同時には起こらないとき」という条件を読み飛ばさない。重なりがあれば足せません。
- 3つ以上なら引いてから足し戻す。符号を1つ間違えても答えはもっともらしい数になるので、小さい範囲の書き出しで裏を取る(追加第2問)。
- 重なりが「何倍か」の形なら割る。問題文の「区別しない」がその合図(追加第3問)。
- 「〜でない」「少なくとも」は反対側を数える。直接数えるより短く、重なりの処理も要らない(追加第1問・第4問)。
- 数え上げの答えは、必ず2通りの道で出す。樹形図で書き切れる大きさなら、書き切って確かめるのがいちばん確実です。
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要点辞典この単元の公式・定石・つまずきやすい所は 数学I・Aの要点辞典:場合の数 にまとめてあります。


