因数分解とは|定義・やり方・公式をわかりやすく解説【数学用語】
定義
因数分解とは、1つの多項式を、いくつかの多項式の「積(かけ算)」の形に変形することです。たとえば \( x^2+5x+6 \) を \( (x+2)(x+3) \) に直す操作がこれにあたります。
かっこを外して1つの式にまとめる「展開」のちょうど逆向きの操作である、と押さえておくと分かりやすいです。
① 意味|「展開の逆」であること
展開と因数分解は、同じ2つの式を「行き」と「帰り」で結んでいる関係です。
\[ \underbrace{(x+2)(x+3)}_{\text{積の形}} \;\xrightarrow{\text{展開}}\; \underbrace{x^2+5x+6}_{\text{和の形}} \;\xrightarrow{\text{因数分解}}\; \underbrace{(x+2)(x+3)}_{\text{積の形}} \]
展開は分配法則にしたがって機械的に進められますが、因数分解は「どんな積になるか」を見抜く必要があるため、少し工夫が要ります。だからこそ、展開して元の式に戻るかどうかで必ず検算できるのが因数分解の大きな特長です。因数分解ができると、方程式を解いたり、約分したりする場面で式を一気に扱いやすくなります。
② 基本手法|共通因数・公式・たすきがけ
因数分解の手順は、次の順番で考えると迷いません。まず共通因数、次に公式、それでも割れなければたすきがけです。
(1) 共通因数でくくる(最初に必ず確認)
すべての項に共通してかかっている数や文字があれば、外にくくり出します。これを見落とすと、後の手順がすべて狂います。
\[ 3x^2+6x = 3x(x+2) \]
(2) 公式にあてはめる
代表的な因数分解の公式は次の3つです。展開の公式を逆から読んだものです。
| 名前 | 公式 |
|---|---|
| 2乗の差 | \( a^2-b^2=(a+b)(a-b) \) |
| 完全平方 | \( a^2\pm2ab+b^2=(a\pm b)^2 \) |
| 和と積 | \( x^2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b) \) |
とくに3つめは、「かけて定数項・たして \(x\) の係数」になる2数 \(a,\ b\) を探すのが要です。
(3) たすきがけ(\(x^2\) の係数が1でないとき)
\( ax^2+bx+c \) で \(a\ne1\) のときは、たすきがけを使います。左に \(x^2\) の係数の分解、右に定数項の分解を並べ、たすき(斜め)にかけた和が \(x\) の係数 \(b\) になる組を探します。
③ 具体例(検算つき)
例1:\( x^2-5x+6 \) を因数分解する(和と積の公式)
「かけて \(+6\)、たして \(-5\)」になる2数を探します。\(-2\) と \(-3\) は、かけて \(6\)、たして \(-5\) なので条件を満たします。
\[ x^2-5x+6=(x-2)(x-3) \]
検算:\( (x-2)(x-3)=x^2-3x-2x+6=x^2-5x+6 \)。元の式に戻ったので正しく因数分解できています。
例2:\( 6x^2+7x-3 \) を因数分解する(たすきがけ)
\(x^2\) の係数 \(6\) を \(2\times3\)、定数項 \(-3\) を \(3\times(-1)\) と置いてたすきにかけると、\(2\times(-1)+3\times3=-2+9=7\) となり、\(x\) の係数 \(7\) に一致します。
\[ 6x^2+7x-3=(2x+3)(3x-1) \]
検算:\( (2x+3)(3x-1)=6x^2-2x+9x-3=6x^2+7x-3 \)。元の式に戻るので正解です。
④ よくある失敗
- 共通因数の取り残し:\( 2x^2-8=2(x^2-4) \) で止めてしまうミス。中の \( x^2-4=(x+2)(x-2) \) まで進めて \( 2(x+2)(x-2) \) が正解です。「これ以上割れないか」を最後に必ず確認します。
- 符号のミス:「かけて \(+6\)・たして \(-5\)」で \(2,3\)(+のまま)を選んでしまうミス。積が正でも和が負なら、2数はどちらも負です。符号の組み合わせを丁寧に。
- 途中で止める(因数分解し切らない):\( x^4-1 \) を \( (x^2+1)(x^2-1) \) で終えず、\( (x^2+1)(x+1)(x-1) \) まで分解します。まだ2乗の差が残っていないかを確認しましょう。
- 展開のクセで引き算をしてしまう:因数分解は「積の形にする」操作です。作業後は必ず展開して元に戻るかを検算すると、この種のミスはその場で発見できます。
⑤ よくある質問(FAQ)
Q. 因数分解と展開の違いは何ですか?
展開はかっこを外して和の形(1つの多項式)にまとめる操作で、因数分解はその逆に、多項式を積(かけ算)の形に直す操作です。たとえば \( (x+2)(x+3) \) を \( x^2+5x+6 \) にするのが展開、\( x^2+5x+6 \) を \( (x+2)(x+3) \) にするのが因数分解です。互いに逆の関係なので、因数分解した式を展開すれば必ず検算できます。
Q. どの手法から使えばよいか迷います。順番はありますか?
「まず共通因数、次に公式、それでも割れなければたすきがけ」の順に考えるのがおすすめです。最初に共通因数でくくると式が簡単になり、その後の公式やたすきがけが見やすくなります。共通因数の確認を飛ばすと、後の手順で余計に苦労することが多いので、最初のチェックを習慣にしましょう。
Q. 因数分解を速く正確にできるようになるには?
同じ形の問題を数多く反復し、「かけて・たして」の2数や、たすきがけの組を見つける勘を体に入れるのが近道です。数強塾の因数分解100本ノックのような演習で、基礎から段階的にレベルを上げて手を動かすと定着します。仕上げに展開して元に戻す検算まで習慣にすると、正確さも上がります。
関連用語:絶対値|因数分解100本ノック(演習)|数学辞典トップ
監修・執筆:藤原進之介(オンライン数学専門塾 数強塾)
定義とやり方を押さえたら、高校で加わる型へ進みます。
数強塾オリジナル 追加演習4題——「これ以上割れない」を、どうやって判定するか
④の3番目に、こう書きました。
途中で止める(因数分解し切らない):\(x^4-1\) を \((x^2+1)(x^2-1)\) で終えず、\((x^2+1)(x+1)(x-1)\) まで分解します。まだ2乗の差が残っていないかを確認しましょう
正しい注意です。ただ、この例では \((x^2+1)\) を残したまま答えにしています。なぜ \(x^2-1\) は割るのに、\(x^2+1\) は割らなくてよいのか——「止めていい場所」の基準が書かれていません。
「これ以上割れないか」を最後に確認します、と④の1番目にもありますが、確認のしかたが1行も書かれていないのがこの記事の穴です。基準は2つあります。(1) どこまでの数を使ってよいか(範囲)、(2) 2次式が割れるかどうかの判定(判別式)。この4題で埋めます。
追加第1問 答えが「範囲」で変わる
\(x^4-4\) を因数分解せよ。
(1) 係数を有理数(分数まで)に限るとき
(2) 係数に無理数を使ってよいとき
解答
まず2乗の差とみて1回割ります。\(x^4 = \left(x^2\right)^2\)、\(4 = 2^2\) なので
\[ x^4-4 = \left(x^2+2\right)\left(x^2-2\right) \]
(1) 有理数に限るなら、ここで終わりです。\(x^2-2\) をさらに割るには \(\sqrt2\) が要りますが、\(\sqrt2\) は分数で書けません(なぜ√2は分数で表せないのか)。
(2) 無理数を使ってよいなら、\(x^2-2 = \left(x+\sqrt2\right)\left(x-\sqrt2\right)\) と割れます。
\[ x^4-4 = \left(x^2+2\right)\left(x+\sqrt2\right)\left(x-\sqrt2\right) \]
\(x^2+2\) のほうは、どちらの範囲でも割れません。どんな実数 \(x\) を入れても \(x^2+2 \ge 2 \gt 0\) で、\(0\) になることがないからです。
④が挙げた \(x^4-1\) と、この \(x^4-4\) を並べてください。\(x^4-1 = \left(x^2+1\right)(x+1)(x-1)\) は範囲を広げても答えが変わりません(\(x^2+1\) は実数の範囲では割れない)。ところが \(x^4-4\) は範囲で答えが変わります。「まだ2乗の差が残っていないか」だけでは、この2つを見分けられません。
検算
\(x = 1\) を入れます。もとの式は \(1-4 = -3\)。(1) の形は \((1+2)(1-2) = -3\)。○ (2) の形は \(3\left(1+\sqrt2\right)\left(1-\sqrt2\right) = 3(1-2) = -3\)。○
\(x = 2\) でも。もとは \(16-4 = 12\)、(1) は \((4+2)(4-2) = 12\)。○ 数を1つ入れて一致を見るのが、因数分解のいちばん速い検算です。展開よりずっと速く、①が言う「展開して戻るか」の代わりになります。
追加第2問 たすきがけを探す前に、割れるかどうかを決める
次の4つについて、たすきがけを試す前に、有理数の範囲で因数分解できるかどうかを判定せよ。できるものは因数分解せよ。
(1) \(6x^2+7x-3\) (2) \(6x^2+7x+2\) (3) \(6x^2+7x-4\) (4) \(6x^2+7x+5\)
解答
使うのは判別式 \(D = b^2-4ac\) です(なぜ判別式はb²-4acなのか)。判定は2段階になります。
・\(D \lt 0\) なら、実数の範囲でも割れません(\(0\) になる \(x\) が存在しない)。
・\(D \ge 0\) で、しかも \(D\) が平方数なら、\(\sqrt{D}\) が整数になるので有理数の範囲で割れます。平方数でなければ、実数の範囲でだけ割れます。
(1) \(D = 49+72 = 121 = 11^2\)。平方数なので有理数で割れます。\(\left(2x+3\right)\left(3x-1\right)\)(記事の例2)。
(2) \(D = 49-48 = 1 = 1^2\)。割れます。\(\left(2x+1\right)\left(3x+2\right)\)。
(3) \(D = 49+96 = 145\)。\(12^2 = 144\)、\(13^2 = 169\) なので平方数ではありません。有理数の範囲では割れない——たすきがけをいくら探しても見つかりません。
(4) \(D = 49-120 = -71 \lt 0\)。実数の範囲でも割れません。
③の「たすきがけの組を探す」は、組が存在するときにしか終わりません。(3) と (4) を出されたら、探し続けるかぎり永久に見つからない。判別式1回(暗算で数十秒)で、探すべきかどうかが決まります。係数が大きくて組み合わせが多い問題ほど、先に \(D\) を見てください。
検算
(1) を展開:\(\left(2x+3\right)\left(3x-1\right) = 6x^2-2x+9x-3 = 6x^2+7x-3\)。○
(2) を展開:\(\left(2x+1\right)\left(3x+2\right) = 6x^2+4x+3x+2 = 6x^2+7x+2\)。○
(3) は実数の範囲なら割れます。解の公式から \(x = \dfrac{-7\pm\sqrt{145}}{12}\) で、\(\sqrt{145} \fallingdotseq 12.0416\) より \(x \fallingdotseq 0.4201,\ -1.5868\)。この2つが無理数であることが、有理数で割れない理由そのものです。○
(4) は \(x\) にどんな数を入れても正であることを確かめられます。\(x = 0\) で \(5\)、\(x = -1\) で \(6-7+5 = 4\)、\(x = -0.5\) で \(1.5-3.5+5 = 3\)。○ 平方完成すると \(6\left(x+\dfrac{7}{12}\right)^2+\dfrac{71}{24}\) で、最小値が正です(なぜ平方完成すると頂点がわかるのか)。
追加第3問 \(x^2+1\) と \(x^2-2\) は、どこが違うのか
(1) \(x^2+1\) が実数の範囲で1次式の積に書けないことを説明せよ。
(2) \(x^2-2\) は実数の範囲では割れるのに、有理数の範囲では割れない。その理由を説明せよ。
解答
(1) もし \(x^2+1 = (x+p)(x+q)\)(\(p,\ q\) は実数)と書けたとします。右辺を展開すると \(x^2+(p+q)x+pq\) なので、\(p+q = 0\)、\(pq = 1\)。前者から \(q = -p\) で、後者に入れると \(-p^2 = 1\)、つまり \(p^2 = -1\)。実数を2乗して負になることはないので、そんな \(p\) はありません。よって割れません。
もっと速いのは値を見ることです。\(x^2+1\) は \(x\) にどんな実数を入れても \(1\) 以上。\((x+p)(x+q)\) の形なら \(x = -p\) で \(0\) になるはずなので、\(0\) にならない式は1次式の積に書けません。
(2) \(x^2-2\) は \(x = \pm\sqrt2\) で \(0\) になります。だから \(\left(x+\sqrt2\right)\left(x-\sqrt2\right)\) と割れます。ところが \(\sqrt2\) は分数で表せない数なので、係数を有理数に限ると、この形は書けません。
| 2次式 \(ax^2+bx+c\) | 有理数の範囲 | 実数の範囲 | 例 |
|---|---|---|---|
| \(D \lt 0\) | 割れない | 割れない | \(x^2+1,\ 6x^2+7x+5\) |
| \(D \ge 0\) で平方数でない | 割れない | 割れる | \(x^2-2,\ 6x^2+7x-4\) |
| \(D \ge 0\) で平方数 | 割れる | 割れる | \(x^2-1,\ 6x^2+7x-3\) |
表の2行目が、この記事に足りなかったところです。「割れない」には2種類あります——本当に割れない(\(D \lt 0\))のと、使ってよい数の範囲が狭いから割れない(\(D\) が平方数でない)の2つ。中学までは前者しか出てきませんが、高校で \(\sqrt{\ }\) を使い始めると後者が現れます。
検算
(1) は値で。\(x = -2,\ -1,\ 0,\ 1,\ 2\) を入れると \(5,\ 2,\ 1,\ 2,\ 5\)。一度も \(0\) になりません。○
(2) は展開で。\(\left(x+\sqrt2\right)\left(x-\sqrt2\right) = x^2-\left(\sqrt2\right)^2 = x^2-2\)。○ \(D = 0-4\cdot1\cdot(-2) = 8\) で、\(8\) は平方数ではありません(\(2^2 = 4\)、\(3^2 = 9\))。○ 追加第1問の \(x^4-4\) が範囲で答えを変えたのは、まさにこの \(x^2-2\) が入っていたからです。
追加第4問 「割り切った」ことを、どう確かめるか
\(3x^3-12x^2+12x\) を因数分解せよ。
さらに、それが「これ以上割れない」ことを説明せよ。
解答
②の手順どおり、まず共通因数です。すべての項に \(3x\) がかかっています。
\[ 3x^3-12x^2+12x = 3x\left(x^2-4x+4\right) \]
中の \(x^2-4x+4\) は完全平方です(かけて \(4\)、たして \(-4\) は \(-2\) と \(-2\))。
\[ = 3x(x-2)^2 \]
「これ以上割れない」の確かめ方
因子を並べると \(3\)、\(x\)、\((x-2)\)、\((x-2)\)。全部が1次以下です。1次式はそれ以上割れないので、ここで終わりです。
2次以上の因子が残っていたら、追加第2問・第3問の判別式で判定します。今回は残っていないので、判定するまでもありません。「1次式まで分解し切ったか」を見るのが、いちばん速い確認です。
検算
次数の和で確かめます。左辺は3次。右辺は \(x\) が1次、\((x-2)\) が1次、それが2つで合計 \(1+1+1 = 3\) 次。○ 次数が合わないときは、割り忘れか割りすぎです。
値でも。\(x = 1\):もとの式は \(3-12+12 = 3\)、答えの形は \(3\cdot1\cdot(-1)^2 = 3\)。○ \(x = 2\):もとは \(24-48+24 = 0\)、答えの形も \(0\)。○ 因数がわかっているときは、その因数を \(0\) にする値を入れると、両辺とも \(0\) になるはず——これがいちばん強い検算です。
よくある誤答 共通因数を \(3\) だけにして \(3\left(x^3-4x^2+4x\right)\) で止める(中にまだ \(x\) が共通しています。④の1番目です)/\(x^2-4x+4\) を \((x-2)(x+2)\) とする(それは \(x^2-4\) です。完全平方は符号がそろいます)。
この4題で確認したこと
- 「これ以上割れない」は、使ってよい数の範囲を決めないと言えない。同じ式でも範囲で答えが変わる(追加第1問)。
- 2次式が割れるかどうかは判別式 \(D = b^2-4ac\) で決まる。\(D \lt 0\) なら実数でも割れない、\(D\) が平方数なら有理数で割れる(追加第2問)。
- だからたすきがけは、探す前に \(D\) を見る。組が存在しない問題を延々と探さずに済む。
- 「割れない」には2種類ある。本当に割れないのと、範囲が狭いから割れない(追加第3問)。
- 分解し切ったかは「因子が全部1次以下か」で見る。2次以上が残ったら判別式へ(追加第4問)。
- 検算は展開だけではありません。数を1つ入れる/次数の和を見る/因数を \(0\) にする値を入れる——どれも展開より速く済みます。
高校範囲の型へ進むなら、複2次式 ax⁴+bx²+c の因数分解(追加第1問の続きです)、最も次数の低い文字で整理する因数分解、2元2次6項式の因数分解、3変数の対称式・交代式の因数分解 へ。全体の地図は 数と式 完全攻略ロードマップ にあります。
道具の「なぜ」は、なぜ因数分解すると二次方程式が解けるのか、なぜ因数分解は「面積を辺の積に戻す」操作なのか、なぜ判別式はb²-4acなのか、なぜ√2は分数で表せないのか にまとめてあります。
要点辞典この単元の公式・定石・つまずきやすい所は 中3数学の要点辞典:展開と因数分解 にまとめてあります。


