2027年度(令和9年度)対応・2026年8月30日更新 情報関係基礎の型で解くオリジナル問題も新設しました。
共通テスト 情報Ⅰ 予想問題|オリジナル模試10問
「共通テスト 情報 予想問題」を探している受験生が、このページだけで本番形式の演習と復習を完結できるように構成しました。4大問に対応する10テーマを、100点換算・60分で解く実戦セットです。すべて数強塾・情報ラボのオリジナルで、問題文、選択肢、解答、解法の方針、別経路の検算、発展事項まで無料公開しています。
大学入試センター非公式の予想問題です。 本番問題の的中を保証するものではありません。2025・2026年度の公開問題と、大学入試センターが公表した令和9年度の問題作成方針を材料に、範囲と能力のバランスを設計しています。
2027年度の予想問題をこう設計した
大学入試センターの令和9年度「情報Ⅰ」問題作成方針は、身近な事象や未知の資料を材料に、情報社会との関わり、科学的理解、問題発見・解決を考察させることを重視しています。プログラミングは、初見でも理解できるセンター独自表記を用いる方針です。このページでは、単語暗記だけで正解できないよう、各設問を次の4観点に割り当てました。
社会・法・情報モラル
引用、知的財産、暗号、署名を、具体的な利用場面から判断する。
情報デザインと通信
標本化、情報量、誤り検出、転送時間を、単位と目的から処理する。
プログラミング
共通テスト型の表記をトレースし、前提条件とアルゴリズムの限界まで考える。
データの活用
四分位数、外れ値、相関と因果を、計算と解釈の両面から判断する。
設計に参照した一次情報
- 大学入試センター「令和9年度試験」(問題作成方針・出題方法への公式導線)
- 大学入試センター「令和8年度試験の問題・正解」
- 大学入試センター「令和7年度試験の問題・正解」
60分で解く時間配分と100点換算
最初は解説を開かず、次の時間を上限に通して解いてください。残り5分はマーク・単位・選択肢番号の確認に使います。自己採点の配点は、この教材で学習効果を測るための独自換算です。
| 大問 | 範囲 | 対象 | 時間 | 配点 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | 小問集合 | 問1〜問4 | 15分 | 25点 |
| 第2問 | 通信・ネットワーク | 問5〜問6 | 12分 | 25点 |
| 第3問 | プログラミング | 問7〜問8 | 15分 | 25点 |
| 第4問 | データの活用 | 問9〜問10 | 13分 | 25点 |
| 見直し | 全体 | マーク・単位・条件 | 5分 | — |
使い方。 各問の答えを紙に残してから「解答・解説を開く」を読んでください。答えを見た後の納得は「再認」であり、自力で取り出せる理解とは別です。誤答した問は、解説の最後にある「ここで効く一般則」を1行で言い直してから解き直します。
問1 第1問 問1 知的財産権と引用の要件
問題
次の文章の空欄 ア〜エ に入れるのに最も適当なものを、後の解答群のうちから一つずつ選べ。
他人の著作物は、原則として著作権者の許諾を得なければ利用できない。ただし一定の条件を満たす場合には、許諾なく利用することが認められている。これを ア という。その条件としては、利用する側の著作物が イ であること、取り込んだ部分が本文と明瞭に区別できること、その利用に必然性があること、そして ウ を明示することなどが挙げられる。
また、文化祭の活動を示すロゴマークを継続して使用し、同じ種類のサービスで類似の目印が使われることを、出願・登録によって防ぎたい。この目的に対応する権利は エ である。
ア の解答群
⓪ 複製 ① 引用 ② 転載 ③ 翻案
イ の解答群
⓪ 主であり、取り込んだ著作物が従 ① 従であり、取り込んだ著作物が主 ② 未公表 ③ 非営利
ウ の解答群
⓪ 利用料 ① 出所 ② 著作権者の連絡先 ③ 公表年月日のみ
エ の解答群
⓪ 特許権 ① 意匠権 ② 商標権 ③ 著作者人格権
まず自分で解いてみる
選択肢はどれも「著作物を使う」ことに関わる語で並べられている。語の意味を漠然と知っているだけでは絞れないように作ってある。
後半は権利の種類を問う。著作権と産業財産権という別系統の権利が混ぜてあり、さらに産業財産権の中でも保護対象が異なる3つが並ぶ。何を保護する権利かで判断する。
ヒント:この設問で使う道具
引用は、著作権法が定める例外規定の一つである。許諾なく使えるのは例外なので、条件は厳しく定められている。主なものは次の4つである。
- 主従関係 … 自分の著作物が主、引用部分が従であること
- 明瞭区別性 … かぎ括弧や書式で、どこからどこまでが引用かが分かること
- 必然性 … その引用がなければ論が成り立たない、という必要があること
- 出所の明示 … 著者名・書名・掲載箇所などを示すこと
混同しやすい語も整理しておく。複製は単に複写すること、転載はまるごと載せること、翻案は元の表現を改変して別の作品にすることで、いずれも原則として許諾が必要である。
権利の体系も押さえる。著作権は表現そのものを保護し、創作した時点で自動的に発生する(無方式主義)。これに対し産業財産権は特許庁への出願と登録が必要で、次の4つからなる。
- 特許権 … 高度な技術的発明
- 実用新案権 … 物品の形状・構造の考案
- 意匠権 … 物品のデザイン(外観の美的な形)
- 商標権 … 商品やサービスの目印(マーク・名称)
解答・解説を開く
🧭 方針
前半は「例外規定の名前とその条件」、後半は「何を保護する権利か」で決める。
アは、許諾なく利用できる場合を指す語を選ぶ。複製・転載・翻案はいずれも許諾が必要な行為の名前であって、例外規定の名前ではない。
イは主従関係を問うている。どちらが主役かを取り違えないこと。 引用部分が主になってしまえば、それは自分の著作物ではなく他人の著作物の集まりである。
エはロゴマーク=商品やサービスの目印という対応で決まる。デザインそのものの美しさを保護するのが意匠権、目印としての機能を保護するのが商標権である。
✍️ 解答
ア = ①(引用) イ = ⓪(主であり、取り込んだ著作物が従) ウ = ①(出所) エ = ②(商標権)
権利の対応を整理する。
| 権利 | 保護する対象 | 発生の仕方 |
|---|---|---|
| 著作権 | 表現(文章・音楽・プログラムなど) | 創作した時点で自動的に発生 |
| 特許権 | 高度な技術的発明 | 出願・審査・登録 |
| 意匠権 | 物品のデザイン(外観) | 出願・審査・登録 |
| 商標権 | 商品・サービスの目印 | 出願・審査・登録 |
✅ 検算
語を当てはめ直すのではなく、その条件が無かったらどうなるかで確かめる。
主従関係が無いとする。 他人の文章を10ページ載せ、自分の感想を3行書いたものが「引用」として通ることになる。これは実質的に他人の著作物を配布しているのと変わらない。主従関係は、この抜け道をふさぐための条件である。
明瞭区別性が無いとする。 どこまでが自分の文章か読者に分からなくなり、他人の表現を自分のものとして示すことになる。これは剽窃である。
出所の明示が無いとする。 読者はその主張の根拠を確認できない。引用が学術的に許される理由は、検証可能性を保つ点にあるので、出所が無ければ引用の意味自体が失われる。
エも逆から確かめる。 ロゴマークを意匠権で守ろうとすると、意匠権は「物品のデザイン」を対象とするため、紙の上の標識そのものは対象になりにくい。特許権は技術的思想が対象で、マークは発明ではない。著作者人格権は公表・氏名表示・同一性保持に関する権利で、他者の使用を止める根拠としては筋が違う。目印としての混同を防ぐという機能に対応するのは商標権だけである。
💡 ここで効く一般則
引用は「例外」である。 原則は許諾が必要で、例外だからこそ条件が細かい。条件を1つでも外すと引用にならない。
主従関係・明瞭区別性・必然性・出所明示の4つをセットで覚える。 共通テストでは、このうち1つを欠いた事例を「適切でないもの」として出しやすい。
著作権は無方式主義、産業財産権は登録主義。 手続きの要不要が、2つの系統を分ける最も大きな違いである。
産業財産権は保護対象で区別する。 発明=特許、考案=実用新案、デザイン=意匠、目印=商標。
学問的背景。 引用が法的に認められる根底には、学術と批評は先行する表現の上に積み上がるという考え方がある。先行研究を参照できなければ、反論も検証も追試も成り立たない。著作権法が保護するのは「表現」であって「アイデア」ではない、という原則(アイデア・表現二分論)も同じ発想から来ている。アイデアまで独占させると、後続の研究や創作が止まってしまうからである。情報Ⅱの「情報社会と法制度」では、この均衡をどこで取るかが主題になる。
問2 第1問 問2 標本化・量子化・符号化とデータ量の計算
問題
音の情報をコンピュータで扱えるようにする手順について、次の問いに答えよ。
(1) 次の文章の空欄 ア〜ウ に入れるのに最も適当な語を、後の解答群から一つずつ選べ。
連続的に変化する音の波を一定の時間間隔で区切り、その時刻での値を取り出すことを ア という。取り出した値を、あらかじめ決めた段階のうち最も近いものに割り当てることを イ という。割り当てた段階を2進法の値で表すことを ウ という。
⓪ 符号化 ① 標本化 ② 量子化 ③ 圧縮
(2) 標本化周波数 44.1 kHz、量子化ビット数 16 ビット、ステレオ(2チャンネル)で、3分間の音声を圧縮せずに記録した。このデータ量として最も近いものを次から一つ選べ。ただし 1 MB = 106 バイトとする。
⓪ 約 4.0 MB ① 約 15.9 MB ② 約 31.8 MB ③ 約 254 MB
(3) 量子化ビット数だけを16ビットから8ビットに変更したとき、音質とデータ量に起きる変化として最も適当なものを一つ選べ。
⓪ 記録できる最高の周波数が半分になり、データ量も半分になる
① 音の大きさの段階が粗くなり、データ量は半分になる
② 音の大きさの段階が粗くなるが、データ量は変わらない
③ 音質は変わらず、データ量だけが半分になる
まず自分で解いてみる
(1)は3つの手順の名前を順番どおりに当てる。3つとも「アナログをデジタルにする」段階の名前なので、何を何に変えるのかで区別する。圧縮は手順そのものではない。
(2)は計算問題である。単位をビットで通してから最後にバイトへ直すのが安全である。選択肢には、8で割り忘れた値やチャンネル数をかけ忘れた値が混ぜてある。
(3)は、標本化周波数と量子化ビット数がそれぞれ何を決めているかを分けて考える。時間方向の細かさと、値方向の細かさは別物である。
ヒント:この設問で使う道具
アナログの波をデジタルにする手順は、次の3段階に分かれる。
- 標本化(サンプリング) … 時間を区切って値を取り出す。1秒あたりの回数が標本化周波数
- 量子化 … 値を段階に丸める。段階数を決めるのが量子化ビット数
- 符号化 … 段階の番号を2進法で表す
2つの「細かさ」が別の軸を担当している点が重要である。
| 設定 | 細かくする方向 | 粗いとどうなるか |
|---|---|---|
| 標本化周波数 | 時間方向(横軸) | 高い音が再現できない |
| 量子化ビット数 | 値の方向(縦軸) | 音の強弱が段々になる(量子化ノイズ) |
データ量は、1秒あたりのビット数に時間をかけて求める。
データ量 = 標本化周波数 × 量子化ビット数 × チャンネル数 × 秒数
また、標本化周波数については標本化定理を知っておくと理解が深まる。元の音に含まれる最高周波数の2倍を超える周波数で標本化すれば、元の波形を復元できる。44.1 kHz という値は、人間の可聴域の上限(およそ 20 kHz)を復元するために選ばれている。
解答・解説を開く
🧭 方針
(1)は手順の順序、(2)は単位、(3)は「どちらの軸か」で決める。
(1)は「時間を区切る → 値を丸める → 2進法で表す」の順に並んでいる。文章がその順で書かれているので、対応させるだけでよい。
(2)はビットで計算しきってから最後に8で割る。途中でバイトに直すと、チャンネル数をかける段階で混乱しやすい。
(3)は量子化ビット数を変えているので、変わるのは値の方向だけである。時間方向(標本化周波数)は触っていないので、再現できる最高周波数は変わらない。
✍️ 解答
(1) ア = ①(標本化) イ = ②(量子化) ウ = ⓪(符号化)
(2) = ②(約 31.8 MB)
計算の過程を示す。
| 手順 | 式 | 値 |
|---|---|---|
| 1チャンネル1秒分 | 44100 × 16 | 705,600 ビット |
| ステレオ1秒分 | 705600 × 2 | 1,411,200 ビット |
| 3分(180秒)分 | 1411200 × 180 | 254,016,000 ビット |
| バイトに直す | ÷ 8 | 31,752,000 バイト |
| MBに直す | ÷ 106 | 約 31.8 MB |
(3) = ①(音の大きさの段階が粗くなり、データ量は半分になる)
✅ 検算
もう一度同じ順で計算するのではなく、別の経路で確かめる。
桁で押さえる。 ステレオ1秒あたり約1.4×106 ビット、つまり約0.18×106 バイト=約0.18 MB。これに180秒をかけると 0.18 × 180 = 約32 MB。1秒あたりの量を先に出しておくと、時間を変えた設定にもそのまま使える。
誤答の作られ方も確認する。 ⓪の約4.0 MBは、秒数を180ではなく…と考える前に、254,016,000 ÷ 8 ÷ 8 のように余分に8で割った値に近い。①の約15.9 MBはチャンネル数の2をかけ忘れた値である(31.8 ÷ 2)。③の約254 MBはビットのままMBと読んだ値である。誤答の3つは、それぞれ計算の1か所を落としたときに出る値になっている。 どこを落とすと何が出るかを知っておくと、自分の答えが誤答群のどれかに一致したとき、逆にミスを特定できる。
(3)も具体で確かめる。 16ビットなら段階は 216 = 65,536 段階、8ビットなら 28 = 256 段階である。段階が256分の1に減るので、隣の段階との差が大きくなり、元の値との誤差(量子化誤差)が増える。一方、1回の標本あたりのビット数が16から8へ半減するので、データ量はちょうど半分になる。時間方向は一切変えていないので、再現できる最高周波数は変わらない。⓪が誤りである理由がここにある。
💡 ここで効く一般則
「標本化=横軸、量子化=縦軸」で覚える。 どちらを変えた設定なのかを最初に見分ければ、選択肢の半分は消える。
データ量の式は「1秒あたり×秒数」に分けて立てる。 チャンネル数のかけ忘れが最も多い失点である。
単位はビットで通し、最後に8で割る。 途中でバイトへ変換すると、かけ算の順序を見失いやすい。
量子化ビット数 n に対して段階数は 2n。 ビット数は段階数そのものではなく、その指数である。
学問的背景。 44.1 kHz という半端な値は、標本化定理(ナイキスト・シャノンの標本化定理)から来ている。含まれる最高周波数の2倍を超える周波数で標本化すれば元の波形を完全に復元できる、という定理である。可聴域の上限を約20 kHzとすると40 kHz超が必要で、さらに実際の機器では急峻な遮断ができないため余裕を持たせた値が採られた。2倍に足りない周波数で標本化すると、高い音が低い音として現れるエイリアシング(折り返し雑音)が起きる。動画で車輪が逆回転して見える現象も、時間方向の標本化不足という同じ原理である。情報Ⅱのメディア処理では、この定理が画像の解像度やリサンプリングの議論にも同じ形で現れる。
問3 第1問 問3 公開鍵暗号とデジタル署名
問題
AさんとBさんは、それぞれ公開鍵と秘密鍵の組を1つずつ持っている。公開鍵は誰でも入手でき、秘密鍵は本人だけが持つ。次の問いに答えよ。
(1) AさんがBさんへ、第三者に内容を知られないようにメッセージを送りたい。暗号化と復号に用いる鍵の組合せとして正しいものを一つ選べ。
| Aさんが暗号化に使う鍵 | Bさんが復号に使う鍵 | |
|---|---|---|
| ⓪ | Aさんの公開鍵 | Aさんの秘密鍵 |
| ① | Aさんの秘密鍵 | Aさんの公開鍵 |
| ② | Bさんの公開鍵 | Bさんの秘密鍵 |
| ③ | Bさんの秘密鍵 | Bさんの公開鍵 |
(2) 別の場面で、Aさんは「このメッセージに付いた署名が、自分の秘密鍵で作成された」ことをBさんに確かめてもらいたい。このときAさんが署名の作成に用いる鍵と、Bさんが検証に用いる鍵の組合せとして正しいものを、(1)の⓪〜③から一つ選べ。
(3) デジタル署名によって確認できることとして適当でないものを一つ選べ。
⓪ 署名が、その公開鍵に対応する秘密鍵を用いて作成されたこと
① そのメッセージが、途中で改ざんされていないこと
② そのメッセージが、第三者に読まれていないこと
③ 送信者が後から「自分は送っていない」と否認できないこと
まず自分で解いてみる
鍵が4種類(Aの公開・Aの秘密・Bの公開・Bの秘密)あり、選択肢はその組合せである。暗号化と署名では、使う鍵の向きが逆になる。 この2つを混同させるのが設問の狙いである。
(3)は、暗号化と署名がそれぞれ何を守るのかを分けて問うている。「秘密にすること」と「本人であることを示すこと」は別の目的である。
ヒント:この設問で使う道具
公開鍵暗号の仕組みは、片方の鍵でかけた錠は、もう片方の鍵でしか開かないという性質に尽きる。この性質を、目的に応じて2通りに使い分ける。
秘密にしたいとき(守秘)。受け取る人だけが読めればよい。読めるのは秘密鍵を持つ本人だけなので、受信者の公開鍵で暗号化する。誰でも暗号化できるが、復号できるのは受信者だけである。
本人だと示したいとき(認証)。作れるのが本人だけであればよい。秘密鍵を持つのは本人だけなので、送信者の秘密鍵で署名する。誰でも検証できるが、作れるのは本人だけである。
整理すると次のようになる。
| 目的 | 使う鍵(作る側) | 使う鍵(受け取る側) | 限定されるのは |
|---|---|---|---|
| 守秘(暗号化) | 受信者の公開鍵 | 受信者の秘密鍵 | 読める人 |
| 認証(署名) | 送信者の秘密鍵 | 送信者の公開鍵 | 作れる人 |
実際のデジタル署名では、メッセージ全体ではなくハッシュ値に署名する。ハッシュ関数は任意の長さのデータから固定長の値を作る関数で、元のデータが1ビットでも変わると値が大きく変わる。この性質によって改ざんが検出できる。
解答・解説を開く
🧭 方針
「限定したいのは、読める人か、作れる人か」で鍵を決める。
(1)は内容を知られたくないので、読める人を限定する。読めるのは秘密鍵の持ち主だけなので、その相手=Bさんの公開鍵で暗号化する。
(2)は本人であることを示したいので、作れる人を限定する。作れるのは秘密鍵の持ち主だけなので、Aさん自身の秘密鍵で署名する。検証は誰でもできてよいので、公開されているAさんの公開鍵を使う。
(3)は、署名が守るのが「作った人」と「内容の同一性」であって、内容を隠すことではない点を突いている。
✍️ 解答
(1) = ② (2) = ① (3) = ②
(3)について、各選択肢が対応する性質を示す。
| 選択肢 | 性質の名前 | 署名で確認できるか |
|---|---|---|
| ⓪ 対応する秘密鍵で署名されたこと | 認証 | できる |
| ① 改ざんされていないこと | 完全性 | できる |
| ② 第三者に読まれていないこと | 機密性 | できない |
| ③ 後から否認できないこと | 否認防止 | できる |
署名は封をする行為であって、中身を隠す行為ではない。 機密性が必要なら、署名とは別に暗号化を行う。実際の通信では両方を組み合わせて使う。
✅ 検算
鍵の名前を覚え直すのではなく、間違った組合せを実際に使ったら何が起きるかで確かめる。
(1)で①(Aさんの秘密鍵で暗号化)を選んだとする。 対応する復号鍵はAさんの公開鍵であり、これは誰でも入手できる。つまり誰でも復号できてしまい、秘密にするという目的が完全に失われる。この組合せは守秘には使えない。ただし「誰でも復号できるが、作れたのはAさんだけ」という状態は、まさに署名の性質そのものである。(1)の誤答①が、そのまま(2)の正解になっているのは偶然ではない。
(1)で⓪(Aさんの公開鍵で暗号化)を選んだとする。 復号できるのはAさんの秘密鍵、つまりAさん自身だけである。自分で書いて自分しか読めない暗号文をBさんに送ることになり、Bさんは永久に読めない。目的を果たさない。
(2)で②(Bさんの公開鍵)を選んだとする。 Bさんの公開鍵は誰でも入手できるので、誰でも同じものを作れる。Aさんが作ったという証拠にならない。「作れる人が限定されているか」を問えば、この選択肢は落ちる。
(3)も逆から確かめる。 署名付きのメッセージをそのまま眺めたとき、本文は平文のまま読める。封筒に署名を書いても中身が見えなくなるわけではない。読まれたくないなら、別に暗号化が要る。
💡 ここで効く一般則
公開鍵で暗号化=守秘、秘密鍵で署名=認証。 「公開鍵は誰でも使える=誰でもできてよい操作に使う」と考えると向きを間違えない。
限定したいのが「読める人」か「作れる人」かを最初に決める。 これだけで4択が2択に減る。
秘密鍵は絶対に渡さない。 選択肢に「秘密鍵を相手に送る」形が現れたら、その時点で誤りである。
機密性・完全性・可用性の3つを区別する。 署名が担うのは完全性と認証であり、機密性は担わない。
学問的背景。 公開鍵暗号が成り立つのは、計算するのは簡単だが、逆をたどるのは難しいという数学的な非対称性があるからである。RSA暗号なら「2つの素数をかけるのは簡単だが、大きな積を素因数分解するのは難しい」という性質を使う。ここでの「難しい」は不可能という意味ではなく、現実的な時間では終わらないという意味である。したがって計算機の性能が上がれば必要な鍵の長さも延びる。量子計算機が実用化されると素因数分解が高速に解けるため、それに耐える耐量子計算機暗号への移行が現在進められている。暗号の安全性が数学の未解決性に支えられている、という構図を知っておくと、情報Ⅱのセキュリティ分野が一段深く読める。
問4 第1問 問4 2進数の表現と情報量
問題
(1) 10進法の 173 を8ビットの2進法で表したものを一つ選べ。
⓪ 10101101 ① 10110101 ② 11010101 ③ 10101011
(2) 8ビットで表せる符号なし整数の個数と、その最大値の組合せとして正しいものを一つ選べ。
⓪ 個数 255・最大値 255 ① 個数 256・最大値 255
② 個数 256・最大値 256 ③ 個数 128・最大値 127
(3) ある学校で、生徒一人ひとりに重複しない番号を2進法で割り当てたい。生徒数が 500 人のとき、必要なビット数の最小値を一つ選べ。
⓪ 8ビット ① 9ビット ② 10ビット ③ 500ビット
まず自分で解いてみる
(1)は変換そのものだが、選択肢は正解の数字を並べ替えたもので作ってある。位取りを1つずらしただけで別の選択肢になるので、確実な手順で出す。
(2)は個数と最大値が1だけずれることを問うている。0を含めるかどうかで答えが変わる。
(3)は「何通り必要か」から逆にビット数を求める。2の累乗と比べるだけで決まる。
ヒント:この設問で使う道具
2進法への変換は、大きい桁から引けるかどうかを見る方法が速い。8ビットの各桁の重みは次のとおりである。
| 桁 | 27 | 26 | 25 | 24 | 23 | 22 | 21 | 20 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 重み | 128 | 64 | 32 | 16 | 8 | 4 | 2 | 1 |
上の桁から順に「引けるなら1、引けないなら0」と決めていけば、割り算を繰り返す必要がない。
ビット数と表せる個数の関係も押さえる。n ビットで表せるのは 2n 通りである。0から数え始めるので、符号なし整数の最大値は 2n − 1 になる。
覚えておくと速い2の累乗を挙げる。
28 = 256 29 = 512 210 = 1024 216 = 65536
解答・解説を開く
🧭 方針
(1)は上の桁から引く、(2)は0を含めて数える、(3)は2の累乗と比べる。
(1)は128から順に引けるかを見る。引いた残りを次の桁で処理するので、途中の残りを書き残しておくと検算がしやすい。
(3)は「500通りを区別できる最小のnを求める」と言い換える。2n ≧ 500 を満たす最小のnである。
✍️ 解答
(1) = ⓪(10101101) (2) = ①(個数 256・最大値 255) (3) = ①(9ビット)
(1)の過程を示す。
| 重み | 引けるか | ビット | 残り |
|---|---|---|---|
| 128 | 173 − 128 = 45 | 1 | 45 |
| 64 | 45 < 64 | 0 | 45 |
| 32 | 45 − 32 = 13 | 1 | 13 |
| 16 | 13 < 16 | 0 | 13 |
| 8 | 13 − 8 = 5 | 1 | 5 |
| 4 | 5 − 4 = 1 | 1 | 1 |
| 2 | 1 < 2 | 0 | 1 |
| 1 | 1 − 1 = 0 | 1 | 0 |
並べると 10101101 になる。
(3)は 28 = 256 で500人に足りず、29 = 512 で足りる。よって9ビットである。
✅ 検算
変換した結果を、逆向きに10進法へ戻して確かめる。
10101101 = 128 + 32 + 8 + 4 + 1 = 173。元の数に一致する。2進変換の検算は必ず逆変換で行うのが最も確実で、しかも速い。
誤答も戻してみる。 ①の 10110101 は 128+32+16+4+1 = 181、②の 11010101 は 128+64+16+4+1 = 213、③の 10101011 は 128+32+8+2+1 = 171 である。いずれも173に近い値で、桁を1つ取り違えたときに出る数になっている。逆変換すればどれも一発で否定できる。
(2)を小さい場合で確かめる。 2ビットで考えると、表せるのは 00, 01, 10, 11 の4通りで、10進法では0, 1, 2, 3 である。個数は 22 = 4、最大値は 3 = 22 − 1 となり、個数と最大値が1ずれる。8ビットでも同じ構造で、256通り・最大255である。
(3)を境界で確かめる。 8ビットだと0〜255の256通りしか作れず、500人には足りない。9ビットなら0〜511の512通りで、500人に番号を割り当てても12通り余る。10ビットでも足りるが「最小値」を問われているので過剰である。「足りる中で最小」を答える設問では、1つ下が足りないことまで確かめると確実になる。
💡 ここで効く一般則
2進変換は上の桁から引く。 割り算の繰り返しより速く、途中の残りが検算の材料になる。
検算は必ず逆変換で。 同じ手順をもう一度なぞっても、同じ間違いを繰り返すだけである。
n ビット → 2n 通り、最大値は 2n − 1。 0から数え始めることが、この −1 の理由である。
28=256、29=512、210=1024 は暗記しておく。 必要ビット数を問う設問はこの3つで大半が片づく。
学問的背景。 「何通りを区別するのに何ビット必要か」という問いは、情報量の考え方そのものである。シャノンは、起こりうる場合がN通りで等確率のとき、その結果を知ることで得られる情報量を log2N ビットと定めた。500人から1人を特定する情報は log2500 ≒ 8.97 ビットで、実際に使うビット数はこれを切り上げた9になる。ビットは「はい・いいえの質問1回分」と考えると直感的で、500人を上手に半分ずつ絞り込めば9回の質問で必ず特定できる、という二分探索の話と完全に同じ構造である。第3問 問2 では、この考え方が計算量として再登場する。
問5 第2問 A 誤り検出(パリティビット)
問題
通信の途中でデータが化けたことを受信側で見つけるため、偶数パリティを用いる。7ビットのデータの末尾に1ビットを付け加え、8ビット全体に含まれる1の個数が偶数になるようにその1ビットを決める。付け加えるビットをパリティビットという。
(1) データが 1011010 のとき、付け加えるパリティビットとして正しいものを一つ選べ。
⓪ 0 ① 1
(2) 受信側が 11001011(8ビット、末尾がパリティビット)を受け取った。この結果として最も適当なものを一つ選べ。
⓪ 誤りは検出されない
① 誤りが検出され、何ビット目が誤っているかも分かる
② 誤りが検出されるが、何ビット目が誤っているかは分からない
③ 誤りが検出され、自動的に訂正される
(3) この方式の性質として適当でないものを一つ選べ。
⓪ 1ビットの誤りは必ず検出できる
① 2ビットが同時に誤ると検出できないことがある
② 誤りを検出しても、正しい値に戻すことはできない
③ 付け加えるビット数を増やさずに、誤りの位置まで特定できる
まず自分で解いてみる
(1)は数えるだけだが、数える対象が「データ7ビットの1の個数」なのか「パリティを含めた8ビット」なのかを取り違えると逆の答えが出る。定義は8ビット全体である。
(2)は受け取った8ビットを数えて偶数か奇数かを見る。そのうえで「検出」と「位置の特定」と「訂正」を区別するのがこの設問の中心である。
(3)は方式の限界を問う。できることを過大に言う選択肢が1つ混ぜてある。
ヒント:この設問で使う道具
偶数パリティの考え方は単純である。送るときに1の個数を必ず偶数にしておく。 受け取ったときに数えて奇数なら、途中で何かが起きたと分かる。
ここで区別すべき3つの段階がある。
| 段階 | 意味 | パリティ1ビットで |
|---|---|---|
| 検出 | 誤りが「ある」と分かる | できる(1ビット誤りなら確実に) |
| 位置の特定 | 「どこが」誤ったか分かる | できない |
| 訂正 | 正しい値に戻せる | できない |
なぜ位置が分からないのか。パリティビットが伝えているのは「1の個数が偶数か奇数か」という1ビットの情報だけだからである。8か所のどこが誤ったかを言い分けるには、少なくとも8通りを区別できる情報が要る。1ビットでは2通りしか区別できない。
誤りを訂正したい場合は、冗長なビットを増やす必要がある。データを縦横の表に並べて行ごと・列ごとにパリティを付ける水平垂直パリティにすると、1ビットの誤りは行と列の交点として位置が定まり、訂正できるようになる。
解答・解説を開く
🧭 方針
まず1の個数を数え、次に「何が分かって、何が分からないか」を切り分ける。
(1)はデータ部分の1の個数を数え、偶数にするために足りない分を補う。データ部分がすでに偶数個ならパリティは0、奇数個なら1である。
(2)は受信した8ビット全体を数える。奇数なら誤りありと判定される。ただし判定できるのはそこまでである。
(3)は「1ビットしか付けていないのに位置まで分かる」という主張を疑う。付加した情報量以上のことは分からない。
✍️ 解答
(1) = ⓪(0) (2) = ② (3) = ③
(1)の数え方を示す。データ 1011010 の1の個数は、1・0・1・1・0・1・0 と見て 4個である。すでに偶数なので、パリティビットは 0 とする。送信されるのは 10110100 で、1の個数は4個のままである。
(2)の数え方を示す。受信した 11001011 の1の個数は、1・1・0・0・1・0・1・1 と見て 5個である。
| 判定 | 結果 |
|---|---|
| 1の個数 | 5個(奇数) |
| 偶数パリティの約束 | 偶数であるはず |
| 結論 | 誤りが起きている |
| 位置 | 特定できない |
したがって「検出はできるが、位置は分からない」という②が正解になる。
✅ 検算
数え直すのではなく、誤りを1ビットだけ起こしてみて性質を確かめる。
正しい送信データ 10110100(1が4個)を用意する。ここで先頭の1が0に化けたとすると 00110100 となり、1の個数は3個で奇数になる。1ビットの誤りは、必ず1の個数の偶奇を反転させる。 だから1ビット誤りは確実に検出できる。(3)⓪が正しいことが確かめられた。
2ビット誤りも試す。 同じデータで先頭の1が0になり、さらに3番目の1も0になったとすると 00010100 で1の個数は2個、偶数である。偶奇が2回反転して元に戻ってしまうため、受信側は誤りに気づかない。(3)①が正しいことが確かめられた。偶数個の誤りは検出できないという限界がここにある。
位置が分からないことも具体的に確かめる。 受信データ 11001011 が奇数だと分かったとして、1ビット化けて奇数になる元のデータは何通りあるか。8か所のどのビットが化けても奇数になるので、候補は8通りある。受信側にはこの8通りを区別する材料が無い。ゆえに位置は特定できず、訂正もできない。(3)②が正しく、③が誤りである。
③をもう一段疑う。 仮に位置を特定するには、8か所を区別する情報、すなわち log28 = 3 ビット分が最低限必要になる。1ビットしか付けていないのだから、原理的に足りない。「付けた情報量」と「取り出せる情報量」を比べると、できないことがはっきりする。
💡 ここで効く一般則
検出・位置特定・訂正の3段階を必ず分ける。 選択肢はこの3つを混ぜて作られる。
パリティ1ビットでできるのは「奇数個の誤りの検出」だけ。 偶数個の誤りはすり抜ける。
1ビットの誤りは偶奇を必ず反転させる。 この一文が、検出できる理由そのものである。
訂正したければ冗長を増やす。 水平垂直パリティなら1ビット誤りの位置が行と列の交点で定まる。
学問的背景。 誤りを見つけるだけでなく直すところまで進めたのが、ハミングが1950年に示した誤り訂正符号である。ハミング符号は、複数のパリティビットを重なり合う位置に配置することで、誤ったビットの番号が符号の形で読み出せるように作られている。要点は符号語どうしを十分に「離して」おくという発想にある。2つの符号語が何ビット違うかを表す量をハミング距離といい、距離が3以上あれば1ビットの誤りを訂正できる。QRコードが一部汚れても読めるのも、CDに傷が付いても再生できるのも、同じ原理の拡張である。冗長性は無駄ではなく、誤りに耐えるために支払う対価である——この見方は情報Ⅱの符号理論につながる。
問6 第2問 B ネットワークと転送時間の計算
問題
(1) 通信速度 100 Mbps の回線を使って、500 MB のファイルを転送する。回線の伝送効率が80%であるとき、転送にかかる時間として最も近いものを一つ選べ。ただし 1 MB = 106 バイト、1 Mbps = 106 ビット/秒、1 バイト = 8 ビットとする。
⓪ 5秒 ① 40秒 ② 50秒 ③ 400秒
(2) 伝送効率が100%にならない理由として最も適当なものを一つ選べ。
⓪ 回線の物理的な長さによって信号が消えるから
① 宛先などの制御情報が本来のデータに加えて送られるから
② 受信側のコンピュータの画面の解像度が低いから
③ ファイルが圧縮されているから
(3) インターネットで用いられるIPアドレスについて、正しい記述を一つ選べ。
⓪ IPv4は32ビット、IPv6は128ビットで表される
① IPv4は8ビット、IPv6は32ビットで表される
② IPv4とIPv6はどちらも64ビットで、表記方法だけが異なる
③ IPアドレスは機器ごとに製造時に固定され、変更できない
まず自分で解いてみる
(1)はbit と Byte の取り違えを狙った設問である。回線の速度はビット毎秒、ファイルの大きさはバイト。どちらかに単位をそろえてから割る。
選択肢の⓪と③は、8倍または8分の1を間違えたときに出る値である。①は伝送効率を掛ける向きを逆にしたときに出る。
(3)は知識問題だが、ビット数を正確に覚えているかだけが問われている。
ヒント:この設問で使う道具
転送時間の計算は、次の3段階で必ず同じ形になる。
- データ量をビットに直す(バイト × 8)
- 実効速度を出す(回線速度 × 伝送効率)
- 割る(データ量 ÷ 実効速度)
転送時間 = データ量[bit] ÷ (回線速度[bps] × 伝送効率)
単位の書き分けにも注意する。小文字の b はビット、大文字の B はバイトである。Mbps の b は小文字でビット、MB の B は大文字でバイトを表す。
伝送効率が1未満になるのは、実際に流れるデータの中に本来送りたい中身以外のものが含まれるからである。宛先や送信元のアドレス、順序を示す番号、誤り検出用の情報などが各パケットに付く。これらをまとめてヘッダという。加えて再送や制御のやり取りも回線を使う。
IPアドレスは、ネットワーク上の機器を識別するための番号である。IPv4は32ビットで約43億通り、枯渇が問題となったためIPv6は128ビットに拡張された。機器に固定されて変えられない番号はMACアドレスで、これとは別物である。
解答・解説を開く
🧭 方針
単位をビットにそろえ、実効速度で割る。
ファイルの大きさをビットに直し、回線速度に伝送効率を掛けたものを実効速度として割る。効率は掛けるのか割るのかで迷ったら、「効率が下がれば時間は延びる」という向きで確かめる。
✍️ 解答
(1) = ②(50秒) (2) = ① (3) = ⓪
(1)の計算過程を示す。
| 手順 | 式 | 値 |
|---|---|---|
| データ量をビットへ | 500 × 106 × 8 | 4.0 × 109 ビット |
| 実効速度 | 100 × 106 × 0.8 | 8.0 × 107 ビット/秒 |
| 転送時間 | 4.0 × 109 ÷ 8.0 × 107 | 50 秒 |
✅ 検算
同じ式をなぞらず、効率100%の場合から出発して確かめる。
もし伝送効率が100%なら、4.0×109 ÷ 1.0×108 = 40秒である。効率が80%に落ちれば、同じ量を送るのに時間は1/0.8 = 1.25倍かかる。40 × 1.25 = 50秒。一致する。
この経路は、効率を掛けるか割るかの判断も同時に検証している。 効率が下がったのに時間が短くなる答えが出たら、その時点で向きを間違えている。①の40秒は、まさに効率を無視したときの値である。
誤答の出どころを確認する。 ⓪の5秒は、バイトをビットに直さずに割った値に近い(500×106 ÷ 8×107 = 6.25 秒)。③の400秒は、効率を掛けるべきところで0.1倍相当の扱いをしたか、107と108を取り違えた値である。単位換算の失敗は、必ず8倍・10倍単位のずれとして現れるので、桁が一つずれた答えが出たら換算を疑う。
(3)も別経路で確かめる。 IPv4が32ビットであることは、232 ≒ 43億という「枯渇した理由」から思い出せる。世界人口を下回る個数しかないため足りなくなった、という筋道で覚えておくと、8ビットや64ビットという選択肢は即座に消える。③はMACアドレスの説明であり、IPアドレスは接続するネットワークに応じて割り当てが変わる。
💡 ここで効く一般則
bps はビット、B はバイト。 転送時間の問題で失点する原因は、ほぼこの一点に集約される。
効率は実効速度に掛ける。 「効率が下がれば時間は延びる」で向きを確認する。
効率100%の場合をまず出す。 それを基準に倍率で補正すると、計算も検算も速い。
IPv4=32ビット、IPv6=128ビット、MACアドレス=機器固有。 この3つはセットで覚える。
学問的背景。 伝送効率が1にならないのは、通信が階層構造で作られていることの帰結である。アプリケーション層のデータに、順序と再送を管理するトランスポート層のヘッダが付き、その上に宛先を書くインターネット層のヘッダが付き、さらに物理的な伝送のための情報が付く。各層が自分の仕事のための情報を足していくため、実際に流れるビット列は中身より必ず大きくなる。この設計は非効率に見えるが、各層を独立に取り替えられるという決定的な利点を生んだ。電話線から光ファイバへ、無線へと下位層が変わってもアプリケーションを書き直さずに済んだのは、この階層化のおかげである。効率と柔軟性のどちらを取るかという設計上の判断が、そのまま数値に現れている。
問7 第3問 問1 プログラム(硬貨の枚数を最小にする)
問題
ある金額を、500円・100円・50円・10円・5円・1円の硬貨だけで支払う。使う硬貨の枚数ができるだけ少なくなるようにしたとき、その枚数を求めるプログラムを考える。
次のプログラムは、共通テスト用のプログラム表記で書かれている。ここで a ÷ b は商(小数点以下を切り捨てた値)を、a % b は余りを表す。配列の添字は0から始まる。
(1) 空欄 ア・イ に入れるものとして最も適当なものを、それぞれの解答群から一つずつ選べ。
ア の解答群
⓪ kingaku ÷ Koka[i] ① kingaku % Koka[i] ② Koka[i] ÷ kingaku ③ Koka[i]
イ の解答群
⓪ kingaku ÷ Koka[i] ① kingaku % Koka[i] ② kingaku − Koka[i] ③ kingaku − maisu
(2) このプログラムを実行したとき、表示される値を一つ選べ。
⓪ 6 ① 8 ② 10 ③ 12
(3) 仮に硬貨の種類が 1円・3円・4円の3種類だけの国があり、同じ考え方(大きい額から使えるだけ使う)で6円を支払うとする。このとき、この方法で求めた枚数と、実際に可能な最小の枚数の組合せとして正しいものを一つ選べ。
⓪ 3枚・3枚 ① 3枚・2枚 ② 2枚・2枚 ③ 2枚・3枚
まず自分で解いてみる
(1)は、繰り返しの中で「枚数を足す」行と「残額を減らす」行がそれぞれ何をすべきかを考える。商と余りのどちらを使うかが分かれ目である。
(2)は手で追跡するのが最も確実である。i が0から5まで動くので、6回分の表を書く。
(3)がこの問題の核心である。「大きい方から使えるだけ使う」という方針が、いつでも最善とは限らないことを確かめる設問になっている。
ヒント:この設問で使う道具
このプログラムが取っている方針を貪欲法という。その場その場でいちばん得に見える選択を繰り返す方法である。ここでは「いま使える最大の硬貨を、使えるだけ使う」を繰り返している。
1回の繰り返しで必要な処理は2つある。
- その硬貨を何枚使うか … 残額をその硬貨の額で割った商
- 残りいくらになるか … 残額をその硬貨の額で割った余り
商と余りが、そのまま「枚数」と「残額」に対応している。738 ÷ 500 は商1・余り238で、これは「500円玉を1枚使って238円残る」という意味そのものである。
追跡表の書き方も決めておく。繰り返しのある問題では、次の形の表を書くと間違えない。
| i | Koka[i] | 商(使う枚数) | maisu(累計) | kingaku(残額) |
|---|---|---|---|---|
| この形で1行ずつ埋めていく | ||||
解答・解説を開く
🧭 方針
「枚数は商、残額は余り」を当てはめ、あとは表で追う。
(5)行は maisu に足しているので、使った枚数が入る。枚数は「残額 ÷ 硬貨の額」の商である。
(6)行は kingaku を更新しているので、使い終わった後の残額が入る。残額は「残額 % 硬貨の額」の余りである。
(3)は方針そのものを検証する設問なので、実際に両方の払い方を書き出して比べる。
✍️ 解答
(1) ア = ⓪(kingaku ÷ Koka[i]) イ = ①(kingaku % Koka[i])
(2) = ②(10)
追跡表を示す。
| i | Koka[i] | 商(使う枚数) | maisu | kingaku |
|---|---|---|---|---|
| 開始 | — | — | 0 | 738 |
| 0 | 500 | 738 ÷ 500 = 1 | 1 | 238 |
| 1 | 100 | 238 ÷ 100 = 2 | 3 | 38 |
| 2 | 50 | 38 ÷ 50 = 0 | 3 | 38 |
| 3 | 10 | 38 ÷ 10 = 3 | 6 | 8 |
| 4 | 5 | 8 ÷ 5 = 1 | 7 | 3 |
| 5 | 1 | 3 ÷ 1 = 3 | 10 | 0 |
(3) = ①(3枚・2枚)
1円・3円・4円で6円を払う場合を書き出す。
| 方法 | 払い方 | 枚数 |
|---|---|---|
| 大きい方から使えるだけ | 4円 + 1円 + 1円 | 3枚 |
| 実際の最小 | 3円 + 3円 | 2枚 |
4円を使った瞬間に、残り2円を1円玉2枚で払うしかなくなる。 4円を使わずに3円を2枚選ぶほうが少なくて済む。その場の最善が全体の最善にならない例である。
✅ 検算
プログラムを追い直すのではなく、金額の側から確かめる。
枚数10枚の内訳は 500×1 + 100×2 + 10×3 + 5×1 + 1×3 である。金額を足すと 500 + 200 + 30 + 5 + 3 = 738。元の金額に一致する。枚数も 1+2+0+3+1+3 = 10。金額と枚数の両方が合ってはじめて追跡が正しいと言える。
空欄を入れ替えたらどうなるかも確かめる。 仮にアに ①(余り)を入れると、maisu には残額が足し込まれることになる。i=0 の時点で maisu が238になり、枚数としてあり得ない大きさになる。変数名が意味する量と、代入される値の桁が合うかを見れば、この誤りは1行目で気づける。
仮にイに ②(kingaku − Koka[i])を入れると、硬貨を1枚しか引かないことになる。738 − 500 = 238 まではたまたま合うが、次に 238 − 100 = 138 となり、100円玉を2枚使う処理ができない。「使えるだけ使う」を1行で表しているのが余りであるという理解が、ここで効く。
(3)を別の角度から確かめる。 6円という金額に対し、4円を1枚使うと残り2円になる。2円は3円でも4円でも払えないので1円玉2枚が確定し、合計3枚になる。一方4円を使わなければ、3円を2枚で6円ちょうどになる。「使えるだけ使う」が縛りになって、あとで融通がきかなくなるという構造がはっきり見える。
💡 ここで効く一般則
商は「何個分か」、余りは「残り」。 この対応が分かれば、両替・時間・桁の分解はすべて同じ形で書ける。
繰り返しの問題は必ず表で追う。 変数ごとに列を作り、1周ごとに1行。頭の中で追うと必ずどこかで取り違える。
検算は別の量で行う。 枚数を求めたなら、金額を足して元に戻るかを見る。同じ計算を二度するのは検算ではない。
変数名と代入される値の大きさが釣り合うかを見る。 枚数の変数に数百が入ったら、その行が誤っている。
学問的背景。 (3)が示しているのは、貪欲法が最適解を与えるかどうかは硬貨の額面の組み方に依存するという事実である。貪欲法が常に最小枚数を与えるような額面の組を正準(canonical)な硬貨系という。日本の 1・5・10・50・100・500 は正準なので、レジで無意識に行っている「大きい方から出す」が実際に最小枚数になる。一方 1・3・4 は正準ではない。一般の額面に対して最小枚数を求めるには、貪欲法ではなく動的計画法——小さい金額の答えを表に記録し、それを使って大きい金額を解く方法——が必要になる。「うまくいく方法」と「いつでもうまくいく方法」は違うという区別は、アルゴリズムを学ぶうえで最初に越えるべき段差であり、情報Ⅱの最適化の入り口でもある。共通テストでも、貪欲な手続きを示したうえで「この方法で必ず最小になるか」を問う形は出題されうる。
問8 第3問 問2 探索アルゴリズムと計算量
問題
小さい順に並んだ 1024 個のデータの中から、目的の値を探す。
(1) 先頭から順に1つずつ比べていく方法を線形探索(逐次探索)という。この方法で、目的の値が見つかるまでに必要な比較回数の最大を一つ選べ。
⓪ 10回 ① 32回 ② 512回 ③ 1024回
(2) 中央の値と比べて探す範囲を半分に絞ることを繰り返す方法を二分探索という。この方法で、探す範囲が1個になるまでに必要な絞り込みの回数の最大を一つ選べ。
⓪ 10回 ① 32回 ② 512回 ③ 1024回
(3) 二分探索について、正しい記述を一つ選べ。
⓪ データが並べ替えられていなくても使える
① データが小さい順または大きい順に並んでいる必要がある
② データの個数が2の累乗のときしか使えない
③ 線形探索よりも必ず少ない回数で見つかる
まず自分で解いてみる
(1)と(2)は選択肢が同じである。同じ4つから選ばせることで、2つの方法の差を数値で実感させる作りになっている。
(3)の③は「必ず少ない」と言い切っている点に注意する。最悪の場合の話と、たまたまの場合の話は違う。
ヒント:この設問で使う道具
2つの探索の違いは、1回の比較で候補がどれだけ減るかにある。
| 線形探索 | 二分探索 | |
|---|---|---|
| 1回の比較で減る候補 | 1個 | 半分 |
| n個での最大回数 | n 回 | 約 log2n 回 |
| 並べ替え | 不要 | 必要 |
二分探索の回数は、「半分にするのを何回繰り返すと1になるか」で求まる。1024 → 512 → 256 → … と下がっていく回数を数えればよい。これは 2 を何乗すると1024になるか、すなわち log21024 と同じである。
覚えておく値を再掲する。
210 = 1024 29 = 512 28 = 256
解答・解説を開く
🧭 方針
線形探索は個数そのもの、二分探索は半分にする回数。
線形探索の最悪は、目的の値が最後にある場合である。全部と比べることになるので、回数は個数に等しい。
二分探索は、1024を半分にし続けて1になるまでの回数を数える。
✍️ 解答
(1) = ③(1024回) (2) = ⓪(10回) (3) = ①
二分探索の絞り込みを書き出す。
| 回数 | 残る候補 | 回数 | 残る候補 |
|---|---|---|---|
| 0 | 1024 | 6 | 16 |
| 1 | 512 | 7 | 8 |
| 2 | 256 | 8 | 4 |
| 3 | 128 | 9 | 2 |
| 4 | 64 | 10 | 1 |
| 5 | 32 |
1024回と10回。約100倍の差がついている。データが増えるほどこの差は開く。
✅ 検算
表を数え直すのではなく、逆向きに掛けて確かめる。
1回の絞り込みで候補が半分になるのだから、10回の絞り込みで扱える個数は 210 = 1024 である。ちょうど一致する。「n回で 2n 個まで扱える」と考えれば、表を書かなくても即答できる。
小さい場合で構造を確かめる。 8個のデータなら 8 → 4 → 2 → 1 で3回、23 = 8 と合う。4個なら2回、22 = 4 と合う。小さい場合で式が合うことを確かめてから大きい場合に適用するのが、この種の問題で最も安全な手順である。
(3)③を反例で否定する。 目的の値が配列の先頭にある場合を考える。線形探索なら1回目の比較で見つかる。二分探索は中央から始めるので、先頭にたどり着くまでに何回か絞り込みが必要になる。この場合は線形探索のほうが速い。 「必ず」と書かれた選択肢は、反例を1つ作れば否定できる。二分探索が優れているのは最悪の場合と平均であって、すべての場合ではない。
(3)②も確かめる。 個数が1000個でも二分探索は使える。中央で割り切れないときは、どちらかに1個多く含めればよいだけである。回数は 29 = 512 < 1000 ≦ 1024 = 210 より最大10回で、2の累乗である必要はない。
①が必要条件であることも確かめる。 並んでいなければ、中央の値と比べても目的の値が左右どちらにあるか判断できない。「半分を捨てられる」という二分探索の利点は、順序があってはじめて成立する。
💡 ここで効く一般則
線形探索は n 回、二分探索は log2n 回。 個数が1024なら1024回と10回。この具体例を1つ覚えておくと換算が速い。
二分探索には「並んでいること」が要る。 前提条件を問う選択肢は頻出である。
「必ず」「常に」と書かれた選択肢は反例を探す。 1つ見つかれば否定できる。
最悪・平均・最良を区別する。 どの場合の話をしているかで、正しい記述が変わる。
学問的背景。 二分探索の10回という数は、問4で扱った情報量と同じ量である。1024通りから1つを特定するのに必要な情報は log21024 = 10 ビットで、二分探索の1回の比較は「上か下か」というちょうど1ビットの情報を取り出している。だから10回でぴったり終わる。逆に言えば、比較だけで探す方法は、どんなに工夫しても log2n 回より速くはならない。これは比較に基づく探索の理論的な下限であり、同じ議論から「比較に基づく整列は n log n 回より速くできない」という有名な下限も導かれる。アルゴリズムの速さに理論的な限界があるという視点は、情報Ⅱの計算量の分野で正面から扱われる。なお、ハッシュ表のように比較以外の方法を使えばこの下限を回避できる点も、あわせて知っておくと理解が立体的になる。
問9 第4問 問1 四分位数・箱ひげ図・外れ値
問題
ある小テスト(100点満点)を受けた11人の得点を、小さい順に並べたものが次である。
32, 41, 45, 48, 52, 55, 58, 61, 65, 72, 98
(1) 第1四分位数 Q1、中央値、第3四分位数 Q3 の組合せとして正しいものを一つ選べ。ただし、中央値で2つに分けた下位・上位のそれぞれの中央値を Q1、Q3 とし、中央値そのものはどちらにも含めないものとする。
⓪ Q1=45、中央値=55、Q3=65
① Q1=45、中央値=55、Q3=72
② Q1=48, 中央値=52、Q3=65
③ Q1=41、中央値=58、Q3=72
(2) 四分位範囲(IQR)の値を一つ選べ。
⓪ 10 ① 20 ② 27 ③ 66
(3) 「Q1 − 1.5 × IQR より小さい値、または Q3 + 1.5 × IQR より大きい値を外れ値とする」という基準を用いる。このデータで外れ値となる値として正しいものを一つ選べ。
⓪ 32のみ ① 98のみ ② 32と98 ③ 外れ値はない
まず自分で解いてみる
データはすでに小さい順に並んでいる。並べ替えの手間はないので、位置を正確に取ることに集中する。
11個という奇数個であることが重要である。中央値がデータの1つと一致し、それを除いて上下に5個ずつ分かれる。
(3)は計算した境界と実際の値を比べる。下側と上側の両方を確かめること。片方だけ見て答えると誤答の②や⓪を選びやすい。
ヒント:この設問で使う道具
四分位数は、データを小さい順に並べて4等分する位置の値である。
- 中央値(Q2) … 全体のまん中
- Q1 … 下半分のまん中
- Q3 … 上半分のまん中
データが奇数個のときは、中央値を上下どちらにも含めない方法が一般的である(この問題でも指定されている)。11個なら、中央値を除いて下位5個・上位5個に分かれる。
四分位範囲は IQR = Q3 − Q1 で、真ん中50%がどれだけ散らばっているかを表す。
外れ値の判定には次の境界を使う。
下側境界 = Q1 − 1.5 × IQR 上側境界 = Q3 + 1.5 × IQR
この境界より外にある値を外れ値とみなす。1.5という係数は慣習的に定められた値であり、数学的に一意に決まるものではない。
箱ひげ図では、箱の両端が Q1 と Q3、箱の中の線が中央値、ひげの先が外れ値を除いた最大・最小、外れ値は点で表される。
解答・解説を開く
🧭 方針
位置を数えて四分位数を取り、境界を計算して両側を確かめる。
11個なので中央値は6番目。それを除いた下位5個・上位5個それぞれの3番目が Q1・Q3 になる。
✍️ 解答
(1) = ⓪ (2) = ①(20) (3) = ①(98のみ)
位置の取り方を示す。
| 番号 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 値 | 32 | 41 | 45 | 48 | 52 | 55 | 58 | 61 | 65 | 72 | 98 |
| 役割 | Q1 | 中央値 | Q3 |
IQR = 65 − 45 = 20。境界は次のようになる。
| 境界 | 計算 | 値 | 該当する値 |
|---|---|---|---|
| 下側 | 45 − 1.5 × 20 | 15 | 15より小さい値は無い(最小は32) |
| 上側 | 65 + 1.5 × 20 | 95 | 98 が 95 を超える |
よって外れ値は 98のみである。
✅ 検算
位置を数え直すのではなく、個数の対称性で確かめる。
Q1 = 45 が正しければ、45より小さい値は2個(32, 41)、45と中央値の間は2個(48, 52)でなければならない。実際にそうなっている。下位5個の中で3番目に位置しているので、両側に2個ずつ——この対称性が崩れていたら位置を取り違えている。Q3 = 65 も同様で、両側に 58, 61 と 72, 98 が2個ずつある。
誤答の作られ方を確認する。 ③の「Q1=41、中央値=58」は、位置を1つずつずらしたときに出る値である。②の「中央値=52」は、11個を5個・6個に誤って分けたときに出る。奇数個か偶数個かを最初に確認するだけで、この2つは避けられる。
(3)を境界のすぐ内側でも確かめる。 上側境界は95である。データの中で95に最も近いのは72と98で、72 < 95 なので外れ値ではなく、98 > 95 なので外れ値である。境界ちょうどの値は外れ値に含めないという約束も確認しておく。もし最大値が95だったなら、95 は 95 を超えていないので外れ値ではない。
下側も必ず確かめる。 最小値32は下側境界15よりずっと大きい。「見るからに小さい値があるから外れ値だろう」という印象で答えない。 32は平均から離れて見えるが、基準に照らせば外れ値ではない。②や⓪を選ばせる誘導がここにある。
98が分布に与える影響も見ておく。 11人の平均を計算すると (32+41+45+48+52+55+58+61+65+72+98) ÷ 11 = 627 ÷ 11 = 57。中央値55より高い。平均は外れ値に引っ張られるが、中央値はほとんど動かない。 98を70に変えても中央値は55のままだが、平均は54.5まで下がる。この違いが、外れ値のあるデータで中央値が選ばれる理由である。
💡 ここで効く一般則
まず個数が奇数か偶数かを確認する。 中央値の取り方と上下の分け方が変わる。
四分位数は「位置」で取る。 値の大小の印象ではなく、何番目かを数える。
外れ値の判定は必ず両側を計算する。 片側だけ見ると誤答に誘導される。
平均は外れ値に弱く、中央値は強い。 どちらを代表値に使うかは、外れ値の有無で判断する。
学問的背景。 1.5 × IQR という基準は、統計学者テューキーが箱ひげ図とともに提案したものである。この 1.5 に数学的な必然性はなく、正規分布に従うデータならおよそ0.7%程度しか外に出ないという経験的な目安から選ばれている。重要なのは、外れ値と判定されたからといって削除してよいとは限らないという点である。測定ミスなら除くべきだが、実際に起きた稀な事象なら、それこそが最も重要な情報かもしれない。不正検知も設備の異常検知も、外れ値を「見つけるべきもの」として扱う。基準は判断の材料であって、判断そのものではない。 情報Ⅰのデータ活用が「処理の手順」だけでなく「解釈の妥当性」まで問うのは、この点に理由がある。
問10 第4問 問2 相関と因果(擬似相関)
問題
ある市の1年間のデータを日ごとに集めたところ、「アイスクリームの売上」と「熱中症の搬送者数」の間に強い正の相関(相関係数 0.82)が見られた。
(1) この結果から言えることとして最も適当なものを一つ選べ。
⓪ アイスクリームを食べると熱中症になりやすくなる
① 熱中症の搬送者が増えるとアイスクリームが売れる
② 2つの量は同じ向きに変化しているが、一方が他方の原因とは断定できない
③ 2つの量の間には関係がない
(2) この見かけ上の相関を生んでいると考えられる第三の要因として最も適当なものを一つ選べ。また、そのような要因を何と呼ぶか。
⓪ 気温/交絡因子 ① 曜日/外れ値 ② 人口/標本 ③ 価格/欠損値
(3) (2)の要因が原因であることを確かめる方法として最も適当なものを一つ選べ。
⓪ 相関係数をもう一度計算し直す
① 気温がほぼ同じ日どうしを集めて、その中で2つの量の相関を調べる
② データの個数を増やして相関係数が上がるか見る
③ 散布図の軸の目盛りを変えて傾きを大きくする
まず自分で解いてみる
相関係数0.82は確かに強い相関である。だから③のように「関係がない」と言うのは誤りになる。相関を否定するのではなく、因果を否定するのがこの論点である。
(3)は方法を問う実践的な設問である。第三の要因を固定したらどうなるかを考える。
ヒント:この設問で使う道具
相関は「一方が増えると他方も増える(減る)」という数値上の傾向を表す。因果は「一方が他方を引き起こす」という仕組みの主張である。この2つは別物で、相関があっても因果があるとは限らない。
相関はあるが因果がない状態を擬似相関(見かけの相関)という。典型的な原因は、両方に影響を与える第三の量が背後にあることで、この第三の量を交絡因子という。
図で表すと次の構造になる。
| 構造 | 矢印 | AとBの相関 | AとBの因果 |
|---|---|---|---|
| 因果がある | A → B | あり | あり |
| 擬似相関 | C → A、C → B | あり | なし |
交絡因子は両方へ矢印を伸ばしている点が特徴である。片方にしか影響しない量は交絡因子ではない。
交絡を確かめる基本的な手続きは層別である。交絡因子の値がほぼ同じグループに分けて、その中で相関を見る。相関が消えるなら、元の相関は交絡因子によるものだったと判断できる。
解答・解説を開く
🧭 方針
相関は認め、因果だけを否定する。そして第三の量を探す。
(1)は、⓪と①が因果を主張し、③が相関を否定している。相関は事実として観測されているので③は落ちる。 残るのは因果を断定しない②である。
(2)は、アイスクリームの売上と熱中症の搬送者数の両方に影響する量を探す。気温が上がれば冷たいものが売れ、同時に熱中症も増える。
(3)は交絡因子を固定する方法を選ぶ。
✍️ 解答
(1) = ② (2) = ⓪(気温/交絡因子) (3) = ①
各選択肢が何を主張しているかを整理する。
| 選択肢 | 主張 | 判定 |
|---|---|---|
| ⓪ アイス→熱中症 | 因果を断定 | ×(根拠なし) |
| ① 熱中症→アイス | 逆向きの因果を断定 | ×(根拠なし) |
| ② 同じ向きに変化するが因果は断定できない | 相関を認め、因果を保留 | ○ |
| ③ 関係がない | 相関を否定 | ×(相関係数0.82と矛盾) |
「相関はある。しかし因果とは言えない」——この言い方が正確な表現になる。逆接が入るのは、前半を認めたうえで後半を否定する構造だからである。
✅ 検算
用語を確認し直すのではなく、実際に層別したらどうなるかを想像して確かめる。
気温が35℃前後の日だけを集めたとする。その中でも、アイスクリームがよく売れた日とそうでない日がある。もしアイスクリームが熱中症の原因なら、同じ35℃の日どうしで比べても、売上が多い日ほど搬送者が多くなるはずである。そこで実際の層別データを調べ、相関がほとんど消えるかを確認する。層別後に相関が消えたなら、元の相関が気温による交絡だった可能性が高まる。 これが(3)①の手続きである。
誤答も具体的に確かめる。 ⓪の「相関係数を計算し直す」では、同じデータから同じ値が出るだけで何も新しいことは分からない。②の「データを増やす」では、気温という交絡因子が残ったままなので、むしろ相関係数はより安定して高い値に近づく。データを増やしても交絡は解消しない——これは重要な点で、データ量が多いほど信頼できるという直感の落とし穴になっている。③の「軸の目盛りを変える」は見た目を変えるだけで、相関係数は軸の目盛りに依存しないので値は1ミリも動かない。
因果の向きも吟味する。 仮に⓪が正しいとすると、真冬にアイスクリームを大量に食べた人が熱中症で搬送されることになる。実際にはそうならない。季節を変えて考えると、因果の主張が成り立たないことがはっきりする。 ①も同様で、熱中症の搬送が増えたことがアイスクリームの購買を引き起こすという経路は考えにくい。
交絡因子の条件も確認する。 気温は、アイスクリームの売上にも熱中症の搬送者数にも影響する。両方に矢印が伸びているので交絡因子の条件を満たす。①の「曜日」は売上には影響しうるが搬送者数への影響は弱く、片側にしか矢印が伸びない。②の「人口」は日ごとにほとんど変化しないので、日々の変動を説明できない。
💡 ここで効く一般則
擬似相関で否定されるのは因果であって相関ではない。 「関係がない」という選択肢は、この時点で誤りである。
交絡因子は両方へ矢印を伸ばす。 片方にしか効かない量は候補から外れる。
層別して相関が消えるかを見る。 これが交絡を確かめる実際の手続きである。
データを増やしても交絡は消えない。 精度が上がるだけで、偏りは残る。
具体例を1つ持っておく。 気温とアイスと熱中症、身長と語彙力(年齢が交絡)など。迷ったら具体例に戻す。
学問的背景。 相関から因果を取り出すことは、統計学の中心的な難問である。最も強い方法はランダム化比較実験で、条件を無作為に割り当てることで、測定していない交絡因子まで含めて両群の条件をならすことができる。しかし気温を人為的に割り当てることはできないし、倫理的に実験できない対象も多い。そこで観察データから因果を推論する手法——層別、回帰による調整、傾向スコア、操作変数法など——が発展してきた。パールらが整理した因果ダイアグラムは、どの変数で調整すべきか(そして調整してはいけない変数は何か)を図から判定できるようにした枠組みである。興味深いことに、調整すると かえって偏りが生まれる変数(合流点)も存在し、「とりあえず全部の変数で調整する」は誤りになる。情報Ⅱのデータサイエンス分野では、この「何で調整するか」という設計の問題が正面から扱われる。
オリジナル大問を「本番100点・60分」で通す実戦セット4回分
このページの10問を解き終えた人へ。数強塾では、共通テストの出題の型ごとにオリジナル大問を作り、プログラミング(第3問形式)10回分・データの活用(第4問形式)10回分・第1問・第2問(小問集合)4回分として公開しています。これらを本番と同じ大問構成に組み直すと、100点満点の模試があと4回分できます。下の表の1行が1回分です。リンク先では解答・解説を開かずに、通しで解いてください。
| 第1問・第2問(50点) | 第3問(25点) | 第4問(25点) | |
|---|---|---|---|
| セットA | 小問集合 第1回 | プログラミング 第1回 | データの活用 第1回 |
| セットB | 小問集合 第2回 | プログラミング 第2回 | データの活用 第2回 |
| セットC | 小問集合 第3回 | プログラミング 第3回 | データの活用 第3回 |
| セットD | 小問集合 第4回 | プログラミング 第4回 | データの活用 第4回 |
時間配分:第1問15分 / 第2問15分 / 第3問13分 / 第4問12分 / 見直し5分 = 60分。配点は第1問20点・第2問30点・第3問25点・第4問25点で、合計ちょうど100点になります。
残りの大問の使い方。 プログラミングとデータの活用は第5回〜第10回も公開しています。実戦セットを4回終えたあとは、苦手な型だけを選んで単元別に演習してください。プログラミングは並べ替え・関数・乱数・二分探索・互除法・素数判定、データの活用は欠損値・度数分布・偏差値・移動平均・語の集計・2群比較と、回ごとに扱う型が異なります。
共通テスト 情報Ⅰ 予想問題のよくある質問
2027年度の本番で、このテーマがそのまま出ますか?
断定できません。本ページは大学入試センター非公式のオリジナル教材です。公式の問題作成方針と公開済み問題から、出題されても対応できる基礎概念と考察手順を選んでいます。「題材の的中」ではなく、初見資料でも使える解法を身につけるために使ってください。
共通テスト「情報Ⅰ」の予想問題は、いつ解くのがよいですか?
用語を一周した後、過去問に入る前の実戦確認、または過去問を使い切った後の初見演習として使えます。50点未満なら各解説から情報Ⅰ 最強120講義へ戻り、70点以上なら2025・2026年度の全問解説へ進むのが目安です。
プログラミング経験がなくても解けますか?
解けます。問7・問8は特定のプログラミング言語の知識ではなく、問題文で定義された表記を読み、変数や候補数の変化を紙で追う力を問います。本番と同じく、知らない表記でも定義から読めるようにしています。
このページの問題は、公式問題や市販教材の転載ですか?
転載ではありません。数強塾・情報ラボが作成したオリジナル問題です。大学入試センターの公式資料は、出題方針と範囲の確認に参照し、問題文・数値・選択肢・解説は独自に構成しています。
作問・検証・更新方針
問題、選択肢、正解、解説、検算が同じ条件を参照するように管理し、計算問題は別経路でも数値を照合しています。法律・暗号・統計は、学習上の簡潔さを保ちながら、実務上の例外を不当に断定しない表現へ更新します。誤りや曖昧さが見つかった場合は、URLを変えずに訂正し、この欄に更新日を残します。
作問・解説:数強塾 情報ラボ
監修:藤原進之介(『藤原進之介の ゼロから始める情報I』KADOKAWA 著者)
公開状態:問題・解答・解説を掲載/無料・登録不要
最終更新:2026年8月30日
今回の更新:令和9年度問題作成方針への対応、100点換算と時間配分、一次情報、著者書誌、FAQを追加。商標、デジタル署名、擬似相関の表現を厳密化。
大学別「情報」過去問 解答解説(全12大学・149問)
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- 北海道情報大学 一般選抜 サンプル問題 2025全14問
- 東北学院大学 一般選抜 サンプル問題 2025全12問
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- 武蔵野大学 一般選抜A日程(2/4) 2026全13問
- 武蔵野大学 一般選抜A日程(2/6) 2026全14問
- 京都産業大学 公募推薦入試 2026全12問
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- 京都産業大学 情報入試模擬試験 2024全7問
- 明治大学 情報コミュニケーション学部 情報総合問題 2020全7問
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情報ラボの学習コンテンツ
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- 情報Ⅰ・情報関係基礎の過去問PDF一覧共通テスト・私大
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- 情報ラボの料金とご利用の流れ
- 社会人向け「情報Ⅰ」講座50分×12コマ
この解説は、オンライン数学専門塾数強塾の情報科目専門塾「情報ラボ」が制作しています。監修は藤原進之介(株式会社数強塾 代表取締役/『藤原進之介の ゼロから始める情報I』KADOKAWA 著者)。共通テスト「情報Ⅰ」で得点するための解き方を、方針・解答・独立した検算・一般則の順で示しています。
プログラミング(第3問)だけを集中演習したい人へ:第3問と同じ形式の大問6回分を新設しました → 共通テスト 情報Ⅰ プログラミング予想問題(オリジナル大問10回分・全問解説) / データの活用(第4問)予想問題(大問10回分・全問解説) / 第1問・第2問(小問集合)予想問題(4回分・全問解説)
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共通テスト「情報Ⅰ」の本試験・追試験・試作問題と、情報関係基礎の全問解説を1ページにまとめています。市販の演習材料が少ない科目なので、公開分を全部使い切るのが確実です。
共通テスト「情報Ⅰ」・情報関係基礎の全問解説(一覧) / 情報Ⅰ 最強120講義で用語に戻る / 共通テスト数学の全問解説 / 情報Ⅰ 予想問題 全735問の分野別一覧