日本大学 文理学部公開問題2025年度の「情報」から、全3問の解答解説を掲載します。いずれも設問の構造・方針・解答・独立した検算まで示しています。問題文そのものは掲載していませんので、大学公表の問題と併せてご利用ください。
このページの内容
- 日本大学 文理学部 公開問題『情報』2025 大問Ⅰ 問1
- 日本大学 文理学部 公開問題『情報』2025 大問Ⅰ 問2
- 日本大学 文理学部 公開問題『情報』2025 大問Ⅰ 問4(2)
問1 日本大学 文理学部 公開問題『情報』2025 大問Ⅰ 問1
まず自分で解いてみる
前半で装置の名称と、その装置が担わない機能を選ばせる。後半で基本ソフトウェアの説明として適切なものを選ばせる。
装置の選択肢には、記憶装置・接続規格・利用者との対話方式・描画専用の処理装置など、層の違う略語が並ぶ。略語の意味を知っているかではなく、何を担う装置かを問うている。
基本ソフトウェアの選択肢には、閲覧用の応用ソフトウェア、利用者との対話方式、周辺機器の制御プログラムが混ぜられている。いずれもコンピュータを動かすのに関わるが、資源の管理を担うものは1つだけである。
ヒント:この設問で使う道具
コンピュータの中心にあるのが中央処理装置である。演算装置と制御装置という2つの機能を1つにまとめたもので、五大装置のうち2つを担っている。
その役割は次の2つに尽きる。
- 制御 … 命令をメモリから読み取り、解読して各装置へ指示を出す
- 演算 … 読み込んだ値に対して四則演算や論理演算を行う
逆に、担っていない役割を押さえることが理解の確認になる。電源を切った後もデータを保持するのは補助記憶装置の役目であり、中央処理装置の機能ではない。中央処理装置の内部にあるレジスタは電源が切れれば内容を失う。
もう一つ、基本ソフトウェアの役割も区別する。これは個々の応用ソフトウェアを動かす土台となるもので、中心的な役割は資源の管理にある。メモリ・処理時間・入出力装置といった限られた資源を、複数の応用ソフトウェアへ配分し、互いに干渉しないよう調停する。
解答・解説を開く
🧭 方針
「何を担う装置か」で絞り、次に「担わないもの」を消去法で決める。
演算と制御の両方を担う装置は1つしかない。記憶装置は記憶、接続規格は接続、対話方式は操作の仕方であって、いずれも演算も制御も行わない。描画専用の処理装置は演算を行うが、コンピュータ全体の制御は担わない。
担わない機能を選ぶ設問では、残る3つが中央処理装置の役割として妥当かを確認する。命令の読み取りと実行、論理演算、入出力装置への制御信号——これらはいずれも制御か演算に属する。電源を切った後の保持だけが、別の装置の役割である。
基本ソフトウェアについては、「複数の応用ソフトウェアのために何かを調整する」という記述を探す。個別の機能を提供するものは応用ソフトウェアであって、基本ソフトウェアではない。
✍️ 解答
- 演算装置と制御装置の機能を持つ装置 → 中央処理装置(CPU)
- その装置が担わない機能 → 電源を切った後もプログラムやデータを記憶する
- 基本ソフトウェアの説明 → 複数の応用ソフトウェアを同時に動作させるため、メモリなどの資源を管理する
役割の対応を整理する。
| 機能 | 担う装置・ソフトウェア |
|---|---|
| 命令の読み取りと実行 | 中央処理装置(制御) |
| 論理演算・四則演算 | 中央処理装置(演算) |
| 入出力装置への制御信号 | 中央処理装置(制御) |
| 電源を切った後の保持 | 補助記憶装置 |
| 資源の配分と調停 | 基本ソフトウェア |
電源との関係が装置を分ける決定的な線である。中央処理装置も主記憶も、電源が切れれば内容を失う。保持し続けられるのは補助記憶装置だけである。
✅ 検算
名称を思い出す経路とは別に、その機能が失われたら何が起きるかで確かめる。
中央処理装置が電源を切った後もデータを保持するとしたらどうなるか。前回の実行途中の値が残ったまま次回の処理が始まることになり、毎回異なる結果が出てしまう。実際には電源投入時に初期化された状態から始まる。保持しないことが正常な動作の前提になっている。
基本ソフトウェアが資源を管理しないとしたら、複数の応用ソフトウェアが同じメモリ領域を奪い合い、互いのデータを壊してしまう。同時に動かすこと自体が成立しない。同時実行が可能であること自体が、資源管理が働いている証拠である。
排除した選択肢も確認する。 閲覧用のソフトウェアは通信して画面に表示する個別の機能を提供するもので、応用ソフトウェアにあたる。周辺機器の制御プログラムは機器ごとに必要になるもので、資源全体の管理は行わない。対話方式は操作の仕方の分類であって、ソフトウェアの種類ではない。どれも「複数の応用ソフトウェアのために調整する」という記述に当てはまらない。
装置の候補も逆から確かめる。 記憶装置に演算をさせようとしても、演算回路を持たないのでできない。接続規格は装置ではなく取り決めである。演算と制御を両方担うものは1つしかない。
💡 ここで効く一般則
中央処理装置=演算装置+制御装置。 五大装置のうち2つを担う。記憶・入力・出力は別の装置である。
電源を切ると失われるかどうかで、記憶装置を二分する。 主記憶とレジスタは失われ、補助記憶は残る。
「担わない機能」を問う設問では、残りが担う機能として妥当かを確認する。 3つが妥当なら残る1つが答えである。
基本ソフトウェアの本質は資源の管理。 個別の機能を提供するものは応用ソフトウェアである。
略語の綴りではなく、何を担うかで判断する。 選択肢は層の違うものを混ぜてくる。
情報Ⅱでは、この区別が仮想化の理解につながる。基本ソフトウェアが資源を管理しているからこそ、物理的な装置を複数の利用者へ分割して見せることができる。1台の機械が複数台に見える仕組みは、資源管理という役割の延長線上にある。管理する主体があることが、抽象化を可能にしている。
問2 日本大学 文理学部 公開問題『情報』2025 大問Ⅰ 問2
まず自分で解いてみる
4つの空欄が、言語の種類、タグに付随する情報の呼び名、装飾用の言語名、配慮すべき概念の順に並ぶ。
装飾用の言語名の選択肢は、正しい綴りと文字を並べ替えた紛らわしい略語が混ぜられている。意味からは絞れないので、綴りを正確に覚えているかが問われる。
最後の空欄の選択肢は、いずれも「〜ビリティ」で終わる語である。語尾の共通性で紛らわせておいて、意味で選ばせる構成になっている。
ヒント:この設問で使う道具
Webページは、役割の異なる2つの言語で作られる。
構造を記述する言語 — 見出し・段落・リンク・表といった、文書の骨組みを示す。タグで囲むことで「ここは見出しである」といった意味を与える。この方式をマークアップと呼び、そのための言語がマークアップ言語である。計算の手順を書くプログラミング言語とは目的が根本的に違う。
見た目を記述する言語 — 色・大きさ・配置といった装飾を担う。構造とは別のファイルに分けて書くのが基本で、こうすると同じ構造に別の見た目を当てられる。
タグの中に書き足す情報を属性という。リンク先の指定のように、その要素に付随する設定を「名前=値」の形で与える。プログラミング言語の変数やクラスのメンバとは別の概念である。
もう一つ、アクセシビリティを押さえる。年齢や障害の有無にかかわらず情報へ到達できることを指す。視覚に頼らず読み上げで内容を得る利用者にとって、構造が正しく記述されているかどうかが決定的になる。見た目だけを整えて構造を持たない文書は、読み上げると意味の順序が崩れる。
解答・解説を開く
🧭 方針
それぞれの語が「何のためのものか」を確認してから当てる。
言語の種類は、本文が「構造を表すために使用される」と述べている。構造に印を付ける方式なので、印付けを意味する語を選ぶ。手順を記述する言語でも、問い合わせのための言語でも、人が話す言語でもない。
タグに付随する情報の呼び名は、HTMLの文脈での用語を選ぶ。他の選択肢はいずれもプログラミング言語で使われる語であり、文書の記述で使う語ではない。
装飾用の言語名は綴りで判断する。Cascading Style Sheets の頭文字なので、その順序になる。
最後の空欄は、本文の「視覚以外の手段で情報を取得する」という記述に対応する語を選ぶ。到達しやすさを意味する語である。
✍️ 解答
- Webサイトの構造を表す言語 → マークアップ言語
- 要素が持てる付随情報 → 属性
- 装飾を記述するスタイル言語 → CSS
- 視覚以外の手段での情報取得に配慮する概念 → アクセシビリティ
構造と見た目の分担を整理する。
| 担当 | 言語 | 記述する内容 |
|---|---|---|
| 構造 | マークアップ言語 | 見出し・段落・リンク・表 |
| 見た目 | スタイル言語 | 色・大きさ・配置 |
分けて書くことに意味がある。 同じ構造に別の見た目を当てられるので、画面の大きさに応じて表示を変えられる。読み上げソフトは見た目を無視して構造だけを辿るため、構造が正しければ音声でも意味が通る。
「〜ビリティ」で終わる語の区別も押さえる。
| 語 | 意味 |
|---|---|
| アクセシビリティ | 誰もが情報へ到達できること |
| ユーザビリティ | 使いやすさ |
| スケーラビリティ | 規模の拡大に耐えること |
| サステナビリティ | 持続可能であること |
| アカウンタビリティ | 説明する責任 |
✅ 検算
語を当てはめ直すのではなく、その概念が欠けたときに何が起きるかで確かめる。
構造を記述しなかった場合。 文字を大きくして色を変えただけの行は、見た目には見出しに見える。しかし読み上げソフトには「大きい文字」という情報しか伝わらず、見出しとして認識されない。利用者は見出しだけを拾って全体を把握することができなくなる。見た目と構造が別物であることが、この場面で顕在化する。
スタイル言語を使わず装飾を構造の中に混ぜた場合。 色を変えたいときに文書全体を書き直すことになる。また、画面の大きさに応じて配置を変えることも難しくなる。分離の利点が失われる。
アクセシビリティの語も逆から確かめる。 本文は「視覚障害者が視覚以外の手段で情報を取得するため」と述べている。使いやすさを意味する語では、視覚以外の手段という限定が説明できない。規模や持続可能性を意味する語は、そもそも情報への到達とは無関係である。本文の限定句に対応するのは1つだけである。
属性の語も検算する。 他の候補はプログラミング言語で値を保持する仕組みを指す語である。タグに書き足す設定を指す語としては使われない。文脈が言語の種類を決めている。
💡 ここで効く一般則
構造はマークアップ言語、見た目はスタイル言語。分けて書く。 この分離が、表示の切り替えと読み上げ対応の両方を可能にする。
タグに書き足す設定は属性。 プログラミング言語の用語と混同しない。
「〜ビリティ」の語は意味で区別する。 到達しやすさ、使いやすさ、拡張性、持続可能性、説明責任。語尾が同じでも指すものは全く違う。
構造を正しく書くことがアクセシビリティの基礎。 見た目で見出しに見せるのではなく、見出しとして記述する。
情報Ⅱでは、この話が情報デザインの評価へ発展する。アクセシビリティには国際的な指針があり、文字と背景の明度差、キーボードだけでの操作可能性、代替テキストの提供などが具体的な項目として定められている。「配慮する」という心構えではなく、満たすべき条件として検証できる形になっている点が、実務では重要になる。
問3 日本大学 文理学部 公開問題『情報』2025 大問Ⅰ 問4(2)
まず自分で解いてみる
2つの空欄が連続している。
前半は第三の量を指す用語を選ばせる。選択肢には「〜因子」で終わる語が4つ並び、うち3つは統計用語として存在しないか、この文脈では使われない語である。
後半は、擬似相関が疑われるという前提に続く一文を選ばせる。ここが本題で、擬似相関という概念を正確に理解しているかが問われる。選択肢には、因果を認めるもの、相関を否定するもの、相関を認めるもの、散らばりに言及するものが並ぶ。
ヒント:この設問で使う道具
2つの量に相関が観測されても、片方がもう片方を引き起こしているとは限らない。背後にある第三の量が、両方に影響しているために見かけ上の相関が生じることがある。これを擬似相関という。
このとき、両方に影響を及ぼしている第三の量を交絡因子と呼ぶ。
構図を矢印で書くと次のようになる。
`
交絡因子
/ \
↓ ↓
量A ←?→ 量B
`
交絡因子から量Aへも量Bへも矢印が伸びている。AとBの間には直接の矢印がないのに、両方が同じ第三の量に連動して動くため、AとBを並べると相関が見える。
ここで最も重要な点を押さえる。擬似相関でも、相関そのものは実在する。数値として計算すれば相関係数は高く出るし、散布図にも傾向が現れる。「見せかけ」なのは因果関係のほうであって、相関ではない。
したがって、擬似相関を指摘するときの言い方は「相関はあるが、因果とは言えない」となる。「相関がない」と言ってしまうと、観測された事実そのものを否定することになる。
解答・解説を開く
🧭 方針
用語は「両方に影響する」という役割から決める。 交わって絡む、という字面が構図と対応している。他の候補は、入れ替えを意味する語や、つなぐことを意味する語であり、第三の量が両方へ影響するという関係を表さない。
後半は「擬似相関で否定されるのは何か」を確認してから選ぶ。
擬似相関で否定されるのは因果関係であって、相関関係ではない。したがって、
- 因果関係を認める記述 → 擬似相関の前提と矛盾する
- 相関関係を否定する記述 → 観測事実を否定してしまう
- 相関関係は認めるという記述 → 擬似相関の説明として正しい
散らばりに言及する記述は、擬似相関とは別の話題であり、この文脈で続く一文にはならない。
✍️ 解答
- 第三の量を指す用語 → 交絡因子
- 続く一文 → しかしながら、強い相関関係は認められる
擬似相関をめぐる主張の正誤を整理する。
| 主張 | 正誤 | 理由 |
|---|---|---|
| 相関係数は高く出る | ○ | 相関そのものは実在する |
| 散布図に傾向が現れる | ○ | 同上 |
| 一方が他方を引き起こしている | × | 直接の因果はない |
| 相関関係は無いと考えるべき | × | 相関は観測されている |
「相関はある。しかし因果とは言えない」——この言い方が擬似相関の正確な表現になる。逆接の接続詞が入るのは、相関を認めたうえで因果を否定するという構造を反映している。
✅ 検算
用語や記述を読み比べるのではなく、具体的な状況を作って確かめる。
第三の量として「気温」を置き、量Aを「冷たい飲料の売上」、量Bを「日焼け止めの売上」とする。気温が上がれば両方とも増えるので、AとBを並べれば強い相関が現れる。
ここでAとBの間に因果はあるかを考える。冷たい飲料が売れたから日焼け止めが売れるわけではないし、逆でもない。因果はないが相関はある。 これが擬似相関の典型である。
この例で、相関を否定する記述を当てはめてみる。「両者に相関関係はない」と言えば、実際に観測される数値と食い違う。散布図には明らかな傾向が出ているのに、それを無いことにしてしまう。 誤りが具体的に見える。
因果を認める記述も当てはめる。「冷たい飲料の売上が減ると日焼け止めの売上が増える」と主張することになるが、実際には両方とも気温に連動して同じ向きに動く。主張が観測と逆になる。
用語の側も確かめる。 交絡因子を取り除いて考える、すなわち気温が同じ日どうしだけを比べると、AとBの相関は消える。第三の量を固定すると相関が消えることが、擬似相関の判定方法であり、その第三の量を指す語が交絡因子である。
💡 ここで効く一般則
擬似相関で否定されるのは因果であって相関ではない。 「相関はある。しかし因果とは言えない」が正確な言い方になる。
交絡因子は両方へ矢印を伸ばす。 片方だけに影響する量は交絡因子ではない。矢印の出所と向きを図に書いて確認する。
具体例を1つ持っておく。 気温と2つの商品の売上、身長と語彙力(年齢が交絡)など。抽象的な議論に迷ったら具体例に戻す。
第三の量を固定すると相関が消えるかを見る。 これが擬似相関を見破る実際の手続きになる。
接続詞に注目する。 逆接が来るなら、前を認めて後ろを否定する構造である。文の骨格が答えを示していることがある。
情報Ⅱでは、この論点がデータ分析の妥当性として中心的に扱われる。観察データからは交絡を排除しきれないため、条件を無作為に割り当てる実験が可能ならそれが最も強い。実験できない場合は、交絡因子を測定して統計的に調整する手法が使われる。どんな交絡がありうるかを列挙する想像力が、分析の質を左右する。