電気通信大学は、2025年度入試から情報理工学域の一般選抜 前期日程で「情報」を課すようになりました。国立大学としては最初期の導入校で、物理・化学・情報Ⅰの3科目から2科目を、試験当日に選べるという珍しい仕組みを採っています。
このページでは、電通大の「情報」がどういう試験なのかを整理したうえで、公表されている資料から読み取れる傾向と、数強塾で作成したオリジナル類題を掲載します。
基準日:2026年9月5日/配点・時間は2027年度入学者選抜要項および2026年度一般選抜学生募集要項にもとづきます。一般選抜の学生募集要項は例年11月上旬に公表されますので、出願前に必ず大学公式の募集要項をご確認ください。
まず整理:電通大の「情報」は2種類ある
電通大について検索すると「情報入試」と「CBT」という言葉が並んで出てきます。ここが最初のつまずきどころです。この2つは別の選抜区分の話であって、同じ試験のことではありません。
| 選抜区分 | 「情報」の位置づけ | 実施方法 | 対象 |
|---|---|---|---|
| 一般選抜 前期日程 | 個別学力検査の選択科目 (物理・化学・情報Ⅰから2科目) |
筆記(ペーパー) 理科と合わせて2科目120分 |
情報理工学域 Ⅰ類・Ⅱ類・Ⅲ類 |
| 総合型選抜 | 第一次選考の基礎学力検査 (情報および数学の分野) |
CBT(120分) | Ⅰ類(情報系)のみ |
| 学校推薦型選抜 | 基礎学力検査 (情報および数学の分野) |
CBT | Ⅰ類(情報系)のみ |
| 一般選抜 後期日程 | 理科は物理・化学が必須 ——情報の出題はありません |
筆記 | — |
ここを取り違えると対策の中身が変わります。一般選抜を受けるなら、練習すべきは紙に書く記述の答案であって、画面上で操作するCBTの練習ではありません。逆にⅠ類の総合型・学校推薦型を狙うなら、CBT形式に慣れておく必要があります。
出典:河合塾「キミのミライ発見」電気通信大学 高校教員等向け説明会レポート(「試験は筆記(ペーパー)で行い、2科目で120分とする予定」と明記)/電気通信大学 一般選抜
一般選抜 前期日程の仕組みと配点
| 教科・科目 | 配点 | |
|---|---|---|
| 共通テスト 500点 |
国語 | 100点 |
| 地理歴史・公民 | 50点 | |
| 数学(2科目の合計を2分の1倍) | 100点 | |
| 理科(2科目の合計を2分の1倍) | 100点 | |
| 情報 | 50点 | |
| 外国語 | 100点 | |
| 個別学力検査 500点 |
数学 | 200点 |
| 理科・情報(物理・化学・情報Ⅰから2科目) | 200点 (各100点) |
|
| 外国語 | 100点 | |
| 合計 | 1,000点 |
「当日に選べる」の意味
電通大の個別試験では、物理・化学・情報Ⅰの3科目が同じ問題冊子に入っていて、試験当日に問題を見てから2科目を選ぶことができます。出願時に固定されないので、情報Ⅰを「第3の持ち駒」として用意しておき、当日の手応えで差し替えるという戦い方が成立します。
ただし、これを保険として機能させるには条件があります。3科目とも中途半端だと、当日の30秒の判断で3科目ぶんの迷いが生まれるだけです。現実的なのは次のどちらかです。
- 物理・化学を主軸にして、情報Ⅰは「事故ったときの避難先」——情報Ⅰの学習は共通テスト対策と兼ねられるので、追加コストは比較的小さくて済みます。
- 情報Ⅰを主軸のひとつに据える——物理か化学のどちらか一方+情報Ⅰで2科目を固定し、残り1科目は捨てる。理科2科目を仕上げるより負担が軽くなる場合があります。
共通テストでも情報が50点分あるので、情報Ⅰに投じた学習は共通テスト50点+個別100点=1,000点中150点に効きます。これは理科1科目(共通50点相当+個別100点)と同じ重みです。
出題範囲と、公表資料から読める3つの傾向
大学は出題範囲について「情報Ⅰのすべての範囲」としたうえで、「特に『コンピュータとプログラミング』の分野、情報技術やデータを活用するための論理的思考力を中心に出題・評価する」と述べています。ここから読み取れることを3つに整理します。
傾向1|プログラミングとアルゴリズムが主戦場
4つの単元を均等に出すのではなく、重心が明確に「コンピュータとプログラミング」に寄っています。擬似言語を読んで結果を答えるだけでなく、処理の意味を説明する・条件を書き換える・計算量を見積もるといった問い方に備えてください。
傾向2|「論理的思考力」=答えに至る筋道を書かせる
記述式である以上、数値が合っているかだけでは終わりません。なぜその手順で正しいといえるのかを日本語で書く練習が要ります。共通テストのマーク式だけを回していると、ここが空白のままになります。
傾向3|データの活用は「計算」より「解釈」
平均・中央値・四分位数・相関といった量は、計算そのものよりその数値が何を意味するか、どこに落とし穴があるかが問われやすい領域です。「相関があるからといって因果があるとは限らない」を、具体的な場面に即して説明できるようにしておきます。
公式の試作問題・サンプル問題が公開されています。令和5年11月公開の試作問題と、令和6年7月公開のサンプル問題があり、それぞれ解答例と解説動画が付いています。まずここに目を通すのが最短です。
電気通信大学 公式:情報の試作問題・サンプル問題
「理科・情報で120分」をどう配分するか
理科と情報は合わせて120分です。科目ごとに時間が区切られているわけではないので、時間配分そのものが得点力の一部になります。
- 最初の5分は「読むだけ」に使う。3科目ぶんの問題を見て、どの2科目で戦うかを決めます。ここを惜しむと、途中で「やっぱり情報にすればよかった」と揺れて両方崩れます。
- 55分+55分+予備10分。2科目に均等配分し、最後の10分を見直しと未着手の穴埋めに残します。
- 記述は「結論→根拠」の順で書く。時間切れになったとき、結論だけでも書けていれば部分点が残ります。逆に前置きから書き始めると、肝心の結論が書けずに終わります。
オリジナル類題5題(数強塾作成)
以下はすべて数強塾が作成したオリジナル問題です。実際の入試問題の転載ではありません。電通大の出題方針(プログラミング中心・論理的思考力・記述)を意識した構成にしています。数値はすべて計算機で検算済みです。
類題1|情報量と圧縮
問題1 横1920ピクセル・縦1080ピクセル、1画素あたり24ビットのフルカラー画像を、非圧縮で保存する。
(1) データ量は何MBか。1MB=106バイトとし、小数第2位まで求めよ。
(2) この画像を可逆圧縮したところ2.49MBになった。圧縮後の大きさは圧縮前の何%か。小数第1位まで求めよ。
(3) 可逆圧縮と非可逆圧縮の違いを、それぞれどのような用途に向くかを含めて40字程度で説明せよ。
解答・解説
(1) 画素数は 1920 × 1080 = 2,073,600。1画素24ビット=3バイトなので、2,073,600 × 3 = 6,220,800バイト。106で割って 6.22MB。
ここで「24ビット=3バイト」への変換を飛ばして 1920×1080×24 と計算してしまうと、単位がビットのままになります。問われている単位を先に確認するのが事故防止になります。
(2) 2.49 ÷ 6.2208 = 0.40027… なので 40.0%。
(3) 解答例:可逆圧縮は元に完全に戻せるので文書やプログラムに向き、非可逆圧縮は戻せない代わりに強く縮むので写真や音声に向く。(44字)
「戻せるか/戻せないか」と「向く用途」の2点が書けていれば要件を満たします。
類題2|2進法・16進法と誤り検出
問題2 10進数の213について、次に答えよ。
(1) 8ビットの2進数で表せ。
(2) 16進数で表せ。
(3) (1)で求めた8ビットの右端に、1の個数が偶数になるようパリティビットを1ビット付加せよ(偶数パリティ)。
(4) このパリティビットでは1ビットの誤りを検出できるが、訂正はできない。その理由を30字程度で説明せよ。
解答・解説
(1) 213 = 128+64+16+4+1 なので 11010101。
(2) 上位4ビット1101=13=D、下位4ビット0101=5。よって D5(16進数)。
4ビットずつ区切れば10進を経由せずに変換できます。
(3) 11010101 に含まれる1は5個で奇数。偶数にするためパリティビットは1。よって 110101011。
(4) 解答例:1の個数の偶奇が変わったことはわかるが、どのビットが反転したかは特定できないから。(40字)
「検出はできるが位置がわからない」が核心です。訂正まで行うにはハミング符号のように複数のパリティを組み合わせる必要があります。
類題3|探索アルゴリズムと計算量
問題3 昇順に整列された1,000個のデータから、二分探索で目的の値を探す。
(1) 最悪の場合、値の比較は何回必要か。
(2) 二分探索を使うために必要な前提条件を、線形探索と比べて述べよ。
(3) データ数を1,000,000個に増やしたとき、最悪の比較回数は何回になるか。
解答・解説
(1) 1回比較するごとに候補が約半分になります。候補数の変化を追うと 1000 → 500 → 250 → 125 → 62 → 31 → 15 → 7 → 3 → 1 → 0 となり、10回です。
一般に、n個に対する最悪の比較回数は「2を何回かけたらnを超えるか」で決まります。29=512、210=1024 なので、1000個なら10回です。
(2) 解答例:二分探索はデータが大小順に整列されていることが前提で、整列されていなければ使えない。線形探索は整列されていなくても使えるが、最悪でデータ数と同じ回数の比較が必要になる。
「1,000個なら線形探索は最悪1,000回、二分探索は10回」と具体的な数字を添えると説得力が出ます。
(3) 219=524,288、220=1,048,576 なので 20回。
データ数が1,000倍になっても比較回数は2倍にしかなりません。計算量が対数で効くとはこういうことだ、という感覚を持っておいてください。
類題4|擬似言語——最大値と2番目に大きい値
問題4 配列 Tokuten に、互いに異なる n 個の0以上の得点が入っている。次のプログラムは、配列を1回だけ走査して最大値と2番目に大きい値を求めるものである。
n = 5
saidai = Tokuten[0]
niban = -1
i を 1 から n – 1 まで 1 ずつ増やしながら繰り返す:
| もし Tokuten[i] > saidai ならば:
| | niban = [ ア ]
| | saidai = Tokuten[i]
| そうでなくもし Tokuten[i] > niban ならば:
| | niban = [ イ ]
表示する(saidai, niban)
(1) 空欄ア・イに入るものを答えよ。
(2) このプログラムを実行したとき表示される値を答えよ。
(3) niban の初期値を −1 としている理由を説明せよ。
(4) 「互いに異なる」という条件を外すと、このプログラムはどう振る舞うか。例を挙げて説明せよ。
解答・解説
(1) ア=saidai、イ=Tokuten[i]。
新しい最大値が見つかったときは、それまでの最大値が2番目に繰り下がる——これがアの意味です。順序を逆にして saidai を先に更新してしまうと、繰り下げる値が失われます。
(2) 順に追います。
| i | Tokuten[i] | 判定 | saidai | niban |
|---|---|---|---|---|
| — | — | 初期値 | 52 | −1 |
| 1 | 91 | 91 > 52 → 1つ目の分岐 | 91 | 52 |
| 2 | 33 | どちらも成り立たない | 91 | 52 |
| 3 | 78 | 78 > 91 は偽、78 > 52 は真 → 2つ目の分岐 | 91 | 78 |
| 4 | 64 | 64 > 91 も 64 > 78 も偽 | 91 | 78 |
よって表示されるのは 91 と 78。
(3) 解答例:得点は0以上なので、−1はどの得点よりも必ず小さい。0を初期値にすると、得点0の要素が2番目として記録されなくなる場合があるため。
「ありえない値を初期値に置く」というのは、最小値・最大値を求めるプログラムで繰り返し出てくる定石です。
(4) 解答例:たとえば [91, 91, 33] のように最大値が重複すると、2回目の91は「91 > 91」が偽で「91 > niban」が真になり、niban が91になる。つまり「2番目に大きい値」を異なる値の中での2番目と考えるか、順位としての2番目と考えるかで正解が変わります。等号を含めるかどうか(> か >=)は、仕様を決めてから書くべきところです。
類題5|データの活用
問題5 あるクラス10人の小テストの得点が、小さい順に次のように並んでいる。
(1) 平均値と中央値を求めよ。
(2) 第1四分位数と第3四分位数、および四分位範囲を求めよ。
(3) 「第1四分位数 − 1.5×四分位範囲 より小さい値、または 第3四分位数 + 1.5×四分位範囲 より大きい値を外れ値とする」という基準で、外れ値があるか判定せよ。
(4) 平均値と中央値の大小関係から、この分布について何がいえるか説明せよ。
解答・解説
(1) 合計は660なので平均値は 66.0。データは10個なので、中央の2つ63と67の平均をとって中央値は 65.0。
(2) 下位5個 {42, 55, 58, 61, 63} の中央値が第1四分位数で 58。上位5個 {67, 70, 74, 78, 92} の中央値が第3四分位数で 74。四分位範囲は 74 − 58 = 16。
(3) 下限は 58 − 1.5×16 = 58 − 24 = 34、上限は 74 + 24 = 98。最小値42は34以上、最大値92は98以下なので 外れ値はない。
92は見た目に飛び離れていますが、この基準では外れ値になりません。「外れて見える」と「基準上の外れ値である」は別だ、という点がこの問題の要点です。
(4) 解答例:平均値66.0が中央値65.0より大きいので、分布は右側(高得点側)に裾が長い。92のような高い値が平均を引き上げている。
平均は極端な値に引きずられ、中央値は引きずられません。この非対称が「代表値をどちらで語るか」の判断につながります。
総合型選抜・学校推薦型選抜のCBT基礎学力検査
Ⅰ類(情報系)を志望する場合、一般選抜のほかに総合型選抜・学校推薦型選抜という道があります。こちらの基礎学力検査はCBT(コンピュータ上で受験する形式)で、情報および数学の分野から出題されます。総合型選抜では第一次選考として120分で実施されます。
一般選抜と違うのは、次の2点です。
- 画面上での操作に慣れが要る。紙のように全体を見渡して行き来する、余白に書き込む、といったことがしにくくなります。手元のメモ用紙の使い方を含めて練習しておく価値があります。
- 情報と数学がひとまとまりで問われる。科目の境目があいまいなので、数学Ⅰ・Aの整数や場合の数がアルゴリズムの文脈で出てくることを想定しておきます。
実施年度によって内容は変わりますので、必ず当該年度の学生募集要項でご確認ください。
いつ何をやるか——学習計画
| 時期 | やること | 到達の目安 |
|---|---|---|
| 高2〜高3の春 | 情報Ⅰの全単元を一周する。用語の定義を自分の言葉で言い換えられるようにする。 | 教科書レベルの問いに詰まらない |
| 高3の夏 | 公式の試作問題・サンプル問題を解き、解説動画で答え合わせ。共通テストの試作問題・本試験・追試験に着手。 | プログラムを読んで、途中の変数の値を追える |
| 高3の秋 | 擬似言語を「読む」から「書く・直す」へ。処理の意味を日本語で説明する練習を始める。旧課程「情報関係基礎」の過去問でアルゴリズムの厚みを足す。 | 記述の答案が3行以上書ける |
| 共通テスト後 | 理科2科目と情報Ⅰのうち、どの2科目で本番に臨むかを固める。時間配分をつけた通し演習。 | 120分の中で2科目を回せる |
教材としては、数強塾が無料公開している次のページを使ってください。
- 情報Ⅰ 過去問解説・無料プリントのハブ
- 共通テスト「情報Ⅰ」試作問題 全問解説
- 共通テスト2026 本試験「情報Ⅰ」全問解説
- 情報関係基礎 2024年度 全問解説(アルゴリズムの良問が多い)
- 情報Ⅰ オリジナル予想問題
- 情報Ⅰ 最強120講義
よくある質問
Q. 情報Ⅰと物理・化学、どれを選ぶべきですか。
A. 当日に選べるので「決めない」という選択肢もありますが、実際には準備の配分を先に決める必要があります。理科が2科目とも安定しているなら、情報Ⅰは保険にとどめて構いません。理科のどちらかが伸び悩んでいるなら、情報Ⅰに切り替えたほうが総学習時間は減ります。共通テストでも情報が50点あるので、投資が二重に効く点は情報Ⅰの強みです。
Q. 過去問はどこで手に入りますか。
A. 電通大は本試験の「情報」の過去問を公開していません。公開されているのは試作問題とサンプル問題です。実戦形式の練習は、共通テストの試作問題・本試験・追試験、旧課程「情報関係基礎」、そして本ページのような類題で補うことになります。他大学が公開している問題(広島市立大学、高知大学など)も、記述式の練習素材として役立ちます。
Q. プログラミング言語は何を勉強すればいいですか。
A. 特定の言語を覚える必要はありません。共通テストで使われる共通テスト用プログラム表記を読み書きできることが土台です。ただし、実際に手を動かして動かしてみると理解が速くなるので、Pythonなどで同じ処理を書いてみるのはおすすめします。表記の細かい約束(代入は = 、比較は == 、二次元配列は B[行, 列] など)は本番で迷わないよう固めておいてください。
電通大の情報入試は、まだ対策の型が定まっていません。
数強塾では、情報Ⅰをオンライン個別指導で扱っています。記述答案の書き方、擬似言語の読み書き、当日の科目選択の判断基準まで、志望状況に合わせて設計します。全国どこからでも受講できます。
免責:本ページは入試情報の整理と学習支援を目的としたもので、合否を保証するものではありません。掲載した類題はすべて数強塾のオリジナルであり、実際の入試問題ではありません。配点・試験時間・出題範囲は各年度の入学者選抜要項・学生募集要項が正本です。出願前に必ず大学公式でご確認ください。誤りにお気づきの場合はお問い合わせよりご指摘ください。