2025年度(令和7年度)は、共通テストに『情報Ⅰ』が初めて登場した年です。平均点は 69.26点。「初年度は易しかった」と言われますが、それは全体が薄まっていたという意味ではありません。大学入試センターが公表しているデータを自分で集計すると、正答率8割以上の設問の配点合計が33点、9割以上が20点あり、その易しさは「大問の入口」に集中して置かれていたことが数字で見えます。
こんにちは、数強塾グループ代表の藤原進之介です。本記事は参考書『藤原進之介の最強120講義』第105講のWeb版で、第5部「共通テスト攻略」に属します。共通テスト重要度は S です。
本記事では、共通テストの問題文・選択肢・図表・プログラムを一切転載していません(大学入試センターの著作物です)。扱うのは①設問構造の説明 ②配点・正答率などの公表データ ③題材と問われ方の要約 ④自作の類題の4つだけです。「完全解剖」とは、問題を再現することではなく、公表データで初年度の設計を明らかにすることを指します。
なお、翌年(令和8年度)との比較は 第106講「2026年度本試験 完全解剖」 に譲ります。本記事は令和7年度の中身だけを扱います。
この講の問い
初年度の『情報Ⅰ』は、本当に易しかったのか。易しかったとして、出題側は易しさをどこに置いたのか。
結論
1.「全体が易しかった」のではなく、易しい設問を厚く置いた。正答率8割以上の設問の配点合計は 33点、9割以上は 20点。同じ試験に正答率2割台の設問も3つあります。
2. その易しさは「大問の入口」に集中していた。9割以上の20点は 第1問3点/第2問9点/第3問8点/第4問0点。第3問(プログラミング)は、プログラムが1行も出てこない問1だけで8点あります。
3. 出題側の見積もりが最も外れたのは第4問問1。高校の評価は「容易に正答を導ける」と書いたのに、そこに含まれる ア・イ の正答率は 0.2879。同じ問1の中で、グラフを読む ウ・エ は 0.8233 でした。同じ「問1」の中に55ポイントの断層があります。
1. 使う数字と、その定義
本記事の数値はすべて大学入試センターの公表資料から取り、私が原典から独立に再計算しました。使ったのは次の5つです。
| 資料 | 何が載っているか |
|---|---|
| 設問別得点率及び正答率表(CSV・cp932) | 大問ごと・解答番号ごとの平均点・配点・得点率・正答率 |
| 科目別成績分布(CSV) | 1点刻みの人数、5分位、段階表示の区分点と段階別人数 |
| 実施結果の概要(PDF) | 受験者数・平均点・標準偏差・教科選択率 |
| 問題評価・分析委員会報告書(本試験) | 問題作成部会の自己評価/高等学校教科担当教員の評価/関係団体(学会)の評価 |
| 試験問題冊子の注意事項及び解答用紙の様式について(PDF) | 解答欄の様式 |
定義を取り違えないことが大事です。
- 得点率=平均点÷配点。部分点を含みます。
- 正答率=部分点の有無にかかわらず、完全に正答した受験者の割合。
- 母数は全受験者です。志望校別でも、成績上位層でもありません。
- 公開されるのは本試験だけで、追・再試験の設問別データは公表されていません。
令和7年度で得点率と正答率がずれるのは2箇所だけです。第4問 ウ-エ(得点率0.9006/正答率0.8233)と第4問 オ-カ(0.7908/0.6170)。どちらも「解答の順序は問わない」2枠セットで、片方だけ当てても部分点が付く形式だからです。
2. 初年度の輪郭
| 項目 | 令和7年度 本試験『情報Ⅰ』 |
|---|---|
| 受験者数 | 279,718人 |
| 平均点(標準偏差) | 69.26点(16.09) |
| 得点の中央値(最頻値) | 70点(71点) |
| 100点満点/0点 | 1,318人/23人 |
| 90点以上 | 29,494人(10.54%) |
| 80点以上 | 80,680人(28.84%) |
| 50点以上 | 247,421人(88.45%) |
| 教科「情報」の受験者(追・再試験含む) | 302,493人(教科選択率 65.5%) |
| 経過措置科目『旧情報』 | 22,171人・平均 72.82点(14.43) |
1点刻みの人数から私が再計算した平均は 69.2634、標準偏差は 16.0945 で、公表値と一致します。
比較のために、同じ年度の受験者1万人以上の科目を100点換算で並べ直すと、『情報Ⅰ』の69.26は上から2番目です(1位は経過措置の『旧情報』72.82、3位は地学基礎の68.98、4位は旧日本史Bの68.31)。新設科目が、全科目の中で最も高い水準の平均点で始まったということになります。
センター自身の言い方はこうです。
高校の先生方の評価は、もっと踏み込んでいます。
教科そのものが新設されたことの意味も、歴史のスケールで書かれています。高校評価は「共通第1次学力試験,センター試験を通じても,新しく教科が追加されることは初めてのことである」、日本情報科教育学会は「教科が追加されるのは,共通一次試験・センター試験・共通テストの歴史の中で初めてであり,歴史的な出来事と言えよう」。
3. 41設問・51マークの地図
CSVの行を数えると、令和7年度本試験『情報Ⅰ』の採点単位(設問)は 41、マーク数は 51 です。これは高校評価の「問いの数は,第1問が8,第2問が12,第3問が12,第4問が9で,実際のマーク数が51であった」と完全に一致します。
| 大問 | 設問数 | マーク数 | 配点 | 得点率 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問(小問集合) | 8 | 11 | 20 | 0.6544 |
| 第2問(A レシートとPOS/B おつりのシミュレーション) | 12 | 16 | 30 | 0.7611 |
| 第3問(プログラミング) | 12 | 12 | 25 | 0.6473 |
| 第4問(データの活用) | 9 | 12 | 25 | 0.6864 |
| 合計 | 41 | 51 | 100 | 0.6926 |
得点源は第2問でした。30点の大問で得点率0.7611、平均22.832点。ここを取り切れたかどうかが、初年度の得点を大きく分けています。
もう一つ、初年度の設計として記録しておくべき事実があります。令和7年度の解答欄は「0〜9」と「a〜d」の14マークしかありません。私は「試験問題冊子の注意事項及び解答用紙の様式について」のPDFを画像で開いて確認しました。解答上の注意にはっきり「解答欄の数字(0〜9)又は文字(a〜d)から選んで答える問題があります」とあり、マークの見本も 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 a b c d の14個です。つまり初年度は、16進数1桁をそのままマークすることが物理的にできませんでした。(この欄が a〜f の16マークに拡張されるのは令和8年度からです。解答用紙の様式については 第97講「共通テスト『情報Ⅰ』の形式」 で詳しく扱っています。)
4. 易しさは「入口」に置かれた(本記事の核心)
設問を正答率で切って、配点を合計します。
| しきい値 | 配点合計 |
|---|---|
| 正答率 0.9 以上 | 20点 |
| 0.8 以上 | 33点 |
| 0.7 以上 | 48点 |
| 0.6 以上 | 65点 |
| 0.5 以上 | 82点 |
| 0.3 未満 | 7点 |
この「33点/20点」は、私がCSVから計算した値であると同時に、大学入試センターが公表した報告書の中に情報処理学会が書いた値でもあります。
問題は、この20点・33点がどこに置かれていたかです。大問別に割ると、こうなります。
| しきい値 | 第1問 | 第2問 | 第3問 | 第4問 |
|---|---|---|---|---|
| 正答率 0.9 以上(計20点) | 3点 | 9点 | 8点 | 0点 |
| 正答率 0.8 以上(計33点) | 3点 | 12点 | 10点 | 8点 |
第3問(プログラミング)が、正答率9割以上の設問を8点も持っています。その8点はすべて問1、つまりプログラムが1行も登場しない設問です(センターの自己評価は問1を「条件設定を読み取り,データの種類と意味を理解する力と手作業で解を求める手順を思考する力を問う問題」と書いています)。
これは私の解釈ではありません。情報処理学会が報告書で数字ごと指摘しています。
私がCSVで確かめると、第3問問1の8点+問2の最初の設問(カ・2点)=ちょうど10点で、その10点分の得点率は 0.9242 でした。プログラミングの大問の4割の配点が、プログラムを読む前に置かれていたということです。
逆に、第4問には正答率9割以上の設問が1点もありません。第4問の得点率0.6864は4大問中2位なのに、高い山が無い。第4問は「まんべんなく取れる」大問だったわけです(第4問の内部構造は 第101講「第4問(データの活用)の攻略」 でも扱っています)。
5. 難しさはどこにあったか
正答率の低い順に並べ、型を付けます(型の分類は私によるものです)。
| 順 | 大問・問 | 解答記号 | 配点 | 正答率 | 型 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 第3問 問2 | ク | 2 | 0.2191 | 追跡(実行回数を自分で数える) |
| 2 | 第4問 問3 | キ | 2 | 0.2204 | 引き継ぎ(作った指標の意味を運ぶ) |
| 3 | 第4問 問1 | ア-イ | 3 | 0.2879 | 単発の知識(尺度水準) |
| 4 | 第3問 問3 | シ | 3 | 0.3909 | 引き継ぎ(配列の扱い) |
| 5 | 第1問 問1b | イ | 2 | 0.4184 | 単発の知識(技術の背景) |
| 6 | 第3問 問3 | サ | 3 | 0.4387 | 引き継ぎ |
| 7 | 第1問 問2 | カ | 3 | 0.4793 | 計算(場合の数) |
| 8 | 第3問 問3 | ケ | 2 | 0.5202 | 引き継ぎ(繰り返しの制御) |
| 9 | 第2問 A問4 | ケ | 2 | 0.5298 | 突き合わせ(条件とメリットの対応) |
| 10 | 第1問 問1a | ア | 2 | 0.5380 | 単発の知識(署名の機能) |
| 11 | 第2問 A問3 | オ-カ | 3 | 0.5516 | 突き合わせ(図の場面に過不足なく) |
| 12 | 第2問 B問1 | ス-セ | 3 | 0.5625 | 逆算(必要な最小枚数) |
下位12設問30点のうち、第3問が6設問15点を占めます。プログラミングの大問は「入口が9割・出口が2割」という極端な階段になっていました。センターの自己評価もこう書いています。
私が問ごとに束ね直すと、第3問の得点率は 問1 0.9194 → 問2 0.5949 → 問3 0.4663 と一直線に落ちます。大問内の位置と正答率の順位相関(スピアマン)を計算すると −0.881 で、4大問の中で最も強い右下がりです。
| 大問 | 位置と正答率の順位相関 |
|---|---|
| 第1問(独立した小問集合) | +0.786 |
| 第2問(A・Bの2中問) | −0.406 |
| 第3問(プログラム) | −0.881 |
| 第4問(データの活用) | +0.450 |
独立した小問の集まりである第1問だけが、後半ほど正答率が上がっています。「試験の後半で疲れて落ちる」という説明が当たらないことが、これで分かります。落ちるのは設問が前を引き継ぐ大問だけです(この観点は 第102講「長文・図表の読み取り技術」 で立てたものですが、令和7年度の数値は本記事で独立に再計算し、同じ値になることを確認しました)。第3問そのものの解き方は 第100講「第3問(プログラミング)の攻略」 にまとめてあります。
6. 出題側の見積もりと、受験者の実態がずれた場所
初年度の資料を読む面白さは、出題側が「こう解けるはずだ」と書いた予測と、公表された正答率を突き合わせられるところにあります。ずれは3箇所で見つかりました。
(1) 第4問問1 ―「容易に正答を導ける」と書かれ、2割台だった
高校評価の原文はこうです。
日本情報科教育学会に至っては「棒グラフや帯グラフについては小学校段階で学習する。(中略)共通テストとして平易すぎるように思われる」と書いています。ところが実測はこうでした。
| 問1の中身 | 解答記号 | 配点 | 正答率 |
|---|---|---|---|
| 尺度水準 | ア-イ | 3 | 0.2879 |
| 棒グラフ・帯グラフの読み取り | ウ-エ | 4 | 0.8233 |
同じ「問1」の中で、正答率が55ポイント違います。評価文が「容易」と一括りにしたのは、この2つを合わせた問1でした。センターの自己評価も、結果を受けて「正答率については概ね高めであったが,問1のア・イと問3のキで2割台と非常に低かった」と書き直しています。説明として最も的確なのは情報処理学会のものです。
尺度水準は「4つの名前を言える」ことと「目の前の列がどれか判定できる」ことの間に、深い溝があります。初年度の共通テストは、その溝の存在を10万人規模で可視化しました(尺度水準そのものは 第5講 で扱っています)。
(2) 第1問 ― 難易度と配点が逆転した
情報処理学会の指摘です。
CSVで確かめます。
| 設問 | 配点 | 正答率 |
|---|---|---|
| 第1問 問1a ア(デジタル署名) | 2 | 0.5380 |
| 第1問 問1b イ(IPv6へ移行する理由) | 2 | 0.4184 |
| 第1問 問4b コ-サ(フィッツの法則) | 3 | 0.9502 |
第1問で最も難しい2つが2点ずつ、最も易しい1つが3点。しかもコ-サ については「常識の範囲で解答できるのではないかという指摘」が寄せられ、センターは「これは,正答率が約9割5分という結果からも伺え,身近で誰もが経験したことがある内容を題材にする際の問い方については,本部会としても検討を重ねて慎重に(中略)注力したい」と応じています。
(3) 問題訂正が2箇所あった
初年度の記録として残しておくべき事実です。高校評価の原文。
日本情報科教育学会も第4問の評価の中で「ただし,別紙による2箇所の訂正があったことは受験者の負担になったと考えられる」と書いています。センターの自己評価は「深く反省すべきである。読み合わせの作業を徹底するなどして,再発を防ぐよう努力したい」と応じました。
7. 一次資料に無い用語は、問題文の中で定義してから出された
初年度の第1問には、国の一次資料のどこにも載っていない用語が2つ出ています。
私が文部科学省の3資料(高等学校学習指導要領解説 情報編/情報Ⅰ教員研修用教材 第1〜4章/情報Ⅱ教員研修用教材 序章+第1〜5章。第3章は前半・後半とも)を、空白と改行を除いてから検索した結果は次のとおりです。
| 語 | 解説 情報編 | 情報Ⅰ教材 | 情報Ⅱ教材 |
|---|---|---|---|
| チェックディジット | 0 | 0 | 0 |
| チェックデジット/検査数字/検査文字 | 0 | 0 | 0 |
| 誤り検出/誤り訂正/パリティ | 0 | 0 | 0 |
| フィッツの法則 | 0 | 0 | 0 |
にもかかわらず、令和7年度本試験は第1問問3にチェックディジット(5点)、問4にフィッツの法則(5点)を出しました。合わせて10点、第1問の半分です。
これは「範囲外を出した」という話ではありません。日本情報科教育学会が事情を明記しています。「チェックディジット自体は多くの教科書には記載されていない用語であるが,書籍のISBNを例に詳しく説明がなされておりキについては容易に正解を導ける」。高校評価も「加重和についての知識がなくても,具体的な数値を当てはめて入力ミスを検出できるか,試しながら考えることで解答できた」と書いています。フィッツの法則も同じで、法則そのものが問題文に提示され、それに従って考えさせる形でした。
つまり出題側の型はこうです。教科書に無い用語は、問題文の中で定義してから使う。同じ型は追・再試験にも現れています。令和7年度追・再試験 第4問は「各項目間の散布図と相関係数を合わせた図(以下,散布図行列と呼ぶ。)」と、問題文の中で呼び方を宣言してから使っていました。
この事実は、対策の方向を1つ確定させます。見たことのない用語が出ても、定義はその場に書いてあります。用語集を厚くするより、「その場で与えられた定義に従って動く」練習をするほうが、公表データに照らして割に合います(チェックディジットの仕組みそのものは 第46講「誤り検出」 で扱っています)。
8. 手で確かめる
8.1 CSVを取得する
curl -s -o r7.csv 'https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?d=770&f=abm00005376.csv'
file r7.csv # CSV text(文字コードは cp932)
一覧ページは https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/hyouka/r7_hyouka/r7_data.html です。全教科・全科目が1本のCSVに縦に連結されており、科目の切れ目は 科目=情報Ⅰ という行で分かります。
8.2 『情報Ⅰ』の行だけを取り出して集計する
import csv, io, statistics
raw = open('r7.csv', 'rb').read().decode('cp932')
rows = list(csv.reader(io.StringIO(raw)))
start = next(i for i, r in enumerate(rows)
if r and r[0].strip() == '科目=情報Ⅰ')
items = []
i = start + 2 # 見出し行を飛ばす
while i < len(rows) and rows[i] and rows[i][0] and not rows[i][0].startswith('問題区分'):
dai, no, mean, hai, tok, sei = rows[i][:6]
if no != '合計':
items.append((dai, no, float(hai), float(sei)))
i += 1
print('設問数', len(items))
print('配点合計', sum(h for _, _, h, _ in items))
for th in (0.9, 0.8, 0.7, 0.5):
print(th, sum(h for _, _, h, s in items if s >= th))
print('中央値', statistics.median(s for _, _, _, s in items))
実行結果は次のとおりです。
設問数 41
配点合計 100.0
0.9 20.0
0.8 33.0
0.7 48.0
0.5 82.0
中央値 0.7286
この20点・33点が、情報処理学会が報告書に書いた値と一致します。一致したということは、CSVの読み方も設問の数え方も間違っていないということです。
8.3 センターの「言葉」と、CSVの「数字」を突き合わせる
報告書は正答率を言葉で書きます。「約6割半ば」「5割半ば」「7割強」。これをCSVの実測値と突き合わせると、どの設問記号がどの問に属するかが確定します。私が確かめた12箇所は次のとおりで、すべて合いました。
| 報告書の記述 | 該当設問 | 実測(得点率) |
|---|---|---|
| 第1問「全体の平均は約6割半ば」 | 第1問 合計 | 0.6544 |
| 「問1b は約4割と低く」 | 第1問 イ | 0.4185 |
| 「問3の ク は約6割」 | 第1問 ク | 0.5999 |
| 「コ・サ は正答率が約9割5分」 | 第1問 コ-サ | 0.9503 |
| 第2問A「問1,問2は9割半ば以上」 | ア+イ-ウ/エ | 0.9612/0.9805 |
| 「問3は約5割半ば」 | 第2問 オ-カ | 0.5517 |
| 「問4の三つは約7割半ば,約6割半ば,約5割」 | キ/ク/ケ | 0.7457/0.6561/0.5298 |
| 第2問B「表の空欄を埋める問題は8割〜9割」 | コ/サ-シ | 0.9337/0.8269 |
| 「事前に用意すべき千円札の数は5割半ば」 | 第2問 ス-セ | 0.5625 |
| 「問2は7割強」 | 第2問 ソ | 0.7443 |
| 「問3は7割5分程度」 | 第2問 タ | 0.7687 |
| 第4問「問1のア・イと問3のキで2割台」 | ア-イ/キ | 0.2879/0.2204 |
言葉と数字が全部合うので、以降はどの設問がどの問かを迷わずに扱えます。これは過去問を分析するときの手順として、そのまま使えます。
8.4 自作の類題(尺度水準を「実践の中で」問う)
本試験の問題は転載しないので、同じ型の問題を私が作ります。正答率2割台になった型がどういうものかを体験してみてください。
【類題】ある高校が、生徒会選挙の結果を次の表にまとめた。列は「①出席番号」「②学年(1・2・3)」「③得票数」「④投票所の温度(℃)」「⑤満足度(とても不満・不満・普通・満足・とても満足)」の5つである。
問 次のうち、平均を計算しても意味がある列を過不足なく選べ。また、0が「無い」を意味する列を過不足なく選べ。
答えは、平均に意味があるのが③と④、0が「無い」を意味するのが③だけです。
- ①出席番号は名義尺度。数字に見えますが順序も間隔も意味を持ちません。平均は無意味です。
- ②学年は順序尺度。大小の順はありますが「2年と1年の差」と「3年と2年の差」が等しい保証はありません。
- ③得票数は比例尺度。0票は「票が無い」を意味し、比(2倍)にも意味があります。
- ④温度(℃)は間隔尺度。差には意味がありますが、0℃は「温度が無い」ではありません。だから「20℃は10℃の2倍暑い」は誤りです。平均は計算できます。
- ⑤満足度は順序尺度。数値を割り当てて平均を出すのは実務ではよくやりますが、尺度水準としては正当化されません。
「名義・順序・間隔・比例の4つを言える」ことは、この問題を1問も解いてくれません。判定に必要なのは、次の2つの質問だけです。
質問1:差に意味があるか。無ければ名義か順序。
質問2:0が「無い」を意味するか。意味しなければ間隔、意味すれば比例。
この2問を順に当てるだけで、4つのどれかが必ず決まります。覚えるのは名前ではなく、この2つの質問です。
9. 共通テストではこう出る(重要度 S)
9.1 この年度が示した「型」
令和7年度は初年度なので、比較対象が試作問題しかありませんでした。それでも、この年度の公表データからはその後も変わらない型が3つ読み取れます。
- プログラミングの大問は、入口に配点がある。第3問25点のうち10点は、プログラムを読む前に置かれていました。プログラムが苦手でも、問1は落とさない。逆に言えば、問1を落とす人はプログラム以前のところ(図と条件を読むところ)でつまずいています。
- 知らない用語は、問題文の中で定義される。チェックディジットもフィッツの法則も、教科書にも国の教材にもありません。定義を読んでその場で従う訓練が、用語暗記より効きます。
- 「過不足なく選べ」が難所になる。第2問A問3(オ-カ 0.5516)と問4(ケ 0.5298)は、どちらもこの限定語が付いた設問です。直前の問1・問2が0.96台だったことを思えば、限定語1つで40ポイント落ちています。
9.2 この年度から持ち帰る対策
- 尺度水準は「判定」の練習をする。名前を4つ覚えるのは5分で終わります。実際のデータの列を見て「これは間隔尺度」と即答する練習を、10列でいいからやってください。正答率0.2879はそこで生まれた差です。
- 第1問の知識問題を「関係」で覚える。ア(署名の機能)0.5380、イ(IPv6へ移行する理由)0.4184。センターの分析は「IPv6の名称と内容を結び付ける単純な知識ではなく,情報技術とその背景の関係を理解できているかを問う問題形式とした」です。用語カードでは届きません。
- プログラムは「実行回数を数える」練習をする。最下位のク(0.2191)は、代入が何回起きるかを追わせる設問でした。情報処理学会は「正答率は2割程度と低かったが,トレースは基本的な能力であり,設問として適切であった」と書いています。次も出るという宣言に等しい。
- 限定語に印を付ける。「過不足なく」「最も適当」「最初に」。読み飛ばすと、直前まで9割取れていた人が5割に落ちます。
- 第2問のような「身近な題材の中問」を落とさない。30点で得点率0.7611。ここは初年度で最も点が取れた場所であり、失点すると致命的でした。
10. 情報Ⅱではこうなる
この講は情報Ⅱへの接続がありません。共通テストの出題科目は『情報Ⅰ』であって、『情報Ⅱ』は出題科目として存在しないからです(大学入試センターの「受験者数・平均点の推移」の「情報」欄にあるのは 情報Ⅰ・旧情報・情報関係基礎・旧情報関係基礎の4つだけです)。実際、令和7年度本試験の問題冊子を機械的に数えても、重回帰・主成分・クラスタリング・決定木・訓練データといった情報Ⅱ固有の道具は1件も現れません。
ただし、境界に立っている道具が1つあります。散布図行列です。令和7年度は本試験で0件、追・再試験の第4問で出題されました。日本情報科教育学会は「教科書における散布図行列の掲載が見られないため本試験での出題を見送ったと考えられる」と書いています。ところが私が数えると、文部科学省の情報Ⅰ教員研修用教材 第4章には散布図行列が10件あり、描画用のExcelマクロまで配布され、学習活動として組み込まれています(情報Ⅱ教員研修用教材は第5章に2件、解説 情報編は0件)。教科書と国の教材の間に段差があり、出題側は教科書の側に合わせたということになります。
その情報Ⅱ側の2件が何をしているかを見ると、境界の意味がはっきりします。情報Ⅱ教員研修用教材 第5章の原文はこうです。「どのような傾向が読み取れるか,分析したい問題が明確でない場合には,まず,散布図行列で表示してみよう」「生徒数と教室数のように直線傾向が明確に見えるものは,「情報I」で学んだ相関係数や単回帰分析などの対象になる。今回は,直線傾向を見るのではないので(中略)二つのクラスタに分割して考えてみよう」。
同じ散布図行列を、情報Ⅰは「相関を見つける入口」として使い、情報Ⅱは「相関では扱えない構造へ進む分岐点」として使います。令和7年度の第4問が最後に到達したのは「新しい指標を作って散布図と箱ひげ図で見る」ところまでで、そこから先(クラスタに分ける・変数を圧縮する)は情報Ⅱの領分です。試験対策としての接続はありませんが、学びの上の続きははっきり存在します。
まとめ
- 初年度の平均点69.26は、受験者1万人以上の科目では上から2番目(1位は経過措置の『旧情報』72.82)。センター自身が「想定の範囲内」、高校評価が「不安を抱えた受験者への配慮」と書いた。
- 易しさの中身は正答率8割以上33点・9割以上20点。この値は、センターの報告書に情報処理学会が書いた値と、私のCSV集計が一致する。
- その20点は入口に置かれていた。第3問はプログラムを読む前に10点(情報処理学会が「それ以降にもう少し配点してもよかった」と批判)、第4問には9割以上が1点も無い。
- 見積もりが最も外れたのは第4問問1。「容易に正答を導ける」と評価された問1の中で、尺度水準の ア-イ が0.2879、グラフ読み取りの ウ-エ が0.8233。同じ問の中に55ポイントの断層。
- 第1問では難易度と配点が逆転していた(最難の2設問が2点、最易が3点)。別紙による問題訂正が2箇所あった。
- 教科書に無い用語(チェックディジット・フィッツの法則)は、問題文の中で定義してから出された。用語集より「その場の定義に従う力」。
- 解答欄は 0〜9 と a〜d の14マーク。初年度は16進数1桁をそのままマークできなかった。
本記事は『藤原進之介の最強120講義』の一部です。全120講の一覧は 情報Ⅰ 最強120講義(目次) からご覧いただけます。
出典(すべて2026年8月3日に取得)
- 大学入試センター「令和7年度 試験情報データ(本試験)」 https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/hyouka/r7_hyouka/r7_data.html (01_設問別得点率及び正答率表 CSV、02_科目別成績分布 CSV、03_(参考)csvデータの説明 PDF、令和7年度大学入学共通テスト 実施結果の概要 PDF)
- 大学入試センター「令和7年度大学入学共通テスト 問題評価・分析委員会報告書(本試験)」『情報Ⅰ』(高等学校評価/関係団体評価/自己評価) https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/hyouka/r7_hyouka/r7_hyoukahoukokusyo_honshiken.html
- 大学入試センター「令和7年度大学入学共通テストの試験問題冊子の注意事項及び解答用紙の様式について」(PDF) https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?d=733&f=abm00005086.pdf
- 大学入試センター「共通テスト 受験者数・平均点の推移(本試験)」 https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/suii/R3_.html
- 大学入試センター 令和7年度 本試験および追・再試験の問題冊子 https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/kakomondai/
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編」 https://www.mext.go.jp/content/1407073_11_1_2.pdf
- 文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅰ』教員研修用教材」第4章 https://www.mext.go.jp/content/20200722-mxt_jogai02-100013300_006.pdf
- 文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅱ』教員研修用教材」第5章 https://www.mext.go.jp/content/20200609-mxt_jogai01-000007843_006.pdf
(設問別得点率・正答率の集計、大問別の内訳、成績分布からの人数・中央値・分位、順位相関、教材3資料の語数計数は、すべて私が原典から独立に実施・検算しました。語数はPDFからテキスト抽出したもので、図の中の文字や画像化されたページは抽出できません。「0件」はテキスト抽出できた範囲での0件です。)
執筆:藤原進之介(数強塾グループ代表)
オンライン数学専門塾「数強塾」代表。累計3,500名以上の中高一貫校生を指導。東進ハイスクール・東進衛星予備校・代々木ゼミナールなど出講実績あり。情報Ⅰの参考書を複数執筆しており、KADOKAWA『ゼロから始める情報I』、Gakken『きめる!共通テスト 情報Ⅰ』などがあります。本記事は参考書『藤原進之介の最強120講義』第105講のWeb版です。
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