2026年度(令和8年度)共通テスト『情報Ⅰ』の平均点は 56.59点。前年の 69.26点から 12.67点 下がりました。「難化した」で片づける前に、その12.67点の中身を大学入試センターの公表データだけで分解します。結論を先に書くと、下落の82%は第1問と第2問で起きており、プログラミングの第3問は −1.74点、データ活用の第4問は −0.55点しか下がっていません。
こんにちは、数強塾グループ代表の藤原進之介です。本記事は参考書『藤原進之介の最強120講義』第106講のWeb版で、第5部「共通テスト攻略」に属します。共通テスト重要度は S です。
本記事では、共通テストの問題文・選択肢・図表・プログラムを一切転載していません(大学入試センターの著作物です)。扱うのは①設問構造の説明 ②配点・正答率などの公表データ ③題材と問われ方の要約 ④自作の類題の4つだけです。「完全解剖」とは、問題を再現することではなく、公表データで構造を明らかにすることを指します。
この講の問い
令和8年度本試験『情報Ⅰ』の平均点が12.67点下がった。その中身を、公表データだけで説明し切れるか。
結論
1. 下落12.67点のうち82%は第1問と第2問。第1問 −4.988点/第2問 −5.398点/第3問(プログラミング)−1.741点/第4問(データ活用)−0.547点。「プログラミングが難化した」という説明は公表データと合いません。
2. 難問が増えたのではなく、易しい設問が半減した。正答率8割以上の設問の配点合計は 33点 → 18点、9割以上は 20点 → 5点。この数字は、大学入試センターが公表した報告書の中で情報処理学会も同じ値を書いています。
3. 落ちた設問には型がある。正答率5割未満の37点のうち 29点(78%) が「その設問だけを読んでも解けない」型でした。
なぜそうなるのか
使う数字と、その定義
大学入試センターは試験ごとに次の資料を公開しています。本記事の数値はすべてここから取り、私が原典から独立に再計算しました。
| 資料 | 何が載っているか |
|---|---|
| 設問別得点率及び正答率表(CSV) | 大問ごと・解答番号ごとの平均点・配点・得点率・正答率 |
| 科目別成績分布(CSV) | 1点刻みの人数、段階表示の区分と段階別人数 |
| 実施結果の概要(PDF) | 受験者数・平均点・標準偏差・教科選択率 |
| 問題評価・分析委員会報告書 | 問題作成部会の自己評価/高等学校教科担当教員の評価/学会の評価 |
| 段階表示換算表(PDF) | 素点を9段階へ換算する区分点 |
得点率=平均点÷配点(部分点を含む)/正答率=部分点の有無にかかわらず完全に正答した受験者の割合/母数は全受験者
大学入試センター「試験情報データ」添付の(参考)csvデータの説明より
公開されるのは本試験だけで、追・再試験の設問別データは公表されていません。得点率と正答率がずれるのは、完答して初めて満点になる組合せ解答が混ざる設問だけです。令和8年度では第3問カ-キ(得点率0.7038/正答率0.5530)と第4問キ-ク(0.7732/0.5962)の2箇所だけがこれに当たります。
まず全体の輪郭
| 項目 | 令和7年度 | 令和8年度 |
|---|---|---|
| 受験者数(本試験『情報Ⅰ』) | 279,718人 | 305,202人 |
| 平均点 | 69.26点 | 56.59点 |
| 標準偏差 | 16.09 | 15.72 |
| 得点の中央値 | 70点 | 56点 |
| 最頻値 | 71点 | 56点 |
| 90点以上 | 29,494人(10.54%) | 4,739人(1.55%) |
| 80点以上 | 80,680人(28.84%) | 24,003人(7.86%) |
| 教科「情報」受験者(追再含む) | 302,493人 | 305,779人 |
| 教科選択率 | 65.5% | 65.9% |
平均点と標準偏差は、1点刻みの人数から私が計算し直しても一致します(56.5892/15.7248)。
受験者は減っていません。『情報Ⅰ』単独では前年から +25,484人、経過措置科目『旧情報』の受験者を足しても +3,313人です。
そして下がり方は一様です。成績分布に添えられた5分位の区切り(下から20%・40%・60%・80%の点)は、令和7年度の 55/66/74/83 が、令和8年度は 43/52/60/70。差はそれぞれ −12/−14/−14/−13点で、どの層も同じだけ下がっています。上位だけが削られたのでも、下位だけが落ちたのでもありません。
12.67点を大問に分解する
ここが本記事の核心です。平均点は大問ごとの平均点の和なので、差も大問ごとに分解できます。
| 大問 | 配点 | 令7 平均点(得点率) | 令8 平均点(得点率) | 差 | 下落に占める割合 |
|---|---|---|---|---|---|
| 第1問(小問集合) | 20 | 13.088(0.6544) | 8.100(0.4050) | −4.988 | 39.4% |
| 第2問(情報システム/論理演算) | 30 | 22.832(0.7611) | 17.434(0.5811) | −5.398 | 42.6% |
| 第3問(プログラミング) | 25 | 16.182(0.6473) | 14.441(0.5777) | −1.741 | 13.7% |
| 第4問(データ活用) | 25 | 17.161(0.6864) | 16.614(0.6645) | −0.547 | 4.3% |
| 合計 | 100 | 69.263 | 56.589 | −12.674 | 100% |
第1問と第2問だけで下落の82.0%を説明できます。「プログラミングが難化した」「第4問が重い」という語り方は、少なくとも平均点の下落については当たりません。
それどころか、第4問は4大問のうち得点率が最も高い(0.6645)。情報処理学会も報告書で「科目全体の平均より10ポイント近く高いことから、他の問と比較して難易度は低かったことになる」と書いています。実際 66.45% − 56.59% = 9.86ポイントです。
「難化」の中身は、易しい設問の半減
設問を正答率の帯で分け、帯ごとに配点を合計します。
| 正答率の帯 | 令7 配点合計 | 令8 配点合計 |
|---|---|---|
| 0.9 以上 | 20点 | 5点 |
| 0.8 以上 0.9 未満 | 13点 | 13点 |
| 0.7 以上 0.8 未満 | 15点 | 9点 |
| 0.6 以上 0.7 未満 | 17点 | 7点 |
| 0.5 以上 0.6 未満 | 17点 | 29点 |
| 0.4 以上 0.5 未満 | 8点 | 9点 |
| 0.3 以上 0.4 未満 | 3点 | 15点 |
| 0.3 未満 | 7点 | 13点 |
読み方は2つあります。上が消えた(9割以上が20点→5点、8割以上が33点→18点)。そして真ん中が厚くなった(0.3〜0.6の帯が28点→53点)。つまり令和8年度は、「読めば取れる設問」を減らし、「半分の人が落とす設問」を増やした年です。0.3未満の難問も7点→13点と増えましたが、動いた量は易しい側のほうがはるかに大きい。
この「8割以上18点・9割以上5点」は私がCSVから集計した値です。同時に、大学入試センターが公表した報告書の中で情報処理学会が同じ数字を書いています。
「昨年度本試験では正答率が高い設問への配点が大きかったが、今年度は正答率が8割以上の設問の配点合計は18点(9割以上は5点)で、段階表示換算表の1段階は1〜28となり、是正されている」
令和8年度大学入学共通テスト 問題評価・分析委員会報告書『情報Ⅰ』/一般社団法人 情報処理学会の評価より
出題側はこれを「是正」と呼んでいます。難しくしたのではなく、前年が易しすぎたのを直したという認識です。
落ちた設問を並べ、型で分ける
令和8年度の46設問を正答率の低い順に並べます。上から16設問で配点37点になります。「型」は私が付けたものです。
| 順 | 設問 | 配点 | 正答率 | 何を求められたか | 型 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 第1問 セ | 2 | 0.1023 | メール配送でエラーを最初に検出する場所 | 追跡 |
| 2 | 第3問 ソ | 2 | 0.1963 | 改変後のプログラムのある行の実行回数 | 追跡 |
| 3 | 第4問 シ | 3 | 0.2743 | 回帰直線による補正がうまくいくかの判断 | 逆算 |
| 4 | 第1問 カ-ケ | 4 | 0.2869 | 図案に3種類の変換を重ねた結果を16進で答える | 多段作業 |
| 5 | 第1問 ア-イ | 2 | 0.2939 | 主記憶装置と補助記憶装置の特徴の対応 | 関係知識 |
| 6 | 第2問 シ | 3 | 0.3019 | 目的の画像を得るために必要な論理演算 | 逆算 |
| 7 | 第1問 ウ | 2 | 0.3031 | 情報セキュリティ(可用性とバックアップ) | 関係知識 |
| 8 | 第1問 ス | 2 | 0.3289 | メール配送の段階 | 追跡 |
| 9 | 第2問 タ | 3 | 0.3326 | 合成に必要な演算の選択 | 逆算 |
| 10 | 第2問 ウ-オ | 3 | 0.3697 | 改良後のシステムのデータの流れ(完答) | 追跡 |
| 11 | 第3問 ス | 2 | 0.3868 | 初期化の行を挿入する位置 | 追跡 |
| 12 | 第2問 チ | 2 | 0.4188 | 合成の最終段の演算 | 逆算 |
| 13 | 第3問 サ | 2 | 0.4236 | 繰り返しの終了条件 | 逆算 |
| 14 | 第3問 セ | 2 | 0.4334 | 増分処理を挿入する位置 | 追跡 |
| 15 | 第2問 セ-ソ | 2 | 0.4510 | 透過に必要な画像と演算 | 逆算 |
| 16 | 第1問 シ | 1 | 0.4957 | メール配送の段階 | 追跡 |
追跡=与えられた仕組み・手順を、自分で一段ずつ最後まで追う。
逆算=欲しい結果から、必要な操作・条件を選ぶ。
多段作業=同じ規則を何度も適用する。読み違えなくても時間を食う。
関係知識=用語を単独ではなく、他の用語との関係で問う。
正答率5割未満の37点の内訳は、追跡14点/逆算15点/多段作業4点/関係知識4点。追跡と逆算だけで 29点=78% です。この2つに共通するのは、その設問だけを読んでも答えが決まらないことです。
対して、正答率8割以上だった10設問(合計18点)は、すべて「図・表・本文をそのまま読めば決まる」型でした。しかも第1問には正答率8割以上の設問が1つもありません。前年の第1問には3点分ありました(コ-サ 0.9502)。
設問間の依存を、令和8年度単独で検証する
大問ごとに、設問の並び順と正答率のスピアマン順位相関を取ります。
| 大問 | 構成 | 令7 | 令8 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 独立した小問集合 | +0.786 | +0.115 |
| 第2問 | A・Bの2中問 | −0.406 | −0.538 |
| 第3問 | 1つのプログラムを問1〜問3で追う | −0.881 | −0.958 |
| 第4問 | 1つのデータ分析を問1〜問4で追う | +0.450 | −0.609 |
第3問は −0.958。並び順と正答率がほぼ完全に逆順です。ところが第1問は +0.115 で、後半だから落ちるという傾向はまったく出ません。
第1問も第3問も、同じ受験者が同じ60分の中で解いています。もし原因が疲労や時間切れなら、後ろの大問ほど、そして大問の後半ほど一律に下がるはずです。そうならない以上、原因は「前の設問を引き継ぐかどうか」にあります。
出題側もこれを自覚しています。令和8年度の自己評価は第2問Bについてこう書いています。
「問2を正しく理解できた受験者はおおむね問4も正答できたものと推測される」
令和8年度 問題評価・分析委員会報告書『情報Ⅰ』/問題作成部会の見解より
実際、第2問Bの問2(シ)は0.3019、問4(セ-ソ/タ/チ)は0.4510/0.3326/0.4188。問2で落ちた受験者は、問4でも落ちています。
出題側は何を狙い、何が難しかったと考えているか
報告書には3者(問題作成部会の自己評価/高等学校教科担当教員/情報処理学会・日本情報科教育学会)の見解が載っています。平均点の下落について、3者とも「難易度は適切」と評価しました。
- 自己評価「平均点の56.59点は昨年度の69.26点から約12.7点下がったが、共通テストとして適切な難易度であったと考える」
- 高校評価「これは他科目の平均点と比べても同程度となっており、共通テストとして難易度設定が適切に行われたとも言える」
- 日本情報科教育学会「やや平均点を高めに設定していた昨年度と比べて難化したと受け止められるが、極端に難易度が変化したわけではなく、標準的な難易度を目指したことに起因する」「今回をもって、共通テスト『情報Ⅰ』の問題の在り方は一つの形として確立された」
一方で、出題側が「想定より低かった」と書いた箇所が2つあります。
第1問「正答率は、第1問全体を通じて想定よりも低く、第1問の得点率は約4割であった」
第2問B問2「問2は約3割と予想より低く、ビット演算の結果が画像としてどのような結果になったかを理解できていないことがうかがえる」
同 問題作成部会の見解より
下落の82%を占めた第1問・第2問が、そのまま「想定より低かった」場所です。第1問について自己評価はこう分析しています。
「問1aは、主記憶装置、補助記憶装置という用語の表面的な理解にとどまり、コンピュータの仕組みを深く理解していないことを示唆している。問1bも、不正アクセス禁止法やファイアウォールのような情報セキュリティに関する用語の表面的な理解にとどまり、本質的な理解が不足していると言える」
同上
第1問問2(カ-ケ、0.2869)についてはこうです。
「変換の規則を理解できれば短時間で効率よく答えを導くことができる設問であったが、8×8全てのマスについて拡張した受験者は時間を要したと推測される」
同上
つまり読解を途中でやめて手を動かし始めた受験者が落ちた、という診断です。
分量については評価が割れました。センター・高校評価・日本情報科教育学会は「適切」、情報処理学会だけが「問題量はやや増えており、受験者の解答時間を考慮すると、分量は昨年度程度が望ましい」としています。総マーク数は 51 → 60(+9)で、高校評価が「昨年度の共通テスト本試験と比較しマーク数が9か所増えた」と明記しています。問いの数(採点欄の数)は第1問10・第2問13・第3問12・第4問11の計46で、私がCSVの行数から数えた値と一致しました。配点や時間配分は第97講(配点と時間配分)で扱っています。
なお解答欄そのものにも変更がありました。情報処理学会は第1問問2について「今年度より解答欄に e 及び f が追加されたために選択ではなく演算結果を16進で記入することが可能になっている」と書いています。16進数の a〜f を直接マークできるようになった、ということです。
平均が下がっても、順位のものさしは動かない
受験生にとって効くのは素点ではなく、大学が使う換算です。段階表示換算表(素点を9段階に割る表)を並べます。
| 段階 | 令7 素点 | 令8 素点 | 令8 人数 | 令8 比率 |
|---|---|---|---|---|
| 9段階 | 94〜100 | 85〜100 | 12,089 | 3.96% |
| 8段階 | 89〜93 | 77〜84 | 21,652 | 7.09% |
| 7段階 | 83〜88 | 69〜76 | 37,125 | 12.16% |
| 6段階 | 75〜82 | 61〜68 | 51,642 | 16.92% |
| 5段階 | 66〜74 | 52〜60 | 66,221 | 21.70% |
| 4段階 | 58〜65 | 45〜51 | 47,638 | 15.61% |
| 3段階 | 49〜57 | 37〜44 | 38,035 | 12.46% |
| 2段階 | 39〜48 | 29〜36 | 19,662 | 6.44% |
| 1段階 | 0〜38 | 0〜28 | 11,138 | 3.65% |
段階ごとの人数の割合は、令和7年度とほとんど同じです(1段階 3.996%→3.649%、9段階 4.687%→3.961%)。段階表示は素点ではなく順位を9つに割るものだからです。
変わったのは区切りの素点で、9段階の下限は 94点 → 85点、1段階の上限は 38点 → 28点。とくに9段階の幅が7点分から16点分に広がりました。前年は満点近くに人が詰まっていて上位層を分けられていなかったことの裏返しです。情報処理学会が「是正されている」と書いたのはこの意味です。
「平均点が12点下がった」は、あなたの相対的な位置が12点分下がったという意味ではありません。全体が一様に下がったのだから、順位は動いていない。気にすべきは素点ではなく、素点が何段階に対応するかです。
手で確かめる
この記事の数値はすべて手元で再現できます。以下は実際に実行して確認した手順です。
1. CSVを取得する
一覧ページは令和7年度・令和8年度でそれぞれ次の場所にあります。https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/hyouka/r7_hyouka/r7_data.html / https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/hyouka/r8_hyouka/r8_data.html
「01_設問別得点率及び正答率表」のCSVを落とします。文字コードは cp932(Shift_JIS系)です。UTF-8で開くと文字化けします。ここが最初の関門です。
2. 『情報Ⅰ』の行だけを取り出して集計する
lines = open('r8.csv', encoding='cp932').read().splitlines()
i = [k for k, l in enumerate(lines) if l.startswith('科目=情報Ⅰ,')][0]
rows = []
for l in lines[i+2:]:
c = l.split(',')
if not c[0].isdigit():
break
rows.append(dict(dai=int(c[0]), no=c[1], hai=int(c[3]),
tokuten=float(c[4]), seito=float(c[5])))
# 検算1:配点の合計は100か
print(sum(r['hai'] for r in rows if r['no'] == '合計'))
# 検算2:配点×得点率の和は総平均点になるか
print(round(sum(r['hai'] * r['tokuten'] for r in rows if r['no'] != '合計'), 2))
# 本題:正答率8割以上・9割以上の配点合計
for th in (0.8, 0.9):
print(th, sum(r['hai'] for r in rows if r['no'] != '合計' and r['seito'] >= th))
実行結果は 100 / 56.59 / 0.8 18 / 0.9 5。令和7年度のCSVで同じことをすると 0.8 33 / 0.9 20 になります。報告書の中の情報処理学会の記述と一致します。自分の集計が正しいことを、公表文書で確かめられる数少ない機会です。
3. 順位相関を自分で出す
スピアマンの順位相関は、値を順位に直してからピアソン相関を取るだけです。ライブラリなしで書けます。
def rank(v):
idx = sorted(range(len(v)), key=lambda i: v[i])
r = [0] * len(v)
i = 0
while i < len(v):
j = i
while j + 1 < len(v) and v[idx[j+1]] == v[idx[i]]:
j += 1
for k in range(i, j + 1):
r[idx[k]] = (i + j) / 2 + 1
i = j + 1
return r
def pearson(x, y):
n = len(x); mx = sum(x)/n; my = sum(y)/n
sx = sum((a-mx)**2 for a in x) ** 0.5
sy = sum((b-my)**2 for b in y) ** 0.5
return sum((a-mx)*(b-my) for a, b in zip(x, y)) / (sx*sy)
for d in (1, 2, 3, 4):
rs = [r for r in rows if r['dai'] == d and r['no'] != '合計']
pos = list(range(1, len(rs)+1))
print(d, round(pearson(rank(pos), rank([r['seito'] for r in rs])), 3))
出力は 1 0.115 / 2 -0.538 / 3 -0.958 / 4 -0.609 です。
4. 自作の類題で「依存」を体験する
第2問Bの構造だけを真似た自作問題です。本番の問題文・図は使っていません。
4ビットで1画素を表す白黒画像がある。値が大きいほど明るいものとする。画像Xのある画素は 1010、画像Yの同じ位置の画素は 0110 である。
(1) X と Y のビットごとの OR は何か。
(2) X と Y のビットごとの AND は何か。
(3) 「Y が 1 のところだけ X の値を残し、それ以外を 0 にする」には、X と Y に何をすればよいか。
(4) 「Y が 0 のところだけ X の値を残し、それ以外を 0 にする」には、何をすればよいか。
答え。(1) 1110。(2) 0010。(3) X AND Y。(4) X AND (NOT Y)=1010 AND 1001 = 1000。
(3)が分かれば(4)は自動的に決まり、(3)を落とすと(4)も落ちます。これが本番で起きたこと(問2 0.3019 → 問4 0.3326/0.4188/0.4510)の縮図です。だから復習では、間違えた設問だけを直してはいけません。その設問がどこから来たかを遡ります。
共通テストではこう出る(重要度 S)
令和9年度以降、何が変わらないか
大学入試センターが公表している令和9年度の問題作成方針の『情報Ⅰ』の欄は、令和8年度のものと一字一句同じです(両PDFのテキストを正規化して比較し、完全一致を確認しました)。書かれているのは次の2点だけです。
- 日常的な事象や社会的な事象などを情報とその結び付きとして捉え、問題の発見・解決に向けて探究する活動の過程、および情報社会と人との関わりを重視する。題材は社会や身近な生活の中のもの、および受験者にとって既知ではないものも含めた資料とする。
- プログラミングの出題では、受験者が初見でも理解できる大学入試センター独自のプログラム表記を用いる。
方針の文言から言えることは、ここまでです。平均点の目標も、大問の構成も、配点も、方針には書かれていません。したがって「来年は第1問が易しくなる」といった予想は方針からは出てきません。私は書きません。
一方、方針に書かれている以上、確実に続くと言えることが3つあります。
1. 初見の資料が出る。「受験者にとって既知ではないものも含めた資料等」は方針の本文です。知らない題材が出るのは事故ではなく仕様です。
2. プログラム表記は独自表記のまま。特定言語の文法を覚え込む対策は、方針の文言に照らして割に合いません。
3. 問題解決の過程そのものが問われる。令和8年度の第3問(作成→評価→改善)と第4問(仮説→検証→補正→妥当性の評価)は、この文言をそのまま形にしたものです。
自己評価も「今年度の共通テストの『情報Ⅰ』は、令和7年度試験に引き続き、令和4年11月の『試作問題』の形式に従っている」と書いています。枠は3年続けて同じです。
この年度から持ち帰るべき対策
- 第1問を軽視しない。20点の小問集合で得点率0.405、ここだけで −4.988点。用語は単独ではなく関係で覚える(主記憶と補助記憶を「どちらが速いか・どちらが消えるか・どちらが大きいか」で並べる、など)。
- 「表面的な理解」で止めない。出題側がこの語を2回使っています。語の定義を言えることと、その語が使われる場面を追えることは別です。
- 追跡型の練習をする。メールが届く経路、システムのデータの流れ、プログラムの1行1行。紙に段を書いて追う練習をした人だけが取れる型が、5割未満の37点のうち14点あります。第3問の攻め方は第100講(第3問プログラム)にまとめました。
- 逆算型の練習をする。「この結果を得るには何をすればよいか」。論理演算の3問(シ・タ・チ)と回帰直線の補正(シ)はすべてこの型で、合計11点。第4問の作法は第101講(第4問データ分析)で扱っています。
- 復習は「間違えた設問」ではなく「間違いの始まり」を直す。第2問Bの問2→問4の連鎖が実例です。読み取りの技術そのものは第102講(長文・図表の読み取り)に分けて書きました。
- 素点で一喜一憂しない。段階表示は順位のものさしです。
情報Ⅱではこうなる
この講は情報Ⅱへの接続がありません。共通テストの出題科目は『情報Ⅰ』であって、『情報Ⅱ』は出題されないからです。念のため、問題冊子の全文を機械的に数えて確認しました(PDFからテキストを抽出し、空白・改行を除いてから計数)。
| 語 | 令7本試 | 令8本試 | 令7追再 | 令8追再 | 情Ⅰ教員研修用教材 | 情Ⅱ教員研修用教材 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 重回帰 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 45 |
| 説明変数 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 37 |
| 主成分 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 161 |
| クラスタリング | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 45 |
| 決定木 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 7 |
| 訓練データ | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 12 |
| 機械学習 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | 38 |
| ニューラルネットワーク | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 63 |
情報Ⅱ固有の道具は、共通テスト4セットのいずれにも一度も現れていません。(なお文部科学省の授業・研修用コンテンツの一部はテキスト抽出できない画像PDFで、「0件」は抽出できた資料の範囲での0件です。問題冊子については抽出できているので、上の表の左4列は確定値です。)
ただし、語のレベルでは1つだけ、情報Ⅱ側に足を踏み入れた場所があります。
令和8年度本試験の問題冊子には「欠損値」が1件だけあります。第4問問1bの解答群のひとつで、これが正答(イ、正答率0.890)です。ところが――
- 情報Ⅰ教員研修用教材は同じ内容を「欠測値」で書いています(欠測値6件/欠損値0件、いずれも第4章)。
- 情報Ⅱ教員研修用教材は逆に「欠損値」で書いています(欠損値17件/欠測値0件)。
- 共通テスト4セットでは「欠測値」は0件、「欠損値」は令和8年度本試験の1件だけ。
つまり共通テストは、情報Ⅰ側の教材の語ではなく、情報Ⅱ側の語を採りました。参考書や教材で「欠測値」としか見たことがない受験生は、本番の解答群で初めてその語を見ることになります。両方を知っておく必要があります。
もう一つ、回帰直線の扱いも年度で動きました。問題冊子の全文計数では、令7本試 0件/令8本試 7件/令7追再 5件/令8追再 3件。回帰直線が本試験に出たのは令和8年度が初めてです(令和7年度は追・再試験のみ)。学習指導要領解説では、共通教科のうち情報Ⅰの節に「回帰直線」1件・「単回帰」1件があり、「重回帰」は情報Ⅰの節に0件・情報Ⅱの節に3件です。
したがって境界はこうなります。
情報Ⅰ:説明変数が1つ。散布図を描き、回帰直線を引き、予測値と実測値の差を見る。令和8年度第4問問4が到達した「回帰直線でずれを補正する」までが、この範囲の上限。
情報Ⅱ:説明変数を2つ以上にする(重回帰)。どの変数を残すかを選ぶ(変数選択)。当てはまりを指標で評価する(寄与率・自由度調整済み決定係数)。さらに分類や次元圧縮(クラスタリング・主成分分析)へ進む。
令和8年度第4問問4は、その境界のすぐ手前に置かれていました。正答率が3割弱(シ 0.2743)で最下位級だったのは、そこが情報Ⅰの上限だからです。
まとめ
- 平均点は 69.26 → 56.59(−12.67点)。82%は第1問と第2問で起きた。
- 難問が増えたのではなく、易しい設問が半減した(8割以上 33点→18点、9割以上 20点→5点)。センターの公表文書の中で情報処理学会も同じ数字を書いている。
- 落ちた設問は「追跡」と「逆算」に集中する(5割未満37点のうち29点)。共通するのは「その設問だけを読んでも解けない」こと。
- 後半ほど落ちるのは、設問が前を引き継ぐ大問だけ(第3問 −0.958、第1問 +0.115)。原因は疲労ではなく依存。
- 全層が一様に13点前後下がったので、順位は動いていない。動いたのは段階表示の区分点のほう(9段階の下限 94点→85点)。
- 令和9年度の問題作成方針の『情報Ⅰ』欄は令和8年度と完全に同一。方針から言えるのは「初見資料が出る」「独自プログラム表記のまま」「問題解決の過程が問われる」の3つだけで、難易度の予想は方針からは出てこない。
本講は『藤原進之介の最強120講義』第5部の1講です。ほかの講は情報Ⅰ 最強120講義の一覧から読めます。
出典(すべて2026年8月3日に取得)
- 大学入試センター「令和7年度 試験情報データ(本試験)」 https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/hyouka/r7_hyouka/r7_data.html (01_設問別得点率及び正答率表 CSV、02_科目別成績分布 CSV、03_(参考)csvデータの説明 PDF)
- 大学入試センター「令和8年度 試験情報データ(本試験)」 https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/hyouka/r8_hyouka/r8_data.html (同上、および「令和8年度大学入学共通テスト 実施結果の概要」PDF)
- 大学入試センター「令和8年度大学入学共通テスト 問題評価・分析委員会報告書(本試験)」『情報Ⅰ』(高等学校評価/関係団体評価/自己評価) https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/hyouka/r8_hyouka/r8_hyoukahoukokusyo_honshiken.html
- 大学入試センター「令和8年度大学入学共通テスト 段階表示換算表」/「令和7年度大学入学共通テスト 段階表示換算表」(PDF) https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/kako_shiken_jouhou/r8/
- 大学入試センター「令和8年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト問題作成方針」(PDF)/「令和9年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト問題作成方針」(PDF) https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/shiken_jouhou/r9/
- 大学入試センター 令和7年度・令和8年度 本試験および追・再試験の問題冊子 https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/kakomondai/
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編」 https://www.mext.go.jp/content/1407073_11_1_2.pdf
- 文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅰ』教員研修用教材」第4章 https://www.mext.go.jp/content/20200722-mxt_jogai02-100013300_006.pdf
- 文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅱ』教員研修用教材」第3章 情報とデータサイエンス(前半) https://www.mext.go.jp/content/20200702-mxt_jogai01-000007843_004.pdf / 同 演習解答 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/mext_01292.html
(設問別得点率・正答率の集計、大問別の分解、成績分布からの人数・中央値・5分位、順位相関、問題冊子の語数計数、および自作類題の計算は、すべて私が原典から独立に実施・検算しました。問題冊子の語数はPDFからテキスト抽出したもので、図の中の文字は抽出できません。)
執筆:藤原進之介(数強塾グループ代表)
オンライン数学専門塾「数強塾」代表。累計3,500名以上の中高一貫校生を指導。東進ハイスクール・東進衛星予備校・代々木ゼミナールなど出講実績あり。情報Ⅰの参考書を複数執筆しており、KADOKAWA『ゼロから始める情報I』、Gakken『きめる!共通テスト 情報Ⅰ』などがあります。本記事は参考書『藤原進之介の最強120講義』第106講のWeb版です。
「情報Ⅰの点数が読めない」と感じている方へ
数強塾では数学と情報Ⅰの両方に対応したオンライン個別指導を行っています。学習相談は無料、体験授業は3,000円(税込)でお受けしています。
