情報Ⅰ 最強120講義

コンピュータの構成と5大装置――なぜ「部品」ではなく「機能」の分類なのか【情報Ⅰ 第37講】

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こんにちは、数強塾代表の藤原進之介です。この記事は参考書『藤原進之介の最強120講義』の第37講「コンピュータの構成と5大装置」のWeb版です。共通テスト「情報Ⅰ」での重要度はB、情報Ⅱでの接続先は(4)情報システムとプログラミングです。

ここから第3部(コンピュータとプログラミング)に入ります。本講は「5つの機能に分けて考える」という枠組みそのものだけを扱います。演算装置の中身は第44講「論理回路」第45講「半加算器・全加算器」で扱い済みなので、そちらへ逃がします。

1. この講の問い

「コンピュータは5つの装置でできている」と習うのに、スマートフォンを分解しても5つの箱は出てこない。それでもこの分類に意味があるのはなぜか。

2. 結論

この講の結論

5大装置は部品の分類ではなく機能の分類です。だから1つの部品が2つの機能を兼ねることも、1つの機能が機器の外側(クラウド)にあることもあります。覚えるべきは5つの名前ではなく、目の前の機器を5つの機能に分解する手つきのほうです。そしてこの分類が効くのは、制御装置が「命令をデータとして読んでくる」構造になっているから。ここが、ハードを作り変えずに仕事を変えられる汎用コンピュータの正体です。

3. なぜそうなるのか

3-1. 「五大装置」という語は、国の一次資料にもIPAのシラバスにも一度も出てこない

この講は「5大装置を覚えましょう」で終わっている参考書が多いところです。ですが、そもそもこの呼び名がどこから来ているのかを先に確認しておきます。

当方で次の範囲を全文テキスト化し、空白と改行を除去してから数えました(2026年8月3日)。

  • 高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編。第1部=共通教科(情報Ⅰ・情報Ⅱ)と第2部=専門教科情報科を分けて計数
  • 情報Ⅰ教員研修用教材 全6分冊(表紙・序章/本教材の使い方/第1〜4章)
  • 情報Ⅱ教員研修用教材 全7分冊(序章/第1章/第2章/第3章前半/第3章後半/第4章/第5章)
  • IPA ITパスポート試験シラバス Ver.6.5/基本情報技術者試験シラバス Ver.9.2/応用情報技術者試験シラバス Ver.7.0
解説
共通教科
解説
専門教科
情報Ⅰ
教材
情報Ⅱ
教材
IT
パス
基本
情報
応用
情報
五大装置/5大装置/五大 0 0 0 0 0 0 0
ノイマン 0 0 0 0 0 0 0
プログラム内蔵/格納方式 0 0 0 0 0 0 0
中央処理装置 0 0 0 0 0 0 0
制御装置 0 0 3 0 0 3 3
演算装置 0 0 4 0 0 2 2
記憶装置 0 0 4 10 0 15 16
入力装置 2 0 3 0 0 5 5
出力装置 2 1 3 1 6 9 11
主記憶 0 0 0 1 1 7 9
補助記憶 0 0 0 1 1 6 7
CPU 3 0 12 13 1 4 9

情報Ⅰ教材の「制御装置」3・「演算装置」4・「入力装置」3・「出力装置」3はすべて第3章です。情報Ⅱ教材の「記憶装置」10のうち3件と「CPU」13のうち6件は、序章分冊にある「紙面の構成の説明」として第1章の誌面を再掲した図に由来する重複で、残りはすべて第1章です。

読み取れることは3つあります。

① 学習指導要領解説の共通教科の側には、「制御装置」「演算装置」「記憶装置」が1件もありません。 解説にあるのは「入力装置」「出力装置」各2件だけで、しかもこれは同じ趣旨の1節(情報Ⅰ(3)ア(ア)とイ(ア))です。そこでの書き方は「5つに分ける」ではなく、OSがハードウェアを抽象化するという話でした。

コンピュータの基本的な構成や演算の仕組み、オペレーティングシステムによる資源の管理と入力装置や出力装置などのハードウェアを抽象化して扱う考え方、コンピュータ内部でのプログラムやデータの扱い方、値の範囲や精度について理解するようにする

高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編 情報Ⅰ(3)ア(ア)

② 「5つで構成される」と書いているのは、教員研修用教材のたった1文です。 情報Ⅰ教員研修用教材 第3章 学習11「コンピュータの仕組み」にこうあります。

コンピュータは、制御装置、演算装置、記憶装置、入力装置、出力装置の5つで構成される。制御装置と演算装置を合わせてCPU(Central Processing Unit)という。CPUは記憶装置から命令やデータを取り出して処理を行う。入力装置や出力装置を含め、すべてを制御するのが制御装置、様々な演算を行うのが演算装置である。

文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅰ』教員研修用教材」第3章 学習11

③ 「五大装置」「ノイマン型」「プログラム内蔵方式」は、どの一次資料にも語として存在しません。 高校の一次資料だけでなく、IPAの3つのシラバスにも0件でした。これらは教科書と参考書の世界で流通している通称です。用語として覚え込む価値は薄く、中身のほうに意味がある——というのが本講の立場です。

なお「主記憶」「補助記憶」は情報Ⅰ教員研修用教材に0件でした。情報Ⅰ教材はこの2つを「メモリ」「ハードディスク」という製品名寄りの言い方で説明しています。にもかかわらず共通テストは「主記憶装置・補助記憶装置」という語で出題しました(5節)。用語と実物の対応が、一次資料の側で切れている単元だということです。

3-2. 5大装置は「部品の分類」ではなく「機能の分類」である

ここが本講の芯です。

スマートフォンを分解しても、「制御装置」というラベルの貼られた部品は出てきません。出てくるのは基板・チップ・ガラス・電池です。それでも5つの分類が消えないのは、これが物の分け方ではなく、仕事の分け方だからです。

具体的には、この2つのズレが必ず起きます。

  • 1つの部品が複数の機能を担う。 いちばん分かりやすいのがスマートフォンのタッチパネルで、1枚のガラスの上で「指の位置を受け取る(入力)」と「画像を見せる(出力)」を同時にやっています。CPUという1個のチップが制御装置と演算装置の両方であることも、まったく同じ形のズレです。
  • 1つの機能が機器の外にある。 写真をクラウドに保存しているとき、記憶の機能の一部はその機器の中に存在しません。手元にあるのは通信の入口だけです。

だから「スマホの中の5大装置を挙げよ」と言われて詰まるのは、正しい詰まり方です。問われているのは箱の数ではなく、機能がどこに割り当てられているかだからです。

3-3. なぜ制御装置と演算装置を分けるのか

CPUという1つのチップに入っているのに、なぜ2つに分けて呼ぶのか。「何をするか決める」ことと「実際に計算する」ことは、別の仕事だからです。

料理でたとえます。レシピを読んで「次は玉ねぎを切る」と決めるのが制御装置、実際に包丁を動かすのが演算装置です。包丁がどれだけ切れても、レシピを読む人がいなければ何も始まりません。逆にレシピを読めても、包丁がなければ料理は進みません。

制御装置がやっているのは、次の繰り返しです。

  1. 記憶装置から命令を取ってくる
  2. その命令が何を意味するのか解釈する
  3. 演算装置や入出力装置にやらせる
  4. 次の命令の場所に進む

これを、電源が入っている間ずっと回し続けています。命令を取ってきて解釈する係がいないと、演算装置は動き出せません。 これが分ける理由です。

3-4. なぜ主記憶と補助記憶を分けるのか

理由は身もふたもなくて、速さ・容量・価格の3つを同時に満たす記憶装置が存在しないからです。速いものは高いので量を積めない。安いものは大量に積めるが遅い。そして速いほうは、多くの場合、電源を切ると消えます。

全部を高速なメモリにできるなら、とっくにそうしています。 できないから、速くて小さい主記憶と、遅くて大きい補助記憶を組み合わせる。この「性質の違う記憶装置を組み合わせて階層にする」考え方は、IPA 基本情報技術者試験シラバス Ver.9.2 で記憶階層という名前で明示されています。

(3)メモリシステムの構成と記憶階層 記憶階層の構成、特徴の異なる記憶装置を組み合わせて階層化する目的、考え方を理解する。

IPA「基本情報技術者試験(レベル2)シラバス Ver.9.2」

なお「記憶階層」も「キャッシュメモリ」も、高校の一次資料には0件です(「キャッシュ」の語自体は情報Ⅱ教材 第1章に12件ありますが、12件すべて「キャッシュレス決済」で、メモリの話ではありません)。ここから先は第38講に渡します。本講で押さえるのは、分ける理由がトレードオフであるという一点です。

3-5. プログラム内蔵方式が本質的に可能にしたこと

制御装置は、命令を「記憶装置から取ってくる」と書きました。ここが核心です。命令が、データと同じ場所に、データと同じ形で置かれている。 これがプログラム内蔵方式です。

学習指導要領解説はこの語を使いませんが、内容そのものは書いています。

データがCPU、メモリ、周辺装置の間でやり取りされていること、コンピュータがデータを処理する作業場所としてのメモリの役割、CPUが機械語のプログラムをデータとして読みながら実行することなどを扱う

高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編 情報Ⅰ(3)イ(ア)

「プログラムをデータとして読みながら実行する」——ここに全部入っています。では、これは何を可能にしたのか。

プログラム内蔵方式が可能にしたこと

ハードを作り変えずに、命令を入れ替えるだけで別の仕事ができるようになった。

どれだけ非自明なことか、逆を考えると分かります。もし命令が配線で表現されていたら、電卓を作るには電卓の配線、時計を作るには時計の配線が要ります。仕事を変えるには工場に戻すしかありません。プログラム内蔵方式では、記憶装置の中身を書き換えるだけで済みます。同じ物理的な機械が、今日は表計算、明日はゲームになる。

これが「汎用コンピュータ」の正体です。 そして皆さんが授業でプログラムを書けるのも、この構造のおかげです。プログラムを書き換えて実行し直せるということは、コンピュータが命令をデータとして扱っているということに他なりません。

この考え方は、この先いろいろな姿で戻ってきます。第53講で扱う「関数」は、処理に名前を付けて、あとから入れ替えられるようにする仕組みです。情報Ⅱのソフトウェア開発では、これがモジュール分割という工程名になります。「作り変えずに差し替える」は、コンピュータという機械の設計思想そのものなのです。

3-6. データの流れと制御の流れは、別の線である

5大装置の図を描くとき、矢印を1種類で描いてしまうと本質が消えます。流れは2種類あるからです。IPA 基本情報技術者試験シラバス Ver.9.2 は、ここを明示的に分けています。

(2)コンピュータの構成 コンピュータが五つの装置から構成されること、装置間の基本的な制御の流れ、データの流れを理解する。用語例 演算装置、制御装置、記憶装置、入力装置、出力装置

IPA「基本情報技術者試験(レベル2)シラバス Ver.9.2」

  • データの流れ:入力装置 → 記憶装置 → 演算装置 → 記憶装置 → 出力装置。中身が運ばれていく線
  • 制御の流れ:制御装置 → 他の4つ全部。「今からこれをやれ」という指示だけが流れる線

制御の流れには、中身がありません。指示だけです。だから制御装置から出る線は、データが通る線とは別に描くべきなのです。共通テストでデータの流れを追わせる設問が出たときも、この2本を混ぜないことがそのまま得点になります。

4. 手で確かめる

4-1. 図:データの流れと制御の流れを別々に描く

CPU 制御装置 演算装置 入力装置 記憶装置 出力装置 データの流れ(中身が運ばれる) 制御の流れ(指示だけが伝わる)

図1 5つの装置と2種類の流れ。制御装置から出る破線には中身がなく、指示だけが流れる。制御装置と演算装置は、ふつう同じ1個のチップ(CPU)の中にある。

4-2. 身近な機器を5つの機能に分解する

これは仕様の暗記ではなく、機能に分けて考える練習です。 実装の細部はメーカーや機種によって違いますし、それでかまいません。大事なのは「この機能はどこが担っているか」と問える形にすることです。

なお、コンピュータが機器に組み込まれている例としては、情報Ⅱ教員研修用教材 第4章 図表10 が実例を挙げています(通信機器=携帯電話・スマートフォン・FAX/運輸機器=自動車/家電機器=テレビ・洗濯機・冷蔵庫・電子レンジ/医療機器/産業機器=エレベーター・信号機・ATM)。下の表のうち自動改札機は、私が同じ考え方で足した例です。

機能 スマートフォン 電卓 自動改札機 エアコン
入力 タッチパネル・マイク・カメラ・各種センサ キー ICカードの読み取り部・きっぷの投入口 温度センサ・リモコンの受光部
出力 画面・スピーカー・振動 表示部 扉の開閉・表示・音 送風・表示ランプ
記憶 内蔵ストレージ・作業用メモリ 「M+」などの記憶キーの中身 運賃の対応表・利用の記録 設定温度・タイマーの設定
演算 チップ内の演算回路 チップ内の演算回路 運賃の計算 設定温度と室温の差の計算
制御 同じチップの制御部分 同じチップの制御部分 扉を開けるか閉じるかの判断 圧縮機を回すか止めるかの判断

ここから、必ず次の2つを確認してください。

4-3. 確認① 1つの部品が2つの機能を兼ねている例

スマートフォンのタッチパネルは、入力装置と出力装置が物理的に重なっています。指の位置を読み取る層と、画像を映す層が、同じ1枚として組み立てられている。「5つの箱があるはずだ」と思って探すと、この時点で行き詰まります。

同じズレは、もっと根本的なところにもあります。制御装置と演算装置は、ふつう同じ1個のチップの中にあります(それをCPUと呼ぶ、というのが情報Ⅰ教員研修用教材の書き方でした)。つまり5大装置は、最初から「1部品=1装置」になっていません。

4-4. 確認② 機能が機器の外にある例

写真をクラウドに保存しているとき、その写真の記憶の機能は、手元の機器の中にありません。機器の中にあるのは通信の入口と、一時的な控えだけです。同じことは自動改札機にも起きます。改札機の中だけで全部を判断しているのか、駅のサーバに問い合わせているのかは、外からは見えません。

この「外にある」が、そのまま情報Ⅱの主題になります。

4-5. 自分でやってみる演習

手元にある機器を1つ選んで、上の表と同じ5行を埋めてみてください。そのうえで、次の3つに答えます。

  1. 兼ねている部品はどれか(入力と出力が同じ部品になっているところはないか)
  2. 外にある機能はどれか(電源が入っていても通信が切れたら使えなくなる機能はどれか)
  3. 命令を入れ替えたら何が変わるか(アップデートで挙動が変わった経験はないか。それがプログラム内蔵方式が効いている瞬間です)

3番目に答えられたら、この講は身についています。

5. 共通テストではこう出る(重要度 B)

5-1. 一次資料で確認できる出題実績

脅すのではなく、事実を並べます。すべて大学入試センターの公表資料(一次)で確認しました(2026年8月3日取得)。

令和8年度本試験(2026年1月実施)——出ました。第1問 問1a です。 問題作成部会の見解(自己評価)の原文はこうです。

問1aはコンピュータの構成要素・仕組みに関する体験的な理解を問う問題

大学入試センター「令和8年度大学入学共通テスト 問題評価・分析委員会報告書(本試験)」『情報Ⅰ』問題作成部会の見解

そして結果です。

正答率は、第1問全体を通じて想定よりも低く、第1問の得点率は約4割であった。問1a、bの正答率はいずれも約3割と低かった。問1aは、主記憶装置、補助記憶装置という用語の表面的な理解にとどまり、コンピュータの仕組みを深く理解していないことを示唆している。

同上

高等学校教科担当教員の意見・評価の側も、同じところを指しています。

問1aは、コンピュータの記憶装置の特徴についての設問であった。容量や想定される保存期間などの特徴について、体験的に理解できていない受験者にとってはやや難しかったかもしれない

同報告書『情報Ⅰ』高等学校教科担当教員の意見・評価

令和7年度本試験(2025年1月実施)——第1問には出ていません。 同年度の自己評価によれば、第1問はデジタル署名/IPv6/7セグメントLEDと情報量/チェックディジット/フィッツの法則でした。ただし第2問AはPOSの情報システムを題材に「情報の流れ」を追わせる問題で、これは装置ではなくシステムの側の出題です。

配点は、令和8年度本試験で第1問20点・第2問30点・第3問25点・第4問25点(合計100点。正解表より)。5大装置そのものは、小問集合の中の1問です。ここに何時間もかける単元ではありません。重要度Bという評価は、この実績に見合ったものです。

ただし、出たときの正答率は約3割でした。軽いけれど、軽く扱うと落とす——というのが正確な姿です。

5-2. 出題の型

大学入試センターの資料から読み取れる限りで、型は2つです(問題文・選択肢・図表は転載しません)。

  1. 装置の役割を選ばせる型。 記憶装置の特徴——容量、速さ、電源を切ったときに残るかどうか、想定される保存期間——を比べさせる形。令和8年度の問1aはこの型です。
  2. データの流れを追う型。 情報がどこからどこへ渡るかを図で示し、途中の一か所を問う形。令和7年度の第2問AのPOSシステムがこの型です。装置の話とシステムの話が地続きになっているところが共通テストの特徴です。

5-3. 引っかけ

  • 「速い=主記憶、遅い=補助記憶」で機械的に処理しようとして詰まる。 問われるのは容量・保存期間・電源を切ったときの挙動まで含めた総合です。「体験的な理解」という出題側の言葉は、まさにここを指しています
  • CPUを「装置の1つ」だと思っている。 CPUは制御装置と演算装置を合わせた呼び名なので、5つと並べて6つ目には数えません
  • データの流れと制御の流れを混ぜる。 制御装置から出ている線をデータの線だと思うと、流れを追う問題で必ず迷います
  • 「5つの箱を探しにいく」。 兼ねている部品や外にある機能を前にして手が止まります。機能の分類だと分かっていれば止まりません

5-4. 自作の類題

練習問題(本記事オリジナル)

 ある学習用タブレットについて、次の(a)〜(d)の記述のうち、適切でないものを1つ選べ。

(a) 画面は出力の機能を担うが、指で操作するときには入力の機能も同時に担っている。
(b) 電源を切ってもアプリが消えないのは、アプリが補助記憶に相当する場所に保存されているからである。
(c) 同時に開くアプリを増やすと動作が重くなることがあるのは、作業場所としての記憶の広さに限りがあるからである。
(d) クラウドに保存した写真は、通信が切れていても本体の記憶装置から読み出せる。

:(d)。クラウドに保存されているということは、記憶の機能がその機器の外にあるということです。通信が切れれば届きません(本体に控えが残っている場合を除きます)。

6. 情報Ⅱではこうなる

6-1. 「5つの装置」が「3つの情報技術」に置き換わる

情報Ⅰでは、コンピュータ1台を5つの機能に分けました。情報Ⅱでは、分ける単位が1台から複数台へ上がります。

情報Ⅱ教員研修用教材 第4章 学習19「情報システム全体の情報の流れ」は、こう括り直します。

ハードウェアではコンピュータやセンサ、組み込みシステムなどのハードウェアの仕組み。ネットワークでは、クライアントサーバシステムやP2Pシステムなどのネットワークデータ通信の仕組み。ソフトウェアでは、ハードウェアやネットワークを制御するソフトウェアや処理形態の仕組み。これら3つの情報技術を理解した上で、情報システム全体の情報の流れを考える

文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅱ』教員研修用教材」第4章 学習19

情報Ⅰの5分類が、情報Ⅱではハードウェア・ネットワーク・ソフトウェアの3分類になります。しかも情報Ⅰで5つに分けられていたものが、まとめて「ハードウェア」1個に押し込まれる。代わりに、情報Ⅰには無かった「ネットワーク」が同格で立ちます。

語数でも同じことが言えます。「制御装置」「演算装置」は情報Ⅰ教材に3件・4件(すべて第3章)ありますが、情報Ⅱ教材 全7分冊には0件です。逆に「ハードウェア」は情報Ⅰ教材に0件、情報Ⅱ教材に14件(うち第4章が10件)。装置の名前は情報Ⅱで消え、ハードウェアという一語にまとめられます。

情報Ⅰ:1台の中で5つに分ける 制御装置 演算装置 記憶装置 入力装置 出力装置 単位が上がる 情報Ⅱ:3層に配る(どこに置くかを決める) プレゼンテーション層 表示(クライアント) ファンクション層 加工(アプリケーションサーバ) データ層 保存(データベースサーバ) ネットワーク ネットワーク 自分で 持つか 借りるか

図2 情報Ⅰの5機能は、情報Ⅱでは複数台に配り直される。「出力」がプレゼンテーション層、「演算」がファンクション層、「記憶」がデータ層におおよそ対応する。

6-2. 「何を自分で持ち、何を借りるか」が設計の中身になる

情報Ⅱの情報システムでは、5つの機能をどこに置くかが「決めるべきこと」になります。学習19が扱う論点は、そのまま「持つか借りるか」の話です。

集中か分散か。 教材はこう書きます。

集中処理は、保守や運用管理、セキュリティの管理が容易ではあるが、ホストコンピュータが故障するとシステム全体が停止してしまうデメリットがある。一方の分散処理システムは、1台のコンピュータが故障しても処理を継続できるため信頼性が高く、機能の拡張が容易ではあるが、保守やセキュリティ管理、運用管理が複雑になるデメリットがある。ただし近年では、インターネットを経由して利用するクラウドコンピューティングが普及しつつあり、集中処理か分散処理かを区別することの意義が薄れつつある。

文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅱ』教員研修用教材」第4章 学習19

「区別することの意義が薄れつつある」——一次資料がここまで踏み込んでいるのは重要です。借りている以上、自分の側からは中の分かれ方が見えないからです。4-4で確認した「機能が外にある」が、そのまま制度の言葉になっています。

どこに処理を置くか。 学習19はクライアントサーバシステムの3層構成を扱います。

当初のクライアントサーバシステムは、クライアントのアプリケーションがサーバのデータベースにアクセスする形の2層構成であった。しかし、データベースの検索結果が全てネットワークを通じて送られるため、クライアントとサーバ間の通信負荷が問題となった。そこで、クライアントには画面表示などの機能を残し、利用頻度の高いプログラムをアプリケーションサーバに置いてデータベースにアクセスする形の3層構成が主流になり現在でも多く使われている。

同上

これは5大装置の「出力」「演算」「記憶」を、1台の中ではなくネットワーク上に配り直したものです。 そして配り直す理由が通信負荷であるところがポイントで、情報Ⅰでは「速さと容量と価格」だったトレードオフが、情報Ⅱでは「通信量」に置き換わります。通信量そのものの計算は第73講「通信速度とデータ量」で、ネットワークの階層の考え方は第68講「プロトコルとTCP/IP」で扱いました。

6-3. 組み込みシステム——プログラム内蔵方式が、経済の言葉で言い直される

3-5で「ハードを作り変えずに、命令を入れ替えるだけで別の仕事ができる」と書きました。情報Ⅱ教材は、まったく同じことをお金の言葉で書いています。

パソコンなどの汎用的なシステムとは異なり、特定の機能を実現するために、専用化されたコンピュータハードウェアと、それを制御するソフトウェアから構成されている組み込みシステムがある。(中略)組み込みシステムは、機器にコンピュータを組み込むことで、ソフトウェアを変更するだけで、製品の改良を低コストで実現できるメリットがある。

文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅱ』教員研修用教材」第4章

「ソフトウェアを変更するだけで、製品の改良を低コストで実現できる」——これはプログラム内蔵方式の帰結そのものです。情報Ⅰでは「そういう仕組みだ」と習うことが、情報Ⅱでは「だから安く改良できる」という経営判断の理由になります。 冷蔵庫や信号機の中身が、アップデートで賢くなる。その根っこにあるのが、この講で扱った構造です。

なお「組み込みシステム」の語は、解説・情報Ⅰ教材・IPAの3シラバスのいずれにも0件で、情報Ⅱ教材 第4章の5件だけにありました。情報Ⅱに固有の語彙です。

6-4. 情報Ⅰと情報Ⅱの扱いの違い(整理)

情報Ⅰ 情報Ⅱ
分ける単位 コンピュータ1台 複数台にまたがるシステム
分類 制御・演算・記憶・入力・出力の5機能 ハードウェア・ネットワーク・ソフトウェアの3技術
トレードオフ 速さ・容量・価格(記憶の階層) 通信負荷・信頼性・運用コスト(2層と3層、集中と分散)
「外にある」の扱い 触れない クラウドで集中/分散の区別の意義が薄れる、と明記
プログラム内蔵方式 仕組みとして(命令をデータとして読む) 経済として(ソフト変更だけで低コストに改良できる)

情報Ⅰの5大装置は、情報Ⅱの構成設計の入口です。 「1台の中でどう分業するか」を理解した人だけが、「どこまで自分で持ち、どこから借りるか」を考えられます。情報Ⅱ全体の地図は第109講「情報Ⅱの全体像」にまとめました。

7. この講のまとめ

  • 5大装置は部品の分類ではなく機能の分類。1部品が2機能を兼ねることも、1機能が機器の外にあることもある
  • 「五大装置」「ノイマン型」「プログラム内蔵方式」の語は、国の一次資料にもIPAの3シラバスにも0件。「5つで構成される」と書いてあるのは情報Ⅰ教員研修用教材 第3章 学習11 の1文だけ
  • 制御装置と演算装置を分けるのは、「決める仕事」と「計算する仕事」が別だから。命令を取ってきて解釈する係がいないと、計算装置は動き出せない
  • 主記憶と補助記憶を分けるのは、速さ・容量・価格のトレードオフ。全部を高速にできるならそうしている
  • プログラム内蔵方式=命令をデータとして扱うこと。だからハードを作り変えずに仕事を変えられる。これが汎用コンピュータの正体
  • 図を描くときはデータの流れと制御の流れを別の線にする(IPA基本情報シラバスも2つを分けて書いている)
  • 共通テストは令和8年度 第1問 問1a に出題。正答率は約3割で、出題側は「用語の表面的な理解にとどまっている」と総括した。重要度Bだが取りこぼさない
  • 情報Ⅱでは5分類がハードウェア・ネットワーク・ソフトウェアの3分類になり、「何を持ち何を借りるか」の設計になる

出典(すべて2026年8月3日に取得)

  • 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編」平成30年7月
  • 文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅰ』教員研修用教材」全6分冊(令和2年)
  • 文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅱ』教員研修用教材」全7分冊(令和2年)
  • 文部科学省「高等学校情報科 授業・研修用コンテンツ」
  • 大学入試センター「令和8年度大学入学共通テスト 問題評価・分析委員会報告書(本試験)」『情報Ⅰ』問題作成部会の見解/高等学校教科担当教員の意見・評価
  • 大学入試センター「令和8年度本試験の正解(情報Ⅰ)」
  • 大学入試センター「令和7年度大学入学共通テスト 問題評価・分析委員会報告書(本試験)」『情報Ⅰ』
  • IPA「基本情報技術者試験(レベル2)シラバス Ver.9.2」/「応用情報技術者試験(レベル3)シラバス Ver.7.0」/「ITパスポート試験シラバス Ver.6.5」

本講は参考書『藤原進之介の最強120講義』の一部です。全120講の一覧は情報Ⅰ 最強120講義(目次)にあります。基数変換は第40講、記憶できる値の有限性と誤差は第42講で扱いました。制度の話は2026年8月時点の情報です。

執筆:藤原進之介(数強塾グループ代表)

オンライン数学専門塾「数強塾」代表。累計3,500名以上の中高一貫校生を指導。東進ハイスクール・東進衛星予備校・代々木ゼミナールなど出講実績あり。情報Ⅰの参考書を複数執筆しており、KADOKAWA『ゼロから始める情報I』、Gakken『きめる!共通テスト 情報Ⅰ』などがあります。本記事は参考書『藤原進之介の最強120講義』第37講のWeb版です。

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