- 3つを分けている線は、モノの側ではなく文脈の側にあります。数字そのものを睨んでも、それがデータか情報かは決まりません。
- 国の一次資料の定義はこうです。データ=事象や現象を数字や文字などで記号化したもの/情報=意味や価値が付加されたデータやメッセージ/知識=得られた情報を分析し蓄積したもの。
- ただし「DIKW」という名前は、学習指導要領解説にも共通テストにも一度も出てきません。 覚える価値があるのは語ではなく、「これはどの段にあるか」を判定する型のほうです。
こんにちは、数強塾代表の藤原進之介です。『藤原進之介の最強120講義』第5講は「情報・データ・知識の違い」を扱います。
この講は情報Ⅰの一番はじめに置かれる話で、しかも後ろの30講くらいの土台になっているのに、参考書ではだいたい3行で片づけられます。ここでは、国の資料に本当に何が書いてあるのかを確かめたうえで、「機械が扱えるのはデータまでで、意味づけは人間の仕事だ」という一点まで組み立てます。
1. 先に、定番用語が国の資料に在るかを確かめる
第6講(情報の特性)で、参考書の定番である「残存性・複製性・伝播性」という3語が、国の一次資料に0件だったことを書きました。本講の定番である「DIKWモデル(Data → Information → Knowledge → Wisdom)」も同じ疑いがあるので、先に確かめておきます。
私は2026年8月3日に、次の資料をすべてテキスト化し、空白と改行を除去したうえで機械的に数えました。
| 語 | 解説 第1部 (共通教科) |
解説 第2部 (専門教科) |
情報Ⅰ教材 | 情報Ⅱ教材 | 共通テスト 4回分 |
|---|---|---|---|---|---|
| DIKW | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 知恵 | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 |
| 暗黙知 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 形式知 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| ナレッジ | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 知識 | 54 | 208 | 32 | 47 | 6 |
| データ | 292 | 334 | 768 | 911 | 105 |
| 情報 | 1361 | 1461 | 1155 | 1356 | 196 |
当てた範囲:学習指導要領解説 情報編 全文(第1部=共通教科81,949字/第2部=専門教科110,838字に分離)/情報Ⅰ教員研修用教材 序章+第1〜4章の全6分冊(185,514字)/情報Ⅱ教員研修用教材 序章+第1章・第2章・第3章前半・第3章後半・第4章・第5章の全7分冊(249,585字)/大学入試センター「情報Ⅰ」令和7年度本試験・同追再試験・令和8年度本試験・同追再試験の問題本文(60,786字)
この表は、そのままでは読めません。 読み方に注意が要る行が2つあります。
・解説 第1部の「知識」54件のうち、37件は「知識及び技能」「知識や技能」という資質・能力の言い回しで、本講の知識とは別物です。
・共通テストの「知識」6件は、全部が令和7年度追・再試験の1つの設問の中にあり、中身は認証方式の話でした(「本人だけが知っている知識や情報を使って認証する『知識認証』」。うち5件は「知識認証」という複合語)。完全な別語義です。
・情報Ⅰ教材の「知恵」3件のうち、DIKWの意味なのは2件だけで、しかも同じ1つの段落の中にあります。残り1件は「知恵や思考力をもって」という日常語でした。
2. では、国は何と書いているのか
3段の定義は、情報Ⅰ教員研修用教材 第1章 学習1「情報やメディアの特性と問題の発見・解決」(p.16)に、たった3文だけ書かれています。ここが本講の一次資料です。
── 文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅰ』教員研修用教材」第1章
同じページの図表1「情報の成り立ち」は、この文を絵にしたものです。【データ】事象・現象を数字・文字などで記号化したものから矢印が出て、【情報】人にとって意味や価値のあるものへ向かい、そこから【伝えたい相手】へ渡ります。その矢印に添えられている語が「解釈」です。
この図の要点は、矢印が人間の側にあることです。 データが自分で情報になるのではありません。人が解釈することで情報になります。
そして最後の1文を読み飛ばさないでください。「一般には,情報という言葉の意味は広く,データやメッセージ,知識を含めて指す場合もある」──国の教材が、自分で境界の緩さを認めています。 3段の区別は、厳密な分類ではなく見方の道具として置かれています。ここを取り違えて「この語はデータ、この語は情報」と暗記しにかかると、必ず破綻します。
「知恵」は別の章に、別の出典で載っている
4段目の「知恵」が出てくるのは、同じ教材の第1章ではなく第2章、学習7「コミュニケーションを成立させるもの」(p.65)です。しかも国の言葉ではなく、ネイサン・シェドロフという人物のモデルの紹介という形をとっています。
── 同 第2章
図には「図表1 理解の外観(ネイサン・シェドロフ)」というキャプションと、市販書からの転載である旨の出典が付いています。つまり、こういうことになります。
- 3段(データ・情報・知識)=国の教材が自分の言葉で第1章に書いている
- 4段目(知恵)=第2章で、市販書の図の紹介として1度だけ触れられている
- 「DIKW」という呼び名=国の資料には一度も無い
参考書で「DIKWモデル」と紹介されているものは、この2か所を後から接ぎ木したものだと理解しておくのが正確です。使ってはいけないという話ではありませんが、「一般にDIKWと呼ばれる」と主語を分けるべき語であって、「国がそう教えている」と言ってはいけません。
ちなみにこのモデルは、学術的にも一枚岩ではありません。黒崎茂樹「『データ・情報・知識・知恵』モデルの再考」(拓殖大学『人文・自然・人間科学研究』No.49, pp.132-155, 2023年3月)は、情報学・経営学・教育学・工学・物理学がそれぞれ別々のバリエーションでこのモデルを出していることを突き合わせたうえで、「情報の定義は多様である」と書いています。流派によって段の切り方が違うものを、1つの正解のように暗記しても仕方がありません。
3. 線は「文脈」にある
ここまでの一次資料から、判定の型が1つ取り出せます。
だから、モノを見ても段は決まりません。 「28」という数字を睨んでも、それがデータなのか情報なのかは分かりません。決めるのは、その数を受け取る側が、どんな文脈を持っているかです。
- 文脈が無い → データ(記号の並びでしかない)
- 文脈がある → 情報(意味を持つ)
- その意味を分析して蓄積し、次の場面でも使える形にした → 知識
4. なぜこの区別が実務上重要なのか ── 機械が扱えるのはデータまで
ここが本講で一番大事なところです。コンピュータが形式的に処理できるのは、記号としてのデータまでで、意味づけは人間の側にしかありません。
これは私の意見ではなく、日本学術会議の参照基準に書かれています。 日本学術会議 情報学委員会 情報科学技術教育分科会「大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準 情報学分野」(2016年3月23日)は、情報を扱う主体で3つに分けています。
── 日本学術会議「教育課程編成上の参照基準 情報学分野」
言い換えるとこうなります。機械が受け取っているのは「記号が独立して、意味内容が潜在化したもの」だけです。 意味は、記号から剥がれて人間の側に残っています。同じ報告は、情報そのものについてもこう書いています。
情報Ⅱの教材が、この抽象論を実務の言葉で書いている
面白いのはここからです。情報Ⅱ教員研修用教材 第3章(前半)学習11「データと関係データベース」が、まったく同じことを、現場の言葉で書いています。
── 文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅱ』教員研修用教材」第3章
これはトレードオフの宣言です。 人に分かりやすくすると機械が処理しづらくなり、機械が処理しやすくすると人には意味が読めなくなる。教材はこの直後に「人にもある程度データの意味を読むことができ,コンピュータでも処理しやすい形」として表形式データを出し、そこから関係データベースへ入っていきます。
表形式データもヘッダーも、この矛盾に対する妥協案として設計されています。 つまり「意味づけは人間、処理は機械」という分業は、実際のファイル形式にまで降りてきているわけです。
5. 階段は一方通行ではない
DIKWの図はふつうピラミッドで描かれ、下から上への一方通行に見えます。ところが、国のいちばん新しい指針は、逆向きの矢印を先に書いています。
日本学術会議 情報学委員会 情報学教育分科会「情報教育課程の設計指針 ― 初等教育から高等教育まで(第2版)」(令和8年〈2026年〉5月12日公表)の学習内容 A1「情報の特性と表現」は、水準をこう並べています。
L2: 情報を外部化(書き記すなど、データ化)により記録/表現できるということを理解している。(小学校・情報)
情報が先にあって、それを外部化する操作が「データ化」だと書かれています。 データ→情報の順ではありません。
矛盾しているわけではありません。同じ現象を、受け取る側から見るか、記録する側から見るかで、矢印の向きが変わるだけです。
- 受け取る側から見れば、手元に来るのは記号列(データ)で、そこに文脈を当てて情報にする
- 記録する側から見れば、頭の中にあるのは情報で、それを書き記して記号列(データ)にする
ピラミッドを「下から上への一方通行」と覚えると、この往復が見えなくなります。実際のデータサイエンスの作業は、この往復を何周も回るものです。
図:3つの段と、機械が触れる範囲。矢印は右向きだけではない
6. 手で確かめる ── 同じ数列を3通りに読む
次の4つの数を見てください。
ここで止まると、これはデータです。4つの整数が並んでいるという以上のことは何も言えません。
ここに文脈を1つ与えます。「平年の2月から5月までの、各月の日数」。
途端にこれは情報になります。28は2月、31は3月、30は4月、31は5月。この4つの数は「今年の5月は31日まである」という判断に使えます。数そのものは1文字も変わっていません。変わったのは、受け手が持っている文脈だけです。
さらに一段上げます。「なぜ2月だけ28なのか」「28にならない年はあるのか」を調べて、次の規則を手に入れたとします。
これが知識です。もう「2月は28日」という個別の事実ではなく、任意の年について答えを出せる規則になっています。1996年でも2100年でも使えます。これが「次の場面で再利用できる」ということです。
Pythonの標準ライブラリで検算しました(実行して確認済みです)。
import calendar
print([calendar.monthrange(2025, m)[1] for m in (2,3,4,5)])
print([calendar.monthrange(2024, m)[1] for m in (2,3,4,5)])
for y in (1900, 2000, 2024, 2025, 2100):
print(y, calendar.isleap(y), (y % 4 == 0 and y % 100 != 0) or y % 400 == 0)
出力はこうなります。
[28, 31, 30, 31]
[29, 31, 30, 31]
1900 False False
2000 True True
2024 True True
2025 False False
2100 False False
1900年は平年、2000年はうるう年、2100年は平年です。 4で割り切れるかどうかだけで判定すると、1900年と2100年を間違えます。規則という形の知識は、こういう例外までまとめて面倒を見てくれます。
そしてもう1つ大事なことがあります。2024年の同じ4か月を並べると「29, 31, 30, 31」になります。 同じ「2月から5月の日数」という文脈でも、年という文脈がもう1枚必要でした。文脈は1枚とは限りません。
身近な10個を判定する
次の表を、上から順に自分で判定してみてください。右の2列は最初は隠して考えたほうがよいです。
| # | 目の前にあるもの | 判定 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 1 | 体重計の液晶に出ている「52.4」 | データ | 単位も対象も分からなければ、ただの数 |
| 2 | 「私の今朝の体重は52.4kg」 | 情報 | 誰の・いつの・何の量かという文脈が付いた |
| 3 | 「私は朝より夜のほうが1kgほど重い」 | 知識 | 複数の測定を分析して、次の日にも使える形になった |
| 4 | 気象庁のアメダスから落としたCSVの1行 | データ | ヘッダーを見ないと何の列かも分からない |
| 5 | 「明日の東京の降水確率は70%」 | 情報 | 傘を持つかどうかの判断に直接使える |
| 6 | 「降水確率70%以上なら長傘を持つ」 | 知識 | 自分の行動規則として蓄積されている |
| 7 | 学生証のバーコードの縞模様 | データ | 読み取り機が数字に戻すまで意味を持たない |
| 8 | 「この本の在庫は残り3冊」 | 情報 | 発注するかどうかを決められる |
| 9 | 掛け算の九九 | 知識 | 体系化され、いつでも呼び出せる |
| 10 | 「7 8 5 6」というメモ書き | ? | 文脈が無いので判定できない |
10番目が本講の核心です。 「7 8 5 6」は、書いた本人が「駅のロッカーの番号だ」と思い出せば情報になりますし、思い出せなければ永久にデータのままです。同じ紙に書かれた同じ4文字が、受け手によって段を変えます。
そして次の3つを比べてください。
- 同じ「52.4」が、1番ではデータで、2番では情報の一部になっている
- 同じ「70%」が、5番では情報で、6番では知識を作る材料になっている
- 9番の九九は、覚える前は情報(「7×8は56だ」という個別の事実)だったものが、体系として身に付いた瞬間に知識になった
機械と人間のトレードオフを、自分の手で作ってみる
さきほど引いた教材の「通知表」の例を、実際に2つの形で書いてみると腹に落ちます。
人に読ませる形(通知表型)
山田太郎
国語 4 数学 5 英語 3
田中花子
国語 5 数学 3 英語 4
機械に処理させる形(表形式)
氏名,科目,評定
山田太郎,国語,4
山田太郎,数学,5
山田太郎,英語,3
田中花子,国語,5
田中花子,数学,3
田中花子,英語,4
上は1人分がまとまっていて人には読みやすいのですが、「数学の平均を出せ」と言われた瞬間に詰まります。 下は1人分がバラバラで人には読みにくいのですが、「科目が数学の行の評定を平均する」で一発です。
同じ内容なのに、形を変えただけで得意なことが入れ替わります。 この形の変換そのものを扱うのが第82講(データの整形)で、下の形に名前を付けたのが第90講・第91講(データベース)です。
7. 知識にすると何が得なのか
教材の定義に戻ります。知識は「得られた情報を分析し蓄積したもの」でした。「蓄積」がキーワードです。
- 情報は、その場の問いに答える。 「今日の気温は33度だ」は今日にしか効かない
- 知識は、次の問いにも答える。 「気温が30度を超えた日は来客が2割減る」は明日にも来月にも効く
学習指導要領解説も、情報Ⅰ(1)ア(ア) で蓄積を明示的に扱えと書いています。
── 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編」
振り返って発信することが、なぜ指導要領に書かれているのか。 それは道徳的なお作法だからではなく、そうしないと情報のまま消えて、知識にならないからです。1回の問題解決で得たことを、次の問題解決で使える形にする──それが「蓄積」の意味であり、知識という段を立てる理由です。
8. 共通テストではこう出る(重要度 B)
出題実績を正直に書きます
令和7年度本試験・同追・再試験・令和8年度本試験・同追・再試験の「情報Ⅰ」問題本文を全文検索した結果(2026年8月3日)は、次のとおりでした。
- 「DIKW」「知恵」「暗黙知」「形式知」「情報の成り立ち」は4回とも0件
- 「知識」は6件ですが、全部が令和7年度追・再試験の認証方式の設問の中で、本講の知識とはまったく別の語です
- 「データ」105件・「情報」196件はありますが、3語の区別そのものを定義として問う設問は1問もありません
用語としての直接出題は、私が確認した範囲で0件です。 ここを脅すのは誠実ではないので、はっきり書いておきます。重要度はBが妥当で、語の暗記に時間を使う講ではありません。
(なお、文部科学省「授業・研修用コンテンツ」のスライドPDFの一部はテキスト抽出ができない画像PDFであることが分かっています。上の「0件」は、テキスト抽出できた資料の範囲での0件です。)
では何が効くのか ── 「このデータは何か」を判定する力
語は出ませんが、判定は毎回出ています。しかも難しい。
大学入試センターの「令和7年度大学入学共通テスト 問題評価・分析委員会報告書」に載っている作題部会の見解は、第4問(旅行・観光消費動向調査を題材にした探索的データ分析)についてこう書いています。
── 大学入試センター「令和7年度大学入学共通テスト 問題評価・分析委員会報告書」
同じ報告書には、寄せられた意見として「尺度水準やグラフの読み取りが容易であるという意見もあった。しかし,尺度水準については先に述べた通り正答率が非常に低かった」とも書かれています。
引っかけの型
- 「データを集めれば情報になる」 → なりません。文脈を与えるのは人間です。集めただけの数値列は、量が増えてもデータのままです。
- 「AIが情報を生み出している」 → 出力されるのは記号列です。それを情報として受け取っているのは人間の側であり、意味づけの責任も人間の側にあります。
- 情報の特性の話と混ざる → 第6講の「形がない/消えない/簡単に複製できる/容易に伝播する」は情報という段の性質の話で、本講の段の分け方とは別の論点です。設問がどちらを聞いているかを取り違えないこと。
- 「知識=知っていること」だと思い込む → 教材の定義は「得られた情報を分析し蓄積したもの」です。単に記憶していることではなく、次の場面で使える形にしてあることが要ります。
自作の類題
① レジの記録に残っている「10:12 カレーパン 1」という1行
② 「今日のカレーパンの販売数は42個だった」というまとめ
③ 「雨の日はカレーパンの販売数が平常時より2割少ない」という、3か月分の記録を分析して得られた傾向
④ 「明日は雨の予報である」という天気予報
補足:③と④を組み合わせると「明日はカレーパンを2割減らして発注する」という判断が出ます。知識が効くのは、まさにこの「次の場面」の側です。
重要度についての私の判定
- 語を覚える価値:低い。 「DIKW」も「知恵」も、国の資料にも共通テストにも出ていません
- 判定の型を持つ価値:高い。 第4問(データ活用)の入口は毎回「この列は何か」で、そこで2割台の正答率が出ています
- 後続の講の土台としての価値:非常に高い。 第80講・第82講・第87講・第90講は、全部この区別の上に乗っています
つまり「得点する講」ではなく「後の全部を支える講」です。Bという記号のわりに、抜くと後がぐらつきます。
9. 情報Ⅱではこうなる
「情報」と「データ」の比が、章ごとに80倍動く
全体の件数を眺めるだけでは何も出てきません。章ごとに「情報」÷「データ」の比を出すと、分水嶺が一目で出ました(当方の計数、2026年8月3日)。
| 分冊 | 字数 | データ | 情報 | 情報÷データ |
|---|---|---|---|---|
| 学習指導要領解説 第1部(共通教科) | 81,949 | 292 | 1,361 | 4.66 |
| 情報Ⅰ教材 第1章(情報社会の問題解決) | 39,093 | 42 | 404 | 9.62 |
| 情報Ⅰ教材 第2章(情報デザイン) | 38,258 | 59 | 341 | 5.78 |
| 情報Ⅰ教材 第3章(プログラミング) | 38,946 | 76 | 23 | 0.30 |
| 情報Ⅰ教材 第4章(ネットワークとデータ) | 54,662 | 561 | 126 | 0.22 |
| 情報Ⅱ教材 第1章(情報社会の進展) | 54,895 | 42 | 384 | 9.14 |
| 情報Ⅱ教材 第2章(コンテンツ) | 33,009 | 17 | 121 | 7.12 |
| 情報Ⅱ教材 第3章前半(データサイエンス) | 39,890 | 456 | 54 | 0.12 |
| 情報Ⅱ教材 第3章後半(同) | 34,300 | 199 | 27 | 0.14 |
| 情報Ⅱ教材 第4章(情報システム) | 52,518 | 129 | 388 | 3.01 |
| 情報Ⅱ教材 第5章(探究) | 18,396 | 35 | 160 | 4.57 |
上下で80倍近い開きがあります。 情報Ⅰ第1章では「情報」が「データ」の9.6倍出てくるのに、情報Ⅱ第3章前半では逆に「データ」が「情報」の8.3倍になります。
情報Ⅱでは「データ」の定義そのものが乗り換わる
情報Ⅰと情報Ⅱで、同じ「データ」という語の定義文が違います。 並べるとよく分かります。
| 情報Ⅰ教材 第1章 学習1 | 情報Ⅱ教材 第3章 学習11 | |
|---|---|---|
| 定義 | 事象や現象を数字や文字などで記号化したもの | データ分析に使うもとになるもの |
| 立っている位置 | でき方の側(世界からどう切り出されたか) | 使い道の側(この先の分析に何を入れるか) |
| 次に来る議論 | 情報・知識との区別、メディアの特性 | 信憑性・信頼性、母集団とサンプルサイズ、バイアス |
情報Ⅱ教材の原文はこうです。
── 文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅱ』教員研修用教材」第3章 学習11
情報Ⅰでは「どうやってできたか」で定義していたものが、情報Ⅱでは「何に使うか」で定義し直されます。 そして定義を使い道の側に置いた瞬間、「そのデータは信じるに値するのか」という問いが必ず付いてきます。 だから学習11は定義の直後に信憑性(credibility)から始まり、母集団、サンプルサイズ、選択バイアス、生存バイアスへと進みます。
「どこから来たデータか」が3分類で名前を持つ
学習12「大量のデータの収集と整理・整形」は、データの入手経路をこう3つに切っています。
── 同 第3章 学習12
情報Ⅰでは、データは「与えられるもの」でした。情報Ⅱでは、データは「どの経路で取りに行ったか」が属性として付いてきます。 学習12は実際にアメリカ地質調査所(USGS)の地震カタログAPIを叩き、Webスクレイピングの節では「Webスクレイピングを利用規約で禁止しているWebサイトもあるので,利用規約を確認することも必要である」と、取得の作法まで書いています。
取り方が変われば、データの偏りも変わります。 学習11の選択バイアスの議論(お菓子の購入者だけにアンケートを採る、固定電話にだけ電話をかける)は、この3分類と直結しています。学習指導要領解説 情報Ⅱ(3) も、対象を「情報通信ネットワークに接続された情報機器により生成されているデータ」と書いています。人が答えたデータだけではなく、機械が勝手に吐き出しているデータが正面から入ってくるのが情報Ⅱです。
「知恵」は情報Ⅱにも出てこない
念のため書いておきます。情報Ⅱ教員研修用教材の全7分冊で「知恵」は0件です。 DIKWの4段目は、情報Ⅰの第2章に市販書の図として1度出てくるだけで、それ以上どこにも展開されません。
国のカリキュラムが本気で作り込んでいるのは、データと情報のあいだの1本の線だけです。 その先の「知識」「知恵」は、名前としては置かれていますが、内容としては展開されていません。この落差を知っておくと、参考書の「DIKWピラミッド」の図をどう扱えばよいかが決まります。図として頭に入れておく価値はありますが、線を引く練習をすべきなのはデータと情報のあいだだけです。
なお、情報Ⅱは共通テストの出題範囲ではありません(2026年8月時点)。ここは「入試に出るから」ではなく、情報Ⅰの理解が深くなるから読む場所です。第109講で情報Ⅱの全体像を扱っています。
10. この講の要点
- 段を決めるのは物ではなく文脈。「コンテクストが伴わないものは情報ではない」(情報Ⅰ教材 第2章)
- 国の定義は情報Ⅰ教材 第1章の3文だけ。データ=記号化したもの/情報=意味や価値が付加されたもの/知識=分析し蓄積したもの
- 「DIKW」は国の一次資料に0件。「知恵」は情報Ⅰ教材に2件(第2章の転載図の紹介)だけで、情報Ⅱには0件
- 教材自身が「情報という言葉の意味は広く、データや知識を含めて指す場合もある」と境界の緩さを認めている
- 機械が形式的に処理できるのは記号=機械情報まで(日本学術会議 参照基準)。意味づけは人間の側にしかない
- 人に読みやすい形と機械が処理しやすい形は両立しない。表形式データはその妥協案(情報Ⅱ教材 学習11)
- 矢印は一方通行ではない。記録するときは情報→データ(外部化)に走る(日本学術会議 設計指針 第2版・2026年5月)
- 共通テスト4回分で語の出題は0件。ただし「この列は何か」を判定する問題は2割台の正答率
- 情報Ⅱではデータの定義が「でき方」から「使い道」へ乗り換わり、信憑性・バイアス・取得経路が付いてくる
- 章ごとの「情報÷データ」比は 9.62 〜 0.12 まで動く。 同じ教材の中で語彙がまるごと入れ替わっている
『藤原進之介の最強120講義』の全体像はこちらから追えます。
- 『藤原進之介の最強120講義』ハブページ/全記事一覧
- 第6講 情報の特性(国の一次資料は3語ではなく4つのやまと言葉だった)/第9講 個人情報とは何か
- 第80講 データの種類と尺度(「この列は何か」の判定はここ)/第82講 データの整形/第87講 相関と因果
- 第90講 データベースの基礎/第91講 関係データベース/第109講 情報Ⅱの全体像/第110講 データサイエンスの流れ
- 共通テスト情報Ⅰの対策法
文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編」平成30年7月 https://www.mext.go.jp/content/1407073_11_1_2.pdf / 文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅰ』教員研修用教材」第1章 https://www.mext.go.jp/content/20200722-mxt_jogai02-100013300_003.pdf / 同 第2章 https://www.mext.go.jp/content/20200928-mxt_jogai01-100013300_001.pdf / 同 第4章 https://www.mext.go.jp/content/20200722-mxt_jogai02-100013300_006.pdf / 文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅱ』教員研修用教材(本編)」第3章前半 https://www.mext.go.jp/content/20200702-mxt_jogai01-000007843_004.pdf / 同 第3章後半 https://www.mext.go.jp/content/20200609-mxt_jogai01-000007843_007.pdf / 同 第1章 https://www.mext.go.jp/content/20200609-mxt_jogai01-000007843_002.pdf / 文部科学省「授業・研修用コンテンツ」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/mext_01832.html / 日本学術会議 情報学委員会 情報科学技術教育分科会「大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準 情報学分野」平成28年3月23日 https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-23-h160323-2.pdf / 日本学術会議 情報学委員会 情報学教育分科会「情報教育課程の設計指針 ― 初等教育から高等教育まで(第2版)」令和8年5月12日 https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf2/kohyo-26-h260512.pdf / 情報処理学会 情報入試委員会「情報科全教科書用語リスト」2024年4月12日 https://www.ipsj.or.jp/topics/20240412_word.html / 黒崎茂樹「『データ・情報・知識・知恵』モデルの再考」拓殖大学『人文・自然・人間科学研究』No.49, pp.132-155, 2023年3月 https://takushoku-u.repo.nii.ac.jp/records/656 / 大学入試センター 令和7年度本試験 https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?d=771&f=abm00005965.pdf / 同 令和7年度追・再試験 https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?d=772&f=abm00006001.pdf / 同 令和8年度本試験 https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?d=2144&f=abm00017564.pdf / 同 令和8年度追・再試験 https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?d=2146&f=abm00017593.pdf / 大学入試センター「令和7年度大学入学共通テスト 問題評価・分析委員会報告書」
この記事を書いている講師に、直接習うことができます。
