こんにちは、数強塾代表の藤原進之介です。この記事は参考書『藤原進之介の最強120講義』の第90講「データベースの基礎(表・レコード・キー)」のWeb版です。共通テスト「情報Ⅰ」での重要度はA(頻出。得点差がつく)、情報Ⅱでの接続先は(3)情報とデータサイエンスです。
データベースの単元は、用語の暗記で終わらせてしまう人が本当に多い分野です。テーブル、レコード、フィールド、主キー、外部キー。言葉だけ覚えても、実際の問題は解けるようになりません。この講ではなぜ表をわざわざ複数に分けるのかを、分けなかったときに何が壊れるかから説明します。 そして、それが情報Ⅱの「正規化」と「SQL」にそのまま化けることまでお見せします。
1. この講の問い
なぜデータベースは、1枚の大きな表にまとめず、わざわざ複数の表に分けて持つのか。
2. 結論
1枚の表に詰め込むと、同じ情報が何度も重複して書かれます。重複した情報は「直すときに直し漏れる(更新不整合)」「まだ関係の生じていないものを登録できない(挿入不整合)」「関係のほうを消すと情報まで消える(削除不整合)」の3通りに壊れます。
表を分け、片方の表の主キーをもう片方に外部キーとして持たせると、事実がどこか1か所にしか書かれない状態になり、3つの壊れ方が同時に消えます。
主キーは一意・不変・NULL不可を満たす列でなければなりません。氏名が主キーになれないのは、この3条件を全部落とすからです。
3. なぜそうなるのか
3-1. 情報Ⅰのデータベースは「情報システム」の話として置かれている
まず、国がこの内容をどこに置いているかを見ておきます。高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編で、データベースは情報Ⅰの(4)「情報通信ネットワークとデータの活用」のア(イ)にあります。しかもその直前は家庭内LANの構築の話です。
データベースとは,ある目的のために収集した情報を一定の規則に従ってコンピュータに蓄積し利用するための仕組みであること,データベースを運用,管理するソフトウェアとしてデータベース管理システムが必要であること,データの定義とフォーマットを定めるデータモデルとしては,データの関係性に着目した関係データモデルなどの構造化されたものだけでなく,多様かつ大量のデータを扱うことに適したもの,自由に記述されたテキストなどの構造化されていないデータを扱うことができるものもあること…について理解するようにする
文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編」平成30年7月(該当箇所は解説p.36相当)
つまり情報Ⅰのデータベースは「データ分析の道具」としてではなく、ネットワークの上で複数のシステムがデータを共有するための仕組みとして導入されています。第68講のTCP/IPと階層構造の続きにデータベースが置かれている、と読むと配置の意図が見えてきます。
文部科学省が公開している授業用コンテンツ「身近にあるデータベースを学ぼう!」のスライドも、データベースを「データを1つにまとめて、複数のシステムで共有できるようにしたもの」と定義し、コンビニのPOSシステムを題材にしています。この「共有できるようにしたもの」という定義が、そのままこの講の主戦場に直結します。共有するとは、同じ事実を全員が同じ1か所から読むということだからです。
3-2. 表・レコード・フィールドという3語
定義は文部科学省の「情報Ⅰ」教員研修用教材(第4章)のものがいちばん簡潔です。
リレーショナルデータベースは,表形式で表現されたテーブルというデータの集合として管理する。テーブルの列には,フィールドといわれる「書籍名」や「作者名」という項目を割り当てる。1件分のデータはレコードといわれる1つの行で表す。
文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅰ』教員研修用教材」第4章 情報通信ネットワークとデータの活用(令和2年、該当箇所はp.176相当)
図1 表の構造。列がフィールド、行がレコード、左端の商品ID列が主キー
情報Ⅱの教員研修用教材では、同じものを「行のことをレコード(タプル)、列のことを属性(カラム)という」と書いています。呼び方が2系統あるだけで中身は同じです。
3-3. なぜ1枚の大きな表ではいけないのか
ここが本講の中心です。文房具店の注文記録を、1枚の表にまとめたとします。
| 注文ID | 注文日 | 商品名 | 単価 | 個数 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 2026-08-01 | 消しゴム | 120 | 2 |
| 2 | 2026-08-01 | ノート | 180 | 1 |
| 3 | 2026-08-02 | 消しゴム | 120 | 3 |
一見すると何の問題もありません。むしろ1枚で全部見えるぶん便利に思えます。ところがこの表は、3通りの壊れ方をします。
消しゴムが130円に値上げされたとします。直すべき行は1行目と3行目の2か所あります。1行目だけ直して3行目を忘れると、この表は「消しゴムは130円であり、かつ120円である」という矛盾した状態になります。行が10万行あれば、直し漏れは確率の問題ではなく必ず起きます。同じ事実が2か所に書いてある時点で、2か所が食い違う可能性が生まれているのです。
新商品の定規(250円)を仕入れたが、まだ1件も売れていない。この表に定規を登録するには、注文IDと注文日と個数を空欄にした行を作るしかありません。しかしそれは「注文の記録」ではありません。注文がなければ商品を登録できない。 商品の存在が、注文の存在に人質に取られています。
注文ID=2を取り消します。すると行ごと消えます。この瞬間、「ノートという商品が180円で存在する」という事実も、店から消えます。 消したかったのは注文であって、商品ではありません。
3つとも原因は同じです。この表には「注文という出来事」と「商品というモノ」という、寿命の違う2種類の事実が混ざっている。 注文は起きたり取り消されたりしますが、商品は注文と無関係に存在します。寿命の違うものを同じ行に載せると、片方を触ったときに必ずもう片方が巻き添えになるのです。
3-4. 表を分けて外部キーでつなぐ
やることは単純です。混ざっている2種類を2枚の表に分け、片方からもう片方を指す。
| 商品ID(主キー) | 商品名 | 単価 |
|---|---|---|
| 101 | 消しゴム | 120 |
| 102 | ノート | 180 |
| 103 | 定規 | 250 |
| 注文ID(主キー) | 注文日 | 商品ID(外部キー) | 個数 |
|---|---|---|---|
| 1 | 2026-08-01 | 101 | 2 |
| 2 | 2026-08-01 | 102 | 1 |
| 3 | 2026-08-02 | 101 | 3 |
図2 外部キーは「相手の表の主キーを指す矢印」。指されている場所は世界に1つしかない
- 主キー…その表の中で1行を一意に決める列。商品表なら商品ID
- 外部キー…他の表の主キーを指す列。注文表の商品IDは、商品表の商品IDを指している
これで3つの不整合が同時に消えます。
- 値上げは商品表の1行を直すだけ。単価が書いてある場所が世界に1か所しかないので、直し漏れが定義上あり得ない
- 定規は注文が0件でも商品表に登録できる。商品の存在が注文に依存しなくなった
- 注文ID=2を消しても、ノートは商品表に残る
文部科学省の「情報Ⅰ」教員研修用教材も、同じことを蔵書目録の例で書いています。
テーブルを分けることにより,データが冗長になってしまうことを避けることができる。また,作者名の値を変更しなければならなくなった場合に作者名テーブルを更新するだけでよく,書籍テーブルを変更することなく済ませることができ変更漏れも生じない。このようなテーブル設計の工夫を,テーブルの正規化という。
前掲「情報Ⅰ」教員研修用教材 第4章(該当箇所はp.176相当)
「正規化」という語は、実は情報Ⅰの教材の段階ですでに出てきます。 ただし情報Ⅰ側にあるのは「表を分けると変更漏れが生じない」という理由だけで、第一正規形から第三正規形へという手順はありません。手順が出てくるのは情報Ⅱと専門教科です。この差については第6章で書きます。
3-5. 主キーが満たすべき3条件と、氏名を主キーにしてはいけない理由
主キーは「行を見分けるための列」ですが、見分けられれば何でもよいわけではありません。
①一意…同じ値の行が2つ存在しない ②不変…一度決めたら変わらない ③NULL不可…空欄が許されない
なぜこの3つなのか。主キーは外部キーから指される先だからです。指される側の値が重複していたら、外部キーがどの行を指しているのか決まりません。指される側の値が途中で変わったら、指していた外部キーが行方不明になります。指される側が空欄なら、そもそも指せません。3条件は「指す・指される」という関係を成立させるための最低条件であって、暗記事項ではないのです。
だから氏名を主キーにしてはいけません。 氏名は3条件を全部落とします。
- 一意でない…同姓同名は実在します。仮に山田太郎さんが2人入会したら、片方を登録できなくなる
- 不変でない…改姓する人がいます。氏名を主キーにしていると、改姓のたびに、その氏名を外部キーとして持つ全部の表を直して回ることになる
- NULL不可を保証できない…登録時点で氏名が未確定という場面は現場にあります
会員番号・学籍番号・商品コードのように、その存在を識別するためだけに作った、意味を持たない番号を主キーにする。これが原則です。文部科学省の授業用コンテンツのワークシート(解答編)も、キーという語を使わずに同じことを書いています。
商品テーブルに,同じ番号の商品が複数存在してはいけない。
文部科学省 授業・研修用コンテンツ「【情報Ⅰ】身近にあるデータベースを学ぼう!」ワークシート(解答)2023年2月
3-6. 表計算ソフトとデータベースは何が決定的に違うのか
「表計算ソフトでも表は作れる。何が違うのか」という質問は、毎年出ます。同じワークシートが短く答えています。
表計算ソフトでも簡易なデータベースを作成することはできるが,システムが大規模になるとデータを管理することが難しい。そこで,データベースを管理するためには,専用のソフトウェアを用いることが多い。
同上
「大規模になると難しい」の中身を具体化すると、3つになります。
| 表計算ソフト | データベース(DBMS) | |
|---|---|---|
| 型 | 単価の列に「180円」と文字で書ける。合計が合わなくなって初めて気づく | 列に型を宣言する。型に合わない値は書き込む瞬間に拒否される |
| 同時アクセス | 2人が同時に開いて保存すると、後の保存が前の変更を上書きする | トランザクション管理(原子性・一貫性・独立性・耐久性)とロックで制御する |
| 整合性 | 「他の表に存在する値しか入れてはいけない」を機械に守らせる仕組みがない | 外部キー制約がある。人間の注意力ではなく構造として拒否する |
トランザクション管理の4つの性質と「同時実行制御及びロック」は、学習指導要領解説 情報編の専門教科情報科「データベース」の項に明記されています。またIPAのITパスポート試験シラバスは、データベース管理システムを「データを構造的に蓄積し,それらの一貫性を保ち,効率的に取り出すための機能を備えたもの」と定義しています。DBMSの本体は「速く探せること」ではなく「一貫性を保つこと」なのです。
4. 手で確かめる
以下はすべて SQLite 3.51.0 で実際に実行し、出力を確認したものです。表名・列名に日本語を使っているのは、情報Ⅰの教員研修用教材のSQL例(SELECT * FROM 書籍 WHERE 作者ID=1001;)に合わせたためです。
4-1. わざと1枚にまとめた表で、3つの不整合を起こす
CREATE TABLE 注文表(注文ID INTEGER, 注文日 TEXT, 商品名 TEXT, 単価 INTEGER, 個数 INTEGER);
INSERT INTO 注文表 VALUES
(1,'2026-08-01','消しゴム',120,2),
(2,'2026-08-01','ノート',180,1),
(3,'2026-08-02','消しゴム',120,3);
更新不整合。値上げのつもりで、注文ID=1の行だけ直してしまいます。
UPDATE 注文表 SET 単価=130 WHERE 注文ID=1;
SELECT DISTINCT 商品名,単価 FROM 注文表 WHERE 商品名='消しゴム';
出力:
商品名|単価
消しゴム|130
消しゴム|120
消しゴムの単価が2つあります。 データベースはこの矛盾に気づきません。この表の構造には、矛盾を禁止する場所がないからです。
削除不整合。ノートの注文を取り消します。
DELETE FROM 注文表 WHERE 注文ID=2;
SELECT DISTINCT 商品名,単価 FROM 注文表;
出力:
商品名|単価
消しゴム|130
消しゴム|120
ノートが消えました。 消したのは注文1件ですが、ノートという商品の情報も一緒に消えています。挿入不整合のほうは、まだ売れていない定規を登録しようとすると、注文IDも注文日も個数も無い行を作るしかない、という形で現れます。「注文の表」に注文でない行が混ざるわけです。
4-2. 表を分けて外部キーでつなぎ直す
PRAGMA foreign_keys = ON;
CREATE TABLE 商品(
商品ID INTEGER PRIMARY KEY,
商品名 TEXT NOT NULL,
単価 INTEGER NOT NULL
);
CREATE TABLE 注文(
注文ID INTEGER PRIMARY KEY,
注文日 TEXT NOT NULL,
商品ID INTEGER NOT NULL REFERENCES 商品(商品ID),
個数 INTEGER NOT NULL
);
INSERT INTO 商品 VALUES(101,'消しゴム',120),(102,'ノート',180);
INSERT INTO 注文 VALUES(1,'2026-08-01',101,2),(2,'2026-08-01',102,1),(3,'2026-08-02',101,3);
PRAGMA foreign_keys = ON; は必須です。SQLiteは外部キー制約が既定でオフで、書き忘れると制約が一切効きません。「制約を書いたから安心」と思い込んだまま壊れたデータが入る、という事故が起きやすいところです。
更新不整合が消える。
UPDATE 商品 SET 単価=130 WHERE 商品ID=101;
SELECT * FROM 商品;
-- 商品ID|商品名|単価
-- 101|消しゴム|130
-- 102|ノート|180
直したのは1行だけ。単価が書いてある場所が1か所しかないので、直し漏れが起こりようがありません。
挿入不整合が消える。注文0件の定規を登録できます。
INSERT INTO 商品 VALUES(103,'定規',250);
SELECT * FROM 商品;
-- 商品ID|商品名|単価
-- 101|消しゴム|130
-- 102|ノート|180
-- 103|定規|250
削除不整合が消える。ノートの注文を消しても商品は残ります。
DELETE FROM 注文 WHERE 注文ID=2;
SELECT * FROM 商品;
-- 商品ID|商品名|単価
-- 101|消しゴム|130
-- 102|ノート|180
-- 103|定規|250
4-3. データベースが「拒否する」ところを見る
構造を整えるだけでなく、DBMSが実際に壊れた書き込みを止めることを確認します。以下はすべてエラーで拒否されました(末尾の数字はSQLiteのエラーコードです)。
INSERT INTO 商品 VALUES(101,'消しゴム(黒)',120);
-- Runtime error: UNIQUE constraint failed: 商品.商品ID (19)
INSERT INTO 注文 VALUES(4,'2026-08-03',999,1);
-- Runtime error: FOREIGN KEY constraint failed (19)
DELETE FROM 商品 WHERE 商品ID=101;
-- Runtime error: FOREIGN KEY constraint failed (19)
INSERT INTO 商品 VALUES(104,NULL,300);
-- Runtime error: NOT NULL constraint failed: 商品.商品名 (19)
上から順に、主キーの重複/存在しない商品IDへの注文/注文から参照されている商品の削除/NOT NULL違反です。型の制約も見ておきます(SQLiteでは STRICT を付けた表で厳密に効きます)。
CREATE TABLE 商品S(商品ID INTEGER PRIMARY KEY, 商品名 TEXT NOT NULL, 単価 INTEGER NOT NULL) STRICT;
INSERT INTO 商品S VALUES(102,'ノート','180円');
-- Runtime error: cannot store TEXT value in INTEGER column 商品S.単価 (19)
表計算ソフトなら「180円」も何事もなく入ります。データベースは入る前に止める。3-6で書いた3つの違いが、そのままエラーメッセージとして出てきました。
4-4. 氏名を主キーにするとどうなるか
CREATE TABLE 会員(氏名 TEXT PRIMARY KEY, 学年 INTEGER);
INSERT INTO 会員 VALUES('山田太郎',1);
INSERT INTO 会員 VALUES('山田太郎',2);
-- Runtime error: UNIQUE constraint failed: 会員.氏名 (19)
同姓同名の別人を登録できません。現実に存在する人を、システムが存在しないことにしてしまう。 主キーの一意性は「現実がそうなっているから満たされる」のではなく、「満たす列を選ばなければならない」制約なのだ、と分かっていただけると思います。
5. 共通テストではこう出る(重要度A)
データベースは、共通テスト情報Ⅰでは単独の大問というより、表を読ませてから何かをさせる型で出ます。データの分析の問題の前提として顔を出すことが多い分野です。出題の型は3つに整理できます(当塾では共通テストの問題文・選択肢・図表は転載していません)。
与えられた表について、レコード数・フィールド数、あるレコードの特定フィールドの値を答えさせる型。行と列のどちらがレコードかを取り違えると全滅します。「1件分のデータ=1行」と即答できるようにしておくこと。
複数の列を挙げて「主キーとして適切なものはどれか」を問う型。判断基準は3-5の3条件だけです。氏名・電話番号・メールアドレス・都道府県名は主キーになりません。 逆に、複数の列を組み合わせて初めて一意になる場合もあります。
2枚以上の表が与えられ、片方の値をもう片方でたどらせる型。外部キーの値をキーにして相手の表の行を特定する、という作業を落ち着いてやるだけで解けます。急いで暗算しようとして表を見間違えるのが最大の失点要因です。指で追ってかまいません。
落とし穴
- レコード(行)とフィールド(列)を逆に覚えている。 ここだけは絶対に固めること
- 「主キーは1列でなければならない」と思い込む。 複数列の組み合わせが主キーになる場合があります
- 「今たまたま重複していない列=主キー」と判断する。 将来重複しうるか、を考えるのが主キーの選び方です
- 外部キーの向きを逆に覚える。 外部キーは「相手の表に存在する値」しか取れません。逆ではありません
- NULLは「0」でも「空文字」でもない。 値が無いという状態そのものです
練習用の自作問題(本記事オリジナル)
ある図書館の貸出システムが、次の1枚の表だけでデータを管理している。
[貸出ID|貸出日|書籍名|著者名|会員氏名]
(1)著者名を訂正しなければならなくなったときに起きる問題を答えよ。
(2)まだ1度も貸し出されていない新刊を登録できない。この不整合の名称を答えよ。
(3)この表を3枚に分けるとしたら、どう分けるか。それぞれの主キーも答えよ。
(4)会員氏名を会員表の主キーにしてはいけない理由を2つ挙げよ。
(1)同じ著者の書籍が複数行にわたって記録されているため、訂正すべき行が複数あり、直し漏れると同じ著者名が2通り存在する状態になる(更新不整合)。
(2)挿入不整合。
(3)書籍表(主キー:書籍ID)/会員表(主キー:会員ID)/貸出表(主キー:貸出ID。書籍IDと会員IDを外部キーとして持つ)。
(4)①同姓同名の別人を登録できない(一意でない)②改姓すると主キーの値が変わり、参照している側をすべて直す必要がある(不変でない)。
表から取り出した数値をどう要約するかは第83講 代表値(平均値・中央値・最頻値)、2つの列の関係を見る方法は第86講 相関係数で扱っています。
6. 情報Ⅱではこうなる
情報Ⅰと情報Ⅱの差は、この単元でいちばんはっきり出ます。情報Ⅰは「表はこういう構造でできている」を知る。情報Ⅱは「その構造を自分で設計し、言語で操作する」。
6-1. 学習指導要領解説が名指ししているもの
情報Ⅱ(3)「情報とデータサイエンス」のア(ア)の解説に、次の一文があります。
なお,データの収集,整理,整形に関しては,関係データベースの関係演算を扱うとともにデータベースの管理や操作を行うプログラミング言語についても触れる。
前掲「解説 情報編」(該当箇所は解説p.50相当)
情報Ⅰ側には無い語が2つ入っています。「関係演算」と「データベースの管理や操作を行うプログラミング言語」です。後者が指しているのがSQLで、文部科学省「情報Ⅱ」教員研修用教材 第3章の学習11「データと関係データベース」は「RDBを操作するためにはSQL(Structured Query Language)を使う」と明記しています。前者(選択・射影・結合)は次の講の担当なので、本講では踏み込みません。
6-2. 「表を分ける」が「正規化という手順」になる
情報Ⅰ側にも「テーブルの正規化」という語はありました(3-4)。しかしそこにあるのは理由だけで、手順はありません。手順が出てくるのは専門教科情報科の科目「データベース」で、学習指導要領解説はこう書いています。
ウについては,第一正規形から第三正規形までを取り上げ,正規化の内容や必要性について扱うこと。
前掲「解説 情報編」第2章 専門教科情報科 第8節「データベース」
同じ節では、データの分析とモデル化としてE-R図、データベース管理システムの働きとして整合性管理・トランザクション管理(原子性・一貫性・独立性・耐久性)・同時実行制御及びロックが挙げられています。情報Ⅰで「1か所にまとめると直し漏れる」と体で理解したことが、名前と手順を与えられて技法になる。 順番が逆ではないことに注意してください。理由を先に理解した人だけが、第一正規形・第二正規形・第三正規形という手順を、意味のあるものとして受け取れます。
6-3. 「主キー」は学習指導要領解説には一度も出てこない
私が今回の調べもので驚いたのはここです。「主キー」「外部キー」という語は、学習指導要領解説 情報編の全文に一度も出てきません。 共通教科(情報Ⅰ・情報Ⅱ)の解説にも、専門教科の記述にもありません。「一意」「参照整合性」も同様に0件でした(PDFを全文検索して確認)。
では受験生が覚えている主キー・外部キーはどこから来ているのか。用語として明示的に規定しているのは、たとえばIPAのITパスポート試験シラバス Ver.6.5(令和8年1月改訂)です。「データベース設計/データの設計」の用語例に、E-R図、コード設計、フィールド(項目)、レコード、ファイル、テーブル(表)、主キー、外部キー、インデックスが並びます。しかも同シラバスは正規化について「データの正規化の必要性(ただし,正規化の詳細な内容は問わない)」と書いており、高校情報Ⅰとまったく同じ深さで止めています。
国の設計として、高校情報Ⅰで求められているのは「なぜ分けるか」までであって、正規形の手順ではない。 だからこの講で時間をかけるべきなのは、第一正規形の定義を暗記することではなく、3-3で見た3つの壊れ方を自分の言葉で言えるようにすることです。
6-4. 表計算の延長線ではなくなる
情報Ⅱ教員研修用教材の学習12「大量のデータの収集と整理,整形」では、Pythonのpandasが登場し、「リレーショナルデータベースのように二つのデータを結合したり,重複データを取り除いたりすることができる」と書かれています。情報Ⅰで手作業だった「表を分ける・つなぐ」が、情報Ⅱではコードになる。 さらに学習11のデータ型の例には Object(blob)=「図,音声などのデータ」があり、画像や音声も表の1つのフィールドに収まる対象として扱われます。表から行を絞り込むときのAND・OR・NOTについては第43講 論理演算と検索の絞り込みで詳しく書きました。あわせて読むと、構造(本講)と操作(第43講)がつながります。
| 情報Ⅰ | 情報Ⅱ・その先 | |
|---|---|---|
| 表 | 与えられた表を読む | 自分でテーブルを設計する(E-R図) |
| 分ける理由 | 「冗長になるのを避ける」と知る | 第一〜第三正規形という手順として実行する |
| 操作 | どんな操作ができるかを知る | 関係演算とSQLで実際に操作する |
| キー | 用語として主キー・外部キーを知る | 整合性を保証する設計上の制約として使う |
| 目的 | データを共有できる形を理解する | 一貫性を保ったまま分析可能な形に整える |
まとめ
- データベースは「データを1つにまとめて、複数のシステムで共有できるようにしたもの」(文部科学省 授業用コンテンツの定義)
- テーブル=表、レコード=行(1件分のデータ)、フィールド=列(項目・属性)
- 1枚の表に詰め込むと更新不整合・挿入不整合・削除不整合の3つが起きる。原因は「寿命の違う事実が同じ行に混ざっている」こと
- 表を分け、主キーと外部キーでつなぐと3つとも消える。事実が書いてある場所が1か所になるから
- 主キーの条件は一意・不変・NULL不可。氏名は3つとも落とすので主キーにできない
- 表計算との決定的な差は、型の制約・同時アクセスの制御・整合性の保証をシステムが強制するかどうか
- 情報Ⅱでは「関係演算」と「操作言語(SQL)」が名指しされ、専門教科では第一〜第三正規形とE-R図まで進む
出典(すべて2026年8月3日に取得)
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編」平成30年7月
- 文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅰ』教員研修用教材」第4章 情報通信ネットワークとデータの活用(令和2年)
- 文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅱ』教員研修用教材」第3章 情報とデータサイエンス 前半(令和2年7月)
- 文部科学省「授業・研修用コンテンツ」【情報Ⅰ】学習動画「身近にあるデータベースを学ぼう!」スライド・ワークシート(2023年2月)
- 情報処理推進機構(IPA)「ITパスポート試験 シラバス Ver.6.5」令和8年1月
- SQLの実行環境:SQLite 3.51.0(本記事のSQLはすべて実行して出力を確認しています)
本シリーズの全体像は『藤原進之介の最強120講義』ハブページ、公開済みの各講はシリーズ一覧からご覧いただけます。制度の話は2026年8月時点の情報です。
執筆:藤原進之介(数強塾グループ代表)
オンライン数学専門塾「数強塾」代表。累計3,500名以上の中高一貫校生を指導。東進ハイスクール・東進衛星予備校・代々木ゼミナールなど出講実績あり。情報Ⅰの参考書を複数執筆しており、KADOKAWA『ゼロから始める情報I』、Gakken『きめる!共通テスト 情報Ⅰ』などがあります。本記事は参考書『藤原進之介の最強120講義』第90講のWeb版です。
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