情報Ⅰ 最強120講義

【情報Ⅰ 第34講】画像のデジタル化|解像度・階調・データ量の計算

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今日の一問
1枚の写真を「6.2MB」と言い切れるのはなぜでしょうか。画像のどこを刻み、どこを段階に落としているのでしょうか。
数強塾代表の藤原進之介です。この単元は「公式を覚えれば解ける」と思われがちですが、実際の共通テストで差がつくのは公式を覚えたかどうかではありません。音のデジタル化と画像のデジタル化が、まったく同じ構造をしていると気づいているかどうかです。今回はそこを正面から扱います。
——さて、どこから手をつける?
答えと考え方は、この記事の中で順を追って解説します。

第34講 画像のデジタル化(解像度・階調・データ量)/共通テスト重要度 S/情報Ⅱ接続:(3)情報とデータサイエンス(画像認識)。この講は『藤原進之介の最強120講義』の第2部(コミュニケーションと情報デザイン)にあたります。

1. この講の問い

1枚の写真を「6.2MB」と言い切れるのはなぜでしょうか。画像のどこを刻み、どこを段階に落としているのでしょうか。

数強塾代表の藤原進之介です。この単元は「公式を覚えれば解ける」と思われがちですが、実際の共通テストで差がつくのは公式を覚えたかどうかではありません。音のデジタル化と画像のデジタル化が、まったく同じ構造をしていると気づいているかどうかです。今回はそこを正面から扱います。

2. 結論

(1) 画像のデジタル化も、音と同じ 標本化 → 量子化 → 符号化 の3手順である。ただし標本化が刻むのは時間ではなく空間(=画素への分割・解像度)、量子化が落とすのは明るさの段階(=階調)である。

(2) データ量は 横の画素数 × 縦の画素数 × 1画素あたりのビット数 だけで決まる。

(3) 縦横それぞれを2倍にすると画素数は4倍になり、データ量も4倍になる(長さではなく面積が効く)。そして bit と Byte の取り違えが、この単元で最も多い失点 である。

3. なぜそうなるのか

3-1 「音と同じ」は比喩ではなく、指導要領の文言そのもの

高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編は、情報Ⅰの(2)ア(ア)のところでこう書いています。

情報のデジタル化に関して標本化,量子化,符号化,二進法による表現などを理解するようにするとともに,標本化の精度や量子化のレベルによって,ファイルサイズや音質,画質の変化が生じることを科学的に理解するようにする

文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編』平成30年7月、p.27相当(2026年8月3日取得)

注目してほしいのは「音質,画質」と2つ並べて1文で処理しているところです。音と画像は別々の暗記事項ではなく、同じ2つのつまみ(標本化の精度・量子化のレベル)を回した結果として並べられている。ここが本講の主戦場です。

比べる観点 音(第33講) 画像(この講)
何を刻むか(標本化) 時間を一定間隔で刻む 平面を一定間隔で刻む=画素に分割する
刻みの細かさの呼び名 標本化周波数(Hz) 解像度(画素数・dpi・ppi)
何を段階に落とすか(量子化) 振幅(音の大きさ) 明るさ・色の濃さ
段階の多さの呼び名 量子化ビット数 階調
符号化 段階の番号を2進法で書く 段階の番号を2進法で書く

この表の左右を自分で埋められるか。それが、この単元を「覚えた」のか「わかった」のかの分かれ目です。

1 もとの画像(連続)明るさも位置もなめらかに変わる2 標本化(平面を刻む)格子1マスが1画素。細かさ=解像度3 量子化・符号化R = 251G = 191B = 36各色 0〜255 の 256 段階 = 8 bit8 + 8 + 8 = 24 bit / 1 画素11111011 10111111 00100100標本化=どこで測るかを決める(空間を刻む)/量子化=いくつの段階で表すかを決める(階調)符号化=段階の番号を 2 進法で書く。ここまでやって、はじめて「何バイト」と言える
図1 画像のデジタル化:標本化(画素への分割)→ 量子化(階調)→ 符号化(2進法)

3-2 一次資料の定義文は「時間」で書かれている。読み替えは自分でやる

文部科学省「情報Ⅰ」教員研修用教材 第2章は、デジタル化の手順をこう定義しています。

連続的に変化する量を一定の時間間隔で区切る標本化,それぞれの値にあらかじめ定めた段階値を割り当てる量子化,量子化した数値を2進法で表現する符号化

文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅰ』教員研修用教材」第2章、令和2年(2026年8月3日取得)

つまり 一次資料の定義文そのものが、時間方向(=音)を前提に書かれているのです。画像に適用するときは、読者の側で「一定の時間間隔」を「一定の空間間隔」に読み替えなければならない。多くの受験生が「画像のデジタル化は別の話だ」と感じてしまう原因は、まさにここにあります。読み替えを1回自分でやってしまえば、音と画像を二度覚える必要は消えます。

3-3 なぜ24bitフルカラーは約1677万色なのか

同じ教員研修用教材には、階調の定義と色数がこう書かれています。

各色の濃さや明るさを表現する段階のことを階調(グラデーション)という。階調の多さによって,表現できる色は変わってくる。ディスプレイなどでは,RGBそれぞれ1色あたり8bit の色を3色混ぜ合わせて 24bit で表現し,16,777,216 色(= 2の24乗)の表現を実現することができる。

同上(2026年8月3日取得)

この 16,777,216 は暗記する数ではありません。自分で出せます。

  • 1色あたり 8bit なので、段階は \(2^{8} = 256\) 通り
  • R・G・B は独立に選べるので、積の法則で \(256 \times 256 \times 256\) 通り
  • \(256 \times 256 \times 256 = 2^{8} \times 2^{8} \times 2^{8} = 2^{24}\)

そして \(2^{24}\) は、\(2^{10} = 1024\) さえ知っていれば筆算で出ます。

\[2^{24} = 2^{4} \times (2^{10})^{2} = 16 \times 1\,048\,576\]

すなわち

\[2^{24} = 16\,777\,216\]

「約1677万色」は結果であって前提ではありません。指数法則がそのまま色数になっている、というのがこの数の正体です(2進法と16進法の扱いは第40講 基数変換で詳しく扱いました)。

3-4 なぜ解像度を2倍にするとデータ量は4倍になるのか

「2倍にしたら2倍」と書いてしまう答案が本当に多い。理由は単純で、画素は面積に比例して増えるからです。横 \(W\) 画素・縦 \(H\) 画素の画像の画素数は \(W \times H\)。縦横それぞれを2倍にすると

\[(2W) \times (2H) = 4WH\]

となり、画素数は4倍。1画素あたりのビット数は変わらないので、データ量も4倍です。一般に縦横を \(k\) 倍すれば \(k^{2}\) 倍になります。

一方、階調のビット数を2倍にしたときは、データ量は2倍にしかなりません(8bit → 16bit)。ところが表現できる色数は \(2^{8} = 256\) 通りから \(2^{16} = 65\,536\) 通りへと 256倍 になります。「データ量は2倍、色数は256倍」というこの非対称が、なぜ画像は階調ではなく解像度で重くなるのかを説明しています。

3-5 dpi と ppi ── 一次資料は「同じ意味」と書いている

点の集まり具合を解像度といい,ラスタデータにおいて画像の細かさを示すもので,1インチ当たりにいくつの点(ドット)を置くかを数値で表したもので,dpi(dot per inch)を単位として用いる。解像度については,dpi と同じ意味で,ppi(pixels per inch)が用いられることもある。ppi が大きいほどディスプレイで表示される画像の画素は小さくなり,より精細に表示することができる。

文部科学省「情報Ⅰ」教員研修用教材 第2章(2026年8月3日取得)

印刷やデザインの実務では「dpi=プリンタが打つインクの点の密度/ppi=画素の密度」と使い分ける分野もあります。しかし 高校の情報Ⅰの一次資料は、両者を「同じ意味」として扱っています。 ここは自信を持って一次資料に従ってください。

そのうえで受験生が本当に注意すべきなのは、dpi と ppi の違いではなく、「解像度」という語が2通りに使われていることです。

  • 総画素数の意味(例:「解像度が 1920 × 1080 の画像」)
  • 密度の意味(例:「350dpi で印刷する」)

同じ教員研修用教材が、本文では dpi を密度の意味で使い、演習では「解像度が 1920 × 1080 の……」と総画素数の意味で使っています。一次資料自身が両方の使い方をしている以上、設問がどちらの意味かは、その都度読むしかありません。密度で与えられたときは、\(\text{px} = \text{dpi} \times \text{inch}\) の形で総画素数に直してから、いつもの公式に入れます。

3-6 ラスタとベクタ ── なぜ拡大すると粗くなるのか

同じ資料は、画像を ラスタデータ(色情報を持つ点の集まり。ビットマップ)と ベクタデータ(点とそれを結ぶ線や面として計算で表現)に大別しています。指導要領解説も「静止画を点の集まりとして扱うラスタ形式と座標として扱うベクタ形式について……用途に応じて使い分ける学習活動」を挙げています。

ラスタが拡大に弱いのは、標本化した時点で、画素と画素のあいだの情報を捨てているからです。捨てたものは戻りません。ベクタは「点の座標と線の式」を持っているので、表示のたびに計算し直せて、拡大しても輪郭が保たれます。デジタル化とは、元に戻せない形で情報を捨てる操作であるという本質が、ここに顔を出しています。

4. 手で確かめる

基本の式はこれだけです。

\[D_{\text{bit}} = W \times H \times b \qquad D_{\text{Byte}} = \frac{D_{\text{bit}}}{8}\]

\(W\) は横の画素数、\(H\) は縦の画素数、\(b\) は1画素あたりのビット数です。必ず bit と Byte の両方で答えを書いてください。 これだけで失点が激減します。

例題1(グレースケール)

256階調のグレースケール画像で、横640画素・縦480画素。データ量は何 bit で、何 Byte でしょうか。

256階調 \(= 2^{8}\) なので、1画素あたりは 8bit(256bit ではありません)。

  • 画素数:\(640 \times 480 = 307\,200\) 画素
  • bit:\(307\,200 \times 8 = 2\,457\,600\) bit
  • Byte:\(2\,457\,600 \div 8 = 307\,200\) Byte
  • 参考:\(307\,200 \div 1024 = 300\) KiB(ちょうど)。10進の MB なら 0.3072 MB

例題2(24bitフルカラー・教員研修用教材と同じ設定)

解像度 1920 × 1080 の24ビットフルカラー画像のデータ量は何 MB でしょうか。これは教員研修用教材 第2章の学習活動そのものです。

  • 画素数:\(1920 \times 1080 = 2\,073\,600\) 画素
  • bit:\(2\,073\,600 \times 24 = 49\,766\,400\) bit
  • Byte:\(49\,766\,400 \div 8 = 6\,220\,800\) Byte
  • 10進(\(1\,\text{MB} = 10^{6}\) Byte)なら 6.2208 MB
  • 2進(\(1\,\text{MB} = 2^{20}\) Byte)なら \(6\,220\,800 \div 1\,048\,576 =\) 約5.93MB

同じ画像なのに答えが2つ出ます。 これは間違いではなく、MB の定義が2通りあるからです。設問に「1MB = 106 B とする」等の断りがあればそれに従い、無ければ 1024 で割る流儀が高校では一般的です。

なお同じ演習は続けて「この画像を1フレームとして 60fps で1分間の動画にすると何 GB か」まで問います。フレーム数は \(60 \times 60 = 3\,600\) 枚なので、\(6\,220\,800 \times 3\,600 = 22\,394\,880\,000\) Byte、109 で割って 約22.4GB。1分で22GB です。動画に圧縮が必須である理由が、計算だけで見えてきます。

例題3(透過ありのフルカラー)

1920 × 1080 で、RGB各8bitに加えて透明度(アルファ値)8bitを持つ画像。24bitのときの何倍でしょうか。

  • 1画素あたり:\(8 + 8 + 8 + 8 = 32\) bit
  • Byte:\(2\,073\,600 \times 32 \div 8 = 8\,294\,400\) Byte(=8.2944 MB、10進)
  • 倍率:\(32 \div 24 = 4/3\) 倍(約1.33倍)

「透過あり=2倍」ではありません。増えたのは1チャンネル分だけです。

例題4(解像度を2倍にする)

例題2の画像を 3840 × 2160 にすると、データ量は何倍でしょうか。

  • 画素数:\(3840 \times 2160 = 8\,294\,400\) 画素(\(2\,073\,600\) の4倍)
  • Byte:\(8\,294\,400 \times 24 \div 8 = 24\,883\,200\) Byte(=24.8832 MB、10進)
  • \(6\,220\,800\) に対して ちょうど4倍

例題5(圧縮率)

例題2の画像(6,220,800 Byte)を圧縮したら 1,244,160 Byte になりました。\(1\,244\,160 \div 6\,220\,800 = 0.2\) です。ここで用語に注意してください。この 0.2 を「圧縮率20%」(圧縮後 ÷ 圧縮前)と呼ぶ流儀と、「80%圧縮できた」(減った割合)と呼ぶ流儀の両方が世の中にあります。

共通テストでは、どちらの定義かが必ず問題文に書いてあります。自分の流儀で押し切らず、その場の定義文を読んでから割り算をしてください。なお教員研修用教材でも、ハフマン符号化の学習活動の中で「圧縮率を計算する」ところまでを扱っています。

Python で確かめる

画像が「数値の行列」であることは、実際に作ってみるのが一番早い。以下は私が実行して出力を確認したものです(外部ライブラリは不要です)。

# 4x3 のフルカラー画像を「数値の行列」として作る(1画素 = R,G,B の3つの数)
W, H = 4, 3
img = [[(255, 0, 0), (0, 255, 0), (0, 0, 255), (255, 255, 255)],
       [(0, 0, 0), (128, 128, 128), (255, 255, 0), (0, 255, 255)],
       [(255, 0, 255), (10, 20, 30), (200, 100, 50), (1, 2, 3)]]
# 手計算と同じ式でデータ量を出す
bits = W * H * 24
print("画素数:", W * H)
print("データ量:", bits, "bit =", bits // 8, "Byte")
# PPM(P6) 形式で実際に書き出して、ファイルサイズを確かめる
header = f"P6\n{W} {H}\n255\n".encode()
body = bytes(v for row in img for px in row for v in px)
with open("sample.ppm", "wb") as fp:
    fp.write(header + body)
import os
print("ヘッダ:", len(header), "Byte / 画素データ:", len(body), "Byte")
print("ファイル全体:", os.path.getsize("sample.ppm"), "Byte")
# 縦横を2倍にすると画素数は4倍になる
print("2倍にしたときの画素数:", (W * 2) * (H * 2))

実行結果は次のとおりです。

画素数: 12
データ量: 288 bit = 36 Byte
ヘッダ: 11 Byte / 画素データ: 36 Byte
ファイル全体: 47 Byte
2倍にしたときの画素数: 48

手計算の 36 Byte と、実際に書き出したファイルの画素データ 36 Byte が一致しました。ファイル全体が 47 Byte なのは、ヘッダ(形式・幅・高さ・最大値を書いた11 Byte)が付くからです。実測のファイルサイズが計算値とぴったり合わないのはメタデータの分だ、と体で分かります。

5. 共通テストではこう出る(重要度 S)

この単元は、計算問題として毎年出ると思って構えてください。出題の型は次の4つに整理できます。

問われ方 典型的な引っかけ
型1 データ量そのもの 横 × 縦 × 1画素あたりのbit数 「256階調」を「256bit」と読む(正しくは \(2^{8}\) より8bit)
型2 条件を変えたら何倍か 解像度・階調・チャンネル数の変更 縦横2倍を「2倍」と答える(正しくは面積で4倍
型3 圧縮率 圧縮前後の量から割合を出す/逆算する 定義(圧縮後÷圧縮前 か 減った割合 か)を読み飛ばす
型4 単位換算 bit ↔ Byte、KB・MB・GB bitで聞かれてByteで答える/その逆

型2をもう少し具体的に書いておきます。解像度を縦横2倍にすれば 4倍。階調を256段階から65,536段階にすれば1画素が8bitから16bitになって 2倍。RGBからRGBA(透過あり)にすれば 4/3倍。「2倍と言われたら2倍」と反射せず、何が2倍になったのかを一度言葉にしてから式を立ててください。

出題の実際(一次資料で確認できること)

大学入試センターが2022年11月9日に公表した「令和7年度大学入学共通テスト 試作問題『情報』の概要」によれば、試作問題『情報Ⅰ』の第1問は、学習指導要領の4領域それぞれから独立した4つの小問で構成されており、配点は 問1(情報社会の問題解決)4点/問2(情報通信ネットワークとデータの活用)6点/問3(コンピュータとプログラミング)6点/問4(コミュニケーションと情報デザイン)4点です。同資料は問2を「通信データの誤り訂正の仕組み……また,基数変換の理解を基に,具体的な誤り訂正を考察できるかを問う」と説明しています。

つまり 第1問は「小問集合で4領域を一巡させる」設計になっています。デジタル化の計算は、この枠に入ってくる典型的な題材です。実際、2026年1月実施の本試験でも第1問の小問集合に、格子状の図案を題材にしたデジタル化の計算が出題されたと予備校各社が分析しています(予備校の分析は二次情報のため、本稿では設問構造の紹介にとどめ、問題文・選択肢・図表は一切引用していません)。

直前チェックリスト

  • 階調の「段階数」と「ビット数」を混同していないか
  • bit と Byte を取り違えていないか(答案に単位を書いたか)
  • 「解像度」が総画素数の意味か、密度(dpi)の意味かを読み分けたか
  • 「◯倍」を面積で考えたか
  • 圧縮率の定義を問題文から拾ったか

6. 情報Ⅱではこうなる

情報Ⅰで「1画素あたり8bit」と書いた、その8bitの中身は、情報Ⅱでそのままの形で再登場します。

文部科学省「情報Ⅱ」教員研修用教材 第3章 学習17「ニューラルネットワークとその仕組み」(使用言語 Python)には、こう書かれています。

例えば手書き文字が4か9か認識したいとする。入力は手書き文字画像のピクセルごとのグレースケールの階調を値にして表した配列である。出力は手書き文字が4であれば0,9であれば1とする。各ピクセルの値に重み付けとバイアスの値を加えることでどちらかの出力値に寄せていく。最初の重み付けとバイアスはコンピュータがランダムに行い,学習の過程で自律的にそれぞれ修整していく。

文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅱ』教員研修用教材」第3章後半、令和2年6月、p.161相当(2026年8月3日取得)

「ピクセルごとの階調を値にして表した配列」──これは情報Ⅰで習った階調の定義そのものです。情報Ⅰでは「データ量を計算するための数」だった階調が、情報Ⅱでは 機械学習モデルの入力ベクトルの成分 になります。

同じ教材の学習16「クラスタリングによる分類」は、28 × 28画素の手書き数字データセット(MNIST)を扱い、画像どうしの近さを 784次元のユークリッド距離 で測ります。\(28 \times 28 = 784\)。つまり 情報Ⅰで数えた画素数が、そのまま情報Ⅱでの「次元の数」になるわけです。そして同教材は、距離の意味を生徒に理解させるには「階調(0〜255)ではなく,0と1で2値化されたデータと考えると分かりやすくなる」と助言しています。階調を落とす=量子化のレベルを下げる操作が、そのまま教材設計になっているのです。

さらに学習18「テキストマイニングと画像認識」(使用言語 R)では、YOLO(You Only Look Once)という物体検出アルゴリズムを実際に動かし、自分で用意した写真から物体を検出させる演習まで用意されています。教材は YOLO を「2016年に Joseph Redmon, Santosh Divvala, Ross Girshick, Ali Farhadi の論文 "You Only Look Once: Unified, Real-Time Object Detection" によって発表されたリアルタイム物体検出・認識アルゴリズム」と紹介し、「現在では,医療画像分析などにも応用されている」と補足しています。

観点 情報Ⅰ(この講) 情報Ⅱ(情報とデータサイエンス)
画像を何とみなすか 画素の集まり。データ量を計算する対象 数値の行列・ベクトル。モデルへの入力
階調の役割 1画素あたりのビット数を決める 入力ベクトルの各成分の値(0〜255)
画素数の役割 データ量に比例する 次元数(28 × 28 なら784次元)
「重い」の意味 ファイルサイズが大きい 次元が高い(計算量と過学習の問題)
ゴール 何 MB か答える 4か9かを判別するモデルを学習させる

情報Ⅰで「解像度を上げるとデータ量が急増する」ことを面積で理解しておくと、情報Ⅱで「なぜ画像認識では前処理として縮小・グレースケール化・2値化をするのか」が説明抜きで分かります。あれは容量の節約ではなく、次元を減らして学習を成立させるための操作なのです。情報Ⅱは2026年8月時点では選択科目で、開設している高校はまだ多くありません。しかし情報Ⅰの計算の意味が分かっている受験生は、そのまま情報Ⅱの入口に立っています。

出典

  • 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編』平成30年7月(2026年8月3日取得)PDF
  • 文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅰ』教員研修用教材」第2章(2026年8月3日取得)PDF
  • 文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅱ』教員研修用教材」第3章後半(2026年8月3日取得)PDF
  • 大学入試センター「令和7年度大学入学共通テスト 試作問題『情報』の概要」2022年11月9日公表(2026年8月3日取得)PDF

執筆:藤原進之介(数強塾 代表)

オンライン数学専門塾「数強塾」代表。累計3,500名以上の中高一貫校生を指導してきました。東進ハイスクール・東進衛星予備校・代々木ゼミナールなど出講実績あり。情報Ⅰの参考書を複数執筆しています。本記事は『藤原進之介の最強120講義』の第34講の原稿を、Web用に再構成したものです。数値はすべて一次資料(文部科学省・大学入試センターの公表資料)で確認し、計算はすべて独立に検算しています。

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