こんにちは、数強塾代表の藤原進之介です。この記事は参考書『藤原進之介の最強120講義』の第85講「ヒストグラムと箱ひげ図」のWeb版です。共通テスト「情報Ⅰ」での重要度はS(毎年出る。落とすと致命的)、情報Ⅱでの接続先は(3)情報とデータサイエンスです。
この講で扱うのは「分布を目で見る技術」です。四分位数そのものの定義と計算は第84講、相関は第86講「散布図と相関係数」に譲り、ここでは図の読み方・描き方・使い分けだけに集中します。ヒストグラムと箱ひげ図には、見せる側が印象を操作できてしまうという、情報科でこそ扱うべき論点があります。
1. この講の問い
同じ40人分のデータから、山が1つに見えるグラフと山が2つに見えるグラフを、どちらも正しく作れてしまうのはなぜか。
2. 結論
ヒストグラムは面積が度数を表すグラフで、横軸は連続量。棒グラフは横軸がカテゴリで、面積に意味はない。だからヒストグラムは棒を離さず、棒グラフは離す。
ヒストグラムの見え方は階級の幅という「作り手が決める数」に依存する。同じデータでも幅を変えれば一山にも二山にも見える。ここに恣意が入り込む。
箱ひげ図は5つの位置だけを残して分布の形を捨てた圧縮表現。だから複数集団の比較に強く、だから二峰性を見せない。
3. なぜそうなるのか
3-1 横軸に何が乗っているか——連続量かカテゴリか
棒グラフとヒストグラムは、どちらも長方形が並んでいます。しかし横軸の正体が違います。
棒グラフの横軸はカテゴリです。「国語・数学・英語・情報」の間には順序も距離もないので、並べ替えても情報は失われず、「国語と数学の間」という値も存在しません。いっぽうヒストグラムの横軸は連続量です。得点でも身長でも、目盛りと目盛りの間には必ず値が存在しえますし、順番を入れ替えることは許されません。
この違いは、指導のレベルで一次資料に現れています。文部科学省「情報Ⅰ」教員研修用教材 第4章 学習22は、尺度と分析が合っていない例として次を挙げています。
順序尺度のデータをカテゴリー別に集計した結果をカテゴリーの順序を無視して棒グラフや円グラフに表してしまう。(カテゴリーの例として,優,良,可など)
文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅰ』教員研修用教材」第4章(令和2年)p.184相当。2026年8月3日取得
ここから作図の作法が導けます。ヒストグラムは棒を離さない。 隙間は「そこに値が存在しない」という主張になり、連続量ではそれが嘘になるからです。逆に棒グラフの隙間は「間の値は存在しない」という正しい主張です。隙間の有無は見た目の趣味ではなく、横軸の性質の宣言なのです。
図1 左=棒グラフ(横軸はカテゴリ。棒と棒の間をあける)/右=ヒストグラム(横軸は連続量。棒と棒をくっつける)。
3-2 ヒストグラムの本体は「高さ」ではなく「面積」
総務省統計局の「なるほど統計学園」は、この一点をはっきり書いています。
一見棒グラフに似ていますが、その面積が度数を表しているので、階級の幅が異なる場合には高さに注意しましょう。
総務省統計局「なるほど統計学園(初級)ヒストグラム」 https://www.stat.go.jp/naruhodo/4_graph/shokyu/histogram.html 2026年8月3日取得
階級の幅がすべて等しいときは面積は高さに比例するので、高さで比べても結論は変わりません。多くの教科書が「縦軸は度数」と書くのは、幅が等しいという前提の上での略記です。
幅の違う階級が混ざると、高さの比較は意味を失います。そこで使うのが度数密度です。階級の度数を 、階級の幅を とすると、度数密度 は
で定義されます。たとえば幅10で度数8の階級は 、幅5で度数6の階級は 。度数だけ見れば8のほうが多いのに、混み具合は後者のほうが上です。縦軸に度数密度を取れば長方形の面積がそのまま度数になり、幅の違う階級を並べても正しく読めます。
3-3 階級幅を変えると、同じデータが別の顔になる
ここが本講の核心です。
ヒストグラムを描くには、階級の幅を決めなければなりません。そしてその幅は、データの中には書かれていません。作り手が決めます。
決め方の目安は一次資料にあります。統計学園は「スタージェスの公式を利用して階級の数を決定し、その数から各階級区間を決定していく方法」を挙げつつ、通常は「5〜10くらいの階級数でヒストグラムを描いてみて、あまりデータの散らばりが見られなければ階級数を変えてみる」としています。スタージェスの公式は、データ数 から階級数 を
で見積もる形が知られています( なら 、 なら 。いずれも私が計算しました)。
つまり目安はあっても一意には決まりません。 同じデータから複数の「正しいヒストグラム」が作れます。
この性質を、情報Ⅱの教員研修用教材は正面から演習にしています。
この学習項目では,データ処理の方法によって同じデータでも見え方が異なることを体験するとともに,データの収集や分析の際に起こりうる基本的なデータの偏りについて確認する。
演習1では,同じデータであっても目盛りの取り方や階級の幅(ビン幅)の取り方,外れ値の扱いにより異なったヒストグラムとなることを確認し,データの信憑性をデータの提供者の視点から考える。
ヒストグラムでは適切な階級の幅を設定することが重要である。分析のために同じデータでいくつかの階級の幅を試すことも有用である。適切な階級の数は計算で求める方法もいくつかある。例としてスタージェスの公式を挙げておく。
文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅱ』教員研修用教材」第3章 情報とデータサイエンス(前半)p.110相当。https://www.mext.go.jp/content/20200702-mxt_jogai01-000007843_004.pdf 2026年8月3日取得
注目していただきたいのは置かれている文脈です。この記述があるのは「データの信憑性」の節で、教材は信憑性を Cambridge Dictionary の credible「able to be trusted or believed」に当てて定義しています。演習1の題材は e-Stat(政府統計の総合窓口)の全国消費実態調査で、平成26年の品目別1世帯当たり1か月間の支出のうち野菜の漬物の購入額を使い、同じデータを縦軸の目盛りだけ変えて2通り描いたグラフを並べて、違いを話し合わせる構成です。
つまり国の教材は、可視化を「データを見る技術」としてだけでなく、「データの提供者の視点から」——作り手が印象を操作しうるものとして教えよ、と書いているのです。
階級幅を変えるのは不正ではありません。どれも正しいヒストグラムです。だからこそ都合のよい幅を選んで見せることができてしまう。グラフを見せられたときに「この幅は誰が何のために決めたのか」と問えるかどうかが、決定的な差になります。
3-4 箱ひげ図は「捨てる」ことで得た道具である
箱ひげ図は、データを5つの数——最小値・第1四分位数 ・中央値 ・第3四分位数 ・最大値——に圧縮します。統計学園の説明は簡潔です。
データのばらつき具合を示すのに用います。(中略)異なる複数のデータのばらつきを比較する事ができます。
総務省統計局「なるほど統計学園(初級)箱ひげ図」 https://www.stat.go.jp/naruhodo/4_graph/shokyu/hakohige.html 2026年8月3日取得
40人分なら40個の数が5個になります。では圧縮して何を得たのか。答えは「幅が細くなったこと」です。
ヒストグラムは1つの集団で横一面を使うので、5クラス分を比べるには5枚並べることになり、目が往復して比較になりません。箱ひげ図は1集団あたり細い1本で済むので、10集団でも20集団でも同じ紙面に並べられます。並列箱ひげ図が比較に強いのは、賢いからではなく細いからです。
圧縮には代償があります。捨てられたものは2つです。
①代表値のうち平均値。 箱ひげ図に描かれるのは中央値であって平均値ではありません。平均は図から読めません(代表値そのものの話は第83講「代表値(平均・中央値・最頻値)」で扱いました)。
②箱の中とひげの中の、分布の形。 箱は「ここに25%ずつ入っている」としか言いません。その25%が一箇所に固まっているのか、両端に割れているのかは、箱の形には現れません。
3-5 だから二峰性が消える
2つ目の代償が決定的です。分布に山が2つあること(二峰性)は、たいてい「性質の違う2つの集団が混ざっている」というサインです。男女を混ぜた高校生の身長がその典型で、文部科学省「令和6年度学校保健統計」(令和7年2月12日公表)の17歳の平均身長は男子170.8cm・女子158.0cm。12.8cmも離れた2つの集団を1つのヒストグラムにすれば、山は2つになりえます。二峰性を見つけることは、分けるべき線を見つけることなのです。
ところが箱ひげ図には、山の数を表す部品がありません。箱の上端・下端・中央線は「位置」であって「形」ではないからです。だから二峰性のあるデータと真っ平らなデータで、まったく同じ箱ひげ図が描けてしまいます。 次のブロックで実際にやってみせます。
「情報Ⅰ」教員研修用教材 第4章 学習24「データの形式と可視化」は、学習活動の展開1の問いをこう置いています。
箱ひげ図はどのような時に使うべきか,使い方を理解しよう。また,箱ひげ図とヒストグラムを区別しよう。
前掲「情報Ⅰ」教員研修用教材 第4章 p.207〜208相当。同章の学習活動の目的には「不適切や誤解を招く可視化について理解する」と明記され、展開3の問いは「立体グラフや円グラフが誤解を招く表現であるとされるのはなぜか,調べてみよう」
国の教材は、可視化を「描き方の作法」ではなく「誤解の作られ方」として教えよと言っているわけです。
4. 手で確かめる
4-1 データA(40人・自作)
ここで使うのは、二峰性を確認しやすいように私が作った40人分の得点です(実在の調査データではありません)。
22 25 27 28 30 31 32 33 34 35 35 36 37 38 39 41 43 45 46 48
58 60 62 63 65 66 67 68 69 70 70 71 72 73 74 76 78 80 84 88
4-2 階級の幅だけを3通りに変える
同じ40個から、階級の幅だけを変えて度数分布表を作ります。
| 階級の幅 | 度数の並び | 見え方 |
|---|---|---|
| 25点 | 17, 12, 11 | 右に裾を引く一山に見える |
| 10点 | 4, 11, 5, 1, 8, 8, 3 | 50〜60点に谷があり、山が2つ |
| 5点 | 1, 3, 5, 6, 2, 3, 0, 1, 3, 5, 6, 2, 2, 1 | ギザギザ。凸凹が邪魔をする |
図2 同じデータA(40人)を、階級の幅だけ変えて描いた3枚。左は一山、中央は二山、右はギザギザ。3枚とも正しいヒストグラムである。
幅25では「点数の低い子が多いクラス」に見え、幅10では「二極化したクラス」に見えます。同じ40個の数から、正反対の物語が出てきました。 しかも幅25の図は嘘ではありません。度数の合計は40で、どこにも計算間違いはありません。
幅を広げすぎると特徴が潰れ、狭めすぎると偶然の凸凹が主役になります。だから教材は「いくつかの階級の幅を試すことも有用である」と書くのです。ヒストグラムは1枚描いて終わりにするグラフではありません。
4-3 箱ひげ図にすると、二峰性が消える
データAの5数要約を求めます(高校で習う四分位数=中央値で2分割し、それぞれの半分の中央値。 なので下位20個・上位20個に分けます)。
| 最小値 | 中央値 | 最大値 | ||
|---|---|---|---|---|
| 22 | 35 | 53 | 70 | 88 |
は10番目と11番目がどちらも35なので35。 は20番目48と21番目58の平均で53。 は30番目と31番目がどちらも70なので70。四分位範囲は
外れ値の境界を計算すると
となり、範囲外の値はありません。よってひげの端は最小値22と最大値88になります。
さて、ここで別のデータBを用意します。
22 24 26 28 29 30 31 32 33 35 35 37 39 41 43 45 47 49 51 52
54 56 58 60 61 63 65 66 68 70 70 72 74 76 78 80 82 84 86 88
Bの5数要約は 22 / 35 / 53 / 70 / 88。Aと完全に一致します。 も35で同じ、外れ値も0個。つまりAとBの箱ひげ図は、線1本まで同一の図になります。
図3 上がヒストグラム(幅10)、下が箱ひげ図。ヒストグラムは左が二山・右が平坦なのに、箱ひげ図は左右で完全に同一である。
ところがヒストグラム(幅10)はご覧のとおり。Aは 4, 11, 5, 1, 8, 8, 3 で真ん中に谷があり二峰性、Bは 5, 8, 5, 5, 6, 6, 5 で谷が無く平坦です。
もし「A組とB組、どちらが二極化していますか」と問われて箱ひげ図しか渡されなかったら、答えようがありません。箱ひげ図はその答えを持っていないのです。
ついでに平均を出すと A は52.975、B は53.5 でわずかに違います。しかし箱ひげ図に平均は描かれないので、この差も図からは読めません。
4-4 Pythonで検算する(標準ライブラリのみ)
ここまでの数値は、すべて次のコードを実行して確かめました。追試できるよう、外部ライブラリを使わない形にしてあります。
from statistics import median, mean
A = [22,25,27,28,30,31,32,33,34,35,35,36,37,38,39,41,43,45,46,48,
58,60,62,63,65,66,67,68,69,70,70,71,72,73,74,76,78,80,84,88]
B = [22,24,26,28,29,30,31,32,33,35,35,37,39,41,43,45,47,49,51,52,
54,56,58,60,61,63,65,66,68,70,70,72,74,76,78,80,82,84,86,88]
def hs_quartiles(xs): # 高校で習う四分位数
s = sorted(xs); h = len(s) // 2
return median(s[:h]), median(s), median(s[h:])
def freq(xs, lo, hi, w): # 度数分布(lo以上 lo+w未満)
out, b = [], lo
while b < hi:
out.append(sum(1 for x in xs if b <= x < b + w)); b += w
return out
for nm, D in (("A", A), ("B", B)):
q1, q2, q3 = hs_quartiles(D)
print(nm, min(D), q1, q2, q3, max(D), "平均", round(mean(D), 3))
for w in (25, 10, 5):
print(" 幅", w, freq(D, 20, 95 if w == 25 else 90, w))
実行結果です。
A 22 35.0 53.0 70.0 88 平均 52.975
幅 25 [17, 12, 11]
幅 10 [4, 11, 5, 1, 8, 8, 3]
幅 5 [1, 3, 5, 6, 2, 3, 0, 1, 3, 5, 6, 2, 2, 1]
B 22 35.0 53.0 70.0 88 平均 53.5
幅 25 [15, 14, 11]
幅 10 [5, 8, 5, 5, 6, 6, 5]
幅 5 [2, 3, 4, 4, 2, 3, 3, 2, 3, 3, 4, 2, 3, 2]
なお statistics.quantiles(D, n=4, method='inclusive')(表計算ソフトの QUARTILE.INC に相当)で計算しても、A・Bとも [35.0, 53.0, 70.0] となり、高校流の値と一致しました(四分位数の流儀の違いは第84講で扱います)。
5. 共通テストではこう出る(重要度 S)
出題は大きく3つの型に整理できます。以下は設問構造の説明であり、問題文・選択肢・図表は転載していません。
型1:ヒストグラムと箱ひげ図の対応を選ぶ
複数のヒストグラムと複数の箱ひげ図を示し、同じデータの組を選ばせる型です。決め手は位置です。①中央値の位置(左寄りか右寄りか)、②箱の幅(真ん中50%の詰まり具合)、③ひげの長さの左右差(裾の向き)——この3点を順に照合します。
山の数で選ぼうとすると必ず詰まります。 箱ひげ図に山の数は書かれていないからです。二峰性のヒストグラムが選択肢に混ざっていても箱ひげ図側では区別できないので、その手がかりは最初から捨ててよいのです。
型2:複数集団の比較
学校別・年度別・地域別の並列箱ひげ図から「最も散らばりが大きいのはどれか」「中央値が最も高いのはどれか」を読ませる型です。頻出の引っかけは平均値。箱ひげ図から平均値は読めません。「平均が最も高い」という選択肢が出たら、その時点で判断保留にします。
もう1つの引っかけは人数です。箱ひげ図は箱の大きさで人数を表しません。箱が大きいクラスは「人数が多い」のではなく「ばらついている」のです。
型3:外れ値の判定
四分位範囲を使い、 より小さい値と より大きい値を外れ値とみなす規則で判定させる型です。この作図規則は「情報Ⅰ」教員研修用教材が明記しており、高校数学Ⅰで学ぶ形として「それ以上離れた値を外れ値として点で示す箱ひげ図」を挙げています。
ただし統計学園は「中には、上下から10%点をひげの両端として描いている箱ひげ図もあります」とも書いています。ひげの定義は一意ではありません。 問題文が作図規則を定義していたら、必ずそちらに従ってください。
なお大学入試センターが公表した試作問題「情報Ⅰ」第4問(配点25点、2022年11月9日公表)は、問2・問3で箱ひげ図の読み取りを置いています。データの活用は大問まるごと出る領域で、可視化はその入口に必ず置かれます。だから重要度はSなのです。
箱ひげ図から読めるもの……5つの位置(最小値・・中央値・・最大値)と、そこから作れる量(範囲・・外れ値の境界)。
箱ひげ図から読めないもの……平均値・分散・標準偏差・人数・山の数・個々のデータの値。
6. 情報Ⅱではこうなる
情報Ⅰでは、可視化は「読める・描ける」で完結します。情報Ⅱでは位置づけそのものが変わります。
情報Ⅱ「(3)情報とデータサイエンス」の教員研修用教材 第3章は、学習11「データと関係データベース」→学習12「大量のデータの収集と整理・整形」→学習13以降のモデリング(重回帰分析・主成分分析・分類・クラスタリング)という順に並んでいます。可視化が置かれているのはモデリングの前、しかも「データの信憑性」の節です。
これが探索的データ解析(EDA)の位置です。モデルを当てる前に、まずデータを絵にして「何が起きているか」を見る。そこで見つけるのは主に次の2つです。
①外れ値。 教材は「何らかの原因により,収集したデータの中で他と大きく異なる値を外れ値という。外れ値からデータ全体の重大な欠陥や特徴が見えることもあるため,外れ値には注意を払う必要がある」と書きます。学習12ではさらに、外れ値のうち原因を特定できるものを異常値と呼び分け、検出手段として「四分位範囲などの統計量」「データ間の距離」「クラスタリング」を挙げています。情報Ⅰで学ぶ は、情報Ⅱでは前処理の判定式になります。
②欠損値。 学習12は欠損値の処理として dropna() / fillna(0) / fillna(method='ffill') / fillna(df.mean()) など5通りを示し、「この判断によってバイアスが生じることもあるため,慎重に扱う必要がある」と注意しています。どの処理を選ぶかは、欠損がどこにどう散らばっているかを見てからでないと決められません。
そして二峰性の発見は、情報Ⅱでは直接アルゴリズムに接続します。 山が2つあるとは「集団が2つ混ざっている」ということであり、それを機械にやらせるのが学習16のクラスタリング(k-means法)です。教材はk-meansの手順を「あらかじめ分割するクラスタ数を決めておき」から始めています。そのクラスタ数をいくつにするかを人間が決める最初の手がかりが、ヒストグラムの山の数なのです。第85講のヒストグラムと第114講のクラスタリングは、この一点で地続きになっています。
情報Ⅰ側の教材 学習24 は、Rのダイヤモンドのデータで「カットの質が上がるほど価格が下がる」ように見える箱ひげ図を示し、「これは不思議な現象に見えるだろう」と述べたうえで「ヒントは『交絡因子』である」と書きます。交絡因子とは「対象としている2変数と相互に相関の高い隠れた変数」のことです。そして演習3として「どのようなグラフを描けば,この現象について納得できる説明ができるでしょうか」と問います。
箱ひげ図を並べて比べただけでは、逆転の理由には届きません。並べて比べる道具は、比べた結果を説明する道具ではないのです。 情報Ⅰの範囲ではここまでですが、情報Ⅱではその先に、変数を増やして同時に扱う重回帰分析(学習13)や、変数を減らして構造を見る主成分分析(学習14)が用意されています。可視化は終点ではなく、次に何をすべきかを決めるための最初の一手なのです。
まとめ
- 棒グラフの横軸はカテゴリ、ヒストグラムの横軸は連続量。だから棒グラフは棒を離し、ヒストグラムは離さない。
- ヒストグラムは面積が度数。幅の違う階級を並べるときは度数密度 で描く。
- 階級の幅は作り手が決める。だから同じデータが一山にも二山にも見える。幅は複数試すのが正しい作法。
- 箱ひげ図は5数に圧縮して細くした図。細いから何本も並べられ、その代償に平均値と分布の形(二峰性)が消える。
- 共通テストでは「箱ひげ図から読めないもの(平均・分散・人数・山の数)」を知っているだけで選択肢が切れる。重要度S。
- 情報Ⅱでは可視化は分析の前段階(EDA)。外れ値と欠損値の発見が前処理へ、山の数がクラスタ数の見当へつながる。
出典(すべて2026年8月3日に取得)
- 文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅰ』教員研修用教材」第4章(令和2年)https://www.mext.go.jp/content/20200722-mxt_jogai02-100013300_006.pdf
- 文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅱ』教員研修用教材」第3章 前半(令和2年7月)https://www.mext.go.jp/content/20200702-mxt_jogai01-000007843_004.pdf
- 総務省統計局「なるほど統計学園(初級)ヒストグラム」https://www.stat.go.jp/naruhodo/4_graph/shokyu/histogram.html
- 総務省統計局「なるほど統計学園」箱ひげ図 https://www.stat.go.jp/naruhodo/4_graph/shokyu/hakohige.html
- 大学入試センター「令和7年度共通テスト 試作問題『情報』の概要」(2022年11月9日公表)
- 文部科学省「令和6年度学校保健統計」確定値(令和7年2月12日公表)
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