情報Ⅰ 最強120講義

【情報Ⅰ 第29講】色の表現(RGB・CMYK・色の三属性)|なぜ画面は足すと白、印刷は足すと黒になるのか

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今日の一問
画面では光を全部足すとになるのに、印刷では色を全部足すとに近づきます。真逆に見えるこの2つが、なぜどちらも「混色」と呼ばれるのでしょうか。そして、そもそもなぜ色は3つの数字で足りるのでしょうか。
——さて、どこから手をつける?
答えと考え方は、この記事の中で順を追って解説します。

第29講 色の表現(RGB・CMYK・色の三属性)/共通テスト重要度 A/情報Ⅱ接続:(2) コミュニケーションとコンテンツ・(3) 情報とデータサイエンス。この講は『藤原進之介の最強120講義』第2部(コミュニケーションと情報デザイン)にあたります。

1. この講の問い

画面では光を全部足すとになるのに、印刷では色を全部足すとに近づきます。真逆に見えるこの2つが、なぜどちらも「混色」と呼ばれるのでしょうか。そして、そもそもなぜ色は3つの数字で足りるのでしょうか。

2. 結論

① 加法混色と減法混色が逆に見えるのは、光を足しているか、光を引いているかの違いにすぎません。ディスプレイは自分で光を出すので足すほど明るくなり、印刷物は当たった光を吸収して残りを返すので、インクを足すほど暗くなります。

② 色が3つの数字で表せるのは、人間の目に3種類の受容器(錐体)しかないから。色は物理量ではなく、人間の知覚の再現です。

③ RGBは機械の都合に合わせた座標、色の三属性(色相・明度・彩度)は人間の都合に合わせた座標。同じ色を、目的に合う座標系で書き直しているだけです。

3. なぜそうなるのか

3-1. 国の一次資料は、色について何を書いているか

出発点を固定します。文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅰ』教員研修用教材」第2章(令和2年)は、色の表現をこう定義しています。

画素(ピクセル)に色の情報を含めて表現することで色のついた画像を表現できる。色を表すには,光の三原色であるRed,Green,Blueを組み合わせて表現する方法(加法混色)と塗料などの色の三原色であるCyen(シアン),Magenta(マゼンタ),Yellow(イエロー)を組み合わせて表現する方法(減法混色)がある。プリンタなどでは,この3つの色に加えて輪郭線を表すKey Plate(キープレート)として黒色を加えて使用されることが多い。文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅰ』教員研修用教材」第2章(令和2年)

同じページの図表7「色の表現」に書かれている式は、次の2本だけです。

  • 赤 + 緑 + 青 =
  • シアン + マゼンタ + イエロー =

(教材の表記は「Cyen」ですが、英語の綴りは Cyan です。検索するときは Cyan で引いてください。)

国の教材が書いているのは、ここまでです。 なぜ足すと白になるのか、なぜ足すと黒になるのか、なぜ3色なのか——理由は一行も書かれていません。この講は、その空白を埋めるための講です。

3-2. 加法混色:ディスプレイは、自分で光を出している

ディスプレイの1画素は、赤・緑・青に光る3つの小さな光源でできています。画面は「光っていない状態」が黒です。何も出していないから黒い。

そこに赤を出せば赤が見える。赤と緑を同時に出せば、目には赤の光と緑の光が両方同時に届きます。届く光が増えたのだから、明るくなるのは当たり前です。3つ全部を最大まで出せば、届く光が最も多い状態になる。それが白です。

この式は暗記事項ではありません。足し算をしているのだから増える、それだけの話です。「加法」という名前が、そのまま説明になっています。中間の色も同じ原理で決まります。

  • 赤 + 緑 = イエロー
  • 緑 + 青 = シアン
  • 赤 + 青 = マゼンタ

出てきた3色に注目してください。イエロー・シアン・マゼンタ——減法混色の三原色そのものです。この一致は偶然ではありません。次の節で、これが減法混色の正体になります。

イエローマゼンタシアン加法混色(足すほど明るい)
加法混色。黒(=光が無い)から始めて光を足していく。3つ全部で白になる

3-3. 減法混色:印刷物は、光を出していない

紙は光りません。印刷物が見えているのは、部屋の白い光(赤・緑・青が全部混ざった光)が紙に当たって跳ね返ってきているからです。何も刷っていない紙が白いのは、当たった光をほぼそのまま返しているからで、印刷は「白い状態」がスタートです。

ここが決定的な違いです。画面は黒から始めて光を足していき、印刷は白から始めて光を引いていく。ではインクは何をしているのか。インクは、当たった光の一部を吸い取るフィルタです。

前の節で「緑 + 青 = シアン」でした。これを逆に読むと、シアンとは、白い光から赤を取り除いた色ということになります。だから次の対応が成り立ちます。

  • シアンのインクは、い光を吸収する
  • マゼンタのインクは、の光を吸収する
  • イエローのインクは、の光を吸収する

(この3行は、教材の図表7に書かれた対応関係から私が読み解いたものです。教材自体はここまで書いていません。)

そうすると、3色を重ね刷りしたときに何が起きるかは、計算しなくても分かります。赤も緑も青も、それぞれのインクに吸い取られる。返ってくる光がなくなるので、暗くなる。「減法」という名前も、そのまま説明になっています。引き算をしているのだから減るのです。

シアンマゼンタイエロー減法混色(足すほど暗い)
減法混色。白(=光が全部返ってくる)から始めて光を引いていく。3つ全部で黒になる

ここが本講の芯です。 加法混色と減法混色は、正反対の規則を2つ暗記するものではありません。どちらも「目に届く光の量」の話をしていて、片方は足しており、片方は引いている。 ディスプレイが足し算なのは自分で光を出すから、印刷が引き算なのは当たった光を返すだけだから。物体の側の事情が、演算の向きを決めているのです。

3-4. なぜプリンタには K(黒)が別にあるのか

理屈のうえでは、シアン・マゼンタ・イエローを全部重ねれば黒になるはずです。それなのに教材は「輪郭線を表す Key Plate として黒色を加えて使用されることが多い」と書いています。K が別立てで存在すること自体が、「CMYの3色だけでは足りない」という事実の証拠です。国の教材は理由まで書いていないので、ここでは理由を断定しません。試験対策としては次の2点で十分です。

  • K は Black の K ではなく、Key Plate の K(教材が明記しています)。「Blue と紛らわしいから K」という説明を見かけますが、国の一次資料が採っているのは Key Plate です
  • CMYK は4色、「色の三原色」は CMY の3色。この2つを混同させる選択肢が作れます

3-5. なぜ3原色なのか——目の側に3種類しかないから

「光の三原色が赤・緑・青である」のは、光の性質ではありません。人間の目の仕様です。

日本視覚学会の学会誌『VISION』の解説記事(豊橋技術科学大学・鯉田孝和、Vol.32 No.4, 2020)は、この点をはっきり書いています。

わたしたちが見る色は 3 原色の組み合わせで表現できます.なぜ 3 色で表現できるのかと言うと,眼にある光センサー(光受容器)が 3 種類だからです.光受容器の実体は錐体細胞で,L 錐体,M 錐体,S 錐体の三種類があります.鯉田孝和「なぜ赤・緑・青錐体ではなくて L, M, S 錐体と呼ぶの?」『VISION』Vol.32, No.4, 123–125, 2020(日本視覚学会)

光そのものには、無限に多くの波長があります。 それを人間は3種類の受容器で受けている。だからどんな光が来ても、脳に届く情報は3つの数値に潰されます。色を3つの数字で表せるのは、そこから先に情報が残っていないからです。

ここから面白い帰結が出ます。無限にある波長の組み合わせが3つの数値に潰されるのだから、「物理的には違う光なのに、まったく同じ色に見える組み合わせ」が必ず存在するということです。

ディスプレイが成立しているのは、まさにこれのおかげです。画面は太陽光のスペクトルを再現しているわけではありません。赤・緑・青の3つの光を、目の3つの受容器が太陽光と同じ反応をするような比率で出しているだけです。目が3種類でなかったら、この手品は通用しません。

同じ記事は、ヒトの錐体の感度のピークが S は 441 nm、M は 541 nm、L は 566 nm にあることも示しています。566 nm は黄緑から黄のあたりで、L錐体は「赤の受容器」ではありません。記事は、錐体を RGB と呼ぶのは不適切で L(長波長)・M(中波長)・S(短波長)と呼ぶべきだとし、RGB という呼び名は19世紀のヤング・ヘルムホルツの三色説に由来する歴史的なものだと説明しています。実際、L錐体を1つだけ狙い撃ちで刺激した実験では、見えた色はほとんどの場合「白」だったと報告されています。

色は物理量ではなく、人間の知覚の再現である。 これは第33講(音のデジタル化)とまったく同じ構造です。標本化周波数を人間の可聴域から決めたのと同じように、色の仕様も人間の目から決まっている。情報Ⅰのデジタル化は、機械の都合ではなく人間の都合で数値が決まる場面が繰り返し出てきます。

3-6. なぜ画面の色と印刷の色が一致しないのか

デザインの現場で必ず起きる問題です。画面で見た鮮やかな色が、印刷したら沈んでしまう。原因は、RGBで出せる色の範囲と、CMYKで出せる色の範囲が、そもそも一致していないことにあります。片方にしか存在しない色があるので、変換すれば必ずどこかが失われます。

なお、この「出せる色の範囲」を指す「色域」という語は、学習指導要領解説・情報Ⅰ教員研修用教材・情報Ⅱ教員研修用教材・IPAのITパスポート/基本情報の両シラバスのいずれにも1件もありません(後述の語数調査で確認)。用語として覚える対象ではなく、構造として理解する対象です。

これは第32講「デジタル化では必ず何かを捨てる」と同じ構造です。標本化で時間を捨て、量子化で振幅を捨て、圧縮(第36講)で冗長性を捨てたのと同じように、色空間の変換でも、表現できない色を捨てているのです。

3-7. なぜ色の三属性が必要なのか——座標系を目的で選ぶ

#4A90D9 という色を「もう少し明るく、でも同じ色味で」と直したいとします。RGBの (74, 144, 217) をどういじればよいでしょうか。3つとも同じ数だけ足す? 明るくはなりますが青みは薄まります。比率を保って倍にする? 217はすぐ255で頭打ちです。RGBは「明るくしたい」「鮮やかにしたい」という人間の意図を、直接には操作できない座標系なのです。

そこで、人間の感じ方に沿って軸を取り直したのが色の三属性です。

属性 何を表すか 日常語で言うと
色相(Hue) 赤・黄・緑・青…という色味そのもの 「何色か」
明度(Value) 明るさの度合い 「明るいか、暗いか」
彩度(Chroma) 鮮やかさの度合い 「はっきりしているか、くすんでいるか」

この3つは、日本産業規格 JIS Z 8721:1993「色の表示方法―三属性による表示」(1993年5月31日発行、2024年10月21日確認)が定めています。同規格の適用範囲は「表面色の色知覚の三属性(色相,明度,彩度)を尺度化して表示する方法」。明度は理想的な黒を0・理想的な白を10とし、彩度は無彩色を0とします。有彩色は 5R 4/10 のように HV/C の形で書きます。

RGBと色の三属性は、同じ色を違う座標系で書いたものです。 座標系そのものに正解はなく、目的に合うほうを選ぶ——これは第21講(抽象化・可視化・構造化)で扱った発想とまったく同じです。機械に送るならRGB、人間が調整するなら三属性。デザインソフトのカラーピッカーに両方の入力欄があるのは、そのためです。

3-8. 語数調査——色は情報Ⅰの「本文の空白」である

本書はキーワードごとに、国の一次資料に何回その語が出てくるかを数えています。色について数えると、はっきりした結果が出ました。

調べた範囲:学習指導要領解説 情報編(全文。共通教科の部と専門教科情報科の部に分けて集計)/情報Ⅰ教員研修用教材 第0〜4章(章ごとの全PDF)/情報Ⅱ教員研修用教材 序章・第1章・第2章・第3章前半・第3章後半・第4章・第5章(全PDF)/IPA ITパスポート試験シラバス Ver.6.5/IPA 基本情報技術者試験シラバス Ver.9.2。いずれもテキスト化して機械計数(2026年8月3日)。

解説(共通教科の部) 解説(専門教科の部) 情報Ⅰ教材 情報Ⅱ教材
加法混色 0 0 2(第2章) 0
減法混色 0 0 2(第2章) 0
三原色 0 0 2(第2章) 0
RGB 0 0 3(半角2+全角1) 0
CMYK 0 0 1 0
色相 0 2 0 0
明度 0 1 0 0
彩度 0 1 0 0
色の三属性 0 1 0 0
表色系 0 1 0 0
混色 0 1 4(4件とも「加法混色」「減法混色」の一部で、独立した用法は0) 0
配色 0 11 2 5
色域 0 0 0 0
錐体 0 0 0 0

読み取れることは3つです。

① 色の三属性は、共通教科の解説には存在しない。 「色相」「明度」「彩度」「色の三属性」「表色系」「混色」は、学習指導要領解説 情報編には確かにあります。しかし全件が専門教科情報科(科目「情報デザイン」および静止画のコンテンツ制作の科目)の記述で、共通教科である情報Ⅰ・情報Ⅱの記述には1件もありません。情報Ⅰ・情報Ⅱの教員研修用教材にも0件です。

数え方の落とし穴。 情報Ⅰ教員研修用教材 第4章で「明度」を素朴に検索すると2件ヒットします。しかし2件とも「透明度」(ダイヤモンドのデータの列名)の一部で、明度の意味では0件です。件数だけを見ると扱いを見誤ります。語数調査は必ず1件ずつ用法を確認してください。

② それでも共通テストの範囲に入っている。 IPA ITパスポート試験シラバス Ver.6.5 の「マルチメディア応用(1)グラフィックス処理 ①色の表現」は、こう書いています。

・コンピュータでは色が,光の3原色(RGB),色の3原色(CMY),CMYKなどで表現されていること
・色は,色相,明度,彩度によって表現されていること 用語例:加法混色,減法混色IPA「ITパスポート試験 シラバス Ver.6.5」

基本情報技術者試験シラバス Ver.9.2 も同じ位置に「コンピュータでの色の表現(色相,明度,彩度など)に関する特徴を理解する。用語例 光の3原色(Red,Green,Blue),色の3原色(Cyan,Magenta,Yellow),加法混色,減法混色,コントラスト」を置いています。高校の共通教科の解説には無いのに、情報処理技術者試験の最下位レベルには最初から載っている——本書がこれまでに見つけた「本文の空白」(2の補数・サブネット・VPNなど)とまったく同じ構図です。

③ 共通教科の解説で「色」が色彩の意味で使われる箇所は、ほぼ1文しかない。 解説 情報編の共通教科の部で「色」は11件ヒットしますが、うち3件は「特色ある教育課程」の「特色」で色の意味ではありません。残る8件のうち7件は、情報Ⅱ(3)の学習活動例のたった1文の中にあります。

例えば,分類の例としてカラー画像のデータについて特定の5色に減色する場合,どのような考え方で近い色を選択すればよいかを表現し,任意の色がどの色に近いかを判断するプログラムを作成し,実際に5色に減色した画像を作成する文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編』情報Ⅱ(3)の学習活動例

最後の1件は、障害のある生徒への配慮として「文字と背景の色を調整したりする」という記述です。つまり、国が共通教科の解説で色をはっきり書いているのは、情報デザインの文脈ではなく、情報Ⅱのデータサイエンスの文脈なのです。 これが第6ブロックの土台になります。

4. 手で確かめる

4-1. 16進表記とRGBの相互変換

16進2桁がちょうど8ビット(0〜255)に対応するので、#RRGGBB の6桁はR・G・B各8ビット、合計24ビットになります(基数変換そのものは第40講、データ量の計算は第34講の担当です)。#4A90D9 を分解します。

  • 4A → 4 × 16 + 10 = 74
  • 90 → 9 × 16 + 0 = 144
  • D9 → 13 × 16 + 9 = 217

よって (R, G, B) = (74, 144, 217)。逆向きに 74 = 4 × 16 + 10 → 4A、144 = 9 × 16 + 0 → 90、217 = 13 × 16 + 9 → D9#4A90D9 に戻ります。Python で検算します(実際に実行して得た出力です)。

for hx in ["#FF0000", "#00FF00", "#0000FF", "#4A90D9"]:
    r, g, b = int(hx[1:3], 16), int(hx[3:5], 16), int(hx[5:7], 16)
    print(f"{hx} -> R={r} G={g} B={b}")
for rgb in [(74, 144, 217), (255, 165, 0), (128, 128, 128)]:
    print(f"{rgb} -> #{rgb[0]:02X}{rgb[1]:02X}{rgb[2]:02X}")
#FF0000 -> R=255 G=0 B=0
#00FF00 -> R=0 G=255 B=0
#0000FF -> R=0 G=0 B=255
#4A90D9 -> R=74 G=144 B=217
(74, 144, 217) -> #4A90D9
(255, 165, 0) -> #FFA500
(128, 128, 128) -> #808080

4-2. グレースケール変換——「知覚が仕様を決めている」が数値で見える

カラー画像を白黒にするとき、R・G・Bの3つの数値を1つにまとめる必要があります。素朴に考えれば単純平均、つまり (R + G + B) ÷ 3 です。ところが、これで赤・緑・青を変換すると3色とも同じ値になります

  • 赤 (255, 0, 0) → (255 + 0 + 0) ÷ 3 = 85
  • 緑 (0, 255, 0) → (0 + 255 + 0) ÷ 3 = 85
  • 青 (0, 0, 255) → (0 + 0 + 255) ÷ 3 = 85

白黒にした瞬間、赤も緑も青も区別がつかなくなる。 グラフを赤・緑・青で塗り分けた資料を白黒コピーすると読めなくなるのは、これが理由です。

しかし人間の目は、同じ強さの赤・緑・青を同じ明るさには感じません。緑が最も明るく、青が最も暗く見える。 そこで放送の世界では、重みをつけた式が規格として定められています。国際電気通信連合の勧告 Rec. ITU-R BT.601-5(1982年初版・1995年改訂)の 3.5.1 は、輝度信号をこう定義しています。

E’Y = 0.299 E’R + 0.587 E’G + 0.114 E’BRecommendation ITU-R BT.601-5, §3.5.1

(厳密には、これはガンマ補正後の信号から作る「ルーマ」という量で、物理的な輝度そのものではありません。ただし緑が最も重く、青が最も軽いという重みの大小関係が、人間の目の感度を反映している点は変わりません。)この重みで計算し直します。

RGB 単純平均 加重平均(BT.601)
(255, 0, 0) 85.000 76.245
(0, 255, 0) 85.000 149.685
(0, 0, 255) 85.000 29.070
(255, 255, 255) 255.000 255.000
(0, 0, 0) 0.000 0.000
#4A90D9 (74, 144, 217) 145.000 131.392
元の色単純平均加重平均8576851508529単純平均では3色とも同じ灰色になってしまう
単純平均の列は3つとも同じ灰色。加重平均の列だけが、赤・緑・青を明るさで区別できている

内訳も手で追えます。#4A90D9 なら 0.299 × 74 + 0.587 × 144 + 0.114 × 217 = 22.126 + 84.528 + 24.738 = 131.392。一方、単純平均は (74 + 144 + 217) ÷ 3 = 435 ÷ 3 = 145.000。同じ色なのに14ほど違います。

また、3つの重みの合計は 0.299 + 0.587 + 0.114 = 1 です。だから白 (255, 255, 255) は変換しても255のまま。重みが「配分」であることが、この1点から確認できます。

注目してほしいのはここです。 0.299・0.587・0.114 は、物理から出てくる定数ではありません。人間の目の感度に合わせて、規格として人が決めた値です。だから規格が変われば値も変わります。「知覚が仕様を決めている」が、そのまま数値になって現れている——これが本講で最も具体的な実例です。

4-3. 減色——色を3次元空間の点として扱う

学習指導要領解説が情報Ⅱ(3)の学習活動例に挙げている「カラー画像を特定の5色に減色する」を、手で1画素分だけやってみます。パレットを黒 (0,0,0)・白 (255,255,255)・赤 (255,0,0)・緑 (0,255,0)・青 (0,0,255) の5色とし、#4A90D9 = (74, 144, 217) を最も近い色に置き換えます。「近い」とは、R・G・Bを3つの座標と見たときの距離です。ルートを取る前の「距離の2乗」で比べれば大小関係は変わりません。

代表色 距離の2乗の計算 距離の2乗
74² + 144² + (217−255)² = 5476 + 20736 + 1444 27656
(74−255)² + (144−255)² + (217−255)² = 32761 + 12321 + 1444 46526
74² + (144−255)² + 217² = 5476 + 12321 + 47089 64886
74² + 144² + 217² = 5476 + 20736 + 47089 73301
(74−255)² + 144² + 217² = 32761 + 20736 + 47089 100586

最小は青。よって #4A90D9に置き換わります(距離は 27656 の平方根で約 166.30)。これを全画素について繰り返せば減色になります。この時点で、色はもう「見せるもの」ではありません。座標であり、距離を測る対象です。 第6ブロックへの橋が、ここに架かります。

5. 共通テストではこう出る(重要度 A)

① 加法混色・減法混色の判定。 「ディスプレイはどちらか」「赤・緑・青を全部混ぜると何色か」「シアン・マゼンタ・イエローを全部混ぜると何色か」という直球です。引っかけは、光の三原色と色の三原色の入れ替え。「色の三原色を全部混ぜると白になる」という選択肢は誤りですが、丸暗記だとどちらの三原色の話か見失います。「光を足しているのか、引いているのか」で毎回考え直せば、絶対に間違えません。

② 16進RGB表記の読み取り。 #FF0000 が赤、#00FF00 が緑、#0000FF が青、#FFFFFF が白、#000000 が黒。ここは第40講(基数変換)の応用です。#FFFF00(赤+緑)が黄になることまで、加法混色から導けるようにしておいてください。

③ 色数とビット数の関係。 1画素24ビットで 2 の24乗 = 16,777,216色。「n ビットで 2 の n 乗通り」と「m 通りを表すには何ビット必要か」は逆向きの問いです。データ量の計算そのものは第34講の担当です。

実際の出題傾向。 大学入試センター「令和8年度大学入学共通テスト 問題評価・分析委員会報告書」の『情報Ⅰ』問題作成部会の見解は、第2問Bについてこう記しています。

Bは,論理演算を用いて画像の透過を実現するための一連のプロセスを題材とすることによって,論理演算や画像のデジタル表現の理解を問う問題である。……問3は画像編集ソフトウェアを題材にしており,画素数と階調のヒストグラムを正確に読み解く必要があった。大学入試センター「令和8年度大学入学共通テスト 問題評価・分析委員会報告書」『情報Ⅰ』問題作成部会の見解

同じ資料は、問2の正答率が約3割にとどまったことについて「ビット演算の結果が画像としてどのような結果になったかを理解できていない」と分析しています。色を「数値の組」として扱えるかどうかが、そのまま得点差になっているわけです。色の表現は、論理演算(第43講)や基数変換とつなげて理解しておく必要があります。色そのものを問う独立した設問より、画像・デザイン・データ量の問題の部品として埋め込まれる形が主流です。だからこそ、暗記ではなく原理で持っておくほうが効きます。

6. 情報Ⅱではこうなる

6-1. 情報Ⅱ教員研修用教材に、混色もRGBも三属性も出てこない

まず事実から。情報Ⅱ教員研修用教材(序章・第1〜5章、第3章は前半・後半の両方)の全文に、「加法混色」「減法混色」「三原色」「RGB」「CMYK」「色相」「明度」「彩度」がすべて0件です。

これは「情報Ⅱでは色を扱わない」という意味ではありません。扱い方が変わって、語彙ごと入れ替わっているという意味です。情報Ⅱで色が現れる場所は2つあり、どちらも情報Ⅰとは役割が違います。

6-2. (2) コンテンツの側——色は「検査される項目」になる

情報Ⅱ教員研修用教材 第2章 学習10(コンテンツの発信と改善)は、アクセシビリティの文脈で色に触れます。JIS X 8341-1(高齢者・障害者等配慮設計指針)を引いたうえで、こう書いています。

その他にも,色覚障害に配慮した配色の設定などがある。……実際にコンテンツを制作する際には,Webページの代替テキストや配色のコントラスト比など,アクセシビリティをチェックするツールがあるので,それらを活用して改善することができる。文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅱ』教員研修用教材」第2章 学習10

情報Ⅰでは「色をどう作るか」だったものが、情報Ⅱでは「その配色でよいかをツールで検査し、改善する」対象になります。 作るだけでなく、測って直すところまでが仕事になるのです(配色への配慮そのものは第23講で扱います)。

6-3. (3) データサイエンスの側——色は「距離を測る座標」になる

先に引いた情報Ⅱ(3)の学習活動例は「任意の色がどの色に近いかを判断するプログラムを作成し」と書いていました。「色が近い」を判断するには、色を空間の点として扱い、距離を測るしかありません。これは情報Ⅱ教員研修用教材 第3章後半 学習16 のクラスタリングそのものです。同章は距離についてこう書いています。

距離については,ここでは通常の距離(ユークリッド距離)を用いるが,他にはマンハッタン距離やジャッカード係数,コサイン類似度などがあり,データの特性に応じて選択する。……データの値の尺度やデータの単位が異なる場合などは,そのまま距離を求めることが適切でない場合もある。このような場合には,スケーリングしてから距離を求める必要がある文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅱ』教員研修用教材」第3章後半 学習16

ここで、色は珍しく素直な題材になります。R・G・Bはどれも0〜255という同じ尺度なので、スケーリングが要らない。 身長(cm)と体重(kg)を混ぜて距離を測るときに必ず起きる問題が、色では起きません。教材が「例外に注意せよ」と書いている条件を、色はたまたま満たしている——だから減色は、クラスタリングの入門題材として国が名指しするのに向いているのです。

さらに同じ第3章後半の学習15(k-近傍法)は、手書き数字画像の分類について「ここでの近傍を求める距離は、784次元のユークリッド距離を計算している」「距離が何であるかを生徒に理解させるには、階調(0〜255)ではなく、0と1で2値化されたデータと考えると分かりやすくなる」と書き、学習17(ニューラルネットワーク)は「入力は手書き文字画像のピクセルごとのグレースケールの階調を値にして表した配列である」と書いています。画素の値は、そのまま入力ベクトルの成分になります。

6-4. 役割の交代

観点 情報Ⅰ 情報Ⅱ
色とは何か 見せるもの(表現の要素) 分析される数値(空間の座標)
RGBの3つの数値 画面に出す指示 3次元空間の座標
「色が近い」の意味 感覚的に似ている 距離が小さい(ユークリッド距離)
3色を1色にする操作 グレースケール化=見た目の変換 次元削減(3次元→1次元)=前処理
減色 ファイルを軽くする操作(GIFは256色以下) クラスタリング=分類のアルゴリズム
気にすること 画面と印刷で色が合うか どの距離を使うか、スケーリングは要るか
誤りが起きたとき 色が思ったとおりに出ない 間違ったクラスタに分類される

そして、この役割交代は国の資料の語数そのものに現れています。 学習指導要領解説 情報編の共通教科の部で、「色」が色彩の意味で使われる8件のうち7件が、情報Ⅱ(3)の減色の1文の中にあります。情報Ⅰの(2)「コミュニケーションと情報デザイン」の記述には0件です。

国が共通教科の解説で色について最も具体的に書いた文章は、デザインの話ではなく、機械学習の話でした。 色は情報Ⅱで消えるのではなく、データサイエンスの側へ引っ越しているのです。

情報Ⅱは2026年8月時点では選択科目で、開設している高校はまだ多くありません(情報Ⅱ全体の見取り図は第109講にまとめています)。しかし #4A90D9 を (74, 144, 217) と読める受験生は、その瞬間に「色を3次元空間の点として扱う」という情報Ⅱの入口に立っています。16進6桁は、暗号ではなく座標です。

出典

  • 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編』平成30年7月(2026年8月3日取得)PDF
  • 文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅰ』教員研修用教材」第2章 コミュニケーションと情報デザイン 令和2年(2026年8月3日取得)PDF
  • 文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅱ』教員研修用教材」第2章・第3章後半 令和2年(2026年8月3日取得)配布ページ
  • 情報処理推進機構(IPA)「ITパスポート試験 シラバス Ver.6.5」/「基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2」(2026年8月3日取得)
  • 大学入試センター「令和8年度大学入学共通テスト 問題評価・分析委員会報告書」『情報Ⅰ』問題作成部会の見解(2026年8月3日取得)PDF
  • 日本規格協会 JIS Z 8721:1993「色の表示方法―三属性による表示」1993年5月31日発行/2024年10月21日確認(2026年8月3日取得)
  • Recommendation ITU-R BT.601-5 “Studio encoding parameters of digital television for standard 4:3 and wide-screen 16:9 aspect ratios” (1982-1986-1990-1992-1994-1995), §3.5.1(2026年8月3日取得)PDF
  • 鯉田孝和「なぜ赤・緑・青錐体ではなくて L, M, S 錐体と呼ぶの?」『VISION』Vol.32, No.4, 123–125, 2020(日本視覚学会)DOI: 10.24636/vision.32.4_123(2026年8月3日取得)

執筆:藤原進之介(数強塾 代表)

オンライン数学専門塾「数強塾」代表。累計3,500名以上の中高一貫校生を指導してきました。東進ハイスクール・東進衛星予備校・代々木ゼミナールなど出講実績あり。情報Ⅰの参考書を複数執筆しています。本記事は『藤原進之介の最強120講義』第29講の原稿を、Web用に再構成したものです。数値はすべて一次資料(文部科学省・大学入試センター・IPA・日本規格協会・ITU の公表資料)で確認し、計算はすべて独立に検算しています。

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