情報Ⅰ 最強120講義

データの可視化と伝え方|情報Ⅰ 最強120講義 第95講

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こんにちは、数強塾代表の藤原進之介です。この記事は参考書『藤原進之介の最強120講義』の第95講「データの可視化と伝え方」のWeb版です。共通テスト「情報Ⅰ」での重要度はA(頻出。得点差がつく)、情報Ⅱでの接続先は(3)情報とデータサイエンス(2)コミュニケーションとコンテンツです。

第4部 情報通信ネットワークとデータの活用。

同じデータから、伝わる図と伝わらない図ができてしまいます。良い図は、何によって決まるのか。この講は「グラフを作る側の作法」に絞ります。ゼロ切りや期間の切り取りといった「読み手を誤らせる手口」は、第96講 グラフの嘘を見抜くで正面から扱っています。

結論

この講の結論(3つ)

1. 最初に決めるのは図の種類ではありません。伝えたい1つのメッセージです。「売上を見せる」ではなく「4月以降に伸びが止まったことを見せる」と決まって、はじめて図が選べます。

2. 図は「データの尺度」と「見せたい問い」の2本が揃うと、ほぼ機械的に決まります。尺度は第80講、問いはこの講が担当します。

3. 強調とは、他を弱めることです。目盛線・凡例・色数・装飾を減らすほど、データそのものが見えるようになります。

1. 可視化は「絵を描くこと」ではなく「読み手の問いに答えること」

文部科学省の「情報Ⅰ」教員研修用教材 第4章 学習24「データの形式と可視化」は、この講の中心にある問いを、自分で立てて自分で答えています。

データの可視化は何のために行うのだろうか。可視化することによって,問題を発見することができ,それに対して詳細な分析や解釈,解決策を考えることができるからである。

(文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅰ』教員研修用教材」第4章、令和2年)

「きれいに見せるため」とは書いていません。問題を発見するためと書いてあります。目的が先にあって図はその手段だ、という順序が、国の教材の時点で確定しているのです。

総務省統計局の『統計学習用補助教材』は、グラフの章の冒頭でもっと直接的に書いています。

統計は、データを集めて集計しただけでは、単なる数字の集まりであり、そこから何が読み取れるか必ずしも明らかではありません。統計を作成するときは、必ず、「○○について知りたい!」という目的があるはずですから、得られた結果を、その目的に合わせて上手に使うことが重要です。

同じ統計局の「なるほど統計学園(上級編)グラフ作成の基本」には、注意点が5つ、番号を振って並んでいます。順番が重要です。

総務省統計局「グラフ作成の注意点」5項目

① 統計データを正しく読み取る
主題を明らかにする
的確なグラフを選択する
④ デザインを工夫する
⑤ 補足事項の記載

「主題を明らかにする」が2番、「的確なグラフを選択する」が3番です。国の統計機関も、主題(メッセージ)を決めるのが先で、グラフ選びは後だという順序で教えています。2番の本文はこうです。

一つのグラフでたくさんの事柄を示そうとするとかえって分かりにくくなることがあります。グラフ一つにつき主題は一つに絞りましょう。

私が生徒に最初に言うのはここです。「このグラフで何を言いたいのか、一文で書けますか」。書けないなら、まだ図を作る段階ではありません。「売上のグラフ」は主題ではなく、「4月以降に伸びが止まった」が主題です。前者を目標にすると、売上に関するあらゆる数字を1枚に詰め込みたくなり、結果として何も伝わらない図ができます。後者を目標にすると、4月の前後さえ比べられればよいと分かるので、要らないものを落とせるようになります。

そもそも近代的なグラフは、この目的から生まれました。総務省統計局の解説によれば、ナイチンゲールは戦地の陸軍病院で、兵士の多くが戦傷そのものではなく治療や衛生状態の不備で死んでいることを突き止め、「統計になじみのうすい国会議員や役人にも分かりやすいように、当時としてはめずらしかったグラフを用いて、目で見てわかりやすいプレゼンテーションを工夫しました」。可視化は、動かしたい相手がいたから発明された技術なのです。

2. 図は「尺度」と「問い」の2本の軸で決まる

主題が決まったあと、図はどう選ぶのか。決め手は2本あります。

軸1:データの尺度第80講 データの種類と尺度)。名義・順序・間隔・比例のどれか。これが決まると、そもそも使えない図が消えます。名義尺度に折れ線グラフは引けません(順番に意味がないのだから、線でつなぐこと自体が嘘になります)。順序尺度を大きい順に並べ替えてはいけません(優・良・可の順序を壊すことになります)。教員研修用教材が「尺度と分析の方法があっていない例」として挙げているのが、まさに「順序尺度のデータをカテゴリー別に集計した結果をカテゴリーの順序を無視して棒グラフや円グラフに表してしまう」です。

軸2:見せたい問い。ここがこの講の担当です。総務省統計局は、グラフの種類ごとに「何を見るのに向いているか」を整理した表を公開しています(◎=とても望ましい、○=望ましい)。

グラフ 時系列 横断面 平均 散らばり 割合 相関
棒グラフ
折れ線グラフ
円グラフ・帯グラフ
ヒストグラム
箱ひげ図
レーダーチャート
散布図
統計地図

総務省統計局「なるほど統計学園」グラフ作成の基本 の表から、本講で扱う行を抜き出して整理したもの

列を見るとどの図を使うべきかが決まり、行を見るとその図が何を捨てているかが分かります。「時間とともにどう変わったか」なら折れ線グラフだけが◎。「A校とB校でどちらが多いか」なら棒グラフが◎。「内訳の割合」なら円グラフ・帯グラフが◎で、ばらつきならヒストグラムか箱ひげ図(第85講)2つの量の関係なら散布図(第86講)です。

「困ったら棒グラフ」と言われる理由の正体

棒グラフは4つの列に印がついているのに、円グラフは実質1つしかありません。円グラフが悪い図なのではありません。円グラフは割合を見せるという1つの仕事のためだけの道具であり、それ以外の仕事に流用されるから事故が起きるのです。

同じことを、統計局の『統計学習用補助教材』はQ&Aの形で書いています。目的を言えば図が返ってくる、という形式そのものが答えになっています。

○量の大小をあらわすときには、どのグラフを使えばいいですか? →棒グラフを使えば、量の大小を、棒の高さであらわすことができます。

○増えている、減っている、といったことをあらわすには、どのグラフを使えばいいですか? →折れ線グラフを使えば、線の傾きで、増減をあらわすことができます。

○割合をあらわすときには、どのグラフを使えばいいですか? →円グラフや帯グラフを使います。三角グラフを使うこともあります。

○データの散らばり具合をあらわすときには、どのグラフを使えばいいですか? →ヒストグラムや箱ひげ図を使います。

○2つの量に関係があるかどうかをあらわすときには、どのグラフを使えばいいですか? →散布図を使います。

なお尺度は「値の向き」まで縛ります。統計局はレーダーチャートについて「通常、外に行くほど(データ値が大きいほど)良いとなるようにデータを選びます」と書き、体力測定を例に、50m走はタイムが短いほど良いのだから逆数(秒速)に直してから描く必要があると説明しています。遅い人ほど外側に大きく描かれる図は、形が意味を持ちません。

3. なぜグラフに向き不向きがあるのか——人は長さには強く、角度と面積には弱い

ここがこの講で一番おいしいところです。なぜ棒グラフは守備範囲が広く、円グラフは狭いのか。表を暗記する必要はありません。理由は人間の側にあります。

グラフは、数値を「目で比べられるもの」に翻訳する装置です。翻訳先として使えるのは、位置・長さ・角度・面積・体積・色の濃さ、といったもの。そして人間は、これらすべてを同じ精度で比べられるわけではありません。

証拠は、統計局が棒グラフと円グラフを説明するときの言葉づかいに、そのまま出ています。

棒グラフ:棒グラフは、縦軸にデータ量をとり、棒の高さでデータの大小を表したグラフです。

円グラフ:円グラフは、円を全体として、その中に占める構成比を扇形で表したグラフです。扇形の面積により構成比の大小がわかるので、構成比を示すのに使われます。

読み取りに使う物理量が違うのです。棒グラフは「長さ」を、円グラフは「角度と面積」を読ませています。そして——

目が比べられる精度の順番

位置と長さは正確に比べられます。同じ基準線から伸びた2本の棒は、10%の差でも見分けがつきます。

角度は苦手です。円の別々の位置に置かれた22%と25%の扇形は、どちらが大きいかを言い当てにくい。

面積はもっと苦手です。半径を2倍にした円は面積が4倍になりますが、目には「2倍ちょっと」に感じられます。

体積(立体グラフ)はさらに悪い。奥行きは情報を1ビットも増やさないのに、錯覚だけを足します。

同じ2つの数を、角度で見るか/長さで見るか左の2つは、どちらがどれだけ大きいか言えますか。右は一目で分かるはずです。正解はどちらの図も ア=22、イ=25(イはアの約1.14倍)。数値も塗りの色も同じで、違うのは表し方だけ。

図1 同じ2つの数を、角度で見るか/長さで見るか(数値も塗りの色も同じ)

円グラフでの差はア 79.2°、イ 90.0°で、差は10.8°しかありません。棒グラフなら、全長400ピクセルの目盛りで12ピクセルの長さの差として、基線からそろって並びます。イはアの 25 ÷ 22 = 約1.136倍。棒なら「少し長い」と即答できますが、扇形を離して2つ置かれると、多くの人は「同じくらい」と答えます。

この「知覚の特性」が分かると、教員研修用教材の次の課題の意味が分かります。学習24の展開3の問いは、こうです。

立体グラフや円グラフが誤解を招く表現であるとされるのはなぜか,調べてみよう。

国の教材は「立体グラフと円グラフは誤解を招く」と言い切ったうえで、理由は生徒に調べさせています。その答えが、いま書いた「人は角度と面積が苦手だ」です。円グラフの項目を7つに増やすと読めなくなるのは、7つの角度を同時に順位づけしなければならなくなるから。棒グラフなら7本でも順位はすぐ分かります。

知覚の特性が図の選択を決めている——この一文を持っておけば、グラフの向き不向きは暗記する対象ではなくなります。初めて見る図(バブルチャート、ツリーマップ、3D円グラフ)にも、同じ判定を自分で当てられます。

4. なぜ「引き算」が効くのか——強調とは、他を弱めること

図が伝わらない最大の原因は、情報が足りないことではありません。多すぎることです。

読み手が図から1つのことを読み取るとき、視線は何往復もしています。凡例が図の外にあれば「線の色を見る→凡例を見る→線に戻る」で3回。目盛線が10本あればその上を何度も横切る。7色に塗り分けてあれば、7つの色と7つの名前の対応を記憶にとどめながら読むことになります。この往復と記憶の負荷が、読み取りの精度を落とします。

強調について、決定的に大事なこと

強調とは、目立たせたいものを派手にすることではありません。それ以外を弱めることです。7項目すべてを鮮やかな別々の色で塗ると、どこにも強調は発生しません。全部が同じ強さで叫んでいるからです。5本を薄い灰色に落とし、2本だけを濃い色にすると、その2本が浮き上がります。同じインクの量で、伝わる情報だけが増える。

具体的な引き算は5つです。

並べ替える。統計局は棒グラフについて「データをどの順に並べるかは、とくに決まりはありません」としつつ、「あまり意味もなく並べてもグラフが見にくいので」として5通りを挙げています——ⅰ 多い順(または少ない順)/ⅱ 都道府県なら北から順/ⅲ 五十音順/ⅳ 横軸が時間なら時間の順/ⅴ 質問に対する回答なら質問票と同じ順。アンケート票の順のまま出すのは、5つのうちの1つでしかありません。言いたいことが「どれが多いか」なら、多い順に並べます。

色数を減らす。全項目に別々の色を割り当てるのは、色に何の意味も持たせていないのと同じです。

凡例をやめて、直接ラベルを書く。

目盛線は消せるだけ消す。0の基線1本で足りることは多い。

タイトルを「何のグラフか」ではなく「何が言えるか」にする。図のいちばん目立つ場所に結論を置けるのに、そこに質問文を置くのはもったいない。

③は私の趣味の話ではありません。川崎市総務局が職員向けに出している「公文書作成におけるカラーUD(ユニバーサルデザイン)ガイドライン」は、折れ線グラフの改善例(事例3)の1番目に「凡例をやめ、折れ線の近くに文字を表記した。」を挙げ、棒グラフの改善例(事例4)でも「凡例をやめ、棒グラフ内に文字を表記」と書いています。行政の実務でも、凡例を消すことが「改善」として扱われています。

ただし引き算には例外があります。統計局は帯グラフについてこう書きます。

「項目を並べる順番を途中で変えると、割合の変化がグラフを見てわからなくなってしまうので、一つのグラフの中では順番は変えないでおきます。」

並べ替えが効くのは「比較」の図であって、「変化を追う」図では、順序を固定することが正しい。目的が作法を決めるという原則は、ここでも同じです。

5. 色だけで区別してはいけない

引き算の話は、そのままアクセシビリティの話につながります。色だけで項目を区別した図は、色の見え方が多数派と異なる読者に対して、情報が0になります。

これは特別な配慮ではなく、作図の基本作法として国の資料に書かれています。統計局の『統計学習用補助教材』は、折れ線グラフの「気をつけることは?」でこう書きます。

複数のデータを一つのグラフに重ねて描き、「こちらのデータは増加しているが、こちらは減少」という比較をすることがありますが、その場合、線の区別がつきやすいよう、線を色分けしたり、実線と破線を使い分けたりします。

「色分けしたり、実線と破線を使い分けたり」——つまり色は手段の1つにすぎません。川崎市のガイドラインは、その必要性をもっと具体的に書いています。改善前の折れ線グラフについての説明はこうです。

色だけに頼った情報のため、色弱者には例えば98年のドイツがこの中で何位なのか即答できません。

「読みにくい」ではなく「即答できません」。図として機能していない、ということです。同ガイドラインが印刷物やグラフ・図版について挙げる原則は、そのまま作図のルールになります。

川崎市 カラーUDガイドラインより(グラフ・図版)

・線は実線の色だけを変えるのではなく、実線、点線、破線など様々な線種や太さの違いと色とを組み合わせる

・シンボルは同じ形で色だけ変えるのでなく、形を変えて色数を減らす

・図の塗り分けの説明は、図の脇に凡例を付けるだけでなく、図中にも説明を直接書き込む

・塗り分けの境は、細い黒線や白抜きの輪郭線や境界線で強調する

要するに、色は「もう一つの手がかり」として使い、色を消しても読める図にしておくということです。白黒でコピーして意味が通じるかを確かめれば、それだけで検査になります。

そしてこれは情報Ⅰの範囲内の話です。学習指導要領解説 情報編は、情報Ⅰ(2)ア(イ) で情報デザインを「目的や受け手の状況に応じて伝達する情報を抽象化、可視化、構造化する方法、年齢、言語や文化及び障害の有無などに関わりなく情報を伝える方法を理解する」と定義し、可視化の方法として「表、図解、グラフなど」を名指ししています。グラフを作ることは、解説の上では情報デザインの一部なのです。

6. 手で確かめる——悪い図から良い図へ、3段階で作り直す

ここがこの講の中心です。各段階で「何をどう変えたか」を1行ずつ明記します。

6-1. データ(この講のための架空データ)

以下は、私がこの講のために作った架空の来場者アンケートです(実在の学校のデータではありません)。文化祭の来場者200人に、選択肢から1つだけ選んでもらった、という設定です。

文化祭を何で知りましたか 人数 割合 円グラフの中心角
SNS 74 37.0% 133.2°
友人・家族からの口コミ 52 26.0% 93.6°
ポスター 31 15.5% 55.8°
学校のWebサイト 18 9.0% 32.4°
近隣の掲示板 12 6.0% 21.6°
学校からの配布物 8 4.0% 14.4°
その他 5 2.5% 9.0°
200 100.0% 360.0°

検算:74+52+31+18+12+8+5 = 200。割合は各人数÷200×100 で、合計はちょうど100.0%。SNSと口コミの合計は 74+52 = 126、126÷200 = 0.63 ちょうどで 63.0%

単一回答なので合計はちょうど100%になります。統計局は「円グラフを描くときは、合計が100%になるようにします」「複数回答を認める質問の場合、合計が100%を超えますが、このような場合も円グラフにしてはいけません」と書いており、このデータは円グラフのルール自体は満たしています。それでも読めない、というのがここからの出発点です。

先に主題を1文で書く。「来場者の63%は、SNSと口コミという“人づて”で文化祭を知った」。これが決まれば、あとは全部そのための作業になります。

6-2. 図2(悪い例)——7項目の円グラフ

文化祭を何で知りましたか(n=200)学校のWebサイトポスター学校からの配布物近隣の掲示板SNS友人・家族からの口コミその他項目が7つ。どれが2番目に多いのか、角度だけでは判定できない。

図2 項目7つ、7色、凡例は図の外。一番よく見る形

問題点は3つ。①7つの角度を同時に比べさせている。②色と名前の対応を記憶させている。③何が言いたいのかが図から読み取れない(タイトルが質問文のままで、答えになっていない)。

ポスター(55.8°)と近隣の掲示板(21.6°)のどちらが大きいかは分かります。しかし2番目に多いのがポスターなのか口コミなのかは、角度だけでは即答できません。

6-3. 図3——【変更点:角度を長さに変えた】

文化祭を何で知りましたか(n=200)01020304050607080学校のWebサイトポスター学校からの配布物近隣の掲示板SNS友人・家族からの口コミその他学校のWebサイトポスター学校からの配布物近隣の掲示板SNS友人・家族からの口コミその他長さで比べられるようになった。ただし順序はアンケート票のまま、色は7つ、凡例も残っている。

図3 円グラフを横棒グラフにした。変えたのはこれ1つだけ

同じ基準線から伸びる棒の長さは正確に比べられます。項目名が長いので横棒にしました。ただし、まだ改善の余地があります。並び順はアンケート票のまま、色は7つ、凡例も残っている。円グラフのときの「7色に塗り分ける」という発想が、そのまま持ち越されている状態です。

6-4. 図4(完成形)——【変更点:4つ】

来場者の63%は「SNS」と「口コミ」で文化祭を知った来場者アンケート「文化祭を何で知りましたか」n=200(複数回答なし)SNS74人友人・家族からの口コミ52人ポスター31人学校のWebサイト18人近隣の掲示板12人学校からの配布物8人その他5人並べ替え・色数を7から2へ・凡例を廃止して直接ラベル・見出しを結論文に。目盛線は0の縦線1本だけ残した。

図4 同じ200件のデータ。数字は1つも変えていない

大きい順に並べ替えた。名義尺度なので並べ替えは自由です(順序尺度ならやってはいけません)。並べ替えると、順位が図の形そのものになります。

色数を7から2に減らした。主題に関わるSNSと口コミの2本だけを濃い色にし、残り5本は薄い灰色に落としました。強調とは他を弱めることです。

凡例をやめ、値を棒の右に直接書いた。視線の往復が消えます。目盛線も全部消し、基準となる0の縦線1本だけを残しました。

見出しを結論文にした。「文化祭を何で知りましたか」→「来場者の63%はSNSと口コミで文化祭を知った」。図のタイトルは質問ではなく答えを書きます。

図2と図4は、まったく同じ200件のデータです。変えたのは、読み取りに使う物理量・順序・色数・ラベルの置き方・タイトルの5点だけ。

6-5. 色を線種に置き換える【変更点:2つ】

改善前:色だけで区別+凡例は下改善後:線の種類を変え、右端に直接ラベル4月5月6月7月9月10月30405060701年2年3年4月5月6月7月9月10月30405060701年2年3年左は、線の色が見分けにくい人には3本が区別できません。凡例と線の間で目を往復させる必要もあります。右は、色を使わず線の種類(実線・破線・点線)で区別し、凡例をやめて線の右端に学年名を書きました。

図5 同じ3本の折れ線を、色だけで区別した場合と、線種+直接ラベルにした場合

変えたのは①色を線種(実線・破線・点線)に置き換えたこと、②凡例をやめて線の右端に直接ラベルを書いたことの2点だけです。改善後はモノクロで印刷しても情報が落ちず、凡例と線の間の視線の往復も起きません。統計局の「実線と破線を使い分けたりします」と、川崎市ガイドラインの「凡例をやめ、折れ線の近くに文字を表記した」を、同時に適用した形になっています。

6-6. 実データで確かめる——丸めた数から割合を作り直さない

統計局の『統計学習用補助教材』には、国勢調査による産業別の15歳以上就業者数(単位:万人)と、その構成比が並べて掲載されています。

第1次産業 第2次産業 第3次産業 合計(掲載値)
1920年 1467 (54.9%) 560 (20.9%) 646 (24.2%) 2673 (100.0%)
1940年 1439 (44.6%) 844 (26.2%) 943 (29.2%) 3226 (100.0%)
1960年 1439 (32.7%) 1280 (29.1%) 1684 (38.2%) 4403 (100.0%)
1980年 610 (10.9%) 1874 (33.6%) 3091 (55.4%) 5575 (100.0%)
2000年 317 (5.1%) 1857 (29.8%) 4048 (65.1%) 6223 (100.0%)

私が Python の分数演算(fractions.Fraction)で全マスを検算したところ、15マス中13マスは掲載値と一致しましたが、2か所だけ合いません。

・1920年 第2次産業:560 ÷ 2673 = 20.9502…% → 四捨五入すると 21.0%(掲載は 20.9%)

・2000年:317 + 1857 + 4048 = 6222(掲載の合計は 6223)。4048 ÷ 6223 = 65.0490…% → 65.0%(掲載は 65.1%)

これは誤植ではありません。掲載されている割合と合計は、万人に丸める前の元の数値から計算されているからです。丸めた数を足したり割ったりすると、最後の桁は簡単にずれます。

図に載せる割合は、必ず元データから計算する。表示用に丸めた数を再利用して計算し直してはいけません。そして図には「単位:万人」と出典を必ず書く——それがないと、読み手はこの1の差を自分で確かめることすらできません。

なお、この表そのものが「目的が図を決める」の実例になっています。同じ5年分のデータに対して、統計局の同じ資料は3種類の図を載せています。人数の推移を見せたいときは積み上げ棒グラフ、割合の変化を見せたいときは帯グラフ、3つの構成比の動きを1本の軌跡として見せたいときは三角グラフ。データは1つ、問いが3つあるから、図が3つあるのです。

6-7. 自分の図を採点するチェックリスト

1つでも「いいえ」があれば直す

① この図で言いたいことを、一文で書けるか。

② その一文が、図のタイトルになっているか。

③ 見せたい問い(時系列/比較/割合/散らばり/相関)に対して、図の種類は合っているか。

④ データの尺度に対して、その図と並べ方は許されるか(順序尺度を並べ替えていないか。変化を追う図の系列順を入れ替えていないか)。

⑤ 消しても意味が変わらない要素(目盛線・枠線・凡例・立体感・影・不要な色)が残っていないか。

白黒で印刷しても読めるか(色だけで区別していないか)。

⑦ 単位・n(件数)・出典が書いてあるか。

7. 共通テストではこう出る(重要度 A)

大学入試センターの著作物なので設問文は引用しません。問われ方の型だけを整理します。

大学入試センターが公表した令和8年度の問題評価・分析委員会報告書は、『情報Ⅰ』第4問 問1について「オープンデータに関する基本的な知識を問うとともに、欠損値や目的に応じた可視化方法について、それぞれを適切に理解しているかを問う問題とした」と書いています。「目的に応じた可視化方法」という言葉が、出題者自身の説明として一次資料に残っているのです。この講が扱ったのは、まさにそこです。

型1:目的に合うグラフを選ばせる

「〜を比較したい。最も適切なグラフはどれか」型。解き方は決まっています。設問文の中から「何を見たいのか」を表す動詞を探す。「推移」「変化」なら折れ線、「比較」「大小」なら棒、「内訳」「構成比」なら円か帯、「関係」「関連」なら散布図、「ばらつき」「分布」ならヒストグラムか箱ひげ図。第2節の表の列が、そのまま解答の根拠になります。

さらに、データの尺度で選択肢が消えます。名義尺度に折れ線は不可、順序尺度の並べ替えは不可。第80講とこの講は、共通テストでは同じ1問の中で同時に問われます。

型2:図の改善点を指摘させる

指摘の候補は大きく4系統です。① 図の種類が目的に合っていない(割合を見たいのに折れ線、推移を見たいのに円)/② 尺度に反する処理をしている(順序を無視した並べ替え、名義尺度を線でつないだ)/③ 読み取りを妨げる装飾(立体化、3D円グラフ、色だけの区別)/④ 主題が複数ある(1枚に詰め込みすぎ)。

教員研修用教材が学習24の展開2で「表されたグラフから問題を発見しよう」、展開3で「立体グラフや円グラフが誤解を招く表現であるとされるのはなぜか,調べてみよう」と設定していることを思い出してください。国の教材が授業でやらせている活動が、そのまま出題形式になっています。

型3:図から読めることと読めないことの切り分け

その図が捨てている情報は読めないという原則で切れます。箱ひげ図から平均値・人数・山の数は読めない(第85講)。円グラフから実数は読めない(割合しか描いていない)。散布図から因果関係は読めない(第87講)

落とし穴

「グラフを変えれば結論が変わる」わけではありません。図2と図4は同じデータです。変わるのは伝わりやすさであって、事実ではありません。

並べ替えは常に許されるわけではありません。名義尺度なら自由、順序尺度なら禁止。そして「変化を追う図」(折れ線・帯グラフ)では系列の順序を固定します。

円グラフは常に悪ではありません。「割合を1つだけ見せる」用途では正しい選択です。悪いのは、項目が多いこと・比較に流用すること・立体にすること・複数回答に使うことです。

「n」を書き忘れた図は評価できません。割合だけを示した図は、母数が5件でも5000件でも同じ見た目になります。

練習用の自作問題(その1)

次の(1)〜(5)について、最も適切な図を1つ選び、理由を一文で書け。選択肢:棒グラフ/折れ線グラフ/円グラフ/散布図/箱ひげ図。

(1) ある店の売上が過去12か月でどう推移したか (2) 5つの部活動の部員数の大小 (3) 1学年の身長のばらつきを3クラスで比べる (4) 通学時間と睡眠時間に関係があるか (5) 部活動に入っている生徒の割合

解答

(1) 折れ線グラフ(時系列が◎の唯一の図)/(2) 棒グラフ(横断面の比較が◎)/(3) 箱ひげ図(散らばりが◎で、複数を並べて比べられる)/(4) 散布図(相関が◎)/(5) 円グラフまたは帯グラフ(割合が◎)。

練習用の自作問題(その2)

ある高校が、3年間の部活動加入率を「1年生・2年生・3年生の3本の折れ線」で示した図を作った。この図の改善点として適切でないものを1つ選べ。

① 3本を赤・緑・青の色だけで区別しているので、線の種類も変えたほうがよい
② 凡例が図の外にあるので、線の右端に直接ラベルを置いたほうがよい
③ 縦軸に単位(%)と出典が書かれていないので、追記したほうがよい
④ 3本の順序が学年順になっているので、加入率の高い順に並べ替えたほうがよい

解答 ④

折れ線は「変化を追う」図であり、系列の順序に意味(学年)があるので並べ替えてはいけません。統計局が帯グラフについて「一つのグラフの中では順番は変えないでおきます」と書いているのと同じ理屈です。並べ替えが効くのは、項目間の大小を比較する棒グラフのような図に限られます。

8. 情報Ⅱではこうなる

8-1. 語数調査——「可視化」は情報Ⅰの語である

第88講で確立した方法にならい、一次資料の本文に同じ語が何回出るかを数えました。(当方が2026年8月3日にPDFから本文テキストを抽出し、改行や空白を除去したうえで機械的に計数。対象は学習指導要領解説 情報編の全文(空白除去後 約19万3千字)、情報Ⅰ教員研修用教材 第1〜4章情報Ⅱ教員研修用教材 全7分冊=序章・第1章・第2章・第3章前半・第3章後半・第4章・第5章。「グラフ」は「グラフィクス」等を除いた数。)

解説 情報編 情報Ⅰ教材 情報Ⅱ教材
可視化 23 87(うち第4章に77) 12
グラフ 6 86 13
散布図 3 31 11
クラスタリング 3 0 45
主成分分析 0 0 41
回帰 9 23 87
効果検証 1(情報Ⅱ(3)) 0 2

「可視化」だけを見ると 87 対 12 で、情報Ⅰのほうが圧倒的に厚い。第88講の「自由度」(解説0/情報Ⅰ教材1/情報Ⅱ教材21)とは逆向きです。

しかしこれを「情報Ⅱで可視化が消える」と読むのは誤りです。12件の中身を1件ずつ目で確認すると、そのほとんどが次の工程の並びの中の一語でした。

データの収集,整理,整形,モデル化,可視化,分析,評価,実行,効果検証などの各過程

(学習指導要領解説 情報編 情報Ⅱ(3)/情報Ⅱ教員研修用教材 序章・第3章前半に同文)

可視化は9つ並んだ工程の5番目です。情報Ⅰでは可視化が最後の仕上げだったのに、情報Ⅱでは真ん中に来ます。しかも作図の量はむしろ増えていて、第3章・第5章では R の ggplot2 で散布図行列やクラスタごとの散布図を描いています。語が減っても行為は残る。「可視化」という総称の代わりに、クラスタリング(45回)・主成分分析(41回)・回帰(87回)という手法名が主語になっているだけです。情報Ⅰ教材ではクラスタリングも主成分分析も0回でした。

情報Ⅰでは可視化がゴールで、情報Ⅱでは可視化がスタートになる。

8-2. 情報Ⅱで、可視化は二役になる

統計局の「なるほど統計学園(上級)グラフの種類」は、グラフの役割を1文で二役に分けて書いています。

グラフはデータ全体の傾向や特徴を見やすくするための道具です。集めたデータを目的に合った形に整理し、グラフ化することにより、状況を的確に捉えやすくなり、分析の糸口が見つかったり、また、他の人にデータの内容を分かりやすく伝えることができます

前半が探索(分析者自身が気づくための道具)、後半が伝達(他者を動かすための道具)です。情報Ⅰで練習するのはほぼ後半だけですが、情報Ⅱでは両方が明示的に立ち上がります。

8-3. 探索の側——「今まで気が付かなかったものが見えてくる」

情報Ⅱ教員研修用教材の第5章(探究)は、都道府県別データを R で扱う実習の中でこう書いています。

分析したい問題が明確でない場合には、まず、散布図行列で表示してみよう

ここでは,データ収集,整理,整形,分析,可視化,解釈,評価等の一連の流れを考え、実習に関連付けて説明した。……様々な手法を試みることにより、今まで気が付かなかったものが見えてくることがあることも理解したい。

これが「探索としての可視化」の、国の一次資料での言い方です。問いが決まっていないときに、まず全部プロットして、自分が気づくために描く。第1節で「メッセージが決まらないと図は選べない」と書いたのは伝達の図の話であって、探索の図はその逆——図を描くことでメッセージのほうを見つけにいく。同じ「可視化」でも、方向が反対なのです。

もう一つ、解説 情報Ⅱ(3)イ(イ) は伝達側に釘を刺しています。「単に可視化や分析された結果をそのまま使うだけではなく、得られたモデルを用いて新たな問題について検討し、予測が適切であるかを判断し、更に詳細な予測を行うにはどのようなデータが必要であるかについて考える力を養う」。「図が出たから終わり」を明確に禁じています。図は判断材料であって、判断そのものではありません。

ただし注意しておくと、「探索的データ解析」という語自体は、3資料のいずれにも0件です(解説0/情報Ⅰ教材0/情報Ⅱ教材0)。行為はあるのに、名前が与えられていません。

8-4. 伝達の側——コンテンツ制作では、可視化が効果検証とつながる

もう一方の役は、意外なところに出てきます。情報Ⅱ教員研修用教材 第2章 学習10「コンテンツの発信と改善」です。研修の目的に「各種の分析ツールを使用することで、コンテンツごとのユーザーの反応を定量的に比較できることを理解し、その結果から改善策を考えさせるような授業ができるようになる」と掲げられています。

題材は、文化祭の来場者を増やすために文化祭のWebサイトを作る高校生です(6-1で使った例と同じ場面です)。教材は、アクセス解析で「年齢,性別,地域ごとのユーザー層」「ユーザーがサイトを訪れたのは,検索結果からなのか外部のリンクからなのか」などが得られること、SNSの分析ツールではインプレッション(投稿を見た回数)・エンゲージメント(投稿に反応した回数)・リンクのクリック数などが得られることを挙げ、コンバージョン(ユーザーに到達してほしい最終的な成果)を定義します。そのうえで、こう書きます。

ユーザーの反応を分析しコンテンツの改善を行うときに、最も大事なことは、コンテンツの発信の目的を明確にすることである。ユーザーの認知を広げたいだけなのか、コンテンツに触れたユーザーに何らかの行動を起こしてほしいのか、自分たちが知らない新たなニーズを掘り起こしたいのかによって、アクセス解析で見なければならない指標も変わってくる。

第1節で述べた原則が、そのまま情報Ⅱで再登場しています。情報Ⅰでは「目的が決まるとが決まる」だったものが、情報Ⅱでは「目的が決まると見るべき指標が決まる」になる。同教材は続けて「コンバージョン率が高いのにあまり見られていないコンテンツがあれば、そこに誘導するような改善が必要」「よく見られているのにコンバージョン率が低いコンテンツがあれば、コンバージョン率を高めるような改善をするか、コンテンツ自体を廃止してしまうことも考えられる」と、指標の組み合わせから打ち手を導く手順まで書いています。

もう一つ、情報Ⅰとの決定的な違いがあります。情報Ⅱでは、可視化の対象が「集めたデータ」ではなく「自分が発信したものへの反応」になる。同教材は、アクセス解析やSNSの分析ツールで得られる数値について「これらの情報は定量的に得ることができるため、発信したコンテンツごとにユーザーの反応の違いを比較することが可能となる」とし、投稿フォームや返信から得られるものは「定性的なものであるため、コンテンツごとの比較をすることは難しいが、ユーザーの感情的な反応を知るためには大事な情報となる」と書き分けています。

これは語数にも出ています。「効果検証」は情報Ⅰ教員研修用教材に0件で、学習指導要領解説の1件は情報Ⅱ(3)の記述です。測って直すという段が、情報Ⅱで追加される。(なお「効果測定」という表記は3資料とも0件で、国の資料の言い方は「効果検証」です。)

8-5. 情報Ⅰと情報Ⅱの扱いの違い(整理)

観点 情報Ⅰ 情報Ⅱ
可視化の位置 分析の仕上げ(図ができたら到達) 9工程の5番目(収集→整理→整形→モデル化→可視化→分析→評価→実行→効果検証)
教材での語数 可視化 87回(うち第4章に77回) 可視化 12回。代わりにクラスタリング45回・主成分分析41回・回帰87回
図を描く相手 他者(読み手に伝える) 自分(探索)と他者(伝達)の二役
図の選び方 データの尺度と見せたい問いで選ぶ 同じ判断が分析手法そのものの選択になる
対象データ 集めたデータ 集めたデータ+自分が発信したものへの反応(アクセス解析・コンバージョン)
評価の基準 伝わったかどうか 効果検証(定量指標と定性情報の使い分け)

9. 「情報Ⅰ本文の空白」——グラフの使い分けは、どこにも書かれていない

この講の語数調査で、新しい空白が3つ見つかりました。

空白1:グラフの種類名が、学習指導要領解説に1つも出てこない

学習指導要領解説 情報編の全文(空白除去後 約19万3千字)に、「棒グラフ」「円グラフ」「折れ線グラフ」「帯グラフ」「ヒストグラム」「箱ひげ」はいずれも0回です。情報Ⅰ教員研修用教材でも、棒グラフ3回・円グラフ3回・折れ線グラフ0回しかありません。その6回の中身を全部確認すると、次の3種類しかありませんでした。

① Pythonの実行結果として出した度数分布を「棒グラフ」と呼んでいる箇所/② 学習22で、誤用の例として「カテゴリーの順序を無視して棒グラフや円グラフに表してしまう」と書いた箇所/③ 学習24で、生徒に調べさせる課題として「立体グラフや円グラフが誤解を招く表現であるとされるのはなぜか,調べてみよう」と書いた箇所。

つまり、国の情報科の一次資料の本文には「棒グラフと円グラフをどう使い分けるか」という説明が一行も存在しません。出てくるのは、プログラムの出力の呼び名か、誤用の例か、調べさせる課題だけ。使い分けの説明が体系的に書かれているのは、総務省統計局の統計学習サイトの側です。共通テストでは目的に合うグラフを選ばせる問題が出るのに、その根拠が情報科の本文には無い——というのが現在の状態です。

空白2:グラフの色について、どこにも書かれていない

色覚」は3資料の全文でわずか1件。その1件は情報Ⅱ教員研修用教材 第2章の、Webコンテンツ制作についての「その他にも、色覚障害に配慮した配色の設定などがある」という一文であり、データの可視化・グラフの文脈では、3資料とも0件です。

空白3:凡例の設計について、どこにも書かれていない

凡例」は情報Ⅰ教材に1件・情報Ⅱ教材に1件のみ。しかも情報Ⅰの1件は地図描画ソフトの操作手順(「凡例の表示を修正することにより」)、情報Ⅱの1件はクラスタリングの図の注記(「凡例の位置は調整してある」)で、どちらも「凡例をどう設計するか」という作法の説明ではありません

そして構造的な原因が見えます。「ユニバーサルデザイン」は情報Ⅱ教材に17件ありますが、17件すべてが第1章で、案内用図記号や多様なユーザーへの配慮の話です。データサイエンスの第3章には0件。情報Ⅰ教材の8件も全て第1章で、「デザイン」の語が176件ある第2章(コミュニケーションと情報デザイン)には0件でした。

「情報デザインのユニバーサルデザイン」と「データの可視化」は、国の教材の中で章が分かれたまま、一度も接続されていません。色覚の多様性に配慮した配色は、Webページを作るときの話として置かれ、グラフを作るときの話としては誰も書いていないのです。

だからこの講では、統計局の折れ線グラフの一文と、川崎市のカラーUDガイドラインを根拠として持ってきました。教科の一次資料に穴があるとき、隣の官庁や自治体の一次資料が埋めていることがあります。それを探すのも受験勉強の技術です。

まとめ

第95講の要点

1. 最初に決めるのは図の種類ではなく、伝えたい1つのメッセージ。統計局も「主題を明らかにする」を「的確なグラフを選択する」より前に置いている

2. 図は「データの尺度」(第80講)と「見せたい問い」の2本で決まる

3. 棒グラフの守備範囲が広く円グラフが狭いのは、人が長さは正確に比べられ、角度と面積は苦手だから。統計局自身が、棒グラフを「棒の高さ」、円グラフを「扇形の面積」と書き分けている

4. 強調とは、他を弱めること。並べ替え・色数削減・凡例の廃止・目盛線の削減・タイトルの結論化

5. ただし「変化を追う」図では順序を固定する。目的が作法を決める

6. 色だけで区別しない。線種・形・直接ラベルを併用し、白黒でも読める図にする

7. 図に載せる割合は必ず元データから計算する。丸めた数を再利用しない。単位とnと出典を書く

8. 情報Ⅱでは可視化が9工程の5番目に移り、探索(自分が気づく)と伝達(他人を動かす)の二役を持つ。伝達側は効果検証のループに組み込まれる

出典(すべて2026年8月3日に取得)

・文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編」(平成30年7月) https://www.mext.go.jp/content/1407073_11_1_2.pdf

・文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅰ』教員研修用教材」第4章(令和2年) https://www.mext.go.jp/content/20200722-mxt_jogai02-100013300_006.pdf

・文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅱ』教員研修用教材」第2章・第3章前半・第5章(令和2年) https://www.mext.go.jp/content/20200702-mxt_jogai01-000007843_004.pdf

・総務省統計局『統計学習用補助教材』「統計をグラフにあらわそう ~種類と特徴~」 https://www.stat.go.jp/info/kenkyu/kyouiku/pdf/4siryo2.pdf (資料に公表日の表示なし)

・総務省統計局「なるほど統計学園(上級)グラフ作成の基本」 https://www.stat.go.jp/naruhodo/9_graph/kihon.html

・総務省統計局「なるほど統計学園(上級)グラフの種類」 https://www.stat.go.jp/naruhodo/9_graph/graph.html

・総務省統計局「なるほど統計学園 ナイチンゲールと統計」 https://www.stat.go.jp/naruhodo/15_episode/episode/nightingale.html

・総務省 報道資料「『なるほど統計学園』の開校」(平成22年5月12日) https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/02toukei01_000018.html

・川崎市 総務局情報管理部行政情報課「公文書作成におけるカラーUD(ユニバーサルデザイン)ガイドライン」(監修:NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構) https://www.city.kawasaki.jp/170/cmsfiles/contents/0000024/24002/cud_guide.pdf

・大学入試センター 令和8年度 問題評価・分析委員会報告書『情報Ⅰ』 https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/hyouka/r8_hyouka/r8_hyoukahoukokusyo_honshiken.html

執筆:藤原進之介(数強塾グループ代表)

オンライン数学専門塾「数強塾」代表。累計3,500名以上の中高一貫校生を指導。東進ハイスクール・東進衛星予備校・代々木ゼミナールなど出講実績あり。情報Ⅰの参考書を複数執筆しています。本記事は参考書『藤原進之介の最強120講義』第95講のWeb版です。

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