「情報Ⅰは読む量が多いから点が取れない」とよく言われます。私は大学入試センターが公開している設問別得点率及び正答率のCSVから、令和7年度・令和8年度の本試験全87設問を並べ直して確かめました。結論は逆でした。図表をそのまま読む設問は9割取れています。落ちているのは、読み取った結果を持ったまま次の設問へ進むところです。この講は、その事実をデータで示し、そこから読み方の技術を4つに絞ります。
こんにちは、数強塾グループ代表の藤原進之介です。本記事は参考書『藤原進之介の最強120講義』第102講のWeb版で、第5部「共通テスト攻略」に属します。共通テスト重要度はAです。
なお本記事では、共通テストの問題文・選択肢・図表・プログラムを一切転載していません(大学入試センターの著作物です)。扱うのは①設問構造の説明 ②配点や正答率などの事実 ③自作の類題の3つだけです。
結論
1. 読み取りそのものは難所ではない。図表を直接読む設問の正答率は9割前後。正答率9割以上だった12設問のうち10設問がこの型です。
2. 落ちているのは「引き継ぐ設問」。大問内の設問の並び順と正答率の順位相関は、第3問(プログラム)で令和8年度−0.958、令和7年度 −0.881。ところが独立した小問が並ぶ第1問では+0.115(令和8年度)で、この落ち方は起きません。つまり原因は疲労でも時間切れでもなく、設問どうしの依存です。
3. だから必要な技術は「速く読む」ではない。読んだ結果を紙の上に外へ出し、二度と本文へ戻らないことです。
なぜそうなるのか
数字はどこから取ったか
大学入試センターは試験ごとに「設問別得点率及び正答率表」をCSVで公開しています。添付の説明PDFに定義があります。
平均点=全受験者の得点合計÷全受験者数/得点率=平均点÷配点/正答率=部分点の有無に関わらず、完全に正答した受験者の割合
大学入試センター「令和8年度 試験情報データ(本試験)」添付の「(参考)csvデータの説明」より(2026年8月3日取得)
CSVの「人数」は『情報Ⅰ』で令和7年度 279,718、令和8年度 305,202。自己評価に書かれた受験者数と一致するので、サンプルではなく全受験者の値です。
ここから『情報Ⅰ』本試験2回分を取り出すと、採点単位となる設問は令和7年度 41、令和8年度 46、配点合計はいずれも100点。マーク数は私の計数で51→60(+9)でした。これは令和8年度の報告書に載る高等学校教科担当教員の意見「昨年度の共通テスト本試験と比較しマーク数が9か所増えたが、程度をみると許容範囲内であると思われる」と一致します。
検算が通っていることの確認です。令和8年度の報告書には情報処理学会の意見として「今年度は正答率が8割以上の設問の配点合計は18点(9割以上は5点)」とあります。私がCSVから独立に集計しても8割以上=10設問18点、9割以上=2設問5点で、完全に一致しました。以下の数値はこの一致を担保にしています。
「読み取り」の設問は、9割取れている
正答率が9割以上だった設問は、2回分87設問のうち12。その内訳を見ると、10設問が「図表を直接読む」か「2つの図表の違いを言う」型です。
同じ大問の中で比べると、はっきりします。
| 区画 | 内容 | 配点 | 得点率 |
|---|---|---|---|
| 令7 第3問 問1 | 与えられた図から担当者と日付を読む | 8点 | 0.9194 |
| 令7 第3問 問2・問3 | 同じ図・同じ規則をプログラムに移す | 17点 | 0.5192 |
| 令8 第3問 問1 | 与えられた条件で手作業の答えを出す | 5点 | 0.8508 |
| 令8 第3問 問2・問3 | 同じ条件をプログラムに移す・改造する | 20点 | 0.5095 |
| 令7 第2問A 問1・問2 | レシートの図の項目を選ぶ | 6点 | 0.9677 |
| 令7 第2問A 問3・問4 | 同じ図で「過不足なく含むもの」を選ぶ | 9点 | 0.6131 |
図も規則も同じです。変わったのは「読むだけか、読んだうえで先へ進むか」だけ。それで得点率が 0.92 から 0.52 へ落ちます。
大学入試センターの試験問題調査官が公表した講演資料でも、令和7年度 第3問 問1 の正答率は「87.9〜97.2%」と示されています。CSVの ア 0.9717/イ 0.9542/ウ 0.9288/エ 0.9069/オ 0.8787 と一致します。
落ちているのは「引き継ぐ設問」
大問ごとに、設問の並び順(大問内の相対位置)と正答率の順位相関を取りました。
| 大問 | 令和7年度 | 令和8年度 |
|---|---|---|
| 第1問(独立した小問集合) | +0.786 | +0.115 |
| 第2問(A・Bの2中問) | −0.406 | −0.538 |
| 第3問(プログラム) | −0.881 | −0.958 |
| 第4問(データ分析) | +0.450 | −0.609 |
全87設問をまとめると −0.333 ですが、平均に意味はありません。分かれ方に意味があります。
- 第1問では、後半ほど落ちるという現象が起きません。分野の違う小問が並んでいて、前の設問を引き継がないからです。
- 第3問では、ほぼ完全な右肩下がりになります。令和8年度の −0.958 は、設問を正答率の低い順に並べるとほぼそのまま問題冊子の逆順になる、という意味です。
もし原因が「疲れ」や「時間切れ」なら、第1問でも同じことが起きるはずです。起きません。したがって原因は設問どうしの依存です。
出題者自身がそう書いています。令和8年度 第2問Bについて、報告書はこう述べています。
問4は3割〜4割強にとどまり、問2を正しく理解できた受験者はおおむね問4も正答できたものと推測される。
大学入試センター「令和8年度大学入学共通テスト 問題評価・分析委員会報告書(本試験)」『情報Ⅰ』第3問題作成部会の見解より(2026年8月3日取得)
出題者の見積もりと、受験者の実態がずれる場所
令和8年度の報告書には、センター自身が「想定と違った」と書いた箇所が2つあります。
- 第1問について:「正答率は、第1問全体を通じて想定よりも低く、第1問の得点率は約4割であった」
- 第2問Bの問2について:「問2は約3割と予想より低く、ビット演算の結果が画像としてどのような結果になったかを理解できていないことがうかがえる」
令和7年度にも同じ型があります。第4問について、外部評価では「尺度水準やグラフの読み取りが容易であるという意見もあった」と紹介されています。そのすぐ後にセンターはこう書きます。「しかし、尺度水準については先に述べた通り正答率が非常に低かった」。実数は0.2879です。
なぜ「容易」と見積もられた設問が2割台になるのか。この3つに共通する構造は同じです。
図表や条件を正確に読めば解けるが、読み違えるとその先が全滅する。
尺度水準は、語の定義を1つ取り違えると設問全体が崩れます。ビット演算は、1段目の結果像を誤ると2段目以降が全部ずれます。記憶装置の設問は、選択肢が「容量」と「保存期間」の2軸で組まれていて、片方だけ合っていても点になりません。部分的に正しいことが、点数に一切反映されない形をしているのです。だから見積もりと実態がずれます。出題者は「分かっていれば解ける」と見ますが、受験者側では「1か所ずれたら0点」になります。
分量は増えている。ただし「増えたから難しい」ではない
問題冊子を実測しました(ページ番号と柱を除去し、空白を除いた本文の字数。図の中の文字は抽出できないので下限値です)。
| 試験 | 冊子ページ数 | 本文字数(下限) | マーク数 |
|---|---|---|---|
| 令和7年度 本試験 | 32 | 13,183 | 51 |
| 令和8年度 本試験 | 34 | 14,805 | 60 |
| 令和7年度 追・再試験 | 33 | 15,236 | — |
| 令和8年度 追・再試験 | 36 | 15,630 | — |
令和8年度は本文だけで1分あたり約247字を読み、60か所を塗ることになります。考える時間は別に必要です。
ただし、この「増えた」の評価は割れています。令和8年度の報告書を並べるとこうなります。
大学入試センター:「分量・程度については、試験時間内に受験者が全体を解くことのできるようなものであったと考える」
高等学校教科担当教員:「マーク数が9か所増えたが、程度をみると許容範囲内であると思われる」
日本情報科教育学会:「問題の分量、構成に大きな変化はなく最適であったと判断できる」
情報処理学会:「問題量はやや増えており、受験者の解答時間を考慮すると、分量は昨年度程度が望ましい」
同 令和8年度報告書より(2026年8月3日取得)
3対1で「適切」です。それでも平均点は 69.26 から 56.59 へ 12.67点下がりました。分量だけでは説明がつきません。
説明がつくのは、易しい設問の消滅のほうです。
| 正答率 | 令和7年度 | 令和8年度 |
|---|---|---|
| 9割以上 | 20点 | 5点 |
| 8割以上 | 33点 | 18点 |
| 7割以上 | 48点 | 27点 |
| 5割以上 | 82点 | 63点 |
「読めば取れる易しい設問」が33点から18点へ半減しました。これが12.67点の中身です。ですから「読む速度を上げる」だけでは足りません。読んだ先で落とさない技術が要ります。
「読みにくさ」と「取れなさ」は一致しない
令和7年度の『情報Ⅰ』を、リーダビリティ(文章の読みやすさ)の指標で分析した研究があります。丸山雅貴氏(日本国際学園大学)による「令和7年度大学入学共通テスト『情報Ⅰ』の出題に関するリーダビリティの観点による分析」(日本科学教育学会研究会研究報告 39巻4号、2025年3月)で、結論は第4問の難度が高いことが示唆されたというものです。
ところが公表された得点率では、第4問は令和7年度 0.6864(4大問中2位)、令和8年度 0.6645(4大問中1位)です。令和8年度は情報処理学会からも「他の問と比較して難易度は低かったことになる」と指摘されています。
文章として読みにくい大問が、いちばん取れている。この食い違いは大事です。受験生の体感(第4問はしんどい)は文章の読みにくさを拾っていて、実際の失点は別の場所で起きています。体感で時間配分を決めてはいけません。
作問者は「読み直す」ことを想定していない
令和7年度の報告書、第3問についてのセンター自身の記述にこうあります。
問題作成に当たっては読解負荷が高くならないよう文章構成に留意し、また図もほぼ再掲となるように工夫した。
大学入試センター「令和7年度大学入学共通テスト 問題評価・分析委員会報告書(本試験)」『情報Ⅰ』より(2026年8月3日取得)
これは受験生にとって決定的な情報です。同じ図が何度も出てくるのは、親切設計であって罠ではありません。「さっきの図と違うのでは」と疑って前のページに戻る必要はない。作問者は、1回読んで先へ進めるように作っています。
同じ報告書は、令和8年度 第1問 問2(正答率 0.2869)について、読み方まで名指ししています。
変換の規則を理解できれば短時間で効率よく答えを導くことができる設問であったが、8×8全てのマスについて拡張した受験者は時間を要したと推測される。
同 令和8年度報告書より(2026年8月3日取得)
規則を読み取れば手を動かさずに済むところを、全部展開してしまうと時間が消える。これは読解の失敗ではなく、読解を途中でやめて手を動かし始めた失敗です。
読み方の技術を、原理から4つに絞る
技術① 設問を先に読む
理由は上のデータにあります。図表そのものは9割の人が読めます。足りないのは「何を読むために読むのか」です。設問を先に読めば、本文のどこを見るかが決まります。逆順にすると全部を等しく読むことになり、そのうえで結局読み直すことになります。
技術② 図表は5点から見る──軸・単位・母数・期間・出典
第96講のチェックリストです。共通テストの図表は嘘をつきませんが、5点のどれかが設問の鍵になっていることが非常に多い。
- 軸:横軸が「年」なのか「月」なのか。令和8年度 第4問 問1b は、まさに「横軸を何にして縦軸を何にするか」を選ぶ設問でした(正答率 0.8823)。
- 単位:日数か日付か。差か実数か。
- 母数:全体は何件か。除外した行はあるか。
- 期間:何年から何年までか。
- 出典:誰が作ったデータか。
第101講で私が使った公的統計は、「他市区町村への通勤者数」が市区町村の区切り方に依存して定義されていました。定義を読まずに散布図だけ見ると結論が変わります。図の前に、定義を読む。
技術③ 会話文の登場人物は、役割が固定されている
共通テストの会話文には、ほぼ必ず次の3役がいます。
提案する人(生徒側):「〜してみよう」「〜すればいいのでは」──この発言はたいてい不完全です。そのまま答えにはなりません。
疑問を出す人:「でも〜なのでは?」──ここが設問になります。
訂正する人(先生・店長・専門家側):「実は〜」「その場合は〜に注意が必要だ」──ここに正解の条件が入ります。
令和7年度 第2問Aは、高校生と店長の会話でした。店長の発言に下線が引かれ、その下線部が設問になっています。下線は「ここが条件だ」という印です。会話文は人物ごとではなく役割ごとに追うと、読む量が実質的に減ります。
技術④ 条件は必ず箇条書きに書き出す(外部化)
これが本講の中心です。落ちているのは引き継ぐ設問でした。引き継ぐには、引き継ぐものが手元になければなりません。
第100講のトレース表と同じ発想です。頭の中に置いた条件は、次の設問を読んでいる間に消えます。紙に出せば消えません。書き出す対象は3つです。
- 定義:その問題で新しく決められた量(「開花差」「補正日数」のように、その場で定義された語)
- 条件:「〜の場合は〜しない」「ただし〜とする」の但し書き
- 限定語:「最初に」「過不足なく」「少なくとも」「〜だけを用いて」「必ず」
限定語は、正答率に直接効きます。令和7年度は「過不足なく」が2箇所あり、その4設問の得点率は 0.6131。同じ図を使った直前の設問(0.9677)から35ポイント落ちています。令和8年度 第1問で最も正答率が低かった設問(0.1023。87設問中の最下位)は、「最初に検出したサーバ」を8択の組合せから選ぶものでした。「最初に」の3文字です。
なお、私が本試験2回・追再試験2回の全文を計数した範囲では、「適当でないもの」「誤っているもの」「正しくないもの」という定型の否定設問は、令和8年度の追・再試験で初めて2件現れただけで、本試験には一度も出ていません。「最も適当なものを」は令和7年度本試験14回、令和8年度本試験20回。否定設問を警戒するより、限定語を警戒するほうが割に合います。
手で確かめる──自作の長文+図表問題を1問、最後まで解く
技術②③④を使って、私が作った問題を解いてみせます。題材は第100講(プログラム)・第101講(データ分析)と重ならないものにしました。数値はすべて独立に検算してあります。
【会話文】
ミナミさん:うちの体育館、まだ蛍光灯なんですよね。LEDに替えたら電気代が安くなると思うんです。生徒会で提案してみたいのですが。
タカハシ先生:いい着眼点だね。ただ「安くなる」だけでは提案にならない。取り替えるのにお金がかかることも一緒に見ないといけない。
ミナミさん:たしかに。じゃあ、何年で元が取れるかを計算すればいいですか。
タカハシ先生:そうだね。ただし、電気代が安くなるのは点灯している時間だけだ。体育館の照明が年間で何時間ついているかを先に押さえよう。事務室に条件をもらってきたよ。
【条件】
- 体育館の照明は蛍光灯 40W が 120本
- LEDに替える場合、同じ明るさを得るのに 18W が 120本
- 照明の点灯は 1日6時間・年間200日
- 電気料金は 1kWhあたり31円とする
- LEDへの取り替え費用は 1本あたり3,000円(工事費を含む)
- 蛍光灯・LEDとも、この期間中に交換や故障は起きないものとする
問1 LEDに替えると、1年間の電気料金はいくら減るか。
問2 取り替え費用を、減った電気料金だけで回収できるのは何年目か。
問3 この計算から言えることとして最も適当なものを、次の①〜④から一つ選べ。
① LEDに替えれば、どの学校の体育館でも4年で元が取れる。
② 電気料金の単価が上がった場合、回収にかかる年数は短くなる。
③ 10年間使えば、取り替え費用を差し引いても100万円以上の得になる。
④ この計算から、LEDのほうが蛍光灯より環境にやさしいと言える。
(1kWhあたり31円という数字は、この問題の設定値であって、実際の電気料金の主張ではありません。共通テストの問題文でも、こうした単価は必ず問題の中で与えられます。)
技術④を使う──まず条件を書き出す
本文を読み返さないために、読みながら次の表を作ります。この表を作るまで、問1に手を出しません。
| 記号 | 意味 | 値 |
|---|---|---|
| n | 本数 | 120本 |
| W₁ | 蛍光灯1本の消費電力 | 40W |
| W₂ | LED1本の消費電力 | 18W |
| h | 年間点灯時間 | 6時間 × 200日 = 1,200時間 |
| c | 電気料金の単価 | 31円/kWh |
| p | 取り替え費用(1本) | 3,000円 |
但し書きも書き出します。「交換や故障は起きないものとする」──これは問3の④を切るときに効きます。
技術②を使う──与えられた数の単位を確かめる
40W の W はワットですが、電気料金は kWh(キロワット時)で決まります。W と kWh は別の量です。W は「そのとき流れている電力」、kWh は「それを何時間続けたか」。単位をそろえないと計算になりません。
- 蛍光灯:40W × 120本 = 4,800W = 4.8kW
- LED:18W × 120本 = 2,160W = 2.16kW
問1を解く
年間の電力量は「kW × 時間」です。
- 蛍光灯:4.8 × 1,200 = 5,760 kWh → 5,760 × 31 = 178,560円
- LED:2.16 × 1,200 = 2,592 kWh → 2,592 × 31 = 80,352円
差額は 178,560 − 80,352 = 98,208円/年。
(検算:電力量の差だけで先に計算しても同じになります。(4.8 − 2.16) × 1,200 = 3,168 kWh、3,168 × 31 = 98,208円。)
問2を解く
取り替え費用は 3,000 × 120 = 360,000円。360,000 ÷ 98,208 = 3.6657… で割り切れません。年ごとに足していって確かめます。ここで「3.67年」と答えると、問の「何年目か」に答えたことになりません。
| 年 | 差額の累計 | 取り替え費用との差 |
|---|---|---|
| 3年目末 | 294,624円 | −65,376円 |
| 4年目末 | 392,832円 | +32,832円 |
答えは4年目です。
問3を解く──「言い過ぎ」を型で切る
第101講と第87講で整理した型(因果の断定/母集団の拡大/外挿/期間の切り取り)を、そのまま当てます。
- ①「どの学校の体育館でも4年で元が取れる」→ 母集団の拡大。この4年は「40W×120本・年1,200時間・31円/kWh・3,000円/本」というこの体育館の条件でだけ成り立ちます。本数が同じでも点灯時間が半分なら差額も半分になり、回収は8年目です。「どの〜でも」「すべての」が付いたら、まず条件の範囲を疑う。
- ②「単価が上がれば回収年数は短くなる」→ 正しい。年間差額は「電力量の差 3,168 kWh × 単価」ですから、単価が上がれば差額が増え、360,000円を超えるのが早くなります。条件の範囲内で言えます。これが正解。
- ③「10年で100万円以上の得」→ 数値で切れます。10年の差額累計は 98,208 × 10 = 982,080円。ここから取り替え費用 360,000円を引くと 622,080円。100万円には届きません。仮に引かなくても 982,080円で100万円未満です。大きい数がもっともらしく見えるときこそ、掛け算を1回やる。
- ④「環境にやさしいと言える」→ 論点のすり替え。この問題が扱っているのは電気料金と取り替え費用だけです。製造時の負荷も廃棄も、条件に一切入っていません。問われていない量について結論を出す選択肢は、共通テストでも典型的な誤りの型です。
答え:②
この演習で何をやったか
やったことは3つだけです。
- 条件を表に書き出した(技術④)。以後、本文を一度も読み返していません。
- 単位をそろえた(技術②)。W と kWh を混ぜませんでした。
- 選択肢を型で切った。①は母集団の拡大、③は数値で反証、④は論点のすり替え。内容の知識は一切使っていません。
3番目が大事です。「言い過ぎの選択肢」の見分け方は、読解の技術であって情報の知識ではありません。だから情報Ⅰの教科書を何周しても身につきませんし、逆にこの技術だけは他教科でもそのまま効きます。
共通テストではこう出る(重要度 A)
正答率の低い設問を、型で分類する
令和7年度・令和8年度の本試験、全87設問を正答率の低い順に並べ、下位20設問(正答率0.44未満)を分類しました。分類の基準は次のとおりで、読者が同じCSVで再現できます。
- 型1 引き継ぎ:前の設問の答え、前で定義された規則・量を自分で適用して先へ進む
- 型2 突き合わせ:2つ以上の図表、または本文の離れた2箇所を照合する
- 型3 単発:その設問の周辺だけで答えが決まる(知識問題を含む)
| 型 | 設問数 | 例(正答率) |
|---|---|---|
| 型1 引き継ぎ | 12 | プログラムの改造後の実行回数(0.1963)/条件を変えたときの代入回数(0.2191)/前問で作った指標の読み取り(0.2204)/補正方法の適用範囲(0.2743)/変換を3段重ねた結果(0.2869) |
| 型2 突き合わせ | 4 | 誤りが2箇所ある場合に「最初に」検出するサーバ(0.1023=最下位)/3枚の図から演算を逆算(0.3019)/図中のラベル3か所(0.3697) |
| 型3 単発 | 4 | 尺度水準(0.2879)/記憶装置の2軸選択肢(0.2939)/情報セキュリティの5択(0.3031)/IPv6が使われる理由(0.4184) |
下位20設問のうち16(8割)が、その設問だけを読んでも解けない型です。
反対側も見ておきます。正答率9割以上の12設問のうち10設問が「図表を直接読む/2つの図表の違いを言う」型でした。
共通テスト『情報Ⅰ』は、読み取りでは落としていない。読み取った結果を持ち運ぶところで落としている。
型別の対策
- 型1(引き継ぎ)は、外部化しかありません。定義された量・規則を、その場で紙に書く。第3問なら第100講のトレース表、第4問なら第101講の定義メモ。書かずに次へ進んだ時点で、その大問の後半は運になります。
- 型2(突き合わせ)は、限定語の丸囲み。「最初に」「過不足なく」「〜だけを用いて」「少なくとも」に印をつける。この4語だけで下位20設問のうち何問かは救えます。
- 型3(単発)は、普通の知識固め。ただし選択肢が2軸で組まれていることに注意します。「容量」と「保存期間」のように2つの性質が組み合わされていると、片方だけ合っていても0点です。選択肢を読むとき、いくつの性質が混ざっているかを数えてください。
時間配分への含意
第97講で配点から逆算した時間配分に、本講から1つ足します。
大問の前半で稼ぎ、後半で粘る、という順序にしないこと。第3問・第4問では、後半の設問ほど前半の理解に依存します。前半をていねいに、後半を潔くです。令和8年度 第3問は順位相関が −0.958 でした。後半に時間を注いでも、前半の理解がなければ戻ってきません。
一方、第1問は独立した小問集合で、相関は +0.115(令和8年度)。第1問だけは、分からない小問を飛ばして次へ行ってかまいません。飛ばしても後ろが崩れない構造になっています。
情報Ⅱではこうなる
本講は試験の技術なので、情報Ⅱへの制度上の接続はありません。ただし技術②(図表を軸・単位・母数・期間・出典から見る)だけは、情報Ⅱの入口とまっすぐつながっています。
文部科学省の情報Ⅱ教員研修用教材 第3章 学習11「データと関係データベース」は、章の1つ目の項目が「データの信憑性と信頼性」で、こう定義します。「データの信憑性(credibility)とは、示されたデータが信じるに値する科学的根拠となり得るかである」。そして演習1は「同じデータであっても目盛りの取り方や階級の幅(ビン幅)の取り方、外れ値の扱いにより異なったヒストグラムとなることを確認し、データの信憑性をデータの提供者の視点から考える」。同教材の演習解答は、その答えを3点に絞って書いています。「縦軸の目盛幅は適切か、ビン幅(階級の幅)は適切か、表現するグラフの種類は適切か」。情報Ⅰの読み取りが「読み手として騙されないため」の技術であるのに対し、情報Ⅱでは同じ観点を「提供者の視点から」当てます。つまり作る側に回る。軸を決めるのも、階級幅を決めるのも、外れ値を残すか捨てるかも、そこでは自分の判断になります。本講で身につけた癖は、情報Ⅱでは自分の図が疑われる側になったときの自己点検として、そのまま使われます。
まとめ
- 共通テスト『情報Ⅰ』は読み取りで落としていません。図表を直接読む設問は9割取れています。
- 落ちているのは引き継ぐ設問です。大問内の位置と正答率の順位相関は、第3問で −0.881/−0.958。独立小問の第1問では起きません。
- 令和8年度で減ったのは易しい設問です。正答率8割以上の配点が33点→18点。平均点 12.67点減の中身はこれです。
- 技術は4つ。設問を先に読む/図表は軸・単位・母数・期間・出典/会話文は役割で追う/条件と限定語を紙に書き出す。
- 「言い過ぎの選択肢」の見分け方は読解の技術であり、情報の知識ではありません。
本講は『藤原進之介の最強120講義』第5部の1講です。ほかの講は情報Ⅰ 最強120講義の一覧から読めます。
出典(すべて2026年8月3日に取得)
- 大学入試センター「令和7年度 試験情報データ(本試験)」 https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/hyouka/r7_hyouka/r7_data.html (01_設問別得点率及び正答率表 CSV、03_(参考)csvデータの説明 PDF)
- 大学入試センター「令和8年度 試験情報データ(本試験)」 https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/hyouka/r8_hyouka/r8_data.html (同上)
- 大学入試センター「令和7年度大学入学共通テスト 問題評価・分析委員会報告書(本試験)」『情報Ⅰ』 https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/hyouka/r7_hyouka/r7_hyoukahoukokusyo_honshiken.html
- 大学入試センター「令和8年度大学入学共通テスト 問題評価・分析委員会報告書(本試験)」『情報Ⅰ』 https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/hyouka/r8_hyouka/r8_hyoukahoukokusyo_honshiken.html
- 大学入試センター 令和7年度・令和8年度 本試験および追・再試験の問題冊子 https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/kakomondai/
- 文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅱ』教員研修用教材」第3章 情報とデータサイエンス(前半) https://www.mext.go.jp/content/20200702-mxt_jogai01-000007843_004.pdf / 同 演習解答 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/mext_01292.html
- 丸山雅貴「令和7年度大学入学共通テスト『情報Ⅰ』の出題に関するリーダビリティの観点による分析」日本科学教育学会研究会研究報告 39巻4号、2025年3月 https://doi.org/10.14935/jsser.39.4_43
(設問別得点率・正答率の集計、マーク数と設問数の計数、本文字数の実測、順位相関、および自作類題の計算は、すべて私が原典から独立に実施・検算しました。本文字数は問題冊子PDFからテキスト抽出したもので、図の中の文字は抽出できないため下限値です。)
執筆:藤原進之介(数強塾グループ代表)
オンライン数学専門塾「数強塾」代表。累計3,500名以上の中高一貫校生を指導。東進ハイスクール・東進衛星予備校・代々木ゼミナールなど出講実績あり。情報Ⅰの参考書を複数執筆しており、KADOKAWA『ゼロから始める情報I』、Gakken『きめる!共通テスト 情報Ⅰ』などがあります。本記事は参考書『藤原進之介の最強120講義』第102講のWeb版です。
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