情報Ⅰ 最強120講義

ネットワークの構成(LAN・WAN)|情報Ⅰ 最強120講義 第67講

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この講の問い ── ネットワークをつなぐと、いったい何が手に入るのか。そして LAN と WAN は、何をもって線を引いているのか。

  • ネットワークの目的は「つなぐ」ことではなく「共有する」こと。1本の回線・1台のプリンタ・1つのファイルを、複数で使えるようにする仕組みです。
  • LAN と WAN を分ける本当の基準は距離でも速度でもなく「誰が管理しているか」。距離や速度は結果であって定義ではありません。
  • 共有が始まった瞬間に「誰が使ってよいか」という管理が同時に発生する。だから構成の話は、そのままセキュリティの話になります。

こんにちは、数強塾代表の藤原進之介です。ここから『藤原進之介の最強120講義』は第4部・ネットワーク編に入ります。この第67講は、プロトコル(第68講)やパケット(第69講)、IPアドレス(第70講)といった個別の仕組みに入る手前に置かれる講です。扱うのは「そもそもネットワークとは何をする道具なのか」という一点だけ。ここが曖昧なまま先へ進むと、以降の講がすべて用語の暗記になってしまいます。

1. ネットワークとは「共有」の仕組みである

まず数字から入りましょう。総務省「令和6年通信利用動向調査」(調査時点 令和6年8月末、公表 令和7年5月30日)によれば、過去1年間にインターネットを利用した人がいる世帯の利用機器はスマートフォン 91.0%、パソコン 72.2%(複数回答)。一方で、自宅でインターネットを利用する世帯の接続回線は光回線(FTTH回線)60.5% が最も高く、5G回線 34.6%、LTE・BWA回線 29.8%、ホームルーター 21.6%、これらを含めたブロードバンド回線が 94.2% となっています。

機器は複数あるのに、外へ出ていく回線は普通 1本 しかない。この落差を埋めるための装置が LAN です。

国の教材も、まったく同じことを言っています。文部科学省「情報Ⅰ」教員研修用教材 第4章 学習18(1) は、家庭内 LAN が何のために作られるのかを2つ挙げています。

いくつかの情報機器がインターネットへの接続を必要としているのでそれをまとめるために LAN を構築していることもあれば、家庭内で録画してあるビデオや保存してある写真、ファイルなどを共有できるように LAN を構築していることなどが考えられるだろう
(文部科学省「情報Ⅰ」教員研修用教材 第4章 学習18)

前者は回線の共有、後者はデータの共有。どちらも「共有」です。さらに情報Ⅱ側の教材(第4章 学習19「サーバの種類」)を見ると、プリントサーバが「プリンタを共有する機能を提供する」と定義されています。共有という言葉が、そのままサーバの職務内容になっているわけです。

そして、ここが本講で一番大事なところです。共有が始まった瞬間に、管理が発生します。 1台のプリンタを10人で使うなら「誰が使ってよいか」を決めなければならない。1つのファイル置き場を共有するなら「誰が読めて誰が書けるか」を決めなければならない。ネットワークの構成と情報セキュリティが情報Ⅰで同じ単元に置かれているのは、教育上の都合ではなく共有と管理が同じ現象の裏表だからです(この先は第77講で扱います)。

2. LAN と WAN は「管理者が誰か」で線を引く

多くの参考書は「LAN は狭い範囲、WAN は広い範囲」と書きます。私はこの覚え方をお勧めしません。外すからです。

情報Ⅰ教員研修用教材 学習18(1) は、LAN を規模で3段階に分けています。

家庭やコンビニエンスストア、歯科医院のような小規模な LAN、学校や企業の営業所のなどの中規模な LAN、企業や都道府県内の学校ネットワークなどの大規模な LAN
(同 第4章 学習18)

注目してほしいのは最後です。「都道府県内の学校ネットワーク」まで LAN と呼んでいます。 県をまたぐわけではないにせよ、これは「狭い範囲」ではありません。

では規模は何で測っているのか。教材は自分で問いを立て、自分で答えを出しています。「このようなLANの規模とは何をもとに考えたらよいのだろうか」——そして少し先で、こう書きます。

店舗や学校のコンピュータ室のように数十台までの接続機器が参加している LAN をここでは、小規模な LAN と考えてみる
(同 第4章 学習18)

基準は接続機器の台数であって、距離ではありません。

では LAN と WAN の違いは何か。教材の別の一文にヒントがあります。「ルータ等の LAN の内部と外部を分ける機器については、どのような役割を果たしているのか」。

ルータは境界です。 境界の内側は、自分たちで機器を買い、置き場所を決め、設定を変えられる。境界の外側は、契約して借りているだけで、勝手に設定を変えることはできない。
LAN = 自分たちで管理できる範囲。WAN = 他人の設備を借りる範囲。

距離が近いのは「自分で配線を引ける範囲がだいたい近いから」という結果にすぎず、速度が速いのは「自分で機器を選べるから」という結果にすぎません。

この区別が分かると、VPN が一気に理解できます。VPN は他人の回線(WAN)の上に、自分の管理範囲(LAN)を作り直す技術です。「仮想的な専用線」という説明が腑に落ちるのは、LAN と WAN の線引きが管理者にあると分かっているときだけです。

LAN(自分たちで管理できる範囲) PC スマホ TV ハブ プリンタ ルータ =境界 WAN(他人の設備を借りる範囲) 回線事業者・ISP インター ネット 設定は変えられない 契約して使うだけ 機器も配線も設定も自分で決められる
図1 LAN と WAN の境界はルータにある。分けているのは距離ではなく「誰が設定を変えられるか」。

★「WAN」は国の一次資料に一度も出てこない

ここで本書の目玉を1つ置きます。私は次の3つの資料を全文テキスト化して機械的に数えました(2026年8月3日)。

  • 高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編(共通教科・専門教科の全編)
  • 文部科学省「情報Ⅰ」教員研修用教材(巻頭+第1〜4章、章ごとに別PDF)
  • 文部科学省「情報Ⅱ」教員研修用教材(序章+第1〜5章。第3章は前半・後半の2分冊の両方
解説 情報編 情報Ⅰ教材 情報Ⅱ教材
LAN(VLAN 等を除く) 9 148 42
WAN 0 0 0
ワイドエリア 0 0 0

LAN は解説に「Local Area Network」という綴りつきの定義まであるのに、WAN は一度も出てきません。 対になる語の片方だけが存在している状態です。

では WAN はどこに在るのか。IPA「ITパスポート試験 シラバス Ver.6.5」(2026年1月8日掲載)の「58. ネットワーク方式」の【目標】の第一文が、これです。

ネットワークに関する LAN と WAN という分類を理解する。
(IPA「ITパスポート試験 シラバス Ver.6.5」)

情報処理技術者試験の最下位レベルの試験の、目標の1行目。高校の共通教科の一次資料には無い語が、そこには当たり前の顔で置かれています。第77講が VPN について見つけたのと、まったく同じ形の空白です。

3. 有線と無線で設計が変わるのは「電波は届く範囲すべてに漏れる」から

情報Ⅰ教員研修用教材 学習18(2) は、有線と無線の違いをこう書いています。

物理的な違いであり、実際には通信上のネットワークインタフェースが Ethernet の電気信号であることと電波を利用することの違いである
(同 第4章 学習18)

違うのは一番下の層だけ、という宣言です(この「層」の話は第68講で扱います)。だからこそ、同じブラウザ・同じアプリが有線でも無線でも動きます。

ところが「一番下の層だけ」の違いが、設計を根本から変えます。同教材の図表5「無線LANと有線LANのメリット・デメリット」で、無線LANのデメリットとして挙がっているのは次の4つです。

  • 一般的に通信速度が遅い
  • 接続機器の特定が困難
  • 電波の干渉を受けやすい
  • 簡単に通信内容を傍受できる

最後の1つがすべてを説明します。有線は、物理的にケーブルを挿さないと参加できません。 建物に入り、机まで来て、ポートに挿す。この物理的な手間そのものが第一の関門になっています。

対して無線は、電波が届く範囲すべてが入口です。 隣の部屋も、道路も、上の階も。参加の可否を物理で制限できない以上、制限は暗号で行うしかない。無線LANで暗号化が「推奨」ではなく「必須」なのは、暗号化が唯一残された関門だからです。

ちなみに、この図表5には仕掛けがあります。 有線LANの欄は空欄で、教材は「有線LANについても同様にまとめてみましょう」と読者に投げています。答えが書かれていない。ここは自分で埋める場所です。

なお「無線は一般的に通信速度が遅い」は、あくまでこの演習表の記述であり、普遍法則ではありません。教材自身も直後に「現在では IEEE802.11 で規格化され、通信品質や速度の問題に関しては、あまり問題はなくなってきている」と書いています。速度で有線と無線を区別する覚え方は、時代とともに崩れます。「電波は漏れる/ケーブルは挿さないと入れない」という物理のほうが、はるかに寿命が長い。

4. クライアントサーバとピアツーピア:優劣ではなく「何を優先するか」

ここは情報Ⅱ側の教材が非常に明快なので、そのまま借ります。文部科学省「情報Ⅱ」教員研修用教材 第4章 学習19「情報システムの集中処理と分散処理」より。

集中処理は、保守や運用管理、セキュリティの管理が容易ではあるが、ホストコンピュータが故障するとシステム全体が停止してしまうデメリットがある。
一方の分散処理システムは、1台のコンピュータが故障しても処理を継続できるため信頼性が高く、機能の拡張が容易ではあるが、保守やセキュリティ管理、運用管理が複雑になるデメリットがある。
(文部科学省「情報Ⅱ」教員研修用教材 第4章 学習19)

きれいに裏返しになっています。 集中は「管理しやすいが単一障害点になる」、分散は「壊れにくいが管理が難しい」。

同じ構図が、クライアントサーバと P2P にも現れます。

P2P はサーバを介さない。そのためクライアントサーバシステムに対して、低コストで拡張性の高いネットワークが構築でき、またサービス提供までの時間が短縮できるメリットがある。その一方で、データが端末に分散して置かれることから、データの流出時にくい止めることが容易でないというデメリットがある。
(同 第4章 学習19)

教材が P2P の実例として挙げるのは、暗号資産のブロックチェーン、一部のSNSアプリ(電話アプリやメッセンジャーアプリなど)、IoT分野です。

どちらが優れているか、という問いは立ちません。 立つのは「何を優先するか」です。1か所で管理したいなら集中、止まらないことを優先するなら分散。試験でも「どちらが正しいか」ではなく「この場面ではどちらか」を問われます。

5. 接続形態は「1台壊れたときどうなるか」で比べる

スター型・バス型・リング型・メッシュ型。この4つを形で暗記させる教材は多いのですが、形は覚える価値がありません。 覚えるべきは故障の影響範囲です。

スター型 中心が命綱 バス型 幹線1本を共有 リング型 輪が1本の経路 メッシュ型 経路が何本もある
図2 4つの接続形態。形そのものではなく「経路が何本あるか」を見る。

そして本題は次の図です。同じ「1か所が壊れた」でも、止まる範囲がまったく違います。

スター型:中心が故障 全滅 端末は全部無事なのに通じない リング型:端末1台が故障 輪が切れる 1台の故障が全体に響く メッシュ型:1台が故障 残りは通じる 迂回できる代わりに配線が多い
図3 「1か所壊れたらどこまで止まるか」で比べる。これが接続形態を学ぶ唯一の理由。
形態 つなぎ方 端末が1台壊れたら 中心/幹線が壊れたら 配線量
スター型 中心の機器に全員がぶら下がる その1台だけ切れる 全滅 端末数ぶん
バス型 1本の幹線に全員がぶら下がる その1台だけ切れる 全滅 少ない
リング型 隣の隣へと輪でつなぐ 輪が切れて全体に影響 少ない
メッシュ型 互いを直接つなぐ 他の経路が残る 非常に多い

この表の読み方はひとつだけ。「壊れにくさ」と「配線量」がトレードオフになっているということです。メッシュは最も壊れにくく、最も高い。スターは安いが中心が命綱になる。

家庭やオフィスで実際に使われているのがスター型なのは、「ハブやルータという中心が1台あれば済み、1台の端末を抜き差ししても他に影響しない」から。中心が落ちたら全滅するリスクを、機器1台を守るコストと引き換えに受け入れているということです。

★接続形態の名前も、国の一次資料には無い

これも数えました。上と同じ3資料で、「スター型」「バス型」「リング型」「メッシュ型」「トポロジ」はいずれも 0 件です。

ただし、ここには語数調査の罠があります。 単純に「リング」で検索すると 解説11件/情報Ⅰ教材13件/情報Ⅱ教材74件も出ます。しかし1件ずつ目で見ると、すべてクラスタリング・ソーシャルエンジニアリング・ヒアリング・サンプリング・フィルタリングなどで、ネットワークのリング型は1件もありません。「スター」も同様で、全44件はすべてポスター・スタート・マスター・トランジスター。「バス」も乗り物のバスとマーケットバスケット分析だけ。
素朴に数えると、存在しないものが74件あることになってしまいます。「◯件だった」と言う前に、必ずヒットした箇所を1つずつ見ること。これは読者にもそのまま使ってほしい作法です。

では接続形態はどこに在るのか。IPA「基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2」の「(1) ネットワークアーキテクチャ ① ネットワークトポロジ」にこうあります。

代表的なネットワーク構成の種類、特徴、端末、制御機器がどのような形態で接続されるかを理解する。用語例:ポイントツーポイント(2地点間接続)、ツリー型、バス型、スター型、リング型
(IPA「基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2」)

なお ITパスポート Ver.6.5 には「トポロジ」も「スター型」も0件。接続形態は、情報処理技術者試験でも1段上(基本情報)の内容ということになります。

6. この講の位置:中学校の続きから始まっている

最後に、この講がなぜ第4部の入口に置かれるのかを、制度から説明しておきます。

「情報通信ネットワークの構成」という言葉は、実は高校で新しく出てくる言葉ではありません。中学校技術・家庭科(技術分野)の指導事項の名前そのものです。

中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 技術・家庭編 の内容「D 情報の技術」(2)ア は、こう書かれています。

情報通信ネットワークの構成と、情報を利用するための基本的な仕組みを理解し、安全・適切なプログラムの制作、動作の確認及びデバッグ等ができること。
(中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 技術・家庭編)

そしてその解説本文が、扱う中身を具体的に列挙しています。「コンピュータ同士を接続する方法や、情報通信ネットワークの構成、サーバやルータ等の働きや、パケット通信や Web での情報の表現、記録や管理などの情報通信ネットワーク上で情報を利用する仕組みについて理解させるようにする」。

一方、高等学校学習指導要領解説 情報編 情報Ⅰ(4)ア(ア) は、こうです。「情報通信ネットワークを構成するクライアントやサーバ、ハブ、ルータなどの構成要素の役割について理解するようにする」。

段階 名指しされる構成要素
中学校 技術・家庭科 D(2)ア サーバ、ルータ
高校 情報Ⅰ(4)ア(ア) クライアント、サーバ、ハブ、ルータ

高校が中学校に足したのは「クライアント」と「ハブ」の2語だけです(中学校の解説に「ハブ」も「クライアント」も0件)。しかも高校側の解説はさらに、家庭内LANを実際に構築させること、有線と無線の違い、公衆無線LANの注意点、そして「あらかじめ用意したトラブルを抱えている情報通信ネットワークの不具合を解決したりする」ことまで求めています。

知識の量が増えたのではありません。「知っている」から「作れる・直せる」へ、要求の質が変わっている。 これがこの講の位置づけです。

なお 2026年8月時点で、次期学習指導要領は中央教育審議会で審議中です。教育課程部会 情報・技術ワーキンググループの「情報・技術WG取りまとめ(案)」(令和8年7月30日 資料1)は、現状の課題として「小学校ではコンピュータやネットワークの仕組みの理解が扱われていない」「中学校でもコンピュータやネットワークの仕組みの理解やデータ活用が十分に扱われていない」と明記したうえで、中学校「情報・技術科(仮称)」の学習イメージに「c. 情報通信ネットワークの構成」という項目名を置き、「情報通信ネットワークを構成する機器や接続の仕組みを調べ、整理してワークシートにまとめたうえで、簡易なネットワークの設定を体験して」と書いています。あくまで審議中の「案」であり確定ではありませんが、この分野を土台から手を動かして学ぶ方向は維持されそうだ、というのが現時点の見立てです。

7. 手で確かめる ── 自分の機械に聞く

自分のパソコンが LAN のどこに立っているかは、コマンド3つで分かります。以下はすべて 2026年8月3日に私が macOS 上で実際に実行した出力です。個人を特定しうる値(MACアドレス、グローバルIPv6アドレス)はマスクしました。 プライベートIPv4アドレスは RFC1918 が定める範囲なのでそのまま載せます。

(1) 自分の住所を見る ── ifconfig(Linux なら ip addr)

$ ifconfig en0
en0: flags=8863<UP,BROADCAST,SMART,RUNNING,SIMPLEX,MULTICAST> mtu 1500
        ether xx:xx:xx:xx:xx:xx
        inet6 fe80::xxxx:xxxx:xxxx:xxxx%en0 prefixlen 64 secured scopeid 0xb
        inet 192.168.1.11 netmask 0xffffff00 broadcast 192.168.1.255
        media: autoselect
        status: active

読むべき点は3つです。

  • inet 192.168.1.11 ── 192.168.0.0〜192.168.255.255 は RFC1918 が定めるプライベートアドレスの1ブロック。世界のどこからも直接は届かないアドレスであり、これを持っているということは「私は LAN の内側にいる」ということです(→ 第70講)。
  • netmask 0xffffff00 ── 16進 ffffff00 は2進で 1 が24個・0 が8個。つまり /24。上位24ビットがネットワーク部、下位8ビットがホスト部。同じ LAN に置けるホストは 2の8乗 − 2 = 254台(全0はネットワークアドレス、全1はブロードキャストアドレスで使えないため)。
  • mtu 1500 ── 1回に送れる最大サイズが 1500 バイト。この数字がパケット分割の話に直結します(→ 第69講)。

(2) 出口を見る ── netstat -rn(Linux なら ip route / route -n)

$ netstat -rn -f inet
Internet:
Destination        Gateway            Flags     Netif Expire
default            192.168.1.1        UGScg       en0
127                127.0.0.1          UCS         lo0
192.168.1          link#11            UCS         en0
192.168.1.1        xx:xx:xx:xx:xx:xx  UHLWIir     en0    1195
192.168.1.11       xx:xx:xx:xx:xx:xx  UHLWI       lo0
192.168.1.142      xx:xx:xx:xx:xx:xx  UHLWIi      en0    1050
192.168.1.255      ff:ff:ff:ff:ff:ff  UHLWbI      en0
224.0.0.251        01:00:5e:00:00:fb  UHmLWI      en0

1行目が主役です。default → 192.168.1.1。これがデフォルトゲートウェイ。「宛先が自分の LAN の中でないなら、全部ここへ投げる」という意味です。

LAN と WAN の境界が、この1行に書いてあります。

そして 3行目の 192.168.1 → link#11。「192.168.1.◯◯ 宛なら、ゲートウェイを通さず直接ケーブル(en0)に出せ」という意味です。この2行の対比が、そのまま「内側/外側」の定義になっています。

(3) 隣人を見る ── arp -a

$ arp -a
ntt.setup (192.168.1.1) at xx:xx:xx:xx:xx:xx on en0 ifscope [ethernet]
? (192.168.1.11) at xx:xx:xx:xx:xx:xx on en0 ifscope permanent [ethernet]
? (192.168.1.142) at xx:xx:xx:xx:xx:xx on en0 ifscope [ethernet]
? (192.168.1.255) at ff:ff:ff:ff:ff:ff on en0 ifscope [ethernet]
mdns.mcast.net (224.0.0.251) at 01:00:5e:00:00:fb on en0 ifscope [ethernet]

ここが一番おもしろいところです。 ARP は「この IP アドレスの機器、いま誰?」と LAN 全体に叫んで返事を待つ仕組みです。だから arp -a に出てくるのは、自分と同じ LAN にいる相手だけ

この出力には、私が今まさに通信している遠くのサーバは1つも出てきません。ゲートウェイの向こう側は、1台も見えない。 見えているのは、ルータ(192.168.1.1)と、自分(192.168.1.11)と、家の中のもう1台(192.168.1.142)だけです。

「ARP が届く範囲 = 自分の LAN」 ── これが、LAN の境界を実測で確かめる一番簡単な方法です。教科書の図ではなく、自分の機械が答えを持っています。

最後の 224.0.0.251(mDNS)も同じ話です。224.0.0.0/24 は「同じネットワークの中だけに配られ、ルータを越えない」と決められたマルチキャストアドレス。プリンタやスピーカーが設定なしで見つかるのは、この「LAN の中だけに届く呼びかけ」が使われているからです。共有が LAN の中で完結している実物が、ここに映っています。

自分で確かめる練習

  • /24 の LAN に 254台まで置けるのはなぜか、2進法で説明できるか(→ 第40講第70講
  • 自分の環境で arp -a を実行し、出てきた台数を数える。教材が言う「数十台までを小規模な LAN と考える」と比べてみる
  • ping でゲートウェイに届くのに外のサイトに届かないとき、原因は LAN 側か WAN 側か

8. 共通テストではこう出る(重要度:A)

ネットワーク単元は必ず出題され、その入口である構成要素は「知っていれば取れる」得点源になります。

出題の形(大学入試センターの公表資料から)

大学入試センターが公表した「試作問題『情報』の概要」によれば、試作問題『旧情報(仮)』第4問は生徒3人が身近なネットワークや情報セキュリティについて自ら学習する題材で、小問9つがすべてこの分野に充てられています。センターが公表している各設問の概要は次のような構造です(設問文・選択肢・図表は転載しません)。

小問 公表されている出題のねらい
問1 家庭の中で身近に使用されている情報通信ネットワークの機器について、その名称と役割の理解
問2 無線LANの機器に接続するために必要な SSID や暗号化キーの理解
問3 無線LANへの接続に対するセキュリティ対策の知識
問4 初めて自宅にインターネットの回線を引く場面での留意点
問5 無線LANの一覧から読み取れることと、暗号化キーがないネットワークに接続する危険
問6 ルータやハブの機能に関する知識を基に、情報通信機器の接続を具体的な事例の中で考察
問7〜9 ブルートフォース攻撃・その対策・情報セキュリティの三要素

問1と問6が、そのままこの講の内容です。 そして注目すべきは、この9問が「機器の名称と役割」から入って「セキュリティ」で終わる構造になっていること。共有の話が管理の話に接続していくという本講の骨格が、出題の並びそのものになっています。

引っかかりやすい点

  1. LAN/WAN を距離で覚えている。 「都道府県内の学校ネットワーク」を LAN と呼ぶ資料が国の側にある以上、距離での判別は当てになりません。管理者が誰かで判断する。
  2. 「無線は遅い」を法則だと思っている。 教材の演習表の記述であって、規格の進歩で変わります。軸は速度ではなく「電波は漏れる/ケーブルは挿さないと入れない」。
  3. ハブとルータの混同。 ハブは同じ LAN の中で機器をまとめる。ルータはLAN と外を分ける。「境界にいるのはどちらか」で覚えます。
  4. 接続形態を形で覚えている。 問われるのは「1台壊れたらどこまで止まるか」。形は答えを出すための道具にすぎません。
  5. サーバを「高性能なコンピュータ」だと思っている。 サーバは性能の話ではなく役割の話。情報Ⅱ教材の定義は「サービスを要求するクライアントと、要求されたサービスを提供するサーバ」——要求する側か、提供する側か、それだけです。

自作の類題

【問】ある学習塾が、教室に生徒用パソコン20台、講師用パソコン2台、プリンタ1台を置き、1本の光回線でインターネットに接続している。次の(a)〜(c)に答えよ。

  • (a) この20台が同時に Web を閲覧できるのは、どの機器がどんな働きをしているからか。
  • (b) 講師用パソコンからは生徒の成績ファイルが読めるが、生徒用パソコンからは読めないようにしたい。これは LAN を「つなぐ」話か「管理する」話か。理由とともに述べよ。
  • (c) 教室のハブが1台故障した。影響範囲はどうなるか。もし故障したのがルータだったらどうか。

解答の骨子。(a) ルータが LAN と WAN の境界に立ち、1本の回線を複数の機器で共有させている。(b) 管理の話。共有を始めた時点でアクセス権の設定が必要になる。(c) ハブ故障ならそこにぶら下がる機器だけが切れる(スター型の性質)。ルータ故障なら外部との通信が全滅する一方、LAN 内部のファイル共有やプリンタは生きている——ここが「LAN と WAN は別物」を実感できる場所です。

9. 情報Ⅱではこうなる

語数で見る分水嶺

第4部の他の講と同じ方法で、3つの一次資料を数えました(2026年8月3日、当方でテキスト化して機械計数。ヒット箇所は1件ずつ用法を目視で確認しています)。

解説 情報編 情報Ⅰ教材 情報Ⅱ教材
クライアントサーバ 0 0 11
P2P 0 0 5
集中処理 0 0 5
分散処理 1(専門教科側) 0 6
ハブ 1 4 0
LANスイッチ 0 0 2
VLAN 2(専門教科側) 1 7
セグメント 1(情報Ⅱ側) 0 8

この表が、そのまま接続マップです。

情報Ⅰでの扱い

情報Ⅰでは、構成要素は「役割を理解する」対象です。解説 情報Ⅰ(4)ア(ア) は「クライアントやサーバ、ハブ、ルータなどの構成要素の役割について理解するようにする」と書きます。クライアントとサーバは並列に並んだ2つの部品の名前であって、「クライアントサーバシステム」という一つの構成方式としては、解説にも情報Ⅰ教員研修用教材にも一度も登場しません(ともに0件)。

つまり情報Ⅰでは、構成は与えられているものです。家にあるルータ、学校にあるハブ、その役割を知る。教材の演習が「歯科医院を想定して小規模な LAN の構成に必要なものを列挙し、店舗内の機器の配置図も描いてみましょう」となっているのも、部品を並べる段階だからです。

情報Ⅱでの扱い

情報Ⅱでは、構成が選択肢になります。

情報Ⅱ教員研修用教材 第4章 学習19 は、まず処理形態を集中/分散で対比し、次にクライアントサーバと P2P を対比し、さらに2層から3層への移行を扱います。

当初のクライアントサーバシステムは、クライアントのアプリケーションがサーバのデータベースにアクセスする形の2層構成であった。しかし、データベースの検索結果が全てネットワークを通じて送られるため、クライアントとサーバ間の通信負荷が問題となった。そこで、クライアントには画面表示などの機能を残し、利用頻度の高いプログラムをアプリケーションサーバに置いてデータベースにアクセスする形の3層構成が主流になり現在でも多く使われている。
(文部科学省「情報Ⅱ」教員研修用教材 第4章 学習19)

構成が変わった理由が「通信負荷」だと明記されています。 情報Ⅰで計算する通信量(→ 第73講)が、情報Ⅱではシステムの層構造を決める設計根拠に化けるわけです。

さらに 学習20 では、ネットワークの分割がセキュリティ設計になります。

物理的な接続形態とは独立して仮想的な LAN セグメントを作る VLAN(Virtual LAN)と呼ばれる技術で、情報セキュリティの機密性を高めることもできる
(同 第4章 学習20)

「物理的な接続形態とは独立して」——この一句が、本講の第5節と情報Ⅱをつなぐ蝶番です。情報Ⅰでは接続形態は物理の話(どう配線するか)でした。情報Ⅱでは、物理配線をそのままに、論理的な LAN の線引きだけを引き直せるようになる。LAN の境界が、ケーブルの届く範囲から、設計者が決めるものへ変わります(→ 第77講)。

情報Ⅱで消えるもの・名前が変わるもの

  • 「ハブ」は情報Ⅱ教員研修用教材の全章で0件になります。 代わりに「LANスイッチ」が現れる(第4章1件・第5章1件)。物理的に電気信号を配るだけの箱から、どのポートへ流すかを判断する機器へ、語ごと入れ替わっている。
  • 集中/分散という区別自体が相対化されます。 同 学習19 は「ただし近年では、インターネットを経由して利用するクラウドコンピューティングが普及しつつあり、集中処理か分散処理かを区別することの意義が薄れつつある」と書く。教材が自分で自分の分類に留保をつけている箇所です。

まとめ

情報Ⅰ:ネットワークの構成は「読むもの」。 目の前にある機器の役割を知り、図に描ける。
情報Ⅱ:ネットワークの構成は「決めるもの」。 集中か分散か、2層か3層か、どこにセグメントの線を引くか。目的と制約から選び、その選択を説明できる。

そして選択の理由は、いつも同じ形をしています。「何を共有し、誰に使わせるか」。 ネットワークは共有の仕組みであり、共有には必ず管理が伴う——第67講の結論は、そのまま情報Ⅱの設計論の入口になっています。

出典(すべて2026年8月3日取得)
文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編」平成30年7月 https://www.mext.go.jp/content/1407073_11_1_2.pdf / 文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅰ』教員研修用教材」第4章 https://www.mext.go.jp/content/20200722-mxt_jogai02-100013300_006.pdf / 文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅱ』教員研修用教材」第4章 https://www.mext.go.jp/content/20200609-mxt_jogai01-000007843_005.pdf / 文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 技術・家庭編」平成29年7月 https://www.mext.go.jp/content/20230516-mxt_kyoikujinzai02-000033059_04.pdf / 文部科学省 中央教育審議会 教育課程部会 情報・技術ワーキンググループ「情報・技術WG取りまとめ(案)について」令和8年7月30日 資料1 https://www.mext.go.jp/content/20260730-mxt_kyoiku01-000050649-3.pdf / 大学入試センター「試作問題『情報』の概要」 https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?d=744&f=abm00003141.pdf / 総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(世帯編)」令和7年5月30日公表 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/pdf/HR202400_001.pdf / IPA「ITパスポート試験 シラバス Ver.6.5」2026年1月8日掲載 https://www.ipa.go.jp/shiken/syllabus/omgdg50000005kn1-att/syllabus_ip_ver6_5.pdf / IPA「基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2」2026年1月8日掲載 https://www.ipa.go.jp/shiken/syllabus/omgdg50000005kpe-att/syllabus_fe_ver9_2.pdf / RFC 1918 Address Allocation for Private Internets(1996年2月) https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc1918.txt

調査範囲の宣言:「0件」と書いた語(WAN/ワイドエリア/スター型/バス型/リング型/メッシュ型/トポロジ)について全文検索した範囲は、解説 情報編(共通教科・専門教科の全編)、情報Ⅰ教員研修用教材(巻頭+第1〜4章)、情報Ⅱ教員研修用教材(序章+第1〜5章、第3章は前半・後半の両方)、中学校学習指導要領解説 技術・家庭編 です。なお文部科学省「授業・研修用コンテンツ」【情報Ⅰ】の「はじめてのネットワーク構築」スライドPDFは全ページが画像で構成されておりテキスト抽出ができないため、この1点は語数調査の対象外です。
この記事を書いた人 ── 藤原進之介(ふじわら しんのすけ)

オンライン数学塾・数強塾 代表。東進ハイスクール・東進衛星予備校・代々木ゼミナールなど出講実績あり。累計3,500名以上の中高一貫校生を指導してきました。情報Ⅰの参考書を複数執筆しており、本連載『藤原進之介の最強120講義』では、情報Ⅰの全範囲を情報Ⅱまで接続して解説していきます。

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