こんにちは、数強塾代表の藤原進之介です。この記事は参考書『藤原進之介の最強120講義』の第81講「データの収集とオープンデータ」のWeb版です。共通テスト「情報Ⅰ」での重要度はA(頻出。得点差がつく)、情報Ⅱでの接続先は(3)情報とデータサイエンスです。
データ分析の講は「集めたあと」から始まることが多いのですが、この講はその手前を扱います。そもそもデータをどこから持ってくるのか。そして、なぜ国は税金で集めたデータをタダで配っているのか。ここを制度として理解している受験生は、令和8年度の本試験で数秒で1問取れました。
1. この講の問い
なぜ国や自治体は、税金で集めたデータを無料で公開するのか。
2. 結論
公共データは国民共有の財産であり、公開して民間が使うほど社会全体の利益が増えるからです。だからオープンデータは施しではなく制度で、法律が「必要な措置を講ずるものとする」と国に義務づけています。条件は3つ(二次利用可能・機械判読に適する・無償)で、この3つはANDです。そして無償は「何をしてもよい」ではありません。出典を書く、加工したなら加工したと書く、国が作ったかのように見せない――ここまでが利用条件です。
3. なぜそうなるのか
3-1. まず定義を一次資料で確認する
いきなり用語集の要約を読むのではなく、決定文そのものを開きます。「オープンデータ基本指針」(平成29年5月30日 高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会議決定/令和6年7月5日 デジタル社会推進会議幹事会改正)の第2節です。
国、地方公共団体及び事業者が保有する官民データのうち、国民誰もがインターネット等を通じて容易に利用(加工、編集、再配布等)できるよう、次のいずれの項目にも該当する形で公開されたデータをオープンデータと定義する。
① 営利目的、非営利目的を問わず二次利用可能なルールが適用されたもの
② 機械判読に適したもの
③ 無償で利用できるもの
デジタル庁「オープンデータ基本指針」(令和6年7月5日改正)
「いずれの項目にも該当する」がポイントです。3つのAND条件であって、1つでも欠ければオープンデータではありません。文部科学省「情報Ⅰ」教員研修用教材 第4章 学習20「情報システムが提供するサービス」は、この3項目をそのまま引用して授業内容にしています。国の教材が国の決定文をそのまま貼っている、という珍しい構造です。
図1 定義はANDで書かれている。「無料で公開されているから」だけでは条件を満たさない。
3-2. なぜ無料なのか――法律が国に義務づけているから
ここが本講の主戦場です。国が親切だから配っているのではありません。根拠は官民データ活用推進基本法(平成28年法律第103号)第11条です。
第十一条 国及び地方公共団体は、自らが保有する官民データについて、個人及び法人の権利利益、国の安全等が害されることのないようにしつつ、国民がインターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて容易に利用できるよう、必要な措置を講ずるものとする。
2 事業者は、自らが保有する官民データであって公益の増進に資するものについて、(中略)国民が……容易に利用できるよう、必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
e-Gov法令検索「官民データ活用推進基本法」(平成28年法律第103号)
第1項の主語は国と地方公共団体で、語尾は「講ずるものとする」。第2項の主語は民間事業者で、語尾は「努めるものとする」。前者が義務、後者が努力義務です。この非対称が答えそのものです。国のデータは、国が好意で公開しているのではなく、公開する側の義務として公開されている。だから使う側は遠慮しなくていい。
基本指針も、公共データを「国民共有の財産」と位置づけたうえで意義を3つ挙げます。
- 国民参加・官民協働の推進を通じた諸課題の解決、経済活性化――民間が公共データでサービスを作れば、行政が全部やるより速くて安い
- 行政の高度化・効率化――データを根拠にした政策立案(EBPM)ができる
- 透明性・信頼の向上――政策の根拠データが公開されていれば、国民が自分で検算できる
つまり「税金で集めたデータを無料で配ると損」ではなく、配ったほうが社会全体では得、という計算です。そしてその判断はもう法律と閣僚級の決定として済んでいる。オープンデータは施しではなく制度というのは、こういう意味です。
3-3. なぜ「機械判読可能」が要件に入るのか
ここが受験生にいちばん伝わりにくいところです。「無料で見られるならいいじゃないか」と思うからです。しかし同じ情報でも、形式が違えば使えません。基本指針の脚注は機械判読をこう定義します。
「機械判読」とは、コンピュータプログラムが自動的にデータを加工、編集等できることを指す。
同上・脚注5
この意味を具体的に書いているのが、情報Ⅰ教員研修用教材 第4章です。
紙の資料を読み取った画像だけの PDF ファイルを活用するには、改めてデータを入力することが必要となる。また、表計算ソフトウェアに入力されたデータであっても、印刷するための書式では、データを活用するために整形することが必要となる。一方、プログラムを用いてデータを二次利用する場合に、機械判読が可能となっていれば、さまざまなデータを組み合わせて新たな情報を生み出すことができる。
文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅰ』教員研修用教材」第4章 学習20(令和2年、該当箇所はp.168相当)
PDFの表は、人間には読めても機械には読めません。機械にとってのPDFは「文字がどの座標に置いてあるかが書いてある紙」であって、「どれが列でどれが行か」は書かれていないからです。人間は目で表を認識しますが、プログラムはそれができない。だから同じ数値でも、CSVなら1行で読めて、PDFなら人が打ち直すことになる。形式が違えば、同じ情報が使えなくなる。
基本指針は機械可読な形式の例として「CSV、XML、JSON、RDF、Markdown 等」を挙げ、さらに重要な但し書きを付けます。
「機械判読に適した度合」には、人手をどれだけ要さずに、コンピュータがデータを再利用できるかにより、いくつかの段階がある。コンピュータが自動的にデータを再利用するためには、当該データの論理的な構造を識別(判読)でき、構造中の値(表の中に入っている数値、テキスト等)が処理できるようになっている必要がある。
同上・脚注16
機械判読は「できる/できない」の2値ではなく連続量だ、という言い方です。ここは第31講 文字コード(そもそも文字を機械が読めるとはどういうことか)と、第82講のデータの整理・整形(読めたあと何をするか)に直結します。
3-4. 「無料」は「何をしてもよい」ではない
条件①をもう一度読んでください。「二次利用可能なルールが適用されたもの」です。ルールが無いのではなく、ルールがある。実物で確認します。政府統計の総合窓口(e-Stat)の利用規約は、政府標準利用規約(第2.0版)に準拠し、クリエイティブ・コモンズ表示4.0国際と互換だと宣言したうえで、次を要求します。
- コンテンツを利用する際は出典を記載する(例:出典:政府統計の総合窓口(e-Stat))
- 編集・加工して利用する場合は、出典とは別に編集・加工等を行ったことを記載する
- 編集・加工した情報を、あたかも国が作成したかのような態様で公表・利用してはいけない
- 複製・公衆送信・翻訳・翻案等は自由。商用利用も可能
気象庁ホームページも同型で、2026年8月時点では公共データ利用規約(第1.0版)に準拠すると書いています。基本指針も令和6年改正で「原則、公共データ利用規約を適用し」となり、デジタル庁は「これまで政府標準利用規約やCC BY4.0等を適用しているWebサイト・オープンデータには、公共データ利用規約をご利用ください」と案内しています。規約の名前がいま移行中なので、使うときは必ずそのサイトの規約ページを開いてください(2026年8月時点)。
①出典表示は要るか ②改変してよいか(してよいなら改変した旨を書く) ③商用利用してよいか。この3つを確認せずに「無料だから自由」と考えるのが、いちばんよくある誤解です。
3-5. 自分で集める場合の限界①――アンケートは偏りを負う
面白いことに、この論点を最初に見せているのは国の授業用スライドです。文部科学省の授業・研修用コンテンツ【情報Ⅰ】[5]「オープンデータの分析」は、こういう順番で進みます。
- 「学習時間が長いほど、睡眠時間は短い」という仮説を立てる
- クラスでアンケートを取る(睡眠時間の平均358分、勉強時間の平均131分、相関係数0.045=相関なし)
- スライドに一言だけ書かれる――「実は、アンケートを取らなくても、世の中には様々な統計調査がある!」
- 「既存の調査結果を活用して、仮説を検証してみよう。」
- 公的統計の生活時間データを使うと負の相関が出て、単回帰式 y = −0.173x + 523.78(xは学業の時間、yは睡眠の時間、単位は分)まで進む
国の教材が、自分で集めたデータで一度失敗して見せてから、公的統計に切り替えている。これは教え方として非常に誠実です。なぜ失敗したのかは第92講 標本調査と母集団の内容そのもの。1クラス分の標本は小さく、無作為抽出でもなく、無回答の偏りも負います。学習指導要領解説 情報編も、情報Ⅰ(4)で「オープンデータなどについて扱い、データ収集の偏りについても考え」と明記しています。
3-6. 自分で集める場合の限界②――スクレイピングは規約と負荷を負う
「Webページから機械でかき集めればいい」も限界があります。情報Ⅱ教員研修用教材 第3章 学習12 は、実習コードを載せた直後にこう書きます。
繰り返し文などにより多数回アクセスを試みたり、画像などのファイルサイズの大きいファイルを多数取得したりすることは、対象となるWebサーバに必要以上の負荷をかけることから、プログラムの実行の可否を検討する必要がある。また、Webスクレイピングを利用規約で禁止しているWebサイトもあるので、利用規約を確認することも必要である。
文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅱ』教員研修用教材」第3章 前半 学習12(令和2年7月、該当箇所はp.118相当)
同じ教材が用語も定義しています。自動でWebサイトを巡回してデータをかき集めることをクローリング、そのデータを解析して必要なデータを抽出することをスクレイピング、合わせてWebスクレイピング。Pythonなら requests と Beautiful Soup4、Rなら rvest を使う、とまで書いてあります。
つまりスクレイピングには、①相手サーバへの負荷 ②利用規約 ③著作権という3つの制約がかかります。取れることと、取ってよいことは別です。ここは第12講(著作権と情報の利用)と組にして覚えてください。
3-7. だから「公的統計を使える」ことが強い
| 集め方 | コスト | 偏り | 法的リスク | 機械判読 |
|---|---|---|---|---|
| 自分でアンケート | 高い | 大きい(標本が小さく無作為でない) | 低い | 自分で設計できる |
| Webスクレイピング | 中 | 大きい(母集団が不明) | 規約・著作権・負荷 | サイト構造に依存 |
| オープンデータ | ほぼ0 | 調査設計が公開されている | 規約を守れば低い | 条件として保証されている |
オープンデータは、3つの弱点を同時に解決している唯一の選択肢です。だから共通テストの題材にも、情報Ⅱの実習にも、これが使われます。
4. 手で確かめる
ここからは実演です。e-Statから実際にデータを1つ取得し、Pythonで集計するところまでやります。登録もAPIキーも要りません。以下はすべて2026年8月3日に私が実際に実行し、出力を確認したものです。
4-1. どこから取るか
総務省統計局「統計ダッシュボード」のWeb APIを使います。API仕様ページは「利用登録不要で、誰でもお使いいただけます」と明記しており、CSV/JSON/XML/JSON-stat で返ります。
- エンドポイント(CSV):https://dashboard.e-stat.go.jp/api/1.0/Csv/getData
- 取るデータ:総人口(系列コード 0201010000000010000)/地域=全国(00000)/周期=年(Cycle=3)
4-2. 実行したコード
import urllib.request, csv, io
URL = ("https://dashboard.e-stat.go.jp/api/1.0/Csv/getData"
"?Lang=JP&IndicatorCode=0201010000000010000"
"&RegionCode=00000&Cycle=3")
raw = urllib.request.urlopen(URL).read()
print("受け取ったバイト数:", len(raw))
print("先頭4バイト :", raw[:4])
text = raw.decode("utf-8") # 例外が出なければUTF-8で確定
print("UTF-8としてデコード成功")
rows = list(csv.reader(io.StringIO(text)))
hi = [i for i, r in enumerate(rows) if r and r[0] == "indicatorCd"][0]
print("メタデータの行数 :", hi)
head = rows[hi]
rec = [dict(zip(head, r)) for r in rows[hi + 1:] if len(r) == len(head)]
print("データの件数 :", len(rec))
print("列名 :", head)
series = [(d["timeCd"][:4], int(d["value"]), d["isProvisional"], d["cellAnnotations"])
for d in rec]
print("収録期間 :", series[0][0], "〜", series[-1][0])
peak = max(series, key=lambda t: t[1])
last = series[-1]
print("最大の年 :", peak[0], "年", f"{peak[1]:,}", "人")
print("最新の年 :", last[0], "年", f"{last[1]:,}", "人",
"(速報値フラグ =", last[2], ")")
print("最大からの減少 :", f"{peak[1] - last[1]:,}", "人")
y2020 = [t for t in series if t[0] == "2020"][0]
print("2020→2025 増減 :", f"{last[1] - y2020[1]:,}", "人",
f"({(last[1] - y2020[1]) / y2020[1] * 100:.2f} %)")
for y, v, p, a in series:
if a and "国勢調査" not in a:
print(" ", y, f"{v:,}", "|", a)
出力です。
受け取ったバイト数: 9503
先頭4バイト : b'"GET'
UTF-8としてデコード成功
メタデータの行数 : 30
データの件数 : 82
列名 : ['indicatorCd', 'unitCd', 'statCd', 'regionCd', 'timeCd',
'cycle', 'regionRank', 'isSeasonal', 'isProvisional',
'value', 'cellAnnotations']
収録期間 : 1920 〜 2025
最大の年 : 2008 年 128,084,000 人
最新の年 : 2025 年 123,049,524 人 (速報値フラグ = 1 )
最大からの減少 : 5,034,476 人
2020→2025 増減 : -3,096,575 人 (-2.45 %)
1945 71,998,104 | 内閣統計局(現 総務省統計局)「人口調査」による。;年齢は数え年である。;沖縄県を除く。
1951 84,541,000 | 沖縄県を除く。
1952 85,808,000 | 沖縄県を除く。
(中略。「沖縄県を除く。」の注記は1971年まで続く)
1971 105,145,000 | 沖縄県を除く。
4-3. ここから読み取れること(4つ)
(1) 文字コードは推測せず、確定させる。先頭4バイトが b'"GET' なのでBOMは付いていません。decode("utf-8") が例外を出さなかったので、UTF-8で確定です。ちなみに同じバイト列をShift_JISとして読ませると 'shift_jis' codec can't decode byte 0x86 で落ちます。「たぶんUTF-8だろう」で済ませず、1行で確定させられるのがデジタルデータの強みです(第31講)。
(2) CSVでも「そのまま読み込む」だけでは読めない。先頭30行はメタデータ(リクエスト内容・統計名・作成機関)で、31行目がヘッダです。だから「indicatorCd で始まる行を探す」という1行を書きました。機械判読可能とは「無加工で読める」ではなく「プログラムで確定的に位置を決められる」という意味です。ここが3-3で見た「度合いには段階がある」の実物です。
(3) 注記が数値と一緒に付いてくる。cellAnnotations という列に「沖縄県を除く。」「年齢は数え年である。」が入っています。しかもこの注記は1971年で終わります。つまりこの系列は1972年から沖縄県を含むように定義が変わっている。実際、前年からの増加は 1970→1971 が +479,829人なのに、1971→1972 は +2,450,000人と跳ねます。注記を捨てて数字だけ見た人は「1972年に人口が急増した」と結論してしまう。但し書きまで機械可読な形で渡してくるのが、まともなオープンデータです。
(4) 速報値かどうかがフラグで来る。2025年の行は isProvisional = 1。人間なら脚注の「※速報値」を読む場面が、機械には1列として渡ってきます。人が読む注と機械が読む列が同じ内容を持っている――これが「機械判読に適した」の到達点です。
4-4. 検算する(ここが本題)
APIで得た2025年の値が正しいかを、別の一次資料で照合します。総務省統計局「令和7年国勢調査 人口速報集計 結果の要約」(令和8年5月29日公表)の表Ⅰ-1 は、2025年(令和7年)の人口を 123,049,524人、5年間の増減数 −3,096,575人、増減率 −2.5% と記載しています。
| 項目 | APIから計算した値 | 統計局の公表PDF | 一致 |
|---|---|---|---|
| 2025年の人口 | 123,049,524人 | 123,049,524人 | ○ |
| 2020年からの増減数 | −3,096,575人 | −3,096,575人 | ○ |
| 2020年からの増減率 | −2.45% | −2.5%(四捨五入) | ○ |
1人まで一致しました。同じ数字に2つの独立した経路(APIとPDF)で到達できる――これがオープンデータを使う最大の利点です。二次情報のまとめサイトを見ていたら、この照合はできません。第96講 グラフの嘘を見抜くで扱う「元データに戻る」という作法が、実際にできるのはこのためです。
なお、ピークが「2008年」と出た点にも意味があります。これは人口推計の系列でのピークで、国勢調査の年だけに限れば2010年(128,057,352人)が最大です。同じ「日本の人口のピーク」でも、どの統計を見るかで年が変わる。出典を書かない数字は検証できない、というのはこういうことです。
4-5. 出典の書き方(実物)
上の結果を記事や発表資料に使うなら、こう書きます。
出典:総務省統計局「統計ダッシュボード」(https://dashboard.e-stat.go.jp/)を加工して作成
統計ダッシュボードのAPI仕様は、APIを使ったサービスを公開する場合に「このサービスは、統計ダッシュボード(総務省統計局)を使用していますが、サービスの内容は国によって保証されたものではありません」という趣旨のクレジット表示を求めています。取ったら書く。ここまでが利用条件です。
5. 共通テストではこう出る(重要度 A)
実際に出ました
令和8年度(2026年度)本試験の第4問(配点25)は、気象庁のデータを使った桜の開花日の分析が題材でした。問題文の中に「この気象庁のデータはオープンデータである」と明示され、問1a はオープンデータについての2つの説明文の正誤の組合せを選ばせる設問です。(当塾では大学入試センターの著作物である問題文・選択肢・図表は転載しません。設問の構造と問われ方だけを書きます。)
つまり「オープンデータ」は、データ分析問題の導入の飾りではなく、定義そのものが独立した設問として問われました。しかも判断の根拠は3-1で見た3項目だけで足ります。①二次利用可能なルールがあらかじめ適用されている=使うたびに申請する必要はない。③無償=誰でも入手できる。ここを知っていれば数秒で切れる設問です。逆に「なんとなく無料のデータ」という理解だと、迷って時間を溶かします。
出題の型
型1:定義の正誤判定。3条件(二次利用可能・機械判読・無償)に照らして○×を決めます。「利用申請が必須」「営利目的では使えない」「加工してはいけない」はいずれも定義に反します。
型2:出典と信頼性を問う。「このデータは誰が作成したか」「どこから得たか」を答えさせる型。国・地方公共団体・研究機関・個人ブログを並べて信頼性を比べさせることもあります。
型3:二次利用の可否。「グラフを作って発表資料に載せてよいか」「出典を書けばよいか」。無償と無条件は別、が判断の軸です。
型4:公的統計の読み取り。e-Statや気象庁の表を与えて、欠損値・単位・期間・注記を読ませます。令和8年度の問1bは、表の中の記号が記録が無いこと(欠損)を意味すると読ませ、その行を除外させる流れでした。4-3の(3)で見た注記の話が、そのまま出題になっています。
落とし穴
- 「無料だから何をしてもよい」と考える。出典表示・改変の明示・「国が作ったかのように見せない」は条件です。
- 「登録が要るならオープンデータではない」と決めつける。基本指針は脚注で「セキュリティの理由により、利用者に対し、事前登録を求めたり、データへのアクセス方法に制限を設けたりといった措置が講じられることがあり得る」と書いています。登録の有無だけで判定しないこと。
- 有償のデータをオープンデータと呼ぶ。基本指針は「データ提供システムの維持管理に要するコストを限定された利用者からの料金徴収でまかなうケース」をオープンデータとは言えないと明記しています。
- 速報値と確定値を混ぜる。4-2で見たとおり、速報値にはフラグが付きます。
- 注記を読まずに時系列を比較する。途中で定義が変わっている系列があります。
練習用の自作問題(本記事オリジナル)
次の(ア)〜(エ)のうち、オープンデータ基本指針の定義に照らしてオープンデータと言えないものをすべて選べ。
- (ア) 出典を書けば誰でも自由に加工・再配布できる、無償のCSVファイル
- (イ) 無償で公開されているが、紙の帳票をスキャンした画像だけのPDF
- (ウ) CSVで機械判読でき、二次利用も自由だが、年間利用料が必要なデータ
- (エ) 無償・CSV形式だが、利用規約に「営利目的での利用を禁じる」とあるデータ
解答 (イ)(ウ)(エ)。(イ)は②機械判読、(ウ)は③無償、(エ)は①営利・非営利を問わない二次利用を、それぞれ満たしません。3条件はANDなので、1つ欠けた時点で外れます。(ア)だけが3つとも満たします。
6. 情報Ⅱではこうなる
6-1. 語数調査:オープンデータは情報Ⅰで厚く、情報Ⅱで薄い
学習指導要領解説 情報編/情報Ⅰ教員研修用教材(第1〜4章)/情報Ⅱ教員研修用教材(第1〜5章。第3章は前半・後半の2分冊)をすべてテキスト化し、当方で機械計数しました(2026年8月3日)。
| 語 | 解説 情報編 | 情報Ⅰ教材 | 情報Ⅱ教材 |
|---|---|---|---|
| オープンデータ | 5 | 36(全て第4章) | 3 |
| 機械判読 | 0 | 3(全て第4章) | 0 |
| 二次利用 | 0 | 2(全て第4章) | 0 |
| 利用規約 | 0 | 0 | 3(全て第3章前半) |
| スクレイピング | 0 | 1 | 6(全て第3章前半) |
| API | 3 | 36(第3章22・第4章14) | 34(第3章前半10・第4章12・第5章12) |
読み取れることが3つあります。
(1) オープンデータは、実は情報Ⅰの科目です。36件はすべて第4章、しかも学習20という1学習項目にまとまっています。情報Ⅱ側は3件しかなく、独立した学習項目としては存在しません。理由は6-5で書きます。
(2) 「機械判読」「二次利用」は学習指導要領解説に0件。それでも共通テストでは定義が正面から問われました。解説に無くても教員研修用教材にあり、教材にあるものは出る。本書が何度も見ている型です。教科書の索引だけを見て「出ない」と判断すると事故ります。
(3) 「利用規約」は情報Ⅰの一次資料に0件、情報Ⅱに3件。しかも3件とも Webスクレイピングの文脈です。規約を読む義務は、自分でデータを取りに行くようになった瞬間に発生する――この構造がそのまま語数に出ています。
6-2. 情報Ⅱでは、データ収集が3つ(+1)に分かれる
情報Ⅱ教員研修用教材 第3章 学習12「大量のデータの収集と整理・整形」の冒頭はこうです。
データを収集する際には、アンケートのような調査からの取得、計測機器からの取得、Web APIからの取得などの方法がある。国内のWebサイトだけでなく、海外のWebサイトにも目を向けると多様なデータを取得することができる。
前掲「情報Ⅱ」教員研修用教材 第3章 前半 学習12(p.118相当)
情報Ⅰの「オープンデータをダウンロードする」が、情報Ⅱでは調査/計測機器(センサー)/Web APIの3経路に分岐します。さらにWebスクレイピングが第4の経路として加わる。実習は、アメリカ地質調査所(USGS)のEarthquake Catalog APIから地震データをGeoJSONで取り、次に文部科学省の新着情報ページからHTMLのタグを手がかりに項目名を抽出する、という2本立てです。
ここで教材が書いている一文が効きます。
一般にWeb APIを用いてデータを取得する際は、これを提供するサイトのユーザー登録とAPIを利用するためのキー(特定の文字列)の取得が必要である。ここでは、登録なしで利用できるUSGSのEarthquake CatalogのAPIを使って実習してみよう。
同上
教材は「登録不要のAPIは貴重だ」という前提で海外サイトを選んでいます。しかし4-2で使った統計ダッシュボードのAPIは、日本の政府統計でありながら登録不要です。いま高校生が手を動かすなら、日本語のデータでそのまま実習できます。
6-3. Web APIは情報Ⅱの専売特許ではない
語数表のとおり、APIは情報Ⅰ教材にも36件あります。実物を挙げます。
- 情報Ⅰ 第3章 学習14「応用的プログラム」:研修の目的に「APIの概念を理解し、外部のビッグデータや処理機能を活用できるようになる」。郵便番号から住所を返すWeb APIを
requests.get(url, params=param)で叩くPythonコードまで載っています。 - 情報Ⅰ 第4章 学習21「さまざまな形式のデータとその表現形式」:Web APIによるデータの取得。YAHOO! JAPANデベロッパーネットワークに登録してクライアントIDを申請し、60分後までの降水量予測をXML形式とJSON形式で取得する手順が書かれています。
つまり「情報Ⅰ=ダウンロード、情報Ⅱ=API」という単純な分業ではありません。差は別のところにあります。
6-4. 差は「呼ぶ側」から「決める側」へ
情報Ⅱ 第4章 学習23 では、Web APIの扱いが変わります。教材は図書検索用Web APIの仕様表(url/token/table/column/value/format)を示し、urllib.parse.urlencode(params) の戻り値を url + "?" + p と自分で連結してGETするコードを載せます。第4章の主題は情報システムの設計なので、ここでのAPIは「便利な既製品」ではなくモジュール間のインタフェースです。学習22 では「入力と出力のデータの形式を定めることが必要である」と、仕様を自分で決める側に立たされます。第74講 Webの仕組みのURLとクエリ文字列の話が、ここで設計の道具になります。
情報Ⅰ:公開されたデータを、公開された形式で受け取る(オープンデータ・Web API・ダウンロード)。
情報Ⅱ:どこから取るかを設計し、規約と負荷と偏りを自分で判断し、必要なら自分がAPIの仕様を決める。
6-5. 逆向きの空白として記録しておく
本書は「上限を情報Ⅱに置く」と言っていますが、全項目が情報Ⅱへ伸びるわけではありません。オープンデータは、情報Ⅰで1学習項目を占める中核でありながら、情報Ⅱ教材では3件しか現れず、独立項目として存在しない。消えるのではなく、「取ってくる対象」から「取り方の選択肢のひとつ」へ位置づけが下がり、話題が収集手段(API・スクレイピング)と規約・偏りへ移る。これが正確な記述です。伸びるもの・役割が変わるもの・そこで終わるものの3種類がある、という地図のほうが、読者には役に立ちます。
6-6. 対比表
| 観点 | 情報Ⅰ | 情報Ⅱ |
|---|---|---|
| 何を学ぶか | オープンデータの定義・意義・形式 | 収集手段の選択(調査/計測機器/Web API/スクレイピング) |
| 一次資料の所在 | 教員研修用教材 第4章 学習20(オープンデータ36件) | 第3章 学習12(スクレイピング6件・利用規約3件) |
| 規約の扱い | 語が0件(定義の中の「二次利用可能なルール」だけ) | 「利用規約を確認することも必要である」と明記 |
| 偏りの扱い | 「データ収集の偏りについても考え」(解説) | 学習11で母集団・無作為抽出・選択バイアスを独立項目化 |
| 到達点 | 公開データを正しく使える | どこから取るかを設計し、自分でAPIの仕様も決める |
7. この講のまとめ
- オープンデータの定義は3条件のAND:①二次利用可能なルール ②機械判読に適する ③無償。1つ欠けたら外れる。
- 根拠は官民データ活用推進基本法 第11条。国・自治体は義務、民間事業者は努力義務。だから公的データは遠慮なく使ってよい。
- 「機械判読」は、コンピュータが自動で加工・編集できること。PDFの表は該当しない。度合いには段階がある。
- 無償は無条件ではない。出典表示・改変の明示・「国が作ったかのように見せない」が条件。規約は政府標準利用規約から公共データ利用規約へ移行中(2026年8月時点)。
- 自分で集めるとアンケートは偏りを、スクレイピングは規約・負荷・著作権を負う。だから公的統計が強い。
- 統計ダッシュボードのAPIは登録不要でCSVを返し、取れた値は統計局の公表PDFと1人まで一致した。
- 共通テストでは令和8年度本試験 第4問 問1a で定義そのものが問われた。
- 情報Ⅱでは収集が調査/計測機器/Web API/スクレイピングに分岐し、規約を読む義務が発生する。
出典(すべて2026年8月3日に取得・確認)
- デジタル庁「オープンデータ基本指針」(平成29年5月30日決定/令和6年7月5日改正) https://www.digital.go.jp/resources/open_data
- e-Gov法令検索「官民データ活用推進基本法」(平成28年法律第103号)第11条
- 政府統計の総合窓口(e-Stat)「利用規約」 https://www.e-stat.go.jp/terms-of-use
- 総務省統計局「統計ダッシュボード」およびAPI仕様 https://dashboard.e-stat.go.jp/static/api
- 総務省統計局「令和7年国勢調査 人口速報集計 結果の要約」(令和8年5月29日公表) https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2025/kekka/pdf/summary.pdf
- 気象庁「気象庁ホームページについて」(公共データ利用規約 第1.0版に準拠) https://www.jma.go.jp/jma/kishou/info/coment.html
- 文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅰ』教員研修用教材」第3章 学習14/第4章 学習20・21
- 文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅱ』教員研修用教材」第3章 前半 学習12/第4章 学習22・23
- 文部科学省「授業・研修用コンテンツ」【情報Ⅰ】[5]「オープンデータの分析」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/mext_01832.html
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編」平成30年7月
- 大学入試センター「令和8年度大学入学共通テスト 本試験 情報Ⅰ」(設問構造の確認のみ。問題文は転載していません)
この講は情報Ⅰ 最強120講義(全講一覧)の第81講です。取ってきたデータを「どの型として扱うか」は第80講 データの種類と尺度、集めたデータで予測式を作るところは第88講 回帰直線と最小二乗法へ進みます。制度の話はすべて2026年8月時点の情報です。
執筆:藤原進之介(数強塾グループ代表)
オンライン数学専門塾「数強塾」代表。累計3,500名以上の中高一貫校生を指導。東進ハイスクール・東進衛星予備校・代々木ゼミナールなど出講実績あり。情報Ⅰの参考書を複数執筆しており、KADOKAWA『ゼロから始める情報I』、Gakken『きめる!共通テスト 情報Ⅰ』などがあります。本記事は参考書『藤原進之介の最強120講義』第81講のWeb版です。
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