情報Ⅰ 暗号とデジタル署名の頻出パターン演習|共通鍵と公開鍵の利点比較・電子認証【パターン攻略5】

こんにちは、数強塾代表・情報Ⅰ専門塾「情報ラボ」主宰の藤原進之介です。この記事は、共通テスト情報Ⅰの頻出出題パターンを小問単位で総ざらいするシリーズ『頻出パターン攻略』の第5回で、テーマは暗号とデジタル署名です。

この記事は、私の著書『共通テストパターンドリル情報Ⅰ』の第1章で扱っている出題パターンをもとに、Web向けに問題を新しく作り直し、解説を大幅に増補したものです。書籍の問題そのものは掲載していません(すべて書き下ろしのオリジナル問題です)。書籍をお持ちの方は、同じパターンを別の問題でもう1周する使い方ができます。

共通テスト「情報Ⅰ」は2025年1月から実施されている60分100点の試験です。暗号とデジタル署名は、前身にあたるセンター試験・共通テストの「情報関係基礎」でも、各大学の個別の情報入試でも繰り返し出題されてきた定番分野で、しかも問われ方が驚くほど安定しています。具体的には、「用語の定義を答える」「共通鍵と公開鍵の利点を比較する」「デジタル署名で確認できることを選ぶ」「署名の空欄補充で鍵の向きを埋める」の4パターンでほぼ尽くせます。

逆にいえば、この4つの型を理屈ごと押さえていない受験生は、本番で選択肢の日本語の「もっともらしさ」に毎回振り回されます。2026年度の共通テスト情報Ⅰは平均点が56.59点と前年から12.67点下がり、知識問題を素早く確実に拾う重要性はむしろ上がりました。この記事の所要時間は15〜25分です。1問ごとに「なぜその答えになるのか」を口で言えるかを確かめながら進んでください。

パターン1 暗号の基本用語を答える

最初のパターンは、短い説明文を読んで、当てはまる用語を答える(または選ぶ)型です。単純に見えますが、この分野は「暗号化・復号・鍵・署名・認証」と似た顔の用語が密集しているため、定義のキーワードをあいまいに覚えていると選択肢問題でも平気で落とします。まず全体の地図から描きます。

地図——暗号の話は「隠す・2方式・名乗る」の3層でできている

この分野の用語は、次の3層に整理すると迷子になりません。第1層はデータを隠す仕組みそのもの(平文・暗号文・鍵・暗号化・復号)。第2層は隠し方の2方式(共通鍵暗号方式・公開鍵暗号方式)。第3層は「本人が作った」ことを保証する仕組み(デジタル署名・電子認証)です。試験の説明文は、必ずこのどれかの層のキーワードを含んでいます。

用語 意味 覚えるときの急所
平文 暗号化する前の、そのまま読めるデータ 「ひらぶん」と読む。「へいぶん」ではない
暗号文 平文を規則に従って変換した、第三者には意味の取れないデータ 途中で盗まれてよいのはこちら
暗号化や復号のときに使う、変換の具体的な中身を決めるデータ 変換の手順(アルゴリズム)と鍵は別物
暗号化 平文を暗号文に変換すること 目的は「盗聴されても読めなくする」こと
復号 暗号文を、鍵を使って元の平文に戻すこと 「復号化」と書かない
共通鍵暗号方式 暗号化と復号に同じ鍵を使う方式 速いが、鍵の受け渡しが弱点
公開鍵暗号方式 暗号化には公開鍵、復号には対になる秘密鍵を使う方式 鍵は2個で1組(鍵ペア)
デジタル署名 作成者が本人であること・改ざんされていないことを保証するために文書に付加するデータ 公開鍵暗号方式の応用技術
電子認証 認証局が電子証明書を発行し、署名や公開鍵が本人のものであることを証明する仕組み 「第三者機関」が目印
平文 読める状態 暗号文 意味不明の列 平文 元どおり 暗号化 鍵を使う 復号 鍵を使う 途中で盗聴されても、見えるのは暗号文だけ 鍵がなければ平文には戻せない 戻す操作の名前は「復号」——「復号化」とは書かない

図1 暗号化と復号の全体像。用語問題はこの1枚の各部品の名前を問うている
なぜ「復号化」と書いてはいけないのか

「暗号」は、平文を暗号という別の状態に変えるから「化」が付きます。一方、戻す操作は「復号」という言葉自体が「元の符号に復する」という動作を表しており、教科書も共通テストも「復号」で統一しています。記述式で「復号化」と書くのはもったいない失点のもとですし、選択肢の文でも正しい表記を知っていることが前提になります。声に出して「暗号化・復号」とセットで覚えてください。

もう一段深く——「鍵」と「手順」は別物、署名と認証は「実印と印鑑証明」

用語表の中で受験生が最も雑に覚えているのが「鍵」です。現代の暗号は、変換の手順(アルゴリズム)そのものは公開し、鍵だけを秘密にするのが設計の原則です。たとえば「アルファベットを後ろへn文字ずらす」という古典的な暗号(シーザー暗号)なら、「ずらす」という手順が公開されていても、「n がいくつか」という鍵が分からなければすぐには読めません。手順は世界共通でよく、秘密にすべきは鍵だけ——この原則は、後のパターン2で誤答選択肢を切る根拠になります。

第3層の2語は、実印と印鑑登録証明書の関係で覚えるのが一番速いです。デジタル署名は「本人が文書に押す実印」にあたるデータで、本人にしか作れません。しかし、押された印が本当にその人の実印かどうかは、印だけを見ても分かりません。そこで役所が発行する印鑑登録証明書にあたるのが電子証明書で、それを発行する第三者機関が認証局、この証明の仕組み全体が電子認証です。マイナンバーカードのICチップに電子証明書が入っているのは、この仕組みの身近な実例です。

オリジナル類題で確認

【問1】次の⑴〜⑷の説明文に当てはまる語を、それぞれ答えよ。

⑴ 暗号文を、鍵を使って元の平文に戻す操作。
⑵ 文書の作成者が本人であることと、内容が途中で書き換えられていないことを受信者が確かめられるように、文書に付加されるデータ。
⑶ 暗号化に使う鍵は広く公開し、復号に使う鍵は受信者だけが秘密に持つ暗号方式。
⑷ 認証局と呼ばれる第三者機関が電子証明書を発行して、デジタル署名や公開鍵が本人のものであることを証明する仕組み。

STEP 1 説明文から層のキーワードを拾います。⑴「戻す操作」は第1層の動作の名前。⑵「文書に付加されるデータ」は第3層。⑶「公開する鍵と秘密の鍵」は第2層の方式名。⑷「第三者機関」「証明書」は第3層の証明の仕組みです。

STEP 2 ⑵と⑷の区別が最大の急所です。署名は本人が「作って付ける」データ、電子認証は第三者が「本人のものだと証明する」仕組み。説明文の主語が本人側なら署名、認証局側なら電子認証です。

答え ⑴復号 ⑵デジタル署名(電子署名) ⑶公開鍵暗号方式 ⑷電子認証

⑴を「復号化」と書いた人は、表現から直してください。⑷を「認証局」と答えるのも惜しい間違いで、問われているのは「仕組み」の名前、認証局は「機関」の名前です。説明文の末尾(〜する操作/〜するデータ/〜する方式/〜する仕組み)と答えの品詞をそろえる意識を持つと、この型の取りこぼしが消えます。共通テスト前身の「情報関係基礎」や私立大の情報入試でも、この説明文→用語の型は定番です。

パターン1の切り方

①説明文の層(隠す/方式/名乗る)を判定 → ②層内のキーワードで確定(「同じ鍵」なら共通鍵、「戻す」なら復号、「第三者機関」なら電子認証)→ ③答えの品詞を説明文の末尾にそろえる。この3手で機械的に処理できますが、丸暗記ではなく「なぜその仕組みが必要か」(鍵を分ける理由、証明機関が要る理由)まで言えるようにしておくと、初見の言い換えにも対応できます。

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パターン2 共通鍵と公開鍵の利点を比較する

2つ目は、この分野の主役です。「公開鍵暗号方式の利点として適切なものを選べ」という形で、共通鍵暗号方式との比較を問う型。共通テスト系の試験で繰り返し出題されており、誤答の作り方まで毎回よく似ています。まず両方式を1枚の表で比べます。

比較の観点 共通鍵暗号方式 公開鍵暗号方式
鍵の関係 暗号化と復号に同じ鍵 暗号化は公開鍵・復号は対になる秘密鍵
処理速度 速い 遅い
鍵の受け渡し 相手に鍵を安全に届ける必要がある(ここが最大の弱点) 秘密鍵は渡さない。公開鍵は知られてもよいので受け渡しの危険がない
相手が増えたとき 相手ごとに別の鍵が必要で、管理する鍵が増える 自分の鍵ペア1組のままでよい
暗号化の鍵が漏れたら 復号の鍵も同じなので、暗号文が読まれてしまう 公開鍵から復号はできないので、暗号文は安全なまま

共通鍵暗号方式の弱点は、「その鍵をどうやって相手に届けるか」に尽きます。鍵を暗号化せずにネットワークで送れば、盗聴者にも鍵が渡ります。かといって鍵を暗号化して送るなら、その暗号の鍵をどう届けるのかという同じ問題が繰り返されるだけです。これが鍵配送問題で、通信したい相手全員と事前に安全な受け渡しをするのは現実的ではありません。

公開鍵暗号方式は、この問題を「閉める鍵と開ける鍵を別にする」という逆転の発想で解決しました。イメージは開いた状態の南京錠です。受信者は、開いた南京錠(公開鍵)を世界中に配ります。誰でもその南京錠で箱を閉められますが、いったん閉めたら、開けられるのは南京錠の鍵(秘密鍵)を持つ受信者だけ。南京錠がいくつ出回っても、開ける鍵が漏れない限り安全です。だから秘密鍵は最初から最後まで受信者の手元を離れず、受け渡しそのものが発生しません

ただし万能ではなく、公開鍵暗号方式は処理に時間がかかるという明確な弱点があります。実際の通信(Webの暗号化など)では、まず公開鍵暗号方式で共通鍵を安全に相手へ届け、以後の大量のデータは高速な共通鍵暗号方式で暗号化する併用方式が使われます。この実戦的な流れは対策演習 第4回で空欄補充として演習しているので、本記事の後に挑戦してください。

オリジナル類題で確認

【問2-1】公開鍵暗号方式が共通鍵暗号方式に比べて優れている点の説明として適切なものを、次の⓪〜④のうちから二つ選べ。

⓪ 通信したい相手が何人に増えても、自分は公開鍵と秘密鍵の1組を管理すればよく、相手ごとに新しい鍵を作って安全に届ける手間がない。
① 暗号化と復号に同一の鍵を使うため、鍵の仕組みが単純で、暗号化や復号の処理も高速に行える。
② 暗号化に使う鍵が第三者に知られてしまっても、対になる秘密鍵を持たない限り、その暗号文を復号することはできない。
③ 通信を始める前に秘密鍵の受け渡しを安全に済ませておけば、その後のやり取りが簡単に解読されることはない。
④ 暗号化の手順そのものが非公開になっているため、手順を知らない第三者には解読の糸口がない。

STEP 1 利点比較は「鍵の受け渡し」と「速度」の2軸で切ります。まず受け渡しの軸。⓪は「相手ごとに鍵を作って届ける手間がない」——公開鍵方式の核心そのもので、正しい。③は「秘密鍵の受け渡しを安全に済ませておけば」と言った時点でアウトです。公開鍵暗号方式では秘密鍵はそもそも誰にも渡しません。受け渡しを前提に語っているこの文は、共通鍵暗号方式の説明です。

STEP 2 次に定義と速度の軸。①は「暗号化と復号に同一の鍵」——これは共通鍵暗号方式の定義で、公開鍵の利点どころか別方式の話です。「高速」という利点も共通鍵側のもの。定義のすり替え選択肢は、冒頭の数文字で切れるように訓練してください。

STEP 3 残る②と④。②は「暗号化の鍵(公開鍵)が知られても、秘密鍵がなければ復号できない」——公開鍵方式の安全性の根拠で、正しい。④はパターン1で確認した原則に反します。現代の暗号は手順(アルゴリズム)は公開し、鍵だけを秘密にする設計であり、「手順が秘密だから安全」は誤りです。

答え ⓪と②

冒頭の「今日の一問」の答え合わせでもあります。「暗号化に使った鍵が第三者に渡っても暗号文が安全なまま」があり得るのは公開鍵暗号方式。暗号化に使う公開鍵は、そもそも公開されている=最初から全員に「渡って」いますが、復号には別の秘密鍵が必要なので問題ないのです。共通鍵暗号方式では暗号化の鍵=復号の鍵なので、漏れた瞬間に暗号文は読まれてしまいます。この「2つ選べ」型は共通テスト「情報関係基礎」の追試験でも同型の出題があります。

【問2-2】40人のクラスの全員が、他の39人それぞれと1対1で秘密の通信をしたい。

(a)共通鍵暗号方式を使う場合、クラス全体で必要な鍵は全部で何個か。
⓪ 39個 ① 40個 ② 780個 ③ 1560個

(b)公開鍵暗号方式を使う場合、各自が新たに用意する自分の鍵は何個か。
⓪ 1個 ① 2個 ② 39個 ③ 40個

STEP 1 共通鍵暗号方式では、盗み読みされないために2人の組ごとに専用の鍵が必要です(全員で1個の鍵を共有したら、クラスメイトどうしの通信も読めてしまいます)。つまり必要な鍵の数は「40人から2人を選ぶ組み合わせの数」で、40×39÷2=780個。③の1560個は、40×39をそのまま計算して2で割り忘れた値です。AさんとBさんの鍵は1個を2人で共有するので、往復で2個数えてはいけません。

STEP 2 公開鍵暗号方式では、各自が用意するのは自分の公開鍵と秘密鍵の1組=2個だけです。相手が39人でも3900人でも変わりません。相手の公開鍵は「相手が公開しているものを使う」だけで、自分が新たに作るものではありません。

答え (a)② (b)①

この計算は「相手ごとに鍵が必要」という共通鍵の弱点を数字で体感させる型で、人数を変えて出題されます。公式としてn人なら n×(n−1)÷2 個。人数が増えると鍵の数は2乗のペースで爆発する——だから公開鍵暗号方式が必要になった、という因果で覚えてください。

パターン2の切り方——利点比較は2軸で終わる

鍵の受け渡しの軸:「受け渡し・配送・事前に共有」という言葉が出たら共通鍵側の話。公開鍵方式の利点は「受け渡しが不要」「公開鍵は知られてもよい」。②速度の軸:「高速」は共通鍵の利点、「低速」は公開鍵の弱点。ここに③補助として「暗号化と復号に同一の鍵」=共通鍵の定義、「手順が秘密だから安全」=原則違反、の2つの定番誤答を覚えておけば、この型はほぼ全滅させられます。

パターン3 デジタル署名で確認できることを選ぶ

3つ目は、デジタル署名の守備範囲を問う型です。「署名を検証すると何が確認できるか」を選ばせ、誤答にはもっともらしい「セキュリティっぽい効果」が並びます。結論を先に言うと、署名で確認できるのは次の2つだけです。

デジタル署名で確認できるのは2つだけ

(1)その文書を作成したのが本人であること(なりすましでないこと)(2)文書が途中で改ざんされていないこと。この2つ以外——「複製されていないか」「盗聴されていないか」「どんな経路で届いたか」——は、署名では確認できません。なぜそう言い切れるのかを、仕組みから確認します。

仕組み——ハッシュ値を「秘密鍵で閉めて、公開鍵で開ける」

デジタル署名の材料はハッシュ値(要約文)です。ハッシュ値とは、文書全体をハッシュ関数という計算にかけて得られる短いデータで、次の性質があります。同じ文書からは必ず同じ値が出る/文書が1文字でも変わると全く別の値になる/ハッシュ値から元の文書は復元できない。つまりハッシュ値は、文書の「指紋」として照合に使えます。

送信者ミサキさんは、文書のハッシュ値を自分の秘密鍵で暗号化し、これをデジタル署名として文書に添えて送ります。受信者ケンタさんは、届いた文書から自分でハッシュ値を計算し、同時に署名をミサキさんの公開鍵で復号して中のハッシュ値を取り出し、2つを見比べます。

送信者ミサキがすること Ⅰ 文書からハッシュ値(要約文)を作る Ⅱ ハッシュ値をミサキの秘密鍵で 暗号化する=これがデジタル署名 Ⅲ 文書に署名を添えて送る 受信者ケンタがすること Ⅳ 届いた文書から自分でハッシュ値を 計算する Ⅴ 署名をミサキの公開鍵で復号し、 中のハッシュ値を取り出す Ⅵ ⅣとⅤのハッシュ値を照合する 一致 → ミサキ本人が作成し、改ざんもされていない 不一致 → 途中で書き換えられたか、別人が作った疑い 秘密鍵で閉めて、公開鍵で開ける——「開けられた」事実が本人作成の証明

図2 デジタル署名の流れ。ⅣとⅤの2つのハッシュ値の照合がすべての要

なぜこれで本人だと分かるのか。ミサキさんの公開鍵で開けられる署名は、対になるミサキさんの秘密鍵で閉めたものだけです。秘密鍵は本人しか持っていないので、「公開鍵で開いた」という事実そのものが「本人が作った」ことの証明になります。パターン4で詳しく見ますが、内容を隠す暗号化とは鍵を使う向きが逆である点に注意してください。

なぜ改ざんが分かるのか。途中の第三者が文書を書き換えると、ケンタさんがⅣで計算するハッシュ値が変わり、署名の中のハッシュ値(Ⅴ)と食い違います。第三者が署名の方も作り直そうにも、ミサキさんの秘密鍵がないので閉め直せません。改ざんは必ず照合の不一致として現れます。

逆に、署名にできないことも仕組みから説明できます。複製——文書と署名をまるごとコピーすれば、署名も一緒に複製されるので、コピーされたこと自体は検出できません。盗聴——署名は文書の内容を隠す技術ではなく、文書そのものは読める形で送られることもあります。内容を隠したければ、別途暗号化が必要です。経路——どのネットワークを通って届いたかは、署名の照合結果とは無関係です。

オリジナル類題で確認

【問3】アオイさんは、文化祭の企画書ファイルにデジタル署名を付けて、実行委員のリクさんに送った。リクさんがこの署名を検証することで確認できることを、次の⓪〜④のうちから二つ選べ。

⓪ 企画書が、間違いなくアオイさん本人によって作成されたこと
① 企画書のファイルが、送信の途中で第三者にコピーされていないこと
② 企画書の内容が、送信の途中で書き換えられていないこと
③ 企画書の内容が、送信の途中で第三者に盗み見られていないこと
④ 企画書が、どの通信経路をたどって届いたか

STEP 1 まず結論の2つ——本人・無改ざん——に対応する選択肢を探します。⓪が「本人」、②が「無改ざん」。これで正解は確定です。

STEP 2 残りが切れるかを確認します。①複製は署名ごとコピーされるので検出不能。③盗聴を防ぐのは署名ではなく暗号化の仕事——「署名=隠す技術」という誤解を狙った定番の罠です。④経路は署名と無関係。「〜されていないか」という否定形が並ぶと全部正しそうに見えますが、守備範囲の2つ以外は全部誤りです。

答え ⓪と②

共通テスト「情報Ⅰ」でも、デジタル署名で確認できる内容を選ばせる同型の出題があります。そこでも誤答には「複製されていないか」「盗聴されていないか」「どのような経路で届いたか」が並びました。署名の守備範囲は「誰が作ったか」と「変わっていないか」だけ——この1行を先に思い出してから選択肢を読むのが、この型の正しい順番です。

パターン3の切り方

選択肢を読む前に「本人・無改ざんの2つ」と唱える → 対応する2つを取る → 残りは「隠すのは暗号化の仕事」「コピーは署名ごと複製される」で理由ごと切る。理由まで言えれば、選択肢の言い回しがどう変わっても揺らぎません。

パターン4 署名の空欄補充——鍵の向きを埋める

最後は、パターン3の仕組みを空欄補充で問う型です。文章中の「誰の・どちらの鍵か」を埋めさせるもので、私立大の情報入試で好まれ、共通テストでも仕組みの理解を測る形で狙われます。先に、暗号化と署名の「鍵の向き」を1枚の対比表にします。

目的 閉める(暗号化する)鍵 開ける(復号する)鍵 開けられる人
内容を隠す(暗号) 受信者の公開鍵 受信者の秘密鍵 受信者だけ
作成者を示す(署名) 送信者の秘密鍵 送信者の公開鍵 誰でも(開けること自体に意味がある)

暗号は「受信者だけが開けられる」ことに価値があるので、誰でも閉められる受信者の公開鍵で閉め、受信者の秘密鍵で開けます。署名は逆で、「本人だけが閉められる」ことに価値があるので、送信者の秘密鍵で閉め、誰でも持てる送信者の公開鍵で開けます。開けた結果は秘密でも何でもありません——「開けられた」という事実が欲しいのです。標語にすると「隠すなら相手の公開鍵、名乗るなら自分の秘密鍵」。迷ったら「その鍵を持っているのは誰か」を考えれば、その場で復元できます。

オリジナル類題で確認

【問4】次の文章の空欄ア〜オに入れるのに最も適当なものを、後の⓪〜⑤のうちから一つずつ選べ。

ミサキさんはケンタさんに、電子的な文書を送ろうとしている。文書の内容を第三者に読まれないようにするには、ミサキさんは[ア]を使って文書を暗号化して送り、受け取ったケンタさんは[イ]を使って復号すればよい。

一方、この文書が確かにミサキさんの作成したものだと示すには、ミサキさんは文書から作ったハッシュ値を[ウ]で暗号化し、デジタル署名として文書に添えて送る。ケンタさんが[エ]でこの署名を復号できたなら、この署名を作ることができたのは[オ]だけなので、文書はミサキさん本人が作成したものだと確認できる。

⓪ ミサキさんの公開鍵 ① ミサキさんの秘密鍵 ② ケンタさんの公開鍵
③ ケンタさんの秘密鍵 ④ ミサキさんの秘密鍵を持つ人 ⑤ ケンタさんの公開鍵を持つ人

STEP 1 前半は「内容を隠す」話。開けてよいのはケンタさんだけなので、開ける鍵はケンタさんの秘密鍵(イ=③)。閉める鍵はその対になるケンタさんの公開鍵(ア=②)です。「ミサキさんが暗号化するのだからミサキさんの鍵だろう」と考えるのが典型的な誤りで、誰の鍵を使うかは、作業する人ではなく「誰に開けさせたいか」で決まります

STEP 2 後半は「名乗る」話。本人にしか閉められないことが証明の根拠なので、閉めるのはミサキさんの秘密鍵(ウ=①)、開けるのはその対のミサキさんの公開鍵(エ=⓪)。オは「この署名を作れたのは誰か」——秘密鍵で閉めたのだから、ミサキさんの秘密鍵を持つ人(オ=④)だけです。

答え ア② イ③ ウ① エ⓪ オ④

「Aが秘密鍵で暗号化し、BがAの公開鍵で復号できれば、Aが作った文書だと確認できる」という骨組みの空欄補充は、私立大の情報入試(湘南工科大など)で同型の出題があります。対比表の2行——暗号は受信者の公開鍵で閉める/署名は送信者の秘密鍵で閉める——さえ再現できれば、空欄がいくつあっても埋まります。なお、署名・SSLを含む空欄8個の大問実戦は対策演習 第4回で扱っています。

パターン4の切り方

①その空欄は「隠す」文脈か「名乗る」文脈かを判定 → ②隠すなら受信者の鍵ペア、名乗るなら送信者の鍵ペアに固定 → ③閉める側か開ける側かで公開鍵・秘密鍵を割り当てる。機械的に見えますが、根っこは「秘密鍵は本人しか持っていない」という1つの事実だけです。そこから毎回その場で導けるようにしておくのが、忘れない唯一の方法です。

即答チェック——仕上げの8問

最後に、今日の4パターンを即答形式で総点検します。口頭で答えてから開いてください。3秒以内に言えなかった問題が、あなたの復習ポイントです。

Q1 暗号化する前の、そのまま読めるデータを何という?

平文(ひらぶん)。暗号化後は暗号文。

Q2 暗号文を元に戻す操作の正しい表記は「復号」「復号化」のどちら?

復号。教科書・共通テストとも「復号」で統一されている。

Q3 暗号化と復号に同じ鍵を使う方式は? その利点を1語で言うと?

共通鍵暗号方式。利点は処理が速いこと。弱点は鍵の受け渡し。

Q4 公開鍵暗号方式で、絶対に他人に渡してはいけない鍵は?

秘密鍵。公開鍵は知られてもよく、そもそも受け渡しの危険がないことが利点。

Q5 n人が互いに1対1で共通鍵暗号方式の通信をするとき、必要な鍵は何個?

n×(n−1)÷2 個。40人なら780個。公開鍵暗号方式なら各自2個(1組)でよい。

Q6 デジタル署名で確認できる2つのことは?

本人が作成したこと(なりすましでない)と、改ざんされていないこと。複製・盗聴・経路は確認できない。

Q7 デジタル署名を「作るとき」に使うのは、誰の・どちらの鍵?

送信者の秘密鍵。受信者は送信者の公開鍵で復号して照合する。内容を隠す暗号化(受信者の公開鍵で閉める)と向きが逆。

Q8 公開鍵や署名が「本人のもの」だと証明する第三者機関と、その仕組みの名前は?

機関は認証局(電子証明書を発行)、仕組みは電子認証。実印に対する印鑑登録証明書の関係。

仕上げの1歩

図2(デジタル署名のⅠ〜Ⅵ)を、何も見ずに白紙へ再現してみてください。どの鍵で閉めてどの鍵で開けるかまで描ければ、パターン3と4は本番でどう聞かれても崩れません。描けなかった矢印が、今日の復習箇所です。

よくある質問

この記事の問題は、書籍『共通テストパターンドリル情報Ⅰ』と同じものですか?

いいえ。書籍の第1章で整理している出題パターンの分類だけを引き継ぎ、題材・文言・選択肢はすべてWeb向けに新しく作り直した当塾のオリジナル問題です。書籍の問題は掲載していないので、書籍と本記事で同じパターンを2周する使い方ができます。

共通テスト予想問題【暗号とデジタル署名 仕上げ】——藤原進之介の独自作成問題

実際の共通テスト・試作問題の出題型を分析して作成した、本記事オリジナルの予想問題です(藤原進之介の独自作成問題であり、大学入試センターの問題の転載ではありません)。解答を隠してあるので、まず自力で解いてみてください。無断転載はご遠慮ください。

問1 共通鍵暗号方式の課題として最も適当なものはどれか。

① 暗号化と復号に同じ鍵を使うため、その鍵を相手へ安全に届ける方法が問題になる
② 暗号化がまったくできない
③ 鍵が存在しない
④ 計算が公開鍵方式より常に遅い

解答・解説を見る

正解:。鍵を送る通信こそ盗聴されるかもしれない——鍵配送問題が共通鍵方式の宿命です。処理は高速という長所があるため、実際には「鍵の受け渡しは公開鍵方式、本体の暗号化は共通鍵方式」と組み合わせて使われます。

問2 10人がそれぞれ1対1で共通鍵暗号を使う場合に必要な鍵の総数と、公開鍵暗号方式を使う場合に必要な鍵の総数(各自が公開鍵と秘密鍵を1組持つ)の組み合わせはどれか。

① 共通鍵45個・公開鍵方式20個
② 共通鍵20個・公開鍵方式45個
③ 共通鍵100個・公開鍵方式10個
④ 共通鍵10個・公開鍵方式10個

解答・解説を見る

正解:。共通鍵はペアごとに1個なので10×9÷2=45個、公開鍵方式は1人2個で20個です。人数が増えるほど差は開き(100人なら4,950個対200個)、公開鍵方式が多人数に向く理由が数字で見えます。場合の数の計算とセットの頻出問題です。

問3 公開鍵暗号方式で、AさんがBさんにだけ読める暗号文を送るときの鍵の使い方として正しいものはどれか。

① Bさんの公開鍵で暗号化し、Bさんが自分の秘密鍵で復号する
② Aさんの秘密鍵で暗号化し、Aさんの公開鍵で復号する
③ Bさんの秘密鍵で暗号化する
④ 鍵を使わずに送る

解答・解説を見る

正解:。「受信者の公開鍵で閉め、受信者だけが持つ秘密鍵で開ける」——南京錠を配って、鍵は本人だけが持つ構図です。②は署名の向き(次問)で、暗号化と署名は鍵の向きが逆になることが最大の紛れどころです。

問4 デジタル署名で使う鍵の向きとして正しいものはどれか。

① 送信者が自分の秘密鍵で署名を作り、受信者は送信者の公開鍵で検証する
② 受信者の公開鍵で署名を作る
③ 送信者の公開鍵で署名を作る
④ 鍵は使わない

解答・解説を見る

正解:。秘密鍵は本人しか持たないので、「その署名が作れた=本人である」ことの証明になります。暗号化(受信者の鍵で閉める)と署名(送信者の鍵で作る)——目的が違えば使う鍵の持ち主が変わる、という対比で整理しましょう。

問5 公開鍵が本当にその人のものであることを保証する仕組みとして最も適当なものはどれか。

① 認証局が発行する電子証明書
② 鍵の色
③ パスワードの長さ
④ 通信速度

解答・解説を見る

正解:。公開鍵自体は誰でも作れるため、「この公開鍵は確かにこの主体のもの」と第三者機関(認証局)が証明書で保証します。httpsの鍵マークの裏側もこの仕組み——信頼の連鎖の出発点として、証明書と認証局の役割が問われます。

出題形式・題材の傾向分析は本文の「共通テストではこう出る」を参照。ほかの講の予想問題は予想問題ハブシリーズハブからどうぞ。

出典・関連資料

  • 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編」——情報通信ネットワークの安全性を高める技術(暗号化・認証)に関する記述
  • 大学入試センター 大学入学共通テスト『情報Ⅰ』・センター試験/共通テスト『情報関係基礎』——公開鍵暗号方式の利点比較・デジタル署名で確認できる内容を問う同型の出題傾向の確認
  • 本記事の演習問題は、著書『共通テストパターンドリル情報Ⅰ』(藤原進之介)第1章の出題パターン分類と、上記の入試での出題傾向(共通テスト「情報関係基礎」追試験、湘南工科大学ほか私立大の情報入試における同型の出題)をもとに、数強塾が独自に作成したオリジナル問題です。書籍および実際の入試問題の転載は行っていません。

本記事は『頻出パターン攻略』全10回の第5回です。シリーズの一覧は頻出パターン攻略ハブ、講義編『最強120講義』の全体像は120講義ハブからご覧いただけます。

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