情報Ⅰ 最強120講義

【情報Ⅰ 第44講】論理回路(AND・OR・NOT・XOR)──直列がAND、並列がORになる理由

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今日の一問
次の問いに答えなさい。
コンピュータの特性を踏まえて活用するために,コンピュータの基本的な構成や演算の仕組み,オペレーティングシステムによる資源の管理と入力装置や出力装置などのハードウェアを抽象化して扱う考え方,コンピュータ内部でのプログラムやデータの扱い方,値の範囲や精度について理解するようにする
文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編」平成30年7月(該当箇所は解説p.31相当)
——さて、どこから手をつける?
答えと考え方は、この記事の中で順を追って解説します。

こんにちは、数強塾代表の藤原進之介です。この記事は参考書『藤原進之介の最強120講義』の第44講「論理回路(AND・OR・NOT・XOR)」のWeb版です。共通テスト「情報Ⅰ」での重要度はS、情報Ⅱでの接続先は(3)情報とデータサイエンスです。

AND・OR・NOTそのものと、真理値表・ベン図・ド・モルガンの法則は第43講「論理演算とベン図」で扱いました。この第44講は、その論理を回路として実装する話だけに絞ります。重なる部分は第43講へ逃がしますので、まだの方は先にそちらをお読みください。

1. この講の問い

真か偽かという頭の中の話が、なぜ電気という物理現象で実行できるのか。

2. 結論

この講の結論

スイッチを直列につなぐと「両方閉じないと電流が流れない」=AND、並列につなぐと「どちらかが閉じれば流れる」=OR になります。つまり論理演算は、最初から電気回路の形をしています。だから論理は計算ではなく配線として実装でき、それを部品化したものが論理ゲートです。そして NAND ひとつだけあれば、NOT も AND も OR も XOR も全部作れます。

3. なぜそうなるのか

3-1. 「論理回路」は学習指導要領には書かれていない

先に制度の話をします。ここを知らないと、参考書ごとに扱いの深さがバラバラな理由が分からないまま迷子になるからです。

高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編の全文を検索すると、「論理回路」「論理演算」「回路」という語は1件も出てきません(2026年8月3日にPDFをテキスト化して全文検索、いずれも0件でした)。情報Ⅰ(3)ア(ア)に書かれているのは、次の一文だけです。

コンピュータの特性を踏まえて活用するために,コンピュータの基本的な構成や演算の仕組み,オペレーティングシステムによる資源の管理と入力装置や出力装置などのハードウェアを抽象化して扱う考え方,コンピュータ内部でのプログラムやデータの扱い方,値の範囲や精度について理解するようにする

文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編」平成30年7月(該当箇所は解説p.31相当)

この「演算の仕組み」という4文字を論理回路として具体化したのは、学習指導要領ではなく教員研修用教材と大学入試センターの試作問題のほうなのです。文部科学省「情報Ⅰ」教員研修用教材の第3章 学習11「コンピュータの仕組み」は、研修の目的の箇条書きにこう書いています。

コンピュータは論理回路などから構成されており,演算の基本は論理演算であることについて理解する

文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅰ』教員研修用教材」第3章(令和2年、該当箇所はp.97相当)。同じ一文がp.103相当の「学習活動の目的」にも、p.105相当の「まとめ」にも再掲されています。

国の教材が、ひとつの学習の中で同じ一文を3回繰り返している。ここが試験に出る根拠です。

3-2. 直列がAND、並列がOR ── 論理が物理になる瞬間

本講の主戦場はここです。電池・スイッチ・豆電球で回路を作ってみます。

AB AB 直列=両方閉じないと流れない=AND 並列=どちらかで流れる=OR

図1 スイッチの直列と並列。左が直列、右が並列。丸に×は豆電球、左端は電池です。

スイッチ2つを直列(1本の線の上に順番に)並べると、豆電球が点くのはAもBも閉じているときだけです。片方でも開いていれば、そこで線が切れて電流が流れません。次に並列(2本に枝分かれさせてそれぞれにスイッチを置く)にすると、今度はどちらか一方でも閉じればそちらの道を通って電流が流れます。「閉=1、点灯=1」と書き直して表にします。

A B 直列の豆電球 並列の豆電球
0 0 0 0
0 1 0 1
1 0 0 1
1 1 1 1

左の列が AND、右の列が OR の真理値表そのものです。私がこの講で一番言いたいのはここです。ANDとORを電気で「表現した」のではありません。直列と並列が最初からANDとORだったのです。 論理式を回路に翻訳する作業は要りません。配線の形が、そのまま論理式の形をしています。

NOT はどうするか。押すと切れるタイプの接点(常閉接点)を使えば済みます。押していないとき電流が流れ、押すと止まる。入力1に対して出力0、入力0に対して出力1です。こうして AND・OR・NOT の3つが物理的な部品として作れることが分かりました。第43講で「AND・OR・NOTがあれば全部作れる」と書きましたが、それが紙の上の話ではなく工場で作れる話になったのが、この第44講です。

3-3. 「1」を決めているのは人間である(正論理と負論理)

もう一段だけ深いところに踏み込みます。回路に流れているのは電圧であって、0でも1でもありません。「電圧が高いほうを1と呼ぶ」と人間が決めたから AND に見えるだけです。この取り決めを正論理、逆に「電圧が低いほうを1」と決める流儀を負論理といいます。

同じ配線が、取り決めを裏返すと別のゲートに見えます。第43講のド・モルガンの法則が回路の世界でそのまま意味を持つのはこのためで、「ANDの入出力をすべて反転するとORになる」という関係が、そっくり「正論理のAND回路は負論理ではOR回路として働く」に対応します。これは受験用の豆知識ではありません。情報処理推進機構(IPA)の基本情報技術者試験シラバス Ver.9.2 には、こう書かれています。

コンピュータの基本的な論理回路である AND 回路,OR 回路,NOT 回路などの動作原理を理解する
用語例 NAND 回路,フリップフロップ,論理式,正論理,負論理,真理値表

情報処理推進機構「基本情報技術者試験(レベル2)シラバス Ver.9.2」(2026年8月3日取得)

0と1は物理量ではなく約束です。 ここを押さえておくと、上の学年で論理設計に進んだときに一度も転びません。

3-4. MIL記号の読み方 ── 覚えるのは「○は否定」だけ

回路図は文字ではなく図で書かれます。共通テストや教科書で使われるのは、通称MIL記号と呼ばれる特徴的な形の記号です。

AND(論理積) OR(論理和) NOT(否定) NAND NOR XOR(排他的論理和)

図2 MIL記号。左辺がまっすぐならAND系、へこんでいればOR系。小さい○は否定です。

規則はたった1つ、小さい○(バブル)は否定を表すだけです。これさえ知っていれば、NANDもNORも新しく覚える必要はありません。ANDの記号に○が付いていたらNAND、ORに付いていたらNOR。XORはORの左にもう1本の弧を足した形で、「ORだが両方はダメ」という但し書きに見えます。ANDとORの区別は左辺だけを見ます。 まっすぐならAND、へこんでいればOR。ここを目で1秒で判定できるようにしておいてください。

なお日本産業規格(JIS)には別系統の図記号があり、JIS C 0617-12「電気用図記号―第12部:二値論理素子」では長方形の箱にラベルを書く方式が定められています(規格名称は日本規格協会のカタログ表示によります。規格本文は未確認です)。試験に出るのはMIL記号のほうですが、図記号には流儀が複数あることを知っておくと、大学に入ってから混乱しません。

3-5. XORが「異なるとき1」であり、なぜ加算の1桁目になるのか

XOR(排他的論理和)は「AとBが異なるとき1」です。言い換えれば不一致検出器で、この見方が一番使えます。では、なぜXORが足し算の1桁目になるのか。2進法1桁の足し算を全部書いてみます。

A B A + B 桁上がり 1桁目
0 0 0 0 0
0 1 1 0 1
1 0 1 0 1
1 1 10 1 0

桁上がりの列を縦に読むと 0, 0, 0, 1 でAND。1桁目の列を縦に読むと 0, 1, 1, 0 でXORです。教員研修用教材も、まさにこの順番で導入しています。教材は「0+0=0/0+1=1/1+0=1 は or で対応できる」「1+1=10 は or で対応できない」と書き、そのうえで「A + B = CF、Cは桁上がり、Fは1桁目の値」と定義します。ORでは4行目だけが合わない、だから別のものが要るという筋道で、XORを天下り式に与えていません。

そのXORは、基本ゲートから組めます。XOR = (A OR B) AND NOT(A AND B)。日本語に直せば「どちらかは1で、しかし両方ではない」。定義そのままです。

AB OR AND NOT AND A XOR B

図3 XOR = (A OR B) AND NOT(A AND B)。上の枝がOR、下の枝がNAND(AND+NOT)です。

教員研修用教材の演習2は、まさにこの形の回路の空欄3か所を埋めさせる問題になっています(ORだけが最初から与えられ、①②③を埋める形式)。なお、桁上がりを次の桁へ送っていく話、つまり半加算器と全加算器は第45講の担当ですので、本講は基本ゲートまでで止めます。

3-6. NANDだけで全部作れる(機能的完全性)

最後に、本講で一番きれいな事実を置きます。NANDゲート1種類だけで、NOTもANDもORもXORも作れます。 これを機能的完全性といいます。

ANOT A ABA AND B ABA OR B 入力を2本とも同じにする=NOT NANDを2段重ねる=AND 両方をNOTしてからNAND=OR(ド・モルガンの法則)

図4 NANDだけによる構成。○の付いたD形がNANDです。

作りたいもの NANDによる構成 理屈
NOT A NAND(A, A) 両方の入力に同じものを入れる。A=1なら0、A=0なら1
A AND B NAND(NAND(A,B), NAND(A,B)) NANDは「ANDの否定」なので、もう一度否定すればANDに戻る
A OR B NAND(NAND(A,A), NAND(B,B)) ド・モルガンの法則。NOT(NOT A AND NOT B) = A OR B

3行目が重要です。ORをNANDで作る手順は、第43講で学んだド・モルガンの法則そのものです。ド・モルガンの法則は試験のための公式ではなく、回路を作り替えるための道具だったのです。

では、なぜこれが工学的に大事なのか。部品が1種類で済むからです。半導体の製造では、同じ構造を大量に並べるほど安く・小さく・速く作れます。ANDとORとNOTを別々に設計するより、NANDを敷き詰めて配線で作り分けるほうが合理的なのです。IPAのシラバスで「NAND回路」が用語例として複数の分野に登場するのは、これが実務の常識だからです。

4. 手で確かめる

4-1. 基本ゲートの真理値表を全部埋める

入力が2つなら4行しかありません。全部書きます。

A B AND OR XOR NAND NOR
0 0 0 0 0 1 1
0 1 0 1 1 1 0
1 0 0 1 1 1 0
1 1 1 1 0 0 0

NOTは1入力なので別に書きます。NOT 0 = 1、NOT 1 = 0。見るべきは4行目です。 ORは1、XORは0。ここだけでORとXORが区別できます。NAND列はAND列を上下そのままに反転したもの、NOR列はOR列を反転したもので、「○が付いたら列を反転」が図記号のバブルと一致していることを確認してください。

4-2. 教員研修用教材の演習2を自力で埋める

教材の図そのものは転載しませんが、構造はこうです。入力がAとB、中間信号がDとE、出力がC(桁上がり)とF(1桁目)。ORが1つだけ与えられ、空欄が①②③の3か所。真理値表は教材に印刷されています。

A B D E C F
0 0 0 1 0 0
0 1 1 1 0 1
1 0 1 1 0 1
1 1 1 0 1 0

Dの列 0,1,1,1 はOR。Cの列 0,0,0,1 はAND。Eの列 1,1,1,0 はCの反転だからNOT。Fの列 0,1,1,0 はDとEのAND。したがって ①=AND、②=NOT、③=AND です。私はこの表をPythonで独立に再現し、教材の印刷値と1マスも違わないことを確認しました。

4-3. NANDから組み立てて真理値表で検算する

A B X=NAND(A,B) NAND(X,X) A AND B NAND(A,A) NAND(B,B) NAND同士 A OR B
0 0 1 0 0 1 1 0 0
0 1 1 0 0 1 0 1 1
1 0 1 0 0 0 1 1 1
1 1 0 1 1 0 0 1 1

4列目と5列目、8列目と9列目がそれぞれ全行一致しました。入力の全パターンを尽くしているので、これで証明が終わっています。「たまたま合った」ではありません。反例が存在する余地がないのです。

4-4. Pythonのビット演算で検算する

以下は2026年8月3日に私の手元(Python 3)で実際に実行し、出力を確認したものです。

import itertools
P = list(itertools.product((0, 1), repeat=2))
nand = lambda a, b: int(not (a and b))
notN = lambda a:    nand(a, a)
andN = lambda a, b: nand(nand(a, b), nand(a, b))
orN  = lambda a, b: nand(nand(a, a), nand(b, b))
print([notN(a) for a in (0, 1)]  == [1, 0])
print([andN(a, b) for a, b in P] == [0, 0, 0, 1])
print([orN(a, b)  for a, b in P] == [0, 1, 1, 1])
print([a ^ b for a, b in P] == [int((a or b) and not (a and b)) for a, b in P])

実行結果は True が4行です。最後の行は「XOR = (A OR B) AND NOT(A AND B)」の検証で、これも全4通りで一致しました。次に、ビット演算子でも同じことができることを確かめます。Pythonの & | ^ ~ は、整数を2進数と見て桁ごとに独立に論理演算します。

print(bin(0b1100 & 0b1010))
print(bin(0b1100 | 0b1010))
print(bin(0b1100 ^ 0b1010))
print(~0b1100)
print(format(~0b1100 & 0b1111, '04b'))

実行結果:

0b1000
0b1110
0b110
-13
0011

4行目の -13 は間違いではありません。 Pythonの整数には桁数の上限がないので、~x は無限に1が続く値を意味し、10進では −13 と表示されます。4桁のNOTが欲しければ & 0b1111 で下位4桁を取り出す(マスクする)必要があります。この操作自体は共通テストでは問われませんが、「ビット数を決めないとNOTは定義できない」という事実は、負の数の表し方(2の補数)に直結する大事な話です。第40講「2進数・10進数・16進数の変換」で扱った「定められたビット数」という言葉が、ここで効いてきます。

マスクの実例も挙げます。

v = 0b10110110
print(format(v & 0b00001111, '08b'))   # 00000110
print(format(v | 0b00001111, '08b'))   # 10111111
print(format(v ^ 0b11111111, '08b'))   # 01001001

ANDは「必要な桁だけ残す」、ORは「特定の桁を強制的に1にする」、XORは「1が立っている桁だけ反転する」。とくにXORは同じ値を2回かけると元に戻ります。実際に確認しました。

data, key = 0b10110110, 0b01011010
enc = data ^ key
print(format(enc, '08b'), (enc ^ key) == data)   # 11101100 True

単純な暗号や画像の反転にXORが使われるのは、この可逆性のためです。

4-5. しきい値でANDとORを作る

論理ゲートは「入力に重みをかけて足し、しきい値を超えたら1を出す素子」と言い換えられます。出力を「w1×A + w2×B + b が0以上なら1、そうでなければ0」と定義して確かめました。

重みとバイアス A=0,B=0 A=0,B=1 A=1,B=0 A=1,B=1 一致するゲート
w1=1, w2=1, b=−1.5 0 0 0 1 AND
w1=1, w2=1, b=−0.5 0 1 1 1 OR

ところがXORは1個ではどうやっても作れません。重みを −4〜4 の整数、バイアスを −4〜4 の 0.5 刻みで全探索しましたが、XORを再現する組は0件でした(2026年8月3日、Pythonで確認)。XORには2段の構成が要ります。図3で3つのゲートを使ったのは、面倒だからではなく必要だからなのです。この事実が、この記事の最後で効いてきます。

5. 共通テストではこう出る(重要度S)

5-1. 一次資料で確認できる出題実績

大学入試センターが公表した「令和7年度大学入学共通テスト 試作問題『情報』の概要」には、試作問題『情報Ⅰ』第1問 問3の意図がこう書かれています。

コンピュータの基本的な仕組みである論理回路を理解しているか,示された演算処理を実現するための真理値表及び論理回路を考察できるかを問う

独立行政法人大学入試センター「令和7年度大学入学共通テスト 試作問題『情報』の概要」(2026年8月3日取得)

配点は6点で、第1問全体20点の3割にあたります。一方、2025年度の本試験の第1問はデジタル署名・IPv6・7セグメントLEDのデータ量・チェックディジット・UIデザインで構成され、論理回路は出題されていません。2026年度は第2問Bで画像の重ね合わせを題材にビットごとの論理演算が問われたと分析されています。2025年度・2026年度の設問構成は予備校等による解答解説(二次情報)に基づく記述です。当塾では共通テストの問題文・選択肢・図表は転載していません。

つまり、毎年必ず単独問題として出るわけではありません。しかし出れば6点規模で、しかも論理演算の理解はプログラム問題の条件式として毎年必ず要求されます。 重要度をSにしているのはこのためです。

5-2. 出題の型

型1:回路図 → 真理値表

図が与えられ、出力の列を埋める、または正しい真理値表を選ぶ型。中間信号に名前を付けて、左から順に列を作れば必ず解けます。 4-2でやったことがそのまま使えます。

型2:条件文 → 回路

「AとBの両方がそろったときだけ動く」といった日本語の条件が与えられ、それを実現する回路を選ぶ型。翻訳が本体で、演算そのものは易しい問題です。

型3:空欄補充

回路の一部が空欄になっていて、AND・OR・NOTのどれが入るかを答える型。教員研修用教材の演習2と同じ形式です。

型4:ビット列への演算

画像や信号のデータに、桁ごとのAND・OR・XORを施す型。2026年度本試験の第2問Bがこの型だと分析されています。4-4のマスク処理がそのまま道具になります。

5-3. 引っかけ

  • MIL記号のANDとORの取り違え。 左辺がまっすぐならAND、へこんでいればOR。ここだけ見ます。
  • バブル(○)の見落とし。 出力側の小さい○は否定です。見落とすと真理値表が全行反転します。図を見たらまず○を探す。
  • ORとXORの4行目。 A=1, B=1 でORは1、XORは0。差はここにしかありません。
  • 入力側にもバブルが付くことがある。 入力を反転してから演算する記法です。
  • 真理値表の行の順番。 00, 01, 10, 11 の順に並んでいるとは限りません。選択肢と比べる前に、自分の表の行順に並べ替えます。
  • 「両方ではない」と「両方とも違う」の混同。 NOT(A AND B) はNAND、NOT(A OR B) はNOR。第43講のド・モルガンの法則に戻って確認します。

5-4. 練習用の自作問題(本記事オリジナル)

問題

(1)NORゲートの真理値表を4行書け。
(2)NAND(NAND(A,A), NAND(B,B)) の真理値表を4行書き、どのゲートと一致するか答えよ。
(3)「AとBのうち、ちょうど一方だけが1のとき1」を、AND・OR・NOTだけで表す式を書け。
(4)8ビットの値 10110110 に 00001111 とのANDを施した結果を8桁で書け。
(5)正論理のAND回路は、負論理では何回路として働くか。

解答

(1)上から 1, 0, 0, 0 (2)0, 1, 1, 1 でOR(ド・モルガンの法則による) (3)(A OR B) AND NOT(A AND B) = XOR (4)00000110 (5)OR回路。0と1の呼び名を全部入れ替えると、ド・モルガンの法則によりANDとORが入れ替わります

共通テスト情報Ⅰの学習計画全体は共通テスト「情報Ⅰ」対策はいつから何をやるべきかにまとめてあります。本書の全120講の一覧は『藤原進之介の最強120講義』目次ページからご覧いただけます。

6. 情報Ⅱではこうなる

情報Ⅰの論理回路は「0か1かをきっぱり決める装置」です。情報Ⅱでは、この「きっぱり」が崩されます。そこが接続点です。

6-1. 論理ゲートはニューロンの原型である

文部科学省「情報Ⅱ」教員研修用教材 第3章 学習17「ニューラルネットワークとその仕組み」の活性化関数の節を読むと、驚くことに論理演算から説明が始まります

各ニューロンの出力に作用させる関数を活性化関数という。活性化関数は各ニューロンの結果の正確さを確率で表したものである。論理演算のように入力に対して0か1を返すような2値に分類ができる場合はステップ関数を用いる。はっきりとした分類ができる分類器をパーセプトロンという。ニューラルネットワークでは論理演算のように2値に分けられるとは限らない。猫か犬かのような2値分類の場合には,シグモイド関数やReLU(ランプ)関数を使い,猫か犬か鳥かといった複数に分類する場合はソフトマックス関数が多く用いられている

文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅱ』教員研修用教材」第3章 情報とデータサイエンス 後半(令和2年6月、該当箇所はp.162相当)

同じ教材は、ニューロンの計算を「(入力)×(重み付け)+(バイアス)」を活性化関数に入れるものとして説明しています。4-5でやったことと同じ形です。つまり構図はこうなります。

論理ゲート(情報Ⅰ) ニューロン(情報Ⅱ)
計算 入力×重みの和がしきい値を超えたら1 同じ計算をする
出力の関数 ステップ関数(0か1) シグモイド・ReLU・ソフトマックス(連続値)
重みを決める人 人間が設計する データから学習される
答え方 1である/0である 0.87の確率で猫である

教材が「2値に分けられるとは限らない」と書いているのはこの意味です。情報Ⅰの論理ゲートは、情報Ⅱのニューロンの、いちばん硬い特別な場合なのです。

そして4-5の結果がここで効きます。XORは1個のしきい値素子では作れませんでした。 だから2段にする。ニューラルネットワークに「層」が必要な理由の、いちばん小さい実例がXORです。情報ⅠでXORをORとNANDとANDの組み合わせで作った経験は、そのまま情報Ⅱの多層化の必然性の理解になります。

6-2. 条件の合成は決定木という形でデータ分析に戻ってくる

同じ教材の学習15「分類による予測」は、決定木を扱います。教材は「決定木とは,分類においてはモデルである。訓練データを複数の属性を基に分割し,予測に活用する」「1本の直線では分類できないデータを複数の属性(条件)を基に分割し,その条件を…木構造で表現する」と説明し、演習ではkaggleのtitanicデータを使って「乗客の年齢,性別,客室に関して,その生存の有無を表す決定木を作成してみましょう」という課題を出しています。

決定木は「性別が女性 かつ 客室等級が1等なら生存」のように、条件をANDでつないで枝を伸ばしたものです。論理回路との違いは1点だけ、誰が条件を決めるかです。

情報Ⅰ(論理回路) 情報Ⅱ(決定木・ニューラルネットワーク)
条件の合成 人が回路として設計する データから学習して作られる
入力 1ビットの信号 年齢・性別・客室などの属性
正しさの根拠 真理値表を全通り確認する テストデータでの正解率で評価する
誤りの代償 答えが合わない 間違った予測をして、間違った判断をする

最下行が本質です。真理値表なら4行を全部確かめて「証明」できますが、決定木やニューラルネットワークの入力は組み合わせが天文学的で、全通りを確かめることが原理的に不可能です。だから情報Ⅱでは「正しさの証明」ではなく「テストデータでの評価」に変わります。第43講で書いた網羅的検証が、ここで限界に突き当たるわけです。

6-3. 情報Ⅰのうちにやっておくこと

論理回路で「入力を全部書き出して確かめる」経験を積んでおくことが、情報Ⅱでいちばん効きます。4行を全部書ける人は、8行も16行も書けます。書かない人は、条件が3つになった瞬間に勘で答えるようになります。 そして情報Ⅱのデータ分析では、その勘が「間違った母集団を分析する」という形で表面化します。第47講「アルゴリズムと流れ図」で扱う「手順を全部書き出す」訓練と、この講の「場合を全部書き出す」訓練は、同じ筋肉を鍛えています。

まとめ

  • スイッチの直列がAND、並列がOR。論理は電気に翻訳されたのではなく、最初から回路の形をしている。
  • 0と1は物理量ではなく約束(正論理・負論理)。約束を裏返すとANDとORが入れ替わる。
  • MIL記号は「左辺がまっすぐならAND、へこんでいればOR、○は否定」の3点だけで読める。
  • XORは不一致検出器。2進法1桁の足し算の1桁目がXOR、桁上がりがAND。
  • XOR = (A OR B) AND NOT(A AND B)。NANDだけで NOT・AND・OR・XOR が全部作れる(機能的完全性)。
  • 情報Ⅱでは、ステップ関数がシグモイドに置き換わってニューロンになり、条件の合成が決定木になる。XORが1段で作れないことが、層が必要な理由の最小の実例。

出典(すべて2026年8月3日に取得)

  • 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編」平成30年7月
  • 文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅰ』教員研修用教材」第3章 コンピュータとプログラミング(令和2年)
  • 文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅱ』教員研修用教材」第3章 情報とデータサイエンス 後半(令和2年6月)
  • 独立行政法人大学入試センター「令和7年度大学入学共通テスト 試作問題『情報』の概要」
  • 情報処理推進機構(IPA)「基本情報技術者試験(レベル2)シラバス Ver.9.2」
  • 日本規格協会 規格カタログ(JIS C 0617-12「電気用図記号―第12部:二値論理素子」の名称のみ参照。規格本文は未確認)

なお、情報Ⅰがそもそもなぜ必修科目になったのかという背景は情報Ⅰはなぜ必修になったのかに書きました。制度の話は2026年8月時点の情報です。

執筆:藤原進之介(数強塾グループ代表)

オンライン数学専門塾「数強塾」代表。累計3,500名以上の中高一貫校生を指導。東進ハイスクール・東進衛星予備校・代々木ゼミナールなど出講実績あり。情報Ⅰの参考書を複数執筆しており、KADOKAWA『ゼロから始める情報I』、Gakken『きめる!共通テスト 情報Ⅰ』などがあります。本記事は参考書『藤原進之介の最強120講義』第44講のWeb版です。

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