共通テスト情報Ⅰ 知的財産・法規の対策問題演習|利用規約・CCライセンス・個人情報保護法【対策演習 第3回】

こんにちは、数強塾代表の藤原進之介です。この記事は、私が普段行っている「情報Ⅰ」の共通テスト対策の授業のうち、知的財産・法規の問題演習の回をもとに、Web教材として読めるように再構成した演習版です。講義で扱った知識の整理と、授業で実際に解いてもらっている演習問題を、Web用に作り直したオリジナル問題として収録しています。

共通テスト「情報Ⅰ」は2025年1月から実施されている60分100点の試験で、知的財産や個人情報保護法などの法規・制度は、学習指導要領「情報Ⅰ」の「(1) 情報社会の問題解決」に対応する分野です。プログラミングのような長い思考の連鎖を要求されない代わりに、短時間で確実に取れるかどうかがそのまま差になる分野です。大学入試センターが公表した試作問題では、素材サイトの利用規約とクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを大問まるごと使う構成も示されました。

ただし、この分野は「暗記モノ」ではありません。実際の出題は初見の利用規約やガイドラインを読み、行為や状況と照合させる読解型が主流で、照合の手順さえ身につければ、条文を丸暗記していなくても満点が取れます。この記事では、最初に「今日使う武器」を5つに絞って整理し、後半で演習問題を3テーマ・計8問解きます。所要時間はおよそ40〜60分です。

要点整理──今日使う武器を5つに絞る

まず、この分野の知識を「試験で使う形」に絞って整理します。基礎からの丁寧な解説は『情報Ⅰ 最強120講義』の該当講に譲り、ここでは演習で実際に使う骨組みだけを並べます。5つとも「3秒で言えるか」を確かめながら読んでください。

武器① 知的財産権は3つの軸で切る

知的財産権の問題は、細かい条文知識ではなく「何を守るか」「登録が要るか」「いつまでか」の3軸で整理できているかを試してきます。まず全体像を1枚の表にします。

権利 何を守るか 登録 保護期間
特許権 発明 特許庁に出願・登録 出願から20年
実用新案権 考案(形や構造の工夫) 特許庁に出願・登録 出願から10年
意匠権 デザイン 特許庁に出願・登録 出願から25年
商標権 マーク・ネーミング 特許庁に出願・登録 登録から10年(更新できる
著作権 思想・感情の表現 不要(作った瞬間に発生) 原則、著作者の死後70年
試験での急所は2か所

1つ目は発生のしかた。上4つの産業財産権は特許庁への登録で発生します(方式主義)が、著作権は作った瞬間に自動的に発生し、登録も申請も表示も要りません(無方式主義)。2つ目は更新。保護期間を更新できるのは商標権だけです。商標は商売を続ける限り守る意味があるから、と理由ごと押さえると忘れません。

武器② 著作者人格権──譲渡できない3つ

著作者の権利は、財産としての著作権(財産権)と、人格を守る著作者人格権の2階建てです。人格権は次の3つで、人格そのものに結びついているため他人に譲渡できません

権利 内容 試験での問われ方
公表権 公表するかどうか、いつ・どのように公表するかを決める 未発表の作品を勝手に公開された
氏名表示権 名前を出すか・どんな名義で出すかを決める 「自分の作品だと示すために行使する」
同一性保持権 意に反して勝手に改変されない 「改変を認めるためにあえて行使しない

一方、複製権・公衆送信権・翻訳権・頒布権などの財産権は、契約で他人に譲渡できます。この対比と、同一性保持権を「あえて行使しない」ことで他者の二次創作を認めるという運用(演習1の問2で直撃します)まで押さえてください。

武器③ CCライセンス──4つの条件と組み合わせのルール

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)は、著作者が「この条件を守れば自由に使ってよい」とあらかじめ意思表示しておく仕組みです。条件は4つだけです。

記号 名前 条件の意味
BY 表示 作品のクレジット(作者名など)を表示する
NC 非営利 営利目的では利用しない
ND 改変禁止 元の作品を改変しない
SA 継承 改変してよい。ただし改変後も同じライセンスで公開する
組み合わせの2大ルール

ルール1:BYは必ず付く。作者のクレジット表示は全ライセンス共通の土台です。ルール2:NDとSAは同時に付かない。NDは「改変するな」、SAは「改変してよい(ただし同条件で公開)」なので、真っ向から矛盾するからです。この2つから、組み合わせの総数が計算で出せます——演習1の問3で数えます。

武器④ 個人情報保護法──事業者の義務は3本柱

個人情報保護法が、個人情報を事業に使う者(個人情報取扱事業者)に課す義務は、大きく3本柱で覚えます。

義務 中身
利用目的の特定と通知・公表 何のために使うかを特定し、本人に通知するか、又は公表する
同意なき第三者提供の禁止 集めた個人情報を本人の同意なく他者へ横流ししない
安全管理措置 漏えいや紛失を防ぐ体制を作る
最大の急所──「取得に常に同意が必要」ではない

ここは誤解が多いところです。個人情報保護法は「本人の同意なしに個人情報を取得すること」を一律には禁止していません。利用目的をあらかじめ通知・公表していれば取得できる場面が広くあります(例外的に、病歴や犯罪歴などの要配慮個人情報だけは取得自体に原則として本人の同意が必要)。この法律の骨格は「個人の権利利益の保護」と「個人情報の活用」のバランスであって、禁止一辺倒ではないのです。演習2の正誤問題がここを突いてきます。

武器⑤ httpsが守るもの・守らないもの

httpsは、WebのやりとりをTLSという仕組みで暗号化するプロトコルです。守る範囲を1枚の図で確定させておきます。

カフェの中 カフェの外(インターネット) ノートPCの ブラウザ アクセス ポイント 経路上の ルータたち Web サーバ 無線(電波) Wi-Fiの暗号化が守る区間(手前の1区間だけ) httpsが守る区間(ブラウザ〜Webサーバの端から端まで) Wi-Fiの暗号化とhttpsは「層が違う2枚の鎧」──守る区間の長さが違う ただしhttpsが暗号化するのは通信の中身。相手が善人かどうかは守らない

図1 Wi-Fiの暗号化は「PC〜アクセスポイント」の1区間だけ。httpsは端から端まで通信内容を守る
httpsの3行まとめ

守るもの:ブラウザとWebサーバの間の通信内容。途中の経路(カフェのWi-Fi区間を含む)で盗聴されても中身は読めません。確認できるもの:サーバ証明書により、接続先が「そのドメインの正当な持ち主」であること。守らないもの:接続先が善人かどうか。偽サイトもhttpsを使えます。この限界が演習3の核心です。

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演習1 素材集サイトの利用規約とCCライセンス

ここからが本編です。以下の演習問題は、実際の入試での出題傾向(共通テストの試作問題や各大学の情報入試で繰り返し出ている型)をふまえて、当塾が独自に作成したオリジナル問題です。まず自力で解いてから解説を読んでください。

【設定】美術部のアオイさんは、文化祭のポスターに使うため、有料のデジタル素材集サイト「きりえ屋」で切り絵風イラストを1点購入した。著作者・著作権者から個別の許諾は得ていない。このサイトの利用規約(要旨)は次の4条である。

第1条 購入した素材は、Webサイトへの掲載などの公衆送信を含め、私的利用・商用利用を問わず、回数の制限なく利用できる。
第2条 素材の著作権その他の権利は、著作者および当サイト運営者に帰属する。素材の購入によって、これらの権利が購入者に移転することはない。
第3条 素材は、サイズ変更・トリミング・色調の変更・文字入れの範囲で加工して利用できる。
第4条 有償であるか無償であるかを問わず、素材データそのものの転売・譲渡、および第三者への利用許諾を禁止する。

【問1】アオイさんの次の行為あ〜うのうち、利用規約に違反するものをすべて挙げた組み合わせを、⓪〜⑥から1つ選べ。

あ 同じ素材を使いたいというクラスメイトに、購入した画像データをそのままコピーして渡した。代金は受け取っていない。
い 素材を背景に使って文化祭のPR動画を作り、動画配信サイトで一般公開した。
う 素材の色調を変えたうえで、自分が制作したイラストであるとして自分の名前を入れ、クラスのWebページに掲載した。

⓪ あ ① い ② う ③ あとい ④ あとう ⑤ いとう ⑥ あといとう

STEP 1 規約問題の最初の一手は、規約を1行ずつ「ひとこと」に圧縮することです。第1条=使うのは自由。第2条=あなたの物にはならない。第3条=加工は範囲内でOK。第4条=人に渡すのはダメ。この圧縮メモを作ってから行為を見ます。

STEP 2 行為1つに条文1つを対応させます。は「データを人に渡す」行為なので第4条と照合——「有償であるか無償であるかを問わず」譲渡は禁止。お金を取っていなくてもアウトです。は「ネットで公開」なので第1条と照合——公衆送信も含めて利用は許可済み。規約の範囲内です。

STEP 3 は2段階です。色調の変更そのものは第3条の範囲内。しかし「自分が制作した」と名乗る部分が第2条と衝突します——権利は購入者に移転していないのに、自分の著作物として公開しているからです。これは規約違反であると同時に、著作者の氏名表示権を踏みにじる行為でもあります。

答え ④(あとう)

あ=違反(第4条:無償でも譲渡・第三者への利用許諾にあたる)/い=OK(第1条:公衆送信も許可済み。「ネットにアップ=即アウト」と反射的に選ばせる罠です)/う=違反(第2条:権利は移転していないのに自分の著作物として公開)。組み合わせ選択肢は、先に⓪〜⑥を眺めると迷います。あ・い・うを1つずつ○×で確定させてから、最後に番号を見るのが正しい順序です。

「無償ならセーフ」は罠──今日の一問の答え合わせ

冒頭の黒板の問いの答えはアウトです。「お金をもらっていないから大丈夫」という生活感覚を、規約は「有償無償を問わず」の一句で先回りして封じています。有料素材の購入で買っているのはデータの所有権ではなく、規約の範囲内で使う許可(ライセンス)だけなのです。

【問2】今度は美術部が、オリジナルの切り絵デザイン「あおば祭シンボルマーク」を自分たちで制作し、部のWebサイトで配布することにした。部の方針は次のとおりである。

「美術部の作品であることを示すために【イ】を行使する。一方、見た人が自由に作品をアレンジして公開できるようにするため、【ウ】はあえて行使しないことにする。」

【イ】【ウ】に入る権利を、それぞれ次から1つずつ選べ。

⓪ 公表権 ① 氏名表示権 ② 複製権 ③ 同一性保持権 ④ 頒布権 ⑤ 著作隣接権

STEP 1 問題文の動詞に注目します。「作品であることを名前で示す」——これは武器②の3つのうち氏名表示権そのものです。イは①。

STEP 2 「他者のアレンジ(改変)を受け入れる」——無断の改変を拒む権利は同一性保持権でした。それをあえて行使しないことで、二次創作を歓迎する状態を作れます。ウは③。

答え イ=①(氏名表示権) ウ=③(同一性保持権)

②複製権・④頒布権は財産権で、「名前を示す」「改変を拒む」という人格の話ではありません。⑤著作隣接権は、実演家や放送事業者など作品を伝える人の権利で、作った本人には無関係。⓪公表権は、すでに配布を決めているこの場面の論点ではありません。人格権3つが言えれば実質2択の問題です。

【問3】部長のヒナタさんは、シンボルマークの配布にあたりクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)を付けることにした。

(1)CCライセンスは、表示(BY)・非営利(NC)・改変禁止(ND)・継承(SA)の4条件の組み合わせで表される。ただしBYは必ず付け、NDとSAは同時に付けない。このとき、作れるライセンスの組み合わせは全部で【エ】種類である。

(2)ヒナタさんの希望は次の3つである。「作ったのが美術部だと分かるようにしたい」「企業の商品ポスターなど、営利目的でも自由に使ってほしい」「アレンジした作品は、同じ条件でみんなが使えるように公開してほしい」。この希望に合うライセンスを【オ】から選べ。

⓪ BY ① BY−SA ② BY−NC−SA ③ BY−ND

STEP 1 【エ】の数え上げ。4条件それぞれを付ける・付けないで数えると24=16通りになりますが、これは間違いです。制約が2つあるからです。正しくは、決めることを3つに整理します——BYは固定(1通り)、NCを付けるか付けないか(2通り)、改変の扱い(3通り)

STEP 2 ポイントは「NDとSAは同時に付かない」の処理です。NDとSAを別々のON/OFFとして数えるのではなく、「改変の扱い」という1つの枠の3択——ND(改変禁止)・SA(改変OKだが同条件で公開)・どちらも付けない(改変も自由)——にまとめます。すると 1×2×3=6種類

BY固定=1通り NCの有無=2通り 改変の扱い=3通り BY(表示) 必ず付く NCなし (営利もOK) NCあり (非営利限定) BY のみ BY−ND BY−SA BY−NC BY−NC−ND BY−NC−SA 1 × 2 × 3 = 6種類

図2 CCライセンスの数え上げ。NDとSAは同時に付かないので、「改変の扱い」を1枠・3択(なし/ND/SA)にまとめて数える

STEP 3 【オ】は、アイコンの暗記ではなく本人の希望を条件のON/OFFに翻訳する作業です。「美術部だと分かるように」→BY(そもそも全ライセンス共通)。「営利目的でも自由に」→営利を禁じるNCは付けないので②が消える。「アレンジ歓迎、同じ条件で公開してほしい」→改変OK+同条件公開=SA。改変禁止のNDは真逆なので③が消え、SAが必要なので⓪も消えます。

答え エ=6 オ=①(BY−SA)

②はNCが「営利目的でも自由に」という希望に反し、③のNDは「アレンジしてほしい」と真逆。⓪のBYのみでは「同じ条件で公開してほしい」という継承の希望を実現できません。希望→条件の翻訳表を頭の中に作れば、初見のライセンス問題も迷いません。なお、大学入学共通テストの試作問題(2022年公表)でも、素材サイトの利用規約の読解から人格権の使い分け、CCライセンスの選択までを問う、この演習1とほぼ同じ骨組みの大問が出題されています。試作問題の全体像は第107講(試作問題・サンプル問題の解剖)で扱っています。

演習2 個人情報保護法──初見のガイドラインを読み切る

次は法律文の読解です。この型の問題は、条文知識ではなく、空欄の前後の日本語との接続で解けるように作られています。見たことのない法律文でも満点が取れる——それを体感するための大問です。

【設定】商業施設「あおばモール」は、過去に迷惑行為を行った人物の再入店を検知するため、顔識別機能付きカメラを導入し、入退店の状況を記録することにした。次の文章は、導入にあたって施設が参照した、個人情報保護法の考え方をまとめたガイドライン風の文書(当塾作成)の一部である。

「顔識別機能付きカメラで入退店者の顔画像を取得し、そこから抽出した【 1 】データを迷惑行為防止の目的で照合に用いる事業者は、個人情報保護法上の個人情報取扱【 2 】者として、同法の義務を負う。このようなカメラは、外観からは通常の防犯カメラと区別がつかず、撮影される本人が顔識別機能の存在を認識することは難しい。したがって事業者は、利用目的をあらかじめ本人に通知し、又は【 3 】しなければならない。具体的には、店舗の入口など本人が気づきやすい場所に、カメラの利用目的と、カメラシステムの運用【 4 】が誰であるかを掲示することが望ましい。掲示スペースに限りがある場合は、詳細を掲載したWebサイトの【 5 】又は二次元コードを併せて示す方法が考えられる。」

【問1】空欄【1】〜【5】に入る語として最も適当なものを、次の語群からそれぞれ1つずつ選べ。

⓪ 主体 ① 氏名 ② 公表 ③ URL ④ 事業 ⑤ 顔特徴 ⑥ 合意 ⑦ 客体 ⑧ 承認 ⑨ 画素

STEP 1 法律文の空欄補充は熟語の穴埋めとして解きます。【2】は「個人情報取扱__者」。法律上の正式な呼び名「個人情報取扱事業者」を完成させるだけです(④)。この語は武器④で出てきました。

STEP 2 【3】は「本人に通知し、又は__」。これは保護法の定型の対句で、「通知し、又は公表」(②)。片方を見たらもう片方が出るよう、対で覚えます。⑥の「合意」を選ばないのがポイントです——武器④のとおり、この場面で法が求めるのは同意ではなく通知・公表です。

STEP 3 残りは音読テストです。【4】「運用__」は、⑦「客体」を入れると日本語として不自然。運用しているのが誰か=運用主体(⓪)。【5】「Webサイトの__又は二次元コード」——サイトの場所を示すものはURL(③)。【1】はカメラ画像から抽出して照合に使うデータなので顔特徴データ(⑤)。①氏名はカメラ画像からは得られません。

答え 1=⑤(顔特徴) 2=④(事業) 3=②(公表) 4=⓪(主体) 5=③(URL)

条文を1本も暗記していなくても、「正式名称の完成」「対句の完成」「音読して不自然なら消す」の3手で5問すべて取れます。初見の法律文に対する暗記量はゼロでよい——これがこの型の結論です。

【問2】個人情報保護法が定められている背景や目的として適切でないものを、次の⓪〜④から1つ選べ。

⓪ デジタル社会の進展により、個人情報の利用が大きく拡大している
① 個人情報を適正かつ効果的に活用することは、新しい産業の創出や豊かな国民生活の実現に役立つ
② 個人情報は、本人の事前の同意がない限り、事業者が取得することは一切許されない
③ 個人の権利や利益を保護する必要がある
④ 個人情報の有用性にも配慮する必要がある

STEP 1 ⓪①③④は、保護法の第1条(目的)が語る内容そのものです。「保護」と「活用」のバランスがこの法律の骨格でした(武器④)。

STEP 2 ②は道徳的には正しく聞こえます。しかし武器④の急所のとおり、保護法は同意なき取得を一律には禁止していません。しかも証拠は目の前にあります——問1のガイドライン文が「通知し、又は公表しなければならない」と書いていた、つまり同意ではなく通知・公表で足りる場面があると、この大問自体が語っているのです。

答え ②

出題者は常識と法律のズレを突いてきます。そして誤答の選択肢には「一切」「必ず」「許されない」のような言い切りの強い言葉が入りがちです。法律は原則と例外を組み合わせて設計されるので、例外の余地を認めない全称的な言い切りは、まず疑ってかかる——法規分野で最も汎用性の高い消去のコツです。

【問3】次の文章の空欄【 X 】に入るものとして最も適当なものを、⓪〜③から1つ選べ。

「従来型の防犯カメラは、設置の状況からみて防犯目的で撮影していることが明らかな場合が多く、その場合には利用目的の通知・公表を省略できる。これに対して顔識別機能付きカメラは、外観から顔識別機能が用いられていると認識することが困難であるため、【 X 】には当たらず、利用目的をあらかじめ本人に通知し、又は公表しなければならない。」

⓪ 人の生命、身体又は財産の保護のために緊急に必要がある場合
① 取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められる場合
② 国の機関や地方公共団体の事務への協力に必要がある場合
③ 通知又は公表により事業者の正当な利益が害されるおそれがある場合

STEP 1 まず文の骨組みを取り出します。「外観から分からない → 【X】に当たらない → 通知・公表が必要」。つまり【X】は、当てはまれば通知・公表を省略できる例外規定です。

STEP 2 どんな例外なら「外観から分からない」ことが理由で外れるのか——「見れば分かるでしょ」型の例外です。従来型カメラは見れば防犯目的だと分かるから「利用目的が明らか」で省略できる。顔識別カメラは見た目で分からないから「明らか」と言えず、この例外に当たらない。だから通知・公表が必要。筋が一本通るのは①だけです。

答え ①

⓪②③は「緊急」「公務への協力」「事業者の利益」系の例外で、「外観から認識困難」という理由とかみ合いません。この問題の教訓は、「〜に当たらず」と否定される空欄には、当たりそうで当たらない規定が入るということ。そして法律文は原則→例外→例外に当たるかの事実判断の3段で読むと、初見でも構造が見えます。なお、顔識別カメラを題材に保護法のガイドラインを読解させるこの型は、2024年の慶應義塾大学(総合政策学部)でも同型の出題がありました。

演習3 カフェの無料Wi-Fiとhttps

最後は、法規と技術の境目にあるテーマ。武器⑤のhttpsが守る範囲を正確に言えるかが勝負です。

【設定】駅前のカフェ「みなも珈琲」では、無料Wi-Fiを提供しており、レジ横の黒板にSSID「minamo_free」と暗号化キーが書かれていて、来店した誰もが見られる。高校生のハルカさんはノートパソコンをこのWi-Fiにつなぎ、httpsで始まる学校の課題提出システムにレポートをアップロードした。

【問1】次の文章の空欄【カ】【キ】に入るものとして最も適当なものを、それぞれ1つずつ選べ。

「黒板に掲示された暗号化キーは、店の利用者全員が共有している。無線の通信は暗号化されているものの、同じSSIDと暗号化キーが設定された【カ】に接続しているほかの利用者には、無線区間の通信を復号されてしまうおそれがある。ただし、httpsで接続していれば、【キ】ため、無線区間を盗聴されたとしても通信の中身を読み取られる心配は小さい。」

カ:⓪ Webサーバ ① アクセスポイント ② DNSサーバ ③ プロキシサーバ

キ:⓪ 通信データの宛先の情報がすべて暗号化されて、経路そのものが隠される
① OSやアプリのセキュリティホールが自動的に修復される
② ブラウザとWebサーバの間で通信の内容が暗号化される
③ 接続先が信頼できる企業の運営するサーバであることが保証される

STEP 1 【カ】は、SSIDと暗号化キーが「設定されている」機器を聞いています。Wi-Fiの電波の接続先はアクセスポイント(①)です。DNSサーバやWebサーバは、電波のやり取りの相手ではありません。

STEP 2 危険の正体を言葉にします。Wi-Fiの暗号化は同じ鍵を知っている人には解読されうる——黒板に貼られた鍵は「全員に配った鍵」と同じです。つまり、隣の席の悪意ある利用者には防御になっていません。

STEP 3 【キ】は図1(武器⑤)そのものです。httpsが暗号化するのはブラウザ〜Webサーバ間の通信内容で、カフェのWi-Fi区間もその内側に含まれます(②)。⓪は不可能です——宛先まで暗号化したら、途中のルータが配達先を判断できません(第1回で扱ったIPの仕事を思い出してください)。①の穴の修復はセキュリティパッチ(更新プログラム)の仕事。③は証明書の意味の取り違えで、証明書が確認するのは「そのドメインの正当な持ち主」であることまで。信頼できる組織かどうかは保証しません

答え カ=① キ=②

Wi-Fiの暗号化は手前の1区間だけ、httpsは端から端まで——層が違う2枚の鎧とまとめておけば、共有Wi-Fi系の問題は全部この1枚で判定できます。

【問2】数日後、ハルカさんのスマートフォンに、契約している動画配信サービスを名乗るショートメッセージ(SMS)が届いた。「お支払いの確認ができませんでした。24時間以内にお支払い方法をご更新ください」という文章と、httpsで始まるURLが記載されている。

(1)記載のURLがhttpsで始まっていても、リンクの先が本物そっくりの偽サイトであり、IDやパスワード、クレジットカード番号を入力させて盗み取る【ク】の被害にあうおそれがある。
ク:⓪ スキミング ① フィッシング ② テザリング ③ クラッキング

(2)このときハルカさんが取る行動として、最も適切なものは【ケ】である。
⓪ SMSに返信して、本当に運営会社からの連絡かどうかを確認する
① SMSに記載された問い合わせ用の電話番号に電話をかけて確認する
② SMSのURLをパソコンのブラウザに貼り付け、大きな画面で確認しながら更新する
③ SMSの情報は使わず、普段使っている公式アプリを自分で開いて契約状況を確認する

STEP 1 【ク】は用語の判定です。偽サイトへ誘導して認証情報やカード番号を入力させる手口はフィッシング(①)。⓪スキミングはカードの磁気情報を読み取り装置で盗む手口、②テザリングはスマートフォンを中継してほかの機器をネットにつなぐ機能、③クラッキングはシステムへの不正侵入の総称——いずれも「偽サイトに入力させる」という手口の説明ではありません。

STEP 2 【ケ】の判定基準は1つだけです。そのSMSに書いてあった情報を使っているか?——⓪の返信先も①の電話番号も②のURLも、すべて攻撃者が用意したかもしれない道。なぞる行動は、画面の大きさに関係なく危険です。

STEP 3 httpsは経路の暗号化であって、相手が善人であることの保証ではありません。偽サイトもhttpsを使えます。だから最後の防御は技術ではなく行動です——送られてきた道ではなく、自分が確かだと知っている正しい入口(公式アプリやブックマーク)から入り直す。SMSの情報を一切使わない③だけが、この原則を満たします。

答え ク=① ケ=③

「鍵マークがあるから本物」という思い込みこそ、フィッシングが利用する心理です。2023年の共通テスト本試験「情報関係基礎」でも、カフェの無料Wi-Fiとhttpsの守備範囲、そして偽SMSへの対処を問う同型の出題がありました。手口の全体像は補講(フィッシング・マルウェア・ソーシャルエンジニアリング)で整理しています。

解法の型まとめ──3秒チェック

今日の演習で使った「型」を並べます。どれも暗記の型ではなく、初見の文章に出会ったときの手の動かし方です。

型1 規約・ライセンスは「行為1つに条文1つ」

規約を1行ずつひとことに圧縮してから、行為と条文を1対1で対応づける。組み合わせ選択肢は、あ・い・うを個別に○×確定させてから番号を見る。

型2 「無償なら」「個人利用なら」の直感を疑う

規約や法律は生活感覚より先回りして「有償無償を問わず」と書いている。自分の常識ではなく、書かれた条文で判定する。

型3 法律文の空欄は「熟語・対句・定型句」の完成

個人情報取扱事業者、通知し又は公表、運用主体。当てはめて音読し、日本語として不自然な選択肢を消す。条文の暗記はゼロでよい。

型4 言い切りの強い選択肢は誤答の合図

「一切」「必ず」「許されない」。法律は原則と例外の組み合わせでできているので、例外の余地を認めない全称的な言い切りはまず疑う。

型5 httpsは経路の鎧。最後の防御は正しい入口

httpsが守るのはブラウザ〜Webサーバ間の通信内容だけ。相手の善意は守らない。怪しい連絡が来たら、記載の道をなぞらず、自分の知っている公式の入口から入り直す。

仕上げに、即答チェックです。口頭で答えてから開いてください。

Q1 著作権はいつ発生する?

作った瞬間(無方式主義)。登録も申請も表示も要らない。保護期間を更新できるのは商標権だけ。

Q2 著作者人格権の3つは?

公表権・氏名表示権・同一性保持権。3つとも譲渡できない。同一性保持権は「あえて行使しない」使い方まで問われる。

Q3 CCライセンスは全部で何種類?

BY固定(1)×NCの有無(2)×改変の扱い なし・ND・SA(3)=6種類。NDとSAは同時に付かない。

Q4 個人情報の取得には常に本人の同意が必要?

いいえ。利用目的の通知・公表で取得できる場面が広い。取得自体に原則同意が必要なのは要配慮個人情報など。「同意なき取得は一律禁止」という選択肢は誤り。

Q5 httpsが守るもの・守らないものは?

守るのはブラウザ〜Webサーバ間の通信内容。守らないのは相手の善意——偽サイトもhttpsを使える。対処は公式の入口から入り直すこと。

仕上げの1歩

図1(httpsが守る区間)と図2(CCの数え上げ樹形図)を、何も見ずに白紙へ再現してみてください。描ければこの分野の骨組みは完成です。描けなかった部分が、あなたの復習ポイントです。

よくある質問

この記事の演習問題は実際の入試問題ですか?

いいえ。実際の入試で出題されてきた「型」を分析したうえで、題材・登場人物・規約の文面・選択肢を当塾が独自に作成したオリジナル問題です。型は本物、素材はオリジナル——だから安心して演習に使えます。

共通テスト予想問題【知的財産・法規 腕試し】——藤原進之介の独自作成問題

実際の共通テスト・試作問題の出題型を分析して作成した、本記事オリジナルの予想問題です(藤原進之介の独自作成問題であり、大学入試センターの問題の転載ではありません)。解答を隠してあるので、まず自力で解いてみてください。無断転載はご遠慮ください。

問1 クリエイティブ・コモンズ・ライセンスで「表示(BY)・非営利(NC)」の条件が付いた画像の利用として認められるものはどれか。

① 作者名を表示して、営利目的でない学校新聞に掲載する
② 作者名を伏せて商品広告に使う
③ 自分の作品と偽って販売する
④ 条件は一切無視してよい

解答・解説を見る

正解:。BYは「作者の表示」、NCは「非営利に限る」という条件です。条件をすべて満たす選択肢を探す——CCライセンス問題は記号の意味を日本語に置き換えて、選択肢と1条件ずつ照合すれば機械的に解けます。

問2 Webサービスの利用規約の説明として最も適当なものはどれか。

① 利用者とサービス提供者との間の契約であり、同意した内容には拘束される
② 読まなければ効力が生じない
③ 国が定めた法律である
④ 未成年には一切適用されない

解答・解説を見る

正解:。「同意する」を押した瞬間に契約が成立します。読んでいなくても拘束される(だから読むべき)——規約は法律ではなく契約である、という位置づけの区別が正誤問題の急所です。

問3 他人の文章を自分のレポートで引用する場合の条件として適当でないものはどれか。

① 出所(出典)を明示する
② 引用部分をかぎかっこ等で明確に区別する
③ 自分の論述が主で、引用が従の関係にある
④ 引用であれば全文をそのまま丸写ししてよい

解答・解説を見る

正解:。引用は「自分の論の必要な範囲」でのみ認められます。全文の丸写しは主従関係が逆転し、複製権の侵害になります。①〜③+公表された著作物であること・必然性——要件のどれか1つを壊した選択肢を見抜く型です。

問4 通販サイトが顧客の購入履歴を、本人の同意なく別会社に販売した。個人情報保護法の観点からの説明として最も適当なものはどれか。

① 個人データの第三者提供には原則として本人の同意が必要であり、問題となるおそれが大きい
② 購入履歴は個人情報と無関係なので自由である
③ 会社どうしなら同意は不要である
④ 法律には何の定めもない

解答・解説を見る

正解:。氏名等と結びついた購入履歴は個人データにあたり、第三者提供には原則同意が要ります(法定の例外や届出による仕組みはある)。「原則と例外」の構造で覚え、事例が原則側か例外側かを判定させるのが出題の型です。

問5 観光地で撮った写真に通行人の顔がはっきり写り込んでいた。SNS公開前の配慮として最も適当なものはどれか。

① 顔が識別できないよう加工するか、写り込みの少ない写真を選ぶ
② 有名人でなければ何をしてもよい
③ 撮影者に著作権があるので配慮は不要である
④ 位置情報を付けて公開する

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正解:。撮影者が持つのは写真の著作権で、写った人の肖像権・プライバシーはまた別の権利です。「自分の権利」と「他人の権利」が1枚の写真に同居している——権利の主体を分けて考える視点が問われます。

出題形式・題材の傾向分析は本文の「共通テストではこう出る」を参照。ほかの講の予想問題は予想問題ハブシリーズハブからどうぞ。

出典・関連資料

  • 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編」——情報社会の問題解決(情報Ⅰ(1))における法規・制度・情報モラルに関する記述
  • 文化庁「著作権テキスト」——著作者人格権・保護期間など著作権制度の基本事項
  • 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」ほか公表資料——利用目的の通知・公表、要配慮個人情報、顔識別機能付きカメラに関する考え方
  • 大学入試センター 令和7年度・令和8年度 大学入学共通テスト『情報Ⅰ』——実施形式(60分100点)の確認
  • 本記事の演習問題は、大学入学共通テスト試作問題「旧情報」(2022年公表・同型の出題)、2024年 慶應義塾大学 総合政策学部(同型の出題)、2023年 大学入学共通テスト本試験「情報関係基礎」(同型の出題)などの出題の型を参考に、数強塾が独自に作成したオリジナル問題です。実際の入試問題の転載は行っていません。

本記事は、藤原進之介の情報Ⅰ共通テスト対策授業「問題演習①(知的財産・法規)」の回をもとに構成しています。シリーズ『分野別対策演習』の一覧は対策演習ハブ、講義編『最強120講義』の全体像は120講義ハブからご覧いただけます。

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