共通テスト情報Ⅰ データベース×データ分析 実戦演習|正規化・散布図・回帰直線・変動係数【対策演習 第7回】

情報の学びを図でつかむ
表のつながりを、キーで作る。
表のつながりを、キーで作る。 1行の情報を識別し、別の表との対応を整理する。ID分類123ID分類123対応
レコード主キー関連する表
1行の情報を識別し、別の表との対応を整理する。図は学習内容を示す模式図です。


こんにちは、数強塾代表の藤原進之介です。この記事は、私が普段行っている「情報Ⅰ」の共通テスト対策の授業のうち、データベースとデータ分析の実戦演習の回をもとに、Web教材として読めるように再構成した演習版です。第5回(データベース)第6回(データの活用)で整理した道具を、今回は「初見の題材で使い切る」のがテーマです。収録した問題はすべて、授業で扱っている演習をWeb用に作り直した当塾のオリジナル問題です。

共通テスト「情報Ⅰ」は2025年1月から実施されている60分100点の試験で、データの分析を主題とする大問が置かれ続けています。しかも2026年度の平均点は56.59点と、初年度の69.26点から12.67点下がりました。難化の中身を一言でいえば「読ませる量が増えた」——統計表の単位、散布図の凡例、回帰直線の使い方の指定。つまりこの分野は、知識の不足ではなく「読み落とし」で失点する分野になっています。

一方、データベースの選択・射影・結合や正規化は、共通テストでは表の整理やデータの持ち方の話として顔を出すほか、私立大学の情報入試では定番の大問です。この記事では、前半で「今日使う武器」を4つに圧縮して再点検し、後半で3つの大問・計12問を解きます。所要時間はおよそ50〜70分。手を動かしながら読んでください。

要点整理──今日使う武器4つ

実戦の前に、今日の演習で使う道具を4つだけ点検します。それぞれ「90秒で素手で言えるか」を試してから先へ進んでください。基礎からの丁寧な解説は『情報Ⅰ 最強120講義』の該当講に譲ります。

武器① 関係データベースの3操作と、正規化の合格判定

操作 何をするか 一言で
選択 条件に合うだけを残す(例:「返却日」が空欄の行だけ残す) 行を絞る
射影 必要なだけを取り出す(例:「氏名」「学年」の列だけ見る) 列を選ぶ
結合 共通の属性を鍵に、2つのを1つにつなぐ(例:利用者番号で名簿と記録を合体) 表をつなぐ
正規化の合格判定は「結合すれば元に戻せるか」

正規化とは、同じ情報を二重三重に書かないように表を分割することです。ここで重要なのが分割の合格判定で、答えは1つ——分割した表どうしを結合したとき、元の表に戻せること。戻せない分割は、整理したのではなく、ただ情報を失っただけです。演習1の後半でこの判定を実際に使います。

武器② 尺度水準は「3つの質問」で機械的に決める

データの種類の問題は、迷ったら次の3つの質問を上から順に投げます。「いいえ」が出たところで確定です。

質問 いいえ→ここで確定 はい→次の質問へ
Q1 順序・大小に意味がある? 名義尺度(郵便番号・血液型・クラス名) Q2へ
Q2 差(引き算)に意味がある? 順序尺度(震度・5段階評価) Q3へ
Q3 比(〜倍)にも意味がある? 間隔尺度(西暦・摂氏温度) 比例尺度(身長・価格・時間)

名義・順序が質的データ、間隔・比例が量的データです。見分けの急所は2つ。第一に、番号を振ってもラベルはラベル(血液型をA=1、B=2と数字にしても量的にはなりません)。第二に、比例尺度は「0=無い」という絶対の0を持つこと。0分は「時間を使っていない」ですが、西暦0年は「時間が無い」ではありません。だから時間は比例尺度、西暦は間隔尺度です。

武器③ 相関係数──符号は「向き」、絶対値は「強さ」

相関係数は−1から+1の値をとり、読み方は2段構えです。符号が向き(+なら片方が増えるともう片方も増える、−なら減る)、絶対値が強さ(1に近いほど強い連動)。ここで毎年受験生が落ちる罠を先に言っておきます——−0.99は「相関がない」ではありません。マイナスだから弱いのではなく、絶対値0.99の最強クラスの負の相関です。「相関がない」に対応するのは0に近い値だけです。

散布図とセットで

散布図では右上がり=正、右下がり=負。そして時刻のデータ(起床時刻・就寝時刻など)を扱うときは、「時刻が遅いほど大きい値」という約束をまず確認してから向きを読みます。23:20と24:10なら24:10が大きい——この約束を飛ばすと、演習2の相関の向きで確実に迷子になります。

武器④ 変動係数──単位が違うばらつきは、これで比べる(今回が初登場)

今日の新しい武器です。初登場なので丁寧にいきます。定義は1行です。

変動係数 = 標準偏差 ÷ 平均値

意味は「平均の何倍ぶん散らばっているか」。標準偏差を、同じ単位を持つ平均値で割るので、単位が約分されて消え、ただの倍率になるのがポイントです。点で測ったデータもcmで測ったデータも、変動係数にすれば同じ土俵で比べられます。

なぜ必要か。具体例で見ます。

データ 平均値 標準偏差 変動係数
数学のテストの得点[点] 50 10 10÷50=0.20
クラスの身長[cm] 170 5.1 5.1÷170=0.03

標準偏差の生の値は10と5.1で、テストの方が大きく見えます。しかし「点」と「cm」という単位が違うものの標準偏差を、生の値で比べても意味がありません。変動係数に直すと、テストは平均の20%ぶん、身長は平均の3%ぶんの散らばり——テストの方が相対的にずっとばらついている、と初めて公平に言えます。試験では「平均値に対するばらつき」という言葉が出た瞬間に変動係数を思い出してください。この反射は演習3で使います。

演習1 図書館の貸出台帳──正規化の実戦

ここからが本編です。以下の演習問題は、実際の入試(各大学の情報入試や共通テスト)で繰り返し出ている「型」をふまえて、題材・数値・選択肢を当塾が独自に作成したオリジナル問題です。まず自力で解いてから解説を読んでください。

【設定】青葉高校の図書委員会は、本の貸出を次の表Aで記録している。貸出が1回あるたびに1行増える台帳で、7月18日現在の中身は次のとおりである。「返却日」が空欄の行は、まだ返却されていないことを表す。

貸出番号 利用者番号 氏名 学年 貸出日 返却日
1 L013 相沢結衣 3 7月1日 7月8日
2 L027 井上大和 1 7月2日 空欄
3 L045 上野美咲 2 7月2日 7月9日
4 L045 上野美咲 2 7月10日 空欄
5 L052 江藤俊 1 7月11日 7月17日
6 L013 相沢結衣 3 7月14日 空欄
7 L068 大西航平 2 7月15日 7月16日

黄色のセルは、同じ内容の二重書きです。2回借りた利用者は、変わらないはずの氏名・学年までもう一度書かれています——これが全小問の伏線です。

【問1-1】図書委員のミサキさんは、2年生以上で、現在貸出中の生徒に返却を呼びかける掲示を作るため、表Aから該当する行だけの表を取り出したい(1年生への呼びかけは別の委員の担当である)。この表が得られる操作として最も適当なものを選べ。

⓪ 「貸出番号」が「4」以上のデータを選択する
① 「学年」が「2」以上のデータを射影する
② 「返却日」が「空欄」かつ「学年」が「2」以上のデータを選択する
③ 「学年」と「返却日」の2つの列を射影する
④ 「返却日」が「空欄」であるデータを選択する
⑤ 「学年」が「空欄」かつ「返却日」が「2」以上のデータを選択する

STEP 1 日常語を「属性の条件」に翻訳します。台帳に「貸出中」という列はありません。「現在貸出中」→「返却日」が「空欄」、「2年生以上」→「学年」が「2」以上。この翻訳が最初の仕事です。

STEP 2 やりたいのは行の絞り込みなので、操作は「選択」。列を取り出す「射影」では行は1行も減りません。操作名のすり替えを先に消します(①と③が消える)。

STEP 3 2つの条件を「かつ」で結びます。片方だけでは余計な行が残ります。最後に表Aで検算——残るのは貸出番号4(上野さん・2年)と6(相沢さん・3年)の2行。狙いどおりです。

答え ②

誤答の切り方:⓪の貸出番号はただの通し番号で、学年とも返却状況とも無関係。①は「射影」で行を絞ろうとしている——操作名のすり替えで、この型の一番の定番の罠です。③は列を2本取り出すだけで7行のまま。④は条件不足で、1年生の井上さん(貸出番号2)まで残ります。⑤は「学年」と「返却日」の条件が入れ替わっており、速読すると引っかかります。選択肢は「操作名」と「条件」の両方を指差し確認してください。

【問1-2】表Aのデータが「冗長である」とは、具体的にはどういうことか。最も適当なものを選べ。

⓪ 同じ利用者の行では、「利用者番号」と「氏名」と「学年」の組み合わせがいつも同じである
① 「学年」が「2」以上で、「返却日」が空欄でないレコードがある
② 同じ利用者の行では、「利用者番号」と「氏名」と「貸出日」の組み合わせがいつも同じである
③ 「貸出番号」と「利用者番号」の組み合わせがいつも同じになる

答え ⓪

上野さんの2行(貸出番号3・4)と相沢さんの2行(1・6)を見てください。1回借りるたびに、変わらないはずの「利用者番号・氏名・学年」のセットが丸ごともう一度書かれる——この繰り返しが冗長性です。①は「2年生以上で返却済みの人がいる」というただの事実で、データの持ち方の問題ではありません。②の貸出日は行ごとに違います(上野さん:7月2日と7月10日)。③の貸出番号は行に固有で、上野さんの2行は貸出番号3と4——組み合わせは変わります。

冗長だと、何が困るのか

たとえば相沢さんが改姓したら、台帳のすべての行を探して直す羽目になります。1行でも直し漏れれば、同じ利用者番号なのに氏名が違う——矛盾したデータの完成です。進級処理(全員の学年+1)も同様。冗長性は「無駄」というより「事故のもと」だと理解してください。

【問1-3】冗長を解消するため、表Aを2つの表に分割することにした。1つは利用者の情報をまとめた表B(属性は「利用者番号」「氏名」「学年」。1人1行で、全部で5行になる)である。もう1つの、貸出の記録をまとめた表Cに必要な属性の組み合わせとして最も適当なものを選べ。

⓪ 貸出番号、氏名、学年
① 貸出番号、貸出日、返却日
② 利用者番号、貸出日、返却日
③ 貸出番号、利用者番号、貸出日、返却日

STEP 1 合格判定は武器①の1行だけ——「表Bと表Cを結合すれば、表Aに戻せるか」。各選択肢をこの物差しに当てます。

STEP 2 表Cに要るのは、記録1件ずつを区別する貸出番号、貸出の事実である貸出日・返却日、そして表Bとつなぐ鍵の利用者番号。この4点セットなら、「利用者番号」で表Bと結合したとき表Aが完全に復元できます。

答え ③

⓪は氏名・学年をまた書いており冗長の復活——何のために分割したのか分かりません。①は「誰の」貸出か分からず、表Bとつなぐ鍵がありません。②は貸出番号が失われ、同じ人が同じ日に2冊借りたときに記録を区別できず、元の表Aにも戻せません。戻せない分割は、情報を失っただけ——武器①の合格判定がそのまま解答根拠になります。

【問1-4】7月18日、ミサキさんは表Bと表Cから、呼びかけ用の一覧表Dを作った。手順は次のとおりである。空欄ク〜コに入る操作名を、下の⓪〜⑦から1つずつ選べ。

表Bと表Cを、共通する属性「利用者番号」で[ク]する →「学年」が「2」以上かつ「返却日」が「空欄」のデータを[ケ]する →「氏名」「学年」「貸出日」の3つの属性を[コ]する → 表Dが得られる

⓪ 投影 ① 選択 ② タプル ③ 抽出 ④ 反映 ⑤ 結合 ⑥ 射影 ⑦ 選別

STEP 1 「共通する属性で2つの表を1つにつなぐ」——武器①の表のとおり、クは結合です。分割した表を使うときは、まずつなぎ直すところから始まります。

STEP 2 ケは条件に合う行の絞り込みなので選択。よく見ると問1-1とまったく同じ条件です。コは指定された列を取り出すので射影。「つないで・絞って・要る列だけ見る」——実務でもこの順で使う王道の流れです。

答え ク=⑤ ケ=① コ=⑥(結合 → 選択 → 射影)

罠の選択肢を切っておきます。「投影」「反映」「選別」は漢字が本物っぽいだけのニセ用語です(正式な操作名は選択・射影・結合の3つだけ)。「タプル」は実在する用語ですが、行(レコード)の別名であって操作名ではありません。「抽出」は日常語です。最後に検算——表Dは相沢さん(3年・7月14日)と上野さん(2年・7月10日)の2行になり、問1-1で絞った2人と一致します。なお、2023年の駒澤大学 全学部統一日程選抜では、予防接種の記録台帳を題材に、この演習1とほぼ同じ骨組み(冗長性→分割→3操作の流れ)が出題されています。型ごと身につけておけば、題材が変わっても動じません。

演習2 生活時間データの分析──散布図と回帰直線のリレー

【設定】青葉高校2年1組の16人は、「情報Ⅰ」の授業で自分たちの平日の生活時間を調べ、1人1台端末のアンケートで次の3項目を集めた:平日1日あたりのスマートフォン利用時間(分)、家庭での学習時間(分)就寝時刻

図Aは、スマートフォン利用時間(横軸)と学習時間(縦軸)の散布図である。□は2人が重なった点を表し、直線は回帰直線である。

図Bは、同じ16人について学習時間(横軸)と就寝時刻(縦軸)の関係を表した散布図である(図は省略し、読み取れる情報を示す):点は全体として右下がりに分布しており、回帰直線は「学習時間0分のとき就寝時刻24:10(午前0時10分)」「学習時間100分のとき就寝時刻23:20」の2点を通る。

なお、就寝時刻のような時刻のデータは、時刻が遅いほど大きい値として扱う(例:23:20より24:10が大きい)。

回帰直線 =2人が重なった点 60 120 180 240 300 0 30 60 90 120 スマートフォン利用時間(分) 学習時間(分)

図1(問題中の図A) スマートフォン利用時間と学習時間の散布図(2年1組16人)。□は2人が重なった点

【問2-1】この調査で得られるデータについて述べた次の文の空欄に入る語の組み合わせとして正しいものを選べ。

「学習時間は[ア]データであり、『2年1組』のようなクラス名は[イ]データである。」

⓪ ア:質的 イ:質的  ① ア:質的 イ:量的
② ア:量的 イ:質的  ③ ア:量的 イ:量的

答え ②

学習時間は測った数値なので量的データ。さらに武器②のフローを回すと、「0分=学習していない」という絶対の0があり、120分は60分の2倍と言えるので比例尺度です。クラス名は分類のラベルなので質的データ(名義尺度)。「1組・2組」と数字がついていても、足し算にも平均にも意味がありません——番号を振ってもラベルはラベルです。

【問2-2】この調査に関連するデータのうち、名義尺度にあたるものはどれか。

⓪ 睡眠の満足度(5段階の自己評価) ① 出席番号
② 調査日の最高気温 ③ スマートフォン利用時間

答え ①

3つの質問を各選択肢に投げます。①出席番号は区別のためだけの番号で、順序・大小に意味なし→Q1で「いいえ」→名義尺度。⓪満足度は順序はあるが「4と3の差」と「2と1の差」が同じとは言えない→順序尺度。②摂氏の気温は差に意味はあるが、0℃は「温度が無い」ではないので比に意味なし→間隔尺度。③利用時間は0分=使っていない、2倍にも意味がある→比例尺度。迷ったらその数で引き算・割り算をして、意味があるか考える——このフロー1本で尺度水準の問題は完答できます。

【問2-3】図Aから読み取れることとして正しいものを選べ。

⓪ スマートフォン利用時間が240分以上で、学習時間も60分以上の生徒は存在しない
① 学習時間が100分以上の生徒は、いずれもスマートフォン利用時間が120分未満である
② スマートフォン利用時間が200分より長い生徒は、いずれも学習時間が30分以下である
③ 学習時間がちょうど60分の生徒は1人しかいない

STEP 1 言明チェックの鉄則から。「存在しない」「いずれも」「〜しかない」型の言明は、該当する領域を塗って、反例を1個探すゲームです。全部の点を読む必要はありません。そしてもう1つ、読み始める前に凡例を確認——□は2人の重なりです。

STEP 2 ⓪の検証:「240分以上かつ60分以上」の右上ゾーンを塗ります。横軸240分から右にある点は3つで、学習時間はどれも60分未満(45分・15分・20分あたり)。塗った領域に点はゼロ——正しい言明です。

STEP 3 残りは反例探し。①:学習100分以上の点は4つあり、そのうち1つはスマートフォン利用時間が約140分——120分以上の反例が1個あるので誤り。②:200分より右には4点あり、240分の生徒の学習時間は約45分で30分を超える——反例で誤り。③:学習60分ちょうどの位置にあるのは□。凡例より2人なので「1人しかいない」は誤り。□を1人と数えた人が③に落ちます

答え ⓪

散布図の読み取りは「全部読む」から「領域を塗って数える」に切り替えると、速く正確になります。重なり点の見落としを突く出題は、2025年の関西福祉大学の入試(都道府県別の睡眠時間データ)でも同じ型がありました。凡例の確認は散布図問題の最初の仕事です。

【問2-4】図A・図Bから、相関について述べた次の文の空欄に入る語の組み合わせとして正しいものを選べ。

「スマートフォン利用時間と学習時間の間には[サ]の相関があり、学習時間と就寝時刻の間には[シ]の相関がある。」

⓪ サ:正 シ:正  ① サ:正 シ:負
② サ:負 シ:正  ③ サ:負 シ:負

STEP 1 図Aは見たままです。右下がり——スマートフォン利用時間が長い生徒ほど学習時間が短い。負の相関です。

STEP 2 図Bは「時刻が遅いほど大きい値」の約束を数直線に置き換えてから読みます。右下がり=学習時間が長い生徒ほど就寝時刻の値が小さい早く寝ている。これも負の相関です。

答え ③

「勉強を頑張る生徒ほど夜遅くまで起きているはず」という日常イメージで⓪や②を選ぶのが典型ミスです。図が正、イメージは負け。データを意味で読み直すと、学習時間が長い生徒は夜更かしで勉強時間を作っているのではなく、スマートフォンを切り上げて早い時間帯に勉強し、早く寝ている——そう読めます。ただし、これは「一緒に動く」という相関の話で、「スマートフォンをやめれば学習時間が増える」という因果までは言えません——この区別は演習3でもう一度問います。

【問2-5】図Aと図Bの回帰直線を利用して、スマートフォン利用時間が180分の生徒の就寝時刻を予測すると、およそいつになるか。最も適当なものを選べ。

⓪ 23:20 ① 23:30 ② 23:40 ③ 23:50 ④ 24:00

STEP 1 地図を描きます。手元にあるのは「スマホ×学習」(図A)と「学習×就寝」(図B)で、スマホと就寝を直接結ぶ図はありません。ならば、両方の図に登場する変数——学習時間が中継点です。スマホ180分 →図A→ 学習時間 →図B→ 就寝時刻、と橋を架けます。

STEP 2 図Aの回帰直線で、横軸180分の高さを読むと、学習時間はおよそ60分

STEP 3 図Bの回帰直線は「0分で24:10、100分で23:20」——学習時間が100分増えると就寝が50分早まる、つまり学習1分あたり0.5分早まる直線です。学習60分なら、24:10の30分前で23:40

STEP 4 選択肢は10分刻みです。読み取りの多少のブレは選択肢の幅が吸収してくれるので、細部にこだわりすぎず、最も近いものを選びます。

答え ② 23:40

「スマホが3時間もあるのだから就寝は遅いはず→24:00」と感覚で選んではいけません。問題文が「回帰直線を利用して」と指定した瞬間、感覚ではなく直線を読むのがルールです。回帰直線は「この傾向が続くならこのあたり」という予測の道具——点の1つ1つではなく直線を読みます。この「図Aの出力を図Bの入力にする」リレー型は、複数の図表をまたぐ読み取りとして共通テストのデータ分析でも頻出です。最初の仕事はいつも同じ——中継の変数を見つけること

入口 スマートフォン利用時間 180分 図Aの回帰直線で読む 学習時間 約60分 中継の変数(図Aと図Bの両方に登場) 中継 図Bの回帰直線で読む 就寝時刻 約23:40 出口 図Aの出力を、図Bの入力にする──最初の仕事は「中継の変数」探し

図2 回帰直線2本のリレー。直接つながっていない2つの量は、共通の変数を中継して結ぶ

演習3 文化祭の統計表──単位の罠と変動係数

【設定】青葉高校の文化祭は毎年9月の土日2日間、地域に一般公開して開催される。文化祭実行委員会は、過去5年分の来場者数(受付での記録による延べ人数)を次の表Vにまとめた。なお、2023年度は台風の接近により両日とも開催時間を短縮し、特に日曜は午前のみの開催だった。

表V 文化祭の来場者数の記録 [単位 百人]

年度 土曜 日曜
地域住民 保護者 中学生 合計 地域住民 保護者 中学生 合計
2025 16 10 9 35 21 12 8 41
2024 14 9 8 31 18 11 7 36
2023 6 7 2 15 5 6 2 13
2022 10 8 5 23 13 9 4 26
2021 12 8 6 26 16 10 6 32

【問3-1】2025年度の日曜の来場者数の合計は何人か。数値で答えよ(記入式)。

STEP 1 表で「2025年度×日曜合計」のセルを見ると41。……解答欄にそのまま「41人」と書いたら、何点もらえるでしょうか。

答え 4,100人

冒頭の「今日の一問」の答え合わせです。表題に[単位 百人]とあるので、41×100=4,100人。「41人」「41万人」は、数字が合っていても0点です。統計表はタイトル・単位・注釈までが本体——数字を拾う前に、必ず単位欄に印をつける習慣をつけてください。仕上げに感覚チェックを一呼吸——1日4,100人は多すぎないか? 地域公開の文化祭で、延べ人数なら再入場も重複して数えると考えれば不自然ではありません。桁の確認までが記入式の作法です。

【問3-2】2021年度を基準としたとき、「各年度の値÷同じ曜日・同じ区分の2021年度の値」で求められる割合が最も低くなるのは、どの年度・どの曜日・どの区分か。また、その割合を小数点以下第2位まで求めよ(記入式)。

STEP 1 まず分母を固定します。割合=各年度の値÷同じ列の2021年度の値。列は6本(2曜日×3区分)、年度は4つなので、候補は24セルあります。

STEP 2 24回の割り算はしません。最も落ち込んだ年から調べます——台風で短縮開催になった2023年度が怪しい。総当たりの前に、状況から目星をつけるのが時短の型です。

STEP 3 2023年度の6つだけ計算します。土曜:地域住民 6÷12=0.50、保護者 7÷8≒0.88、中学生 2÷6≒0.33。日曜:地域住民 5÷16≒0.31、保護者 6÷10=0.60、中学生 2÷6≒0.33。最小候補は日曜・地域住民の0.31です。

STEP 4 他の年度がこれを下回らないことだけ確かめます。2022年度で最も低いのは日曜・中学生の4÷6≒0.67。2024・2025年度はすべてのセルが2021年度より大きい(割合が1を超える)ので調べる必要すらありません。確定です。

答え 2023年度・日曜・地域住民 割合 0.31

5÷16=0.3125 → 小数点以下第3位を四捨五入して0.31。数字の意味も読んでおきましょう。保護者は短縮開催でも午前中に来ますが、「午後にふらっと立ち寄る」地域住民は日曜の午前のみ開催で最も減った——数字が当日の状況を語っています。記入式の割合の問題は、何で割るか(分母)を最初に固定すること、そして総当たりせず怪しい行から調べること。この2つで計算量が3分の1になります。

【問3-3】実行委員会は、過去5年の記録から次の統計量を計算した。表Wは3つの項目の平均値・標準偏差・変動係数、表Xは2組のデータの相関係数である。これらから読み取れることとして正しいものをすべて選べ。

表W 5年分の記録から計算した統計量

項目 平均値 標準偏差 変動係数
1日あたりの来場者数[百人] 27.8 8.6 0.31
模擬店全体の売上[千円] 1860 242 0.13
1団体あたりの発表時間[分] 21.0 0.84 0.04

表X 相関係数

組み合わせ 相関係数
土曜の来場者数 と 日曜の来場者数 0.99
1日の来場者数 と パンフレットの余り部数 −0.99

⓪ 標準偏差が最も大きいのは模擬店全体の売上だから、平均値に対するばらつきが最も大きいのも模擬店全体の売上である
① 1団体あたりの発表時間は変動係数が最も小さいので、3項目の中で平均値に対するばらつきが最も小さい
② 土曜の来場者数と日曜の来場者数の間には、強い正の相関がある
③ 1日の来場者数とパンフレットの余り部数の相関係数は−0.99なので、両者の間にはほとんど相関がない
④ 相関係数が0.99であることから、土曜の来場者数が多いことが日曜の来場者数を増やす原因だといえる

STEP 1 「平均値に対するばらつき」と読んだ瞬間に、武器④の変動係数です。百人・千円・分——単位が違う3項目を、標準偏差の生の値で比べてはいけません。

STEP 2 ⓪の検証:標準偏差242は確かに3項目で最大です。しかし変動係数は0.13で、来場者数の0.31の方が大きい。数字の大小は合っていても、比べる道具が間違っているので誤り。①:0.04は3項目で最小なので正しい(発表時間はほぼ21分きっかりで運営されている、ということです)。ちなみに来場者数の平均27.8は、表Vの10個の日別合計を足して10で割ると確かめられます——表どうしはつながっています。

STEP 3 ②:0.99は最強クラスの正の相関で正しい。③:強さは絶対値で見る——−0.99は相関が「ない」どころか、ほぼ完全な負の連動です(来場者が多い日はパンフレットが余らない。当然の関係が数字に表れています)。④:相関は「一緒に動く」ことしか語りません。晴れた年は両日とも多い——共通の要因で説明がつくので、相関を因果に格上げした瞬間に誤りです。

答え ①と②

⓪と③は、今日の武器④と武器③をそのまま試す選択肢でした。「標準偏差が最大だからばらつきも最大」(単位が違うものは変動係数で比べる)、「マイナスだから相関がない」(符号は向き、絶対値は強さ)——この2つは共通テストでも私大入試でも繰り返し狙われる誤りの型です。なお、2025年の京都産業大学(一般選抜入試前期 情報プラス型)では、国内旅行の統計表を題材に、この演習3と同じ型——単位の読み取り・基準年に対する割合・変動係数の正誤判定——が記入式で出題されています。百万人単位の統計表を人数と読み違える事故は、実際の入試で本当に起きる失点です。

解法の型まとめ──3秒チェック

今日の演習で使った「型」を並べます。どれも暗記のための呪文ではなく、なぜそうするのかまで含めて自分の言葉で言えるかを確かめてください。

今日の型・5つ

1 データベースの操作は、行を絞るのが選択・列を取り出すのが射影・表をつなぐのが結合。日常語(貸出中・2年生以上)を属性の条件に翻訳してから操作を選ぶ。

2 表の分割の合格判定は「結合すれば元に戻せるか」。戻せない分割は情報を失っただけ。

3 散布図の「存在しない」「〜しかない」型は、領域を塗って反例を1個探す。凡例(重なり点の印)を最初に確認する。

4 図をまたぐ予測は、両方の図にある中継の変数を先に見つけて回帰直線のリレー。感覚ではなく直線を読む。

5 統計表は単位が本体。そして単位が違うばらつき比べは変動係数(標準偏差÷平均値)で行う。

仕上げに、即答テストです。口頭で答えてから開いてください。

Q1 「返却日が空欄の行だけ残す」——選択?射影?

選択。行を絞るのは選択、列を取り出すのが射影。操作名のすり替えが定番の罠。

Q2 表を2つに分けてよいかの合格判定は?

結合すれば元の表に戻せること。鍵になる共通の属性(利用者番号など)を記録側の表に残す。

Q3 血液型にA=1、B=2と番号を振ったら量的データになる?

ならない。番号はただのラベルで、名義尺度のまま。

Q4 標準偏差242千円と8.6百人——ばらつきが大きいのはどちら?

「生の値では比べられない」が正解。変動係数に直すと0.13と0.31で、来場者数の方が平均に対するばらつきは大きい。

Q5 「相関係数−0.99だから相関はない」——正しい?

誤り。強さは絶対値で見る。−0.99はほぼ完全な負の連動で、最強クラスの負の相関。

仕上げの1歩

白紙に、①尺度水準の3つの質問フロー、②変動係数の定義(標準偏差÷平均値)と「いつ使うか」、③回帰リレーの図2——この3つを何も見ずに再現してみてください。描ければ今日の道具は手に馴染んでいます。描けなかったものが、あなたの復習ポイントです。

よくある質問

この記事の演習問題は実際の入試問題ですか?

いいえ。実際の入試(大学入学共通テストや各大学の情報入試)で出題されてきた「型」を分析したうえで、題材・数値・選択肢を当塾が独自に作成したオリジナル問題です。型は本物、素材はオリジナル——だから安心して演習に使えます。

共通テスト予想問題【データベース×データ分析 腕試し】——藤原進之介の独自作成問題

実際の共通テスト・試作問題の出題型を分析して作成した、本記事オリジナルの予想問題です(藤原進之介の独自作成問題であり、大学入試センターの問題の転載ではありません)。解答を隠してあるので、まず自力で解いてみてください。無断転載はご遠慮ください。

問1 A店の売上は平均50万円・標準偏差10万円、B店は平均200万円・標準偏差20万円である。変動係数(標準偏差÷平均)で相対的なばらつきを比べた結果として正しいものはどれか。

① A店0.2、B店0.1で、相対的なばらつきはA店の方が大きい
② A店0.2、B店0.1で、ばらつきはB店の方が大きい
③ 標準偏差が大きいB店のばらつきが常に大きい
④ 変動係数は計算できない

解答・解説を見る

正解:。10÷50=0.2、20÷200=0.1です。標準偏差の絶対値はB店が大きくても、規模に対する割合ではA店が2倍ばらついています。「規模の違うもの同士を比べるときは割合に直す」——変動係数の存在理由がそのまま答えになります。

問2 勉強時間 x(時間)とテストの点数 y に、回帰直線 y=2x+10 が得られた。x=15 のときの予測値はどれか。

① 30点
② 40点
③ 50点
④ 25点

解答・解説を見る

正解:。2×15+10=40点です。回帰直線は「傾向を1本の式に要約したもの」で、代入すれば予測が出ます。ただし次問のとおり、データの範囲の外への適用(外挿)は慎重に——計算と限界をセットで問うのが定番です。

問3 前問の回帰直線を x=100(勉強時間100時間)に適用して「210点」と予測することの問題点として最も適当なものはどれか。

① 観測データの範囲を大きく外れた外挿であり、直線関係が成り立つ保証がない(満点も超えている)
② 計算が間違っている
③ 回帰直線は予測に使ってはいけない
④ 問題は何もない

解答・解説を見る

正解:。回帰直線が信頼できるのは、観測データが存在する範囲の近くだけです。テストに満点がある以上、直線がどこまでも伸びるはずがありません。「式は正しく計算できても、適用範囲を外れたら意味を失う」——外挿の危険は頻出の論点です。

問4 「生徒表(学籍番号・氏名・部活動番号)」と「部活動表(部活動番号・部活動名)」に表を分けて管理する利点として最も適当なものはどれか。

① 部活動名の変更が部活動表の1か所の修正で済み、不整合を防げる
② 検索が必ず速くなる
③ データが自動的に暗号化される
④ 表が1つに統合される

解答・解説を見る

正解:。部活動名を生徒全員の行に書いていたら、名称変更のたびに数百行の修正が要り、直し漏れが矛盾になります。事実を1か所に置き番号で参照する——正規化の利点を「変更に強い」という言葉で説明できるようにしましょう。

問5 データベースから抽出した売上データを散布図にしたところ、1件だけ極端に大きい値が見つかった。適切な対応として最も適当なものはどれか。

① 元のデータベースに戻って、入力ミスか実際の取引かを確認してから扱いを決める
② 見た目が悪いので黙って削除する
③ 平均値で置き換える
④ そのままにして原因は調べない

解答・解説を見る

正解:。抽出・集計の下流で異常を見つけたら、上流(元データ)に戻って確認するのが原則です。誤記なら直し、事実なら事情ごと分析する——「データの流れをさかのぼる」姿勢が、DB×分析の複合問題で問われます。

出題形式・題材の傾向分析は本文の「共通テストではこう出る」を参照。ほかの講の予想問題は予想問題ハブシリーズハブからどうぞ。

出典・関連資料

  • 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編」——データベースおよびデータの活用(情報Ⅰ(4))に関する記述
  • 大学入試センター 大学入学共通テスト『情報Ⅰ』——実施形式(60分100点)・平均点(2025年度69.26点、2026年度56.59点)と出題傾向の確認
  • 本記事の演習問題は、上記の出題傾向および過去の入試問題(2023年 駒澤大学 全学部統一日程選抜、2025年 関西福祉大学 一般選抜前期、2025年 京都産業大学 一般選抜入試前期 情報プラス型 等の同型の出題)の型を参考に、数強塾が独自に作成したオリジナル問題です。実際の入試問題の転載は行っていません。

本記事は、藤原進之介の情報Ⅰ共通テスト対策授業「データベースとデータ分析の実戦演習」の回をもとに構成しています。シリーズ『分野別対策演習』の一覧は対策演習ハブ、講義編『最強120講義』の全体像は120講義ハブからご覧いただけます。

この単元が本番で問われる設問(共通テスト 全問解説)

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