こんにちは、数強塾代表の藤原進之介です。この記事は、私が普段行っている「情報Ⅰ」の共通テスト対策の授業のうち、デジタル化と計算問題の回をもとに、Web教材として読めるように再構成した演習版です。分野別対策演習シリーズの第12回、いよいよ最終回です。
共通テスト「情報Ⅰ」は2025年1月から実施されている60分100点の試験で、第1問・第2問には毎回、「ルールを理解して、その場で計算・判定する」タイプの問題が並びます。二次元コードのセル数、チェックディジットの計算、真理値表、波形の符号化、圧縮、転送時間——どれも知識そのものより、与えられたルールをその場で正確に運用する力が問われます。2025年度の平均点は69.26点でしたが、2026年度は56.59点と12.67点下がりました。計算の分量が増えるほど差がつくのがこのタイプで、逆に言えば、手順さえ固めれば本番で最も安定して取れる得点源になります。
この記事では6大問+補足1問、計15問を解きます。紙とペンを用意して、所要時間60分ほどを見込んでください。
この回で仕上げる範囲──「計算とルール理解」の全体地図
今日のテーマは教科書では「情報のデジタル化」を中心に散らばっていますが、試験での問われ方は同じ構造です。問題文の中でルールが定義され、それをその場で計算・判定する。覚えることは最小限で、当日の運用がすべてです。
| テーマ | 試験での問われ方 | 落とし穴 |
|---|---|---|
| 二次元コード | 表からセル数の規則を読み取る | 「比例」と「段階的に増える」の混同 |
| チェックディジット | 生成ルール通りに計算・誤り検出の可否 | 奇数桁の位置の取り違え・引き算忘れ |
| 論理回路 | 条件文を真理値表に翻訳する | 「2台以上」と「ちょうど2台」の混同 |
| 標本化・量子化 | 波形を読んでビット列にする | 段階の数(2n)とビット数の混同 |
| ランレングス圧縮 | 圧縮後の文字数・圧縮比の計算 | 行またぎの数え忘れ・圧縮比の向き |
| データ量・転送時間 | 単位換算を含む計算 | ビットとバイトの換算(×8)忘れ |
要点の詳しい講義は『情報Ⅰ 最強120講義』の各講に譲り、この記事では各大問の直前に「その大問で使う分だけ」を圧縮して置きます。演習でつまずいたら、下の該当講に戻ってください。
演習1 二次元コードの性質──目印の比とセル数の規則
二次元コードは黒白の小さな正方形(セル)の集まりで、黒白が1と0に対応します。三つの隅の二重の正方形は位置検出パターン(コードの位置と向きを読み取り機に教える目印)。また、コードの一部が汚れて読めなくても復元できる誤り訂正機能があり、復元能力は段階的に設定できます。この構図は試作問題『情報Ⅰ』第2問で大きく扱われており、以下はその型を踏まえた当塾のオリジナル問題です。
【問1-1】二次元コードの隅にある位置検出パターンは、図1のように、パターンの中央付近を横切る直線上の黒白の長さの比が黒1:白1:黒3:白1:黒1になるよう設計されており、読み取り機はこの比を手がかりにコードの位置を認識する。図1の右のような同心円の目印でも、中心を通る直線上では同じ比を作れるが、実際には正方形が採用されている。その理由として最も適当なものを選べ。
⓪ 円形では、走査する直線が中心から少しずれるだけで黒白の長さの比が変わってしまい、目印として正しく認識できなくなる可能性があるから。
① 円形では上下左右の区別がつかず、コードがどちらを向いているか判別できなくなるから。
② 円はセルの正方形と形が合わず、印刷することができないから。
③ 円形の目印は、コードが斜めに傾いていると認識できないから。
STEP 1 正方形のパターンを図1左で確認します。水平の実線でも、45度の破線でも、横切る線分の比は1:1:3:1:1のままです。相似な図形を横切るので、傾いても比が保たれる——これが正方形の強みです。
STEP 2 円形ではどうか。中心を通る直線なら確かに1:1:3:1:1にできますが、読み取り機はカメラ画像を1行ずつ走査するため、中心を通らない直線もたくさん読みます。図1右の破線のように中心を外れると、黒白の長さの比はまったく別の値になります。正方形なら、中央の帯のどこを水平に走査しても同じ比が出ます。
答え ⓪
③は逆で、正方形の目印は斜めからでも比が保たれるからこそ採用されています。①の向きの判別は、目印が三つの隅にだけある配置で解決している別の話です。冒頭の「今日の一問」の答えがまさにこの⓪でした。「どの角度・どの位置の走査でも比が不変」だから正方形——図に線を引いて確かめられるようにしておきましょう。
【問1-2】ハルカさんは、二次元コードを作成できるWebアプリで、英小文字だけからなる文字列について、文字数と復元能力(読み取れない面積の割合をどこまで復元できるか)を変えて二次元コードを作り、セルの縦×横の数を調べて表1にまとめた。なお、このアプリではセルの縦横の数は自動で最適に調整される。
| 表1 | 10文字 | 20文字 | 30文字 | 40文字 |
|---|---|---|---|---|
| 復元能力7% | 21×21 | 25×25 | 29×29 | 29×29 |
| 復元能力30% | 25×25 | 29×29 | 33×33 | 37×37 |
この表1から考えられることとして適当なものを、次のうちから二つ選べ。
⓪ 同じ復元能力であれば、セルの数は文字数に正比例して増える。
① 復元能力ごとに、文字数の一定の範囲に対してセルの縦横の数が決まっており、文字数が増えるとセルの縦横の数は段階的に増える。
② 文字数とセルの数の間には関係が見られない。
③ 同じ文字列を復元能力30%で作成すると、復元能力7%で作成した場合のちょうど4倍のセル数になる。
④ 同じ文字数でも復元能力を上げるとセルの数が増えるのは、誤りを訂正するための情報が余分に必要になるためと考えられる。
⑤ 同じ文字数であれば、復元能力を変えてもセルの数は変わらない。
STEP 1 表の読み取り問題は、各選択肢を表の数字で反証できるかを試します。⓪「正比例」:復元能力7%の行では30文字も40文字も29×29で増えていません。比例なら必ず増えるはずなので×。②も明らかに×です。
STEP 2 ③「ちょうど4倍」:10文字で比べると、21×21=441セルに対し25×25=625セルで約1.4倍。4倍にはほど遠いので×。⑤はどの列でも上下の段で数が違うので×。数字を1組計算するだけで消せます。
STEP 3 残った①と④を表で確認します。①:7%の行は「10文字→21、20文字→25、30〜40文字→29」と、文字数の範囲ごとに段が上がる読み方ができます。④:同じ列で必ず30%の方がセル数が多い。復元能力を上げる=壊れても復元できる冗長な情報を余計に持つ、という理屈とも合致します。
答え ①・④
この型の鉄則は、「比例」「ちょうど◯倍」のような強い言葉の選択肢は、表の数字を1組代入して検証することです。もっともらしい理屈でも、表と1か所でも矛盾すれば切れます。正解の選択肢は「段階的に」のように全データと矛盾しない控えめな表現になっていることが多いのも、実戦的な目の付け所です。
演習2 チェックディジット──2つの生成方法を計算して比べる
チェックディジットは、番号の末尾に付ける検査用の数字です。入力された番号から同じ計算をやり直し、末尾の数字と一致しなければ「入力ミスあり」と判定できます。書籍のISBNコードなどで実用されており、2025年度共通テスト『情報Ⅰ』本試験第1問でも計算問題として出題されました。以下は同じ型のオリジナル問題です。途中式を書きながら進めてください。
【問2-1】あるオンライン学習サービスでは、5桁の会員番号 N5N4N3N2N1(左からN5、N4、…と呼ぶ)に、入力ミスを検出するための検査用数字C を1桁加えた6桁 N5N4N3N2N1C を利用している。C の生成方法として次の2種類を考える。
【生成方法A】会員番号の各桁の値をすべて足し合わせ、10で割った余りR を求め、10からR を引いた値をC とする。
【生成方法B】会員番号の奇数番目の桁(N5・N3・N1)の値をそれぞれ3倍した値と、偶数番目の桁(N4・N2)の値を足し合わせ、10で割った余りR を求め、10からR を引いた値をC とする。
いずれの方法でも、R が0の場合はC を0とする。会員番号が「31752」のとき、生成方法Aで作ったC は[ア]、生成方法Bで作ったC は[イ]である。ア・イに当てはまる数字を答えよ。
STEP 1 方法A。各桁の和は 3+1+7+5+2=18。10で割った余りは R=8。C=10−8=2。
STEP 2 方法B。まず桁の割り振りを丁寧に。31752 では N5=3、N4=1、N3=7、N2=5、N1=2。3倍するのは奇数番目の N5・N3・N1、つまり3・7・2です。3×(3+7+2)+(1+5)=36+6=42。R=2。C=10−2=8。
答え ア=2 イ=8
この問題の失点は計算力ではなく手順の読み飛ばしから生まれます。狙われるポイントは3つ。(1)どの桁を3倍するのか——問題文の桁の番号付けを図に書き写してから計算する。(2)「余りR」で止めない——最後に10−R まで実行する。(3)R=0 のときC=0 という例外——10−0=10 は1桁に収まらないための特別ルールです。生成手順は本番でもその場で定義されるので、1行ずつ指で追いながら計算するのが結局速くて正確です。
【問2-2】会員番号31752の持ち主が、番号を入力する際に隣り合うN3とN2を入れ替えて「31572」と打ち間違えた。この誤りは、生成方法Aでは検出できないが、生成方法Bでは検出できる。一般に、「隣り合う2桁の入れ替え」という誤りについて、方法Aが検出できない理由と、方法Bなら検出できることがある理由の組み合わせとして最も適当なものを選べ。
⓪ A:桁を入れ替えても各桁の値の合計は変わらないから/B:桁の位置によって掛ける数(重み)が異なるため、入れ替えると合計が変わることがあるから
① A:桁を入れ替えても各桁の値の合計は変わらないから/B:検査用数字を加えて6桁になるため、誤りが目立ちやすくなるから
② A:10で割った余りを求める際に誤りが打ち消されるから/B:3倍した値は必ず10を超えるから
③ A:検査の対象が末尾の1桁だけだから/B:すべての桁が検査の対象になっているから
STEP 1 まず実例で確かめます。31572(N3=5、N2=7 に入れ替わった状態)で再計算すると、方法Aは 3+1+5+7+2=18 で元と同じ。足し算は順序を入れ替えても和が変わらないので、方法Aは桁の入れ替えを原理的に検出できません。
STEP 2 方法Bは 3×(3+5+2)+(1+7)=30+8=38、R=8、C=10−8=2。正しいC=8 と食い違うので検出できます。理由は、入れ替えた2桁の重み(3倍される桁か、そのままの桁か)が異なるため、合計が 3×7+5=26 から 3×5+7=22 へと変化するからです。
答え ⓪
1歩踏み込むと、方法Bでも検出できない入れ替えがあります。重み3と1の交換で合計は「差×2」だけ変わるため、2桁の差が5のとき(2と7など)は変化が10となり、余りが同じになって検出をすり抜けます。設問が「検出できることがある」と書かれているのはこのためで、この言い回しの慎重さが正解の目印になります。2025年度本試験でも「2桁の誤りの検出可否」を考えさせる同型の出題がありました。
演習3 論理回路──「2台以上で点灯」の真理値表
基本の論理回路は3つ。AND(論理積)=両方1のときだけ1、OR(論理和)=どちらか1つでも1なら1、NOT(否定)=1と0を反転。真理値表とは、入力のすべての組み合わせに対する出力を並べた表です。入力が3つなら行数は 23=8行。日本語の条件文を真理値表に翻訳する練習が、この分野の得点力に直結します。
【問3-1】理科室には消費電力の大きい実験装置AとBがあり、両方が同時に稼働しているときに限り、ブレーカーの過負荷を知らせる警告ランプX が点灯する。装置が稼働中なら入力を1、停止中なら0とし、ランプが点灯するとき出力X を1とする。(1)X=1 となる入力(A、B)の組み合わせは、4通りのうち[ア]通りである。(2)この動作を実現する基本回路は[イ]である。
イの選択肢:⓪ AND回路(論理積回路) ① OR回路(論理和回路) ② NOT回路(否定回路) ③ XOR回路(排他的論理和回路)
答え ア=1 イ=⓪
「両方が同時に」=A=1 かつ B=1 の1通りだけで出力1。ANDの定義そのものです。日本語との対応は「かつ」→AND、「または」→OR、「〜でない」→NOT。①ORだと4通り中3通りで点灯し、片方だけの稼働でも警告が出てしまいます。
【問3-2】装置が3台(A・B・C)に増えた。今度は3台のうち2台以上が同時に稼働したら警告ランプY を点灯させたい。(1)この動作の真理値表として正しいものを、表2のY⓪〜Y③の列から一つ選べ。(2)この回路は、「2台の組(AとB、BとC、AとC)それぞれの同時稼働を[ウ]回路で検出し、その3つの出力を[エ]回路でまとめる」ことで実現できる。ウ・エに入る回路名を答えよ。
| A | B | C | Y⓪ | Y① | Y② | Y③ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 |
| 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 |
| 0 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 0 |
| 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 |
| 1 | 0 | 1 | 1 | 1 | 1 | 0 |
| 1 | 1 | 0 | 1 | 1 | 1 | 0 |
| 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 0 | 1 |
STEP 1 真理値表の選択問題は全行を照合してはいけません。判定が分かれる行だけをピンポイントで見ます。まず「1台だけ稼働」の行(0,0,1)。2台以上ではないのでY=0 のはず。ここでY⓪は1になっており、Y⓪は「1台以上で点灯(OR)」なので×。
STEP 2 次に「3台全部稼働」の行(1,1,1)。2台以上なので当然Y=1 のはず。Y②はここが0——「ちょうど2台のとき」だけ点灯する表で、「以上」の読み落としを誘う罠です。Y③は(1,1,1)しか点灯せず「3台全部(AND)」なので×。残ったY①が、2台の行と3台の行だけ1になっており正解です。
STEP 3 (2)は「2台以上」を式に翻訳します。2台以上=「AとBが同時」または「BとCが同時」または「AとCが同時」。各組の「同時」をANDで検出し、3つの結果の「または」をORでまとめる。AND3個の出力をORに入れる回路図を描ければ完成です。
答え (1)Y① (2)ウ=AND回路 エ=OR回路
試作問題『情報Ⅰ』第1問に「3つのうち2つ以上で点灯」の真理値表を選ばせる同型の出題があります。照合のコツは「境界の行」——1台だけの行と全部稼働の行——だけ見ること。全行を確かめるより速く、確実です。
演習4 標本化・量子化・符号化──波形をビット列にする
アナログ信号のデジタル化は3ステップです。標本化=一定の時間間隔で波の高さを取り出す(1秒間に取り出す回数が標本化周波数、単位Hz)。量子化=取り出した値を、あらかじめ決めた段階のうち最も近い段階値に割り当てる(段階の数を決めるのが量子化ビット数)。符号化=段階値を2進法のビット列にする。2022年度共通テスト『情報関係基礎』第1問で波形をビット列に直す問題が出ており、以下は同じ型のオリジナル問題です。
【問4-1】図2のアナログ信号をデジタル化する。次の文章の空欄ア〜エに入るものを答えよ。
一定の時間間隔でアナログ信号の波の高さを取り出す操作を[ア]という。取り出した値を、あらかじめ設定した段階のうち最も近い段階値に割り当てる操作を[イ]という。量子化ビット数を3ビットとすると、段階の数は[ウ]段階になる。図2の信号を標本化周波数10Hz・量子化ビット数3ビットでデジタル化し、時刻0秒から順に段階値を3ビットずつ符号化して並べたとき、先頭12ビットは[エ]となる。
ア・イ:⓪ 符号化 ① 標本化 ② 量子化 ③ 暗号化
エ:⓪ 010101111110 ① 010111011010 ② 001001010111 ③ 110111101010
STEP 1 ア=標本化、イ=量子化。用語は「標本=サンプルを取る」「量子化=段階(目盛り)に丸める」とセットで。ウは3ビットで表せる値の個数なので 23=8段階(段階値0〜7)です。「3ビットだから3段階」としないこと。
STEP 2 エ。図2の標本点を時刻0秒から読むと、段階値は 2、5、7、6、…。先頭12ビットは12÷3=4標本分なので、読むのは最初の4個だけでよい。2→010、5→101、7→111、6→110。並べて 010101111110。⓪が一致します。
答え ア=① イ=② ウ=8 エ=⓪
各3ビットは「4+2+1」の位取りで暗算します(5=4+1→101)。①は「0.2秒ごとに読んだ場合」のビット列、②は10進数の桁をそのまま並べた誤り、③は逆順です。「先頭◯ビット÷ビット数=読む標本数」と、作業量を先に確定させるのが時短のコツです。
【問4-2】図2の信号を、量子化ビット数は3ビットのまま、標本化周波数だけを10Hzから5Hz(0.2秒ごと)に変えてデジタル化した。このときの説明として最も適当なものを選べ。
⓪ 1秒あたりのデータ量は半分になるが、標本と標本の間にある信号の速い変化は記録できなくなる。
① 1秒あたりのデータ量は半分になり、もとの波形もまったく同じ細かさで記録できる。
② 1秒あたりのデータ量は変わらないが、量子化誤差が半分になる。
③ 1秒あたりのデータ量は2倍になり、より細かく記録できる。
STEP 1 5Hzでは時刻0、0.2、0.4、0.6秒の標本値 2、7、3、2 だけを拾い、ビット列は 010111011010(問4-1の選択肢①の正体)。標本の個数が半分になるからデータ量も半分です。
STEP 2 失うものを図2で確認します。時刻0.1秒の「5」や0.5秒の「1」は読み飛ばされ、山の登り方や谷の深さの情報が消えます。標本化周波数を下げる=時間方向の細かさを捨てる。①の「まったく同じ細かさ」が言い過ぎで誤り、と判断できます。
答え ⓪
「データ量」と「再現の忠実さ」はトレードオフ(あちらを立てればこちらが立たず)の関係です。標本化周波数は時間方向の細かさを、量子化ビット数は高さ方向の細かさを受け持つ——この役割分担を押さえると、②のような「周波数を変えたのに量子化誤差が変わる」型の混同選択肢を確実に切れます。
【問4-3】次の文章の空欄オ〜キに入るものを答えよ。
圧縮しない場合、音声データの1秒あたりのデータ量(ビット)は、標本化周波数と量子化ビット数の[オ]で求められる。一般的な音楽CDは標本化周波数44100Hz・量子化ビット数16ビットで、左右2チャンネル分を圧縮せずに記録するので、1秒あたりのデータ量は[カ]バイトになる。また、量子化の際に生じる誤差(量子化誤差)を小さくするには量子化ビット数を増やせばよいが、その代わり[キ]。
オ:⓪ 和 ① 差 ② 積 ③ 商
カ:⓪ 88,200 ① 176,400 ② 705,600 ③ 1,411,200
キ:⓪ データ量が増える ① 音の高さが変わってしまう ② 標本化ができなくなる ③ 記録できる時間が長くなる
STEP 1 1秒あたり「44100回」取り出し、1回につき「16ビット」記録するので、掛け算です。44100×16=705,600ビット。これが1チャンネル分。
STEP 2 ステレオは左右2チャンネルなので ×2 で 1,411,200ビット。設問の単位はバイトなので8で割って 1,411,200÷8=176,400バイト。②や③は「×2忘れ」「÷8忘れ」の途中経過がそのまま並んだ選択肢です。
答え オ=② カ=① キ=⓪
計算の型は「周波数×ビット数×チャンネル数、最後に単位確認」。どこか1手を抜かせるのが定番の作りなので、選択肢に中間の数が並んでいたら換算漏れを疑ってください。細かく記録する代償は常にデータ量です。
演習5 ランレングス圧縮──何文字縮むか、縮まないのはどれか
圧縮には、完全に元へ戻せる可逆圧縮と、人間が気づきにくい情報を捨てて戻せなくする非可逆圧縮があります。ランレングス圧縮は可逆圧縮の代表例で、「同じ値の連続(ラン)」を「値+個数」で置き換える方式です。2021年度共通テスト『情報関係基礎』第2日程で白黒画像を文字列で圧縮する問題が出ており、以下は同じ型のオリジナル問題です。
【問5-1】図3の4×4の白黒画像を、左上から右へ1画素ずつ読み、右端まで来たら次の行の左端から続きを読んで、「黒」「白」を1文字ずつ並べた16文字の文字列で表す。さらにこの文字列を、同じ色の連続を「色+個数」で表す方法(例:黒が4個続けば「黒4」)で圧縮する。圧縮後の文字列は元の16文字より何文字短くなるか。ただし数字1個も1文字と数える。
STEP 1 まず16文字の文字列を作ります。行ごとに区切ると「黒黒黒黒|白白白黒|黒黒黒黒|黒白白白」。ここで機械的に行単位で圧縮してはいけません。読み取りは行をまたいで連続します。2行目の末尾の黒、3行目の黒4つ、4行目の先頭の黒は、ひとつながりの「黒6連続」です。
STEP 2 連続で数え直すと、黒4個→白3個→黒6個→白3個(合計4+3+6+3=16でちょうど全画素。ここで必ず検算します)。圧縮後は「黒4白3黒6白3」で8文字。16−8=8文字短くなります。
答え 8文字短くなる
この型の最大の罠が行またぎです。行ごとに「黒4/白3黒1/…」と圧縮すると答えがずれます。検算習慣として、ランの長さの合計=画素数を毎回確かめてください。なお圧縮比は 8÷16=0.5 です。
【問5-2】図4の⓪〜③の4×4画像を、問5-1と同じ方法で圧縮する。(1)圧縮しても文字数を減らせない画像を二つ選べ。(2)「圧縮比(=圧縮後のデータ量÷圧縮前のデータ量)が最も小さい画像は③である」という主張は正しいか。
STEP 1 それぞれ圧縮後の文字数を数えます。⓪縦縞:どの行も「黒白黒白」で、行末が白・次の行頭が黒なので、16画素すべてが長さ1のラン。「黒1白1」が8回で32文字——元の2倍に膨らみます。①横縞:黒4白4黒4白4で8文字。②左半分:黒2白2が行ごとに切れて8ラン、16文字で元と同じ。③上半分:黒8白8で4文字。
STEP 2 (1)「減らせない」のは、増える⓪と、変わらない②の二つ。(2)圧縮比は ⓪2、①0.5、②1、③0.25。圧縮比は小さいほどよく縮んだことを意味する定義なので、最小の③=最もよく縮んだ画像であり、主張は正しい。
答え (1)⓪と② (2)正しい(③の圧縮比0.25が最小)
ランレングス圧縮は同じ色が長く続くほど縮み、細かく切り替わる画像では逆に膨らむ——⓪がその実例で、「圧縮すれば必ず小さくなる」という思い込みを突く選択肢は頻出です。圧縮比は「圧縮後÷圧縮前」で小さいほど優秀。直感で逆に取り違えやすいので、定義の式に戻って判定してください。
演習6 データ量と転送時間──ビットとバイトの計算
転送速度の単位bpsは「1秒間に送れるビット数」。データ量の単位バイトとの間には1バイト=8ビットの換算があります。この大問では1M=1000k、1k=1000とし、データは圧縮されず、送信中の損失や遅延はないものとします。転送時間は試作問題『旧情報(仮)』第1問に、転送効率は2025年の日本大学の情報入試に同型の出題があります。以下はオリジナルの数値で演習します。
【問6-1】ユウトさんは、部活動の紹介動画(40Mバイト)を学校のWebサイトにアップロードしようとしたが、スマートフォンのデータ通信量が上限に達して速度制限がかかっており、アップロードの通信速度は200kbpsだった。アップロードにかかる時間として正しいものを選べ。
⓪ 3分20秒 ① 13分20秒 ② 26分40秒 ③ 3時間33分20秒
STEP 1 最初にやるのは計算ではなく単位合わせです。データ量はバイト、速度はビット毎秒。40Mバイト=40×8=320Mビット。M をk に直すと 320Mビット=320,000kビット。
STEP 2 時間=データ量÷速度=320,000kビット÷200kbps=1,600秒。60で割ると 1,600=26×60+40 なので26分40秒です。
答え ②
⓪の3分20秒(200秒)は、バイトをビットに直し忘れた値——つまり正解のちょうど8分の1で、この分野で最も多い失点パターンです。選択肢に「8倍・8分の1」の関係のペアを見つけたら、換算の有無を検算する合図だと思ってください。③は逆に8倍を2回掛けた値です。
【問6-2】ユウトさんのスマートフォンは、動画の解像度を1920×1080と640×360から選べる。1秒間のフレーム数(パラパラ漫画のコマ数)と1画素あたりのデータ量が同じとき、解像度1920×1080の動画の1秒あたりのデータ量は、640×360の何倍か。
⓪ 3倍 ① 6倍 ② 9倍 ③ 12倍
STEP 1 データ量は画素数に比例します。画素数の比は (1920×1080)÷(640×360)。掛け算をまともに実行せず、縦と横を別々に比べます。横:1920÷640=3倍。縦:1080÷360=3倍。
STEP 2 面積(画素数)は縦横それぞれの倍率の積なので 3×3=9倍。フレーム数と1画素あたりのデータ量が同じなら、1秒あたりのデータ量もそのまま9倍です。
答え ②
⓪の「3倍」は、縦横の一方だけ比べて面積の発想が抜けた誤答で、これが定番の罠です。解像度が縦横ともn倍ならデータ量はn2倍。なお「解像度を上げると色の数が増える」「明るくなる」は誤りで、解像度が変えるのは画素の細かさだけです。
【問6-3】ユウトさんが学校のパソコンで60Mバイトのファイルをネットワーク経由でコピーしたところ、12秒かかった。回線には規格上の転送速度(本来の速度)があるが、実際にはその80%の速度しか出ていなかった(転送効率80%)とする。この回線の規格上の転送速度として正しいものを選べ。ただし1M=106とする。
⓪ 5Mbps ① 32Mbps ② 40Mbps ③ 50Mbps
STEP 1 まず実測の速度を出します。60Mバイト=480Mビット。480Mビット÷12秒=40Mbps。これが「実際に出ていた速度」です。
STEP 2 実測40Mbpsは規格上の速度の80%にあたるので、規格上の速度=40÷0.8=50Mbps。検算:50×0.8=40Mbps、40Mbpsで480Mビットを送ると480÷40=12秒。設定と一致します。
答え ③
①の32Mbpsは、40×0.8と掛ける方向を逆にした誤答です。「実測は規格より小さいはず→規格は実測より大きいはず」という大小関係を先に押さえておけば、40より小さい⓪①は計算前に切れます。効率の問題は「掛けるのか割るのか」を大小関係で検算するのが型です。
補足演習 操作しやすい画面の法則
最後に情報デザイン分野から1問。2025年度共通テスト『情報Ⅰ』本試験第1問で、この法則を使った問題が出題されました。
【問7】マウスカーソルを画面上の対象物まで動かして指し示す操作については、「対象物が大きいほど、移動にかかる時間が短い」「対象物までの距離が短いほど、移動にかかる時間が短い」という法則が知られている。パソコンで右クリックしたときに開くメニューで、利用頻度の高い項目がマウスカーソルのすぐ近くに配置されることが多いのはなぜか。最も適当なものを選べ。
⓪ カーソルの近くに置くと項目が目立つ色で表示されるから。
① カーソルからの距離が短いほど短い時間で指し示せるため、よく使う項目ほど近くに置くと操作全体の時間を減らせるから。
② カーソルの近くに置くと誤って選択したときに取り消しやすいから。
③ メニューの項目は五十音順に並べる決まりがあるから。
答え ①
法則の2条件(大きさ・距離)のうち、メニュー設計に効いているのは「距離」です。逆に「すべて削除」のような取り返しのつかない項目をわざと遠くに置く設計も、この法則の応用です。与えられた法則を画面設計に当てはめるだけで解けるサービス問題なので、確実に取りましょう。
解法の型まとめ──3秒チェック
今日の演習で使った「型」を即答形式で並べます。口頭で答えてから開いてください。
Q1 表の読み取り問題で「比例」「ちょうど◯倍」の選択肢を見たら?
表の数字を1組代入して検証する。1か所でも矛盾すれば切る。正解は「段階的に」など全データと矛盾しない表現になっていることが多い。
Q2 チェックディジットの計算で事故を防ぐ3点は?
(1)どの桁に重みを掛けるか図に書き写す(2)余りRで止めず10−Rまで実行(3)R=0ならC=0の例外を確認。
Q3 真理値表の選択問題を速く解くには?
境界の行だけ見る。「1台だけ稼働」の行と「全部稼働」の行を照合すれば、OR型・ちょうど型・AND型の罠が一度に切れる。
Q4 「先頭12ビットを答えよ」と言われたら最初にすることは?
12÷量子化ビット数で「読む標本の個数」を確定する。3ビットなら4標本分だけ読めばよい。段階の数は2n。
Q5 ランレングス圧縮の2大チェックポイントは?
行またぎの連続を切らないこと。ランの長さの合計=画素数の検算をすること。圧縮比は「圧縮後÷圧縮前」で小さいほどよく縮む。
Q6 転送時間の計算で最初にすることは?
計算より先に単位合わせ。バイトなら×8でビットへ。選択肢に8倍違いのペアがあれば換算漏れを疑う。効率は「実測<規格」の大小関係で掛け算・割り算の向きを検算。
図2の波形を白紙に描き写し、標本化周波数と量子化ビット数を自分で決めてビット列を作ってみてください。検算まで通せたら、この分野は完成です。
よくある質問
この記事の演習問題は実際の入試問題ですか?
いいえ。共通テスト・試作問題・「情報関係基礎」・各大学の情報入試の「型」を分析したうえで、題材・数値・図・選択肢を当塾が独自に作成したオリジナル問題です。すべての計算問題は作成時に検算済みです。
共通テスト予想問題【デジタル化・圧縮 腕試し】——藤原進之介の独自作成問題
実際の共通テスト・試作問題の出題型を分析して作成した、本記事オリジナルの予想問題です(藤原進之介の独自作成問題であり、大学入試センターの問題の転載ではありません)。解答を隠してあるので、まず自力で解いてみてください。無断転載はご遠慮ください。
出題形式・題材の傾向分析は本文の「共通テストではこう出る」を参照。ほかの講の予想問題は予想問題ハブ・シリーズハブからどうぞ。
出典・関連資料
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編」——情報のデジタル化に関する記述
- 大学入試センター 令和7年度大学入学共通テスト試作問題『情報Ⅰ』第1問・第2問、『旧情報(仮)』第1問(二次元コード・論理回路・転送時間の同型の出題)
- 2025年度大学入学共通テスト『情報Ⅰ』本試験 第1問(チェックディジット・ユーザインタフェースの同型の出題)
- 2022年度大学入学共通テスト『情報関係基礎』本試験・2021年度『情報関係基礎』第2日程(標本化・量子化・ランレングス圧縮の同型の出題)
- 2025年 日本大学 文理学部(転送効率の同型の出題)
- 本記事の演習問題は、上記の出題傾向と型を参考に、題材・数値・図・選択肢を数強塾が独自に作成したオリジナル問題です。実際の入試問題の転載は行っていません。
これで『分野別対策演習』全12回は完結です。ネットワークからセキュリティ、法規、データベース、データ分析、プログラミング、今日の計算系テーマまで、主要分野を一巡しました。シリーズの一覧は対策演習ハブから、講義編『最強120講義』の全体像は120講義ハブからご覧いただけます。本番直前期の最終確認には直前1週間チェックリストをどうぞ。
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