こんにちは、数強塾代表の藤原進之介です。この記事は、私が普段行っている「情報Ⅰ」の共通テスト対策の授業のうち、問題演習──ネットワークとセキュリティの回をもとに、Web教材として読めるように再構成した演習版です。第1回(ネットワーク・プロトコル)と第2回(情報セキュリティ)で身につけた知識を、今度は本番と同じ「大問形式」で使いこなす実戦回です。
共通テスト「情報Ⅰ」は2025年1月から実施されている60分100点の試験で、2025年度の平均点は69.26点、2026年度は56.59点と12.67点下がりました。難化の一因は、具体的な場面に知識を当てはめて考えさせる問題が増えたこと。その典型がネットワークとセキュリティで、試作問題でも家庭内LANの機器構成を題材にした大問が出題されました。1台のWi-Fiルータを「分解」できるか、パスワードの強さを「計算」できるか、暗号の鍵の向きを「即答」できるか——問われるのはこの3つの力です。
最初に今日使う知識を「武器4枚」に圧縮して整理し、後半で演習問題を3大問・計13問解きます。所要時間はおよそ50〜70分。計算問題があるので、紙とペンを用意してください。
要点整理──今日使う武器4枚
後半の演習で実際に使う知識だけを4枚に絞って並べます。丁寧な解説は『情報Ⅰ 最強120講義』の該当講に譲り、ここでは「試験会場で思い出す形」で整理します。
1枚目 ネットワーク機器は「役割」で区別する
| 機器 | 役割 | 試験での急所 |
|---|---|---|
| ルータ | ネットワークとネットワークを接続する | WANポート=外(インターネット側)への出入口、LANポート=家の中 |
| ハブ | 1つのLANの中で接続口(ポート)を増やす | 経路は選ばない。差すだけで分配 |
| アクセスポイント | 有線LANと無線(Wi-Fi)の橋渡し | 接続に必要なのはSSIDと暗号化キーの2点セット |
| モデム/ONU | 信号を変換する(アナログ⇔デジタル、光⇔電気) | 「変換」ときたらこれ。ルータと混同させる罠が定番 |
市販の「Wi-Fiルータ」1台の中には、実はルータ+ハブ+アクセスポイントの3役が同居しています。外へ出る玄関(ルータ)、差し込み口を増やす部分(ハブ)、電波の出入口(アクセスポイント)。試験ではこの1台を分解して、役割ごとに問うてきます。合体したまま「Wi-Fiの機械」と覚えている人から失点します。
2枚目 情報セキュリティの3要素(CIA)と対策の対応
試験では「この対策はどの要素を守るものか」という対応づけの形で問われるので、対策例とセットの表で持っておきます。
| 要素 | 意味 | 対策の例 | 破られると |
|---|---|---|---|
| 機密性 | 許可された者だけがアクセスできる | パスワード設定・暗号化・アクセス権限の管理 | 漏えい |
| 完全性 | 情報が正確で完全なまま保たれている | 操作履歴や変更記録を残す・改ざん検知 | 改ざん |
| 可用性 | 必要なときにいつでも使える | バックアップ・複数の場所に保存・機器の二重化 | 停止(DoS攻撃の狙い) |
対策の文章を見たら「誰が見られる? 正しいまま? いつでも使える?」の3つの問いに当てはめる。「操作履歴を残す」は、正しいまま保たれているかを追跡できるようにする対策なので完全性です。
3枚目 ブルートフォース攻撃とmn・認証の3分類
ブルートフォース(総当たり)攻撃は、考えられるパスワードを機械が片っ端から全部試す攻撃です。m種類の文字でn文字なら、パターンはmn通り。1桁ごとにm通りの選び方をn回繰り返すからです。機械は飽きないので、守る側の考え方は2系統しかありません。
守り方① mnを爆発させる——種類を増やし、長さを伸ばす。演習2で「0.004秒が約1,240年になる」瞬間を計算で確かめます。
守り方② 試行そのものを止める——ログイン失敗の回数制限や、1回きりのワンタイムパスワード。何兆通りあっても「試せなければ」破れません。
もう1つ、認証の3分類。本人確認に使える要素は、知識(パスワード・暗証番号)、所有物(スマートフォン・ICカード)、生体(指紋・顔)の3種類です。このうち種類の違う2つを重ねた認証が二要素認証。パスワードのあとに「秘密の質問」を聞くのは、2段階でも知識+知識なので二要素になりません。この線引きは演習3でそのまま問います。
4枚目 HTTPSの中身──セッション鍵方式の5ステップ
HTTPS(SSL/TLS)は、共通鍵暗号方式と公開鍵暗号方式の合わせ技です。手順は5ステップで固定なので、図ごと覚えてしまいます。
なぜ合わせ技か。共通鍵方式は高速だが、最初の鍵の渡し方が弱点(鍵配送問題)。公開鍵方式は鍵を安全に渡せるが低速。そこで公開鍵方式で共通鍵を1回だけ運び、以後の本文は高速な共通鍵方式で暗号化する——いいとこ取りです。「公開鍵方式の仕事は共通鍵の配達だけ」と言えれば、演習3の空欄8個は全部埋まります。
演習1 家庭内LANの実戦──Wi-Fiルータを分解する(6問)
ここからが本編です。演習問題は、共通テストの試作問題や各大学の情報入試で繰り返し出ている「型」を分析し、題材・数値・選択肢を当塾が独自に作成したオリジナル問題です。試作問題(旧情報)では家庭内LANの構成を掘り下げる大問が出題されており、この形式は今後も本命だと私は見ています。まず自力で解いてから解説を読んでください。
【設定】高校2年生のハルトさんの家は光回線でインターネットに接続している。壁から伸びた光ファイバーは光回線終端装置(ONU)につながり、ONUと機器Qがケーブルで接続されている。機器Qの背面には「WAN」と書かれたポートが1つ(図のあ)と、「LAN」と書かれたポートが4つ(図のい・う・え・お)ある。WANポートはONUと、4つのLANポートは父のデスクトップパソコン・プリンタ・テレビ・ゲーム機と接続されていて、空きがない。ハルトさんのタブレットと妹ミオさんのノートパソコンは機器Qに無線(Wi-Fi)で接続している。
【問1】機器Qについて、(1)名称として最も適当なもの、(2)主な役割として最も適当なものを、それぞれ選べ。
(1)⓪ 無停電電源装置(UPS) ① ハブ ② ルータ ③ モデム
(2)⓪ 信号をアナログとデジタルの間で変換する
① 1つのLANの中で接続口を増やす
② ネットワークとネットワークを接続する
③ Webページのデータを保存して配信する
STEP 1 名称の根拠はポートの構成です。WANポートで外(ONU側)と、LANポートで家の中と——2つのネットワークの間に立つ機器はルータです。
STEP 2 ③に引っかからないこと。モデムやONUの仕事は「信号の変換」で、この家では変換をONUが既に担当しています。①ハブは接続口を増やすだけでWANポートを持たず、⓪UPSは停電時に電源を供給する装置。通信機器ですらありません。
答え (1)② (2)②
「WANとLANの間に立つ機器は?」ときたら反射でルータ。⓪「変換」はモデム/ONU、①「接続口を増やす」はハブの説明文です。機器の名称問題は、役割の説明文とのペア照合で解く——1枚目の表がそのまま答えです。試作問題(旧情報)でも、ポートの接続状況から機器名を答えさせる同型の出題がありました。
【問2】機器Qの箱には、「SSID:HRNET-87A2 暗号化キー:w7km93xase2f」と印刷されたカードが付属していた。このカードの情報の説明として最も適当なものを選べ。
⓪ プロバイダとの契約内容を確認するときに必要な情報
① 初期設定の状態の機器Qに、パソコンをLANケーブルで接続するときに必要な情報
② 初期設定の状態の機器Qに、パソコンを無線(Wi-Fi)で接続するときに必要な情報
③ 修理を依頼するときにメーカーへ伝える製造番号
STEP 1 SSIDは無線ネットワークの名前、暗号化キーはその無線に入るための鍵。つまり機器Qの「アクセスポイント機能」に接続するための2点セットです。スマートフォンのWi-Fi設定で一覧に並ぶ名前がSSID、聞かれるパスワードが暗号化キー。
答え ②
急所は①との対比。有線(LANケーブル)接続ならSSIDも暗号化キーも不要です。無線の電波は壁を越えて誰にでも届くからこそ、名前と鍵で入口を管理する——この理解が次の問3にもつながります。
【問3】ハルトさんは機器Qの設定画面を開き、セキュリティをさらに高める設定をしようと考えた。対策として適当なものを2つ選べ。
⓪ 設定画面に入るための管理者パスワードを、初期設定から推測されにくいものに変更する
① 暗号化キーを、家族が覚えやすいように短いものに変更する
② 電波を家の隅々まで届かせるために、中継機を設置する
③ 無線の暗号化方式を、機器Qが対応している中で最も強いもの(WPA3など)に設定する
STEP 1 ⓪は定石です。管理者パスワードが初期値のままだと設定画面ごと乗っ取られ、暗号化の設定もパスワードも攻撃者に書き換えられます。まずここを変えるのが第一歩。
STEP 2 ③も適当。暗号化方式には世代があり(WEP→WPA2→WPA3)、新しい方式ほど盗聴に強い。①は鍵を短くしてmnを小さくする真逆の操作。②の中継機は電波の届く範囲を広げる「利便性」の話で、むしろ傍受できる範囲も広がります。
答え ⓪と③
罠は②です。その操作は「守り」を強くするのか、「便利さ」を増やすだけなのか——目的を確認する癖をつけてください。試作問題(旧情報)でも、管理者パスワードの変更と暗号化方式の強化の2つを選ばせる同型の出題がありました。
【問4】ハルトさんの祖父は自宅へのインターネット導入を考えており、次のように話した。下線部⓪〜③のうち、考えとして誤っているものを1つ選べ。
「⓪家にWi-Fiがあれば、スマートフォンの契約データ通信量を節約できるそうだね。パソコンは古いものがあるよ。①今までインターネットにつないだことがなく、写真の受け渡しはUSBメモリでしかしていないから、このパソコンがウイルスに感染している可能性はないはずだ。ただ、②インターネットにつなぐなら、ウイルス対策ソフトは入れるべきだと聞いたし、③サポートが終了したOSのままなら、アップグレードするか買い替えるべきだとも聞いたよ。」
STEP 1 誤り探しは言い切りの強い文から疑います。①「可能性はない」が断言ですが、ウイルス(マルウェア)の侵入経路はネットだけでなく、USBメモリなどの記録メディア経由でも感染します。むしろネット未接続で対策ソフトも更新されないパソコンは、感染に気づく手段すらありません。
STEP 2 残りは正しい判断です。⓪家のWi-Fi経由の通信は契約データ通信量を消費しない。②対策ソフトは基本装備。③サポート切れOSは、弱点(脆弱性)を直す更新が提供されず、使い続けるほど危険が増します。
答え ①
「ネットにつないでいない=安全」という思い込みを突く問題で、試作問題(旧情報)でも同じ論点が出題されています。感染経路はUSBメモリなどの外部メディアも含む——この1行を持ち帰ってください。
【問5】ハルトさんが駅前でタブレットのWi-Fi設定画面を開くと、鍵マークの付いていない「FREE_SPOT_24」という提供者不明のアクセスポイントが表示された。これに接続することを避けるべき理由として最も適当なものを選べ。
⓪ 電波が弱いと通信速度が遅くなり、その分だけ盗聴されやすくなるから
① 通信内容を第三者に盗聴されたり、悪用されたりする危険性が高いから
② 接続する人が多く混雑すると、暗号化された情報が正しく復元できなくなるから
③ 無料のWi-FiではWebサイトの閲覧以外の機能が使えないから
STEP 1 鍵マークなし=無線区間が暗号化されていないので、飛び交う電波をそのまま読み取られる恐れがあります。さらに提供者が不明ということは、悪意ある人物が「親切な無料Wi-Fi」を装い、通過する通信を記録している可能性を否定できません。よって①。
STEP 2 誤りの選択肢は因果のでっち上げを見抜きます。⓪「速度が遅い→盗聴されやすい」、②「混雑→復元できない」は前半と後半につながりがなく、③は事実に反します。「AだからB」のつながり自体を検査する——正誤問題の基本動作です。
答え ①
同じ型の出題が試作問題(旧情報)にもあります。実生活でも、提供者不明・暗号化なしのアクセスポイントには接続しない、公衆Wi-Fiでは重要な情報の入力を避ける——と覚えておいてください。
【問6】ミオさんが新しくデスクトップパソコンを買い、有線で接続したいと言い出した。しかし図2の通りLANポート(い〜お)に空きがない。そこでハブを1台購入し、ハブ経由でミオさんのパソコンをネットワークに加えることにした。
(1)ハブを接続してよいポートを、次から選べ。
⓪ あ のみ ① い・う のみ ② え・お のみ ③ い〜お のどれでもよい ④ あ〜お のどれでもよい
(2)このとき、新たに購入する必要のあるLANケーブルは最低何本か。ただし、今使われているケーブルは差し替えて使い回してよいものとする。
STEP 1 (1)は消去法が速い。ダメなのはあ(WANポート)だけ。ONU=プロバイダ側とつなぐ専用の口で、ここを塞ぐと家全体がインターネットに出られなくなります。
STEP 2 「い〜おは全部使用中では?」と思った人は、ハブの役割に戻ります。ハブは1つのLANの中で接続口を増やす機器。たとえば「お」のゲーム機をいったん抜いて「お」にハブをつなぎ、ゲーム機はハブ側へ引っ越しさせればよい。どのLANポートの先でも同じLANの中なので、い〜おのどれでも構いません。よって③。
STEP 3 (2)は新しい接続を数えます。(a)機器Qとハブの間、(b)ハブとミオさんのパソコンの間。引っ越すゲーム機は今のケーブルを使い回せるので数えません。よって最低2本。
答え (1)③ (2)2本
試作問題(旧情報)でも、満員の家庭内LANにハブを追加する同型の問題が出題されました。「WANだけは聖域、LANポートはどこでも増設できる」「ケーブルは新しい接続の数だけ数える」——この2行が型です。機器Qを3役に分解できる人には、ハブの追加が「内蔵ハブの口を外付けで増やすだけ」だと見えるはずです。
演習2 パスワードの数学──0.004秒を1,240年に変える(4問)
次は「計算」が主役になるテーマ、ブルートフォース攻撃とパスワードの強さです。数学が得意な人ほど得点源にできる一方、概算のコツを知らないと本番で時間を溶かします。「今日の一問」の答え合わせもここで。
【設定】ソウタさんの生徒会は、文化祭で使う教室予約システムを自作している。パスワードの要件を決めるため、ブルートフォース(総当たり)攻撃への強さを見積もることにした。攻撃に使われるコンピュータは、1秒間に250万通りのパスワードを試せると仮定する。
【問1】パスワードを「0〜9の数字のみ・4桁」とするとき、(1)パターンは全部で何通りか。(2)このコンピュータがすべてのパターンを試すのにかかる時間は最長何秒か。
STEP 1 (1)1桁ごとに10通りが4桁分。10×10×10×10=104=1万通り。「4桁だから10×4=40通り」としないこと。1桁目の10通りそれぞれに2桁目が10通りあるのだから、掛け算です。
STEP 2 (2)時間=パターン数÷1秒あたりの試行数。10,000÷2,500,000=0.004秒。「最長」とは全パターンを試し切る時間のこと。いずれにせよ一瞬で全滅します。
答え (1)1万通り(104通り) (2)最長0.004秒
数字だけの4桁は、「入力ミスの3回制限」などの別の守りとセットだから暗証番号として成立しているのであって、単体の強度はゼロに等しい——それを数字で確認する問題です。
【問2】パスワードの要件を「英小文字・数字など50種類の文字が使えて、長さ4文字」に変更した。(1)パターン数は数字のみ4桁の何倍になるか。(2)仮定のコンピュータがすべて試すのにかかる時間は最長何秒か。
STEP 1 50×50×50×50を直接計算してもよいですが、比で解くほうが速い。桁数は同じ4のまま、1桁あたりの選択肢が10種→50種に5倍。それが4桁分なので、パターン数は5×5×5×5=54=625倍です。
STEP 2 パターン数と解読時間は比例します。0.004秒×625=2.5秒。検算として直接計算すると、504=6,250,000通り÷2,500,000通り/秒=2.5秒。一致します。
答え (1)625倍 (2)最長2.5秒
共通テストで狙われるのはこの「比で解く」発想。正確な値の前に「何倍か」で当たりをつけると速い。ただし625倍しても2.5秒——種類を増やしただけではまだ足りない点にも注目してください。
【問3】使える文字の種類がm種類、長さがn文字のとき、パスワードのパターン数を表す式として正しいものを選べ。
⓪ m×n ① mn ② nm ③ m2×n2
STEP 1 「m通りの選択をn回繰り返す」から、m を n個掛けてmn。①と②で迷ったら、問1の具体例を代入します。10種4桁は104=1万通りでした。①mn=104=1万で一致、②nm=410=約105万で不一致。⓪だと10×4=40通りになり、明らかにおかしい。一般式は具体例への代入で確かめる——数学と同じ作法です。
答え ①
底が「種類m」、指数が「長さn」。指数nを増やしたときの爆発力は桁違い——それを体感するのが次の計算です。
種類50のまま長さを10桁に。5010を真面目に計算する必要はありません。5010=(502)5=25005=2.55×1015≒98×1015≒9.8×1016通り。毎秒250万(2.5×106)通りで割ると約3.9×1010秒。1年は約3,150万秒(3.15×107秒)なので、約1,240年。数字4桁の0.004秒が、種類と長さを増やしただけで千年単位に化けました。2乗を重ねて桁だけ見積もる——選択肢は桁で選べることが多いので、この概算術ごと持ち帰ってください。
【問4】ソウタさんたちは、利用者に配るパスワード作成の注意書きを作った。次のうち、安全性を高める方法として不適切なものを2つ選べ。
⓪ 英字だけでなく、数字や記号も混ぜる
① 「abcde」「qwerty」のような単純な並びにしない
② 複数のサービスで同じパスワードを使い回さない
③ 忘れないように、自分の誕生日や電話番号をもとに作る
④ 辞書に載っている英単語をそのまま使わない
⑤ 長くするために、同じ文字列を繰り返してつなげる
⑥ パスワード生成ツールで無作為な文字列を作る
⑦ 可能なサービスでは二要素認証を有効にする
STEP 1 mnの理屈は「無作為に作った場合」の話。③誕生日や電話番号は、本人を調べれば候補が数十通りまで絞られます。総当たり以前に狙い撃ちされるので不適切。
STEP 2 ⑤同じ文字列の繰り返し(例:「ab12ab12ab12」)は見かけの長さのわりにパターンが単純で、「短い文字列+繰り返し」を試す攻撃に弱い。実質のパターン数はほとんど増えていません。⓪①②④⑥⑦はすべて有効です。
答え ③と⑤
2025年の拓殖大学でも、不適切な対策を選ばせる同型の出題がありました。判定基準は「推測されやすくないか」「実質のパターン数を減らしていないか」の2つ。この観点で裁けば、初見の選択肢にも対応できます。
まぎらわし対策──選択肢に並ぶ「攻撃の名前」を1行で見分ける
攻撃の名前は選択肢に混ぜ込まれます。手口と有効な対策をペアで覚えるのがコツです。
| 攻撃名 | 手口 | 見分け方・効く対策 |
|---|---|---|
| ブルートフォース | 全パターンを力ずくで総当たり | 守りは「長さ×種類」と回数制限 |
| ディクショナリ | 辞書の単語やありがちな並びを優先的に試す | 英単語そのままのパスワードが餌食 |
| パスワードリスト | 他のサービスから流出したIDとパスワードの組を試す | 効く対策は「使い回さない」。強いパスワードでも使い回せば無力 |
| リバースブルートフォース | パスワードを固定して、IDの側を次々に変えて試す | 1つのIDへの失敗が増えないため、回数制限をすり抜ける |
| DoS・DDoS | 大量のアクセスでサービスを停止させる | 解読が目的ではない。可用性への攻撃 |
特に、「使い回さない」が効く相手はパスワードリスト攻撃だという対応関係。攻撃と対策は1対1のペアで問われます。また、DoS攻撃はパスワードを破る攻撃ではありません。「機密性への攻撃か、可用性への攻撃か」とCIAに戻って仕分けてください。
演習3 認証・暗号・署名・SSL総合(空欄8個)
最後は認証と暗号の総合問題です。2026年の南山大学では、認証の分類から署名・SSLの鍵の向きまでを一気に問う大問が出題されました。以下は同じ範囲を当塾の設定で組み直したオリジナル問題です。「誰が持っている何の鍵で閉め、何の鍵で開けるか」を言えるかがすべてです。
【問1】あるサービスのログインについて、「2つの情報を順に確認する認証」を二段階認証と呼び、そのうち特に「知識・所有物・生体のうち、種類の異なる2つの要素を組み合わせた認証」を二要素認証と呼ぶことにする。次の(a)〜(d)の認証方法は、(X)二要素認証/(Y)二要素認証ではないが二段階認証/(Z)どちらでもない、のどれにあたるか。
(a)パスワードを入力させたあと、本人のスマートフォンにSMSで送った確認コードを入力させる
(b)パスワードを入力させたあと、あらかじめ登録した「秘密の質問」(母親の旧姓など)の答えを入力させる
(c)建物の入口で、社員証のICカードをかざしたうえで、指紋を読み取らせる
(d)カメラで利用者の顔を撮影し、顔認証だけでログインさせる
STEP 1 やることは1つ、登場する要素すべてに「知識・所有物・生体」のラベルを貼るだけ。パスワード=知識。SMSの確認コード=スマートフォンという所有物を持っている証拠。秘密の質問の答え=知識。ICカード=所有物。指紋・顔=生体。
STEP 2 ラベルで判定します。(a)知識+所有物=種類が違う2つ→X。(b)知識+知識=2段階だが1種類→Y。母親の旧姓は調べがつくこともある弱点つき。(c)所有物+生体→X。(d)生体1つだけ。顔認証がどれほど強力でも1要素は1要素で、二段階ですらない→Z。
答え (a)X (b)Y (c)X (d)Z
なぜ二要素が強いのか。種類が違えば、盗み方も別々に必要になるからです。パスワードを盗んだ攻撃者も、あなたのスマートフォンまでは持っていない。逆に(b)は、個人情報を調べ上げた攻撃者なら両方突破できる——だから二段階止まり。二要素なら必ず二段階でもある、という包含関係も整理しておきましょう。
【問2】暗号方式に関する次の記述のうち、正しいものをすべて選べ。
(a)共通鍵暗号方式では、送信者が暗号化に使う鍵と、受信者が復号に使う鍵は同一のものである
(b)共通鍵暗号方式は、鍵の受け渡しの際に盗聴される危険があるため、現在では全く使われていない
(c)公開鍵暗号方式では、暗号化に使う鍵と復号に使う鍵は別のものであり、2種類の鍵をペアで用いる
(d)公開鍵暗号方式で秘密の文書を送るときは、送信者が自分の秘密鍵で暗号化し、受信者は受信者自身の秘密鍵で復号する
STEP 1 (a)は「共通」鍵の名前の通り、同じ鍵で閉めて同じ鍵で開ける方式で正しい。(c)も定義そのもの。公開鍵と秘密鍵のペアを使い、閉める鍵と開ける鍵が別。正しい。
STEP 2 (b)は「全く使われていない」の言い切りが誤り。鍵配送に課題はあっても、共通鍵方式は処理が高速という強みがあり、HTTPSの本文の暗号化(4枚目の武器の⑤)で現役です。「全く」「必ず」「〜のみ」と言い切る選択肢をまず疑うのは、正誤問題の鉄則です。
STEP 3 (d)は鍵の向きが逆。秘密の文書は受信者の公開鍵で暗号化し、受信者の秘密鍵で復号します。「送信者が自分の秘密鍵で閉める」のは次の問3で扱う署名の話。この入れ替えで誤りを作るのが出題者の定番です。
答え (a)と(c)
2026年の南山大学でも、共通鍵・公開鍵の正誤をすべて選ばせる同型の出題がありました。「すべて選べ」形式は1つの見落としが命取りなので、4つの記述それぞれに○×と理由を付けてから解答してください。
【問3】デジタル署名とSSL(HTTPSの暗号化)の仕組みについて、空欄ア〜クに「公開鍵」「秘密鍵」「共通鍵」のいずれかを入れよ(同じ語を何度使ってもよい)。
【デジタル署名】送信者は、認証局に自分の[ア]を届け出て、電子証明書を発行してもらう。文書を送るとき、送信者は文書の要約(ハッシュ値)を自分の[イ]で暗号化し、これをデジタル署名として文書に添付する。受信者は、電子証明書に含まれる送信者の[ウ]で署名を復号し、自分で計算した要約と一致するかを確かめる。
【SSL】サーバは、電子証明書と[エ]をユーザのブラウザに送る。ブラウザは[オ](セッション鍵)を作り、受け取った[エ]で暗号化してサーバに送る。サーバはこれを自分の[カ]で復号して[キ]を取り出す。以後、本文のデータはすべて[ク]で暗号化してやり取りする。
STEP 1 署名パートは「暗号と逆向き」が合言葉。暗号は「公開鍵で閉め、秘密鍵で開ける」でしたが、署名の目的は秘匿でなく「本人が作った」ことの証明。だから本人しか持たない秘密鍵で閉める(イ=秘密鍵)。対になる公開鍵で開けられた事実そのものが「対の秘密鍵の持ち主が作った」証明になります(ウ=公開鍵)。
STEP 2 アは「認証局に届け出る鍵」。みんなに配る公開鍵だからこそ「本当にこの人のものだ」というお墨付き(電子証明書)が要ります。秘密鍵は誰にも渡さないのだから、届け出るはずがありません。ア=公開鍵。
STEP 3 SSLパートは図1そのままです。サーバが最初に配るのは証明書+公開鍵(エ)。ブラウザが作って運ぶのは共通鍵(オ)。開けるのはサーバの秘密鍵(カ)で、取り出すのは共通鍵(キ)。本文は高速な共通鍵(ク)。「公開鍵方式の仕事は共通鍵の配達だけ」と唱えながら埋めれば、迷いません。
答え ア=公開鍵 イ=秘密鍵 ウ=公開鍵 エ=公開鍵 オ=共通鍵 カ=秘密鍵 キ=共通鍵 ク=共通鍵
2026年の南山大学では、同じ骨組みで署名とSSLの鍵を8か所埋めさせる問題が出題されました。丸暗記ではなく、暗号=相手の公開鍵で閉める(開けられるのは本人だけ)/署名=自分の秘密鍵で閉める(作れるのは本人だけ)/SSLの本文=共通鍵(速いから)という3行の理屈から毎回その場で導くのが、忘れない唯一の方法です。
解法の型まとめ──3秒チェック
今日の3大問で使った「型」を、即答できる形で並べます。口頭で答えてから開いてください。詰まったらその演習に戻ること。
Q1 ハブを差してはいけないポートは?
WANポート。外(プロバイダ側)専用の口で、塞ぐと家全体がネットに出られない。LANポートならどこでも増設できる。
Q2 パスワードの強さを決める2つの数と一般式は?
文字の種類mと長さn。パターン数はmn通りで、解読時間はこれに比例する。概算は「何倍になったか」の比で。
Q3 「使い回さない」が効く相手は?
パスワードリスト攻撃。流出した組を他のサービスで試す手口だから、サービスごとに変えていれば無力化できる。
Q4 パスワード+秘密の質問は二要素認証?
ならない。知識+知識で二段階止まり。二要素は知識・所有物・生体のうち種類の違う2つを重ねたもの。
Q5 署名を「作る」鍵と、SSLで本文を暗号化する鍵は?
署名は送信者の秘密鍵(本人にしか作れないから証明になる)。SSLの本文は共通鍵。公開鍵方式の仕事は共通鍵の配達だけ。
図1(セッション鍵方式の5ステップ)を何も見ずに白紙へ再現し、矢印ごとに「どの鍵か」を書き込んでみてください。描ければ演習3の空欄8個はもう落としません。0.004秒が約1,240年に変わる計算のなぞり直しも忘れずに。
よくある質問
この記事の演習問題は実際の入試問題ですか?
いいえ。実際の入試で出題されてきた「型」を分析したうえで、題材・登場人物・数値・選択肢を当塾が独自に作成したオリジナル問題です。型は本物、素材はオリジナル——だから安心して使えます。
共通テスト予想問題【ネットワーク×セキュリティ実戦 腕試し】——藤原進之介の独自作成問題
実際の共通テスト・試作問題の出題型を分析して作成した、本記事オリジナルの予想問題です(藤原進之介の独自作成問題であり、大学入試センターの問題の転載ではありません)。解答を隠してあるので、まず自力で解いてみてください。無断転載はご遠慮ください。
出題形式・題材の傾向分析は本文の「共通テストではこう出る」を参照。ほかの講の予想問題は予想問題ハブ・シリーズハブからどうぞ。
出典・関連資料
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編」——情報通信ネットワークと情報セキュリティに関する記述
- 大学入試センター 大学入学共通テスト『情報Ⅰ』——実施形式と平均点(2025年度69.26点・2026年度56.59点)の確認
- 大学入学共通テスト 試作問題(旧情報)・2025年 拓殖大学・2026年 南山大学の各入試——本記事の演習と同型の出題の確認
- 本記事の演習問題は、上記の出題傾向をふまえて数強塾が独自に作成したオリジナル問題です。実際の入試問題の転載は行っていません。
本記事は、藤原進之介の情報Ⅰ共通テスト対策授業「問題演習──ネットワークとセキュリティ」の回をもとに構成しています。シリーズ『分野別対策演習』の一覧は対策演習ハブ、講義編『最強120講義』の全体像は120講義ハブからご覧いただけます。
「情報Ⅰ、独学でいけるのか不安」という方へ
数強塾では数学と情報Ⅰの両方に対応したオンライン個別指導を行っています。学習相談は無料、体験授業は3,000円(税込)でお受けしています。