共通テスト情報Ⅰ 総合演習①|会員登録のセキュリティ×待ち行列シミュレーション×移動平均【対策演習 第8回】

こんにちは、数強塾代表の藤原進之介です。この記事は、私が普段行っている「情報Ⅰ」の共通テスト対策の授業のうち、総合演習(セキュリティ×シミュレーション×データ分析)の回をもとに、Web教材として読めるように再構成した演習版です。分野ごとに型を積み上げてきた本シリーズの第8回にあたり、今回からは複数の分野を1つの大問の中で使い分ける「通し稽古」に入ります。

共通テスト「情報Ⅰ」は2025年1月から実施されている60分100点の試験です。2025年度の平均点は69.26点でしたが、2026年度は56.59点と12.67点下がりました。難しくなった中身を見ると、用語を単独で問う小問よりも、1つの題材に沿って表やグラフを自分の手で処理させる大問で差がついています。会員登録の場面でパスワードの安全性を計算させ、行列のシミュレーションで表を完成させ、気象データから回帰直線で予測させる——この記事で扱うのは、まさにその形式です。

前半で「今日使う武器」を5つに絞って研ぎ直し、後半で大問3題・小問13問を解きます。所要時間はおよそ60〜80分。1大問ずつ区切って取り組んでも構いません。

要点整理──今日使う武器5つ

総合演習で問われるのは、知識を覚えているかどうかよりも「その場で取り出して使えるか」です。3つの大問に入る前に、今日使う道具を5つに絞って研ぎ直しておきます。説明が怪しいものが1つでもあれば、このセクション末尾に置いた『最強120講義』のリンクから先に復習してください。

武器①② パターン数の型と、認証の3分類

武器① パターン数=(文字の種類)の(桁数)乗

パスワードやビット列が「何通り作れるか」は、(文字の種類)(桁数)で数えます。どの桁にも同じ種類数の候補があり、それが桁の数だけ掛け合わさるからです。62種類の文字で10桁なら6210通り。そして、2つのパターン数を比べるときは割り算です。同じ底の累乗の割り算は指数の引き算になるので、6212÷6210=622のように、桁数の差だけで倍率が出ます。「大きすぎて比べられない」と手が止まる必要はありません。

分類 本人と認める根拠
知識認証 本人だけが知っていること パスワード・暗証番号・秘密の質問
所有物認証 本人だけが持っているもの スマートフォン(に届くコード)・ICカード
生体認証 本人のそのもの 指紋・顔・虹彩
武器② 二要素認証=「別の種類」を重ねる

分類の決め手は見た目ではなく「何を根拠に本人と認めるか」です。毎回変わる確認コードでも、本人のスマートフォンに届くのなら、根拠は「その持ち物を持っていること」なので所有物認証。そして、確認の手順を2回に増やすのが二段階認証(同じ種類の組み合わせでも成立します)、知識×所有物のように種類の違う認証を重ねるのが二要素認証です。強いのは種類を変える方——パスワードが漏れるという事故と、スマートフォンを奪われるという事故は、同時にはなかなか起きないからです。

武器③ 乱数は「累積相対度数の数直線」で振り分ける

シミュレーションで「よく起こることは、よく起こるように」再現したいとき、0以上1未満の一様乱数を使います。手順は1つだけ。相対度数を順に足し上げた累積相対度数で、0から1までの数直線を区切るのです。たとえば相対度数0.5・0.3・0.2の3つの結果に振り分けるなら、数直線を0.5と0.8のところで区切り、乱数0.62は「0.5以上0.8未満」の区間に落ちるので2番目の結果、と読みます。区間の幅がそのまま相対度数になっているのがポイントで、よく起こる結果ほど広い区間を持ち、乱数が落ちやすい——つまり現実の頻度がそのまま再現されます。境界は「以上/未満」をそろえて書いておけば迷いません。第2問で実際に使います。

武器④⑤ 移動平均と回帰直線

武器④ 移動平均=日々の暴れをならす道具

その日と前後何日かをまとめて平均した値を移動平均といいます。気温のような日ごとの細かい変動(天気による暴れ)をならして、大きな傾向だけを取り出すための道具です。数え方は1つだけ確実に覚えます。幅±n日の移動平均は、その日を含めて2n+1日分の平均。±7日なら前7日+その日+後7日で15日分です。幅を広げるほど、グラフはなめらかになります。

武器⑤ 回帰直線での予測=式に代入するだけ

散布図に表れた傾向を1本の直線の式にまとめたものが回帰直線です。予測は、式に値を代入するだけ。見た目がものものしくても計算は1行です。もう1つ、散布図の読み取りでは、点が回帰直線より上にあれば「実測が予測を上回っている」、下にあれば下回っている、と読みます。この上下の読み(実測と予測のずれ)は近年よく問われる急所です。

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第1問 オンライン学習サービスの会員登録(セキュリティ)

ここからが本編です。以下の3つの大問は、実際の入試での出題傾向(2025年の共通テスト追試験、2025年の関西福祉大学、2026年の共通テスト追試験などで出た「型」)を分析したうえで、題材・数値・選択肢をすべて当塾が独自に作成したオリジナル問題です。まず自力で解いてから解説を読んでください。

【設定】高校2年生のハルカさんは、オンライン学習サービス「まなびポート」(架空のサービス)に会員登録することにした。次の問1〜問5に答えよ。

【問1-1】まなびポートのパスワードは必ず12文字で、使える文字は数字10種類・英大文字26種類・英小文字26種類であり、大文字と小文字は別の文字として区別される。作成できるパスワードの総数と、同じ文字の種類でパスワードが必ず10文字である別のサービスと比べたときの倍率「は10文字の場合の倍」を、次の⓪〜⑦からそれぞれ選べ。

⓪ 262 ① 2612 ② (10+26)2 ③ (10+26)12
④ (10+26+26)2 ⑤ (10+26+26)12 ⑥ 10×26×26 ⑦ (10×26×26)12

STEP 1 見る——問題文から拾うのは文字の種類と桁数だけです。数字10種・大文字26種・小文字26種、そして12文字。長文でも、パターン数の計算に使う数字はこれで全部です。

STEP 2 決める——「大文字と小文字は区別される」とあるので、種類は別々に足して10+26+26=62種類。ここを読み飛ばして26種類や36種類で計算させるのが定番の罠です。

STEP 3 計算する——各桁に62通りの候補があり、それが12桁分掛け合わさるので、アは6212=(10+26+26)12。イは比較なので割り算です。6212÷6210は指数の引き算で622=(10+26+26)2になります。

答え ア ⑤ イ ④(622=3844倍)

6212はおよそ3.2×1021通りという途方もない数で、総当たりはほぼ不可能です。そしてイの結論が重要で、たった2文字長くするだけで約3800倍になる——「パスワードは長いほど安全」の数学的な根拠がこの計算です。誤答の切り方も型どおりで、⓪〜③は文字種の読み違い、⑥⑦は種類どうしを掛ける誤りです。種類は足す、桁数は指数に載せる。この区別さえ守れば迷いません。2025年の共通テスト追試験でも、会員登録を題材にした同じ型の出題があります。

【問1-2】ハルカさんが会員登録の手続きをするときの行動として、セキュリティ上最も適切なものをに入れよ。

⓪ 通信が無料で安定しているからと、ショッピングモールの公衆無線LANにつないで登録する
① 自宅のパソコンが使えなかったので、図書館の共有パソコンから登録する
② 登録情報を入力するときは、画面や手元を周囲の人にのぞき込まれていないか注意を払う
③ 設定したパスワードを忘れないように、紙に大きく書いて自分の机の前の壁に貼っておく

STEP 1 この手の問題の判断軸は1本です。その行動によって、自分の秘密情報が「見られる・盗られる」経路が増えるか、減るか。かっこいい用語を思い出す前に、この軸で4つを仕分けします。

答え ウ ②

②は肩越しののぞき見(ショルダーハッキング)への対策で、経路を「減らす」唯一の行動です。入力の瞬間は、機械ではなく人間の目が最大の穴になります。⓪は管理者が誰か分からない回線に個人情報を流す行為で、通信を盗み見される恐れがあります。①の共有パソコンは、入力を記録するソフトなどが仕込まれていても利用者には分かりません。認証情報の入力には使わないのが原則です。③は「人目に触れる場所への掲示」であり、全員に配るのと変わりません。記録するなら人目に触れない場所に保管します。

【問1-3】まなびポートのログインでは、パスワードに加えて、登録済みのスマートフォンに毎回届く6桁の確認コードの入力が求められる。
a この2つはそれぞれ何認証か。「パスワード×確認コード」の順の組み合わせをに入れよ。
⓪ 知識認証×所有物認証 ① 知識認証×生体認証 ② 所有物認証×知識認証
③ 所有物認証×生体認証 ④ 生体認証×知識認証 ⑤ 生体認証×所有物認証
b このように複数の種類の認証方法を組み合わせる利点をに入れよ。
⓪ 推測されやすい単純なパスワードの設定を禁止できる
① 入力したパスワードが画面に表示されないようにできる
② パスワードを忘れても、確認コードから計算して復元できる
③ パスワードが漏洩しても、それだけでは不正ログインされるリスクを減らせる

STEP 1 エは武器②の「根拠」で分類します。パスワードは頭の中にある——知識認証。確認コードは毎回変わるので知識に見えますが、本人のスマートフォンという持ち物がないと受け取れないことが根拠なので、所有物認証です。

STEP 2 オは「複数の種類を使う」ことと結びつく選択肢だけを残します。⓪と①は認証の種類の数と無関係な機能の話。②は論外で、確認コードとパスワードは独立に作られており、計算では復元できません。

答え エ ⓪ オ ③

パスワードが漏れても、犯人は本人のスマートフォンを持っていないので、2つ目の関門で止まる——これが③の意味であり、二要素認証の存在理由です。あわせて対比も確認してください。二段階認証は「確認の手順が2回」(同じ種類でも成立)、二要素認証は「別の種類を重ねる」。試験で問われるのはこの区別です。

【問1-4】まなびポートでは、対面の講習会で提示する会員証の方式を検討している。会員証の不正な複製を抑制する効果が最も期待できないものをに入れよ。

⓪ 会員情報を記録したICチップを内蔵する、プラスチック製のカード
① 偽造防止の透かしを入れた特殊な紙に印刷する、紙製のカード
② 会員番号を示す二次元コードを載せた画像データ(スマートフォンに保存して画面に表示する)
③ 専用アプリでID・パスワードによりログインしている間だけ、画面に表示される会員証機能

STEP 1 判断軸はひとつ、複製にかかるコストと難しさです。ICチップの複製は技術的に困難でコストも高い。透かし入りの特殊な紙は物理的に再現しにくく、紙幣の偽造防止と同じ発想です。③は複製しても、ログイン(認証)を突破できなければ表示自体ができません。

答え カ ②

②の画像データは、スクリーンショットを撮るだけで劣化ゼロ・コストゼロで無限に複製できます。認証とも物理的な仕掛けとも連動していない「データ単体」の会員証には、複製を抑制する仕組みがどこにもありません。デジタルだから安全・アナログだから危険、という思い込みを外して、複製コストだけで判定するのがこの型の解き方です。

【問1-5】まなびポートの「個人情報の取り扱いについて」には、次のように書かれている。

――取得した個人情報は、(1)教材の提供と学習記録にもとづく学習アドバイス、(2)会員の属性の分析によるサービスの改善、(3)教材・案内書類等の発送、の目的で利用します。取得した個人情報は第三者には提供しません。ただし、利用目的の達成に必要な範囲で業務を委託する場合には、委託先に提供することがあります。――

次のⅠ〜Ⅲの行為がこの方針に照らして問題とならないかを○×で判定し、正しい組み合わせをに入れよ。

Ⅰ 配送業者に会員の住所の情報を渡し、教材の発送を委託する
Ⅱ 関連会社に委託して、会員の学年の情報からどの学年の利用が多いかを分析する
Ⅲ 提携する出版社に会員のメールアドレスを渡し、出版社が自社の新刊案内の送付に利用する

⓪ ○○○ ① ○○× ② ○×○ ③ ×○○ ④ ○×× ⑤ ×○× ⑥ ××○ ⑦ ×××

STEP 1 この型は印象で選んではいけません。方針の条文に1つずつ照合します。確認することは2つだけ。その行為は「利用目的に書いてあるか」、そして「委託か、第三者提供か」。

STEP 2 Ⅰは目的(3)の発送そのものであり、そのための委託は「必要な範囲」の例外に該当するので○。Ⅱも目的(2)の属性分析に明記があり、分析のための委託は範囲内なので○。

STEP 3 Ⅲは出版社が自社の目的(新刊案内)のために使います。これは委託ではなく第三者提供であり、方針は「第三者には提供しない」と明言しているので×。そもそも「出版社の宣伝」はどの利用目的にも書かれていません。

答え キ ①(Ⅰ○ Ⅱ○ Ⅲ×)

対比で覚えてください。委託は「自社の目的の仕事を代行させる」——利用目的の範囲内なら認められます。第三者提供は「相手が相手の目的のために使う」——原則として本人の同意なしには認められません。渡す相手が誰かではなく、誰の目的のために使われるかで切るのがこの型です。

第2問 文化祭の模擬店の行列(シミュレーション)

次はシミュレーションです。難しそうな響きがありますが、正体は「ルールを決めて、時間を少しずつ進める」だけの作業です。数式はほとんど出てきません。出てくるのは、表と数直線です。

【設定】ダイチさんのクラスは、文化祭でクレープの模擬店を出す。調理から受け渡しまでを担当できるのは1人だけで、1人の客への対応にはちょうど5分かかる。客は到着した順に1列に並び、前の客の対応が終わると同時に次の客の対応が始まる。開店から来店した10人について、「前の客の何分後に到着したか」(到着間隔)の記録は次のとおりであった。1人目は開店と同時(0分)に到着している。

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
到着間隔(分) 2 4 3 6 2 7 9 8 7

【問2-1】開店からの経過時間で、各客の「到着時刻」「対応開始」「対応終了」「待ち時間」を整理した次の表の空欄ク〜サに入る数を答えよ。(?の欄はマークを求めないが、自分で埋めてみること。)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
到着時刻(分) 0 2 6 9 15 17 33 41 48
対応開始(分) 0 5 10 15 20 30 35 48
対応終了(分) 5 10 15 20 25 35 40 53
待ち時間(分) 0 3 4 6 5 6 2 0 0

STEP 1 まず到着間隔を累積して到着時刻に直します。最多のミスはここです。「7分」は「7分に来た」ではなく「前の客の7分後に来た」。7人目の到着時刻は、6人目の到着時刻17分に間隔7分を足してク=24分です。

STEP 2 対応できるのは1人だけなので、対応開始=max(自分の到着時刻, 前の客の対応終了時刻)と決まります。「早く着いても前が終わるまで始まらない。前が終わっていれば着いた瞬間に始まる」をそのまま式にしたものです。対応終了は開始+5分。6人目は17分に到着しますが、5人目の終了が25分なのでケ=max(17, 25)=25分。9人目は41分に到着し、8人目の終了は40分ともう済んでいるのでコ=max(41, 40)=41分——今度は自分の到着が勝つ側です。

STEP 3 待ち時間=対応開始−到着時刻。6人目は25−17でサ=8分です。?の欄は、6人目の終了が25+5=30分、9人目の終了が41+5=46分。10人目の開始がmax(48, 46)=48分になっていることまで確かめられれば、表の読み書きは完成です。

答え ク 24 ケ 25 コ 41 サ 8

完成した表がこちらです。この4行の表をタイムライン表と呼ぶことにします。待ち行列の問題は、結局この表が書けるかどうかがすべてです。

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
到着時刻(分) 0 2 6 9 15 17 24 33 41 48
対応開始(分) 0 5 10 15 20 25 30 35 41 48
対応終了(分) 5 10 15 20 25 30 35 40 46 53
待ち時間(分) 0 3 4 6 5 8 6 2 0 0

9人目と10人目は、到着した時点で前の客の対応が終わっています。到着間隔が対応時間の5分より長い状態が続くと、行列は自然に消えていく——この構造の変化も表から読み取れます。

【問2-2】10人目の対応が終わるまでの間について、次の2つに答えよ。
(1)同時に「待っている」人数の最大は何人か。ただし、対応中の人は待ち人数に含めない。
(2)待ち時間が最も長かったのは何人目の客で、その待ち時間は何分か。

STEP 1 (2)から片づけます。タイムライン表の待ち時間の行を左から眺めるだけです。0, 3, 4, 6, 5, 8, 6, 2, 0, 0——最大は6人目の8分。冒頭の「今日の一問」の答えはこれでした。

STEP 2 (1)は「待っている時間帯」を客ごとに書き出します。到着から対応開始までが待ち時間帯です(開始の瞬間に待ちから抜けると数えます)。2人目は2〜5分、3人目は6〜10分、4人目は9〜15分、5人目は15〜20分、6人目は17〜25分、7人目は24〜30分、8人目は33〜35分。

STEP 3 重なりを探すと、9〜10分(3人目と4人目)、17〜20分(5人目と6人目)、24〜25分(6人目と7人目)の3か所で2人が同時に待っています。3人が重なる瞬間はどこにもありません。

答え (1)2人 (2)6人目の8分

この問題には仕掛けがあります。(1)の答えは人数、(2)の答えは時間。似た数字が並ぶので、設問がどちらを聞いているかを最後にもう一度確認してください。人数と時間を混同させる設計は、2025年の関西福祉大学の入試でも同じ型で出題されています。

【問2-3】ダイチさんは、文化祭当日の混雑を予測するため、シミュレーションで到着間隔を作り出すことにした。昨年の記録から求めた到着間隔の相対度数は次のとおりである。

到着間隔 1分 2分 3分 4分 5分 6分 7分 8分
相対度数 0.10 0.15 0.20 0.20 0.15 0.10 0.06 0.04
累積相対度数 0.10 0.25 0.45 0.65 0.80 0.90 0.96 1.00

この相対度数を確率とみなし、0以上1未満の一様乱数で到着間隔を決める。たとえば乱数0.32は「0.25以上0.45未満」に入るので3分である。乱数0.87に対応する到着間隔に入れよ。

⓪ 3分 ① 4分 ② 5分 ③ 6分 ④ 7分

STEP 1 武器③の出番です。累積相対度数の行が、0から1の数直線の「区切りの位置」になっています。0.87の居場所を探すと、0.80以上0.90未満——6分の区間です。

0 0.10 0.25 0.45 0.65 0.80 0.90 0.96 1 1分 2分 3分 4分 5分 6分 7分 8分 乱数0.87

図1 累積相対度数の数直線。区間の幅=相対度数なので、よく起こる間隔ほど乱数が落ちやすい。0.87は「0.80以上0.90未満」に落ちて6分

答え シ ③(6分)

検算もルールどおりに。6分の区間の幅は0.90−0.80=0.10で、6分の相対度数0.10と一致しています。境界にも注意してください。乱数が0.10ちょうどなら「0.10以上0.25未満」で2分、0.65ちょうどなら5分です。以上/未満を数直線に書き込んでから読む癖をつけると、境界の1問を落としません。この対応表さえ作れば、表計算ソフトの乱数だけで100人分でも100回分でも実験できます——それが確率的シミュレーションの正体です。

【問2-4】ダイチさんは、乱数で100人分の到着間隔を作って開店から閉店までの待ち状況を調べるシミュレーションを100回行い、それぞれの回の「最大待ち人数」を集計して次の度数分布表(ヒストグラムの元データ)を得た。

最大待ち人数 1人 2人 3人 4人 5人 6人 7人 8人
回数 3 15 26 24 17 9 4 2

この結果から読み取れないものに入れよ。

⓪ 最大待ち人数が1人だった回がある
① 最大待ち人数が9人以上になった回はなかった
② 25%以上の確率で、最大待ち人数は3人になると考えられる
③ 50%以上の確率で、最大待ち人数は5人以上になると考えられる

STEP 1 この型の鉄則は、グラフや表の印象で選ばず、該当する回数を合計して100で割ってから○×を決めることです。⓪は1人の欄に3回あるので読み取れます。①は9人以上の欄が存在しない(0回)ので、この100回については読み取れます。

STEP 2 ②は3人の欄が26回。26÷100=26%で25%以上——読み取れます。③は5人以上を合計すると17+9+4+2=32回。32÷100=32%で、50%に届きません。

答え ス ③

「◯%以上の確率で……」という言明の検算は、いつでも該当する棒(欄)の合計÷総回数です。32%は決して小さくない数字なので、印象で読むと「5人以上もよく起きるから○」と流されます。数えてから判定する——それだけで確実に守れる1問です。

第3問 桜の開花と気温(データ分析)

最後はデータ分析を「一連の流れ」で解きます。箱ひげ図で現状を把握し、相関で関係の候補を見つけ、移動平均でノイズを消し、回帰直線で予測する——共通テストはこの物語をまるごと1つの大問にして出題します。2026年の共通テスト追試験でも、スギ花粉と気象データを題材に同じ流れの大問が出ています。

【設定】気象データに興味を持ったアオイさんは、桜の開花と気温の関係を調べることにした。ある地方の4つの観測地点A〜Dについて、過去30年の「3月の月平均気温」と「桜の開花日」のデータを集めた。開花日は「3月1日を1日目と数えた日数」で表す(例:3月25日なら25)。

【問3-1】図2は、4地点の「3月の月平均気温」30年分の箱ひげ図である。また、次の表はこのうち2地点の五数要約であるが、地点名を伏せてある。

2 4 6 8 10 12 14 3月の月平均気温(℃)

図2 4地点の3月の月平均気温(30年分)の箱ひげ図
統計量(℃) セ の地点 ソ の地点
最小値 2.5 6.8
第1四分位数 4.2 8.2
中央値 5.2 9.2
第3四分位数 6.3 10.0
最大値 8.9 11.8

a 表のセ・ソに当てはまる地点を選べ。 ⓪ A ① B ② C ③ D
b B地点について、図2と表から読み取れることをに入れよ。
⓪ 30年のうちどの年も、月平均気温がA地点より高かった
① 月平均気温が9℃を上回った年が半数以上ある
② 30年間の月平均気温の平均値は9.2℃である
③ 最大値と最小値を平均した約9.3℃が、30年間の平均値と一致する

STEP 1 照合は最大値・最小値の端点から決め打ちします。セの列は最小値2.5℃。図2で2.5℃までひげが伸びているのはCだけです。ここで最大値8.9℃から入ると、Aの最大値9.0℃と紛れて時間を失います。他の地点と離れている端点を先に使うのがコツです。

STEP 2 ソの列は最大値11.8℃。13℃まで伸びるDではなく、Bです。決め打ちしたら中央値で検算——Cの箱の中の線は5℃過ぎ、Bは9℃の少し上。表の5.2と9.2に合っています。

STEP 3 タは選択肢を性質で切ります。⓪の「どの年も」は言えません。箱ひげ図では年ごとの対応関係が消えているからです(分布が重なっている以上、Aの方が高い年があった可能性を否定できません)。②と③は中央値や端点から平均値を語る誤り。中央値は平均値ではなく、(最大値+最小値)÷2が平均値と一致する保証もありません。

答え セ ②(C) ソ ①(B) タ ①

①が正しい理由はこう言えます。B地点の中央値は9.2℃。中央値が9℃を超えているということは、30年の半数以上の年で月平均気温が9℃を上回ったということです。「中央値が境界値より上=半数以上がその値より上」——箱ひげ図の言明チェックはこの1行に持ち込むのが型です。

【問3-2】アオイさんは、B地点の過去30年について、桜の開花日と各気象データとの相関係数を計算し、次の表を得た。

相関係数
2月の月平均気温 と 開花日 −0.62
3月の月平均気温 と 開花日 −0.81
3月の降水量 と 開花日 0.15

次のあ〜うを○×で判定し、正しい組み合わせをに入れよ。

あ 2月の月平均気温が高い年は、3月の月平均気温も高い傾向がある
い 3月の月平均気温が高い年ほど、開花日が早い傾向がある
う 3月の降水量が多い年ほど、開花日が遅い傾向がある

⓪ ○○○ ① ○○× ② ○×○ ③ ×○○ ④ ○×× ⑤ ×○× ⑥ ××○ ⑦ ×××

STEP 1 相関の表を見たら、まず「誰と誰の相関か」を確認します。この表にあるのは、どの行も「気象データと開花日」の相関だけ。あの「2月の気温と3月の気温」という気温どうしの相関は計算されていないので、そもそも読み取れず×です。どちらも開花日と負の相関があるから気温どうしも……とはいえません。

STEP 2 いは−0.81の強い負の相関。気温が高いほど開花日の数値が小さい=開花が早い傾向なので○。負の相関は「向き」を逆に読ませる罠の定番です。うは0.15。0に近く、「傾向がある」と言えるほどの相関ではないので×です。

答え チ ⑤(あ× い○ う×)

罠は3種類ありました。表にないペアの相関を語らせる(あ)、負の相関の向き(い)、ほとんど相関のない値に傾向を語らせる(う)。もう1つ補足すると、いが○でも「気温が開花を早める」と因果まで言い切ることはできません。相関は傾向までです。

【問3-3】アオイさんは、B地点の今年の日平均気温の推移を調べたが、日ごとの細かい変動が大きく傾向がつかみにくかった。そこで幅±1日・±3日・±7日・±15日の4種類の移動平均を計算し、4本のグラフあ〜えを作った。それぞれの見た目は次のとおりである。

あ もとの折れ線とほとんど重なり、細かな上下がそのまま残っている
い 細かな上下が少し残っている
う ゆるやかに波打つ、なめらかな曲線
え ほぼ1本の弧のように、最もなめらか

a 幅±7日の移動平均のグラフをに入れよ。 ⓪ あ ① い ② う ③ え
b 幅±7日の移動平均は、その日を含めてテト日分の平均である。2桁の数を答えよ。

STEP 1 武器④の一般則、幅が広いほどなめらかになるを使います。ギザギザの順に±1→±2→……と対応させるだけです。あ(ほぼ元のまま)が±1日、いが±3日、うが±7日、え(最もなめらか)が±15日。

STEP 2 テトは数え方の確認です。±7日は「前7日+その日+後7日」なので7+1+7=15日分。一般に幅±n日なら2n+1日分です。「±7日だから14日分」と、その日を数え忘れるのが唯一にして最大のミスです。

答え ツ ②(う) テト 15

移動平均の役割を言葉にしておきましょう。天気による日ごとの暴れをならして、季節としての大きな傾向だけを取り出す。だから幅を広げるほどなめらかになる代わりに、細かい変化の情報は失われます。何のために平均するのかまで言えれば、この道具は完成です。

【問3-4】アオイさんは、B地点の過去30年の「3月の月平均気温 x(℃)」と「開花日 y(3月1日を1日目とした日数)」の散布図に回帰直線を引いたところ、式は次のようになった。

  y = −2.5x + 50

a 今年の3月の月平均気温が10.0℃だったとすると、回帰直線から予測される開花日をに入れよ。
⓪ 3月15日 ① 3月20日 ② 3月25日 ③ 3月30日
b 散布図上のある2つの年の点P(気温8.0℃、開花日32)と点Q(気温11.0℃、開花日20)について、実際の開花日と回帰直線による予測との関係をに入れよ。
⓪ PもQも、実際の開花は予測より遅かった
① Pは予測より遅く、Qは予測より早かった
② Pは予測より早く、Qは予測より遅かった
③ PもQも、実際の開花は予測より早かった

STEP 1 ナは武器⑤——式に代入するだけです。y=−2.5×10.0+50=−25+50=25。開花日25は「3月1日を1日目とした25日目」なので3月25日です。

STEP 2 ニは点と直線の上下を数値で確かめます。Pの予測はy=−2.5×8.0+50=30。実測32は予測30より大きいので、点Pは直線より——実測が予測を上回っています。Qの予測はy=−2.5×11.0+50=22.5。実測20は予測より小さいので、点Qは直線よりです。

STEP 3 ここで一段だけ頭を使います。yは開花日で、数値が大きいほど開花が遅い。つまり「実測が予測を上回る=予測より遅い」です。点が上=上回る、までは機械的に読めますが、それが「遅い」のか「多い」のかは変数の意味に戻って決めます。

答え ナ ②(3月25日) ニ ①

傾き−2.5の意味も読めるようにしておきましょう。3月の月平均気温が1℃高いと、開花日はおよそ2.5日早まるという傾向を表しています。箱ひげ図で現状把握→相関で関係の候補→移動平均でノイズ除去→回帰直線で予測。共通テストのデータ分析大問は、この流れごと出題されます。

解法の型まとめ──3秒チェック

今日の3大問の核

セキュリティは設計の理由で切る——種類の数え上げ・別の種類の要素を重ねる・複製のコスト。シミュレーションはタイムライン表と累積相対度数の数直線——手で書けば絶対に落とさない。データ分析は流れで解く——箱ひげ図→相関→移動平均(±n日=2n+1日分)→回帰直線に代入。

仕上げに、今日の型を即答できるか口頭で確かめてください。答えてから開いて答え合わせを。

Q1 62種類の文字で12文字のパスワード——パターン数は? 10文字と比べて何倍?

6212通り。型は(文字の種類)(桁数)。比較は割り算=指数の引き算で622=3844倍。

Q2 パスワード+スマホに届く確認コードは、何認証×何認証?

知識認証×所有物認証。決め手は「何を根拠に本人と認めるか」。別の種類を重ねるのが二要素認証。

Q3 待ち行列の「対応開始」はどう決める?

max(自分の到着時刻, 前の人の対応終了時刻)。その前に、到着間隔は累積して到着時刻に直す。待ち時間=開始−到着。

Q4 乱数0.87が到着間隔6分になる理由は?

累積相対度数で区切った数直線で「0.80以上0.90未満」の区間に落ちるから。区間の幅=相対度数。

Q5 幅±7日の移動平均は何日分? 何のための道具?

2×7+1=15日分。日々の暴れをならして大きな傾向を取り出すための道具。予測は回帰直線の式に代入するだけ。

仕上げの1歩

第2問のタイムライン表を、もとの到着間隔の表だけを見て白紙に再現してみてください。4行がすらすら埋まれば、シミュレーション大問の骨組みは完成です。詰まった行が、あなたの復習ポイントです。

よくある質問

この記事の演習問題は実際の入試問題ですか?

いいえ。実際の入試(大学入学共通テストの追試験や各大学の情報入試)で出題されてきた「型」を分析したうえで、題材・数値・選択肢を当塾が独自に作成したオリジナル問題です。型は本物、素材はオリジナル——だから安心して演習に使えます。

共通テスト予想問題【総合演習① 腕試し】——藤原進之介の独自作成問題

実際の共通テスト・試作問題の出題型を分析して作成した、本記事オリジナルの予想問題です(藤原進之介の独自作成問題であり、大学入試センターの問題の転載ではありません)。解答を隠してあるので、まず自力で解いてみてください。無断転載はご遠慮ください。

問1 会員登録システムでパスワードをそのままの文字列(平文)で保存することの問題点として最も適当なものはどれか。

① データベースが漏えいした場合に全会員のパスワードがそのまま悪用される
② ログインが遅くなる
③ パスワードが長くなる
④ 問題は何もない

解答・解説を見る

正解:。保存は「漏れたとき」を前提に設計します。元に戻せない変換(ハッシュ化)をかけて保存すれば、漏えいしてもパスワードそのものは渡らない——「漏れない対策」と「漏れたときの被害を減らす対策」の2段構えの後者にあたります。

問2 窓口が1つのレジで、客Aが0分に到着(対応4分)、客Bが1分に到着(対応4分)、客Cが2分に到着(対応4分)した。客Cの待ち時間はどれか。

① 2分
② 4分
③ 6分
④ 8分

解答・解説を見る

正解:。Aは0〜4分、Bは4分開始で4〜8分、Cは8分開始なので8−2=6分待ちます。「開始=前の客の終了と自分の到着の遅い方」を1行ずつ埋める——表の追跡が待ち行列問題の解法のすべてです。

問3 前問と同じ到着で窓口を2つに増やすと、客Cの待ち時間はどれか(空いた窓口にすぐ入るものとする)。

① 0分
② 2分
③ 4分
④ 6分

解答・解説を見る

正解:。窓口1でAが0〜4分、窓口2でBが1〜5分。Cは先に空く窓口1の4分に開始でき、4−2=2分待ちです。窓口を2倍にすると待ちは6分→2分——「対策の効果を同じモデルで数値比較する」のがシミュレーションの使い方です。

問4 日ごとの来客数「10, 20, 30, 40, 50」の3項移動平均を順に計算するとき、中央の日(来客30の日)に対応する値はどれか。

① 20
② 25
③ 30
④ 35

解答・解説を見る

正解:。(20+30+40)÷3=30です。移動平均は前後の値と平均することで日々の細かい変動をならし、傾向(トレンド)を見やすくします。「なぜ平均するのか=短期のゆらぎを消すため」という目的から出題されます。

問5 会員登録フォームで、入力されたメールアドレス宛てに確認リンクを送り、クリックされて初めて登録を完了する設計の目的として最も適当なものはどれか。

① 入力ミスや他人のアドレスの無断使用を防ぎ、本人がそのアドレスを使えることを確認するため
② 登録を面倒にして会員数を減らすため
③ メールサーバの性能試験のため
④ パスワードを不要にするため

解答・解説を見る

正解:。「そのアドレスに届いたメールを開ける」ことは、アドレスの所有の証明になります(所有要素による確認)。誤入力・なりすまし登録の防止という目的から設計を逆算させる——実務の仕組みを題材にした試作問題型の出題です。

出題形式・題材の傾向分析は本文の「共通テストではこう出る」を参照。ほかの講の予想問題は予想問題ハブシリーズハブからどうぞ。

出典・関連資料

  • 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編」——情報セキュリティ、モデル化とシミュレーション、データの活用に関する記述
  • 大学入試センター 大学入学共通テスト『情報Ⅰ』——実施形式(60分100点)、2025年度平均点69.26点・2026年度平均点56.59点の確認
  • 本記事の演習問題は、2025年 大学入学共通テスト追試験『情報Ⅰ』(同型の出題)、2025年 関西福祉大学 一般選抜前期(同型の出題)、2026年 大学入学共通テスト追試験『情報Ⅰ』(同型の出題)などの出題の型を参考に、数強塾が独自に作成したオリジナル問題です。実際の入試問題の転載は行っていません。

本記事は、藤原進之介の情報Ⅰ共通テスト対策授業「総合演習」の回をもとに構成しています。シリーズ『分野別対策演習』の一覧は対策演習ハブ、講義編『最強120講義』の全体像は120講義ハブからご覧いただけます。

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