情報Ⅰ 最強120講義

【情報Ⅰ 第73講】通信速度とデータ量の計算──bpsとバイトの取り違えをなくす

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「100 MB の動画を 20 Mbps の回線で送ると何秒かかるか」——この一行を、公式を思い出さずに単位だけで立式できるでしょうか。数強塾代表の藤原進之介です。共通テスト「情報Ⅰ」で毎年のように顔を出し、しかも取りこぼしが多いのが、この通信速度とデータ量の計算です。本講では公式の暗記をやめて、単位の定義から立式するやり方に切り替えます。第73講、重要度は最高の S です。

結論——所要時間は「データ量 ÷ 実効速度」。ただし単位をそろえてから

先に結論を3つ置きます。

  • 所要時間 = データ量 ÷ 実効速度。ただしデータ量の単位は B(バイト)、通信速度の単位は bps(ビット毎秒)。割る前に必ず片方を8倍(または8で割って)そろえる。
  • 実効速度は理論上の最大速度より必ず落ちる。ヘッダなどの制御情報が回線を占有するからで、これは事故ではなく仕様。
  • K・M・G が 系か 系かで答えが変わる。問題文が「MB」なのか「MiB」なのか、宣言があるかを読む。

この3つを押さえるだけで、この単元の失点はほとんど消えます。順に、なぜそうなるのかを見ていきましょう。

なぜ bit と Byte の取り違えが最大の失点源なのか

この単元での失点は、ほとんどが計算力ではなく単位の読み違いで起きます。理由は歴史にあります。

通信の世界は「1本の線に1秒間に何個のパルスを流せるか」を性能と考えてきました。だから単位は bit/s(bps)。1秒間に何ビット送れるか、です。いっぽう記憶装置の世界は「文字1個ぶんをまとめて何個しまえるか」を容量と考えてきました。だから単位は B(バイト)。1バイト=8ビットです。

つまり bps と B は、そもそも別の業界の別の発想から来た単位であって、たまたま同じ「情報の量」を測っているにすぎません。ここに8倍の断層があります。

しかも見た目が似ています。小文字の b がビット、大文字の B がバイト。MbpsMB/s は文字数まで近く、模試の答案では8倍か8分の1倍の答えが必ず一定数出ます。8倍ずれた選択肢は、作問者が意図的に用意します。

ですから私はこの単元を「公式を覚える単元」ではなく、「単位を書きながら約分する単元」として教えています。数値だけを電卓に入れるのではなく、

この約分が成立していることを毎回目で確認する。分子が B のまま、分母が bit/s だと、この約分は成立しません。約分が成立しないなら立式が間違っている——この一点だけを守ってください。

なぜ実効速度は理論値より落ちるのか

「最大 1 Gbps」と書かれた回線で 1 GB のファイルを送っても8秒では終わりません。理由は大きく2つあります。

(a) 制御情報が回線を占有している

インターネットではデータを小さく切り分けて送ります。切り分けた一つひとつには「どこへ届けるか」「何番目の断片か」という情報を付けなければならず、これがヘッダです。IPv4 のヘッダは、RFC 791 の IHL フィールドの説明に「正しいヘッダの最小値は5である」(32ビット語で5、すなわち20オクテット)とあり、オプションなしなら20バイトを占めます。TCP のヘッダも最小20バイトです。

イーサネットでよく使われる最大伝送単位1500バイトの中に、IPヘッダ20バイト+TCPヘッダ20バイトが入るので、実際に運べる中身は1460バイトしかありません。

つまりこの段階ですでに約97.3%。さらにイーサネットのフレーム自体にも宛先・送信元・誤り検出などの付加分があるので、回線の占有時間で見た効率はもう少し下がります。

(b) 相手や途中の混雑がある

自分の回線が速くても、相手のサーバが遅ければそこが上限になります。途中の経路が混んでいれば待たされます。無線なら電波状況で変わります。

「落ちる」という事実は、日本では国の文書として制度化されています。総務省は平成27年7月に「移動系通信事業者が提供するインターネット接続サービスの実効速度計測手法及び利用者への情報提供手法等に関するガイドライン」を策定しました。その策定の背景に、こう書かれています。

「最大通信速度(ベストエフォート)型サービスとはいえ、うたわれている通信速度が実際と乖離している」「広告や販売勧誘の際に示される通信速度等のサービス品質の表示が規格値となっているが、この規格値は、必ずしも利用者の期待する通信速度を踏まえている状況にあるといえない」(総務省、平成27年7月)

さらにこのガイドラインは、実効速度の測り方まで具体的に定めています。計測員による実地調査方式で、10都市・約300メッシュ・合計約1,500地点程度を対象とし、同一地点で3回計測してその平均をとる。計測項目は上り/下りの実効速度のほか、位置・時間情報、通信規格、端末情報、信号強度、遅延、パケットロス。計測頻度は少なくとも年1回以上、とされています。

ここが受験生に伝えたいところです。「実効速度」は問題を解くための便宜的な仮定ではなく、国が定義と測り方を決めている実在の概念です。共通テストで「実効速度は理論値の◯%とする」と与えられるのは、この現実を試験用に単純化したものにすぎません。

なぜ K・M・G で答えが変わるのか(MB と MiB)

長さの世界では、キロは必ず です。1 km は 1000 m であって 1024 m ではありません。ところが情報の世界では、アドレスが2進数で増えるという都合から、1 KB を B とする慣習が長く使われてきました。

この二重使用を解消するために、国際電気標準会議(IEC)が2進接頭辞を定めました。米国立標準技術研究所(NIST)の解説によれば、IEC は1998年12月にこれを承認し、1999年1月に IEC 60027-2 の追補2として発行、2000年11月の第2版に統合しています。

接頭辞 記号
kibi(キビ) Ki
mebi(メビ) Mi
gibi(ギビ) Gi

つまり MB と MiB は別物です。そして厄介なことに、実務では両方が混在しています。ハードディスクの容量表示は を 1 TB として書かれることが多く、OS が 基準で表示するので「買ったより少ない」と見える。あの現象の正体がこれです。

共通テストではどうするか。出題側は原則として のように 系で統一するか、あるいは問題文に「1 KB = 1024 B とする」と明記します。つまり受験生がやるべきことは暗記ではなく、問題文の宣言を探すこと。宣言があればそれに従う、無ければ 系。この判断ができるかどうかが、単位換算問題の実質的な勝負どころです。

手で確かめる——単位を書きながら立式する

以下の数値はすべて Python の分数演算で独立に検算してあります(末尾にコードを置きました)。読者のみなさんも同じコードを実行して確かめてください。

例題1:基本の1問

100 MB のファイルを、最大 20 Mbps の回線で送る。実効速度が理論値の80%であるとき、所要時間は何秒か。ここで とする。

手順1:データ量をビットに直す。

手順2:実効速度を出す。

手順3:割る。単位が約分できることを確認する。

答:50秒。

もし手順1の「×8」を忘れると 秒になります。50 と 6.25 はちょうど8倍。この 6.25 が選択肢に置いてあったら、それは罠です。

例題2:画像のデータ量(MB と MiB で答えが変わる)

文部科学省の「情報Ⅰ」教員研修用教材 第2章には、次の課題がそのまま載っています。

「解像度が 1920 × 1080 の 24 ビットフルカラー画像のデータ量は何 MB になるか計算してみよう。また,この画像を 1 フレームとして 60fps で,1 分間の動画を作成すると,データ量は何 GB になるか計算してみよう。」(文部科学省「情報Ⅰ」教員研修用教材 第2章)

指導上の留意点には「手計算にこだわらずソフトウェアや電卓を使用するとよい」とあります。国の教材が電卓を勧めているのですから、遠慮なく使ってください。大事なのは立式です。

画素数は

1画素24ビット(RGB各8ビット)なので、総ビット数は

バイトに直すと

ここで単位系が分岐します。

同じ画像が「約6.2 MB」とも「約5.93 MiB」とも書ける。数字が違うのではなく、ものさしが違うのです。

例題3:動画にすると桁が変わる

60 fps で1分なので、フレーム数は 枚。

答:約22.4 GB(約20.9 GiB)。たった1分で22 GB です。ここから「だから動画は圧縮しないと成立しない」という話につながります。圧縮の必要性は精神論ではなく、この掛け算の結果として出てくるのです。

例題4:音のデータ量と、送るのにかかる時間

音のデータ量は次の式で出ます。公式として覚えるのではなく、意味を追ってください。

ここで はデータ量(bit)、 は標本化周波数(Hz)、 は量子化ビット数(bit)、 はチャンネル数、 は時間(秒)です。標本化周波数は「1秒間に何回、音の大きさを測るか」。量子化ビット数は「1回の測定を何ビットで記録するか」。掛ければ「1秒あたり何ビットか」が出て、秒数を掛ければ総量になる。ステレオなら左右2本ぶんなので2倍。これは公式ではなく、ただの掛け算の意味です。

CD と同じ 44100 Hz・16 bit・2ch で60秒の音を考えます。

これを実効 16 Mbps で送ると

ここでの要点は、音のデータ量はビットで出てくるということ。すでにビットなので、bps で割るときに8を掛けてはいけません。例題1では掛け、例題4では掛けない。「常に8倍する」と覚えた受験生がここで落ちます。覚えるべきは倍率ではなく、単位をそろえるという原則だけです。

例題5:複数ファイルの合計(実戦型)

例題2の画像12枚と、例題4の音声1本を、最大 50 Mbps・実効速度が理論値の60%の回線でまとめて送る。所要時間は何秒か。

答:約22.7秒。

検算用コード(実行して出力を確認済み)

from fractions import Fraction as F
# 例題1
data_bit = 100 * 10**6 * 8          # 100MB をビットに
eff      = 20 * 10**6 * F(80, 100)  # 実効速度
print(F(data_bit) / eff)            # 50
# 例題2・3
B = 1920 * 1080 * 24 // 8
print(B, F(B, 10**6), F(B, 2**20))           # 6220800 / 6.2208MB / 5.9326MiB
tot = B * 60 * 60
print(F(tot, 10**9), F(tot, 2**30))          # 22.39488GB / 20.8568GiB
# 例題4
ab = 44100 * 16 * 2 * 60
print(ab, ab // 8, F(ab, 16 * 10**6))        # 84672000bit / 10584000B / 5.292s
# 例題5
total = B * 12 + ab // 8
print(F(total * 8, 50 * 10**6 * F(60, 100))) # 22.72896s

Fraction を使うのは、小数の丸め誤差で「なんとなく合っている」という状態を作らないためです。分数のまま最後まで持っていけば、合っているか合っていないかしかありません。

共通テストではこう出る(重要度 S)

この単元は共通テストで毎年のように顔を出します。単独の大問になることは少ないのですが、ネットワークの大問の一部、あるいはデジタル化の大問の一部として、必ず数値計算がぶら下がる。落とすと痛い場所です。

出題のパターンは、私の見るところ次の4つに整理できます。以下は設問の構造の説明であって、実際の問題文ではありません(共通テストの問題文は大学入試センターの著作物なので、本記事では転載していません)。

型1:単位換算の引っかけ

データ量が B で、速度が bps で与えられる。8倍を忘れた値と8で割った値の両方が選択肢に並びます。対策:立式のとき単位を必ず書く。bit ÷(bit/s)= s の約分が通るかを見る。

型2:実効速度の割合が与えられる型

「この回線の実効速度は理論値の◯%である」と問題文が宣言します。対策:割合を掛けるのは速度側であって、データ量側ではありません。掛ける場所を間違えても答えの数値が同じになる場合はありますが、「◯%しか速度が出ない」を「データが◯%に減る」と読み替える癖がつくと、後の問題で必ず事故ります。速度に掛ける。

型3:複数ファイル・複数条件の合計

画像が何枚、音声が何秒、テキストが何文字——と積み上げてから割らせる型。1つでも単位を取り違えると全滅します。対策全部を先に bit に統一してから足す。MB のまま足して最後に8倍でも答えは合いますが、途中で MB と MiB が混ざると壊れます。ビットに落としてから足すのが最も事故りません。

型4:逆算型(速度や容量を問う)

時間が与えられて回線速度を求めさせる、あるいは「◯秒以内に送るには何 Mbps 必要か」と問う型。対策:立式は同じで、時間 = データ量 ÷ 速度 を変形するだけ。ただし「以内」なので切り上げになる場面があります。四捨五入か切り上げかを問題文で確認してください。

通信計算の5点セット(毎回声に出して確認)

  • b と B(8倍)
  • K・M・G が か(問題文の宣言を探す)
  • 実効速度の割合をどちらに掛けるか(速度に掛ける)
  • 秒・分・時間の換算(「何分何秒」で答えさせる型がある)
  • 上りと下りの区別(アップロードかダウンロードか)

この単元は計算力ではなく確認の手順で取る単元だと割り切ってよいと思います。

情報Ⅱではこうなる——見積りがシステム設計を決める

情報Ⅰでのこの講は、「与えられた条件で所要時間を出す」という閉じた計算問題です。条件はすべて問題文にあります。情報Ⅱでは、この計算が設計判断の道具に変わります。条件は与えられず、自分で見積もる側に回るのです。

通信量の見積りがシステムの構造そのものを決めた実例

文部科学省「情報Ⅱ」教員研修用教材 第4章「情報システムとプログラミング」の学習19に、次の記述があります。

「当初のクライアントサーバシステムは,クライアントのアプリケーションがサーバのデータベースにアクセスする形の2層構成であった。しかし,データベースの検索結果が全てネットワークを通じて送られるため,クライアントとサーバ間の通信負荷が問題となった。」(文部科学省「情報Ⅱ」教員研修用教材 第4章)

そこで「クライアントには画面表示などの機能を残し,利用頻度の高いプログラムをアプリケーションサーバに置いてデータベースにアクセスする形の3層構成が主流になり現在でも多く使われている」と続きます。

これは本講の計算がそのまま設計に効いた実例です。検索結果を全部ネットワークに流すと何バイトになるか——それを見積もったら回線が耐えられないと分かった。だから処理をサーバ側に寄せて、流れるデータを画面表示ぶんだけに減らした。3層クライアントサーバという構成は、通信量の掛け算から生まれています。

情報Ⅰの受験生は「1画像 約6.2 MB」で終わります。情報Ⅱでは「その画像を1日1万回配信したら回線は何 Mbps 必要か、それは現実的か」まで問う。同じ掛け算が、答え合わせの道具から意思決定の道具になるわけです。

「応答時間を維持する」という要件

同じ学習19では、情報システムの処理形態を分類したうえで、オンライントランザクション処理についてこう書いています。

「データの発生と同時に処理するが,高い信頼性と即時性が要求され,多数の端末からの同時要求に対しても,応答時間を維持できるようにすることが重要である」(同 第4章)

多数の端末からの同時要求に対しても」がポイントです。1件あたりの通信量が小さくても、同時アクセス数が掛かれば回線も処理も飽和します。情報Ⅰの計算は分子(データ量)を1件ぶんで考えますが、情報Ⅱでは同時実行数という掛け算がもう1つ増えるのです。

非機能要件と性能テスト

情報Ⅱの第4章 学習24・学習25では、システムのテストを機能テストと非機能テストに分けています。

「システム開発の非機能テストでは,要求仕様で決められている場合には,性能や,ユーザーが操作をしてから結果が表示されるまでの処理時間や,負荷が高まったときでも正常に動作するかなど非機能要件と呼ばれる観点でのテストも行う。」/「性能テストとは,情報システムを実際と同じように動かしてみて,要件を満たす性能が出るかどうかを確認するテストである。」(同 第4章 学習24・学習25)

ここが情報Ⅰと情報Ⅱの決定的な差です。情報Ⅰでは「実効速度は理論値の80%とする」と問題文が教えてくれる。情報Ⅱでは、その80%が本当に出るのかを自分で測って確かめる。それが性能テストです。

そして測り方を決めることの重要性は、本記事の前半で引いた総務省のガイドラインがまさに示しています。国が実効速度の計測手法を——何都市で、何地点で、何回測って平均するかまで——定めたのは、測り方を決めないと数値が比較できないからです。情報Ⅱの性能テストで、総合テスト仕様書に実施環境・テストケース・テスト手順・合格基準を書けと言われるのも、まったく同じ理由によります。

情報Ⅰ(この講) 情報Ⅱ((4) 情報システムとプログラミング)
条件が与えられ、所要時間を計算する 通信量を自分で見積もり、システム構成を決める
実効速度の割合は問題文が与える 性能テストで実測して確かめる
1件ぶんのデータ量 同時アクセス数を掛けた総量・応答時間の維持
単位換算のミスを避ける 非機能要件として合格基準を文書化する

この講の掛け算ができない人は、情報Ⅱのシステム設計に入れません。逆に言えば、この単位換算は受験のためだけの作業ではなく、そのまま設計の基礎体力になります。私がこの単元を重要度 S と置いているのは、配点のためだけではないのです。

まとめ

  • 所要時間 = データ量 ÷ 実効速度。割る前に bit に統一する
  • 実効速度が理論値より落ちるのはヘッダなどの制御情報のため。国(総務省)が計測手法を定めている実在の概念
  • MB()と MiB()は別物。問題文の宣言を探す
  • 公式暗記ではなく単位の約分で立式する。bit ÷(bit/s)= s
  • 情報Ⅱでは、この見積りがシステム構成と非機能要件(性能テスト)を決める

あわせて読みたい記事として、情報Ⅰが必履修になった背景をまとめた情報Ⅰ必履修化の背景もどうぞ。制度の側から見ると、この単元がなぜ重視されているのかが分かります。

本記事の出典(すべて2026年8月3日取得)

本文中の計算はすべて Python の fractions.Fraction で独立に検算しています。実回線の実測値は本記事では扱っていません(実効速度の割合はすべて問題設定としての仮定です)。

藤原進之介(ふじわら しんのすけ)/数強塾 代表

数学と情報Ⅰの専門塾「数強塾」代表。累計3,500名以上の中高一貫校生を指導。東進ハイスクール・東進衛星予備校・代々木ゼミナールなど出講実績あり。共通テスト「情報Ⅰ」対策の書籍も執筆しています。「公式を覚える」ではなく「なぜそうなるかを説明できる」状態を作ることを、指導の軸に置いています。

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