情報Ⅰ 最強120講義

情報Ⅱと進路──情報系・データサイエンス系へ|情報Ⅰ 最強120講義 第120講

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情報Ⅱは共通テストの出題範囲外です。得点には直接なりません。では何のために学ぶのか——この講では「情報Ⅰの理解が深くなる」「大学に入ると必ず来る」「探究の中身が濃くなる」の3つに分け、それぞれ別の一次資料で根拠を示します。そして裏の取れなかったことは「取れなかった」と書きます。本書120講の最後の1本です。

こんにちは、数強塾グループ代表の藤原進之介です。本記事は参考書『藤原進之介の最強120講義』第120講のWeb版で、第6部「情報Ⅱへの橋」の最終講、そして本書120講の最後の1本にあたります。共通テスト重要度はC——情報Ⅱは出題範囲外だからです。

進路の話は、読者の人生の判断に関わります。だから本記事では、裏の取れない一般論は一切書きません。数値と制度はすべて文部科学省・国立大学協会・各大学の一次資料に当たり、出典と公表日を添えました。そして「探しても見つからなかった」ことも、そのまま書きます。

1. この講の問い

情報Ⅱを学ぶことは、進路にとって何になるのか。

2. 結論

情報Ⅱは共通テストの出題範囲外である。得点には直接ならない。これは令和9年度に続き、令和10年度の実施大綱でも確定している。

学ぶ値打ちは3つに分けられる。①情報Ⅰの理解が深くなる ②大学に入ると必ず来るものの前倒しになる ③探究の中身が濃くなる。

ただし③について、「情報Ⅱの履修や探究成果を評価する」と明記した大学の募集要項は、私が確認できた範囲では見つからなかった。見つからなかったことも、そのまま書く。

3. なぜそうなるのか

3-1 まず、入試での位置を「年度つき」で確定させる

進路の話は、いちばん誤情報が多いところを最初に原文で潰します。

第109講(情報Ⅱの全体像)は、大学入試センターの令和9年度の資料で「共通テストの出題科目は『情報Ⅰ』のみ」を確認しました。本講はもう1年先まで確認しています。

文部科学省「令和10年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト実施大綱」(令和8年5月27日付け 8文科高第319号 文部科学省高等教育局長通知)。この通知の別紙にある出題教科・科目の一覧で、教科「情報」の欄はこうなっています。

情報 『情報Ⅰ』 60分(100点)文部科学省「令和10年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト 出題教科・科目の出題方法等」より

備考には「『 』は大学入学共通テストにおける出題科目を表し、「 」は高等学校学習指導要領上設定されている科目を表す」とあります。そして当方でこの通知をテキスト化し、空白と改行を除いた7,174字の全文を検索したところ、「情報Ⅱ」は0件でした(2026年8月3日実施)。

つまり、令和10年度(2028年度)の入学者選抜まで、情報Ⅱは共通テストの出題科目に入らないことが、国の通知として確定しています。

個別試験(大学が独自に課す試験)も見に行きました。「情報」を個別試験で課す大学は少しずつ増えていますが、私が当たった範囲では出題範囲はいずれも情報Ⅰでした。

  • 電気通信大学「2026年度 情報理工学域 入学者選抜要項」:個別学力検査の「情報」の出題範囲は「情報Ⅰ:すべての範囲」。同要項は、情報理工学域Ⅰ類(情報系)の総合型選抜・学校推薦型選抜でCBT(Computer Based Testing)を用いた、科目「情報Ⅰ」を含む選抜を2025(令和7)年度入学者選抜から実施しているとも書いています。この要項の全文に「情報Ⅱ」は0件。
  • 松山大学は2027年度 一般選抜【Ⅱ期日程】に試験科目『情報』を新設すると予告していますが、出題範囲は「情報Ⅰ」と明記しています。

だから「情報Ⅱを取ると入試で有利」とは書けません。ネット上には「有利になるらしい」という話が流れていますが、私は裏を取れませんでした。裏の取れないことは書かない——これは本書全体を通しての方針です。

では何のために学ぶのか。3つに分けて、それぞれ別の根拠で書きます。

3-2 理由① 情報Ⅰの理解が深くなる(これは国自身が書いている)

まず、これは私の感想ではありません。文部科学省「情報Ⅱ」教員研修用教材の序章に、こう書かれています。

また、「情報Ⅱ」の各分野を学ぶ中で、「情報Ⅰ」の内容を応用したり、活用したりすることで「情報Ⅰ」で身に付けた資質・能力が磨かれる。文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅱ』教員研修用教材(本編)」序章より

「情報Ⅱをやると情報Ⅰが磨かれる」という向きの矢印を、国の教材が自分で書いています。本書はこの矢印を、第37講から第119講まで一次資料に当てて具体化してきました。その具体例を、講番号つきで並べます。

(1) トレース(第54講・第100講)→ 単体テストの4手法(第117講)

情報Ⅰの一次資料には「トレース」という語がありません第100講が範囲を広げて全数調査した結果は、学習指導要領解説 情報編 第1部(共通教科)0件・第2部(専門教科)0件、情報Ⅰ教員研修用教材(表紙・序章+第1〜4章)0件、共通テスト4回分の問題本文0件でした。「プログラムを1行ずつ追って変数の値を書き出す」という受験生が毎年やっている作業に、情報Ⅰの側は名前を与えていないのです。

情報Ⅱの第4章 学習23 は、それを命令網羅・分岐網羅・同値分割・境界値分割という名前のついた4つの手法にします。これは「どの値で試せば十分か」を決める理屈であり、共通テスト第3問の穴埋めで「どの値を入れて確かめるか」を決めるときにそのまま使えます。

(2) 分散・相関・回帰(第84・86・88講)→ 重回帰と自由度(第112講)

情報Ⅰでは「相関が強い=良い分析」で終わりがちです。情報Ⅱの学習13(重回帰分析)に進むと、説明変数を増やせば決定係数 R² は必ず上がるという事実に突き当たります。だから「上がったから良くなった」が使えなくなり、自由度で調整した指標が要ります。

この分水嶺は数字で見えます。統計の意味での「自由度」は、学習指導要領解説 0回/情報Ⅰ教員研修用教材 1回/情報Ⅱ教員研修用教材 21回(第88講が確立し、第109講が用法を1件ずつ確認して確定させた数字)。1回と21回の差が、「相関係数を求めて終わり」と「そのモデルを信じてよいか」の差です。

(3) 表を分ける理由(第90・91講)→ SQLで戻してみる(第118講)

情報Ⅰでは「1枚の表に詰めると更新・挿入・削除の不整合が起きる」と習います。理屈は分かるが実感が湧きません。情報Ⅱの学習11 で実際に表を分けてSQLで結合し直すと、分けた表を1枚に戻す操作にコストがかかることが分かります。「分けたほうが良い」ではなく「分けるコストと不整合のコストを天秤にかける」という理解になります。

(4) 論理演算(第43講)→ 行を絞る条件(第112講)

情報Ⅰの AND / OR / NOT は半加算器を組むための道具、つまりハードウェアの文脈にあります。情報Ⅱでは同じ演算がデータを絞り込む条件になります。間違えたときの被害が変わります。回路なら動かないだけですが、データ分析では間違った母集団を分析したまま最後まで進んでしまうのです。

(5) 欠損値(第82講)→ 語彙が乗り換わる

これは本書が見つけたなかでも気に入っている例です。情報Ⅰ教員研修用教材は同じ概念を「欠測値」(8件、「欠損値」は0件)と書き、情報Ⅱ教員研修用教材は「欠損値」(17件、「欠測値」は0件)と書きます。完全な相補分布です。公的統計の語彙とデータサイエンスの語彙が食い違っているだけで、内容は地続きになっています。

3-3 理由② 大学に入ると必ず来る(文理を問わず)

ここが「情報系志望者だけの話ではない」ところです。

文部科学省「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」(令和3年2月24日 文部科学大臣決定の実施要綱に基づく制度)は、大学・短期大学・高等専門学校の正規の課程のうち一定の要件を満たしたものを文部科学大臣が認定する仕組みです。認定は2段階あります。

  • リテラシーレベル(2021年度〜)… 数理・データサイエンス・AIへの関心を高め、適切に理解し活用する基礎的な能力
  • 応用基礎レベル(2022年度〜)… それを活用して課題を解決するための実践的な能力

令和7年8月26日に文部科学省が公表した資料の数字がこれです(令和7年8月時点)。

レベル 認定件数 うちプラス選定 認定を受けている大学等数 1学年あたり受講可能な学生数
リテラシーレベル 592件 32件 590校 約55万人
応用基礎レベル 366件 25件 249校 約25万人

同じ資料が制度の狙いを「文理を問わず多くの大学・高専が数理・データサイエンス・AI教育を学ぶことができる教育体制の構築・実施に取り組むことを後押し」と書いています。文学部でも法学部でも、この教育プログラムに当たる可能性があります。

そして情報Ⅱの学習11〜18が、この応用基礎レベルの入口とほぼ同じ地図を持っています(本書 第110・112〜115・118講)。データベースとSQL、前処理と欠損値、重回帰、主成分分析、分類、クラスタリング、ニューラルネットワーク——大学1〜2年で出てくる語が、そのまま並んでいます。

ただしここで断っておきます。「情報Ⅱを取ると大学の単位が取りやすい」とは書きません。そういう対応関係を示した一次資料を、私は見つけていません。言えるのは「同じ道具が出てくる」ということまでです。

3-4 理由③ 探究の材料になりうる。ただし言えるのはここまで

情報Ⅱの内容の(5)は「情報と情報技術を活用した問題発見・解決の探究」で、教員研修用教材の序章はこれを「この科目のまとめとして位置付けられており」と書きます。科目の5分の1が探究そのものなのですから、探究と相性が良いのは当たり前に見えます。国の教材も、そう書いています。

また、「情報Ⅱ」で学ぶデータサイエンスは、数学と連携して統計的な考え方を深めるとともに、データに基づいて科学的に考えることにより、「総合的な探究の時間」などの内容を深めることにつながる。同様に情報デザインの活用は、各教科・科目等の学習成果をまとめたり、発信したりする際に大きな力となる。文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅱ』教員研修用教材(本編)」序章より

ここまでは一次資料で言えます。「情報Ⅱをやると総合的な探究の時間の中身が濃くなる」は、国の教材の主張です。

問題はその先です。それが入試で評価されるのか。ここを一次資料で確かめました。

文部科学省「令和9年度大学入学者選抜実施要項」(令和8年5月27日付け 8文科高第318号 文部科学省高等教育局長通知)は、すべての大学の入学者選抜の基本ルールを定める文書です。この全文(空白除去後 28,524字)を検索した結果はこうでした。

  • 「情報Ⅱ」は0件。
  • 活動報告書について記載を求める内容の第1項は「①「総合的な探究の時間」や理数探究等において取り組んだ課題研究等」。名指しされているのは総合的な探究の時間と理数探究であって、情報Ⅱではありません
  • 参考様式2「活動報告書のイメージ例」には「(2)課題研究等に関する活動 ①(課題テーマを選んだ理由)②(概要・成果)」という欄があります
  • 調査書の様式には、各教科・科目等の学習の記録の欄に教科「情報」の行があります。情報Ⅱを履修すれば、科目名と評定がここに載ります

したがって、正確に言えることはこうなります。

情報Ⅱを学ぶ(5)は探究そのもの 総合的な探究の時間の中身が濃くなる教員研修用教材 序章 活動報告書の課題研究欄に書ける選抜実施要項 参考様式2 大学が読む ↑ 一次資料に根拠がある経路(国の教材+国の実施要項) 情報Ⅱを履修した それ自体を評価すると明記した募集要項は見つからなかった ↑ 私が確認できた範囲では根拠が見つからなかった経路 ※「存在しない」ことの証明ではなく、「探した範囲では見つからなかった」という報告です

制度上つながっているのは「情報Ⅱを学ぶ → 総合的な探究の時間の中身が濃くなる → その課題研究を活動報告書に書ける」という経路であって、「情報Ⅱを履修していること自体が評価される」という経路ではありません。前者は国の教材と国の実施要項の両方に根拠があります。後者の根拠を、私は見つけられませんでした。

私が確認した範囲を明記しておきます。

文部科学省「令和9年度大学入学者選抜実施要項」/同「令和10年度大学入学共通テスト実施大綱」/国立大学協会「国立大学の2028年度入学者選抜についての実施要領」(令和8年6月29日)/電気通信大学「2026年度 情報理工学域 入学者選抜要項」/筑波大学「令和9年度の入学者選抜の変更点について」/千葉大学「令和8年度 入学者選抜要項」——いずれにも「情報Ⅱ」の語はありませんでした。

つまり「情報Ⅱの履修や探究成果を評価する」と明記した募集要項の例は、私が確認できた範囲では見つかりませんでした。もちろん日本には700を超える大学があり、私が見たのは一部です。「存在しない」と証明したわけではなく、「私が探した範囲では見つからなかった」というだけです。ただ、進路の判断材料にするなら、この差はとても大きいと考えています。

なお、周辺の事実として1つ。筑波大学は情報科学類の「国際科学オリンピック特別入試」の出願要件を、令和9年度から「日本情報オリンピック本選でAランクとなった者」に変更しています(変更前は、これに加えて情報処理推進機構の未踏IT人材発掘・育成事業の採択クリエータも対象でした)。情報の力を出願要件にしている入試は実在します。ただしそれは情報Ⅱの履修ではなく、コンテストの成績です。ここは混ぜてはいけません。

3-5 高校側の政策は情報Ⅱを押している。ただし「情報Ⅱ等」の定義に注意

一方で、高校側には情報Ⅱを増やす方向の政策があります。高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)です。

文部科学省「令和8年度高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)の採択校をお知らせします」(令和8年4月1日)によれば、令和8年度の採択は1,249校(公立920校・私立329校)。内訳は継続3年目923校・継続2年目208校・新規118校で、うち重点類型が80校(グローバル型20・特色化・魅力化型10・プロフェッショナル型50〈うち半導体重点枠10〉)です。

そして採択基準(令和8年1月26日公表)の評価項目の第1番目が、「情報Ⅱ等」の開設です。ここが読みどころで、原文が「情報Ⅱ等」を自分で定義しています。

情報Ⅱ又は数理・データサイエンス・AIの活用を前提とした実践的な学校設定教科・科目若しくは総合的な探究の時間又は情報Ⅱの内容を含むことにより指導内容を充実させた職業系の教科・科目(以下「情報Ⅱ等」という。)文部科学省「高等学校等デジタル人材育成支援事業費補助金(高等学校DX加速化推進事業)採択基準(基本類型・重点類型共通)」令和8年1月26日 より

つまり「情報Ⅱ等」は情報Ⅱではありません。学校設定科目でも、総合的な探究の時間でも、職業系の科目でも要件を満たします。だから採択校決定資料にある

  • 情報Ⅱ等を既開設(R8年度開設を含む)919校/開設予定(遅くともR10年度まで)798校
  • 採択校の生徒の履修率 現状値37.0%(初年度申請時点)→ 目標値60.3%

という数字を、「情報Ⅱを開設している919校」「情報Ⅱの履修率37.0%」と読んではいけません。第109講が確認した全国の情報Ⅱの履修率は、全日制 普通科等で2.3%(令和7年度公立高等学校等における教育課程の編成・実施状況調査)。この2つは数える対象が違うので、並べて割り算してはいけません。

もう1つ、採択基準に大事な一文があります。

(情報Ⅱに相当する内容を含む大学等その他の教育施設等における学修を高等学校における科目の履修とみなし単位認定を行うことを含む。また、他校からの遠隔授業を受信しているケースも含む。)同 採択基準 評価項目1-1 より

高校で情報Ⅱが開設されていなくても、大学の授業や他校の遠隔授業で代替する道が、国の文書に書かれています。「うちの高校には無い」で終わりにする前に、これを知っているかどうかで動き方が変わります。

3-6 国の資料は、進路について何を書いていないか(語数調査)

本書の道具である語数調査を、最後にもう一度使います。方法は同じで、3つの一次資料をテキスト化し、空白と改行を除いて語を数えます(当方で2026年8月3日実施)。学習指導要領解説 情報編は、第1部(共通教科=情報Ⅰ・情報Ⅱ)と第2部(主として専門学科の専門教科情報科)を必ず分けます。

解説 第1部
(共通教科)
解説 第2部
(専門教科)
情報Ⅰ教材 情報Ⅱ教材
進路 4 9 0 1
職業 5 108 2 5
学科 21 60 2 3
産業 10 270 15 6
資格 1 13 0 0
将来 15 13 1 28
データサイエンティスト 0 0 0 3

読み取れることが4つあります。

① 職業・産業・資格の語は、圧倒的に第2部(専門教科情報科)に偏っています。職業108件・産業270件が専門教科側です。共通教科の情報Ⅰ・情報Ⅱは、職業教育の科目ではありません。ここを混同すると、「情報を学ぶ=IT業界に行く」という誤った前提で進路を考えることになります。

② 情報Ⅰ教員研修用教材に「進路」は0件。情報Ⅱ教員研修用教材の1件は序章にあり、しかも文脈は専門教科情報科への接続です。

生徒の多様な学習要求に応えるとともに、生徒の情報活用能力を高めたり、進路希望等を実現させたりするために、「情報Ⅱ」の履修と並行して、あるいは「情報Ⅱ」の履修後に専門教科情報科の科目を履修させることも可能である。文部科学省「情報Ⅱ」教員研修用教材 序章より

③ 「将来」だけが情報Ⅱ教材で28件に跳ね上がります。情報Ⅱ 第1章に学習5「人に求められる資質・能力の変化」と学習6「将来の情報技術と社会」があるからです。学習5 の研修の目的には「情報技術の発達によって起こる仕事の変化及び人に求められる資質・能力の変化について考えさせる授業ができるようになる」と書かれ、参考資料には総務省『情報通信白書』、内閣府「Society5.0」、厚生労働省「AIと共存する未来」などが並びます。情報Ⅱは進路指導の科目ではありませんが、「仕事がどう変わるか」を考える1学習をきちんと持っています。

④ 「データサイエンティスト」3件の中身を見ると、本文は0件でした。3件はすべて参考図書の書名(『東京大学のデータサイエンティスト育成講座』)の一部で、本文の記述ではありません。つまり「データサイエンティスト」という職業名は、国の一次資料の本文には出てきません。使うなら「一般にこう呼ばれる」と主語を分けるべき語です。

件数だけを見て「情報Ⅱはデータサイエンティストを扱っている」と書いたら誤りになります。本書が第109講以来ずっと戒めてきた誤りの、最後の実例になりました。

4. 手で確かめる

この講の役割は、読者が自分で確かめられる形にすることです。3つ用意しました。

4-1 自分の高校で情報Ⅱが開設されているかを調べる4つの手順

手順1 教育課程表(カリキュラム表)を見る。

学校のWebサイトの「教育課程」「カリキュラム」のページ、または入学時に配られた冊子にあります。見るのは3年次の選択科目群。第109講が確認したとおり、情報Ⅱの開設は3年次に集中しています(全日制 普通科等で1年次0.3%/2年次2.7%/3年次14.4%)。

⚠️ 科目名だけで判断しないこと。学校が独自に立てた学校設定教科・科目(「データサイエンス」「情報探究」など)として、実質的に情報Ⅱの内容をやっていることがあります。DXハイスクールの採択基準が「情報Ⅱ等」にこれを含めているのは、そういう学校が実在するからです。

手順2 シラバスを見る。

多くの高校が科目ごとのシラバスを公開しています。見るのは目標欄・単元一覧で、内容項目の名前が入っているかを確認します。情報Ⅱなら「(3)情報とデータサイエンス」「(4)情報システムとプログラミング」といった語が出ます。逆に「(3)コンピュータとプログラミング」「(4)情報通信ネットワークとデータの活用」なら情報Ⅰです。

手順3 聞く相手は、情報科の先生と教務主任。

進路指導部ではありません。時間割と教育課程を作っているのは教務です。聞き方はこうです。

「3年次の選択科目に情報Ⅱは置かれていますか。置かれていない場合、その枠には何単位分の選択科目がありますか」

置かれていない場合の追加の質問はこうです。

「情報Ⅱに相当する内容を、学校設定科目や総合的な探究の時間で扱っている授業はありますか」
「他校との遠隔授業や、大学の科目の単位認定という形で受けられる仕組みはありますか」

最後の1つは、DXハイスクールの採択基準に書かれている実在の制度です(3-5参照)。知らずに聞かないのと、根拠を知って聞くのとでは、返ってくる答えが変わります。

手順4 DXハイスクールの採択校一覧で自分の高校を探す。

文部科学省が令和8年度の採択校一覧(別添1)を公表しており、都道府県別に学校名がそのまま載っています。自分の高校が載っていれば、その学校は「情報Ⅱ等」の開設を国に対して計画として出しています。相談する余地がある、という判断材料になります。

採択校一覧 https://www.mext.go.jp/content/20260407-mxt_koukou02-000046737_0009.pdf

4-2 志望分野別「どのPDFから読むとよいか」

情報Ⅱが取れなくても、国が作った教員研修用教材が全章 PDF で無料公開されています。第109講は章立ての順に並べた表を作りました。ここでは志望分野から引ける形に並べ直します

一覧ページ https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/mext_00742.html

志望分野 まず開くPDF そこにある学習 本書のどの講から読むか
まだ決まっていない _001(序章・12ページ) 情報Ⅱのねらい、各章が情報Ⅰのどこを土台にするか 第109講
データサイエンス・統計 _004(第3章前半) 学習12 収集と整理・整形/学習13 重回帰/学習14 主成分分析 第110・112・113講
AI・機械学習 _007(第3章後半) 学習15 分類/学習16 クラスタリング/学習17 ニューラルネットワーク/学習18 テキストマイニングと画像認識 第114・115講
情報工学・ソフトウェア開発 _005(第4章) 学習21 UML・DFD/学習22 モジュール分割/学習23 単体テスト/学習24 結合テスト/学習25 プロジェクト・マネジメント 第116・117講
情報システム・データベース _004(第3章前半) 学習11 データと関係データベース(SQL・データ型・NoSQL) 第118講
情報デザイン・メディア・広報 _003(第2章) 学習8 プロトタイプの作成(ペルソナ→シナリオ→要件定義→検証)/学習10 発信と改善 第119講
情報社会・法制度・政策 _002(第1章) 学習2 情報セキュリティ/学習5 人に求められる資質・能力の変化/学習6 将来の情報技術と社会 第111講
文理を問わず「探究をやりたい」 _006(第5章) 活動例1〜4。ただし教材自身が「例を挙げる程度にとどめている」と断っている 第110講

ファイル名の注意を2つ。

_004(第3章前半)だけ日付部分が 20200702 で、それ以外は 20200609 です。そして _006 は第6章ではなく第5章+巻末_007 は第7章ではなく第3章後半です。番号順に落とすと章がずれます。

そして演習の解答は、本編とは別に公開されています。章ごとに5分冊(第1〜4章が学習1〜25、第5章が活動例)。独学するなら本編と解答を必ずセットで落としてください。

演習解答の一覧 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/mext_01292.html

4-3 語数調査を自分でやる

3-6でやったことは、道具さえあれば誰でも再現できます。pdftotext は Poppler というPDFツール集に入っています。

pdftotext -layout 20200609-mxt_jogai01-000007843_002.pdf ch1.txt
python3 -c "
import re,sys
t=re.sub(r'[\s]+','',open(sys.argv[1]).read())
print(t.count(sys.argv[2]))
" ch1.txt 将来

ただし数だけを見てはいけません。本講の「データサイエンティスト 3件」がまさにそれで、3件とも参考図書の書名でした。必ず前後を出して用法を確認します。

python3 -c "
import re,sys
t=re.sub(r'[\s]+','',open(sys.argv[1]).read())
for m in re.finditer(sys.argv[2],t):
    print('...'+t[max(0,m.start()-45):m.end()+45]+'...')
" ch1.txt 将来

この作業の値打ちは、「教科書に書いてあるか」を人に聞かずに自分で確かめられるようになることにあります。進路の話ほど、噂と事実が混ざりやすい領域はありません。原文はすべて無料で公開されています。

5. 共通テストではこう出る

この講は共通テストへの接続がありません。情報Ⅱは出題範囲外です。

受験生がいちばん知りたい情報なので、出典を添えてもう一度書きます。

  • 令和9年度:大学入試センター「令和9年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テストの出題教科・科目の出題方法等及び問題作成方針について」(令和7年6月6日)。教科「情報」の出題科目は『情報Ⅰ』のみ、60分(100点)。全文に「情報Ⅱ」0件(第109講が確認)
  • 令和10年度:文部科学省「令和10年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト実施大綱」(令和8年5月27日付け 8文科高第319号 文部科学省高等教育局長通知)。同じく『情報Ⅰ』のみ、60分(100点)。全文(空白除去後7,174字)に「情報Ⅱ」0件(本講が確認)

年度が変わったら、同名の資料で必ず取り直してください。制度の話は、書いた時点の話でしかありません。本記事は2026年8月時点の資料にもとづきます。

そのうえで、受験勉強の実務としてはこうなります。情報Ⅱは、共通テスト対策の時間を割いてやるものではありません。情報Ⅰの得点を上げたいなら、第5部(第97〜108講)の共通テスト攻略に時間を使うほうが速い。情報Ⅱに手を出す価値があるのは、情報Ⅰを一通り終えて「なぜこうなっているのか」が気になり始めた人です。順序を間違えないでください。

6. 情報Ⅱではこうなる——120講の総括

本講は情報Ⅱの話そのものなので、このブロックは本書全体の締めくくりに充てます。大げさにはしません。事実の積み上げとして書きます。

6-1 発見1 接続マップ——情報Ⅰの各項目が情報Ⅱのどこへ行くか

本書は第37講から順に、情報Ⅰの各項目について「情報Ⅱでどうなるか」を一次資料に当てて確かめ、1行ずつ表に足していきました。その結果、情報Ⅰと情報Ⅱの関係は3つの型に分類できることが分かりました(第109講)。

①名前がつく(情報Ⅰでやり方として存在するが名前が無いものに、情報Ⅱで正式な工程名がつく)。②使い道が変わる(道具は同じで、使う場面と失敗したときの被害が変わる)。③そこで終わる(情報Ⅱ側に伸びない)。

この表が、本書が既刊の情報Ⅰ参考書と最も違うところです。「情報Ⅱでも扱います」で終わらせず、どの学習の何ページで、どういう語で扱われるかまで書きました。

6-2 発見2 空白リスト——共通テストに出るのに、情報Ⅰの一次資料の本文に無いもの

書いているうちに、予想していなかったものが出てきました。共通テストで問われるのに、情報Ⅰの一次資料(学習指導要領解説 情報編・情報Ⅰ教員研修用教材)の本文には書かれていない項目が、次々に見つかったのです。

トレース、サブネット、論理回路、デジタルのノイズ耐性、パケット交換、2の補数とオーバーフロー、標準偏差・四分位・箱ひげ図、主キー・外部キー、DNS、ルーティング、文字コード(Unicode・UTF)、制御構造(順次・分岐・反復)、配列・添字・要素数、パリティとチェックディジット、演算子と剰余、丸め誤差・桁落ち、スコープと関数の定義の書式、区間推定と信頼区間、グラフの種類の使い分け、色の三属性、要配慮個人情報、プライバシー権の法的な位置づけ、代替テキストとalt属性……。

これらの「在り処」は、国の別の資料にありました。情報Ⅱ教員研修用教材、文部科学省の授業・研修用コンテンツ、IPAの各シラバス、他教科(数学Ⅰ・数学B・中学校技術家庭)、そして共通テストそのもの。つまり空白ではなく、置き場所が違うだけでした。

この作業には、方法論としての失敗も含まれています。「0件」という結論は強いので、検索漏れがそのまま誤った断定になります。実際に本書の制作中に、次の3種類の誤りが起きました。

① 第3章後半の分冊を見落として「計算量は情報Ⅱ教材に0件」と書きかけた(第55講→第57講が訂正)。② 「欠損値が0件だから空白」と書きかけたが、同じ内容が「欠測値」で書かれていた(第82講が自分で訂正)。③ 同じ語の別の意味を数えていた(「整列」の4件のうち3件は情報デザインのAlignment。第109講が発見)。

訂正の履歴を残したまま本にします。そのほうが、読者が同じ検査を自分でやるときの役に立つからです。

6-3 発見3 逆向きの空白——情報Ⅰで厚いのに、情報Ⅱで消えるもの

「情報Ⅰの全部が情報Ⅱへ伸びる」と書いたら、その本は嘘になります。実測すると、情報Ⅱ側で消えるものがはっきり存在しました。

シミュレーション(情報Ⅰ教材58回→情報Ⅱ教材5回)、匿名加工情報(6→0)、個人情報保護法(11→0)、交絡(4→0)、因果(3→0)、標本化(1→0)、量子化(2→0)、整列(ソートの意味で1→0)、オープンデータ(36件がすべて情報Ⅰ教材)、抽象化と可視化(情報デザイン3手法のうち、直系の後継章に生き残るのは構造化だけ)。

そして消える理由も一様ではありませんでした。①情報Ⅱ側で別の役割に変わる(シミュレーションは消えたのではなく、動かす軸が「時間」から「説明変数」に変わった)。②別の語に乗り換わる(欠損値/欠測値、標準化/基準化)。③教材が制度より古いだけ(仮名加工情報は令和2年改正の新設概念で、情報Ⅱ教材の発行は令和2年3月。書けるはずがなかった)——少なくとも3種類ありました。③を「国の不備」のように書いたら、本が不誠実になります。

6-4 情報Ⅰだけ見ていると見えないもの

3つの発見を通して、「情報Ⅰの参考書だけを読んでいたら気づけなかったこと」を挙げます。すべて講番号つきで書きます。

  1. 統計は、制度上は情報科ではなく数学科が担当している第92講第93講)。学習指導要領解説 情報編は「数学科と連携し」と書き、解説 数学編は「情報科と連携していろいろな場面で検定を取り扱い」と書きます。互いに名指ししています。さらに情報Ⅱ教員研修用教材は「サンプルサイズは数学Bで学習する計算式で求める」と外注を明記します。段階も取れています(中学=経験的/数学Ⅰ=直観的/数学B=定量的)。共通テスト情報Ⅰの統計は、情報の教科書ではなく数学Ⅰで身につける建て付けになっています。
  2. 「五大装置」「ノイマン型」「プログラム内蔵方式」という呼び名は、国の一次資料にもIPAの3シラバスにも1件もありません第37講)。内容はあるが、呼び名は教科書由来です。用語と内容は別の出所を持ちます。
  3. 「残存性・複製性・伝播性」も国の資料に0件(第6講)。国が書くのは3つではなく4つで、しかもやまと言葉(「形がない」「消えない」「簡単に複製できる」「容易に伝播する」)。共通テスト4回分にも出ていません。参考書の定番用語が、国の資料に無いことがあります。
  4. 中学校で既に済んでいる単元があります(第67講)。中学校 技術・家庭科 D(2)ア の項目名は「情報通信ネットワークの構成」で、高校の情報Ⅰが足したのは「クライアント」と「ハブ」の2語だけでした。どこが新出でどこが復習かが分かると、勉強の配分が変わります。
  5. 「解説にある/教員研修用教材にある/教科書にある」は同じではありません第113講)。主成分分析は、学習指導要領解説の全文に「主成分」0件なのに、教員研修用教材は学習14を丸ごと割いて161件書きます。教科書側は解説に従っていて、節名に主成分分析がありません。「国が扱う」と一括りにすると、この階層差が消えます。
  6. 情報Ⅱには専用の入試がありません(本講)。共通テストは令和10年度まで『情報Ⅰ』のみ。個別試験も情報Ⅰ。募集要項で情報Ⅱを名指しした例は見つかりませんでした。それでも学ぶ理由は、入試の外にあります。

6-5 本書がここで終わること

本書は情報Ⅰの参考書です。上限を情報Ⅱに置いたのは、情報Ⅱを教えるためではなく、情報Ⅰの各項目が「どこへ向かっている途中なのか」を示すためでした。向かう先が見えると、目の前の項目の意味が変わります。標準偏差は「公式を覚えるもの」ではなく「基準化して主成分を出すための前段」になり、表を分ける話は「暗記事項」ではなく「SQLで戻すときのコストとの天秤」になります。

そして、行き止まりも同じくらい大事でした。情報Ⅰで終わるものがあると知っていれば、「これはここまでで完結している」と割り切れます。

最後に、この講の結論をもう一度だけ書きます。情報Ⅱは共通テストに出ません。取れる高校も少ない。それでも教材は全部無料で公開されていて、誰でも今日から読めます。使うか使わないかは読者が決めることですが、「知らなかったから選べなかった」だけは避けてほしいと思っています。本書120講が最後にできるのは、それくらいです。

まとめ

  • 情報Ⅱは共通テストの出題範囲外。令和9年度・令和10年度の国の文書でともに『情報Ⅰ』のみ(令和10年度大綱の全文に「情報Ⅱ」0件)
  • 個別試験で「情報」を課す大学も、確認した範囲では出題範囲は情報Ⅰ(電気通信大学・松山大学)
  • 学ぶ理由は3つ。①情報Ⅰが磨かれる(国の教材が明記)②大学で必ず来る(認定制度 リテラシー592件・応用基礎366件)③探究の中身が濃くなる
  • ただし「情報Ⅱの履修や探究成果を評価する」と明記した募集要項は、確認した範囲では見つからなかった。「有利になるらしい」は書かない
  • DXハイスクールの「情報Ⅱ等」は情報Ⅱではない(学校設定科目・総合的な探究の時間・職業系科目を含む定義)。919校・37.0%を情報Ⅱの数字として読まない
  • 「データサイエンティスト」は国の一次資料の本文に0件(3件は参考図書の書名)
  • 高校に無くても、大学等の学修の単位認定・他校からの遠隔授業という道が国の文書に書かれている
  • 教員研修用教材は本編7分冊+演習解答5分冊が無料公開。志望分野から引く表を4-2に置いた

基礎からの積み上げは第40講 基数変換から、第6部の入口は第109講 情報Ⅱの全体像から、シリーズ全体は『藤原進之介の最強120講義』目次およびカテゴリ一覧から読めます。

出典(すべて2026年8月3日に取得)

執筆:藤原進之介(数強塾グループ代表)

オンライン数学専門塾「数強塾」代表。累計3,500名以上の中高一貫校生を指導。東進ハイスクール・東進衛星予備校・代々木ゼミナールなど出講実績あり。情報Ⅰの参考書を複数執筆しており、KADOKAWA『ゼロから始める情報I』、Gakken『きめる!共通テスト 情報Ⅰ』などがあります。本記事は参考書『藤原進之介の最強120講義』第120講のWeb版です。

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