情報Ⅰ 最強120講義

主成分分析と次元削減|情報Ⅰ 最強120講義 第113講

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変数が8個も20個もあるデータを、なぜ2本の軸に押し込んでよいのか。答えは身も蓋もありません。次元削減とは、情報を捨てることだからです。この講では、国の教材が第36講の非可逆圧縮とまったく同じ動詞(捨てる)を使っていることを原文で確かめ、10人ぶんの小さなデータで標準化するかどうかで答えが変わることを実演します。

こんにちは、数強塾グループ代表の藤原進之介です。本記事は参考書『藤原進之介の最強120講義』第113講のWeb版で、第6部「情報Ⅱへの橋」の1本です。共通テスト重要度はC——情報Ⅱは共通テストの出題範囲外だからです。それでもこの講を置くのは、「捨てる」とはどういうことかを、これほどはっきり見せてくれる道具が他に無いからです。

結論

  • 次元削減とは、情報を捨てることである。国の教材は「寄与の小さい下位の方の主成分を捨て」と書き、第36講の非可逆圧縮とまったく同じ動詞を使っている
  • 捨てる順番を決める物差しが分散ばらつきこそが情報だから、最も散らばって見える向きから順に軸を取る
  • どこまで残すかは数学ではなく目的が決める。国の資料の中ですら、採用する主成分の数が食い違っている

なぜそうなるのか

1 国の教材が「捨てる」と書いている

文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅱ』教員研修用教材」第3章前半 学習14(p.136)の原文はこうです。

主成分は分散が最も大きくなるような順番で作成され,下位の主成分になるに従って,対象間で主成分の値(主成分得点)の変動(分散)が小さくなる。そこで,対象の弁別に対して寄与の小さい下位の方の主成分を捨て上位の主成分のみ採用することで,元の個数pより少ない数で,対象の特徴をプロファイルすることが可能になる。このことを次元削減(次元縮約)という文部科学省「高等学校情報科『情報Ⅱ』教員研修用教材(本編)」第3章前半 p.136(令和2年3月発行)

第36講「データ圧縮」で扱った非可逆圧縮を思い出してください。あちらは「人間が気づきにくい情報を捨てて容量を減らす」でした。こちらは「対象の見分けに効かない成分を捨てて変数を減らす」です。捨てるという動詞と、圧縮という語が、国の資料の上で一致しています。

これは私の解釈ではありません。2024年3月に文部科学省が公開した情報Ⅱの解説動画のスライドは、題名そのものが「主成分分析による次元縮約 データを圧縮して,関係を見よう!」であり、本文でも「多次元のデータを低次元の主成分に圧縮(要約)することで,データの構造を可視化できる」と書いています。

面白いのは語の分布です。私が全文を数えたところ、「圧縮」は情報Ⅱ教員研修用教材の全7分冊に0件でした(学習指導要領解説 情報編に10件、情報Ⅰ教員研修用教材に50件)。教材本体は「圧縮」を情報Ⅰの語として扱っていて、情報Ⅱで「圧縮」が復活するのは4年後の動画スライドの側です。国が、高校生に届けるときに情報Ⅰの語を借りてきた。ここがこの講の入口です。

2 なぜ「分散が最大の方向」を選ぶのか

第84講「データの散らばり」で、散らばりを測る道具として分散と標準偏差を扱いました。あのとき「散らばりが小さいほど揃っていて良い」という言い方をしませんでした。理由がここで効いてきます。

係数 a,b,c,d,e を50人の生徒の合成変数の値(主成分得点)が最もばらつくように,つまり,分散が最大となるように決定される一つの変数である。ばらつきが大きいことがその変数の情報量の大きさに対応する。同 p.137

極端な例で考えてください。全員が同じ値の変数には、情報が1ビットもありません。「全員が日本語を話す」という変数で生徒を見分けることはできない。逆に、値が大きくばらけている変数は、人と人を見分ける力が強い。だから主成分分析は最も散らばって見える角度から写真を撮ります。文科省のスライドの言い方が直感的です。

散らばりを最大化するように、空間上で軸を決める。(一番散らばって見えるところで、見下ろすイメージ文部科学省「情報Ⅱ解説動画」スライド「主成分分析による次元縮約」(2024年3月)

第2主成分は、第1主成分と無相関という条件のもとで、残りの中で最も散らばる向きに取ります。無相関にするのは同じ情報を二度数えないためです。

3 なぜ標準化(基準化)が必要なのか

教材は、合成変数の作り方に2つの立場があると書きます。

① 5科目の得点のレベル(位置)をそろえる(平均を同じにする,平均からの偏差にする)。
② 5科目の得点のレベル(位置)とばらつきの大きさの双方をそろえる(平均と標準偏差を同じにする,基準化(標準化)する,または,偏差値にする)。
単位が異なる複数の変数を扱う場合は,②の基準化を行い,単位をそろえる必要がある。単位が同じ場合は,①と②の双方の立場で分析が可能である。①では,各変数の分散の大きさを考慮した係数が求まり,②では,各変数の分散の違いを無視した係数が求まる。同 p.137

理由は身も蓋もありません。分散は単位の2乗の次元を持つからです。距離をkmで測れば分散は数十、同じ距離をmで測れば分散は数千万になる。分散を最大化する軸を探すのだから、目盛りの大きい変数が軸を独占します。第84講で「身長(cm)と体重(kg)と50m走のタイム(秒)を同時に扱うと、たまたま数字が大きい変数が結果を支配してしまう」と書いたのと同じことが、変数が2個でも起きます。第82講「データの整理・整形」で確認した「前処理を怠ると答えが変わる」の、最も派手な実例がこれです。

ただし、標準化は義務ではありません。同じ教材の学習16(クラスタリング)には、こう書かれた箇所があります。

「金額を用いてクラスタリングを行いたいので,値の基準化は行わない。」

単位がそろっていて、しかも「金額の大きさそのもの」を見たいときは、標準化しないほうが正しい。標準化するかどうかは、目的から決まる判断です。

4 寄与率と累積寄与率——何%まで残せば十分か

第1主成分の分散が全体の分散のどれだけを占めるか、が寄与率。上から足し上げたものが累積寄与率です。教材の5科目の例では第1主成分3.12÷5=62.4%、第2主成分1.16÷5=23.1%、累積85.5%。教材は「これが次元削減の意味である」と結んでいます。

では何%まで残せばよいのか。教材は3つの基準を挙げます。

  1. 累積寄与率:目安は70%や80%以上になるくらいまで
  2. カイザー基準:固有値(分散)が1以上の主成分を採用(相関行列を分析した場合)
  3. スクリープロット:分散の減少がなだらかになる前まで

ところが、この3つは同じデータに違う答えを出します。教材が例に使う体力測定8変数のR出力(固有値 3.873/0.907/0.827/0.732/0.537/0.470/0.410/0.245)に当てはめると、こうなります。

基準 判定 採用する主成分の数
カイザー基準(固有値1以上) 3.873 のみ 1個
累積寄与率70% PC3 で 0.7008 3個
累積寄与率80% PC4 で 0.7922 4個

さらに、同じ文部科学省の資料の中で判断が割れています。教員研修用教材の「演習解答」(2021年3月19日掲載)は「主成分4までの累積寄与率は79.2%で、もともと8変数の体力測定の情報の約80%が4つの主成分に集約される」と4個を採り、2024年の解説動画スライドは別のデータで「2軸でデータ全体の67%を説明できている!」と2個で満足しています。

これは矛盾ではなく、目的が違えば答えが違うだけです。第59講「モデル化」で「モデル化とは捨てることだ」と書きました。何を捨ててよいかは、モデルの外——つまり何がしたいのか——が決めます。「累積寄与率は何%以上が正解ですか」という問いは、そもそも問いの形をしていません。

5 主成分の名前は、人間が後から付ける

ここが最も誤解されやすい点です。主成分分析が出力するのは係数の並びと数字だけで、「第1主成分=総合学力」という名前はどこからも出てきません。教材の5科目の例では、第1主成分は「やや理系科目に重きを置いた総合得点」、第2主成分は「国語や英語に重みを置いた総合得点と,数学や理科に重みを置いた総合得点の差(対比)」=生徒の興味・関心の方向性、と分析者が解釈しています。

文科省の動画スライドも、家計消費データの第1主成分に「総合消費度」、第2主成分に「食傾向(魚・野菜・果物 ↔ 肉・卵・牛乳・穀物)」という名前を人間が付けています。教材の「指導上の留意点」は正直です。

現実のデータ分析に際し,主成分の解釈は難しい。最初から教えるのではなく,グループで議論させ相互に理解が深まる場面を作るように指導する。同 p.143

機械は「どの向きが最も散らばるか」しか教えてくれません。それに意味を与えるのは人間の仕事です。

符号にも注意が必要です。動画スライドの第1主成分の係数は穀類−0.38、魚介類−0.40、野菜・海藻−0.46とすべて負ですが、スライドは左側を「総合消費度 高」と読んでいます。主成分の符号は全部ひっくり返しても分析としては同じ(係数を−1倍しても分散は変わらない)で、どちら向きを「高い」と呼ぶかは読み手が決めます。演習解答も「『50m走』は値が小さいほど記録がよいと判断される指標なので,−の負荷量を+と読み替えている」と、読み替えを明示しています。

6 ⚠️ 国の資料でも用語がゆれている(検算して確かめた)

統計解析言語Rの prcomp の出力に Rotation という行列が出ます。これを、

  • 教員研修用教材 本編(p.141)は「Rotation(n x k)=(8 x 8):主成分の係数
  • 演習解答(第3章 p.18)は同じ出力を「Rotation (n x k) = (8 x 8):主成分負荷量

と、別々の名前で呼んでいます。どちらが定義に合うかは検算すれば決まります。教材本文は、係数に「2乗和を1とする制約条件」を課すと書いている。実際に演習解答に載っている第1主成分の8個の値を2乗して足すと 1.000000009、第2主成分も 1.000000043 でした(丸め誤差の範囲で1)。一方、主成分負荷量とは「主成分と元の変数との相関係数」ですから、相関行列に基づく分析では係数×その主成分の標準偏差で計算します。第1主成分(標準偏差1.968)で計算し直すと 0.640/0.618/0.606/0.774/0.616/−0.798/0.724/0.757 となり、Rotation の値とは別物になります。

つまり Rotation は係数(固有ベクトル)であって、負荷量ではありません。教材本文の呼び方が定義に合っています。国の一次資料であっても、こうした小さなゆれはあります。大事なのは「原典に当たる」ことと「自分で検算する」ことの両方だ、という話です。

ついでに、演習解答の出力が相関行列に基づくものであることも数字から確認できます。8個の固有値を全部足すと 8.0010(表示された有効数字の丸めを含めて8)。相関行列の固有値の合計は、必ず変数の数に一致します。

7 語数調査——学習指導要領解説には1件も無い

3つの一次資料の全文を機械的に数えました(2026年8月3日実施。空白と改行を除去してから部分文字列を計数)。学習指導要領解説 情報編は共通教科(第1部)と専門教科(第2部)を分けて数えています。

解説 第1部
(共通教科)
解説 第2部
(専門教科)
情報Ⅰ
教員研修用教材
情報Ⅱ
教員研修用教材
主成分 0 0 0 161
主成分分析 0 0 0 41
次元削減 0 0 0 11
次元縮約 0 0 0 1
寄与率 0 0 2 41
累積寄与率 0 0 0 9
主成分得点 0 0 0 18
相関行列 0 0 0 11
固有値 0 0 0 7
基準化 0 0 0 16
圧縮 9 1 50 0

件数だけを読んではいけません。数える前に、ヒットした箇所を1件ずつ目で見て用法を確認しました。

  • 情報Ⅱ教材の「主成分」161件のうち、序章の2件は目次、第3章後半の1件は学習項目の列挙で、実質158件がすべて第3章前半の学習14。1つの学習に集中しています
  • 情報Ⅰ教員研修用教材の「寄与率」2件は、主成分の寄与率ではありません。「このモデルの寄与率は50%である」という回帰の決定係数の意味です(第4章、体力測定の予測モデル)。同じ語が別の意味で使われている典型例です
  • 「標準化」は3資料あわせて5件ありますが、統計の標準化はほぼ0件です。解説の3件はすべて第2部(専門教科)の「規格の標準化」(ISO・JIS)、情報Ⅰ教材の1件は「国際標準化機構」、情報Ⅱ教材の1件だけが「基準化(標準化)」という併記。情報Ⅱは統計の標準化を「基準化」と呼びます。語で検索するときは両方を試してください
  • 「分散」も分けて数える必要があります。情報Ⅱ教材の50件のうち第4章の11件はすべて「分散処理」「分散型システム」で統計とは無関係。統計の分散は第3章の39件です

そして最も効く事実がこれです。学習指導要領解説 情報編の全文に、「主成分」「多変量」「特徴量」「合成変数」「縮約」「固有値」「寄与率」はいずれも0件です。解説が情報Ⅱ(3)で名指しする手法は3つだけ。

ここで行うデータの処理に関しては,回帰,分類,クラスタリング及びそれらがどのような場面で活用されているか,これらを応用して人間が判断や意思決定を行う代わりにデータを基にどのような仕組みでコンピュータが判断を行っているかを理解するようにする。高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編 第1部 第2章「情報Ⅱ」(3)ア(イ)(平成30年7月)

つまり主成分分析は、学習指導要領解説には出てこないのに、教員研修用教材が丸ごと1学習ぶん(p.136〜143)を割いている項目です。実際、実教出版『情報Ⅱ』(情Ⅱ702、2023年1月25日発行、監修 萩谷昌己、214頁)の第2章「データサイエンス」の10節を見ても、節の名前は「回帰による分析」「分類による分析」「クラスタリングによる分析」で、主成分分析や次元削減を冠した節はありません(節の名称の話であって、本文中に一切出てこないという意味ではありません)。

教科書は解説に従い、教員研修用教材は解説より一歩前に出ている。主成分分析はその隙間にある道具です。だから重要度はC。それでも私がこの講を置くのは、「捨てる」の意味を、これほどはっきり見せてくれる道具が他に無いからです。

手で確かめる

1 データ(10人・2変数)

自作の小さなデータです。単位がまったく違う2つの変数を使います。

  A B C D E F G H I J
通学距離(km) 2 4 5 6 8 12 14 15 16 18
定期代(円/月) 4000 6000 5000 7000 6000 9000 8000 11000 10000 14000

平均は距離10.0km、定期代8000円。偏差は距離が −8, −6, −5, −4, −2, +2, +4, +5, +6, +8、定期代が −4000, −2000, −3000, −1000, −2000, +1000, 0, +3000, +2000, +6000。ここまでは電卓でできます。

  • 距離の偏差の2乗の合計 290 → 分散 29.0、標準偏差 5.385165
  • 定期代の偏差の2乗の合計 84,000,000 → 分散 8,400,000、標準偏差 2898.275349
  • 偏差の積の合計 144,000 → 共分散 14,400
  • 相関係数 r = 14400 ÷ √(29 × 8400000) = 0.922622

2 標準化しないとどうなるか

分散共分散行列は [[29, 14400], [14400, 8400000]]。これを固有値分解すると、こうなります。

固有値 8,400,024.69 と 4.31 / 寄与率 99.99995% と 0.00005% / 第1主成分の係数(距離, 定期代)= (0.0017, 1.0000)

寄与率がほぼ100%だから素晴らしい、ではありません。第1主成分の中身は「定期代」そのもので、距離の係数は0.0017しかない。「1本の軸で99.99995%説明できた」の正体は、「円のほうが数字が大きい」というだけです。

3 標準化するとどうなるか

各変数を平均0・標準偏差1に直してから、相関行列 [[1, 0.922622], [0.922622, 1]] を固有値分解します。

固有値 1.922622 と 0.077378 / 寄与率 96.13% と 3.87% / 第1主成分の係数(距離, 定期代)= (0.7071, 0.7071)

第1主成分は「標準化した距離と標準化した定期代を対等に足したもの」=総合的な通学コストになりました。同じデータなのに、標準化するかどうかで答えが変わる。これが「前処理は分析の一部だ」の意味です。

2変数の主成分分析は暗算できます。相関行列が [[1, r], [r, 1]] のとき、

  • 固有値は必ず 1 + r1 − r
  • 第1主成分の寄与率は必ず (1 + r) ÷ 2
  • 第1主成分の係数は必ず (1/√2, 1/√2) = (0.7071, 0.7071)

r = 0.922622 なので、1 + r = 1.922622、(1 + r) ÷ 2 = 0.961311。上の計算結果と一致します。第86講で求めた相関係数が、そのまま寄与率になる。相関係数さえ分かっていれば、2変数の主成分分析に計算機は要りません。

ここから分かることがもう一つ。2変数で r ≥ 0 なら、第1主成分の寄与率は必ず50%以上です。だから「寄与率が高い=良い分析」ではありません。変数が2個しかなければ高くて当たり前です。

4 図で見る

① 単位のまま(縦横で同じ数値の目盛りを使う)定期代の偏差(円)-6000-6000-3000-3000003000300060006000ABCDEFGHIJ通学距離の偏差(km)第1主成分の係数 = (0.0017, 1.0000) 寄与率 99.9999%距離の偏差は -8〜+8 km。円の目盛りの上では、中央の線に重なって見えない= 第1主成分は「定期代」そのもの。距離は一切効いていない② 標準化したあと(平均0・標準偏差1にそろえる)標準化した定期代-2-2-1-1001122ABCDEFGHIJ標準化した通学距離第1主成分の係数 = (0.7071, 0.7071) 寄与率 96.13%太い実線=第1主成分の軸(最も散らばる向き)/破線=第2主成分の軸小さな点は、各人を第1主成分の軸に真上から落とした位置=主成分得点

上:単位のまま、縦横に同じ数値の目盛りを取って描いた図。定期代の目盛りが大きすぎて、10人の点は縦一列にしか見えず、第1主成分の軸(太い実線)はほぼ垂直になる。下:標準化したあと。点が右上がりに広がり、第1主成分の軸は45度になる。小さい点は、各人を第1主成分の軸へ真上から落とした位置=主成分得点。

5 Pythonで再現する

import numpy as np
x = np.array([2,4,5,6,8,12,14,15,16,18], dtype=float)                             # 通学距離 km
y = np.array([4000,6000,5000,7000,6000,9000,8000,11000,10000,14000], dtype=float) # 定期代 円
vx  = ((x-x.mean())**2).mean()
vy  = ((y-y.mean())**2).mean()
cxy = ((x-x.mean())*(y-y.mean())).mean()
r   = cxy/np.sqrt(vx*vy)
print(vx, vy, cxy, r)
# (A) 標準化しない = 分散共分散行列を固有値分解
S = np.array([[vx, cxy],[cxy, vy]])
w, V = np.linalg.eigh(S); i = np.argsort(w)[::-1]
print(w[i], w[i]/w.sum(), V[:, i][:, 0])
# (B) 標準化する = 相関行列を固有値分解
R = np.array([[1.0, r],[r, 1.0]])
w2, V2 = np.linalg.eigh(R); i2 = np.argsort(w2)[::-1]
print(w2[i2], w2[i2]/2, V2[:, i2][:, 0])

実行結果(2026年8月3日、Python 3・NumPyで実行して確認)。

29.0 8400000.0 14400.0 0.9226220933261874
[8.40002469e+06 4.31427304e+00] [9.99999486e-01 5.13602160e-07] [0.00171428 0.99999853]
[1.92262209 0.07737791] [0.96131105 0.03868895] [0.70710678 0.70710678]

6 3変数にすると「捨てる」が起きる

2変数だと捨てるものがありません。10人の3科目のデータにすると、初めて次元削減らしいことが起きます。

  A B C D E F G H I J
国語 58 64 72 50 78 68 60 74 84 52
英語 54 70 66 56 82 60 72 64 86 50
数学 66 56 70 60 64 80 58 68 74 54

相関係数は 国語と英語 0.8091、国語と数学 0.6228、英語と数学 0.2323。標準化して相関行列を固有値分解すると、こうなります。

  第1主成分 第2主成分 第3主成分
固有値 2.140924 0.776283 0.082793
寄与率 71.36% 25.88% 2.76%
累積寄与率 71.36% 97.24% 100%
国語の係数 0.6665 −0.0643 −0.7427
英語の係数 0.5704 −0.5975 0.5636
数学の係数 0.4800 0.7993 0.3616

第1主成分は3科目すべて+の係数=総合得点。第2主成分は数学が+0.80、英語が−0.60、国語がほぼ0=数学寄りか英語寄りかの対比。教材の5科目の例と同じ形が、3科目でも出ました。

第3主成分を捨てると、3次元が2次元になり、失うのは全体の2.76%です。10人を紙の上の点として描けるようになった代わりに、2.76%を捨てた。これが次元削減です。

なおカイザー基準(固有値1以上)で判断すると、採用するのは第1主成分だけ(1個)になります。累積寄与率で見れば2個。ここでも基準によって答えが変わります。

7 自分の計算を検算する4つの手掛かり

主成分分析は、結果が正しいかどうか見た目では分かりません。次の4つは必ず成り立つので、検算に使えます。

  1. 相関行列に基づくなら、固有値の合計=変数の数。上の3変数の例で 2.140924 + 0.776283 + 0.082793 = 3.000000
  2. 各主成分の係数の2乗和=1。0.6665² + 0.5704² + 0.4800² = 1.0000
  3. 主成分得点の分散=その主成分の固有値。第1主成分得点の分散は 2.140924
  4. 第1主成分と第2主成分の相関=0。実測で 0.000000000000

3変数以上の固有値分解は手計算では現実的ではありません。そこは計算機に任せ、出てきた答えをこの4つで検算する、という分担にしてください。

共通テストではこう出る

この講は共通テストへの接続がありません。情報Ⅱは共通テストの出題範囲外で、出題科目は「情報Ⅰ」のみだからです。実際、令和7年度・令和8年度の本試験と追試験の情報Ⅰ計4回分を全文検索しても、「主成分」は0件です。重要度Cはそういう意味です。

ただし、土台のほうは毎回出ています。同じ4回分を数えると、こうなります。

令和7 本試験 令和7 追試験 令和8 本試験 令和8 追試験
相関係数 6 16 4 12
散布図 16 13 6 1
回帰 0 5 7 3
主成分 0 0 0 0

文科省の動画スライドは、まさにこの順で主成分分析を導入しています。「情報Ⅰで学んだこと=データ→散布図→2変数の関係を探る」→「3変数なら3次元散布図」→「もっと増えたら相関行列や散布図行列」→「結局全体的には何を言えばいいの?」→「こんな時に役立つ1つの方法が、主成分分析」。

つまり共通テストで散布図と相関係数を読む練習をすることが、そのまま主成分分析の土台になっています。相関係数がすべて0のデータに主成分分析をかけても意味はありません(固有値が全部1になり、どの向きも同じだけ散らばる)。変数どうしが相関しているからこそ、まとめられる。第86講(相関)第84講(標準偏差)第88講(回帰直線)を身につけておいてください。この講で使った道具は、それ以上のものを1つも使っていません。

情報Ⅱではこうなる

この講自体が情報Ⅱの内容なので、ここでは情報Ⅰとの位置関係この先を整理します。

第109講で、情報Ⅰと情報Ⅱの関係は「①名前がつく ②使い道が変わる ③そこで終わる」の3つの型に分かれると書きました。主成分分析はこのどれでもない、もう少し特殊な位置にあります。学習指導要領解説にすら名前が無いのに、教員研修用教材だけが1学習ぶんを与えている。解説が名指しするのは回帰・分類・クラスタリングの3つだけ。主成分分析は、国の資料の中で「本文より前に出た」項目です。

そのうえで、情報Ⅰの道具がそのまま部品として使われます。

情報Ⅰでの姿 情報Ⅱ 学習14での姿
標準偏差・分散(第84講) 分散を最大化する軸を探す=主成分の定義そのもの
標準化・偏差値(第84講) 基準化。単位が違う変数を扱うときは必須
相関係数(第86講) 相関行列。基準化したデータの分散共分散行列と同じもの
散布図(第86講) 主成分得点の散布図で対象をポジショニングする
決定係数=回帰の寄与率(第88講) 同じ「寄与率」の語が主成分の寄与率に付け替わる
データ圧縮・非可逆(第36講) 次元削減。捨てる対象が「人が気づかない情報」から「弁別に効かない成分」へ
モデル化=捨てること(第59講) どこまで捨てるかを目的が決める、という同じ構造

表計算ソフトでも実行できます。教材はExcelの「ソルバー」(最適化機能)を使い、係数の2乗和を1とする制約のもとで主成分得点の分散を最大化させる手順を、図つきで示しています。Rを入れなくても、主成分がどこから来るのかは表計算ソフトで体験できる。教材が使うプログラミング言語はR(prcomp 関数。相関行列なら scale = T、共分散行列なら scale = F)です。

この先の講との関係。第114講のクラスタリング(k-means)は「対象をグループに分ける」道具で、次元削減とは目的が違います。ただし教材の学習16は、784次元の手書き数字データをユークリッド距離で扱う話をしていて、次元が高いこと自体が問題になる場面が出てきます。第115講のニューラルネットワーク、第116講の計算量へと、「高次元をどう扱うか」の話は続いていきます。

そして、この講で身についてほしい態度が1つだけあります。主成分分析の出力は数字の羅列で、そこには意味が書かれていません。名前を付けるのは人間です。「機械が答えを出した」と言えるのは、どの向きが最も散らばるかまで。それが何を意味するかは、いつでも人間の責任です。

まとめ

  • 次元削減とは情報を捨てること。国の教材が「寄与の小さい下位の方の主成分を捨て」と書き、動画スライドの題名は「データを圧縮して、関係を見よう!」
  • 軸は分散が最大の向きに取る。ばらつきが大きいことが情報量の大きさに対応する(教材原文)
  • 単位が違う変数を混ぜるなら基準化(標準化)が必須。自作データで、寄与率99.99995%の第1主成分が「定期代そのもの」になることを確認した
  • 2変数なら暗算できる:固有値は 1±r、寄与率は (1+r)÷2、係数は (0.7071, 0.7071)
  • 何%まで残すかは目的が決める。カイザー基準・70%・80%の3基準は、教材と同じ体力測定データに 1個/3個/4個 という別々の答えを出す
  • 主成分の名前は人間が後から付ける。機械は向きしか教えない
  • 語数調査:「主成分」=解説0/情報Ⅰ教材0/情報Ⅱ教材161。一方「圧縮」=解説10/情報Ⅰ教材50/情報Ⅱ教材0

シリーズ全体は『藤原進之介の最強120講義』目次およびカテゴリ一覧から、データの活用の入口は第95講(データの可視化)から読めます。

出典(すべて2026年8月3日に取得)

執筆:藤原進之介(数強塾グループ代表)

オンライン数学専門塾「数強塾」代表。累計3,500名以上の中高一貫校生を指導。東進ハイスクール・東進衛星予備校・代々木ゼミナールなど出講実績あり。情報Ⅰの参考書を複数執筆しており、KADOKAWA『ゼロから始める情報I』、Gakken『きめる!共通テスト 情報Ⅰ』などがあります。本記事は参考書『藤原進之介の最強120講義』第113講のWeb版です。

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