神奈川大学附属中学校 2026年度 算数の傾向と解答・解説【数強塾オリジナル】
神奈川大学附属中 2026年度 第1回(A日程)算数の傾向(公式公開資料にもとづくまとめ)
- 構成:大問6題です。大問1が計算4問、大問2が小問集合6問(各①②の枝問つき)、大問3以降が体積・面積・整数・速さの応用と続きます。前半の大問1・2で全体の設問数の多くを占めるため、序盤の正確さがそのまま得点に直結する形式といえます。
- 頻出分野:損益算・濃度・流水算・比・相当算といった割合と速さの基本、角度計算、円柱の容積と水面、面積比、整数の操作(数の性質)、そして通過算をグラフで読ませる問題です。公式が公開している「正答率・問いのねらい・講評」でも、これらが柱として並んでいます。
- 合否を分けた設問:公式公開の正答率によると、大問5(4)は受験者3.4%、大問6(3)は31.7%と低く、ここは差がつきにくい難問でした。むしろ大問2(4)②(受験者54.2%)や大問4(2)(同37.2%)のような「標準〜やや難」を取り切れたかが分かれ目だったと読み取れます。
- 時間配分の考え方:大問1・2の計10問は基本〜標準が中心のため、ここを速く正確に終えて、大問3〜6の応用に時間を残す組み立てが現実的です。公式講評でも「大問2を素早く確実に解く力が合格には必須」と述べられています。
問題の原本と正答率・講評は神奈川大学附属中学校の公式サイトで公開されています → 神奈川大学附属 入試結果(公式)
※以下の解答例はオンライン数学専門塾「数強塾」による独自作成です(学校公表の模範解答ではありません。この学校は算数の模範解答・解答用紙を公表していないため、正答率・講評のみを参考にしています)。全問を受験算数の正攻法と、方程式・全探索・シミュレーションなどの別解で二重検算し、両者が一致した内容のみを掲載しています。問題文・図は神奈川大学附属中学校公式サイト掲載のPDFをご参照ください。
大問1(計算) 答:(1) 70 (2) 51 (3) 2/3 (4) 7
整数・小数・分数のまじった四則計算が4問。(3)は空らんを求める逆算です。公式の正答率でも(3)(4)でやや差が出たと講評されています。
【📖大切な考え方】計算は「かっこの中 → かけ算・わり算 → たし算・ひき算」の順序を守り、小数は分数へ、帯分数は仮分数へそろえてから約分するのが定石です。0.375=3/8、0.34×125=42.5 のような「相性のよい積」を先に見抜くと、途中の数が小さく保てます。
【👀ここに注目】(2)は 1.7×5÷(1/8) を「1.7×5×8」と読みかえると 68 と暗算できます。(3)は式全体を「(かたまり)÷1と1/8=2」とみて、外側からはがすように戻すのが安全です。
解答:
(1) かっこの中 19×4−21×3=76−63=13。143÷13=11。81−11=70。
(2) 0.34×125×4=0.34×500=170。1.7×5÷(1/8)=8.5×8=68。0.051×1000=51。170−68−51=51。
(3) (…)÷(9/8)=2 より (…)=2×9/8=9/4。3と3/4−9/14−9/4=15/4−9/4−9/14=3/2−9/14=21/14−9/14=6/7。よって 1と2/7×□=6/7 で □=(6/7)÷(9/7)=2/3。
(4) 0.375×4と4/9=(3/8)×(40/9)=5/3。3.15÷3と1/2=3.15÷3.5=0.9。(5/3−0.9)×15=(23/30)×15=11.5。7.2−(3/5)×4と1/2=7.2−2.7=4.5。11.5−4.5=7。
【✅検算】各問を小数と分数の両方で計算し直し、(1)70・(2)51・(3)□に2/3を代入して左辺=2・(4)7 と、いずれも一致しました。
大問2(小問集合) 答:(1)①80個 ②120円引き (2)①9% ②200 (3)①時速3km ②4.2km (4)①11:21 ②28個 (5)①5/8 ②7200円 (6)①11度 ②38度
割合・速さ・比・角度の基本を横断する6問。ここを取り切れるかが合格ラインを左右した、と公式講評でも位置づけられています。
(1) 損益算:原価400円の品を仕入れ、原価の4割の利益を見込んで定価をつけたところ、半分は定価で、残り半分は値引きして売り切り、利益総額8000円(これが仕入れ総額の2割5分)になった、という設定です。
【👀ここに注目】「利益8000円=仕入れ総額の0.25」から仕入れ総額を先に確定させると、見通しがよくなります。
解答:仕入れ総額=8000÷0.25=32000円。個数=32000÷400=①80個。定価=400×1.4=560円。総売上=仕入れ32000+利益8000=40000円。定価で売れた40個の売上は 560×40=22400円なので、残り40個の売上は 40000−22400=17600円。1個あたり 17600÷40=440円で売れたことになり、値引き額は 560−440=②120円引き。
【✅検算】80個の仕入れ32000円、40個×560=22400円、40個×440=17600円、売上合計40000円、利益8000円、仕入れの0.25 と、すべて条件に合います。
(2) 濃度:8%と15%の食塩水を3:2で混ぜ、水を100g加えて食塩水A(600g)を作り、そのAを「ア」g捨てて同量の水を加えると6%になった、という設定です。
【📖大切な考え方】濃度は「食塩の重さ」を軸に追うのが定石です。水を加えても捨てても、食塩の量の増減だけを見れば式が1本で立ちます。
解答:水を加える前の食塩水は 600−100=500g。3:2なので 8%が300g、15%が200g。食塩は 300×0.08+200×0.15=24+30=54g。①濃度=54÷600=9%。次に、Aをアg捨てても残りの濃度は9%のまま。同量の水を足して600gに戻したとき6%(=食塩36g)になるので、(600−ア)×0.09=36 より 600−ア=400、②ア=200。
【✅検算】200g捨てると食塩は 400×0.09=36g、水200gを足して600gにすると 36÷600=6% で一致します。
(3) 流水算:上流Aから下流Bへ、船Pは12分、船Qは21分。静水での速さはPが時速18km、Qが時速9kmです。
【👀ここに注目】どちらも下りで同じ距離を進むので、(静水+流れ)×時間が等しいという1本の式にまとめられます。
解答:流れを時速c kmとすると、(18+c)×12=(9+c)×21(分どうしの比較でよい)。216+12c=189+21c より 27=9c、①c=時速3km。距離=(18+3)×(12/60)=21×0.2=②4.2km。
【✅検算】Qで確かめると (9+3)×(21/60)=12×0.35=4.2km。Pの4.2kmと一致します。
(4) 比:Aの袋は白:黒=7:9、Bの袋は白:黒=5:11。袋全体の個数の比はA:B=1:3です。
【📖大切な考え方】「それぞれの合計」をそろえてから足すのが比の合成の定石です。A・Bとも合計は 7+9=16、5+11=16 の16ずつですが、全体比A:B=1:3にそろえるには、Aを1組、Bを3組ぶんに拡大して数をそろえます。
解答:Aを(白7・黒9)、Bを3倍にして(白15・黒33)とすると、全体はA:B=16:48=1:3で条件に合います。白=7+15=22、黒=9+33=42。①白:黒=22:42=11:21。黒は白より 42−22=20 多く、これが実際には80個にあたるので、1つぶん=80÷20=4。はじめのAの白石=7×4=②28個。
【✅検算】4倍すると A(白28・黒36)、B(白60・黒132)。合計 白88・黒168 で 88:168=11:21、黒−白=80 とすべて一致します。
(5) 相当算:所持金の1/4で文房具、昼食で900円、残りの5/9を書店で使い、最初の所持金の5/18が残った、という設定です。
【👀ここに注目】書店で「残りの5/9」を使って「残りの4/9」が手元に残り、それが最初の5/18にあたる、という対応から逆算します。
解答:文房具と昼食のあとに残っていた金額を□とすると、その4/9が5/18(最初を1として)。□=(5/18)÷(4/9)=(5/18)×(9/4)=①5/8。一方 □は「最初の3/4から900円を引いた額」なので、5/8=3/4−(900÷最初)。差 3/4−5/8=1/8 が900円にあたるので、最初=900×8=②7200円。
【✅検算】7200円の1/4=1800円で文房具、残り5400円、昼食900円で4500円(=7200×5/8)、その5/9=2500円を書店で使い、残り2000円=7200×5/18。すべて一致します。
(6) 角度:ある三角形で、左下の角が60度、内部の交点にできる角が109度、頂点の角アは角イの3倍、右下の角ウと角エは等しい、という図です。
【📖大切な考え方】角度は「1つの三角形で内角の和180度を使う」のが基本です。求めたい角と与えられた角が、どの三角形に同居しているかを探すと、式が1本に決まります。
【👀ここに注目】頂点の角ア(角イの3倍)と、右下で等しい2角の一方(エ)と、内部の109度は、同じ1つの三角形の3つの内角として集まります。
解答:角イ=○とすると角ア=○×3で、三角形全体の頂角は○×4。大きな三角形の内角の和から、右下の角(ウ+エ)=180−60−○×4=120−○×4。ウ=エなので エ=(120−○×4)÷2=60−○×2。角ア・角エ・109度が集まる三角形で、○×3+(60−○×2)+109=180。整理すると ○+169=180、○=11。①角イ=11度。角ウ=エ=60−11×2=②38度。
【✅検算】角イ11・角ア33で頂角44度、大きな三角形は 60+44+76=180度。角ア・角エ・109の三角形も 33+38+109=180度でつじつまが合います。
【💡ポイントコラム】角度が入り組んだ図では「求めたい角と、数値の分かる角を、1つの三角形に集められないか」を先に探すのがコツです。線を余分に引かなくても、すでに図の中にある三角形をうまく選べば、内角の和180度の式1本で決まることが少なくありません。
大問3(体積と水面の高さ) 答:(1) 1140cm³ (2) 4600cm³
底面の半径10cm・高さ40cmの円柱形の容器(ふた付き)を横に寝かせると、水面の両はしA・BについてOA⊥OB(中心角90度)になった、という設定です。円周率は3.14。
【📖大切な考え方】横倒しの円柱は「円の断面積 × 長さ」で体積が出ます。水面は水平な弦なので、水の断面はその弦から下の弓形(おうぎ形−三角形)で求めるのが定石です。
【👀ここに注目】中心角90度は「四分円のおうぎ形」と「直角二等辺三角形」の組み合わせ。半径が等しいので三角形は 10×10÷2 と暗算できます。
解答:
(1) 水の断面=弦ABの下の弓形=おうぎ形(中心角90度)−三角形OAB=(10×10×3.14÷4)−(10×10÷2)=78.5−50=28.5cm²。体積=28.5×40=1140cm³。
(2) 立てて水面20cm、底面に1辺6cm・高さ15cmの直方体を置くと、20cm>15cmなので直方体は完全に水中です。水面下20cmまでの容積=10×10×3.14×20=6280cm³。うち直方体が 6×6×15=540cm³ を占めるので、水の量=6280−540=5740cm³。はじめの水は1140cm³なので、加えた水=5740−1140=4600cm³。
【✅検算】(1)を「半円3.14×100÷2=157」から中心角90度ぶんに直しても 157−… と合わせられ、弓形28.5・体積1140を確認。(2)も水5740+おもり540=6280=底面314×20 と一致します。
大問4(面積と面積比) 答:(1) 28cm (2) 2.5cm
5つの長方形を組み合わせた大きな長方形ABCDで、各辺上の点E・F・G・Hを結んだ四角形EFGHの面積が192.5cm²、内側の長方形IJKLの面積が35cm²、AF=CH、左辺AB=12.5cm、GC=4cm、という設定です。
【📖大切な考え方】四角形の各頂点が長方形の各辺上にあるとき、四すみにできる直角三角形を引いて面積を整理するのが定石です。公式講評でも「対角線が面積を2等分することに気づくと解きやすい」と述べられています。
【👀ここに注目】四すみの直角三角形を整理すると、四角形EFGHの面積は「大きな長方形ABCDの半分+内側の長方形IJKLの半分」に等しくなります。この関係は、EやFの左右の位置に関係なく成り立ちます。
解答:
(1) EFGHの面積=(ABCDの面積)÷2+(IJKLの面積)÷2 より、192.5=(ABCD)÷2+35÷2=(ABCD)÷2+17.5。よって ABCD÷2=175、ABCD=350cm²。AB=12.5cmなので AD=350÷12.5=28cm。
(2) 長方形EIHDと長方形FBGKは高さ(たての長さ)が共通なので、面積比=横の長さの比=(AD−AE):(AD−4)。これが3:4で AD=28だから (28−AE):24=3:4、28−AE=18、AE=10cm。内側の長方形IJKLの横=28−4−10=14cm、面積35cm²なので、KL(=IJKLのたて)=35÷14=2.5cm。
【✅検算】AE=10のとき、AF=CH=7.5cm、BF=5cmと定まり、EIHD=18×5=90、FBGK=24×5=120で90:120=3:4。EFGH=350÷2+35÷2=192.5 とすべて一致します。
【💡ポイントコラム】「各辺に頂点が1つずつ乗った四角形」は、四すみの直角三角形(長方形を対角線で半分にした形)に分けて考えるのが王道です。位置の細かい値が分からなくても、全体と内側の面積だけで答えが決まる——この身軽さに気づけると、図形の複雑さに飲まれずに済みます。
大問5(整数の操作) 答:(1) 6 (2) 3通り (3) 6通り (4) 76通り
2桁の整数nについて、各位の数を1桁になるまでかけ続けた値を[n]と表します(例:[34]は3×4=12→1×2=2で2)。(2)(3)が(4)の誘導になっている構成です。
【📖大切な考え方】この型は「1桁になるまで」を落ち着いて最後まで追うことと、逆に「その値になる2桁を数え上げる」ときに数の分解(積の作り方)を漏らさないことが要です。公式の正答率も(4)は3.4%と最難でした。
【👀ここに注目】かけ算の途中で2桁になったら、そこからさらにかけ続けます。(4)は「偶数が何通りか」を直接数えるより、「奇数になるのは何通りか」を数えて全体90通りから引くほうが速いといえます。
解答:
(1) [86]は 8×6=48→4×8=32→3×2=6。
(2) [n]=9 になるのは、各位の積が最終的に9になる場合。1桁で9を作れるのは 1×9、9×1、3×3 だけで、19・91・33 の3通り。
(3) [n]=5 になる2桁は、実際に全て調べると 15・35・51・53・57・75 の6通り。たとえば57は 5×7=35→3×5=15→1×5=5 と、途中2桁を経て5に至ります。
(4) [n]が偶数(0も含む)になる個数は、全90通りから「[n]が奇数になる個数」を引いて求めます。[n]が奇数になるには各位がどちらも奇数(1・3・5・7・9)である必要があり、その候補は5×5=25通り。ただし両方奇数でも、途中の積(奇数×奇数)が2桁になって偶数の位を含むと結果は偶数になります(例:37は3×7=21→2×1=2)。この例外は 37・39・55・59・73・77・79・93・95・97・99 の11通り。よって奇数になるのは 25−11=14通り、偶数は 90−14=76通り。
【✅検算】10〜99の全90個をコンピュータで一つずつ計算した全探索でも、[n]=9は3通り、=5は6通り、偶数は76通り(奇数14通り)と一致しました。
大問6(通過算・グラフの読み取り) 答:(1) 900m (2) 150 (3) 49秒後と125秒後
秒速12mの普通列車(A→B)と秒速18mの急行列車(B→A、長さは等しい)が、2160m離れたA・Bから同時に発車。間のトンネルに急行が先に入り始め、「2つの列車のトンネルの外に出ている部分の長さの和」の変化がグラフで示されています。
【📖大切な考え方】和が減る/増えるの「傾き(毎秒の変化量)」が、どの列車がトンネルに出入りしているかの手がかりです。グラフの折れ目の時刻を、列車の位置に翻訳して読むのが定石です。
【👀ここに注目】出発時(0秒)は両方トンネルの外なので、和540m=列車2両ぶん。したがって1両の長さは 540÷2=270m と最初に分かります。
解答:
(1) グラフが下がり始める40秒=急行が入口に到達した時刻。急行はBから 18×40=720m 進み、B側の入口はBから720mの地点。傾きが急になる45秒=普通が入口に到達した時刻で、普通はAから 12×45=540m 進みます。トンネルの長さ=2160−720−540=900m。
(2) 40〜45秒は急行だけが入り、和は毎秒18m減って、45秒で540−18×5=450。45秒からは普通も入り、両方で毎秒(18+12)=30m減。急行が完全に入り終わるのは後端が入口を通る 270÷18=15秒後=55秒で、和は 450−30×10=150。折れ目の値ア=150。
(3) 和が330mになる時刻を、減る局面と増える局面で探します。減る局面(45〜55秒、毎秒30m減)で 450−30×(t−45)=330 → t−45=4 → 49秒後。その後、両方が完全にトンネル内で和が0の時間帯を経て、列車が出てくる局面へ。急行が先に出て和が一度270mで一定になり、次に普通がB側から出る局面(毎秒12m増)で 270+12×(t−120)=330 → t−120=5 → 125秒後。答えは49秒後と125秒後。
【✅検算】列車の先頭・後尾の位置を1秒ごとに追うシミュレーションでも、トンネル900m・ア150・和が330mになるのは49秒後と125秒後、と一致しました。
【💡ポイントコラム】グラフの通過算では「折れ目=出入りの切りかわり」「傾き=関係している列車の速さ」と対応づけると、複雑な図でも1つずつ場面を確定できます。減る局面と増える局面の両方を調べる——『すべて答えなさい』の一言を見落とさない姿勢も、完答には欠かせません。
2026年度 第1回から学ぶ教訓
今年のセットは、前半の大問1・2という「基本の10問」を素早く正確に取り切れるかが土台で、その上で大問4の面積、大問5・6の応用にどこまで手を伸ばせるかが上積みになった構成でした。公式の講評も「大問2を確実に」と述べており、派手な難問より、割合・速さ・比の基本を取りこぼさない安定感が問われています。過去問演習では、正解・不正解の確認で終わらせず、「基本問題を何分で・何ミスで抜けられたか」を記録していくことが、神奈川大学附属対策として効果的だと考えられます。
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本ページが扱う入試問題の著作権は 神奈川大学附属中学校 に帰属します。出典:神奈川大学附属中学校 2026年度 入学試験問題「算数」。
掲載しているのは、受験生の学習支援を目的として数強塾が独自に作成した解答・解説です。学校が公表した公式解答ではありません(一般的な解答例と照合した場合は本文中にその旨を明記しています)。問題文の引用は解法の説明に必要な最小限にとどめています。
掲載内容について権利者の方からご連絡がある場合は、お問い合わせより速やかに対応いたします。
正答率が公開されている試験の読み方——「取るべき問題」を計算で決める
この学校は、問題だけでなく設問ごとの正答率と講評まで公開しています。これは受験生にとって、かなり珍しい資産です。ふつうは「この問題は難しかった」が感想でしかないところを、数字で確かめられるのですから。
上の解説でもその正答率を引いて、差がついた設問を特定しました。しかし正答率をどう使えば得点が増えるのかは、まだ書いていません。ここに自作の類題を4問置きます。数値はすべて数強塾が練習用に作ったもので、実際の正答率でも入試問題でもありません。
4問に共通する軸は「1問の価値は、配点だけでは決まらない」ことです。同じ10点でも、みんなが取る10点とみんなが落とす10点では、意味がまったく違います。それを人数と点数で計算します。
類題1(正答率を人数に直す)
問題 受験者は500人です。
(1) 正答率4%の問題を正解した人は何人ですか。
(2) この問題を正解すると、正解できなかった何人に差をつけられますか。
(3) 正答率55%の問題を落とすと、何人に差をつけられますか。
解答
(1) (人)。
(2) (人)に差をつけられます。
(3) (人)に差をつけられます。
数だけ見ると (2) の480人のほうが大きく、難問を取るほうが得に見えます。ところがここには書かれていない条件があります。(2) が起きる確率は4%、(3) が起きる確率は55%。めったに起きないことと、半分以上の確率で起きること——気にすべきなのは後者です。
類題2(期待得点:正答率 × 配点)
問題 配点6点の問題が3つあり、正答率はそれぞれ 80%、50%、5% です。ある受験生の実力が、ちょうど正答率どおりだとします。
(1) この3問から得られる点数は、平均して何点ですか。
(2) 5%の問題を最初から捨て、その時間で50%の問題を確実に取れるようにしたら、平均して何点になりますか。
解答(1)
(点)。
解答(2)
(点)。2.7点増えました。
| 80%の問題 | 50%の問題 | 5%の問題 | 合計 | |
|---|---|---|---|---|
| そのまま | 4.8点 | 3点 | 0.3点 | 8.1点 |
| 5%を捨てて50%を確実に | 4.8点 | 6点 | 0点 | 10.8点 |
捨てた問題からは0.3点しか失っていません。正答率5%の問題は、平均すると6点満点のうち0.3点しかくれない——これが、正答率が教えてくれるいちばん冷たい事実です。一方、50%の問題を確実にすると3点まるごと増えます。「捨てる」の反対語は「あきらめない」ではなく、「別の問題を確実にする」です。
類題3(1分あたり何点か)
問題 次の2問があります。
問A:配点6点。5分あれば確実に解ける。
問B:配点8点。12分かかり、解ける見込みは4回に1回。
それぞれ「1分あたり何点」になりますか。また、どちらが何倍効率がよいですか。
解答
問A:(点/分)。
問B:平均して取れる点は (点)。これを12分で割って 、およそ 0.17(点/分)。
より、問Aは問Bの約7倍効率がよいことになります。
| 配点 | 時間 | 取れる見込み | 平均の得点 | 1分あたり | |
|---|---|---|---|---|---|
| 問A | 6点 | 5分 | 確実 | 6点 | 1.2点 |
| 問B | 8点 | 12分 | 4回に1回 | 2点 | 約0.17点 |
配点だけ見れば 問Bのほうが2点高いのに、実際の価値は7分の1以下でした。差を生んでいるのは「時間」と「見込み」の2つです。難しい問題は、点が高いから危険なのではなく、時間を長く奪ったうえに、たいてい取れないから危険なのです。時間の配り方そのものは、配点から割り出す方法もあります。
類題4(合格ラインに、どこまで取れば届くか)
問題 100点満点、合格ラインは60点の試験があります。10問の配点と正答率は次のとおりです(練習用の自作データです)。
| 問 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 配点 | 8 | 8 | 10 | 10 | 12 | 12 | 10 | 10 | 10 | 10 |
| 正答率 | 92% | 85% | 78% | 64% | 55% | 41% | 30% | 22% | 9% | 4% |
(1) 正答率の高い順に取っていくと、何問目で60点に届きますか。
(2) 正答率85%の問題を1つ落としてしまいました。取り返すには、どの問題を取る必要がありますか。
(3) (2)から分かることを、一言で書きなさい。
解答(1)
正答率の高い順(表の左から順)に足していきます。
| ここまで取る | 問1 | 問2 | 問3 | 問4 | 問5 | 問6 | 問7 | 問8 | 問9 | 問10 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 累積の点数 | 8 | 16 | 26 | 36 | 48 | 60 | 70 | 80 | 90 | 100 |
| 正答率 | 92% | 85% | 78% | 64% | 55% | 41% | 30% | 22% | 9% | 4% |
6問目で、ちょうど60点。つまり正答率41%以上の問題をすべて取れば合格で、正答率30%以下の4問(合計40点)は1問も要りません。
解答(2)
問2(8点)を落とすと (点)。60点に戻すには8点以上が必要ですが、残っているのはすべて10点の問題です。よって問7(正答率30%)から問10(正答率4%)のどれか1つを取らなければなりません。
解答(3)
85%の1問を落とすと、30%以下の1問を取らないと埋め合わせできない。
ここがこの4問の結論です。みんなが取る1問を落とすことは、みんなが落とす1問を取ることでしか埋められません。そして後者は、定義からいってめったに起きません。難問を1つ拾う練習より、標準問題を1つも落とさない練習のほうが、合格に近い——正答率という数字は、それを感情ぬきで示してくれます。この試験の講評でも「前半の大問を素早く確実に解く力が必須」と述べられていました。合格ラインの実際の数字は中学受験は何割取れば受かるのか|24校の合格ラインは49.4〜78.0%、同じ学校でも19.6ポイント動くに並べてあります。
まとめ:正答率は「難しさ」ではなく「価値」を教える
| 正答率 | その問題の性格 | 落としたとき | 取れたとき | どうするか |
|---|---|---|---|---|
| 80%以上 | ほぼ全員が取る | 致命傷 | 差はつかない | 絶対に落とさない |
| 40〜80% | ここで合否が決まる | 痛い | 大きい | 時間を厚く配る |
| 20〜40% | 解ければ大きい | ほぼ無害 | 大きい | 余った時間で |
| 20%未満 | ほぼ全員が落とす | 無害 | 非常に大きいが、めったに起きない | 最後に手を付ける |
「難しい問題ほど価値が高い」は、半分だけ正しい話です。取れたときの価値は高いが、取れる見込みが低いので、平均するとほとんど価値がない。類題2で見たとおり、正答率5%の6点は、平均すると0.3点にしかなりません。
注意してほしいのは、これは「難問を解けるようにならなくてよい」という話ではないことです。ふだんの勉強では難問に取り組むべきです。ここで言っているのは試験当日の45分・50分を、どう配るかだけ。学ぶときの優先順位と、点を取るときの優先順位は別です。
正答率が公開されている試験の、いちばん良い使い方
- まず、正答率を見ないで解きます。時間も本番どおりに計ります。
- 丸付けのあとで、自分の○×の横に正答率を書き写します。これで答案が2列になります。
- 「×なのに正答率が高い」設問だけを集めます。ここが、いま最も点が増える場所です。逆に「×で正答率も低い」設問は、今日のところは印を付けて先に進んでかまいません。
この作業のよいところは、できなかった問題の中に順番がつくことです。全部の×を同じ重さで反省すると、いちばん直しやすい失点が、いちばん難しい失点に埋もれてしまいます。正答率は、直す順番を決めてくれる数字です。
もうひとつ。正答率の高い設問を落とした原因は、たいてい「解き方が分からなかった」ではありません。写しまちがい、単位のつけ忘れ、約分し忘れ、時間切れで戻れなかった——このどれかです。原因を「難しかった」で片づけないことが、この列を作るいちばんの目的です。
前半の計算を確実にする練習は中学受験算数 計算の特訓道場|分数・小数・計算の工夫・逆算30題と全解説、割合の扱いは中学受験算数 割合と比の特訓道場|売買損益・食塩水30題と全解説にあります。分野ごとの型の一覧は特訓道場 総索引|小学生から数学IIIまで全102回・3,051題【数強塾】をどうぞ。
他校の傾向は中学受験 算数 過去問の傾向と解説 学校別まとめ|数強塾にまとめてあります。中学に入ってからの範囲は中1数学の要点辞典|全7単元の公式・定石・つまずきポイントと例題35問、学年をまたいだ全体像は数学の要点辞典|中1から数学IIIまで 全7ページ・57単元を無料公開にあります。
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