中学受験・算数

慶應義塾普通部 算数の傾向と対策|数強塾

数強塾のプロ講師陣

今日の一問
 50円玉、10円玉、5円玉がそれぞれたくさんあります。これらを使って、ちょうど100円を支払います。
(1) 支払い方法は全部で何通りありますか。ただし、使わない硬貨があってもかまいません(0枚でもよい)。
(2) (1)のうち、3種類の硬貨をすべて1枚以上使う支払い方法は何通りありますか。
——さて、どこから手をつける?
数強塾オリジナルの類題です。答えと考え方は、この記事の中で解説します。

慶應義塾普通部 算数の傾向と対策【数強塾オリジナル】

オンライン数学専門塾 数強塾|プロ講師のみ・完全1対1指導・中高一貫校対応

慶應義塾普通部(神奈川県横浜市・日吉)は、慶應義塾が設置する男子中学校のひとつで、毎年多くの受験生が集まる難関校です。この記事では、学校が公表している募集の範囲や、一般に広く知られている公開情報をもとに算数の傾向を慎重に整理したうえで、オンライン数学専門塾「数強塾」が独自に作成したオリジナル類題4問を、考え方・解答・検算つきで掲載します。実在の過去問を書き写したものは一切なく、公開情報から知られる一般的な方向づけをふまえて数強塾が新しく作った問題です。答えはすべて、正攻法とは別のもう一つの方法による二重検算で一致を確認しています。

公開情報からわかる入試のポイント

  • 慶應義塾普通部は男子のみを募集する中学校で、入学試験は例年、学科試験(国語・算数・理科・社会)を中心に行われることが一般に知られています。学科の合格者を対象に、体育(実技)や面接を含む二次的な選考が実施されるという構成が広く案内されています。
  • 算数は他教科と並ぶ主要科目のひとつで、合否を左右する重みのある教科と考えられます。出題は特定の一分野に偏らず、受験算数の標準的な分野を幅広く問う方向と受け止められています。
  • 難関校らしく、基礎の正確さに加えて、問題文を丁寧に読み取り筋道を立てて考える力が求められる傾向にあると言われています。奇をてらった知識よりも、身につけた技術を正しく組み合わせられるかがポイントです。

※算数の試験時間・配点・満点、および各年度の詳細は、学校公式サイトの掲載範囲では本ページ作成時に確認できなかったため、数値の断定は避け、本文には具体的な数字を記載していません。慶應義塾普通部は過去問題を公式には公開していない可能性が高く、最新かつ正確な情報は必ず学校公式サイトの入学試験ページ(慶應義塾普通部 受験をお考えの方へ)および募集要項でご確認ください。

※本ページは公開情報にもとづく傾向分析と、数強塾オリジナルの自作類題による対策です。実際の問題文・図は学校公式サイトでご確認ください。

出題分野の傾向

ここでの記述は、特定年度の問題の転載や解説ではなく、一般に知られている公開情報から慎重に読み取れる方向づけの整理です。断定は避け、学習の道しるべとしてお読みください。

  • 分野をまたいで幅広く出る前提で備える:難関男子校の算数は、計算・数の性質・場合の数・割合や比・速さ・平面図形・立体図形など、受験算数の主要分野から広く出題されるのが一般的です。特定分野だけを深追いするより、どの分野も穴なく標準レベルまで仕上げておくことが、安定した得点につながります。
  • 問題文を正確に読み取る力:条件がいくつも重なる問題では、何が分かっていて、何を求めるのかを取り違えないことが第一歩です。図や表、線分図を自分でかき起こし、条件を目に見える形に翻訳する習慣が、読み違いによる失点を防ぎます。
  • 手際よく正確に計算する力:難関校では、方針が立っても最後まで正確に計算し切れるかが問われます。途中式をていねいに残しつつ、速く正確に処理する——この両立を、日々の計算練習の中で鍛えておきたいところです。
  • 身近な題材・思考力を問う設定への対応:暗記した公式をそのまま当てはめるだけでなく、その場で条件を整理して考えるタイプの問題にも触れておくと安心です。答えを出すだけでなく、「なぜその式になるのか」を自分の言葉で説明できる状態を目指しましょう。

オリジナル類題で対策

※以下の類題4問は、上記の傾向をふまえて数強塾が独自に作成したオリジナル問題です。実在の過去問の複製や数値替えではありません。全問、受験算数の正攻法で解いたうえで、独立した別の方法による二重検算を行い、答えの一致を確認しています。図がなくても読み解けるよう、状況は文章で説明しています。

類題1(場合の数)

【問題】 50円玉、10円玉、5円玉がそれぞれたくさんあります。これらを使って、ちょうど100円を支払います。
(1) 支払い方法は全部で何通りありますか。ただし、使わない硬貨があってもかまいません(0枚でもよい)。
(2) (1)のうち、3種類の硬貨をすべて1枚以上使う支払い方法は何通りありますか。

【方針】 「何通りか」を数える問題では、数の多い硬貨から枚数を決めて、場合分けするのが定石です。ここでは50円玉の枚数で場合分けします。50円玉を決めると残りの金額が決まり、それを10円玉と5円玉で作る方法を数えればよいので、見通しよく数え上げられます。数え落としや重複を防ぐため、必ず順序よく並べて数えるのがコツです。

【解答】 50円玉の枚数で場合分けします。
・50円玉が2枚:これで100円ちょうど。10円玉・5円玉は0枚。1通り
・50円玉が1枚:残り50円を10円玉と5円玉で作ります。10円玉を□枚使うと、残り(50−10×□)円を5円玉で作れます。□は0枚から5枚までの6通り、いずれも5円玉の枚数がぴったり決まります。6通り
・50円玉が0枚:残り100円を10円玉と5円玉で作ります。10円玉を□枚使うと、□は0枚から10枚までの11通り、いずれも5円玉の枚数が決まります。11通り
よって(1)は 1+6+11=18通りです。
(2) 3種類すべてを1枚以上使うので、50円玉は1枚に決まります(2枚だと100円ちょうどで他が使えず、0枚だと50円玉を使えません)。残り50円を、10円玉1枚以上・5円玉1枚以上で作ります。10円玉を□枚(□は1以上)使うと5円玉は(50−10×□)÷5枚で、これが1枚以上になるのは 50−10×□≧5、つまり □が1枚から4枚までのとき。4通りです。

【別解による検算】 (1)を、すべて5円を単位にして確かめます。100円は5円が20個分、50円玉は5円が10個分、10円玉は5円が2個分です。「10個玉(50円)をa枚、2個玉(10円)をb枚、1個玉(5円)をc枚」で合計20個をつくる方法の数と同じで、10×a+2×b+c=20(cは0以上)を満たす(a,b)の組を数えます。a=2のとき残り0で b=0の1通り、a=1のとき 2×b≦10 で b=0〜5の6通り、a=0のとき 2×b≦20 で b=0〜10の11通り。合計 1+6+11=18通りで一致しました。
(2)は具体的に書き出して確認します。50円玉1枚のもとで(10円玉,5円玉)=(1枚,8枚)(2枚,6枚)(3枚,4枚)(4枚,2枚)の4通り。いずれも金額は 50+10×□+5×(残り)=100円になっており、正攻法と一致します。

類題2(割合・相当算)

【問題】 ある物語の本を読みます。1日目に全体の4分の1を読み、2日目に「残り」の3分の1を読み、3日目に「そのまた残り」の5分の2を読んだところ、まだ54ページ残っていました。この本は全部で何ページありますか。

【方針】 「残りの◯分の△」という表現が続く相当算では、全体を1として、毎日どれだけの割合が残るかを順にかけ算していくのが確実です。「読んだ割合」より「残った割合」を追いかけるほうが、かけ算だけで進められて間違えにくくなります。最後に残った割合が54ページにあたる、という関係から全体を逆算します。

【解答】 全体を1とします。
・1日目に4分の1を読むので、残りは 1−1/4=3/4
・2日目に「残りの3分の1」を読むので、残りは その 1−1/3=2/3 倍。3/4×2/3=1/2
・3日目に「残りの5分の2」を読むので、残りは その 1−2/5=3/5 倍。1/2×3/5=3/10
この 3/10 が54ページにあたります。よって全体は 54÷3/10=54×10/3=180ページです。

【別解による検算】 全体を180ページとして、実際にページ数をたどって確かめます。1日目に読むのは 180×1/4=45ページ、残り135ページ。2日目に読むのは 135×1/3=45ページ、残り90ページ。3日目に読むのは 90×2/5=36ページ、残り 90−36=54ページ。問題の条件どおり54ページ残ったので、180ページで正しいことが確かめられました。

類題3(速さ・流水算)

【問題】 静水(流れのないところ)での速さが分速80mの船があります。この船で、ある川の上流のA地点と下流のB地点の間を往復したところ、A地点からB地点まで下るのに12分、B地点からA地点まで上るのに20分かかりました。川の流れの速さは一定とします。
(1) 川の流れの速さは分速何mですか。
(2) A地点とB地点の間の距離は何mですか。

【方針】 流水算では、下りの速さ=静水の速さ+流れの速さ、上りの速さ=静水の速さ−流れの速さが基本です。往復で進む距離(AB間)は同じなので、「下りの速さ×下りの時間=上りの速さ×上りの時間」という等式が作れます。ここから流れの速さを求め、あらためて距離を計算します。

【解答】 流れの速さを分速△mとします。下りの速さは(80+△)m/分、上りの速さは(80−△)m/分です。AB間の距離は下りでも上りでも同じなので、
(80+△)×12=(80−△)×20
960+12×△=1600−20×△
12×△+20×△=1600−960
32×△=640 より △=20
よって(1) 川の流れの速さは分速20mです。
(2) 下りの速さは 80+20=100(m/分)なので、AB間の距離は 100×12=1200mです。

【別解による検算】 求めた流れの速さ20m/分を、上りの側から確かめます。上りの速さは 80−20=60(m/分)で、20分かかるので距離は 60×20=1200m。下りから求めた1200mと一致します。
さらに、時間の比からも確かめられます。同じ距離を進むとき、かかる時間は速さに反比例します。下りと上りの時間の比は 12:20=3:5 なので、下りと上りの速さの比は 5:3。静水の速さ80mは、下りの速さと上りの速さのちょうど真ん中(平均)なので、比の 5 と 3 の平均は 4。この 4 が80mにあたるので、比の1は20m。よって流れの速さ(速さの比では 5 と 3 の差の半分=1)は分速20m。正攻法と一致しました。

類題4(平面図形・相似と面積)

【問題】 上底ADと下底BCが平行な台形ABCDがあります。頂点は左上をA、右上をD、左下をB、右下をCとし、AD=6cm、BC=10cmです。対角線ACとBDが交わる点をPとします。三角形APDの面積が18cm²のとき、台形ABCD全体の面積を求めなさい。

【方針】 台形の対角線が作る4つの三角形は、相似と「底辺の比」を使えばすべて面積が求められます。ADとBCが平行なので、三角形APDと三角形CPBは相似で、相似比は AD:BC=6:10=3:5。ここから対角線が点Pで分けられる比(AP:PC=DP:PB=3:5)が分かり、高さが共通で底辺だけが違う三角形どうしは、面積が底辺の比になることを使って4つの三角形をつなげます。

【解答】 ADとBCが平行なので、三角形APDと三角形CPBは相似で、相似比は 6:10=3:5。したがって、対角線は点Pで AP:PC=DP:PB=3:5 に分かれます。
・三角形APDと三角形CPBの面積の比は、相似比の2乗で 3×3:5×5=9:25。三角形APDが18cm²なので、三角形CPBは 18×25/9=50cm²
・三角形APDと三角形APBは、頂点Aを共有し、底辺をそれぞれPD、PBとみると高さが共通です。よって面積の比は PD:PB=3:5。三角形APBは 18×5/3=30cm²
・同じように、三角形DPCも三角形APDと高さを共有し(頂点Dを共有、底辺PA:PC=3:5)、面積は 18×5/3=30cm²
台形全体は、この4つの三角形の合計なので 18+50+30+30=128cm²です。

【別解による検算】 台形の面積公式から確かめます。対角線の交点Pの高さに注目すると、三角形CPBと三角形APDの相似(比3:5)から、Pは台形の高さを 下底側:上底側=5:3 に分けます。台形全体の高さを□cmとすると、三角形APDの高さ(上底ADからPまで)は □×3/8。三角形APDの面積は 6×(□×3/8)÷2=18/16×□=9/8×□。これが18cm²なので □=16cm。
よって台形の面積は(上底+下底)×高さ÷2=(6+10)×16÷2=16×16÷2=128cm²。4つの三角形を足す方法と一致しました。

学習アドバイス

【時期別】

  • 6年生の夏まで:計算力と各分野の基本を、穴なく仕上げることが最優先です。難関男子校の算数は幅広い分野から出題される前提で、割合・比・速さ・平面図形・立体図形・数の性質・場合の数を、この時期に一通り標準レベルまで正確にしておきましょう。計算は毎日、時間を計って正確さを鍛えます。
  • 秋(9〜11月):条件の多い問題を、線分図・表・図に整理して解く練習を重ねる時期です。過去問演習では、問題文を読み取る精度と、最後まで正確に計算し切る力を意識してください。慶應義塾普通部の過去問は公式には公開されていない可能性が高いため、演習は市販の総合的な問題集や、幅広い分野を扱う難関校向け教材を活用し、特定年度の数値をうのみにしないようにしましょう。
  • 直前期(12月〜1月):新しい教材を増やすより、これまでの問題を反復し、精度と再現性を高める時期です。本記事の【別解による検算】のように、別のルートで自分の答えを確かめる習慣を試験運びに組み込むと、本番での取りこぼしを減らせます。取れる問題を確実に取り切り、難しい問題にも考えた跡(途中式)を残す姿勢を、演習の中で体に入れておきましょう。

【分野別】

  • 場合の数:数の多いものから順に場合分けし、順序よく数え上げる姿勢(類題1)が基本です。数え落としや重複を防ぐため、書き出しと計算の両方で確かめられるようにしておきましょう。
  • 割合・比:「残りの◯分の△」が続く相当算は、残る割合をかけ算でつないでいく考え方(類題2)が武器になります。全体を1とおく、あるいは具体的な数でたどり直す、の両方で確認できると安心です。
  • 速さ:流水算は「下り=静水+流れ/上り=静水−流れ」を土台に、同じ距離という条件から式を立てます(類題3)。時間の比と速さの比が逆になることも、検算に使える大切な道具です。
  • 平面図形:平行線が生む相似と、高さが共通の三角形の「底辺の比=面積の比」を組み合わせる発想(類題4)は、図形の応用で頻繁に使います。補助線や比の置き方を、言葉で説明できるようにしておきましょう。

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【補講】往復の平均の速さは、静水の速さより遅い

類題3の船は、静水で分速 \(80\)m。下りが \(12\) 分、上りが \(20\) 分でした。往復 \(2400\)m を \(32\) 分で進んだことになります。\(2400 \div 32 = 75\)。静水の \(80\) より遅い。流れは行きに助けて帰りにじゃまをするので、行って帰れば差し引きゼロのはずなのに、そうならない。その理由を数で押さえます。

① 静水の速さは、上りと下りの「真ん中」

下りは \(80+20 = 100\)、上りは \(80-20 = 60\)。この \(2\) つから

求めるもの
静水の速さ \((100+60) \div 2\) \(80\)
流れの速さ \((100-60) \div 2\) \(20\)

和と差から \(2\) つの数を出す、いわゆる和差算です(なぜ和差算では「和+差」を2で割るのか)。静水の速さは、上りと下りをふつうに平均した値。ここは記事のとおりで、まちがいありません。

② ところが、往復の平均の速さは \(80\) にならない

「速さの平均が \(80\) なのだから、往復の平均も \(80\)」——と思いたくなりますが、実際は \(75\) です。

理由は時間の長さがちがうことにあります。下りの \(100\) で進むのは \(12\) 分だけ、上りの \(60\) で進むのは \(20\) 分。遅いほうに、長い時間を使っています。

速さ かかる時間 時間の割合
下り \(100\) \(12\) 分 \(37.5\%\)
上り \(60\) \(20\) 分 \(62.5\%\)

平均を出すなら、この時間の割合で重みをつけるべきです。\(100 \times 0.375 + 60 \times 0.625 = 37.5 + 37.5 = 75\)。たしかに \(75\) になります。

「速さの平均」と「平均の速さ」は別のものです。前者は \(2\) つの数をならしただけ、後者は「全体の道のり \(\div\) 全体の時間」。速さは時間で重みづけしないと平均できませんなぜ平均の速さは2つの速さの平均ではないのか)。流水算では、この \(2\) つが同じ問題文の中に出てくるので、とくに混ざりやすいところです。

③ どれだけ遅くなるかは、流れの \(2\) 乗で決まる

静水の速さを \(v\)、流れを \(u\)、片道を \(L\) とします。下りに \(\dfrac{L}{v+u}\)、上りに \(\dfrac{L}{v-u}\) かかるので

往復の平均の速さ \(= \dfrac{2L}{\dfrac{L}{v+u}+\dfrac{L}{v-u}} = \dfrac{(v+u)(v-u)}{v} = v – \dfrac{u^2}{v}\)

静水の速さから \(\dfrac{u^2}{v}\) だけ引かれます。記事の場合は \(80 – \dfrac{400}{80} = 80 – 5 = 75\)。ぴったり合います。

流れ \(u\) \(0\) \(10\) \(20\) \(40\) \(60\) \(79\)
下り \(80\) \(90\) \(100\) \(120\) \(140\) \(159\)
上り \(80\) \(70\) \(60\) \(40\) \(20\) \(1\)
往復の平均 \(80\) \(78.75\) \(75\) \(60\) \(35\) \(1.99\)
遅くなる分 \(0\) \(1.25\) \(5\) \(20\) \(45\) \(78.01\)

いちばん下の行を見てください。流れが \(10 \to 20\) と \(2\) 倍になると、遅くなる分は \(1.25 \to 5\) で \(4\) 倍。\(20 \to 40\) でも \(5 \to 20\) でやはり \(4\) 倍。流れが \(2\) 乗で効いているからです。

逆に言えば、流れが弱いうちは、ほとんど損をしません。流れ \(10\) なら往復の平均は \(78.75\) で、静水の \(80\) から \(1.6\%\) 落ちるだけ。ところが流れが \(40\)(静水の半分)になると \(60\) まで落ち、\(25\%\) の損になります。

④ \(75\) の正体は「調和平均」

下り \(100\)、上り \(60\) から作れる平均を並べます。

平均の種類 この問題での意味
調和平均 \(\dfrac{2}{\frac1{100}+\frac1{60}}\) \(75\) 往復の平均の速さ
相乗平均 \(\sqrt{100 \times 60}\) \(77.46\cdots\)
相加平均 \(\dfrac{100+60}{2}\) \(80\) 静水の速さ

いちばん小さいのが調和平均、いちばん大きいのが相加平均。この大小関係はいつでも成り立ちます(なぜ相加平均は相乗平均以上なのか)。だから往復の平均の速さは、静水の速さを絶対にこえません。

等号になるのは \(2\) つの数が等しいとき、つまり流れが \(0\) のときだけ。③の表の左はしがそれで、往復の平均も \(80\) でした。流れがある以上、往復すれば必ず損をします。

「行きに得したぶん、帰りに損して差し引きゼロ」——これがまちがいの正体です。得しているのは短い時間だけ、損しているのは長い時間。同じ道のりを進むとき、速さが上がると時間は反比例で減ります(なぜ反比例ではxyが一定になるのか)。速さは足し引きで対称でも、時間は対称になりません。

⑤ 流れが静水の速さに追いつくと、上れなくなる

③の式 \(v – \dfrac{u^2}{v}\) に \(u = v\) を入れると \(0\)。実際、上りの速さ \(v-u\) が \(0\) になるので、船は進みません。

静水 \(80\) に対する流れ 上りの速さ どうなるか
\(75\) \(5\) とても遅いが上れる(\(1200\)m に \(240\) 分)
\(80\) \(0\) その場から動けない
\(85\) \(-5\) 下流へ流される

③の表のいちばん右、流れ \(79\) のときは上りが分速 \(1\)m。\(1200\)m 上るのに \(1200\) 分(\(20\) 時間)かかります。往復の平均は \(1.99\) で、ほとんど進んでいないのと同じ。流れが静水の速さに近づくほど、上りの時間が急に伸びます。

これも反比例です。上りの速さ \(v-u\) が \(0\) に近づくと、\(\dfrac{L}{v-u}\) はいくらでも大きくなる。「流れが少し強くなっただけ」でも、上りに近い船では致命的になりますなぜ速さ=距離÷時間なのか)。

記事の別解にあった「時間の比 \(12:20 = 3:5\) だから速さの比は \(5:3\)」も、同じ反比例の言いかえです(なぜ比は同じ数を掛けても変わらないのか)。距離が同じなら、速さと時間は反比例。比の \(5\) と \(3\) の平均が \(4\)、差の半分が \(1\) で、\(4\) が \(80\) にあたるから \(1\) は \(20\)——①の和差算を、比のままやっているだけです(検算のしかた7つ|答えを出したあと30秒で間違いを見つける技術)。

数強塾オリジナル類題(4問)

すべて当塾で作成し、答えは時間から直接計算する方法と、③の \(v – \frac{u^2}{v}\) の両方で照合してあります。流れの速さはどれも一定とします。

類題1 静水 \(100\)・流れ \(25\)

静水での速さが分速 \(100\)m の船が、片道 \(1500\)m の川を往復します。流れは分速 \(25\)m です。(1) 下りと上りにかかる時間をそれぞれ求めなさい。(2) 往復の平均の速さを求めなさい。(3) ③の式でも確かめなさい。

答え

(1) 下りは \(100+25 = 125\)(m \(/\) 分)で \(1500 \div 125 = \mathbf{12}\) 分。上りは \(100-25 = 75\) で \(1500 \div 75 = \mathbf{20}\) 分。(2) 往復 \(3000\)m を \(32\) 分で進むので \(3000 \div 32 = \mathbf{93.75}\)(m \(/\) 分)。(3) \(100 – \dfrac{25^2}{100} = 100 – 6.25 = 93.75\)。一致します。

記事(静水 \(80\)・流れ \(20\))と時間が同じ \(12\) 分・\(20\) 分になりました。速さも流れも \(1.25\) 倍、距離も \(1.25\) 倍だからです。往復の平均も \(75 \times 1.25 = 93.75\) で、きちんと \(1.25\) 倍。すべてを同じ倍率にすれば、時間はまったく変わりません。

類題2 流れを \(2\) 倍にすると

記事の船(静水 \(80\)、片道 \(1200\)m)で、流れが \(40\) になった日を考えます。(1) 下りと上りの時間を求めなさい。(2) 往復の平均の速さを求めなさい。(3) 流れが \(20\) のときとくらべ、遅くなる分は何倍になりましたか。

答え

(1) 下り \(120\) で \(1200 \div 120 = \mathbf{10}\) 分、上り \(40\) で \(1200 \div 40 = \mathbf{30}\) 分。(2) \(2400 \div 40 = \mathbf{60}\)(m \(/\) 分)。(3) 流れ \(20\) のときは \(80-75 = 5\)、流れ \(40\) では \(80-60 = 20\)。\(4\) 倍です。

(3)は③の \(\dfrac{u^2}{v}\) のとおり。流れが \(2\) 倍なら、遅くなる分は \(2^2 = 4\) 倍。下りが \(2\) 分しか速くならないのに、上りは \(10\) 分も遅くなる(\(12 \to 10\) と \(20 \to 30\))——ここに損の正体が見えます。

類題3 時間から静水と流れを出す

ある船が、片道 \(3000\)m の川を下るのに \(15\) 分、上るのに \(25\) 分かかりました。(1) 下りと上りの速さを求めなさい。(2) 静水での速さと流れの速さを求めなさい。(3) 往復の平均の速さを求め、③の式と合うか確かめなさい。

答え

(1) 下りは \(3000 \div 15 = \mathbf{200}\)、上りは \(3000 \div 25 = \mathbf{120}\)(m \(/\) 分)。(2) 静水は \((200+120) \div 2 = \mathbf{160}\)、流れは \((200-120) \div 2 = \mathbf{40}\)。(3) 往復 \(6000\)m を \(40\) 分で \(6000 \div 40 = \mathbf{150}\)。③の式では \(160 – \dfrac{40^2}{160} = 160 – 10 = 150\)。一致します。

比でも確かめられます。時間の比 \(15:25 = 3:5\) なので速さの比は \(5:3\)。平均は \(4\)、差の半分は \(1\)。\(5\) が \(200\) にあたるので比の \(1\) は \(40\)、静水は \(4 \times 40 = 160\)、流れは \(40\)。⑤で見た「比のままの和差算」です。

類題4 流れが強すぎるとき

静水での速さが分速 \(80\)m の船があります。片道は \(1200\)m です。(1) 流れが分速 \(75\)m のとき、上りにかかる時間は何分ですか。(2) 流れが分速 \(80\)m のときはどうなりますか。(3) (1)のときの往復の平均の速さを求めなさい。

答え

(1) 上りの速さは \(80-75 = 5\)(m \(/\) 分)なので \(1200 \div 5 = \mathbf{240}\) 分(\(4\) 時間)。(2) 上りの速さが \(0\) になるので、その場から進めません。時間は求められません。(3) 下りは \(155\) で \(1200 \div 155 = 7.74\cdots\) 分。往復 \(2400\)m を \(247.74\cdots\) 分で進むので\(2400 \div 247.74\cdots = \mathbf{9.69}\cdots\)(m \(/\) 分)。③の式でも \(80 – \dfrac{75^2}{80} = 80 – 70.3125 = 9.6875\) で一致します。

(1)で下りは \(7.7\) 分なのに、上りは \(240\) 分。\(31\) 倍です。往復の平均も \(9.69\) まで落ち、静水の \(80\) の \(12\%\) しかありません。流れが静水の速さに近づくと、上りの時間が急に伸びる——⑤で見た反比例のはたらきが、いちばんはっきり出る場面です。

\(4\) 問に共通するのは、速さは足し引きで対称でも、時間は対称にならないということです。静水の速さは上りと下りのまん中(相加平均)、往復の平均の速さはそれより小さい調和平均。差は \(\dfrac{u^2}{v}\) で、流れの \(2\) 乗で効きます。「行きと帰りで差し引きゼロ」と思ったら、必ず時間を計算して確かめてください。

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