教育コラム

「とりあえず基礎から」が最も遠回りになるケースとは

「とりあえず基礎からやり直そう」——受験勉強で行き詰まったとき、多くの人がこの言葉にたどり着くと思う。僕自身、2浪していた頃に何度もそう考えた。でも、正直に言うと、この「とりあえず基礎から」が、ときに一番の遠回りになってしまうことがある。今日は、誰も言わないけれど本当に大切な「勉強の順番」の話を、友達に語りかけるつもりで書いてみたい。

なぜ「とりあえず基礎から」に走ってしまうのか

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模試の点数が伸びない。問題を解いても手が止まる。そういうとき、人はどうしても不安になる。「自分は基礎が抜けているんじゃないか」と思って、最初のページに戻りたくなる。気持ちはものすごくよくわかる。基礎に戻れば「やった気」になれるし、何より安心できるからだ。

でも、ここに落とし穴がある。「基礎が抜けている」という不安と、「本当に基礎が抜けている」という事実は、まったく別物なんだ。多くの受験生が、実は基礎はそこそこできているのに、不安だけを理由にもう一度最初から薄い教科書をなぞり直してしまう。これが、最も遠回りになるケースの正体だと僕は思っている。

本当に必要なのは「自分は今どこでつまずいているのか」を正確に知ることだ。それをしないまま「とりあえず基礎から」と全部やり直すのは、地図を見ずに来た道を引き返すようなものかもしれない。

僕が2浪のときにやってしまった遠回り

正直に告白すると、僕は浪人時代にまさにこの罠にハマった。現役のとき数学の偏差値が50を切っていて、「基礎が足りないんだ」と思い込んでいた。だから浪人1年目の春、僕は分厚い網羅系の問題集を1ページ目から解き始めた。例題を全部、頭から順番に。

結果、どうなったか。夏になっても3分の1しか終わらなかった。しかも、すでに解ける簡単な問題に時間をかけすぎて、本当に苦手だった「場合の数」や「確率」にたどり着く前に夏が終わってしまったんだ。秋の模試の偏差値は52。1年かけてたった2しか上がらなかった。あのときの絶望は今でも覚えている。

2浪目に入って、僕はようやく考え方を変えた。まず過去問を1年分解いて、「自分が落としている問題」だけをノートに書き出したんだ。すると驚いた。落としているのは基礎の計算ではなく、特定の単元の「応用への橋渡し」の部分ばかりだった。基礎の計算問題はちゃんと解けていたのに、僕はそれをもう一度やり直そうとしていた。完全な遠回りだった。

そこからは、苦手な単元だけを集中的に、しかも基礎から応用まで一気通貫でやった。すると数学の偏差値は半年で52から67まで上がった。やり方ひとつで、ここまで変わるのかと痛感した経験だった。

「とりあえず基礎から」が遠回りになる3つのケース

ケース1:基礎はできているのに不安だけで戻る

これがいちばん多い。模試で点が取れないのを「基礎不足」と決めつけて、本当はできている部分まで巻き戻してしまう。実際にチェックしてみると、計算や基本公式は問題なく、つまずいているのは「問題文を式に翻訳する力」だったりする。それは基礎をやり直しても伸びない。

ケース2:基礎と応用を分けすぎている

「基礎が完璧になってから応用へ」という考え方は、一見正しい。でも実際の入試問題は、基礎と応用が地続きになっている。基礎だけを延々とやっても、応用との「つなぎ目」を経験しないと得点には変わらない。基礎を固めながら、少し背伸びした問題に触れていく方が、結果的に近道になることが多いと感じている。

ケース3:範囲全体を均等にやろうとする

全単元をまんべんなく基礎からやり直すのは、時間が無限にある人にしかできない。受験には締め切りがある。だからこそ「どこを捨て、どこに集中するか」の戦略が必要だ。均等にやることは、優しさのようでいて、実は一番危険な遠回りになりうる。

では、どうすればいいのか

遠回りを避ける鍵は、たった一つ。「先に診断する」ことだ。家を建てる前に地盤調査をするように、勉強も「今の自分の弱点はどこか」を先に調べてから始める。具体的には、志望校か近いレベルの過去問・模試を1回分解いて、間違えた問題を「計算ミス」「公式忘れ」「考え方が思いつかない」「そもそも知らない」の4種類に分けてみてほしい。

この4分類をするだけで、自分が本当に戻るべき場所が見えてくる。「考え方が思いつかない」が多いなら、それは基礎の暗記ではなく、解法パターンの蓄積が必要だというサインだ。「そもそも知らない」が多いなら、そこだけ基礎に戻ればいい。全部やり直す必要はないと、僕は強く伝えたい。

まとめ:基礎は「目的」ではなく「手段」

基礎が大切なのは間違いない。でも基礎は、点を取るための「手段」であって「目的」じゃない。「とりあえず基礎から」という言葉に逃げて、現状を診断しないまま全部やり直すのは、安心を買っているだけかもしれない。本当に必要なのは、ちょっと怖いけれど自分の弱点と向き合うことだと思う。

僕は2浪して、1年を遠回りに使ってしまった。だからこそ、今これを読んでいる君には同じ後悔をしてほしくない。基礎に戻るなら「どこに、なぜ戻るのか」を必ず言葉にしてほしい。それさえできれば、君の勉強は驚くほどまっすぐ進み始めるはずだ。


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