古文の助動詞は、どこを見て識別する?
まず語の切れ目と接続を確かめ、次に助動詞自身の活用形と文脈を照合します。同じ形が複数の活用形を兼ねる場合は、直前だけでは決まりません。
たとえば「書かぬ文」の「ぬ」は打消。「書か」は四段動詞「書く」の未然形で、「ぬ」は打消「ず」の連体形です。一方、「書きぬ」の「ぬ」は連用形「書き」に付く完了です。
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1. 助動詞・接続・活用形を区別する
助動詞は、活用する付属語です。他の語に付いて、過去・打消・推量などの意味を加えます。「書かず」なら「書か」が動詞、「ず」が打消の助動詞です。
接続は「直前の語がどの形になるか」、活用形は「その語自身がどの形で使われているか」です。「書かぬ文」では、「ぬ」の接続は未然形ですが、「ぬ」自身は連体形です。この二つを混同しないことが、文法説明の土台になります。
単語の境界も先に確かめます。「流る」の末尾の「る」は動詞の活用語尾であり、独立した助動詞ではありません。文字を一つ取り除いて単語になるかどうかだけでは識別できません。
2. 接続別一覧:基本と特例を一緒に覚える
以下は、このページで扱う主要28語です。「なり」「たり」は意味と接続が異なる二語をそれぞれ別に数えています。古文のすべての助動詞を網羅した数ではありません。
未然形に付く11語
| 助動詞 | 主な意味 | 補足 |
|---|---|---|
| る | 受身・尊敬・可能・自発 | 四段・ナ変・ラ変の未然形に付く |
| らる | 受身・尊敬・可能・自発 | 上記以外(上一・上二・下一・下二・カ変・サ変)の未然形に付く |
| す | 使役・尊敬 | 四段・ナ変・ラ変の未然形に付く |
| さす | 使役・尊敬 | 上記以外の未然形に付く |
| しむ | 使役・尊敬 | 漢文訓読調に多い |
| ず | 打消 | 「〜ない」 |
| む(ん) | 推量・意志・勧誘/適当・仮定・婉曲 | 終止形と連体形が同形。位置と文脈を併せて判断 |
| むず(んず) | 推量・意志など | 活用はサ変型。意味の細分類は文脈に応じる |
| じ | 打消推量・打消意志 | 「む」の打消版 |
| まし | 反実仮想・ためらいの意志など | 「もし…なら…だろうに」という実際と異なる想定に注意 |
| まほし | 希望 | 「〜したい」 |
連用形に付く7語
| 助動詞 | 主な意味 | 補足 |
|---|---|---|
| き | 過去 | 経験した過去・確かな過去として回想。カ変・サ変への接続に特例あり |
| けり | 過去・詠嘆 | 物語として語る過去か、気づき・感動かを確認 |
| つ | 完了・強意(確述) | 「て」から始まる下二段型 |
| ぬ | 完了・強意(確述) | 「な」から始まるナ変型 |
| たり | 完了・存続 | 「〜ている」「〜てしまった」 |
| けむ(けん) | 過去推量・過去の原因推量・過去の伝聞婉曲 | 過去の出来事・原因などを推し量る |
| たし | 希望 | 「まほし」と接続が異なる |
「き」は連用形接続が基本ですが、カ変・サ変では「こし」「こしか」「せし」「せしか」など未然形に付く形もあります。「直前が未然形だから『き』ではない」と一律に除外しません。接続の特例は小学館の辞典「き」(コトバンク掲載)でも確認できます。
終止形に付く6語
| 助動詞 | 主な意味 | 補足 |
|---|---|---|
| べし | 推量・意志・可能・当然・命令・適当 | 人称は手がかり。人称だけで意味を決めない |
| まじ | 打消推量・打消意志・不可能・打消当然・禁止・不適当 | 「べし」の打消版 |
| らむ(らん) | 現在推量・現在の原因推量・伝聞婉曲 | 目の前にない今を推し量る |
| らし | 推定(根拠のある推定) | 上代〜中古の和歌に多い |
| めり | 推定・婉曲 | 見た様子などを根拠に推し量る |
| なり | 伝聞・推定(聴覚による) | 「〜だそうだ」「〜のようだ」 |
ラ変型の語には連体形で接続します。「あり+べし」は「あるべし」、「なり(断定)+べし」は「なるべし」となります。伝聞・推定「なり」もこの扱いです。ただし、ラ変の連体形の後の「なり」は、接続だけなら断定も候補に残ります。なりの識別で確かめましょう。
体言・連体形などに付く3語
| 助動詞 | 主な意味 | 接続の詳細 |
|---|---|---|
| なり | 断定・存在 | 体言・連体形が基本。副詞や助詞に付く用法もある |
| たり | 断定 | 体言のみ に付く。漢文訓読調 |
| ごとし | 比況(〜のようだ) | 体言・連体形、および助詞「が」「の」に付く |
接続が特殊な「り」
| 助動詞 | 主な意味 | 接続の詳細 |
|---|---|---|
| り | 完了・存続 | サ変の未然形・四段の已然形 にのみ付く |
「り」はサ変の未然形・四段の已然形に付きます。「サ未四已(さみしい)」と整理できます。「せり」「書けり」の形です。「エ段音なら何でもよい」という規則ではなく、動詞の活用の種類まで確認します。
3. 主要28語の活用表
スマートフォンでは表の中を横に動かせます。列の順序は、未然・連用・終止・連体・已然・命令。○は通常の学習用活用表で形を立てない欄です。形容詞型の未然形「べく」「たく」なども載せています。
動詞型の16語
| 助動詞 | 未然 | 連用 | 終止 | 連体 | 已然 | 命令 | 型 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| る | れ | れ | る | るる | るれ | れよ | 下二段型 |
| らる | られ | られ | らる | らるる | らるれ | られよ | 下二段型 |
| す | せ | せ | す | する | すれ | せよ | 下二段型 |
| さす | させ | させ | さす | さする | さすれ | させよ | 下二段型 |
| しむ | しめ | しめ | しむ | しむる | しむれ | しめよ | 下二段型 |
| つ | て | て | つ | つる | つれ | てよ | 下二段型 |
| ぬ | な | に | ぬ | ぬる | ぬれ | ね | ナ変型 |
| たり(完了) | たら | たり | たり | たる | たれ | たれ | ラ変型 |
| り | ら | り | り | る | れ | れ | ラ変型 |
| けり | けら | ○ | けり | ける | けれ | ○ | ラ変型 |
| めり | ○ | めり | めり | める | めれ | ○ | ラ変型 |
| なり(伝聞推定) | ○ | なり | なり | なる | なれ | ○ | ラ変型 |
| む | ○ | ○ | む | む | め | ○ | 四段型 |
| けむ | ○ | ○ | けむ | けむ | けめ | ○ | 四段型 |
| らむ | ○ | ○ | らむ | らむ | らめ | ○ | 四段型 |
| むず | ○ | ○ | むず | むずる | むずれ | ○ | サ変型 |
「む・けむ・らむ」は四段型と呼ぶ教材も、特殊型にまとめる教材もあります。分類名だけでなく、実際の形「む・む・め」などを確認してください。ラ変型でも「けり」などには○の欄があります。
形容詞型・形容動詞型の7語
| 助動詞 | 未然 | 連用 | 終止 | 連体 | 已然 | 命令 | 型 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| べし | べく/べから | べく/べかり | べし | べき/べかる | べけれ | ○ | ク活用型 |
| たし | たく/たから | たく/たかり | たし | たき/たかる | たけれ | ○ | ク活用型 |
| ごとし | ごとく | ごとく | ごとし | ごとき | ○ | ○ | ク活用型 |
| まじ | まじく/まじから | まじく/まじかり | まじ | まじき/まじかる | まじけれ | ○ | シク活用型 |
| まほし | まほしく/まほしから | まほしく/まほしかり | まほし | まほしき/まほしかる | まほしけれ | ○ | シク活用型 |
| なり(断定) | なら | なり/に | なり | なる | なれ | なれ | ナリ活用型 |
| たり(断定) | たら | たり/と | たり | たる | たれ | たれ | タリ活用型 |
「べし・たし・まじ・まほし」では、「べから・べかり・べかる」などの補助活用にも注意します。「べからず」は「べし」の未然形+「ず」、「べかりけり」は連用形+「けり」です。
特殊型・無変化型の5語
| 助動詞 | 未然 | 連用 | 終止 | 連体 | 已然 | 命令 | 型 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ず | ず/ざら | ず/ざり | ず | ぬ/ざる | ね/ざれ | ざれ | 特殊型 |
| き | せ | ○ | き | し | しか | ○ | 特殊型 |
| まし | ませ/ましか | ○ | まし | まし | ましか | ○ | 特殊型 |
| じ | ○ | ○ | じ | じ | じ | ○ | 無変化型 |
| らし | ○ | ○ | らし | らし | らし | ○ | 無変化型 |
4. 識別は「語の境界→形→文脈」
これは一方通行の手順ではありません。文脈から語の区切りを考え直すこともあります。候補を消す根拠が足りないときは保留し、前後の文を読みます。
過去「き・けり」、完了「つ・ぬ」、完了・存続「たり・り」は時間の説明に関わりますが、同じ働きではありません。「書きけり」は過去の出来事として語り、「書きたり」は書いた結果や書いてある状態にも注目できます。訳語を機械的に一対一対応させず、何を述べる文なのかを確認します。
5. 「なり」:同形なら断定と伝聞・推定が残る
断定「なり」は体言・連体形が基本、伝聞・推定「なり」は終止形(ラ変型には連体形)に付きます。四段・上一段・下一段のように終止形と連体形が同じ場合、形だけで二者を分けられません。
独自の比較用語句:
「人なり」→体言「人」+断定。
「受くなり」→下二段「受く」の終止形+伝聞・推定。
「受くるなり」→下二段の連体形+断定。
「書くなり」→四段「書く」は終止・連体が同形。接続だけでは未確定。
人から聞いた知らせを伝えるなら伝聞、音や声から状況を判断するなら推定を考えます。事柄を「…のである」と説明するなら断定が候補です。聞くという語が遠くにあるだけで決めず、「なり」が述べる内容との関係を読みます。
「あんなり」「あなり」などでは、ラ変連体形「ある」の「る」が撥音便化し、さらに「ん」が表記されない場合があります。「あなり」を「ある+なり」へ戻せると確認できれば、伝聞・推定の識別に役立ちます。単に「あ」という字を見つけるだけで音便と決めないでください。
また、「静かなり」の「なり」は形容動詞の活用語尾、「春になりぬ」の「なり」は動詞「なる」の連用形です。「なり」の個別解説へ。
6. 「ぬ・ね」:助動詞自身の活用形も調べる
打消「ず」の連体形が「ぬ」、已然形が「ね」。完了「ぬ」の終止形も「ぬ」、命令形も「ね」です。「書かぬ/書きぬ」のように直前の形が違えば分けられますが、下二段「受く」の未然・連用はいずれも「受け」です。
「受けぬ物」→体言「物」に続く連体形なので打消。
「受けぬる物」→完了「ぬ」の連体形「ぬる」。
「受けねば」→「ば」に続く已然形「ね」なので打消「ず」。
文末の句点だけで終止形と断定しません。係り結び・連体形止め・名詞の省略があり得ます。「ぞ・なむ・や・か」の結びなら連体形、「こそ」の結びなら已然形という規則と、文の切れ目を合わせて判断します。
さらに「死ぬ」「往ぬ」の末尾は動詞の一部です。「ぬ・ね」の個別解説と係り結びへ。
7. 「に」:前後の関係と語のまとまりを見る
| 候補 | 独自の比較用語句 | 判断する点 |
|---|---|---|
| 断定なり・連用形 | これは文にあらず | 文ではない、という判断。「に+あり」の打消形 |
| 完了ぬ・連用形 | 読み終へにけり | 読み終ふの連用形+に+過去けり |
| 格助詞 | 庭にあり | 存在する場所「庭」を示す |
| 接続助詞 | 門を開くるに、人来たり | 前の事柄と後の事柄を「…ところ」でつなぐ |
| 形容動詞の活用語尾 | 静かに語る | 静かなり、という一語の連用形 |
「に+あり」だけでは断定と決まりません。「庭にあり」の「に」は場所を示す格助詞です。何かを何かだと判断するのか、場所・時・対象などを示すのかを見分けます。
形容動詞かどうかは「に」を外して自立語が残るかだけでは判断できません。「あはれ」は名詞などにも使われます。「静かなり→静かなる→静かに」のような活用と、その文中で性質・状態を述べているかを確認し、迷う語は古語辞典で品詞を調べます。「に」の個別解説へ。
8. 「る・らる」:身分や打消だけで決めない
「る」は四段・ナ変・ラ変の未然形、「らる」はそれ以外の動詞の未然形に付きます。意味は受身・尊敬・可能・自発です。
| 意味 | 読み方 | 文脈の確認 |
|---|---|---|
| 受身 | …される | 動作を行う者と受ける者を区別。行う者が省略されることもある |
| 尊敬 | お…になる | 動作をする人物に対する敬意。身分だけで受身を排除しない |
| 可能 | …できる | 能力・状況上の実現可能性。打消があっても自動判定しない |
| 自発 | 自然に…される | 意志によらず思い浮かぶ・感じられるなど。心情動詞というだけでは決めない |
尊敬の「る・らる」に「給ふ」が続くかどうかを絶対の判定基準にしません。また、受身は「…に」という動作主が明記されていなくても成立します。「誰が何をする文か」を前後から補い、各候補で意味が通るか確認します。
「流る」はラ行下二段動詞で、未然・連用は「流れ」、終止形は「流る」、連体形は「流るる」です。末尾の「る」を語幹と呼ぶのは誤りで、活用語尾です。「書ける文」の「る」は別の候補で、四段已然形「書け」+完了・存続「り」の連体形となります。「る・らる」の個別解説へ。
9. 「べし」:人称は意味を絞る手がかり
「べし」は推量・意志・可能・当然・命令・適当を表します。一人称なら意志、他人なら推量が候補になりますが、人称だけで自動的には決まりません。自分のことを推測する場合も、他人に義務や助言を述べる場合もあります。
- 話し手が自分の行動を決める:意志「…しよう」。
- 事情から起こりそうだと判断する:推量「…だろう」。
- 実現できるかを述べる:可能「…できる」。
- 道理・義務や当然の成り行きを述べる:当然「…べきだ/…はずだ」。
- 相手に行動を求める:命令「…せよ」、または適当「…するのがよい」。強さも文脈で読む。
「べからず」も常に不可能ではありません。規範や注意なら禁止の意味になり得ます。文の内容が「できない」なのか「してはいけない」なのかを読み分けます。「べし」の個別解説へ。
「らむ」と「ら+む」は別の構造
「知るらむ」は終止形「知る」+現在推量の「らむ」。「知れらむ」は四段已然形「知れ」+完了・存続「り」の未然形「ら」+「む」と分析できます。どちらも「らむ」という文字列でも、語の切れ目が違います。
「む」は連体形なら必ず婉曲・仮定、という規則ではありません。係り結びで連体形になった推量・意志もあります。活用形と意味を別々に説明してください。
10. 独自確認12問:根拠を言葉にする
この節の短文・設問は識別練習用に作成しました。古典作品や入試の引用ではありません。まず自力で答え、迷ったらヒントを開きます。答え合わせでは、意味だけでなく「何を根拠にしたか」も比べてください。
基本を確かめるなら問1〜4、紛らわしい形は問5〜9、説明の誤りを見抜く練習は問10〜12へ。
問1 接続と活用形を分ける
「書かぬ文」の「ぬ」について、助動詞の終止形・意味・活用形と、直前の「書か」の活用形を答えましょう。
問1のヒント
「書く」は四段活用。「ぬ」の後には体言「文」があります。
問1の答え・解説
「ず」・打消・連体形。直前の「書か」は未然形です。
打消「ず」は未然形に付き、連体形が「ぬ」です。「書いていない文」という意味です。「接続が未然形」だから「ぬ」自身も未然形、としないようにします。
問2 同形の「受け」
A「受けぬ物」、B「受けぬる物」の「ぬ」「ぬる」を説明しましょう。「受く」は下二段活用です。
問2のヒント
どちらも「受け」ですが、完了「ぬ」の連体形は何でしょう。
問2の答え・解説
Aは打消「ず」の連体形、Bは完了「ぬ」の連体形です。
「受け」は未然形と連用形が同形なので、直前だけでは区別できません。体言「物」に続く形を比べます。Aは受け取らない物、Bは受け取った物。完了の連体形は「ぬる」なのでAには当てはまりません。
問3 ラ変型への接続
「そこに人あるべし」の「ある」の終止形・活用形を答え、なぜ「ありべし」としないか説明しましょう。
問3のヒント
「べし」は終止形接続のグループですが、ラ変型には特例があります。
問3の答え・解説
終止形は「あり」、活用形は連体形。ラ変型には連体形で接続するためです。
ラ変「あり」は、あら・あり・あり・ある・あれ・あれ。「べし」が付くので「ある」になります。この短文だけで「べし」の意味まで一つに確定することは、この設問の要求ではありません。
問4 接続だけで決められる?
「人なり」「受くなり」「書くなり」の「なり」は、断定と伝聞・推定のどちらか。接続だけでは決められないものも示しましょう。
問4のヒント
「受く」は下二段、「書く」は四段です。終止形と連体形を並べます。
問4の答え・解説
人なり=断定。受くなり=伝聞・推定。書くなり=接続だけでは未確定。
「人」は体言です。「受く」の連体形は「受くる」なので「受く」は終止形と分かります。「書く」は終止形も連体形も同じです。最後は前後を読んで、伝える内容なのか、事柄の説明なのかを調べます。
問5 「に+あり」だけで判断しない
A「庭にあり」、B「これは文にあらず」の「に」を識別しましょう。
問5のヒント
Aは存在する場所、Bは「文ではない」という判断です。
問5の答え・解説
Aは格助詞、Bは断定「なり」の連用形です。
Aの「に」は「庭」という場所を示します。Bは「文である」を打ち消し、「に+あら+ず」となっています。「あり」が続くという形だけでなく、文の関係を確認する問題です。
問6 形容動詞の一部
「静かに語る」の「に」は助動詞でしょうか。「静かなり」「静かなる夜」と比較して説明しましょう。
問6のヒント
性質・状態を表す一語として活用させます。
問6の答え・解説
助動詞ではなく、形容動詞「静かなり」の連用形の活用語尾です。
「静かなり」はナリ活用で、連用形は「静かに」。この文では静かな様子で語ることを表します。「に」を外した語が単独で使えるかどうかだけを判定基準にしません。
問7 動詞の「る」と助動詞の「る」
A「川の水流る」、B「すでに書ける文」の末尾の「る」を比べましょう。Aの動詞はラ行下二段「流る」、Bは四段「書く」です。
問7のヒント
「流る」の活用と、完了・存続「り」の接続を確認します。
問7の答え・解説
Aは動詞の活用語尾。Bは完了・存続「り」の連体形です。
Aは「流れ・流れ・流る・流るる・流るれ・流れよ」と活用します。Bは「書け(四段已然形)+る」。体言「文」に続くため「り」の連体形です。ここでは、すでに書いた文を表し、現代語の可能「書ける」と同じ分析にはなりません。
問8 「らむ」を区切る
「知るらむ」と「知れらむ」の語の切れ目を示しましょう。「知る」は四段活用です。
問8のヒント
終止形接続「らむ」と、四段已然形接続「り」を比べます。
問8の答え・解説
知る/らむ。知れ/ら/む。
前者は「知る」の終止形+助動詞「らむ」。後者は「知れ」の已然形+「り」の未然形「ら」+「む」です。二つとも同じ一語の「らむ」と読むと、後者の接続を説明できません。意味の細分類は前後の文で確かめます。
問9 「にけり」を順に読む
「文を読み終へにけり」の「に」「けり」の終止形と活用形を答えましょう。「読み終ふ」は下二段活用とします。
問9のヒント
「けり」は連用形に付きます。その直前の「に」はどの助動詞の形でしょう。
問9の答え・解説
に=完了「ぬ」の連用形。けり=「けり」の終止形です。
「読み終へ」は連用形。「に」は完了「ぬ」の連用形で、過去「けり」へつながります。ここでは読み終えた出来事を語る文として「文を読み終えたのだった」と読めます。場所を示す格助詞「に」ではありません。
問10 受身の動作主は省略できる
ある文章で「ほめられけり」と書かれ、前後から別の人にほめられたと分かります。「…に」という動作主が書かれていないので受身ではない、という説明は正しいでしょうか。
問10のヒント
行為をする人が、文章に常に明記されるか考えます。
問10の答え・解説
正しくありません。動作主が省略された受身は成立します。
この設定では「ほむ」の未然形「ほめ」+受身「らる」の連用形「られ」+「けり」です。動作主が明記されていないことだけで受身を排除できません。敬意の対象が登場しても、文の関係を優先して読みます。
問11 人称と意味は別
「主語が一人称なら『べし』は必ず意志、三人称なら必ず推量」と説明してよいでしょうか。判断に必要な情報を挙げましょう。
問11のヒント
意思決定・能力・義務・推測のどれを述べる文かを考えます。
問11の答え・解説
説明してはいけません。人称は手がかりであり、話し手の意図・状況・文全体の内容が必要です。
一人称でも自分の状態を推測できます。他人についても義務や可能性を述べられます。「だろう」「しよう」「できる」「べきだ」などを候補にし、前後の意味と整合するか確認します。
問12 句点だけで終止形?
文末に「ぬ。」がありました。「句点があるから必ず完了『ぬ』の終止形」と判断してよいでしょうか。追加で調べる点を二つ以上挙げましょう。
問12のヒント
係り結びや連体形止めの可能性を忘れていませんか。
問12の答え・解説
判断できません。直前の活用形、係助詞の有無と結び、連体形止め・名詞省略、前後の意味などを調べます。
打消「ず」の連体形「ぬ」が文末に来る場合もあるので、句点だけでは活用形が確定しません。形が同じ場合に何を追加確認するかを答える問題です。根拠が不足したまま一つに決めないことも大切です。
11. 間違いの原因から復習先を選ぶ
- 問1・3・9:接続表と活用表を見比べ、「前の語の形」と「助動詞自身の形」を別々に書く。
- 問2・4・12:同形の識別と係り結びを復習。候補が残る理由を説明する。
- 問5・6:「に」の比較表へ。場所・判断・性質を区別する。
- 問7・8:動詞の活用語尾と「り+む」の分解へ。語の切れ目を書く。
- 問10・11:主語の判定と敬語の総論で、人物と行為の関係を確認する。
答えを覚えてしまったら、正解だけを言うのではなく「別の候補がなぜ合わないか」を説明してください。判断材料が足りない問では、必要な情報を答えられれば学習の成果です。
文章の中で使ってみる
- 古文読解の手順:助動詞の識別を、主語・敬語・内容理解につなげる。
- 接続助詞:文のつながりと「に・を・ば」を整理する。
- 古文単語・古典常識:意味の判断に必要な語彙と背景を補う。
- 『徒然草』・『更級日記』:作品の文脈の中で文法を読む。
- 国語の学習案内:古文・漢文の次の単元を選ぶ。
参考資料と制作について
接続・活用と同形識別は、埼玉県立春日部東高等学校「古典文法講座 第六回」(PDF)、同「第九回」(PDF)などの文法資料と照合しました。資料の練習問題・解説文は転載していません。用語の分類は教材によって異なる場合があるため、学校の指定教材と照らして利用してください。
更新:2026年9月15日。今回の改稿・独自設問作成・資料照合:Codex。今回の改稿に対する人間講師の監修は未実施です。
