中高一貫の数学 / 数学単元ガイド

高1の夏休み課題|データの分析を本質から理解する(分散・標準偏差・相関係数・箱ひげ図)

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中高一貫校の高1の夏休み課題で、最後のほうに置かれがちなのがデータの分析です。計算そのものは足し算・引き算・割り算だけ。それなのに、多くの人が「何をやっているのか分からないまま公式に数字を入れている」状態になります。

この単元は、共通テストで毎年必ず出題されるにもかかわらず、学校の授業では駆け足で終わりがちです。逆に言えば、夏の課題でここを本質から押さえておくと、そのまま得点源になります。この記事では、分散でなぜ2乗するのか、相関係数はなぜ から の間に収まるのか——公式の裏側から順に見ていきます。

この記事で身につくこと

  • 平均・分散・標準偏差が、それぞれ何を測っている数かを言葉で説明できる
  • 分散を2通りの式で計算して検算できる
  • 相関係数の値の意味と、やってはいけない解釈が分かる
  • 箱ひげ図から情報を読み取り、外れ値を判定できる
  • データを変換したとき(全体に足す・かける)、平均と分散がどう変わるか即答できる

1.平均は「位置」、分散は「散らばり」

データを1つの数で要約するとき、まず知りたいのはどのあたりにあるか(位置)です。それが平均。しかし位置だけでは足りません。

たとえばテストの平均点が同じ60点でも、全員が58〜62点のクラスと、30点と90点が混ざったクラスでは、まったく状況が違います。この違いを表すのが散らばりで、それを測る数が分散・標準偏差です。

データの分析でやっていること

たくさんの数を、「位置を表す1つの数」と「散らばりを表す1つの数」に圧縮する。

情報を捨てることで扱いやすくする、というのがこの単元の発想です。何を捨てて何を残しているかを意識すると、公式の意味が見えてきます。

2.なぜ2乗するのか——分散の急所

「散らばり」を測るなら、各データが平均からどれだけ離れているか(偏差)を平均すればよさそうです。ところが、これは必ず失敗します。

データ で見てみましょう。平均は です。

偏差と分散の意味データ 2,4,4,6,9 と平均5。各データの平均からのズレ(偏差)は -3,-1,-1,+1,+4 で、そのまま足すと0になる。O12345246810-3-1-1+1+4平均 5棒の長さ=偏差(平均からのズレ)そのまま足すと必ず 0 になる → 2乗して符号を消す

図1:各データと平均5との差(偏差)。上向きが正、下向きが負。棒の長さが「ズレの大きさ」を表す。

偏差は 。これを足すと、

必ず になります。これは偶然ではありません。平均とは「偏差の合計がちょうど になる位置」として決まる数だからです。だから偏差をそのまま平均しても、散らばりの情報はまったく残りません。

2乗する理由

符号を消したい。しかし絶対値をつけると、その後の計算(式変形・微分)が非常に扱いにくい。
だから2乗する。副産物として、大きなズレをより重く評価するという性質も手に入ります。

2乗した偏差の平均が分散です。

ただし2乗したので、単位も2乗されてしまっています(点数のデータなら「点2」という意味不明な単位)。そこで平方根をとって単位を戻したものが標準偏差です。

【標準偏差の読み方】「このデータは、だいたい平均から くらいズレているのが普通」という意味になります。標準偏差は平均と同じ単位で比べられる——これが、分散ではなく標準偏差を使う理由です。

もう1つの公式(検算に使える)

分散には、次の形もあります。

分散 =(2乗の平均)-(平均の2乗)

実際に確かめます。 なので、2乗の平均は 。平均の2乗は

先ほどと一致しました。

【使い分け】平均が整数のようにきれいな数なら偏差から、平均が小数で偏差が汚くなるなら「2乗の平均-平均の2乗」から計算するのが速い。そして時間があるときは両方で計算して検算する。この単元は計算ミスがそのまま失点になるので、検算手段を2つ持っていることに価値があります。

3.相関係数は「連動の強さ」を測る

2種類のデータ(例:勉強時間と得点)があるとき、片方が増えるともう片方も増えるかを測るのが相関係数です。

正の相関散布図。正の相関(r ≒ 0.92)。xyO正の相関r ≒ 0.92
相関なし散布図。相関なし(r = 0)。xyO相関なしr = 0
負の相関散布図。負の相関(r ≒ -0.99)。xyO負の相関r ≒ -0.99

図2:散布図の3パターン。点が右上がりに並べば正の相関、関係が見えなければ相関なし、右下がりなら負の相関。破線は それぞれの平均。

作り方をたどる

まず共分散を作ります。「 の偏差 × の偏差」の平均です。

右上がりのデータでは、 が平均より大きいとき も平均より大きい(正×正=正)、 が小さいとき も小さい(負×負=正)。だから積の平均は正になる。右下がりならこれが逆になって負。関係がなければ正と負が打ち消し合って に近づきます。

共分散だけでは足りない理由

共分散は単位に依存します。得点をcm単位に換算しただけで値が変わってしまい、「強さ」の比較ができません。
そこで、それぞれの標準偏差で割って単位を消したものが相関係数です。

相関係数 = 共分散 ÷(xの標準偏差 × yの標準偏差)

単位を消した結果、値は必ず 以上 以下に収まります。 に近いほど点が一直線(右上がり)に並び、 に近いほど一直線(右下がり)に並びます。

実際に計算する

【例題】

5人の生徒について、1日の勉強時間 (時間)と小テストの得点 (点)が次のようになった。相関係数を求めよ(小数第2位まで)。

:1, 2, 3, 4, 5 / :3, 5, 4, 8, 10

平均は 。表にして一気に処理します。

1 3 4 9 6
2 5 1 1 1
3 4 0 4 0
4 8 1 4 2
5 10 4 16 8
合計 10 34 17

【表を作った時点で検算できる】偏差の列の合計は必ず 。ここが にならなければ、平均か引き算のどこかで間違えています。表を全部埋めてから気づくのではなく、この2列を先に検算するのがコツです。

共分散は の分散は の分散は 。標準偏差はそれぞれ です。

【答】

(強い正の相関)

絶対にやってはいけない解釈

相関があること=原因と結果の関係がある、ではありません。

勉強時間と得点に強い相関があっても、それだけでは「勉強したから点が上がった」とは言えません(もともと得意な人が長く勉強しているのかもしれない)。共通テストでも「相関関係と因果関係の混同」を狙った選択肢が繰り返し出題されます。ここは失点しやすいので、意識して覚えてください。

4.箱ひげ図と四分位数

平均と標準偏差は、極端な値(外れ値)に引きずられやすいという弱点があります。そこで「順番に並べて、位置で区切る」という別の要約方法が使われます。

【例題】

次の12個のデータについて、四分位数と四分位範囲を求め、箱ひげ図をかけ。

3, 5, 6, 8, 9, 11, 12, 14, 15, 18, 20, 25

すでに小さい順に並んでいます。まん中で2つに割ります(12個なので6個ずつ)。

中央値(第2四分位数):6番目と7番目の平均。

第1四分位数 :下半分(3,5,6,8,9,11)の中央値。

第3四分位数 :上半分(12,14,15,18,20,25)の中央値。

四分位範囲

箱ひげ図の読み方12個のデータの箱ひげ図。箱の左端が第1四分位数7、中の線が中央値11.5、右端が第3四分位数16.5。O510152025最小 3Q1 = 7中央値 11.5Q3 = 16.5最大 25箱の幅(四分位範囲)= 16.5 – 7 = 9.5 …真ん中50%が入る幅

図3:箱ひげ図。箱の中にデータのちょうど真ん中50%が入る。箱が短ければ真ん中が密集、長ければばらついている。

【外れ値の判定】一般に (四分位範囲)より小さい値、(四分位範囲)より大きい値を外れ値とみなします。今回は なので、外れ値はありません(最大の25も範囲内)。

5.データを変換したらどうなるか(頻出)

「全員の点数に一律5点加える」「単位をmからcmに変える」といった変換は、共通テストの定番です。ここは意味で覚えると一発です。

変換 平均 分散 標準偏差 相関係数
全体に を足す 変わらない 変わらない 変わらない
全体を 倍する 変わらない(

丸暗記しない覚え方

足し算は「全体の位置をずらすだけ」——散らばりの形は変わらないので、分散も標準偏差もそのまま。
掛け算は「全体を拡大するので、散らばりも拡大する」——距離が 倍なら、その2乗である分散は 倍。

図1の棒グラフを、そのまま平行移動する(=足し算)か、縦に引き伸ばす(=掛け算)かをイメージすれば、表を見なくても答えられます。

6.この単元で落としやすい3か所

ミス1 偏差の合計が にならないまま先へ進む

表を作ったら、まず偏差の列を合計する。ここが でなければ、その先の計算はすべて無駄になります。

ミス2 相関関係を因果関係と読む

「相関が強い=原因」ではありません。共通テストの選択肢で必ず狙われます。「相関があっても、原因かどうかは分からない」と唱えられるように。

ミス3 四分位数の求め方で中央値を含めてしまう

データ数が奇数のときは、中央値を除いて上下に分けます(教科書の定義に従うこと)。データ数が偶数なら単純に半分ずつ。

7.確認問題(解答つき)

【確認1】

データ の平均、分散、標準偏差を求めよ。分散は2通りの方法で計算すること。

【解答1】

平均は

方法A(偏差から):偏差は (合計 を確認)。2乗して 。分散は

方法B(2乗の平均-平均の2乗)一致

標準偏差は

【確認2】

あるテストの平均点が 点、標準偏差が 点であった。全員の得点を 倍したうえで 点を加えるとき、新しい平均点と標準偏差を求めよ。

【解答2】

平均は

標準偏差は、掛け算だけが効いて足し算は効かないので

分散は で一致)。「足し算は散らばりを変えない」——ここが答えの分かれ目です。

8.夏の課題を、共通テストの得点に変えるために

データの分析は、共通テストの数学Iで必ず出題される分野です。しかも計算量は少なく、読み取りと意味理解が中心。つまり正しく理解していれば確実に取れて、公式暗記だと落とすという、差がつきやすい構造をしています。

答えが合っていても、ここで止まったら「まだ理解していない」

  • なぜ偏差を2乗するのか、理由を言えるか
  • 相関係数が から に収まるのは何で割ったから
  • 「相関がある」と「原因である」の違いを説明できるか

9.「聞ける相手がいない」だけで止まっているなら

データの分析は、学校の授業でも駆け足になりやすく、質問しないまま終わりがちな単元です。しかも計算はできてしまうので、理解していないことに自分でも気づきにくいという厄介さがあります。

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  • 「なぜその式なのか」から扱います。公式に数字を入れるだけの状態から抜け出させます。

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10.よくある質問

Q. 分散は で割るのですか、 で割るのですか?

A. 高校数学(数学I)では で割ります。 で割るのは大学以降で扱う不偏分散で、高校の範囲では使いません。参考書やネットの情報が混ざりやすいので注意してください。

Q. 相関係数が だと「相関がある」と言ってよいですか?

A. 目安としては 以上で強い、 でやや強い、と表現されることが多いですが、試験では基準を勝手に決めず、問題文の指示や選択肢に従ってください。数値そのものより「正か負か」「1に近いか0に近いか」を答えさせる出題が中心です。

Q. 箱ひげ図とヒストグラム、どう使い分けるのですか?

A. 箱ひげ図は複数のグループを並べて比べるとき、ヒストグラムは1つのデータの形(山が1つか2つかなど)を見るときに向いています。箱ひげ図は形の情報を捨てているので、山が2つあるデータでも見た目では分かりません。

Q. 夏休みの課題でデータの分析まで終わりません。間に合いますか?

A. 間に合います。この単元は他の単元と独立していて、積み残しの影響を受けにくいのが特徴です。理解に必要な時間も比較的短いので、優先して片付ける価値があります。

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この記事を書いた人

藤原 進之介(ふじわら しんのすけ)/オンライン数学専門塾「数強塾」代表

中高一貫校生を中心に、累計3,500名以上を指導。東進ハイスクール・東進衛星予備校・代々木ゼミナールなど出講実績あり。自身も高校時代は数学が苦手で2浪を経験し、「なぜそうするのか」から積み上げ直した経験を指導の原点にしている。数強塾グループでは学生アルバイトを採用せず、プロ講師のみで完全1対1のオンライン指導を行っている。

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