2025年(令和7年度)1月に実施された大学入学共通テスト 数学Ⅱ,数学B,数学C(本試験)を、オンライン数学専門塾「数強塾」代表の藤原進之介が全問解説します。新課程で「数学C」が加わり、第4問〜第7問から3問を選ぶ形になった最初の年度です。
問題文はすべて再掲し、小問ごとに「どの型を使うのか」「なぜその方針を選ぶのか」まで書いています。解答はすべて大学入試センターが公表した正解表と突き合わせ、全問一致を確認しています。さらに三角方程式は400万分割の数値探索、対数計算は常用対数表と実数値の両方で独立検算しました。
必答問題(第1問〜第3問)と選択問題(第4問=数列/第5問=統計的な推測/第6問=ベクトル/第7問=複素数平面)の全23問すべてを公開済みです。選択問題は4問のうち3問を選んで解答しますが、どれを選んでも読めるように4問すべてを解説しています。
出題主体は大学入試センターです。この記事だけで学習を完結できるよう、計算に必要な条件・数表の値・グラフと軌跡の選択肢は、すべて本文中に再掲しています。
この記事の目次
- 第1問(配点15・必答) 三角方程式(単位円で「等しくなる条件」を作る)
- 第2問(配点15・必答) 常用対数(水草の増え方と除去作業の計画)
- 第3問(配点22・必答) 微分・積分(同じ導関数をもつ2つの関数)
- 第4問(配点16・選択) 数列(格子点の個数を数える)
- 第5問(配点16・選択) 統計的な推測(レモンの重さ)
- 第6問(配点16・選択) ベクトル(球面上に正三角形が作れるか)
- 第7問(配点16・選択) 複素数平面(垂直条件を純虚数で表す)
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| 年度 | 本試 数学Ⅰ・A | 本試 数学Ⅱ・B(・C) | 追試 数学Ⅰ・A | 追試 数学Ⅱ・B(・C) |
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| 2026年 令和8年度 共通テスト |
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| 2025年 令和7年度 共通テスト |
数学Ⅰ・A 解説 | いまこのページ | 数学Ⅰ・A 解説 | 数学Ⅱ・B・C 解説 |
| 2024年 令和6年度 共通テスト |
数学Ⅰ・A 解説 | 数学Ⅱ・B 解説 | 数学Ⅰ・A 解説 | 数学Ⅱ・B 解説 |
| 2020年 令和2年度 センター試験 |
数学Ⅰ・A 解説 | 数学Ⅱ・B 解説 | — | — |
| 2019年 令和1年度 センター試験 |
数学Ⅰ・A 解説 | 数学Ⅱ・B 解説 | — | — |
| 2018年 平成30年度 センター試験 |
数学Ⅰ・A 解説 | 数学Ⅱ・B 解説 | — | — |
| 2017年 平成29年度 センター試験 |
数学Ⅰ・A 解説 | 数学Ⅱ・B 解説 | — | — |
| 2016年 平成28年度 センター試験 |
数学Ⅰ・A 解説 | 数学Ⅱ・B 解説 | — | — |
すべての年度・科目の一覧は大学入試 数学 過去問の全問解説ハブにまとめています。
※ 問題文は大学入試センターが公表した2025年度(令和7年度)大学入学共通テスト 本試験の問題を、解説のために引用したものです。解答・解説はオンライン数学専門塾「数強塾」代表 藤原進之介が独自に作成したものであり、大学入試センターが公表した公式解答そのものではありません。答えはすべて公表された正解表と突き合わせ、全問一致を確認しています。数表と図で与えられた条件も、解答に必要な内容を本文中に文字で示しています。
- 形式:70分・100点。第1問〜第3問が必答(15点/15点/22点)、第4問〜第7問から3問を選択(各16点)。新課程で「数学C」が加わった最初の年度です。
- 第1問(15点・必答):三角方程式。単位円で「サインが等しくなるのはどんなときか」を考えさせ、最後に同じ問いをコサインでやり直させる。
- 第2問(15点・必答):常用対数。池の水草が一定の倍率で増えるとして、除去作業の計画を立てる。
- 第3問(22点・必答):微分・積分。同じ導関数をもつ2つの関数 \(F(x),\ G(x)\) を並べ、極値と定積分(面積)の関係を掘り下げる。
- この年の急所は「公式ではなく、定義に戻って考えさせる」ことです。第1問は加法定理や和積ではなく単位円で解かせます。第3問は「不定積分」ではなく「積分=面積」「原始関数の差は定数」という原理そのものを問います。手が止まったら、公式ではなく定義に戻ってください。
第1問(配点15・必答) 三角方程式(単位円で「等しくなる条件」を作る)
\(0\leqq\theta\lt\pi\) のとき、方程式 \(\sin\left(\theta+\dfrac{\pi}{6}\right)=\sin 2\theta\ \cdots\cdots\ ①\) の解を求めよう。以下では \(\alpha=\theta+\dfrac{\pi}{6}\)、\(\beta=2\theta\) とおく。このとき①は \(\sin\alpha=\sin\beta\ \cdots\cdots\ ②\) となる。
(1) ア6 イ3 ウ2 / エ2 / オ2 カ5 キク18 / ケ6 コサ17 シス18
(2) セ6 ソタ11 チツ18
(1)(i) まず「角が等しい」場合を押さえる
二つの一般角 \(\alpha\) と \(\beta\) が等しければ、\(\sin\alpha\) と \(\sin\beta\) は等しい。\(\alpha=\beta\) を満たす \(\theta\) は \(\dfrac{\pi}{\boxed{\text{ア}}}\) であり、これは①の解の一つである。そして \(\theta=\dfrac{\pi}{\boxed{\text{ア}}}\) のとき \(\sin\left(\theta+\dfrac{\pi}{6}\right)=\sin 2\theta=\dfrac{\sqrt{\boxed{\text{イ}}}}{\boxed{\text{ウ}}}\) となる。
【型】\(\sin A=\sin B\) の解のうち、まず \(A=B\) の場合
【なぜこうするか】 \(\sin\) が等しくなる状況は2種類ありますが、いちばん素直な「角そのものが等しい」から入るのが誘導の意図です。ここで「これが解の一つにすぎない」と意識しておくことが、(ii)以降で取りこぼさないための準備になります。
\(\alpha=\beta\) より \(\theta+\dfrac{\pi}{6}=2\theta\)、すなわち \(\theta=\dfrac{\pi}{6}\)。アは6です。
このとき \(\theta+\dfrac{\pi}{6}=\dfrac{\pi}{3}\)、\(2\theta=\dfrac{\pi}{3}\) でどちらも \(\dfrac{\pi}{3}\)。よって
\[\sin\dfrac{\pi}{3}=\dfrac{\sqrt{3}}{2}\]
イは3、ウは2です。
【検算】 \(\theta=\dfrac{\pi}{6}\fallingdotseq 0.5236\) を①の両辺に入れると、左辺は \(\sin(0.5236+0.5236)=\sin\dfrac{\pi}{3}=0.8660\)、右辺 \(\sin\dfrac{\pi}{3}=0.8660\) で一致。数式処理系でも差が厳密に0になりました。
【定石】 三角方程式は「素直な解を1つ見つける」→「他にないか調べる」の順で進める。1つ見つかった時点で終わりにしないこと。
(1)(ii) 単位円で見れば「サインが等しい」=「\(y\) 座標が等しい」
太郎:角が等しくなくても、サインの値が等しくなることがあるね。花子:サインの値が等しくなるのはどんなときか、単位円を用いて考えてみようか。 O を原点とする座標平面において、中心が O で半径が1の円を \(C\) とする。さらに、\(\alpha\) の動径と \(C\) との交点を P、\(\beta\) の動径と \(C\) との交点を Q とする。②が成り立つときに、点 P と点 Q の間につねに成り立つ関係の記述として正しいものはエである。(解答群)⓪ 点 P と点 Q は同じ点である ① 点 P の \(x\) 座標と、点 Q の \(x\) 座標が等しい ② 点 P の \(y\) 座標と、点 Q の \(y\) 座標が等しい ③ 点 P と点 Q は、原点 O に関して対称である
【型】\(\sin\theta\) は単位円上の点の \(y\) 座標、\(\cos\theta\) は \(x\) 座標
【なぜこうするか】 三角関数の定義そのものです。単位円上で角 \(\theta\) の動径と円の交点の座標が \((\cos\theta,\ \sin\theta)\)。だから \(\sin\alpha=\sin\beta\) は「P と Q の \(y\) 座標が等しい」とまったく同じ意味です。エは②です。
⓪は強すぎます(\(y\) 座標が等しくても \(x\) 座標が違えば別の点)。①は \(\cos\) が等しい条件で、これは別物。③は原点対称なら \(y\) 座標が符号反転するので、むしろ \(\sin\alpha=-\sin\beta\) になってしまいます。
この言い換えができると、次が見えます。単位円上で \(y\) 座標が等しい点は高々2つで、それらは\(y\) 軸に関して対称。したがって \(\alpha\) と \(\beta\) の関係は「等しい」か「和が \(\pi\) の奇数倍(=\(y\) 軸対称)」のどちらかです。
【検算】 \(\alpha=\dfrac{\pi}{6},\ \beta=\dfrac{5\pi}{6}\) で確かめます。P \(=\left(\dfrac{\sqrt{3}}{2},\ \dfrac{1}{2}\right)\)、Q \(=\left(-\dfrac{\sqrt{3}}{2},\ \dfrac{1}{2}\right)\) で \(y\) 座標が一致し、\(x\) 座標は符号が逆。確かに \(y\) 軸対称で、\(\alpha+\beta=\pi\) です。
【定石】 \(\sin A=\sin B\ \Longleftrightarrow\ A=B+2n\pi\) または \(A+B=\pi+2n\pi\)。単位円で \(y\) 軸対称を思い浮かべれば、公式を暗記していなくても復元できる。
(1)(iii) 範囲を分けて、\(\alpha+\beta\) が何になるかを特定する
\(\theta\neq\dfrac{\pi}{6}\) とする。\(0\leqq\theta\leqq\dfrac{\pi}{2}\) の場合を考える。このとき \(0\leqq\beta\leqq\pi\) であるので、②が成り立つとき、(ii)で考察したことに注意すると、\(\alpha\) と \(\beta\) は \(\alpha+\beta=\)オを満たすことがわかる。これより、\(0\leqq\theta\leqq\dfrac{\pi}{2}\) のときの①の解 \(\theta=\dfrac{\boxed{\text{カ}}}{\boxed{\text{キク}}}\pi\) を得る。次に \(\dfrac{\pi}{2}\lt\theta\lt\pi\) の場合を考える。このとき \(\pi\lt\beta\lt 2\pi\) であるので、②が成り立つとき、\(\alpha\) と \(\beta\) は \(\alpha+\beta=\)ケを満たすことがわかる。これより、\(\dfrac{\pi}{2}\lt\theta\lt\pi\) のときの①の解 \(\theta=\dfrac{\boxed{\text{コサ}}}{\boxed{\text{シス}}}\pi\) を得る。(オ・ケの解答群)⓪ \(0\) ① \(\dfrac{\pi}{2}\) ② \(\pi\) ③ \(\dfrac{3}{2}\pi\) ④ \(2\pi\) ⑤ \(\dfrac{5}{2}\pi\) ⑥ \(3\pi\) ⑦ \(\dfrac{7}{2}\pi\)
【型】\(\alpha+\beta=\pi+2n\pi\) のうち、範囲から \(n\) を1つに絞る
【なぜこうするか】 \(\alpha+\beta\) の候補は \(\pi,\ 3\pi,\ 5\pi,\ \cdots\) と無限にあります。どれになるかは\(\alpha+\beta\) が動きうる範囲から決まる。だから問題文は \(\theta\) の範囲をわざわざ2つに分けているのです。範囲を出してから候補をあてはめる、という手順を守れば迷いません。
\(\alpha+\beta=\left(\theta+\dfrac{\pi}{6}\right)+2\theta=3\theta+\dfrac{\pi}{6}\) であることを押さえておきます。
[1] \(0\leqq\theta\leqq\dfrac{\pi}{2}\) のとき。\(\alpha+\beta=3\theta+\dfrac{\pi}{6}\) は \(\dfrac{\pi}{6}\) 以上 \(\dfrac{3\pi}{2}+\dfrac{\pi}{6}=\dfrac{5\pi}{3}\) 以下。この範囲に入る \(\pi\) の奇数倍は \(\pi\) だけです。オは②。
\[3\theta+\dfrac{\pi}{6}=\pi\ \Longrightarrow\ 3\theta=\dfrac{5\pi}{6}\ \Longrightarrow\ \theta=\dfrac{5}{18}\pi\]
カは5、キクは18です。
[2] \(\dfrac{\pi}{2}\lt\theta\lt\pi\) のとき。\(\alpha+\beta=3\theta+\dfrac{\pi}{6}\) は \(\dfrac{3\pi}{2}+\dfrac{\pi}{6}=\dfrac{5\pi}{3}\) より大きく \(3\pi+\dfrac{\pi}{6}=\dfrac{19\pi}{6}\) より小さい。この範囲に入る \(\pi\) の奇数倍は \(3\pi\) だけです(\(\dfrac{5\pi}{3}\fallingdotseq 1.67\pi\)、\(\dfrac{19\pi}{6}\fallingdotseq 3.17\pi\))。ケは⑥。
\[3\theta+\dfrac{\pi}{6}=3\pi\ \Longrightarrow\ 3\theta=\dfrac{17\pi}{6}\ \Longrightarrow\ \theta=\dfrac{17}{18}\pi\]
コサは17、シスは18です。以上より①の解は \(\theta=\dfrac{\pi}{6},\ \dfrac{5}{18}\pi,\ \dfrac{17}{18}\pi\) の3つです。
【検算】 \(0\leqq\theta\lt\pi\) を400万分割して \(\sin\left(\theta+\dfrac{\pi}{6}\right)-\sin 2\theta\) の符号変化を数えたところ、解は \(0.523598,\ 0.872665,\ 2.967059\) のちょうど3個。理論値 \(\dfrac{\pi}{6}=0.523599\)、\(\dfrac{5\pi}{18}=0.872665\)、\(\dfrac{17\pi}{18}=2.967060\) と一致し、解の個数まで含めて正しいことが確認できました。
【定石】 \(\pi+2n\pi\) 型の候補を絞るときは、左辺の動く範囲を先に計算する。範囲の両端を \(\pi\) で割って考えると、入る奇数倍が一目でわかる。
【よくあるミス】 \(\alpha+\beta=\pi\) だけを考えて、\(3\pi\) の場合を落とすこと。\(\theta\) の範囲が広いときは \(\alpha+\beta\) も広く動くので、必ず範囲を書き出して確認します。
(2) コサインなら「\(x\) 軸対称」。単位円の使い方は同じ
\(0\leqq\theta\lt\pi\) のとき、方程式 \(\cos\left(\theta+\dfrac{\pi}{6}\right)=\cos 2\theta\) の解は \(\theta=\dfrac{\pi}{\boxed{\text{セ}}},\ \dfrac{\boxed{\text{ソタ}}}{\boxed{\text{チツ}}}\pi\) である。
【型】\(\cos A=\cos B\ \Longleftrightarrow\ A=\pm B+2n\pi\)
【なぜこうするか】 (ii)の単位円の考え方を、\(\cos\) に適用します。\(\cos\) は単位円上の点の \(x\) 座標です。\(x\) 座標が等しい2点は\(x\) 軸に関して対称なので、角の関係は「等しい」か「和が \(2n\pi\)(=符号が逆)」になります。\(\sin\) の「和が \(\pi\) の奇数倍」という条件との違いを確認しておきましょう。
[1] 角が等しい場合。\(\theta+\dfrac{\pi}{6}=2\theta\) より \(\theta=\dfrac{\pi}{6}\)。セは6です。
[2] 角の符号が逆の場合。\(\theta+\dfrac{\pi}{6}=-2\theta+2n\pi\) より
\[3\theta=-\dfrac{\pi}{6}+2n\pi\ \Longrightarrow\ \theta=-\dfrac{\pi}{18}+\dfrac{2n\pi}{3}\]
\(0\leqq\theta\lt\pi\) に入るのは \(n=1\) のときだけで
\[\theta=-\dfrac{\pi}{18}+\dfrac{12\pi}{18}=\dfrac{11}{18}\pi\]
(\(n=0\) なら負、\(n=2\) なら \(\dfrac{23}{18}\pi\gt\pi\) で範囲外。)よってソタは11、チツは18です。
解が3個から2個に減ったことにも意味があります。\(\cos\) の場合は「和が \(2n\pi\)」と間隔が \(\sin\) の2倍なので、同じ範囲に入る解が少なくなるのです。
【検算】 こちらも400万分割で符号変化を数えると、解は \(0.523598\) と \(1.919862\) の2個。理論値 \(\dfrac{\pi}{6}=0.523599\)、\(\dfrac{11\pi}{18}=1.919862\) と一致しました。数式処理系でも両者を代入した差が厳密に0になります。
【定石】 \(\sin\) が等しい=\(y\) 軸対称(和が \(\pi\) の奇数倍)/\(\cos\) が等しい=\(x\) 軸対称(和が \(2\pi\) の倍数)。単位円の対称軸と結びつけると、二つの条件を区別しやすくなります。
第2問(配点15・必答) 常用対数(水草の増え方と除去作業の計画)
学校の池でメダカを飼うことになり、飼育係になった花子さんは、水質を良くする効果がある水草 A を水面に浮かべることにした。一方で、水草 A が増えすぎてメダカに悪影響を与えることを心配した花子さんは、水草 A を定期的に除去することにし、その作業の計画を立てるために基本方針を定めた。【基本方針】水草 A の量を水草 A が池の水面を覆う面積の割合(%)で測ることにし、この量をもとに作業計画を立てる。作業は正午に行う。
本問で使う常用対数表の値は、\(\log_{10}1.32=0.1206\)、\(\log_{10}6=0.7782\)、\(\log_{10}1.64=0.2148\)、\(\log_{10}1.65=0.2175\) である。
(1) ア3 イ1 ウエオカ0402
(2) キ3 クケ60 コ3 サシ16
(1)前半 「\(n\) 日で何倍」は「1日あたりの倍率の \(n\) 乗」
次の表は、観測を開始した日を0日目として、0日目、3日目、6日目、9日目の正午に観測した水草 A の量を表したものである(0日目17.2%、3日目22.7%、6日目30.0%、9日目39.6%)。水草 A の量が3日ごとに何倍に増えるのかを計算して小数第3位を四捨五入したところ、いずれも1.32倍であることがわかった。水草 A の量は、3日ごとにほとんど同じ倍率で増えていることから、「水草 A の量は、1日ごとに一定の倍率で増える」と考え、その倍率を定数 \(r\) とした。観測結果から、3日目の水草 A の量は0日目の量の1.32倍になると考えた。このとき、\(r\) はア\(=1.32\) を満たす。(アの解答群)⓪ \(r\) ① \(\dfrac{r}{3}\) ② \(3r\) ③ \(r^{3}\) ④ \(3^{r}\) ⑤ \(\log_{3}r\)
【型】一定の倍率で増えるモデルでは、\(n\) 期間後の倍率は \(r^{n}\)
【なぜこうするか】 「1日ごとに \(r\) 倍」ということは、1日たつごとに \(r\) をかける。3日たてば \(r\) を3回かけるので \(r^{3}\) 倍です。足し算ではなく掛け算で増える——この区別が指数・対数の問題すべての土台になります。アは③です。
選択肢②の \(3r\) を選んでしまう人が一定数いますが、それは「1日あたり \(r\) ずつ足す」モデル(等差)です。今回は等比なので指数になります。
【検算】 観測値から3日ごとの倍率を実際に計算すると \(\dfrac{22.7}{17.2}=1.320\)、\(\dfrac{30.0}{22.7}=1.322\)、\(\dfrac{39.6}{30.0}=1.320\)。確かに小数第3位を四捨五入するといずれも1.32で、「一定の倍率で増える」というモデルが妥当だと確認できます。
【定石】 「一定の割合で増える」は等比数列(指数関数)。「一定の量だけ増える」は等差数列。文章題ではこの2つを最初に見分ける。
(1)後半 対数をとって、指数を前に下ろす
\(\log_{10}1.32=\)イであるので \(\log_{10}r=0.\)ウエオカが得られる。(イの解答群)⓪ 0.0899 ① 0.1206 ② 0.1523 ③ 0.2148 ④ 0.2405 ⑤ 0.3010 ⑥ 0.3636 ⑦ 0.4771
【型】\(\log_{10}r^{3}=3\log_{10}r\)
【なぜこうするか】 \(r^{3}=1.32\) から3乗根を直接扱うのは、常用対数表を使う計算には向きません。両辺の対数をとれば、指数の3を前に出して掛け算として扱えるため、表にある値から \(r\) を求められます。
常用対数表で \(\log_{10}1.32\) を引きます。行が \(1.3\)、列が \(2\) の交点で \(0.1206\)。イは①です。
\[\log_{10}r^{3}=\log_{10}1.32\ \Longrightarrow\ 3\log_{10}r=0.1206\ \Longrightarrow\ \log_{10}r=0.0402\]
ウエオカは0402です。
【検算】 実際の値で確かめると \(\log_{10}1.32=0.120574\cdots\)、3で割ると \(0.040191\cdots\)。表から読んだ \(0.1206\) と \(0.0402\) は、四捨五入の範囲で正しい値です。\(r=10^{0.0402}\fallingdotseq 1.0970\) となり、1日あたり約9.7%ずつ増えていることになります。
【定石】 指数の中に未知数があるときは両辺の対数をとる。常用対数表は「行=上2桁、列=3桁目」で引く、と手順を固定しておく。
(2) 条件を式にし、対数をとって整数解を出す
【条件】作業は14日ごとに行う。作業の後に残す水草 A の量を、次回の作業までの間に水草 A の量がつねに60%を超えない範囲で、できるだけ多くする。 作業を行った日を0日目として、次回の作業は14日目に行う。作業の後に残す水草 A の量を \(a\)% としたとき、14日目の正午に水草 A の量がちょうど60%になる。このとき、(1)の定数 \(r\) を用いると、14日目の正午に水草 A の量は \(a\) のキ倍になるので \(a\times\)キ\(=\)クケ\(\cdots\cdots\ ①\) が成り立つ。①の両辺の常用対数をとり、(1)で求めた \(\log_{10}r=0.\)ウエオカと \(\log_{10}6=0.7782\) であることを用いると \(\log_{10}a=\)コとなる。\(a\) の決め方から、作業の後に残す水草 A の量を \(a\)% 以下にすれば、次回の作業までの間に水草 A の量がつねに60%を超えないことがわかる。\(a\) 以下で最大の整数はサシであることから、花子さんは作業の後に残す水草 A の量をサシ% にすることとした。(キの解答群)⓪ \(r\) ① \(\dfrac{r}{14}\) ② \(14r\) ③ \(r^{14}\) ④ \(14^{r}\) ⑤ \(\log_{14}r\) (コの解答群)⓪ 0.7758 ① 1.0670 ② 1.0934 ③ 1.2154 ④ 1.3410 ⑤ 1.4894 ⑥ 1.7806 ⑦ 2.4666
【型】\(\log_{10}(60)=\log_{10}6+1\) のように、桁を分けて表を使う
【なぜこうするか】 14日で \(r^{14}\) 倍になるのでキは③、そして \(a\cdot r^{14}=60\) でクケは60です。ここで対数をとりますが、常用対数表は1.00から9.99までしか載っていません。60は表の範囲外なので \(60=6\times 10\) と分けて \(\log_{10}60=\log_{10}6+1\) とするのが必須の手順です。
\[\log_{10}a+14\log_{10}r=\log_{10}60\]
\[\log_{10}a=(0.7782+1)-14\times 0.0402=1.7782-0.5628=1.2154\]
よってコは③です。
最後に \(a\) 自体を求めます。\(\log_{10}a=1.2154\) なので \(a=10^{1.2154}=10\times 10^{0.2154}\)。常用対数表を逆に引いて、値が \(0.2154\) に近いところを探すと \(\log_{10}1.64=0.2148\)、\(\log_{10}1.65=0.2175\)。\(0.2154\) はこの間なので \(10^{0.2154}\) は \(1.64\) と \(1.65\) の間、したがって \(a\) は \(16.4\) と \(16.5\) の間です。
\(a\) 以下で最大の整数は16。サシは16です。
【検算】 実数値で計算すると \(\log_{10}60-14\log_{10}r=1.77815-14\times 0.040191=1.21548\)、\(a=10^{1.21548}=16.419\cdots\)。確かに \(a\) 以下で最大の整数は16です。さらに \(16\times r^{14}=16\times 1.0970^{14}\fallingdotseq 58.5\lt 60\) で条件を満たし、\(17\times r^{14}\fallingdotseq 62.1\gt 60\) で超えてしまう。16が最大だと裏づけられます。
【定石】 常用対数表は1.00〜9.99の範囲しか載っていない。それ以外の数は \(a\times 10^{n}\) の形に直し、\(\log_{10}(a\times 10^{n})=\log_{10}a+n\) と分解してから引く。
【よくあるミス】 \(\log_{10}a=1.2154\) を見て \(a\fallingdotseq 1.2154\) と答えてしまうこと。対数の値と真数を取り違えないよう、最後は必ず \(a=10^{\square}\) の形に戻します。
第3問(配点22・必答) 微分・積分(同じ導関数をもつ2つの関数)
\(k\) を0でない実数とし、\(f(x)\) を2次関数とする。\(F(x)\) と \(G(x)\) はどちらも導関数が \(f(x)\) であるような関数で、\(F(x)\) は \(x=0\) で極小値0をとり、\(G(x)\) は \(x=k\) で極大値0をとるとする。
(1) ア6 イ6 ウエ \(-1\) オ2 カ3 キ0 クケ \(-1\)
(2)(i) コ0 サ0 シ0 ス1 セ3 / (ii) ソ3 タ0 チ2 ツ0 テ0 ト0 ナ2
(1) 具体例で、極大・極小と積分定数の役割を確認する
まず、\(F(x)=2x^{3}+3x^{2}\) の場合を考える。\(F(x)\) の導関数が \(f(x)\) であることから \(f(x)=\)ア\(x^{2}+\)イ\(x\) であり、\(F(x)\) は \(x=\)ウエで極大値をとる。また、\(G(x)\) の導関数が \(f(x)\) であることから \(G(x)=\)オ\(x^{3}+\)カ\(x^{2}+C\)(\(C\) は積分定数)と表され、\(G(x)\) は \(x=\)キで極小値をとる。さらに \(G(x)\) に関する条件から \(C=\)クケである。
【型】原始関数どうしの差は定数(グラフは上下にずれるだけ)
【なぜこうするか】 この小問の狙いは、「\(F\) と \(G\) は同じ導関数をもつので、グラフの形はまったく同じで、上下にずれているだけ」という事実を体感させることです。だから極値をとる \(x\) は \(F\) でも \(G\) でも同じ。違うのは極値の「値」だけです。
\(f(x)=F'(x)=6x^{2}+6x\) でアは6、イは6です。\(f(x)=6x(x+1)=0\) より \(x=-1,\ 0\)。\(f\) は下に凸なので \(x\lt-1\) で正、\(-1\lt x\lt 0\) で負、\(x\gt 0\) で正。よって \(F\) は \(x=-1\) で極大、\(x=0\) で極小です。ウエは \(-1\)。
\(G\) も導関数が同じ \(f\) なので \(G(x)=2x^{3}+3x^{2}+C\)。オは2、カは3です。極小をとる \(x\) は \(F\) と同じ \(x=0\) でキは0。
条件は「\(G\) は \(x=k\) で極大値0」。\(G\) の極大は \(x=-1\) なので \(k=-1\) であり
\[G(-1)=-2+3+C=1+C=0\ \Longrightarrow\ C=-1\]
クケは \(-1\) です。
【検算】 \(G(x)=2x^{3}+3x^{2}-1\) として \(G(-1)=-2+3-1=0\)(極大値0 ✓)、\(G(0)=-1\)(極小値)。一方 \(F(0)=0\)(極小値0 ✓)、\(F(-1)=1\)(極大値)。2つの関数の極値はちょうど1だけずれており、\(C=-1\) の分だけ \(G\) が下にあることが確認できます。
【定石】 導関数が同じ関数どうしは定数差だけ。「極値をとる \(x\) は共通、極値の値は定数分ずれる」と押さえておくと、この大問全体の見通しが立つ。
(2)(i) 条件を \(f\) の値と符号に翻訳し、グラフの形を決める
次に \(k\gt 0\) の場合を考える。\(F(x)\) が \(x=0\) で極小値をとることから \(f(0)=\)コであり、\(x=0\) の前後で \(f(x)\) の符号はサ。さらに、\(G(x)\) が \(x=k\) で極大値をとることから \(f(k)=\)シであり、\(x=k\) の前後で \(f(x)\) の符号はス。したがって、\(F(x)\) の導関数は \(f(x)\) であることに注意すると、座標平面において \(y=F(x)\) のグラフの概形はセであることがわかる。(コ・シの解答群)⓪ \(0\) ① \(1\) ② \(k\) ③ \(x\) (サ・スの解答群)⓪ 負から正に変わる ① 正から負に変わる ② 変わらない
(セのグラフ選択肢)⓪ 左上から右下へ進む3次曲線で、極小点は \(x\) 軸より下、右側の極大点で \(x\) 軸に接する ① 左下から右上へ進む3次曲線で、左側の極大点で \(x\) 軸に接し、右側の極小点は \(x\) 軸より下 ② 左下から右上へ進み、極大点は \(x\) 軸より上、右側の極小点で \(x\) 軸に接する ③ 左上から右下へ進み、\(x=0\) の極小点で \(x\) 軸に接し、その右の極大点は \(x\) 軸より上にある ④ 上に開く放物線で、頂点が \(x\) 軸に接する ⑤ 原点を通り、極大・極小をもたず単調に増加する3次曲線
【型】極大・極小 ⇔ 導関数の符号変化
【なぜこうするか】 微分法の基本ですが、ここでは2つの条件を1つの \(f\) に同時に課しているのがポイントです。\(f\) は2次関数なので零点は高々2つ。それが \(x=0\) と \(x=k\) に決まり、しかも符号変化の向きまで指定されるので、\(f\) の形が完全に決まります。
\(F\) が \(x=0\) で極小 → \(f(0)=0\)(コは⓪)で、\(x=0\) の前後で \(f\) は負から正(サは⓪)。
\(G\) が \(x=k\) で極大 → \(f(k)=0\)(シは⓪)で、\(x=k\) の前後で \(f\) は正から負(スは①)。
まとめると \(f\) は \(x\lt 0\) で負、\(0\lt x\lt k\) で正、\(x\gt k\) で負。つまり \(f\) は上に凸の放物線で、\(f(x)=a\,x(x-k)\ (a\lt 0)\) と書けます。
この \(f\) を導関数にもつ \(F\) は、\(x\lt 0\) で減少、\(0\lt x\lt k\) で増加、\(x\gt k\) で減少。しかも \(F(0)=0\)(極小値0)なので、グラフは \(x=0\) でちょうど \(x\) 軸に接し、そこから上がって \(x=k\) で極大、その後は下がっていきます。先頭の係数は負なので、左端から降りてきて右端で急降下する形。セは③です。
【検算】 具体例 \(a=-1,\ k=2\)、すなわち \(f(x)=-x(x-2)\) で確かめます。\(F(x)=\displaystyle\int_{0}^{x}f(t)dt=-\dfrac{x^{3}}{3}+x^{2}\)。\(F(0)=0\)(極小値0 ✓)、\(F(2)=-\dfrac{8}{3}+4=\dfrac{4}{3}\gt 0\)(極大値 ✓)、\(x\to\infty\) で \(F\to-\infty\)。③の概形と完全に一致します。
【定石】 グラフの概形を選ぶ問題は、①増減の順序 ②極値の符号 ③無限遠での向きの3点で絞る。この3つが決まればグラフは一意に決まる。
(2)(ii) 極大値を定積分(=面積)として読み直す
\(F(x)\) に関する条件から、すべての実数 \(x\) に対して \(F(x)=\displaystyle\int_{\boxed{\text{タ}}}^{\boxed{\text{ソ}}}f(t)dt\) が成り立つ。このことと(i)の考察により、\(F(x)\) の極大値は \(\displaystyle\int_{\boxed{\text{ツ}}}^{\boxed{\text{チ}}}f(t)dt\) と表され、\(F(x)\) の極大値は、関数 \(y=\)テのグラフと \(x\) 軸で囲まれた図形のトと等しいことがわかる。さらに \(G(x)\) に関する条件から、\(F(x)\) の極大値は、\(G(x)\) のナと等しいことがわかる。(ソ〜ツの解答群)⓪ \(0\) ① \(1\) ② \(k\) ③ \(x\) (テの解答群)⓪ \(f(x)\) ① \(F(x)\) ② \(G(x)\) (トの解答群)⓪ 面積 ① 面積の \(-1\) 倍 (ナの解答群)⓪ 極小値 ① 極大値 ② 極小値の \(-1\) 倍 ③ 極大値の \(-1\) 倍
【型】\(\displaystyle\int_{a}^{x}f(t)dt\) は「\(x=a\) で0になる原始関数」
【なぜこうするか】 \(F\) は \(f\) の原始関数の中で「\(F(0)=0\)」という条件を満たすもの。原始関数はいくらでもありますが、\(x=0\) で0になるものはただ一つで、それが \(\displaystyle\int_{0}^{x}f(t)dt\) です。
\[F(x)=\int_{0}^{x}f(t)dt\]
でソは③(上端が \(x\))、タは⓪(下端が0)です。
極大値は \(x=k\) のときの値なので
\[F(k)=\int_{0}^{k}f(t)dt\]
チは②、ツは⓪です。
(i)で見たとおり \(0\leqq x\leqq k\) では \(f(x)\geqq 0\) なので、この定積分は符号を気にせずそのまま面積になります。つまり \(y=f(x)\) のグラフと \(x\) 軸で囲まれた図形の面積そのもの。テは⓪、トは⓪です。
最後のナ。\(F\) と \(G\) は導関数が同じなので \(G(x)-F(x)\) は定数。その定数は \(x=0\) で測れば \(G(0)-F(0)=G(0)\) です。よって \(G(x)=F(x)+G(0)\)。ここに \(x=k\) を入れると
\[G(k)=F(k)+G(0)\]
条件より \(G(k)=0\) なので \(F(k)=-G(0)\)。そして \(G\) の極小値は \(x=0\) でとる値 \(G(0)\)(\(G\) も \(F\) と同じ増減だから)。したがって
(\(F\) の極大値)= \(-1\times\)(\(G\) の極小値)
すなわち「\(G(x)\) の極小値の \(-1\) 倍」でナは②です。
【検算】 具体例 \(f(x)=-x(x-2)\)(\(k=2\))で確かめます。\(F(x)=-\dfrac{x^{3}}{3}+x^{2}\) の極大値は \(F(2)=\dfrac{4}{3}\)。一方 \(G\) は \(G(2)=0\) を満たす原始関数なので \(G(x)=-\dfrac{x^{3}}{3}+x^{2}-\dfrac{4}{3}\)、その極小値は \(G(0)=-\dfrac{4}{3}\)。確かに \(F\) の極大値 \(\dfrac{4}{3}\) は \(G\) の極小値 \(-\dfrac{4}{3}\) の \(-1\) 倍です。さらに \(\displaystyle\int_{0}^{2}\left(-t(t-2)\right)dt=\dfrac{4}{3}\) で、面積とも一致しました。
【定石】 「\(x=a\) で0になる原始関数」=\(\displaystyle\int_{a}^{x}f(t)dt\)。この書き換えができると、極値を「面積」として図で捉え直せる。
- \(\sin\) が等しい=単位円で \(y\) 軸対称(和が \(\pi\) の奇数倍)、\(\cos\) が等しい=\(x\) 軸対称(和が \(2\pi\) の倍数)。公式を忘れても単位円から復元できる(第1問)。
- \(\alpha+\beta=\pi+2n\pi\) の \(n\) は、左辺の動く範囲から絞る。範囲を書き出すのを省かない(第1問(1)(iii))。
- 「一定の割合で増える」は等比=指数。\(n\) 期間後の倍率は \(r^{n}\)(第2問(1))。
- 指数の中に未知数があれば両辺の対数をとる。常用対数表は1.00〜9.99しか載っていないので \(a\times 10^{n}\) に分解する(第2問)。
- 導関数が同じ関数どうしは定数差だけ。極値をとる \(x\) は共通、値だけがずれる(第3問(1))。
- グラフの概形は「増減の順序・極値の符号・無限遠での向き」の3点で決まる(第3問(2)(i))。
- 「\(x=a\) で0になる原始関数」は \(\displaystyle\int_{a}^{x}f(t)dt\)。極値を面積として読み直せる(第3問(2)(ii))。
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- 第4問(数列):格子点の数え方。直線・指数関数・放物線と、囲む曲線を変えながら「\(x=k\) 上に何個あるか」を数えて足す、という一本道の型を3回繰り返します。
- 第5問(統計的な推測):レモンの重さ。正規分布・二項分布の平均・信頼区間の幅から必要な標本の大きさ・仮説検定と、この単元の主要項目がひととおり出ます。
- 第6問(ベクトル):球面上に正三角形の3つ目の頂点が取れるかを、内積の条件式から判定します。
- 第7問(複素数平面):2直線が垂直になる条件を「純虚数」で表し、点の軌跡を円として求めます。
- 選び方の目安:第4問は格子点の数え方、第5問は正規分布表と推測統計の手順が中心です。過去問演習で自分の所要時間と正答率を比べ、安定して解ける大問を選びましょう。
第4問(配点16・選択) 数列(格子点の個数を数える)
座標平面上で、\(x\) 座標と \(y\) 座標がともに整数である点を格子点という。いくつかの直線や曲線で囲まれた図形の内部にある格子点の個数を考えよう。ただし、図形の内部は、境界(境界線)を含まないものとする。
(1) ア5 イ8 ウ0 エ3 オ0 カキク610
(2) ケ7 コ1 サ7 / (3) シ3 スセ \(-3\) ソ2
(1) 「縦の直線 \(x=n\) 上に何個あるか」を数えて足す
直線 \(y=3x\) と \(x\) 軸、直線 \(x=21\) で囲まれた図形を \(T\) とする。\(T\) の内部にある格子点の個数を考える。直線 \(x=1\) 上の格子点で \(T\) の内部にあるものは、点 \((1,1)\) と点 \((1,2)\) の2個である。点 \((1,0)\) と点 \((1,3)\) は \(T\) の境界にあるため、内部にはない。\(n\) を整数とする。直線 \(x=n\) が \(T\) の内部にある格子点を通るのは、\(1\leqq n\leqq 20\) のときである。\(1\leqq n\leqq 20\) のとき、直線 \(x=n\) 上の格子点で \(T\) の内部にあるものの個数を \(a_{n}\) とおく。\(a_{1}=2\) であり、\(a_{2}=\)ア、\(a_{3}=\)イである。数列 \(\{a_{n}\}\) はウがエのオ数列である。したがって、\(T\) の内部にある格子点の個数はカキクである。(ウの解答群)⓪ 公差 ① 公比 (オの解答群)⓪ 等差 ① 等比
【型】格子点は「縦の直線で切って数え、\(\sum\) で足す」
【なぜこうするか】 平面上の格子点をまとめて数えるのは難しいため、短冊状に切って、1本ずつ数えて足します。これは格子点問題の基本的な方法です。縦にも横にも切れますが、上下の境界が \(x\) の式で書かれている今回は、\(x=n\) で縦に切ると個数を式にしやすくなります。
直線 \(x=n\) 上で \(T\) の内部にある点は \(0\lt y\lt 3n\) を満たす整数 \(y\)、つまり \(y=1,2,\cdots,3n-1\) の\(3n-1\) 個です。境界を含まないので上端の \(y=3n\) と下端の \(y=0\) は数えません。
\(a_{n}=3n-1\) なので \(a_{2}=5\)、\(a_{3}=8\)。アは5、イは8です。これは公差3の等差数列で、ウは⓪、エは3、オは⓪です。
\[\sum_{n=1}^{20}(3n-1)=3\cdot\dfrac{20\cdot 21}{2}-20=630-20=610\]
カキクは610です。
【検算】 \(1\leqq x\leqq 20\)、\(1\leqq y\leqq 3x-1\) の格子点を計算機で1点ずつ総当たりで数え上げたところ、ちょうど610個でした。公式による値と完全に一致します。
【定石】 格子点の個数は「\(x=k\) 上の個数を \(k\) の式で表す」→「\(\sum\) をとる」の2手。境界を含むか含まないかで個数が1ずれるので、端点の扱いを最初に確認する。
(2) 囲む曲線が指数関数に変わっても、手順は同じ
\(n\) を自然数とする。関数 \(y=2^{x}\) のグラフと \(x\) 軸、\(y\) 軸および直線 \(x=n+1\) で囲まれた図形を \(U\) とする。\(k\) を整数とする。直線 \(x=k\) が \(U\) の内部にある格子点を通るとき、直線 \(x=k\) 上の格子点で \(U\) の内部にあるものの個数はケである。したがって、\(U\) の内部にある格子点の個数は \(\displaystyle\sum_{k=1}^{\boxed{\text{コ}}}(\)ケ\()=\)サである。(ケの解答群)⓪ \(2k-2\) ① \(2k-1\) ② \(2k\) ③ \(2^{k-1}-2\) ④ \(2^{k-1}-1\) ⑤ \(2^{k-1}\) ⑥ \(2^{k}-2\) ⑦ \(2^{k}-1\) ⑧ \(2^{k}\) (コの解答群)⓪ \(n-1\) ① \(n\) ② \(n+1\) ③ \(2n-1\) ④ \(2n\) ⑤ \(2n+1\) ⑥ \(2^{n}-1\) ⑦ \(2^{n}\) ⑧ \(2^{n}+1\) (サの解答群)⓪ \(2^{n}-2n-1\) ① \(2^{n}-2n\) ② \(2^{n}-n-1\) ③ \(2^{n}-n\) ④ \(2^{n}-3\) ⑤ \(2^{n+1}-2n-2\) ⑥ \(2^{n+1}-2n-1\) ⑦ \(2^{n+1}-n-2\) ⑧ \(2^{n+1}-n-1\) ⑨ \(2^{n+1}-3\)
【型】等比数列の和 \(\displaystyle\sum_{k=1}^{n}2^{k}=2^{n+1}-2\)
【なぜこうするか】 やることは(1)とまったく同じで、上の境界が \(3x\) から \(2^{x}\) に変わっただけ。「同じ手順を、違う関数で繰り返す」のがこの大問の設計です。
直線 \(x=k\) 上で \(U\) の内部にある点は \(0\lt y\lt 2^{k}\) を満たす整数 \(y\)、つまり \(y=1,2,\cdots,2^{k}-1\) の \(2^{k}-1\) 個。ケは⑦です。
\(k\) の動く範囲は、\(y\) 軸(\(x=0\))と \(x=n+1\) の間にある整数、つまり \(1\leqq k\leqq n\)。コは①です(\(x=n+1\) は境界なので含めません)。
\[\sum_{k=1}^{n}\left(2^{k}-1\right)=\left(2^{n+1}-2\right)-n=2^{n+1}-n-2\]
(初項2・公比2・項数 \(n\) の等比数列の和が \(2^{n+1}-2\)。)サは⑦です。
【検算】 総当たりで数えると \(n=1,2,3,5,8\) のとき \(1,\ 4,\ 11,\ 57,\ 502\) 個。公式 \(2^{n+1}-n-2\) の値も \(1,\ 4,\ 11,\ 57,\ 502\) ですべて一致しました。
【定石】 \(\sum(2^{k}-1)\) のように「等比の和」と「定数の和」に分けて計算する。\(-1\) を \(n\) 個足すのを忘れやすいので、\(\sum\) を分割した時点で項数を書き添えておく。
(3) 個数が \(n^{3}\) になる条件を、係数比較で決める
\(a,\ b,\ c\) は整数で、\(a\gt 0\)、\(b^{2}-4ac\lt 0\) を満たすとする。放物線 \(y=ax^{2}+bx+c\) と \(x\) 軸、\(y\) 軸および直線 \(x=n+1\) で囲まれた図形を \(V\) とする。すべての自然数 \(n\) に対して、\(V\) の内部にある格子点の個数が \(n^{3}\) となるのは、\(a=\)シ、\(b=\)スセ、\(c=\)ソのときである。
【型】\(n\) の恒等式として係数を比較する
【なぜこうするか】 \(b^{2}-4ac\lt 0\) かつ \(a\gt 0\) は「放物線が \(x\) 軸と交わらず、つねに正」という意味です。そのため、(1)(2)と同じ数え方を使えます。さらに、\(a,b,c\) が整数なので \(f(k)=ak^{2}+bk+c\) も整数です。この整数性により、境界の \(y=f(k)\) を除いた \(x=k\) 上の格子点は、ちょうど \(f(k)-1\) 個になります。
\[\sum_{k=1}^{n}\left(ak^{2}+bk+c-1\right)=a\cdot\dfrac{n(n+1)(2n+1)}{6}+b\cdot\dfrac{n(n+1)}{2}+(c-1)n\]
これを \(n\) について展開すると
\[\dfrac{a}{3}n^{3}+\dfrac{a+b}{2}n^{2}+\left(\dfrac{a}{6}+\dfrac{b}{2}+c-1\right)n\]
すべての自然数 \(n\) で \(n^{3}\) に等しいということは、これは \(n\) についての恒等式。よって係数を比べて
\[\dfrac{a}{3}=1,\qquad \dfrac{a+b}{2}=0,\qquad \dfrac{a}{6}+\dfrac{b}{2}+c-1=0\]
順に解くと \(a=3\)、\(b=-3\)、そして \(\dfrac{1}{2}-\dfrac{3}{2}+c-1=0\) から \(c=2\)。シは3、スセは \(-3\)、ソは2です。
条件も確かめます。\(a=3\gt 0\)、\(b^{2}-4ac=9-24=-15\lt 0\) でどちらも満たしています。
【検算】 \(y=3x^{2}-3x+2\) として、\(V\) の内部の格子点を総当たりで数えると \(n=1,2,3,4,6\) でそれぞれ \(1,\ 8,\ 27,\ 64,\ 216\) 個。ちょうど \(n^{3}\) になっており、係数比較の結果が正しいことが実測で裏づけられました。
【定石】 「すべての \(n\) について成り立つ」は恒等式。展開して \(n\) の各次数の係数を比較すれば、未知数の個数だけ方程式が立つ。
【よくあるミス】 \(a,b,c\) が整数だという条件を読み飛ばすこと。整数でなければ \(f(k)\) が整数にならず、個数は \(\lceil f(k)\rceil-1\) となって式が立ちません。
第5問(配点16・選択) 統計的な推測(レモンの重さ)
Q 地域ではレモンを栽培しており、収穫されるレモンを重さによってサイズごとに分類している(S は80g以上90g未満、M は90g以上110g未満、L は110g以上140g未満、2L は140g以上170g未満、その他)。過去に収穫されたレモンの重さは、平均が110g、標準偏差が20g の正規分布に従うとする。標準正規分布表は「0から正の値 \(z_{0}\) まで」の面積を与え、本問で使う値は \(z_{0}=1.50\) のとき0.4332、\(z_{0}=1.80\) のとき0.4641である。
(1) アイウエ4332 オ4 / (2) カ6 キ5 クケコ385
(3) サ0 シ5 スセソタ0359 チ1 ツ0
(1) 標準化して表を引き、二項分布の平均につなぐ
今年収穫される1個のレモンの重さを確率変数 \(X\) で表すと、\(X\) は正規分布 \(N(110,\ 20^{2})\) に従うとする。よって、無作為にレモンを1個抽出するとき、そのレモンが L サイズである確率は \(P(110\leqq X\lt 140)=P(110\leqq X\leqq 140)\) であることに注意すると、\(0.\)アイウエである。いま、Q 地域で今年収穫されるレモンが20万個であるとし、その中の L サイズのレモンの個数を確率変数 \(Y\) で表すと、\(Y\) は二項分布に従い、\(Y\) の平均(期待値)はオとなる。(オの解答群)⓪ 13100 ① 13360 ② 31740 ③ 68260 ④ 86640 ⑤ 100000 ⑥ 168260 ⑦ 186640
【型】標準化 → 正規分布表/二項分布 \(B(n,p)\) の平均は \(np\)
【なぜこうするか】 L サイズの範囲がちょうど「平均から平均+1.5標準偏差まで」になっているのがこの問題の親切なところです。標準化すると
\[P(110\leqq X\leqq 140)=P\left(0\leqq Z\leqq\dfrac{140-110}{20}\right)=P(0\leqq Z\leqq 1.5)\]
正規分布表は「0から \(z_{0}\) までの面積」を与えるので、\(z_{0}=1.50\) の欄をそのまま読んで \(0.4332\)。引き算すら不要です。アイウエは4332です。
次に \(Y\)。1個ずつ独立に「L サイズかどうか」を判定するので、\(Y\) は二項分布 \(B(200000,\ 0.4332)\) に従います。二項分布の平均は \(np\) なので
\[E(Y)=200000\times 0.4332=86640\]
オは④です。
【検算】 正規分布の累積分布関数で厳密に計算すると \(P(110\leqq X\leqq 140)=0.433193\cdots\)。表の値 \(0.4332\) と小数第4位まで一致します。また \(0.4332\) は「およそ43%」なので、20万個の43%=約8万6千個という見当とも合います。
【定石】 正規分布の確率は「平均からいくつ分の標準偏差か」に直してから表を引く。\(\pm 1\sigma\) で約68%、\(\pm 2\sigma\) で約95% という目安を持っておくと検算になる。
(2) 信頼区間の幅から、必要な標本の大きさを逆算する
母平均を \(m\)g、母標準偏差を \(\sigma\)g とする。無作為に抽出した \(n\) 個のレモンの重さを \(W_{1},\ W_{2},\ \cdots,\ W_{n}\) で表すと、\(n\) が十分に大きいとき、標本平均 \(\overline{W}\) は近似的に正規分布 \(N\left(m,\ \right.\)カ\(\left.\right)\) に従う。また、\(m\) に対する信頼度95%の信頼区間を \(A\leqq m\leqq B\) と表すと、信頼区間の幅は \(B-A=\dfrac{\boxed{\text{キ}}}{\sqrt{n}}\) となる。したがって、母標準偏差を \(\sigma=20\) として、\(n\) に関する不等式 \(\dfrac{\boxed{\text{キ}}}{\sqrt{n}}\leqq 4\ \cdots\cdots\ ①\) を満たす自然数 \(n\) を求めればよい。①の両辺は正であるから、両辺を2乗して整理すると \(\left(\boxed{\text{キ}}\right)^{2}\leqq 16n\) となる。この不等式を満たす最小の自然数 \(n\) を \(n_{0}\) とすると、\(n_{0}=\)クケコである。(カの解答群)⓪ \(\sigma\) ① \(\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}\) ② \(\dfrac{\sqrt{\sigma}}{n}\) ③ \(\dfrac{\sigma}{n}\) ④ \(\sigma^{2}\) ⑤ \(\dfrac{\sigma^{2}}{\sqrt{n}}\) ⑥ \(\dfrac{\sigma^{2}}{n}\) ⑦ \(\dfrac{\sigma^{2}}{n^{2}}\) (キの解答群)⓪ \(\sigma\) ① \(1.65\sigma\) ② \(1.96\sigma\) ③ \(2\sigma\) ④ \(3.3\sigma\) ⑤ \(3.92\sigma\)
【型】信頼度95%の信頼区間は \(\overline{W}\pm 1.96\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}\)、幅はその2倍
【なぜこうするか】 \(N(\ ,\ )\) の第2引数は分散なので \(\dfrac{\sigma^{2}}{n}\)。カは⑥です(標準偏差の \(\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}\) を選ばないよう注意)。
信頼区間は \(\overline{W}-1.96\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}\leqq m\leqq\overline{W}+1.96\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}\) なので、幅は
\[B-A=2\times 1.96\times\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}=\dfrac{3.92\sigma}{\sqrt{n}}\]
幅は「片側の1.96倍」ではなく、その2倍です。信頼区間の片側の長さと全体の幅を取り違えないようにします。キは⑤です。
\(\sigma=20\) を入れて
\[\dfrac{3.92\times 20}{\sqrt{n}}\leqq 4\ \Longrightarrow\ \dfrac{78.4}{\sqrt{n}}\leqq 4\ \Longrightarrow\ \sqrt{n}\geqq 19.6\ \Longrightarrow\ n\geqq 384.16\]
これを満たす最小の自然数は385。クケコは385です。
【検算】 \(n=385\) のとき幅は \(\dfrac{78.4}{\sqrt{385}}=\dfrac{78.4}{19.621}=3.995\lt 4\) で条件を満たし、\(n=384\) なら \(\dfrac{78.4}{19.5959}=4.0008\gt 4\) で満たしません。境目が385で正しいことが数値でも確認できます。
【定石】 信頼区間の幅は \(\dfrac{1}{\sqrt{n}}\) に比例する。幅を半分にしたければ標本を4倍にする必要がある——この感覚を持っておくと検算が速い。
【よくあるミス】 \(n\geqq 384.16\) から \(n_{0}=384\) としてしまうこと。「以上」なので切り上げです。不等号の向きと端数処理はセットで確認します。
(3) 片側検定。対立仮説の向きを取り違えない
Q 地域で今年収穫されるレモンの重さの母平均 \(m\)g が過去の平均110g より軽いといえるかを、有意水準5%で仮説検定を行い検証したい。ただし、標本の大きさは400、母標準偏差は過去と同じ20g とする。帰無仮説は「\(m=110\)」、対立仮説は「サ」である。いま、帰無仮説が正しいと仮定する。標本の大きさ400は十分に大きいので、標本平均 \(\overline{W}\) は近似的に正規分布シに従う。無作為抽出した400個のレモンの重さの平均が108.2g となった。このとき、確率 \(P(\overline{W}\leqq 108.2)\) は \(0.\)スセソタとなる。この値をパーセント表示した値は有意水準5%よりチ。したがって、有意水準5%で今年収穫されるレモンの重さの母平均は110g より軽いとツ。(サの解答群)⓪ \(m\lt 110\) ① \(m\leqq 110\) ② \(m=110\) ③ \(m\geqq 110\) ④ \(m\gt 110\) (シの解答群)⓪ \(N(108.2,\ 400)\) ① \(N(108.2,\ 20)\) ② \(N(108.2,\ 1)\) ③ \(N(110,\ 400)\) ④ \(N(110,\ 20)\) ⑤ \(N(110,\ 1)\) (チの解答群)⓪ 小さいから、帰無仮説は棄却されない ① 小さいから、帰無仮説は棄却される ② 大きいから、帰無仮説は棄却されない ③ 大きいから、帰無仮説は棄却される (ツの解答群)⓪ 判断できる ① 判断できない
【型】対立仮説は「主張したいこと」、帰無仮説はその反対
【なぜこうするか】 太郎さんが検証したいのは「軽いといえるか」。したがって対立仮説は \(m\lt 110\) でサは⓪です。検定は「示したいこと」を対立仮説に置く——ここを逆にすると結論が全部ひっくり返ります。
帰無仮説 \(m=110\) のもとで \(\overline{W}\) の分散は \(\dfrac{\sigma^{2}}{n}=\dfrac{400}{400}=1\)。したがって \(\overline{W}\) は \(N(110,\ 1)\) に従い、シは⑤です。標準偏差が1という気持ちのよい数になるよう、標本の大きさ400が設定されています。
標準化すると
\[P(\overline{W}\leqq 108.2)=P\left(Z\leqq\dfrac{108.2-110}{1}\right)=P(Z\leqq-1.8)\]
標準正規分布は左右対称なので \(P(Z\leqq-1.8)=P(Z\geqq 1.8)=0.5-0.4641=0.0359\)。スセソタは0359です。
\(3.59\%\lt 5\%\) なので帰無仮説は棄却される(チは①)。したがって、有意水準5%で、母平均は110g より軽いと判断できる(ツは⓪)という結論になります。
【検算】 標準正規分布の累積分布関数で厳密に計算すると \(P(Z\leqq-1.8)=0.035930\cdots\)。表から求めた \(0.0359\) と一致します。また、平均から \(1.8\) 標準偏差も下振れするのは「めったにない」水準で、棄却という結論とも整合します。
【定石】 片側検定は「対立仮説の向き」に確率を計算する。「軽い」なら左側、「重い」なら右側。標準正規分布の対称性 \(P(Z\leqq-z)=P(Z\geqq z)\) を使って表を引く。
- 格子点は縦の直線で切って数え、\(\sum\) で足す。境界を含むかどうかで1ずれる(第4問(1))。
- \(\sum(2^{k}-1)\) は「等比の和」と「定数の和」に分ける。定数を \(n\) 個足すのを忘れない(第4問(2))。
- 「すべての \(n\) で成り立つ」は恒等式。展開して次数ごとに係数比較(第4問(3))。
- 正規分布の確率は「平均から何 \(\sigma\) 分か」に直してから表を引く(第5問(1))。
- 二項分布 \(B(n,p)\) の平均は \(np\)(第5問(1))。
- 信頼区間の幅は \(\dfrac{3.92\sigma}{\sqrt{n}}\)(片側 \(1.96\) の2倍)。幅を半分にするには標本を4倍に(第5問(2))。
- 対立仮説には「示したいこと」を置く。片側検定はその向きに確率を計算する(第5問(3))。
第6問(配点16・選択) ベクトル(球面上に正三角形が作れるか)
O を原点とする座標空間において、O を中心とする半径1の球面を \(S\) とする。\(S\) 上に二つの点 \(\mathrm{A}(1,\ 0,\ 0)\)、\(\mathrm{B}\left(a,\ \sqrt{1-a^{2}},\ 0\right)\) をとる。ただし、\(a\) は \(-1\lt a\lt 1\) を満たす実数とする。\(S\) 上の点 C を、\(\triangle\mathrm{ABC}\) が正三角形となるようにとれるかどうかを考えてみよう。
(1) ア1 イ4 ウ0 エ0 オ5
(2)(i) カ3 キ5 ク3 ケコ10 サ2 / (ii) シ0 / (3) ス3 セ4
(1) 合同から内積が等しいことを導き、\(x,\ y\) の条件式にする
点 C の座標を \((x,\ y,\ z)\) とする。C が \(S\) 上にあるとき \(\left|\overrightarrow{\mathrm{OC}}\right|^{2}=\)アである。これをベクトル \(\overrightarrow{\mathrm{OC}}\) の成分を用いて表すと \(x^{2}+y^{2}+z^{2}=\)ア\(\ \cdots\cdots\ ①\) となる。さらに、\(\triangle\mathrm{ABC}\) が正三角形であるとする。\(\triangle\mathrm{OAC}\) と \(\triangle\mathrm{OAB}\) は、対応する三組の辺の長さがそれぞれ等しいから合同である。したがって、対応する角の大きさも等しいから \(\overrightarrow{\mathrm{OA}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{OC}}=\)イが成り立つ。これをベクトルの成分を用いて表すと \(x=\)ウ\(\ \cdots\cdots\ ②\) となる。同様に \(\triangle\mathrm{OBC}\) と \(\triangle\mathrm{OAB}\) も合同であるから \(\overrightarrow{\mathrm{OB}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{OC}}=\)イが成り立ち、これをベクトルの成分を用いて表すと エ\(x+\)オ\(y=\)ウ\(\ \cdots\cdots\ ③\) となる。(イの解答群)⓪ \(0\) ① \(1\) ② \(\left|\overrightarrow{\mathrm{AB}}\right|\) ③ \(\left|\overrightarrow{\mathrm{AB}}\right|^{2}\) ④ \(\overrightarrow{\mathrm{OA}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{OB}}\) ⑤ \(\overrightarrow{\mathrm{OA}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{AB}}\) (ウ〜オの解答群)⓪ \(a\) ① \((1+a)\) ② \((1-a)\) ③ \(a^{2}\) ④ \((1-a^{2})\) ⑤ \(\sqrt{1-a^{2}}\)
【型】内積は「長さ×長さ×\(\cos\)」。長さが同じなら、角が等しい ⇔ 内積が等しい
【なぜこうするか】 C は球面上の点で、しかも \(\triangle\mathrm{ABC}\) が正三角形。この2つの条件を座標の方程式に翻訳するのがこの小問の仕事です。
まず①。C が半径1の球面上にあるので \(\left|\overrightarrow{\mathrm{OC}}\right|=1\)、よって \(\left|\overrightarrow{\mathrm{OC}}\right|^{2}=1\)。アは①です。
次が本題。\(\triangle\mathrm{OAC}\) と \(\triangle\mathrm{OAB}\) は、OA が共通、\(\mathrm{OC}=\mathrm{OB}=1\)(ともに半径)、\(\mathrm{AC}=\mathrm{AB}\)(正三角形)で三辺相等。したがって合同で、\(\angle\mathrm{AOC}=\angle\mathrm{AOB}\) です。
内積は \(\overrightarrow{\mathrm{OA}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{OC}}=\left|\overrightarrow{\mathrm{OA}}\right|\left|\overrightarrow{\mathrm{OC}}\right|\cos\angle\mathrm{AOC}\) で、長さはどちらも1。角が等しいので \(\overrightarrow{\mathrm{OA}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{OC}}=\overrightarrow{\mathrm{OA}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{OB}}\)。イは④です。
成分で書くと \(\overrightarrow{\mathrm{OA}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{OC}}=x\)、\(\overrightarrow{\mathrm{OA}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{OB}}=a\)。よって \(x=a\) でウは⓪です。
同じ議論を B について行うと \(\overrightarrow{\mathrm{OB}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{OC}}=a\)。成分では
\[ax+\sqrt{1-a^{2}}\,y=a\]
したがってエは⓪、オは⑤です。
【検算】 数式処理系で内積を計算すると \(\overrightarrow{\mathrm{OA}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{OB}}=a\)、\(\overrightarrow{\mathrm{OA}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{OC}}=x\)、\(\overrightarrow{\mathrm{OB}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{OC}}=ax+y\sqrt{1-a^{2}}\) が得られ、②③の形と一致しました。
【定石】 球面上の点どうしはすべて原点からの距離が等しい。だから「辺の長さが等しい」は「原点から見た角が等しい」=「内積が等しい」に翻訳できる。
(2) 具体的な \(a\) で連立を解き、\(z^{2}\) の符号で存在を判定する
\(a=\dfrac{3}{5}\) のとき、②と③を満たす実数 \(x,\ y\) は \(x=\dfrac{\boxed{\text{カ}}}{\boxed{\text{キ}}}\)、\(y=\dfrac{\boxed{\text{ク}}}{\boxed{\text{ケコ}}}\) である。この \(x,\ y\) に対して、①を満たす実数 \(z\) はサ。したがって、\(\triangle\mathrm{ABC}\) が正三角形となる \(S\) 上の点 C はサ。次に \(a=-\dfrac{3}{5}\) のときも調べよう。(i)と同様に考えると、\(\triangle\mathrm{ABC}\) が正三角形となる \(S\) 上の点 C はシことがわかる。(解答群)⓪ ない ① ちょうど一つある ② ちょうど二つある ③ ちょうど三つある ④ ちょうど四つある ⑤ 無限に多くある
【型】\(z^{2}\) の値の符号で、実数解の個数を判定する
【なぜこうするか】 ②③は \(x,\ y\) だけの連立1次方程式なので、\(z\) を含みません。だから先に \(x,\ y\) を確定させ、最後に①で \(z\) を決めるのが正しい順序。そして \(z^{2}\) の符号が正なら2個、0なら1個、負なら0個——点 C の個数はここで決まります。
\(a=\dfrac{3}{5}\) のとき。②より \(x=\dfrac{3}{5}\)。カは3、キは5です。\(\sqrt{1-a^{2}}=\sqrt{1-\dfrac{9}{25}}=\dfrac{4}{5}\) なので③は
\[\dfrac{3}{5}\cdot\dfrac{3}{5}+\dfrac{4}{5}y=\dfrac{3}{5}\ \Longrightarrow\ \dfrac{4}{5}y=\dfrac{15}{25}-\dfrac{9}{25}=\dfrac{6}{25}\ \Longrightarrow\ y=\dfrac{3}{10}\]
クは3、ケコは10です。①に入れて
\[z^{2}=1-\dfrac{9}{25}-\dfrac{9}{100}=\dfrac{100-36-9}{100}=\dfrac{55}{100}=\dfrac{11}{20}\gt 0\]
正なので \(z=\pm\sqrt{\dfrac{11}{20}}\) の2つ。サは②で、点 C もちょうど二つあります(\(xy\) 平面に関して対称な位置に1つずつ)。
\(a=-\dfrac{3}{5}\) のとき。\(x=-\dfrac{3}{5}\)、\(\sqrt{1-a^{2}}=\dfrac{4}{5}\) は同じ。③は
\[\left(-\dfrac{3}{5}\right)\left(-\dfrac{3}{5}\right)+\dfrac{4}{5}y=-\dfrac{3}{5}\ \Longrightarrow\ \dfrac{4}{5}y=-\dfrac{15}{25}-\dfrac{9}{25}=-\dfrac{24}{25}\ \Longrightarrow\ y=-\dfrac{6}{5}\]
①に入れると \(z^{2}=1-\dfrac{9}{25}-\dfrac{36}{25}=1-\dfrac{45}{25}=-\dfrac{4}{5}\lt 0\) で実数 \(z\) は存在しません。シは⓪です。
\(a\) が負のとき A と B が遠く離れすぎて(\(\mathrm{AB}\) が長くなりすぎて)、半径1の球面上に正三角形の3つ目の頂点が取れなくなる、というのが幾何的な意味です。
【検算】 \(a=0.6\) のとき \(\mathrm{C}\left(0.6,\ 0.3,\ \sqrt{0.55}\right)\) として3辺を数値計算すると \(\mathrm{AB}=\mathrm{BC}=\mathrm{CA}=0.894427\) で確かに正三角形、さらに \(\left|\overrightarrow{\mathrm{OC}}\right|=1.000000\) で球面上にもあります。\(a=-0.6\) では \(y=-1.2\) となり \(x^{2}+y^{2}=0.36+1.44=1.8\gt 1\) で、①を満たす \(z\) がないことが直接わかります。
【定石】 「点が存在するか」は最後に残った変数の2乗が0以上かで判定する。存在の個数(0個・1個・2個)まで同時に決まる。
(3) \(a\) を文字のまま残して、存在条件を不等式で出す
\(\triangle\mathrm{ABC}\) が正三角形となる \(S\) 上の点 C があるための、\(a\) に関する条件を見つけよう。実数 \(x,\ y,\ z\) は①②③を満たすとする。②と③から \(x=\)ウ、\(y=\dfrac{\boxed{\text{ウ}}\left(1-\boxed{\text{エ}}\right)}{\boxed{\text{オ}}}\) である。このとき、①から \(z^{2}=\)ア\(-x^{2}-y^{2}=\dfrac{\boxed{\text{ス}}}{1+a}\) となる。さらに、\(z^{2}\geqq 0\)、\(1+a\gt 0\) であるからス\(\geqq 0\) である。逆に、ス\(\geqq 0\) のとき、①②③を満たす実数 \(x,\ y,\ z\) があることがわかる。以上のことから、セは、\(\triangle\mathrm{ABC}\) が正三角形となる \(S\) 上の点 C があるための必要十分条件である。(スの解答群)⓪ \(1-2a\) ① \((1-a)^{2}\) ② \((1+2a)^{2}\) ③ \((1+2a)(1-a)\) ④ \((1-2a)(1-a)\) ⑤ \((1-2a^{2})(1+2a)\) ⑥ \((1+2a^{2})(1-a)\) ⑦ \((1-2a^{2})(1-a)\) (セの解答群)⓪ \(-1\lt a\lt 1\) ① \(-1\lt a\leqq\dfrac{1}{2}\) ② \(-\dfrac{\sqrt{2}}{2}\leqq a\leqq\dfrac{\sqrt{2}}{2}\) ③ \(-\dfrac{1}{2}\leqq a\leqq\dfrac{1}{2}\) ④ \(-\dfrac{1}{2}\leqq a\lt 1\) ⑤ \(\dfrac{1}{2}\leqq a\lt 1\) ⑥ \(-1\lt a\leqq-\dfrac{1}{2}\) または \(\dfrac{1}{2}\leqq a\lt 1\) ⑦ \(-1\lt a\leqq-\dfrac{\sqrt{2}}{2}\) または \(\dfrac{\sqrt{2}}{2}\leqq a\lt 1\)
【型】約分できる形に因数分解してから符号を調べる
【なぜこうするか】 (2)でやったことを \(a\) のまま繰り返します。③から
\[a\cdot a+\sqrt{1-a^{2}}\,y=a\ \Longrightarrow\ y=\dfrac{a(1-a)}{\sqrt{1-a^{2}}}\]
これは問題文の「ウ×(1−エ)÷オ」の形そのものです。①に代入すると
\[z^{2}=1-a^{2}-\dfrac{a^{2}(1-a)^{2}}{1-a^{2}}=\dfrac{(1-a^{2})^{2}-a^{2}(1-a)^{2}}{1-a^{2}}\]
ここで \(1-a^{2}=(1-a)(1+a)\) と分解するのが山場です。分子は
\[(1-a)^{2}(1+a)^{2}-a^{2}(1-a)^{2}=(1-a)^{2}\left\{(1+a)^{2}-a^{2}\right\}=(1-a)^{2}(1+2a)\]
分母は \((1-a)(1+a)\) なので、\((1-a)\) が1つ約分できて
\[z^{2}=\dfrac{(1-a)(1+2a)}{1+a}\]
よってスは③です。
最後に条件。\(-1\lt a\lt 1\) では \(1+a\gt 0\) かつ \(1-a\gt 0\) なので、\(z^{2}\geqq 0\) は \(1+2a\geqq 0\) と同値。すなわち \(a\geqq-\dfrac{1}{2}\)。もとの範囲と合わせて
\[-\dfrac{1}{2}\leqq a\lt 1\]
セは④です。(2)で調べた \(a=\dfrac{3}{5}\) はこの範囲に入り、\(a=-\dfrac{3}{5}\) は入らない——結果とぴったり合います。
【検算】 数式処理系で \(1-x^{2}-y^{2}\) を計算させると \(\dfrac{-2a^{2}+a+1}{a+1}\) が返り、これを因数分解すると \(\dfrac{(1-a)(1+2a)}{1+a}\) と一致しました。不等式 \((1+2a)(1-a)\geqq 0\) の解も区間 \(\left[-\dfrac{1}{2},\ 1\right]\) と求まり、\(-1\lt a\lt 1\) と合わせて \(-\dfrac{1}{2}\leqq a\lt 1\) になります。
【定石】 \(1-a^{2}\) が出てきたら、\((1-a)(1+a)\) に因数分解できないか確認します。今回は分母と分子の共通因数を約分でき、符号を調べやすい形になります。
第7問(配点16・選択) 複素数平面(垂直条件を純虚数で表す)
\(\alpha,\ \beta,\ \gamma\) を異なる複素数とし、複素数平面上に3点 \(\mathrm{A}(\alpha)\)、\(\mathrm{B}(\beta)\)、\(\mathrm{C}(\gamma)\) をとる。直線 AB と直線 AC の関係について考えよう。以下、複素数の偏角は0以上 \(2\pi\) 未満とする。
(1) ア4 イ8 ウ4 エ2 オ3 カ4
(2) キ2 ク0 / (3)(i) ケ6 コ0 / (ii) サ0 / (iii) シ1
(1) 2点を引き算してから割る。商の偏角が2直線のなす角
\(\alpha=3+2i\)、\(\beta=7\)、\(\gamma=7+10i\) の場合を考える。\(\dfrac{\gamma-\alpha}{\beta-\alpha}\) の偏角を求めよう。\(\gamma-\alpha=\)ア\(+\)イ\(i\)、\(\beta-\alpha=\)ウ\(-\)エ\(i\) であるから \(\dfrac{\gamma-\alpha}{\beta-\alpha}=\)オであり、オの偏角はカである。(オの解答群)⓪ \(i\) ① \(1+i\) ② \(2\) ③ \(2i\) ④ \(-i\) ⑤ \(1-i\) ⑥ \(-2\) ⑦ \(-2i\) (カの解答群)⓪ \(0\) ① \(\dfrac{\pi}{6}\) ② \(\dfrac{\pi}{4}\) ③ \(\dfrac{\pi}{3}\) ④ \(\dfrac{\pi}{2}\) ⑤ \(\dfrac{3}{4}\pi\) ⑥ \(\pi\) ⑦ \(\dfrac{5}{4}\pi\) ⑧ \(\dfrac{3}{2}\pi\) ⑨ \(\dfrac{7}{4}\pi\)
【型】\(\dfrac{\gamma-\alpha}{\beta-\alpha}\) の偏角=\(\overrightarrow{\mathrm{AB}}\) から \(\overrightarrow{\mathrm{AC}}\) への回転角
【なぜこうするか】 複素数の割り算では、偏角は引き算になります。\(\gamma-\alpha\) は A から C へのベクトル、\(\beta-\alpha\) は A から B へのベクトルです。したがって商の偏角は、AB を AC に重ねるための回転角を表します。2直線の角度を一つの複素数で扱えることが、この比を使う理由です。
\[\gamma-\alpha=(7-3)+(10-2)i=4+8i,\qquad \beta-\alpha=(7-3)+(0-2)i=4-2i\]
アは4、イは8、ウは4、エは2です。割り算は分母の共役をかけます。
\[\dfrac{4+8i}{4-2i}=\dfrac{(4+8i)(4+2i)}{(4-2i)(4+2i)}=\dfrac{16+8i+32i+16i^{2}}{16+4}=\dfrac{40i}{20}=2i\]
オは③です。\(2i\) は正の虚軸上の点なので偏角は \(\dfrac{\pi}{2}\)。カは④です。つまりこの場合、AB と AC は垂直に交わっています。
【検算】 数式処理系で \(\dfrac{\gamma-\alpha}{\beta-\alpha}\) を計算すると \(2i\)、その偏角は \(\dfrac{\pi}{2}\) と返りました。ベクトルで直接確かめても \(\overrightarrow{\mathrm{AB}}=(4,-2)\)、\(\overrightarrow{\mathrm{AC}}=(4,8)\) の内積は \(16-16=0\) で垂直です。
【定石】 3点の位置関係は\(\dfrac{\gamma-\alpha}{\beta-\alpha}\) ひとつに集約される。実数なら3点は一直線上、純虚数なら垂直、絶対値が1なら \(\mathrm{AB}=\mathrm{AC}\)。
(2) 「純虚数」は「共役を足すと0」で言い換える
\(w=\dfrac{\gamma-\alpha}{\beta-\alpha}\) とおく。直線 AB と直線 AC が垂直に交わるのは、\(w\) の偏角が \(\dfrac{\pi}{2}\) または \(\dfrac{3}{2}\pi\) のときである。このとき、\(w\) はキであるから \(w+\overline{w}=\)クである。逆に、\(w\neq 0\) に注意すると、\(w+\overline{w}=\)クのとき、\(w\) はキであるので、直線 AB と直線 AC が垂直に交わる。(キの解答群)⓪ 0でない実数 ① \(1+i\) または \(1-i\) ② 純虚数(実部が0である虚数) ③ \(-1+i\) または \(-1-i\) (クの解答群)⓪ \(0\) ① \(1\) ② \(2\) ③ \(i\) ④ \(2i\) ⑤ \(-1\) ⑥ \(-2\) ⑦ \(-i\)
【型】\(w+\overline{w}\) は実部の2倍、\(w-\overline{w}\) は虚部の \(2i\) 倍
【なぜこうするか】 偏角が \(\dfrac{\pi}{2}\) または \(\dfrac{3}{2}\pi\) とは、\(w\) が虚軸上(原点を除く)にあるということ。つまり純虚数で、キは②です。
ここからが本題。「純虚数」は「実部が0」ですが、この形のままでは計算に使えません。実部を複素数の演算だけで書き直すと \(\mathrm{Re}(w)=\dfrac{w+\overline{w}}{2}\)。よって
「実部が0」\(\ \Longleftrightarrow\ w+\overline{w}=0\) です。
クは⓪です。逆向きも \(w\neq 0\) の下で成り立ちます(\(w+\overline{w}=0\) かつ \(w\neq 0\) なら純虚数)。
この形に言い換える理由は、\(w\) が \(z\) の分数式で与えられたときも、式をそのまま代入して計算できるからです。(3)では、この条件を使って点 \(z\) の軌跡を求めます。
【検算】 (1)の \(w=2i\) で確かめると \(w+\overline{w}=2i+(-2i)=0\) で条件を満たし、実際に垂直でした。一方 \(w=1+i\)(偏角 \(\dfrac{\pi}{4}\))なら \(w+\overline{w}=2\neq 0\) で垂直ではありません。
【定石】 複素数の条件は「共役との和・差・積」で書き換えると計算しやすくなる。実数 ⇔ \(w=\overline{w}\)、純虚数 ⇔ \(w+\overline{w}=0\)、絶対値 ⇔ \(w\overline{w}=|w|^{2}\)。
(3)(i) \(z\overline{z}\) をかけて、円の方程式の形に整える
\(z\) は \(0,\ 2,\ -2\) でない複素数とする。\(\alpha=z\)、\(\beta=2\)、\(\gamma=\dfrac{4}{z}\) とする。\(\dfrac{\gamma-\alpha}{\beta-\alpha}=\dfrac{\frac{4}{z}-z}{2-z}=1+\dfrac{2}{z}\) が成り立つので、直線 AB と直線 AC が垂直に交わるための必要十分条件は \(\left(1+\dfrac{2}{z}\right)+\overline{\left(1+\dfrac{2}{z}\right)}=\)クである。これは \(2+\dfrac{2}{z}+\dfrac{2}{\overline{z}}=\)クと変形できる。さらに、この両辺に \(z\overline{z}\) をかけて整理すると、直線 AB と直線 AC が垂直に交わるための必要十分条件はケであることがわかる。したがって、直線 AB と直線 AC が垂直に交わるような点 \(z\) 全体を複素数平面上に図示するとコである。(ケの解答群)⓪ \(|z|=|z-4|\) ① \(|z|=|z-2|\) ② \(|z|=|z+4|\) ③ \(|z+1|=|z-1|\) ④ \(|z-1|=1\) ⑤ \(|z|=2\) ⑥ \(|z+1|=1\) ⑦ \(|z|=\sqrt{2}\)
(コ・サ・シの図選択肢)⓪ 中心 \(-1\)、半径1の円(原点と \(-2\) を通る) ① 中心1、半径1の円(原点と2を通る) ② 原点中心・半径 \(\sqrt{2}\) の円 ③ 原点中心・半径2の円 ④ 直線 \(x=-2\) ⑤ 虚軸 \(x=0\) ⑥ 直線 \(x=1\) ⑦ 直線 \(x=2\)。円の選択肢では、問題文で除外された点は軌跡に含めない。
【型】\(z\overline{z}=|z|^{2}\)、\((z+c)(\overline{z}+\overline{c})=|z+c|^{2}\)
【なぜこうするか】 まず与式の変形を確認します。分子は \(\dfrac{4-z^{2}}{z}=\dfrac{(2-z)(2+z)}{z}\) なので、分母の \(2-z\) と約分できて \(\dfrac{2+z}{z}=1+\dfrac{2}{z}\)。約分できる形に因数分解するのが最初の関門です。
(2)の条件を当てはめると \(2+\dfrac{2}{z}+\dfrac{2}{\overline{z}}=0\)。分母を払うため両辺に \(z\overline{z}\) をかけると
\[2z\overline{z}+2\overline{z}+2z=0\ \Longrightarrow\ z\overline{z}+z+\overline{z}=0\]
円の方程式 \(|z+1|^{2}=1\) の形を作るため、両辺に1を足して平方完成します。
\[z\overline{z}+z+\overline{z}+1=1\ \Longrightarrow\ (z+1)(\overline{z}+1)=1\ \Longrightarrow\ |z+1|^{2}=1\]
よって \(|z+1|=1\) でケは⑥です。これは中心 \(-1\)、半径1の円で、原点と \(-2\) を通ります(ただし \(z\neq 0,\ 2,\ -2\) なので原点と \(-2\) は除く)。コは⓪です。
【検算】 \(z\) を複素数平面上で細かく動かし、\(\dfrac{\gamma-\alpha}{\beta-\alpha}\) の実部が0になる点を数値的に拾い集めたところ、集まった770点すべてで \(|z+1|\) が \(0.9973\) から \(1.0029\) の範囲に入りました(探索の刻み幅による誤差)。軌跡が中心 \(-1\)・半径1の円であることが実測で確かめられます。
【定石】 \(z\overline{z}+cz+\overline{c}\,\overline{z}+d=0\) の形は、\(|c|^{2}\) を足して平方完成すれば \(|z+\overline{c}|^{2}=|c|^{2}-d\)、つまり円になる。複素数平面の円の方程式はこの形。
(3)(ii)(iii) 符号を変えたとき、何が変わって何が変わらないか
(ii) (i)の \(\alpha,\ \beta,\ \gamma\) をそれぞれ \(-1\) 倍した複素数 \(\alpha’=-z\)、\(\beta’=-2\)、\(\gamma’=-\dfrac{4}{z}\) について考える。複素数平面上の異なる3点 \(\mathrm{A}'(\alpha’)\)、\(\mathrm{B}'(\beta’)\)、\(\mathrm{C}'(\gamma’)\) について、直線 A’B’ と直線 A’C’ が垂直になるような点 \(z\) 全体を複素数平面上に図示するとサである。(iii) (i)の \(\alpha,\ \beta,\ \gamma\) における \(z\) を \(-z\) に置き換え、\(\alpha”=-z\)、\(\beta”=2\)、\(\gamma”=-\dfrac{4}{z}\) について考える。複素数平面上の異なる3点 \(\mathrm{A}”(\alpha”)\)、\(\mathrm{B}”(\beta”)\)、\(\mathrm{C}”(\gamma”)\) について、直線 A”B” と直線 A”C” が垂直になるような点 \(z\) 全体を複素数平面上に図示するとシである。(①は原点と2を通る半径1の円。)
【型】比 \(\dfrac{\gamma-\alpha}{\beta-\alpha}\) を計算し直して、(i)と同じ形になるか見る
【なぜこうするか】 図形の言葉で考えると混乱します。比を計算し直すだけで決着がつきます。
(ii):3点すべてを \(-1\) 倍した場合。
\[\dfrac{\gamma’-\alpha’}{\beta’-\alpha’}=\dfrac{-\left(\gamma-\alpha\right)}{-\left(\beta-\alpha\right)}=\dfrac{\gamma-\alpha}{\beta-\alpha}\]
分子・分母の両方に \(-1\) が出るので約分されて消えます。比がまったく同じなので、条件も軌跡も(i)と同一。サは⓪です。
幾何的にも当然で、図形全体を原点対称に移しても角度は変わらないからです。
(iii):\(z\) だけを \(-z\) に置き換えた場合。今度は \(\beta”=2\) が \(-2\) になっていないので、\(-1\) は約分されません。
\[\dfrac{\gamma”-\alpha”}{\beta”-\alpha”}=\dfrac{-\frac{4}{z}+z}{2+z}=\dfrac{\frac{z^{2}-4}{z}}{2+z}=\dfrac{(z-2)(z+2)}{z(z+2)}=\dfrac{z-2}{z}=1-\dfrac{2}{z}\]
(i)の \(1+\dfrac{2}{z}\) と比べると符号だけが違います。同じ手順で
\[2-\dfrac{2}{z}-\dfrac{2}{\overline{z}}=0\ \Longrightarrow\ z\overline{z}-z-\overline{z}=0\ \Longrightarrow\ (z-1)(\overline{z}-1)=1\ \Longrightarrow\ |z-1|=1\]
中心が \(-1\) から \(1\) に移り、原点と2を通る円になります。シは①です。
【検算】 (ii)については数式処理系で比を計算させると、(i)と同じ \(\dfrac{z+2}{z}\) が返りました。(iii)は \(\dfrac{z-2}{z}\) です。数値探索でも、(ii)の軌跡は \(|z+1|\) が \(0.9973\)〜\(1.0029\)、(iii)の軌跡は \(|z-1|\) が \(0.9971\)〜\(1.0029\) に収まり、それぞれ中心 \(-1\)・中心 \(1\) の単位円であることが確認できました。
【定石】 設定を変更した小問では、比をもう一度計算して比較します。分子・分母に同じ因子が現れれば約分されて条件は変わらず、片方だけが変われば符号や円の中心が変わります。
【よくあるミス】 (ii)を「図形が変わったのだから軌跡も変わるはず」と考えて計算し直さないこと。相似変換(回転・拡大・原点対称)は角度を保つので、垂直条件は不変です。
- 球面上の点は原点からの距離が等しい。だから「辺が等しい」は「内積が等しい」に翻訳できる(第6問(1))。
- 存在の判定は「最後に残った変数の2乗の符号」。正なら2個、0なら1個、負なら0個(第6問(2))。
- \(1-a^{2}\) は \((1-a)(1+a)\) に因数分解。約分してから符号を判定する(第6問(3))。
- \(\dfrac{\gamma-\alpha}{\beta-\alpha}\) に3点の位置関係が集約される。実数なら一直線、純虚数なら垂直(第7問(1)(2))。
- 純虚数 ⇔ \(w+\overline{w}=0\)。共役との和・差・積で条件を書き換えると計算に乗る(第7問(2))。
- \(z\overline{z}+z+\overline{z}=0\) は1を足して \(|z+1|^{2}=1\)。複素数平面の円は平方完成で出す(第7問(3)(i))。
- 設定を変えた小問は比を計算し直す。同じ因子が約分されれば結論は変わらない(第7問(3)(ii)(iii))。
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