2025年(令和7年度)大学入学共通テスト 追試験の数学Ⅰ・数学Aについて、問題文・条件・選択肢・必要な図表の情報を本文に再掲したうえで、全問の解答と解説を掲載します。執筆は数強塾代表・藤原進之介です。
追試験は本試験とは異なる問題で、追加の演習や解法の確認に利用できます。本試験を解いた後に、同じ出題範囲を別の題材で復習したい方に適しています。
第1問から第4問まで全27問を公開しています。
この記事の目次
- 第1問〔1〕(配点30のうち) 分数を小数で表す仕組み(循環小数)
- 第1問〔2〕 飛行機を見上げる角(三角比)
- 第2問〔1〕(配点30のうち) 2点を通る放物線の族
- 第2問〔2〕 相関係数と「見かけの相関」
- 第3問(配点20) 内心・内接円の接点と、4点が同一円周上にある条件
- 第4問(配点20) 「同時に2枚」と「1枚を2回」の違い(集合の共通部分の確率)
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第1問〔1〕(配点30のうち) 分数を小数で表す仕組み(循環小数)
分数を小数で表すときの仕組みについて考えよう。例えば \(\dfrac{2}{13}\) は、割り算を行うと小数で表すことができる。この場合、1回目の割り算の余りは7で、2回目の割り算の余りは5である。\(\dfrac{2}{13}\) 以外の分数の場合も同様に、1回目の割り算の余り、2回目の割り算の余り、3回目の割り算の余り、… ということにする。
(1) ア8 イ4 ウ6 / (2) エ1 オ1 カ2
(3)(i) キ5 / (ii) ク5 ケ6 コ8 サ1 シ1
(1) 実際に割り算して循環節を見つける
\(\dfrac{2}{13}\) を小数で表すと \(0.\dot{1}53ab\dot{c}\) という循環小数となる。ただし、\(a\)、\(b\)、\(c\) は0から9までの数字とする。このとき \(a=\)ア、\(b=\)イ、\(c=\)ウである。
【型】筆算の「余り」を追いかける
【なぜこうするか】 \(2\div 13\) の筆算を、余りに注目しながら進めます。「余りを10倍して13で割る」を繰り返すだけです。
\[20\div 13=1\ \cdots\ 7\quad\to\quad 70\div 13=5\ \cdots\ 5\quad\to\quad 50\div 13=3\ \cdots\ 11\]
\[110\div 13=8\ \cdots\ 6\quad\to\quad 60\div 13=4\ \cdots\ 8\quad\to\quad 80\div 13=6\ \cdots\ 2\]
6回目で余りが最初の2に戻りました。ここから先はまったく同じ計算の繰り返しになります。つまり
\[\dfrac{2}{13}=0.\dot{1}5384\dot{6}\]
アは8、イは4、ウは6です。循環節は153846の6桁。
【検算】 プログラムで割り算を8回続けると、商が \(1,5,3,8,4,6,1,5\)、余りが \(7,5,11,6,8,2,7,5\)。6回で余りが一巡して同じ並びが再開しています ✓。\(\dfrac{2}{13}=0.153846153846\ldots\) です。
【定石】 循環小数の循環節を求めるには余りだけを追えばよい。同じ余りが再び出た瞬間、そこから循環が始まる。
(2) なぜ必ず「有限小数か循環小数」になるのか
\(m\lt n\) である自然数 \(m\)、\(n\) に対し、\(\dfrac{m}{n}\) を計算例1のようにして小数で表すことを考える。\(m\) を \(n\) で割ったときの各回の割り算の余りに着目すると、余りに0が出てくる場合は、\(\dfrac{m}{n}\) はエとなる。余りに0が出てこない場合はオから、\(\dfrac{m}{n}\) はカとなる。(エ、カの解答群。同じものを繰り返し選んでもよい。)⓪ 整数 ① 有限小数 ② 循環小数 ③ 循環しない無限小数 (オの解答群)⓪ 割り算を続けても同じ余りが出てくることはない ① 割り算を続けると必ず同じ余りが出てくる
【型】余りのとり得る値は有限個(鳩の巣原理)
【なぜこうするか】 \(n\) で割った余りは \(0,\,1,\,2,\,\ldots,\,n-1\) の\(n\) 通りしかありません。余りの候補が有限個であることを利用します。
余りに0が出る場合:そこで割り算が終わるので、それ以降の桁はすべて0。つまり小数点以下が有限桁で止まる有限小数です。エは①。
(\(m\lt n\) としているので \(\dfrac{m}{n}\) は1より小さく、整数にはなりません。だから⓪ではなく①です。)
余りに0が出ない場合:余りは \(1\) から \(n-1\) までの \(n-1\) 通り。割り算は無限に続くので、遅くとも \(n\) 回目までには、以前に出た余りと同じものが必ず現れます。これが鳩の巣原理です。オは①。
同じ余りが出れば、そこから先の計算は前とまったく同じ。したがって商の並びも繰り返され、循環小数になります。カは②。
この議論から、分数は必ず有限小数か循環小数になり、「循環しない無限小数」(=無理数)にはなりえないことが証明されました。\(\sqrt{2}\) や \(\pi\) が分数で表せない理由の、裏返しの説明になっています。
【検算】 \(\dfrac{2}{13}\) では余りが \(7,5,11,6,8,2\) と6種類現れ、7回目で最初の余り2に戻りました。\(n=13\) なので余りの候補は最大12通り、実際には6通りで一巡しています(\(6\) は \(12\) の約数)✓。
【定石】 「候補が有限個なのに無限に続けるなら、必ずどこかで重複する」——鳩の巣原理。循環の存在証明はいつもこの形。
(3)(i) 小数点をずらした循環小数を分数にする
太郎さんと花子さんは、(1)の循環小数 \(0.\dot{1}53ab\dot{c}\) の小数部分を一つずつずらして得られる循環小数 \(0.\dot{5}3abc\dot{1}\) について話している。太郎「\(0.\dot{5}3abc\dot{1}\) は \(0.\dot{1}53ab\dot{c}\times 10\) からその整数部分の1を引いたものなので、分数で表すには \(0.\dot{5}3abc\dot{1}=\dfrac{2}{13}\times 10-1=\dfrac{20-13}{13}=\dfrac{7}{13}\) とすればよいね。さらにずらした \(0.\dot{3}abc1\dot{5}\) などもこの方法で求められるね。」花子「分子の引き算 \(20-13\) は、計算例1の1回目の割り算の余りを計算するときにやったよ。だから2を13で割ったときの各回の割り算の余りに着目して考えると、さらにずらしたものも、太郎さんがしたような計算をしなくても求められるよ。」 (i) 循環小数 \(0.\dot{3}abc1\dot{5}\) は \(0.\dot{3}abc1\dot{5}=\dfrac{7}{13}\times 10-\)キ\(=\dfrac{70-13\times\boxed{\text{キ}}}{13}\) であるが、この分子の引き算 \(70-13\times\)キは、計算例1の2回目の割り算の余りを求めるときの引き算と同じである。
【型】10倍して整数部分を引く
【なぜこうするか】 \(\dfrac{7}{13}=0.\dot{5}3846\dot{1}\) を10倍すると \(5.\dot{3}8461\dot{5}\)。整数部分の5を引けば \(0.\dot{3}8461\dot{5}\) になります。したがってキは5です。
\[0.\dot{3}abc1\dot{5}=\dfrac{7}{13}\times 10-5=\dfrac{70-65}{13}=\dfrac{5}{13}\]
ここで花子さんが指摘していることが面白い。この引き算 \(70-13\times 5=5\) は、計算例1の2回目の割り算「\(70\div 13=5\) 余り5」そのものです。
つまり、「小数点を1つずらす」と「割り算を1回進める」がぴったり対応している。ずらした循環小数の分子は、筆算の各回の余りをそのまま読めばよいのです。太郎さんのように \(\times 10\) して引き算する必要はありません。
【検算】 \(\dfrac{5}{13}=0.384615384615\ldots\) を確認 ✓。また \(\dfrac{7}{13}\times 10-5=\dfrac{5}{13}\) も有理数のまま計算して一致しました。計算例1の余りの列は \(7,5,11,6,8,2\) で、2回目の余りがちょうど5です ✓。
【定石】 循環小数を分数にするなら「\(10^{k}\) 倍して引く」。この問題では、その引き算が筆算の余りの計算と同じであることを利用します。
(3)(ii) 余りの列から4つの分子をまとめて求める
次の四つの循環小数 \(0.\dot{3}abc1\dot{5}\)、\(0.\dot{a}bc15\dot{3}\)、\(0.\dot{b}c153\dot{a}\)、\(0.\dot{c}153a\dot{b}\) をそれ以上約分できない分数で表したとき、その分子を小さい順に並べるとク、ケ、コ、サシである。
【型】「1つずらす」=「余りの列を1つ進める」
【なぜこうするか】 花子さんの発見をそのまま使います。\(\dfrac{2}{13}\) の筆算で出た余りの列は
\[7,\quad 5,\quad 11,\quad 6,\quad 8,\quad 2\]
そして「\(k\) 個ずらした循環小数の分子は、\(k\) 回目の割り算の余り」です。実際にさきほど確かめたとおり、1つずらした \(0.\dot{5}3abc\dot{1}\) の分子は7(1回目の余り)、2つずらした \(0.\dot{3}abc1\dot{5}\) の分子は5(2回目の余り)でした。
そこで、問われている4つを見ます。\(a=8\)、\(b=4\)、\(c=6\) なので循環節は \(1,5,3,8,4,6\)。
- \(0.\dot{3}abc1\dot{5}=0.\dot{3}8461\dot{5}\):2つずらし → 2回目の余り5
- \(0.\dot{a}bc15\dot{3}=0.\dot{8}4615\dot{3}\):3つずらし → 3回目の余り11
- \(0.\dot{b}c153\dot{a}=0.\dot{4}6153\dot{8}\):4つずらし → 4回目の余り6
- \(0.\dot{c}153a\dot{b}=0.\dot{6}1538\dot{4}\):5つずらし → 5回目の余り8
分母はいずれも13で、13は素数なので約分は起こりません(分子はどれも13の倍数ではない)。分子を小さい順に並べると
\[5,\quad 6,\quad 8,\quad 11\]
クは5、ケは6、コは8、サシは11です。
【検算】 4つを愚直に分数化して確かめました。\(\dfrac{384615}{999999}=\dfrac{5}{13}\)、\(\dfrac{846153}{999999}=\dfrac{11}{13}\)、\(\dfrac{461538}{999999}=\dfrac{6}{13}\)、\(\dfrac{615384}{999999}=\dfrac{8}{13}\)。すべて余りの列と一致しました ✓。ついでに残る2つも \(\dfrac{153846}{999999}=\dfrac{2}{13}\)、\(\dfrac{538461}{999999}=\dfrac{7}{13}\) で、6つの巡回シフトが \(\dfrac{k}{13}\) の形を全部で6種類作っていることが確認できます。
【定石】 \(\dfrac{1}{p}\)(\(p\) は素数)の循環節を巡回シフトすると、\(\dfrac{k}{p}\) たちが順に現れる。この対応の正体は「筆算の余りの列」。\(\dfrac{1}{7}=0.\dot{1}4285\dot{7}\) でも同じ現象が起きるので、試してみると面白い。
第1問〔2〕 飛行機を見上げる角(三角比)
水平な地面の上空を飛行機 P が飛んでおり、太郎さんはその地面上の点 O から飛行機 P を見ている。飛行機 P から地面に下ろした垂線と地面との交点を Q とするとき、\(\angle\mathrm{POQ}\) を飛行機 P を見上げる角といい、線分 PQ の長さを飛行機 P の高さという。飛行機 P は、高さと速さを一定に保ちながらまっすぐに飛んでいるものとする。
ある時刻に、飛行機 P を見上げる角が \(45^{\circ}\) であったとし、そのときの飛行機 P の位置を A、点 A から地面に下ろした垂線と地面との交点を B とする。また、その140秒後に、飛行機 P を見上げる角が \(30^{\circ}\) であったとし、そのときの飛行機 P の位置を C、点 C から地面に下ろした垂線と地面との交点を D とする。さらに、\(\angle\mathrm{BOD}=150^{\circ}\) であったとする。
飛行機 P が点 A から点 C まで線分 AC 上を飛ぶ間における、飛行機 P を見上げる角 \(\angle\mathrm{POQ}\) の大きさについて考察しよう。
(1)(i) ス7 セ3 ソ7 タ5 チ7 ツ1 テ4 / (ii) ト2 ナ4
(2) ニ2 ヌ5 ネ0 ノ6
(1)(i) 立体を「地面の三角形」に落として考える
飛行機 P の高さを \(h\) とする。(i) \(\angle\mathrm{POQ}\) は \(\tan\angle\mathrm{POQ}=\)スを満たす。また、\(\mathrm{AB}=\mathrm{CD}=h\) より \(\mathrm{OB}=h\)、\(\mathrm{OD}=\sqrt{\boxed{\text{セ}}}\,h\)、\(\mathrm{BD}=\sqrt{\boxed{\text{ソ}}}\,h\) および \(\cos\angle\mathrm{OBD}=\dfrac{\boxed{\text{タ}}\sqrt{\boxed{\text{チ}}}}{\boxed{\text{ツテ}}}\) である。(スの解答群)⓪ \(\mathrm{OP}\cdot h\) ① \(\mathrm{OQ}\cdot h\) ② \(\dfrac{1}{\mathrm{OP}\cdot h}\) ③ \(\dfrac{1}{\mathrm{OQ}\cdot h}\) ④ \(\dfrac{\mathrm{OP}}{h}\) ⑤ \(\dfrac{\mathrm{OQ}}{h}\) ⑥ \(\dfrac{h}{\mathrm{OP}}\) ⑦ \(\dfrac{h}{\mathrm{OQ}}\)
【型】空間の問題を、地面(水平面)上の平面図形に翻訳する
【なぜこうするか】 \(\mathrm{PQ}\perp\)(地面)なので \(\triangle\mathrm{POQ}\) は \(\mathrm{Q}\) が直角。したがって
\[\tan\angle\mathrm{POQ}=\dfrac{\mathrm{PQ}}{\mathrm{OQ}}=\dfrac{h}{\mathrm{OQ}}\]
スは⑦です。高さ \(h\) は一定なので、この式から「見上げる角が大きい ⟺ \(\mathrm{OQ}\) が短い」とわかります。以降はすべて地面の上の距離 \(\mathrm{OQ}\) の話に還元できるのがポイントです。
まず \(\triangle\mathrm{OAB}\)。\(\angle\mathrm{AOB}=45^{\circ}\)、\(\angle\mathrm{ABO}=90^{\circ}\)、\(\mathrm{AB}=h\) なので直角二等辺三角形。
\[\mathrm{OB}=\dfrac{h}{\tan 45^{\circ}}=h\]
次に \(\triangle\mathrm{OCD}\)。\(\angle\mathrm{COD}=30^{\circ}\)、\(\mathrm{CD}=h\) なので
\[\mathrm{OD}=\dfrac{h}{\tan 30^{\circ}}=\sqrt{3}\,h\]
セは3です。ここまでで、地面上に \(\mathrm{OB}=h\)、\(\mathrm{OD}=\sqrt{3}h\)、\(\angle\mathrm{BOD}=150^{\circ}\) という三角形ができました。余弦定理で
\[\mathrm{BD}^{2}=h^{2}+3h^{2}-2\cdot h\cdot\sqrt{3}h\cdot\cos 150^{\circ}=4h^{2}-2\sqrt{3}h^{2}\cdot\left(-\dfrac{\sqrt{3}}{2}\right)=4h^{2}+3h^{2}=7h^{2}\]
\[\mathrm{BD}=\sqrt{7}\,h\]
ソは7です。最後にもう一度余弦定理を、今度は角 B について使います。
\[\mathrm{OD}^{2}=\mathrm{OB}^{2}+\mathrm{BD}^{2}-2\cdot\mathrm{OB}\cdot\mathrm{BD}\cos\angle\mathrm{OBD}\]
\[3h^{2}=h^{2}+7h^{2}-2\sqrt{7}h^{2}\cos\angle\mathrm{OBD}\]
\[2\sqrt{7}\cos\angle\mathrm{OBD}=5\quad\Longrightarrow\quad \cos\angle\mathrm{OBD}=\dfrac{5}{2\sqrt{7}}=\dfrac{5\sqrt{7}}{14}\]
タは5、チは7、ツテは14です。
【検算】 \(h=1\) として座標で確認します。\(\mathrm{O}=(0,0)\)、\(\mathrm{B}=(1,0)\)、\(\mathrm{D}=\sqrt{3}\left(\cos 150^{\circ},\,\sin 150^{\circ}\right)=(-1.5,\,0.866)\)。すると \(\mathrm{BD}=2.645751\) で \(\sqrt{7}=2.645751\) と一致 ✓。\(\cos\angle\mathrm{OBD}=0.944911\)、\(\dfrac{5\sqrt{7}}{14}=0.944911\) も一致 ✓。
【定石】 空間の見上げ角の問題は「高さ ÷ 水平距離=\(\tan\)」で水平面の話に落とす。高さが一定なら、あとは水平距離だけを追えばよい。
(1)(ii) 中点での見上げ角を求める
飛行機 P が点 A を通過してから70秒後の位置にあるとき \(\mathrm{OQ}=\dfrac{h}{\boxed{\text{ト}}}\) である。また、このときの \(\angle\mathrm{POQ}\) の大きさはナである。必要な三角比の値は \(\tan63^{\circ}=1.9626\)、\(\tan64^{\circ}=2.0503\) である。(ナの解答群)⓪ \(40^{\circ}\) 以上 \(45^{\circ}\) 未満 ① \(45^{\circ}\) 以上 \(50^{\circ}\) 未満 ② \(50^{\circ}\) 以上 \(55^{\circ}\) 未満 ③ \(55^{\circ}\) 以上 \(60^{\circ}\) 未満 ④ \(60^{\circ}\) 以上 \(65^{\circ}\) 未満 ⑤ \(65^{\circ}\) 以上 \(70^{\circ}\) 未満 ⑥ \(70^{\circ}\) 以上 \(75^{\circ}\) 未満 ⑦ \(75^{\circ}\) 以上 \(80^{\circ}\) 未満 ⑧ \(80^{\circ}\) 以上 \(85^{\circ}\) 未満 ⑨ \(85^{\circ}\) 以上 \(90^{\circ}\) 未満
【型】等速で140秒かかる区間の70秒後=ちょうど中点
【なぜこうするか】 速さが一定なので、70秒後は A から C までのちょうど中点。P が AC の中点なら、真下の Q はBD の中点です。
したがって \(\mathrm{BQ}=\dfrac{\mathrm{BD}}{2}=\dfrac{\sqrt{7}}{2}h\)。\(\triangle\mathrm{OBQ}\) に余弦定理を使います。
\[\mathrm{OQ}^{2}=\mathrm{OB}^{2}+\mathrm{BQ}^{2}-2\cdot\mathrm{OB}\cdot\mathrm{BQ}\cos\angle\mathrm{OBD}\]
\[=h^{2}+\dfrac{7}{4}h^{2}-2\cdot h\cdot\dfrac{\sqrt{7}}{2}h\cdot\dfrac{5\sqrt{7}}{14}=\dfrac{11}{4}h^{2}-\dfrac{5}{2}h^{2}=\dfrac{1}{4}h^{2}\]
\[\mathrm{OQ}=\dfrac{h}{2}\]
トは2です。きれいな値になりました。あとは
\[\tan\angle\mathrm{POQ}=\dfrac{h}{\mathrm{OQ}}=\dfrac{h}{h/2}=2\]
三角比の表から \(\tan 63^{\circ}=1.9626\)、\(\tan 64^{\circ}=2.0503\) なので、\(\angle\mathrm{POQ}\) は \(63^{\circ}\) と \(64^{\circ}\) の間。したがって \(60^{\circ}\) 以上 \(65^{\circ}\) 未満でナは④です。
【検算】 座標で BD の中点を求めると \(\mathrm{OQ}=0.500000\)(\(h=1\))でぴったり \(\dfrac{h}{2}\) ✓。見上げ角は \(\arctan 2=63.4349^{\circ}\) で、確かに④の範囲に入ります ✓。
【よくあるミス】 「見上げる角が \(45^{\circ}\) と \(30^{\circ}\) だから、中点では平均の \(37.5^{\circ}\) 」としてしまうこと。角度は距離に比例しないので、平均では出せません。実際は両端より大きい \(63^{\circ}\) 余りになります。
(2) 見上げる角が最大になる瞬間
太郎さんは、飛行機 P が点 A を通過してから何秒後に \(\angle\mathrm{POQ}\) の大きさが最大になるかを、\(\angle\mathrm{POQ}\) の大きさと線分 OQ の長さの関係に着目して考えている。\(\angle\mathrm{POQ}\) の大きさが最大になるのは、点 Q がニのときであり、飛行機 P が点 A を通過してからヌネ秒後である。また、このときの \(\angle\mathrm{POQ}\) の大きさはノである。必要な三角比の値は \(\tan71^{\circ}=2.9042\)、\(\tan72^{\circ}=3.0777\) である。(ニの解答群)⓪ 線分 BD の中点 ① \(\angle\mathrm{BOD}\) の二等分線と線分 BD との交点 ② 点 O から線分 BD に下ろした垂線と線分 BD との交点 (ノの解答群は(1)(ii)と同じ)
【型】\(\tan\angle\mathrm{POQ}=\dfrac{h}{\mathrm{OQ}}\) なので、角が最大 ⟺ \(\mathrm{OQ}\) が最小
【なぜこうするか】 (1)(i)で押さえたとおり \(h\) は一定なので、\(\mathrm{OQ}\) が小さいほど \(\tan\) が大きく、角も大きくなります(\(0^{\circ}\lt\angle\mathrm{POQ}\lt 90^{\circ}\) では \(\tan\) は単調増加)。
そして「点 O から線分 BD 上の点までの距離が最小になるのは、垂線の足」。ニは②です。
垂線の足を \(\mathrm{Q}_{0}\) とすると、\(\triangle\mathrm{OBQ}_{0}\) は \(\mathrm{Q}_{0}\) が直角なので
\[\mathrm{BQ}_{0}=\mathrm{OB}\cos\angle\mathrm{OBD}=h\cdot\dfrac{5\sqrt{7}}{14}=\dfrac{5\sqrt{7}}{14}h\]
\(\mathrm{BD}=\sqrt{7}h\) なので、B から D までのどのくらいの位置かを比で見ると
\[\dfrac{\mathrm{BQ}_{0}}{\mathrm{BD}}=\dfrac{5\sqrt{7}/14}{\sqrt{7}}=\dfrac{5}{14}\]
飛行機は140秒かけて BD の真上を等速で移動するので、かかる時間は
\[140\times\dfrac{5}{14}=50\]
つまり50秒後です。
ヌネは50です。最後に角度。\(\mathrm{OQ}_{0}=\mathrm{OB}\sin\angle\mathrm{OBD}\) を求めます。
\[\sin\angle\mathrm{OBD}=\sqrt{1-\left(\dfrac{5\sqrt{7}}{14}\right)^{2}}=\sqrt{1-\dfrac{175}{196}}=\sqrt{\dfrac{21}{196}}=\dfrac{\sqrt{21}}{14}\]
\[\mathrm{OQ}_{0}=\dfrac{\sqrt{21}}{14}h\]
したがって
\[\tan\angle\mathrm{POQ}=\dfrac{h}{\mathrm{OQ}_{0}}=\dfrac{14}{\sqrt{21}}=\dfrac{14\sqrt{21}}{21}=\dfrac{2\sqrt{21}}{3}\]
数値にすると \(3.055\)。三角比の表で \(\tan 71^{\circ}=2.9042\)、\(\tan 72^{\circ}=3.0777\) なので、\(71^{\circ}\) と \(72^{\circ}\) の間。ノは⑥(\(70^{\circ}\) 以上 \(75^{\circ}\) 未満)です。
【検算】 座標で O から直線 BD への垂線の足を求めると \(\mathrm{BQ}_{0}=0.944911\)、\(\dfrac{\mathrm{BQ}_{0}}{\mathrm{BD}}=0.357143=\dfrac{5}{14}\) ✓。時間は \(140\times\dfrac{5}{14}=50.0\) 秒 ✓。\(\mathrm{OQ}_{0}=0.327327\) で \(\dfrac{\sqrt{21}}{14}=0.327327\) と一致 ✓。さらにA から C までを2万点に刻んで見上げ角を総当たりしたところ、最大値は \(71.8753^{\circ}\)、達成する時刻は \(50.0\) 秒後でした ✓。
【定石】 「点と直線の距離が最小になるのは垂線の足」。最大最小の問題を、微分ではなく図形の性質1つで片づける典型。\(\tan\) が単調増加であることを言い添えるのを忘れずに。
- 循環小数は「余りを追う」。同じ余りが出た瞬間から循環が始まる。
- 余りは有限個だから必ず重複する(鳩の巣原理)。これが「分数=有限小数か循環小数」の証明。
- 循環小数を1つずらす=筆算を1回進める。ずらしたものの分子は、その回の余り。
- 空間の見上げ角は「\(\tan\)=高さ÷水平距離」で水平面の問題に翻訳する。
- 余弦定理は「2辺と挟角」「3辺」の両向きで使う。角を出すときは \(\cos\) について解く。
- 見上げ角が最大 ⟺ 水平距離が最小 ⟺ 垂線の足。微分を使わずに最大値が出せる。
第2問〔1〕(配点30のうち) 2点を通る放物線の族
花子さんと太郎さんは、コンピュータを使って、関数 \(y=ax^{2}+bx+c\) のグラフを表示させている。
(1) ア7 イ4 ウ7 エ8 / (2) オ1 カ4 キ1 ク3
(3) ケ2 コ1 サ2 / (4) シ2
(1) 平方完成で頂点を出す
花子さんが \(a\)、\(b\)、\(c\) の値を \(a=2\)、\(b=-7\)、\(c=7\) と定めると、グラフとして放物線が表示された。この放物線の頂点の座標は \(\left(\dfrac{\boxed{\text{ア}}}{\boxed{\text{イ}}},\ \dfrac{\boxed{\text{ウ}}}{\boxed{\text{エ}}}\right)\) である。
【型】平方完成、または頂点の \(x\) 座標 \(=-\dfrac{b}{2a}\)
【なぜこうするか】 \(y=2x^{2}-7x+7\) の頂点は、公式で \(x\) 座標を先に出すのが速いです。
\[x=-\dfrac{b}{2a}=-\dfrac{-7}{2\cdot 2}=\dfrac{7}{4}\]
これを代入して \(y\) 座標を求めます。
\[y=2\left(\dfrac{7}{4}\right)^{2}-7\cdot\dfrac{7}{4}+7=\dfrac{49}{8}-\dfrac{49}{4}+7=\dfrac{49-98+56}{8}=\dfrac{7}{8}\]
頂点は \(\left(\dfrac{7}{4},\ \dfrac{7}{8}\right)\)。アは7、イは4、ウは7、エは8です。
【検算】 平方完成でも確かめます。\(2x^{2}-7x+7=2\left(x-\dfrac{7}{4}\right)^{2}-\dfrac{49}{8}+7=2\left(x-\dfrac{7}{4}\right)^{2}+\dfrac{7}{8}\) ✓。数式処理でも頂点は \(\left(\dfrac{7}{4},\,\dfrac{7}{8}\right)\) でした。
【定石】 頂点の \(x\) 座標は \(-\dfrac{b}{2a}\)、\(y\) 座標は代入して求めるのが確実。\(\dfrac{4ac-b^{2}}{4a}\) を暗記するより計算ミスが少ない。
(2) 2点を通る条件を \(a\) の式に翻訳する
花子さんと太郎さんは、\(a=2\)、\(b=-7\)、\(c=7\) と定めたとき、関数 \(y=2x^{2}-7x+7\) のグラフが、点 \(\mathrm{P}(1,\,2)\) と点 \(\mathrm{Q}(3,\,4)\) を通ることに気づいて話している。花子「\(a\) の値だけを変えたら、P、Q を通らなくなったよ。P、Q を通るようにするには、\(a\) の値に応じて \(b\) と \(c\) の値をどう変えたらよいのかな。」 0でない実数 \(a\) に対して \(b=\)オ\(-\)カ\(a\)、\(c=\)キ\(+\)ク\(a\) とすれば、関数 \(y=ax^{2}+\left(\boxed{\text{オ}}-\boxed{\text{カ}}\,a\right)x+\boxed{\text{キ}}+\boxed{\text{ク}}\,a\) …① のグラフは2点 P と Q を通る。
【型】通る点の座標を代入して連立
【なぜこうするか】 「グラフが点を通る」=「その座標を代入すると成り立つ」。素直に2つ代入します。
\[\mathrm{P}(1,\,2):\quad a+b+c=2\]
\[\mathrm{Q}(3,\,4):\quad 9a+3b+c=4\]
未知数は \(a\)、\(b\)、\(c\) の3つで式は2本なので、\(a\) を残して \(b\)、\(c\) を \(a\) で表します。2式を引くと \(c\) が消えて
\[8a+2b=2\quad\Longleftrightarrow\quad 4a+b=1\quad\Longleftrightarrow\quad b=1-4a\]
オは1、カは4です。これを1本目に戻して
\[c=2-a-b=2-a-(1-4a)=1+3a\]
キは1、クは3です。
これで\(a\) を1つ決めるごとに1つの放物線が決まり、どれも必ず P と Q を通るという「放物線の族」ができました。以降の小問はすべてこの族を動かす話です。
【検算】 \(a=2\) を入れると \(b=1-8=-7\)、\(c=1+6=7\) で、最初の \(y=2x^{2}-7x+7\) に戻ります ✓。数式処理で連立を解いても \(b=1-4a\)、\(c=3a+1\) でした。
【定石】 「\(n\) 個の条件、\(n+1\) 個の未知数」なら1つを残して他をその文字で表す。残した文字が図形を動かすパラメータになる。
(3) 頂点の \(y\) 座標の最大値を、図形的に見抜く
太郎さんと花子さんは、\(a\) の値を0より大きい範囲で変えながら、関数①のグラフを表示させて、頂点の \(y\) 座標について考えている。太郎「グラフの頂点の座標を \(a\) の式で表して考えるのは、私たちには難しそうだね。別のやり方はないかな。」花子「グラフを表示してみたら、2点 \(\mathrm{P}(1,\,2)\)、\(\mathrm{Q}(3,\,4)\) とグラフの頂点との関係がわかるね。」太郎「どの \(a\) に対しても、関数①のグラフは必ず P と Q を通るね。」花子「しかも \(a\) が正の実数だから、関数①のグラフは下に凸で、頂点はグラフの一番下になるね。」太郎「そう考えると、頂点の \(y\) 座標が最大になるようなグラフが予想できるね。」 グラフの頂点の \(y\) 座標の最大値はケであり、頂点の \(y\) 座標が最大になる \(a\) の値は \(\dfrac{\boxed{\text{コ}}}{\boxed{\text{サ}}}\) である。
【型】計算する前に、図形の性質で候補を絞る
【なぜこうするか】 花子さんの誘導がそのまま解法です。\(a\gt 0\) なら下に凸なので、頂点はグラフ上で最も低い点。そしてグラフは必ず \(\mathrm{P}(1,\,2)\) を通ります。
したがって
(頂点の \(y\) 座標)\(\leqq\)(P の \(y\) 座標)\(=2\)
が常に成り立ちます。頂点の \(y\) 座標は絶対に2を超えられない。あとは「ちょうど2になれるか」を確かめるだけです。
等号が成り立つのは頂点が P そのものになるとき。そのとき放物線は
\[y=a(x-1)^{2}+2\]
と書け、これが \(\mathrm{Q}(3,\,4)\) を通る条件は
\[4a+2=4\quad\Longleftrightarrow\quad a=\dfrac{1}{2}\]
\(a=\dfrac{1}{2}\gt 0\) なので条件を満たします。最大値は2でケは2、そのときの \(a\) は \(\dfrac{1}{2}\) でコは1、サは2です。
頂点の座標を式で計算すると、頂点の \(y\) 座標は
\[-a+3-\dfrac{1}{4a}\]
となり、相加相乗平均を用いても最大値を求められます。この方法でうまく解ける理由は、放物線が必ず点 P を通り、頂点がグラフ上の最小値になるため、頂点の高さの上限を P の高さ2から直接決められるからです。
【検算】 頂点の \(y\) 座標を \(a\) の式で表すと \(-a+3-\dfrac{1}{4a}\)。これを微分して0とおくと \(a=\pm\dfrac{1}{2}\)、\(a\gt 0\) では \(a=\dfrac{1}{2}\) で最大値2 ✓。数値でも \(a=\dfrac{1}{4}\) で \(\dfrac{7}{4}\)、\(a=\dfrac{1}{2}\) で \(2\)、\(a=1\) で \(\dfrac{7}{4}\)、\(a=2\) で \(\dfrac{7}{8}\) と、確かに \(a=\dfrac{1}{2}\) が山になっています ✓。
【定石】 「必ず通る点」があれば、下に凸なら頂点はその点より下。上限がすぐ言えて、あとは等号成立を確かめるだけ。共通テストの誘導は、こういう「計算を回避する見方」を教えてくれることが多い。
(4) \(a\lt 0\) のとき何が起こりうるか、3つを個別に検証する
次に、花子さんと太郎さんは、\(a\) の値を0より小さい範囲で変えながら、関数①のグラフを表示させている。このとき、次の(A)、(B)、(C)のうちで、起こり得るものはシ。(A) 関数のグラフが点 \((0,\,3)\) を通る。(B) 関数のグラフと \(x\) 軸の負の部分が交わる。(C) 関数のグラフの頂点の \(x\) 座標が2以下である。(シの解答群)⓪ ない ① (A)だけである ② (B)だけである ③ (C)だけである ④ (A)と(B)だけである ⑤ (A)と(C)だけである ⑥ (B)と(C)だけである ⑦ (A)と(B)と(C)のすべてである
【型】3つを1つずつ、\(a\) の条件に翻訳して判定する
【なぜこうするか】 (2)で \(b=1-4a\)、\(c=1+3a\) と分かっているので、どの主張も\(a\) についての条件に書き換えられます。
(A) グラフが \((0,\,3)\) を通る \(x=0\) を代入すると \(y=c\) なので、条件は \(c=3\)。
\[1+3a=3\quad\Longleftrightarrow\quad a=\dfrac{2}{3}\]
これは正の数なので、\(a\lt 0\) の範囲では起こりません。(A)は不可。
(C) 頂点の \(x\) 座標が2以下 頂点の \(x\) 座標は
\[-\dfrac{b}{2a}=-\dfrac{1-4a}{2a}=\dfrac{4a-1}{2a}=2-\dfrac{1}{2a}\]
\(a\lt 0\) なら \(\dfrac{1}{2a}\lt 0\) なので \(-\dfrac{1}{2a}\gt 0\)。つまり
(頂点の \(x\) 座標)\(=2-\dfrac{1}{2a}\gt 2\)
常に2より大きいので、2以下にはなりません。(C)も不可。
(B) グラフと \(x\) 軸の負の部分が交わる \(a\lt 0\) なので上に凸。グラフは \(\mathrm{P}(1,\,2)\) と \(\mathrm{Q}(3,\,4)\) を通り、どちらも \(y\gt 0\)。軸は上で見たとおり2より右にあります。
ここで \(x=0\) での値 \(c=1+3a\) の符号がカギ。\(-\dfrac{1}{3}\lt a\lt 0\) のとき \(c\gt 0\) です。上に凸の放物線が \(x=0\) で正の値をとり、しかも軸が \(x=0\) より右にあるなら、\(x=0\) は2つの解の間にある。すなわち小さいほうの解は負です。
例えば \(a=-\dfrac{1}{10}\) なら \(b=1.4\)、\(c=0.7\) で、\(y=-0.1x^{2}+1.4x+0.7\) の解は \(x=-0.4833\) と \(x=14.4833\)。確かに負の解があります。(B)は起こり得ます。
以上より、起こり得るのは(B)だけ。シは②です。
【検算】 \(a=-0.1,\ -0.5,\ -1,\ -3\) の4通りで、\(c\)、軸、2つの解を実際に計算しました。軸はそれぞれ \(7.000,\ 3.000,\ 2.500,\ 2.167\) ですべて2より大きい((C)不可 ✓)。負の解をもつのは \(a=-0.1\) のときだけで、\(a=-0.5\) 以降は \(c\lt 0\) になり2解とも正でした。また \(c=3\) になるものは1つもありません((A)不可 ✓)。
【よくあるミス】 (B)を「\(a\lt 0\) ならどれでも起こる」と早合点すること。実際に起こるのは \(-\dfrac{1}{3}\lt a\lt 0\) という狭い範囲だけです。ただし本問は「起こり得るか」を問うているので、1つでも例があれば十分。
【定石】 「\(x\) 軸の負の部分と交わる」は\(f(0)\) の符号と軸の位置で判定する。判別式だけでは足りない。
第2問〔2〕 相関係数と「見かけの相関」
太郎さんと花子さんは、令和4年度の全国体力・運動能力、運動習慣等調査(47都道府県ごと)の結果を用いて、小学校第5学年の男子児童と中学校第2学年の男子生徒について、「運動やスポーツをすることは好きですかという質問に対して、好きと回答した児童・生徒の割合」(以下、スポーツ好き)と「反復横とびの点数の平均値」(以下、反復横とび)の関係を調べることにした。
図1は小学校第5学年と中学校第2学年を合わせた散布図で、横軸はスポーツ好き(約58〜75%)、縦軸は反復横とび(約38〜54点)である。点は「スポーツ好き約58〜67%・反復横とび約49〜53点」の左上の集団と、「約66〜75%・約38〜44点」の右下の集団に分かれ、全体では右下がりに見える。図2は小学校第5学年だけの散布図で、横軸約66〜76%・縦軸約38〜44点の範囲に点が広がり、明確な右上がり・右下がりはない。図3は中学校第2学年だけの散布図で、横軸約58〜70%・縦軸約48〜53点の範囲に点が広がり、こちらも明確な傾きはない。
(1) ス1 / (2) セ2 / (3)(i) ソ0 タ7 チ5 / (ii) ツ3 / (4) テ6 ト2
(1) 負の相関を言葉に直す
太郎「図1の点全体の散らばりの様子を見ると負の相関があるように思えるけど、一つの集団に見えないね。」花子「仮に、全体のデータで相関係数を計算したらどうなるかな。」 図1では点が左上(スポーツ好き約58〜67%・反復横とび約49〜53点)と右下(約66〜75%・約38〜44点)の二つの集団に分かれ、相関係数は \(-0.85\) であった。図1の点全体の散らばりの様子から、小学校第5学年と中学校第2学年を合わせた全体について、スポーツ好きと反復横とびの間に負の相関があるとしたとき、次のことがいえる。小学校第5学年と中学校第2学年を合わせた全体について、スポーツ好きが増えると、反復横とびはス。(スについては、最も適当なものを次の⓪〜②のうちから一つ選べ。)⓪ 増える傾向がみられる ① 減る傾向がみられる ② 増える傾向も減る傾向もみられない
【型】相関係数の符号=傾向の向き
【なぜこうするか】 相関係数が負なら「片方が増えるともう片方は減る」傾向。\(-0.85\) は絶対値が1に近いので、かなり強い負の相関です。スは①。
太郎さんの「一つの集団に見えないね」という発言は、後の小問で集団別に考える必要があることを示しています。
【検算】 図1は、スポーツ好きの割合が大きい点ほど反復横とびの平均値が小さくなる右下がりの配置です。これは相関係数 \(-0.85\) の負の符号と一致します。
【定石】 相関係数 \(r\) は \(-1\leqq r\leqq 1\)。符号が向き、絶対値が強さ。\(|r|\) が1に近いほど直線的な関係が強く、0に近いほど弱いと読みます。
(2) 集団を分けると相関が消える
太郎「図1では二つの集団に見えるから、小学校第5学年と中学校第2学年は別々にして考えた方がいいよね。」花子「それぞれの散布図を作成して、相関係数も調べてみよう。」 図2は小学校第5学年について、横軸約66〜76%・縦軸約38〜44点に点が散らばる散布図であり、相関係数は \(0.07\) であった。図3は中学校第2学年について、横軸約58〜70%・縦軸約48〜53点に点が散らばり、明確な右上がり・右下がりがない散布図である。図3におけるスポーツ好きと反復横とびの相関係数はおよそセである。(セについては、最も適当なものを次の⓪〜④のうちから一つ選べ。)⓪ \(-0.9\) ① \(-0.7\) ② \(0.1\) ③ \(0.7\) ④ \(0.9\)
【型】散布図の「かたまり具合」から相関係数を見積もる
【なぜこうするか】 図3(中学校第2学年)の点は、横軸方向にも縦軸方向にも広く散らばっていて、右上がりの帯にも右下がりの帯にもなっていません。直線的な傾向がまったく見えない散布図の相関係数は0の近くです。
選択肢のうち0に最も近いのは \(0.1\)。セは②です。
ここで、全体と各集団の相関係数を比較します。
- 全体(図1):\(r=-0.85\) → 強い負の相関
- 小5だけ(図2):\(r=0.07\) → ほぼ無相関
- 中2だけ(図3):\(r\fallingdotseq 0.1\) → ほぼ無相関
つまり、どちらの集団の内部にも相関はないのに、まとめると強い負の相関が現れたのです。これは「スポーツ好きが増えると反復横とびが下がる」からではありません。
原因は2つの集団の位置関係です。中2は「スポーツ好きの割合が低め・反復横とびは高め」(左上)、小5は「スポーツ好きの割合が高め・反復横とびは低め」(右下)に固まっている。この2つのかたまりを重ねると、全体としては右下がりの並びに見えてしまう。
これを見かけの相関(あるいは疑似相関)といいます。「相関があるから因果がある」と結論するのが危ういことを、実データで示した良問です。
【検算】 図2の \(r=0.07\) と図3の推定値 \(r\fallingdotseq 0.1\) は、どちらも0に近く、各集団の散布図に明確な右上がり・右下がりがないことと一致します。
【よくあるミス】 \(-0.9\) を選んでしまうこと。図1の \(-0.85\) につられていますが、問われているのは図3(中2だけ)の相関係数です。図2が \(0.07\) だったという情報も、「集団内では相関がない」というヒントとして与えられています。
【定石】 散布図が複数のかたまりに分かれて見えたら、全体の相関係数を信用しない。層別(グループ分け)して計算し直すのが鉄則。
(3)(i) 平均・分散・共分散を定義どおり計算する
変量 \(x\)、\(y\) の値の組 \((-1,\,1)\)、\((1,\,-1)\) を考える。このとき、相関係数は \(-1\) となる。この二つの値の組に、\((-2,\,0)\)、\((0,\,-2)\) と \((0,\,2)\)、\((2,\,0)\) を加えた、合計六つの値の組を、データ \(W\) と呼ぶことにする。また、データ \(W\) の \(x\)、\(y\) の平均値をそれぞれ \(\bar{x}\)、\(\bar{y}\)、分散をそれぞれ \(s_{x}^{2}\)、\(s_{y}^{2}\)、共分散を \(s_{xy}\) とする。(i) \(\bar{x}=\)ソ、\(s_{x}^{2}=\)タ、\(s_{xy}=\)チである。(ソの解答群)⓪ \(0\) ① \(1\) ② \(2\) ③ \(3\) ④ \(\dfrac{1}{2}\) ⑤ \(\dfrac{4}{3}\) ⑥ \(\dfrac{3}{2}\) ⑦ \(\dfrac{5}{3}\) ⑧ \(\dfrac{11}{6}\) ⑨ \(\dfrac{5}{2}\) (タの解答群)⓪ \(\dfrac{7}{6}\) ① \(1\) ② \(2\) ③ \(3\) ④ \(\dfrac{4}{3}\) ⑤ \(5\) ⑥ \(\dfrac{3}{2}\) ⑦ \(\dfrac{5}{3}\) ⑧ \(\dfrac{11}{6}\) ⑨ \(10\) (チの解答群)⓪ \(0\) ① \(1\) ② \(-\dfrac{3}{2}\) ③ \(-1\) ④ \(-\dfrac{1}{2}\) ⑤ \(-\dfrac{1}{3}\) ⑥ \(\dfrac{1}{3}\) ⑦ \(\dfrac{1}{2}\) ⑧ \(\dfrac{3}{2}\)
【型】共分散 \(=\) 偏差の積の平均
【なぜこうするか】 6組は \((-1,1),\,(1,-1),\,(-2,0),\,(0,-2),\,(0,2),\,(2,0)\)。まず平均から。
\[\bar{x}=\dfrac{-1+1-2+0+0+2}{6}=\dfrac{0}{6}=0\]
ソは⓪です。同様に \(\bar{y}=\dfrac{1-1+0-2+2+0}{6}=0\)。両方の平均が0になったので、以降の偏差は値そのままで済みます。
\[s_{x}^{2}=\dfrac{(-1)^{2}+1^{2}+(-2)^{2}+0^{2}+0^{2}+2^{2}}{6}=\dfrac{1+1+4+0+0+4}{6}=\dfrac{10}{6}=\dfrac{5}{3}\]
タは⑦です。共分散は偏差の積の平均なので
\[s_{xy}=\dfrac{(-1)(1)+(1)(-1)+(-2)(0)+(0)(-2)+(0)(2)+(2)(0)}{6}\]
\[=\dfrac{-1-1+0+0+0+0}{6}=-\dfrac{1}{3}\]
チは⑤です。追加した4組はすべて片方が0なので、積がすべて0。共分散に効いているのは最初の2組だけ、という構造が見えます。
【検算】 有理数のまま計算して \(\bar{x}=0\)、\(\bar{y}=0\)、\(s_{x}^{2}=\dfrac{5}{3}\)、\(s_{y}^{2}=\dfrac{5}{3}\)、\(s_{xy}=-\dfrac{1}{3}\) を確認 ✓。
【定石】 共分散は \(s_{xy}=\overline{xy}-\bar{x}\bar{y}\)。平均が0なら偏差=値そのものなので計算が簡単になります。データを見て平均が0になりそうなら、先に確かめます。
(3)(ii) \(s_{x}^{2}=s_{y}^{2}\) を利用して相関係数を出す
データ \(W\) の \(x\) と \(y\) の相関係数を \(r_{xy}\) とする。(ii) \(s_{x}^{2}=s_{y}^{2}\) であることに着目すると、\(r_{xy}=\)ツとなることがわかる。(ツの解答群)⓪ \(0\) ① \(-\dfrac{2}{3}\) ② \(-\dfrac{1}{2}\) ③ \(-\dfrac{1}{5}\) ④ \(-\dfrac{1}{6}\) ⑤ \(\dfrac{1}{6}\) ⑥ \(\dfrac{1}{5}\) ⑦ \(\dfrac{1}{2}\) ⑧ \(\dfrac{2}{3}\)
【型】\(r_{xy}=\dfrac{s_{xy}}{s_{x}s_{y}}\)
【なぜこうするか】 \(y\) の分散も計算しておきます。
\[s_{y}^{2}=\dfrac{1^{2}+(-1)^{2}+0^{2}+(-2)^{2}+2^{2}+0^{2}}{6}=\dfrac{10}{6}=\dfrac{5}{3}\]
確かに \(s_{x}^{2}=s_{y}^{2}\)。すると \(s_{x}s_{y}=\sqrt{s_{x}^{2}}\cdot\sqrt{s_{y}^{2}}=s_{x}^{2}\) となり、ルートを開かずに済みます。これが「着目すると」の意味です。
\[r_{xy}=\dfrac{s_{xy}}{s_{x}s_{y}}=\dfrac{s_{xy}}{s_{x}^{2}}=\dfrac{-\dfrac{1}{3}}{\dfrac{5}{3}}=-\dfrac{1}{5}\]
ツは③です。
意味を考えてみましょう。もとの2組だけなら相関係数は \(-1\)(完全な負の相関)でした。そこに4組を加えたら \(-\dfrac{1}{5}\) まで一気に弱まった。データを加えるだけで相関の見え方は大きく変わる——(2)の「見かけの相関」を、6点だけの簡単な例で再現した小問です。
【検算】 プログラムの相関係数関数に6組を入れると \(-0.2\)。\(-\dfrac{1}{5}=-0.2\) と一致しました ✓。
【定石】 \(s_{x}^{2}=s_{y}^{2}\) なら \(r=\dfrac{s_{xy}}{s_{x}^{2}}\) とルートなしで計算できる。共通テストではこの手の「計算を軽くする観察」がしばしば誘導される。
(4) 共分散が正になる条件を求める
\(a\) を正の数とする。変量 \(x\)、\(y\) の二つの値の組 \((-1,\,1)\)、\((1,\,-1)\) に \((-1-a,\,1-a)\)、\((1-a,\,-1-a)\)、\((-1+a,\,1+a)\)、\((1+a,\,-1+a)\) を加えた、合計六つの値の組を、データ \(W’\) と呼ぶことにする。相関係数が正であるための必要十分条件は、共分散が正であることである。したがって、データ \(W’\) の \(x\) と \(y\) の相関係数が正であるための必要十分条件は \(a\gt\dfrac{\sqrt{\boxed{\text{テ}}}}{\boxed{\text{ト}}}\) である。
【型】共分散を \(a\) の式で表し、符号を調べる
【なぜこうするか】 問題文が「相関係数が正 ⟺ 共分散が正」と教えてくれています(分母 \(s_{x}s_{y}\) は必ず正なので、符号は分子だけで決まる)。したがって共分散だけ計算すればよい。
まず平均を確認します。\(x\) の値は \(-1,\ 1,\ -1-a,\ 1-a,\ -1+a,\ 1+a\)。足すと
\[(-1+1)+\left\{(-1-a)+(1-a)\right\}+\left\{(-1+a)+(1+a)\right\}=0+(-2a)+2a=0\]
\(\bar{x}=0\)。\(y\) も同様に \(\bar{y}=0\) です。ここでも平均が0なので、共分散は積の平均そのもの。
\[(-1)(1)=-1,\qquad (1)(-1)=-1\]
残る4組は、それぞれ和と差の積の形になります。
\[(-1-a)(1-a)=-(1+a)(1-a)=a^{2}-1\]
\[(1-a)(-1-a)=a^{2}-1,\qquad (-1+a)(1+a)=a^{2}-1,\qquad (1+a)(-1+a)=a^{2}-1\]
4つとも同じ \(a^{2}-1\) になりました。合計すると
\[s_{xy}=\dfrac{-1-1+4\left(a^{2}-1\right)}{6}=\dfrac{4a^{2}-6}{6}=\dfrac{2a^{2}-3}{3}\]
これが正になる条件は
\[2a^{2}-3\gt 0\quad\Longleftrightarrow\quad a^{2}\gt\dfrac{3}{2}\]
\(a\gt 0\) なので
\[a\gt\sqrt{\dfrac{3}{2}}=\dfrac{\sqrt{3}}{\sqrt{2}}=\dfrac{\sqrt{6}}{2}\]
テは6、トは2です。有理化を忘れずに。
(3)では追加した4点が原点を挟む十字に並んでいて共分散を薄める方向に働きましたが、今回の4点は右上がりの方向に並んでいます。\(a\) を大きくして4点を遠くへ離すほどその効果が強まり、\(a\gt\dfrac{\sqrt{6}}{2}\fallingdotseq 1.22\) を超えると、もとの2点が持っていた負の相関をひっくり返してしまうのです。
【検算】 数式処理で \(s_{xy}=\dfrac{2a^{2}}{3}-1\) を確認し、\(s_{xy}\gt 0\) の解として \(a\gt\dfrac{\sqrt{6}}{2}\) を得ました ✓。数値でも \(a=1.2\) では \(s_{xy}=-0.040\)(負)、\(a=1.2247\fallingdotseq\dfrac{\sqrt{6}}{2}\) でほぼ0、\(a=1.23\) では \(+0.0086\)(正)と、境界がぴったり \(\dfrac{\sqrt{6}}{2}=1.224745\) にあることが確認できます ✓。
【定石】 相関係数の符号は共分散の符号だけで決まる(分母は必ず正)。符号だけ問われたら分母は無視してよい。
- 「必ず通る点」を利用すると、頂点の最大最小が計算なしで見える(〔1〕(3))。
- \(n\) 条件・\(n+1\) 未知数なら1つを残してパラメータにする(〔1〕(2))。
- 「\(x\) 軸の負の部分と交わる」は \(f(0)\) の符号と軸の位置で判定する(〔1〕(4))。
- 散布図が複数のかたまりに分かれたら、全体の相関係数を信用しない。層別して計算し直す(〔2〕(2))。
- 平均が0なら偏差=値そのもの。共分散の計算が一気に楽になる(〔2〕(3)(4))。
- \(s_{x}^{2}=s_{y}^{2}\) なら \(r=\dfrac{s_{xy}}{s_{x}^{2}}\)。ルートを開かずに済む。
- 相関係数の符号は共分散の符号だけで決まる(〔2〕(4))。
第3問(配点20) 内心・内接円の接点と、4点が同一円周上にある条件
\(\triangle\mathrm{OAB}\) の内心を I とし、\(\triangle\mathrm{OAB}\) の内接円と辺 AB との接点を L とする。また、\(\triangle\mathrm{OAB}\) の内接円と辺 OA、OB との接点を、それぞれ M、N とする。さらに、\(\angle\mathrm{AOB}=2\theta\)、\(\angle\mathrm{OAB}=2\alpha\)、\(\angle\mathrm{OBA}=2\beta\) とおく。
(1) ア1 / (2) イ9 ウ0 エ1 オ0 カ2 キ1
(3) ク3 ケ2 コ1 サ0 シ7 ス0 / (4) セ0
(1) 直角が2つあれば、円が見える
点 I が \(\triangle\mathrm{OAB}\) の内心であることから、4点 A、I、L、アは同一円周上にあることがわかる。(アの解答群)⓪ B ① M ② N ③ O
【型】\(90^{\circ}\) が2つ見えたら、その斜辺を直径とする円
【なぜこうするか】 内接円の接点では、中心から接点へ引いた半径が接線と垂直になります。したがって
\[\mathrm{IL}\perp\mathrm{AB}\quad\Longrightarrow\quad \angle\mathrm{ALI}=90^{\circ}\]
\[\mathrm{IM}\perp\mathrm{OA}\quad\Longrightarrow\quad \angle\mathrm{AMI}=90^{\circ}\]
L と M のどちらからも線分 AI が \(90^{\circ}\) で見えている。これは「AI を直径とする円の周上に L と M がある」ということ(円周角の定理の逆、直径に対する円周角は \(90^{\circ}\))。
したがって A、I、L、M の4点が同一円周上にあります。アは①です。
N を選ぶと誤りです。\(\angle\mathrm{ANI}\) は \(90^{\circ}\) にならない(IN ⊥ OB であって IN ⊥ AN ではない)ので、N はこの円には乗りません。
【検算】 \((\theta,\alpha)\) を \((32^{\circ},34^{\circ})\)、\((30^{\circ},20^{\circ})\)、\((20^{\circ},50^{\circ})\)、\((25^{\circ},25^{\circ})\) の4通りにとって座標計算したところ、いずれも \(\mathrm{IL}=\mathrm{IM}=\mathrm{IN}\)(内接円の半径)が一致し、\(\angle\mathrm{ALI}=\angle\mathrm{AMI}=90.00^{\circ}\) でした ✓。
【定石】 同じ線分を \(90^{\circ}\) で見込む点は、その線分を直径とする円の上。共通テストの図形問題は、この形で「4点が同一円周上」を作ることが非常に多い。
(2)前半 \(\angle\mathrm{OXI}\) を \(\theta\) と \(\alpha\) だけで表す
辺 OA と直線 BI との交点を X とする。このとき、辺 OA 上における2点 M、X の位置関係について考えよう。そのために、\(\angle\mathrm{OMI}\) と \(\angle\mathrm{OXI}\) の大小関係を調べる。まず \(\angle\mathrm{OMI}=\)イウ\(^{\circ}\) である。また、\(\triangle\mathrm{OBX}\) に着目し、\(\theta+\alpha+\beta=90^{\circ}\) であることに注意して、\(\angle\mathrm{OXI}\) を \(\beta\) を用いずに表すと \(\angle\mathrm{OXI}=\)イウ\(^{\circ}+\)エ\(-\)オとなる。(エ、オの解答群。同じものを繰り返し選んでもよい。)⓪ \(\theta\) ① \(\alpha\) ② \(2\theta\) ③ \(2\alpha\)
【型】三角形の外角=隣り合わない2内角の和
【なぜこうするか】 \(\mathrm{IM}\perp\mathrm{OA}\) なので \(\angle\mathrm{OMI}=90^{\circ}\)。イウは90です。
次に \(\angle\mathrm{OXI}\)。X は BI と OA の交点なので、\(\triangle\mathrm{OBX}\) の内角の和を使います。BI は \(\angle\mathrm{OBA}=2\beta\) の二等分線なので \(\angle\mathrm{OBX}=\beta\)。また \(\angle\mathrm{BOX}=\angle\mathrm{AOB}=2\theta\)。したがって
\[\angle\mathrm{OXB}=180^{\circ}-2\theta-\beta\]
I は線分 BX 上(内心は三角形の内部)にあるので \(\angle\mathrm{OXI}=\angle\mathrm{OXB}\)。ここで \(\theta+\alpha+\beta=90^{\circ}\) から \(\beta=90^{\circ}-\theta-\alpha\) を代入します。
\[\angle\mathrm{OXI}=180^{\circ}-2\theta-\left(90^{\circ}-\theta-\alpha\right)=90^{\circ}+\alpha-\theta\]
エは①(\(\alpha\))、オは⓪(\(\theta\))です。
ちなみに \(\theta+\alpha+\beta=90^{\circ}\) は、三角形の内角の和 \(2\theta+2\alpha+2\beta=180^{\circ}\) を2で割っただけ。「半分の角」で議論する問題では、この形が必ず使えます。
【検算】 4通りの \((\theta,\alpha)\) すべてで、座標から求めた \(\angle\mathrm{OXI}\) が \(90^{\circ}+\alpha-\theta\) と小数第6位まで一致しました(例:\(\theta=32^{\circ},\alpha=34^{\circ}\) で \(92.0000^{\circ}\))✓。\(\angle\mathrm{OMI}\) もすべて \(90.00^{\circ}\) でした。
【定石】 内心が絡む問題はすべての角を「半分の角」\(\theta,\alpha,\beta\) で書き、\(\theta+\alpha+\beta=90^{\circ}\) を使う。これで文字が1つ減る。
(2)後半 角の大小から、点の位置関係を読む
このことから、エ\(\lt\)オのとき点 X はカことがわかり、エ\(\gt\)オのとき点 X はキことがわかる。(カ、キの解答群。同じものを繰り返し選んでもよい。)⓪ 点 M と一致する ① 点 M と異なり、線分 OM 上にある ② 点 M と異なり、線分 AM 上にある
【型】定点から線分上の点を見込む角は、遠ざかるほど小さくなる
【なぜこうするか】 M も X も辺 OA 上の点で、どちらも I から見ています。\(\angle\mathrm{OMI}=90^{\circ}\) が基準です。
直線 OA 上を O から A へ向かって点 T を動かし、\(\angle\mathrm{OTI}\) を考えます。M は I から OA に下ろした垂線の足なので、T が M にいるとき \(\angle\mathrm{OTI}=90^{\circ}\)。
- T が M よりO 側(線分 OM 上)にあるとき:I は T から見て前方寄りなので \(\angle\mathrm{OTI}\gt 90^{\circ}\)
- T が M よりA 側(線分 AM 上)にあるとき:\(\angle\mathrm{OTI}\lt 90^{\circ}\)
そこで \(\angle\mathrm{OXI}=90^{\circ}+\alpha-\theta\) の符号を見ます。
\(\alpha\lt\theta\) のとき:\(\angle\mathrm{OXI}\lt 90^{\circ}\) なので X は M より A 側、つまり線分 AM 上。カは②です。
\(\alpha\gt\theta\) のとき:\(\angle\mathrm{OXI}\gt 90^{\circ}\) なので X は M より O 側、つまり線分 OM 上。キは①です。
(\(\alpha=\theta\) なら \(\angle\mathrm{OXI}=90^{\circ}\) で X と M は一致します。それが選択肢⓪です。)
【検算】 座標で \(\mathrm{OM}\) と \(\mathrm{OX}\) を比べました。\(\theta=30^{\circ},\alpha=20^{\circ}\)(\(\alpha\lt\theta\))では \(\mathrm{OM}=0.38666\)、\(\mathrm{OX}=0.42602\) でX のほうが遠い=線分 AM 上 ✓。\(\theta=32^{\circ},\alpha=34^{\circ}\)(\(\alpha\gt\theta\))では \(\mathrm{OM}=0.51910\)、\(\mathrm{OX}=0.50777\) でX のほうが近い=線分 OM 上 ✓。\(\theta=\alpha=25^{\circ}\) では両方 \(0.50000\) で完全に一致しました ✓。
【定石】 垂線の足を基準にして、\(90^{\circ}\) より大きいか小さいかで左右を判定する。角度の情報から位置情報を取り出す典型手法。
(3)前半 \(\alpha\lt\theta\) のとき、4点が同一円周上にある
直線 MN と BI との交点を P とする。エ\(\lt\)オとする。このとき直線 MN 上での3点 P、M、N の位置関係に注意すると、\(\angle\mathrm{ONP}=\)ク、\(\angle\mathrm{OBP}=\)ケとなるので \(\angle\mathrm{MPI}=\)コとなる。したがって、4点 I、M、P、サは同一円周上にある。(ク〜コの解答群。同じものを繰り返し選んでもよい。)⓪ \(\theta\) ① \(\alpha\) ② \(\beta\) ③ \(90^{\circ}-\theta\) ④ \(90^{\circ}-\alpha\) ⑤ \(90^{\circ}-\beta\) ⑥ \(180^{\circ}-\theta\) ⑦ \(180^{\circ}-\alpha\) ⑧ \(180^{\circ}-\beta\) (サの解答群)⓪ A ① B ② N ③ O
【型】接線の長さが等しい ⟹ 二等辺三角形
【なぜこうするか】 まず \(\angle\mathrm{ONP}\)。頂点 O から内接円に引いた2本の接線の長さは等しいので \(\mathrm{OM}=\mathrm{ON}\)。したがって \(\triangle\mathrm{OMN}\) は頂角 \(\angle\mathrm{MON}=2\theta\) の二等辺三角形で、底角は
\[\angle\mathrm{OMN}=\angle\mathrm{ONM}=\dfrac{180^{\circ}-2\theta}{2}=90^{\circ}-\theta\]
P は直線 MN 上にあるので \(\angle\mathrm{ONP}=90^{\circ}-\theta\)。クは③です。
次に \(\angle\mathrm{OBP}\)。P は BI 上なので \(\angle\mathrm{OBP}=\angle\mathrm{OBI}=\beta\)(BI は \(\angle\mathrm{B}\) の二等分線)。ケは②です。
この2つを使って \(\angle\mathrm{MPI}\) を出します。P は直線 MN と直線 BI の交点なので、\(\triangle\mathrm{NBP}\)(頂点 N は OB 上、B、P)を考えると、外角の関係から
\[\angle\mathrm{NPB}=\angle\mathrm{ONP}-\angle\mathrm{OBP}=\left(90^{\circ}-\theta\right)-\beta\]
\(\beta=90^{\circ}-\theta-\alpha\) を代入すると
\[\angle\mathrm{NPB}=90^{\circ}-\theta-\left(90^{\circ}-\theta-\alpha\right)=\alpha\]
\(\angle\mathrm{MPI}\) はこの角の対頂角にあたるので \(\angle\mathrm{MPI}=\alpha\)。コは①です。
ここで(1)を思い出します。AI は \(\angle\mathrm{A}=2\alpha\) の二等分線なので
\[\angle\mathrm{MAI}=\alpha\]
つまり線分 MI を、点 P からも点 A からも同じ角 \(\alpha\) で見込んでいる。P と A は直線 MI に関して同じ側にあるので、円周角の定理の逆により、4点 I、M、P、A は同一円周上にあります。サは⓪です。
【検算】 \(\theta=30^{\circ},\alpha=20^{\circ}\)(\(\alpha\lt\theta\))で座標計算すると \(\angle\mathrm{ONP}=60.0000^{\circ}=90^{\circ}-\theta\)、\(\angle\mathrm{OBP}=40.0000^{\circ}=\beta\)、\(\angle\mathrm{MPI}=20.0000^{\circ}=\alpha\)、\(\angle\mathrm{MAI}=20.0000^{\circ}\) ですべて一致 ✓。さらに4点 I、M、P、A の共円判定式(行列式)を計算すると \(-2.1\times 10^{-18}\)(実質0)で、確かに同一円周上でした ✓。
【定石】 1つの線分を同じ角で見込む2点は、その線分と合わせて同一円周上(円周角の定理の逆)。ただし2点が線分の同じ側にあることが条件。
(3)後半 \(\alpha\gt\theta\) でも、理由を変えれば同じ結論
エ\(\gt\)オとする。このとき \(\angle\mathrm{MPI}=\)シとなる。したがって、4点 I、M、P、サはス。(シの解答群は(3)前半と同じ。スの解答群)⓪ 同一円周上にある ① 同一円周上にはない
【型】配置が変わったら、円周角の定理の「もう一つの逆」を使う
【なぜこうするか】 \(\alpha\gt\theta\) になると P の位置が変わり、\(\angle\mathrm{MPI}\) は前と補角になります。
\[\angle\mathrm{MPI}=180^{\circ}-\alpha\]
シは⑦です。「同じ角 \(\alpha\)」ではなくなったので、円周角の定理の逆は直接使えません。
しかし諦める必要はありません。\(\angle\mathrm{MAI}=\alpha\) は変わらないので
\[\angle\mathrm{MPI}+\angle\mathrm{MAI}=\left(180^{\circ}-\alpha\right)+\alpha=180^{\circ}\]
四角形の向かい合う角の和が \(180^{\circ}\) になっています。これは「四角形が円に内接する条件」そのもの。したがってこの場合も4点 I、M、P、A は同一円周上にあります。スは⓪です。
\(\alpha\) と \(\theta\) の大小によらず、4点は常に同一円周上にある——ただし理由が2通りに分かれる。これがこの大問の結論であり、「円周角の定理の逆」と「対角の和が \(180^{\circ}\)」という2つの共円条件を使い分けさせる設計になっています。
【検算】 \(\alpha\gt\theta\) の2例で確かめました。\(\theta=32^{\circ},\alpha=34^{\circ}\) では \(\angle\mathrm{MPI}=146.0000^{\circ}=180^{\circ}-34^{\circ}\) ✓、\(\theta=20^{\circ},\alpha=50^{\circ}\) では \(130.0000^{\circ}=180^{\circ}-50^{\circ}\) ✓。共円判定式はそれぞれ \(1.3\times 10^{-17}\)、\(4.9\times 10^{-18}\) で、いずれも同一円周上でした ✓。
【定石】 4点が同一円周上にある条件は2つ。①同じ側から同じ角で見込む(円周角の定理の逆)②四角形の対角の和が \(180^{\circ}\)。図の配置によって使い分ける。
(4) 具体的な角度で、4点の並び順を決める
直線 MN と BI、AI との交点を、それぞれ P、Q とする。\(\theta=32^{\circ}\)、\(\alpha=34^{\circ}\) のとき、4点 M、N、P、Q は直線 MN 上にセの順に並ぶ。(セについては、最も適当なものを次の⓪〜③のうちから一つ選べ。)⓪ M、P、N、Q ① M、P、Q、N ② P、M、N、Q ③ P、M、Q、N
【型】これまでに得た角の公式を、対称的にもう一方へ移す
【なぜこうするか】 \(\theta=32^{\circ}\)、\(\alpha=34^{\circ}\) なので \(\beta=90^{\circ}-32^{\circ}-34^{\circ}=24^{\circ}\)。\(\alpha\gt\theta\) の場合です。
P(BI との交点)については(3)後半どおり。Q(AI との交点)は、O、A、B と \(\theta,\alpha,\beta\) の役割を入れ替えて同じ議論をすればわかります。頂点 A 側では \(\triangle\mathrm{OMN}\) の底角 \(90^{\circ}-\theta\) と \(\angle\mathrm{OAI}=\alpha\) を比べることになり、\(\alpha\) と \(\theta\) の大小と、さらに \(\beta\) との関係が効いてきます。
結論を言うと、この角度ではM と N の間に P が入り、Q は N の外側に来ます。並び順は
\[\mathrm{M},\quad \mathrm{P},\quad \mathrm{N},\quad \mathrm{Q}\]
セは⓪です。
試験場でこれを図なしで確定させるのは大変です。与えられた角度で実際に図を描いてしまうのが最も確実。\(\angle\mathrm{AOB}=64^{\circ}\)、\(\angle\mathrm{OAB}=68^{\circ}\)、\(\angle\mathrm{OBA}=48^{\circ}\) というほぼ正三角形に近い形なので、内接円と接点、そして2本の角の二等分線を書き込めば読み取れます。
【検算】 \(\theta=32^{\circ}\)、\(\alpha=34^{\circ}\) で座標を組み、直線 MN 上の位置を M からの距離 \(t\) で測りました。\(\mathrm{M}:t=0\)、\(\mathrm{P}:t=0.020244\)、\(\mathrm{N}:t=0.550163\)、\(\mathrm{Q}:t=0.661153\)。並べるとM、P、N、Q ✓。P が M のすぐそば(\(t=0.02\))にあるのが、この角度設定の特徴です。
【よくあるミス】 P が M と N の間にあることまでは見えても、Q が N の外側だと気づかず①(M、P、Q、N)を選ぶこと。\(\mathrm{Q}\) の \(t=0.661\) は \(\mathrm{N}\) の \(t=0.550\) より大きく、N を通り越しています。
- 接点では半径 ⊥ 接線。直角が2つ見えたら、その斜辺を直径とする円。
- 内心の問題は「半分の角」\(\theta,\alpha,\beta\) で統一し、\(\theta+\alpha+\beta=90^{\circ}\) を使う。
- 垂線の足を基準に \(90^{\circ}\) との大小で位置を判定する。
- 1点から引いた2本の接線の長さは等しい(\(\mathrm{OM}=\mathrm{ON}\))→ 二等辺三角形。
- 共円条件は2つ:同じ側から同じ角で見込む/対角の和が \(180^{\circ}\)。配置で使い分ける。
- 順序を問う小問は与えられた角度で実際に作図するのが最も確実。
第4問(配点20) 「同時に2枚」と「1枚を2回」の違い(集合の共通部分の確率)
箱の中に、1から6までの自然数が一つずつ書かれた6枚のカードが入っている。ただし、異なるカードには異なる自然数が書かれている。次の試行Aと試行Bを考える。
試行A:箱の中から2枚のカードを同時に取り出し、書かれている自然数を確認してからもとに戻す。
試行B:箱の中から1枚のカードを取り出し、書かれている自然数を確認してからもとに戻す。
カードを2枚取り出す方法は、試行Aを1回行うことと、試行Bを2回行うことの二つあり、この二つの場合について、花子さんと太郎さんは話をしている。花子「二人が別々に、試行Aを1回ずつ行う場合を考えてみよう。」太郎「例えば、花子さんが取り出したカードに自然数1、2が書かれていて、私が取り出したカードに自然数2、3が書かれていたら、二人が1個の共通の自然数2を取り出したことになるね。」花子「一般に、二人が取り出す共通の自然数が何個であるときが最も起こりやすいのかな。」太郎「試行Bを2回行う場合と比べてみるとどうなるのかな。」
(1)(i) ア1 イ5 / (ii) ウ1 エ1 オ5 カ2 キ5
(2)(i) ク5 ケ1 コ0 サ8 / (ii) シ2 ス5 セ2 ソ1 タ6 チ3 ツ5 テ7 ト2
(3) ナ1 ニ0
(1)(i) 同時に2枚は組合せ
花子さんと太郎さんが別々に、試行Aを1回ずつ行う場合を考える。(i) 花子さんが試行Aを1回行う場合、2枚のカードの取り出し方はアイ通りある。
【型】同時に取り出す=順序を区別しない=組合せ
【なぜこうするか】 「同時に取り出す」ので \((1,2)\) と \((2,1)\) は同じ。6枚から2枚選ぶ組合せです。
\[{}_{6}\mathrm{C}_{2}=\dfrac{6\cdot 5}{2\cdot 1}=15\]
アイは15です。
【検算】 小さい方の数を1から5まで固定すると、組は \(5+4+3+2+1=15\) 通りです。組合せの計算と一致します。
【定石】 「同時に」は組合せ、「1回ずつ順に」は順列(または重複順列)。この違いが本問の全体を貫くテーマです。
(1)(ii) 共通部分が2個・0個の確率
花子さんが取り出した2枚のカードに書かれた自然数だけを要素にもつ集合を \(E\) とし、太郎さんが取り出した2枚のカードに書かれた自然数だけを要素にもつ集合を \(F\) とする。例えば、花子さんが取り出した2枚のカードに書かれた自然数が5と6であるとき、\(E=\{5,\,6\}\) である。以下、集合 \(E\cap F\) の要素がないという事象を \(A_{0}\) とし、集合 \(E\cap F\) の要素の個数が1個、2個であるという事象をそれぞれ \(A_{1}\)、\(A_{2}\) とする。事象 \(A_{2}\) が起こる確率 \(P(A_{2})\) は \(\dfrac{\boxed{\text{ウ}}}{\boxed{\text{エオ}}}\) である。また、事象 \(A_{0}\) が起こる確率 \(P(A_{0})\) は \(\dfrac{\boxed{\text{カ}}}{\boxed{\text{キ}}}\) である。
【型】花子さんの結果を固定して、太郎さんの場合の数を数える
【なぜこうするか】 二人の試行は独立なので、花子さんの \(E\) が何であっても、太郎さんの条件付き確率は同じ。そこで花子さんの結果を1つに固定し、太郎さんの場合だけを数えると計算を整理しやすくなります。
\(P(A_{2})\):共通部分が2個 これは \(E=F\) ということ。花子さんの \(E\) を固定すると、太郎さんが同じ組を引く確率は
\[P(A_{2})=\dfrac{1}{15}\]
ウは1、エオは15です。
\(P(A_{0})\):共通部分が0個 太郎さんは、花子さんが引いた2枚を避けて残り4枚から2枚を選ぶことになります。
\[P(A_{0})=\dfrac{{}_{4}\mathrm{C}_{2}}{{}_{6}\mathrm{C}_{2}}=\dfrac{6}{15}=\dfrac{2}{5}\]
カは2、キは5です。
ついでに \(P(A_{1})\) も出しておきます。3つの事象で全部を尽くしているので
\[P(A_{1})=1-\dfrac{1}{15}-\dfrac{6}{15}=\dfrac{8}{15}\]
【検算】 二人の組合せ \(15\times 15=225\) 通りをすべて総当たりして共通部分の個数を数えました。\(P(A_{0})=\dfrac{2}{5}\)、\(P(A_{1})=\dfrac{8}{15}\)、\(P(A_{2})=\dfrac{1}{15}\)、合計はちょうど1 ✓。手計算と完全に一致しています。
【定石】 独立な2人の試行では片方を固定してもう片方だけ数える。「花子さんの引き方が何通りあるか」は分母分子で約分されて消える。
(2)(i) 試行Bを2回にすると、話が変わる
花子さんと太郎さんが別々に、試行Bを2回ずつ行う場合を考える。花子さんが取り出した2枚のカードに書かれた自然数だけを要素にもつ集合を \(G\) とし、太郎さんが取り出した2枚のカードに書かれた自然数だけを要素にもつ集合を \(H\) とする。例えば、花子さんが取り出した2枚のカードに書かれた自然数がどちらも6であるとき、\(G=\{6\}\) である。以下、集合 \(G\cap H\) の要素がないという事象を \(B_{0}\) とし、集合 \(G\cap H\) の要素の個数が1個、2個であるという事象をそれぞれ \(B_{1}\)、\(B_{2}\) とする。(i) 事象 \(B_{2}\) が起こる確率 \(P(B_{2})\) は \(\dfrac{\boxed{\text{ク}}}{\boxed{\text{ケコサ}}}\) である。
【型】戻すので重複あり。集合の要素数が1個になる場合が生じる
【なぜこうするか】 試行Bは1枚引いて戻すので、2回とも同じ数が出ることがあります。そのとき集合は \(\{6\}\) のように1要素になる。ここが試行Aとの決定的な違いです。
\(|G\cap H|=2\) となるには、\(G\) も \(H\) も2要素で、しかも \(G=H\) でなければなりません。
全事象は、花子さん \(6^{2}\) 通り・太郎さん \(6^{2}\) 通りで \(6^{4}=1296\) 通り。
花子さんが2要素になるのは2回の数が異なるときで \(6\times 5=30\) 通り。そのそれぞれについて、太郎さんが同じ集合になるのは、その2数を2回で引く並べ方 \(2\) 通り。
\[P(B_{2})=\dfrac{30\times 2}{1296}=\dfrac{60}{1296}=\dfrac{5}{108}\]
クは5、ケコサは108です。
試行Aの \(P(A_{2})=\dfrac{1}{15}=0.0667\) に対し、\(P(B_{2})=\dfrac{5}{108}=0.0463\)。「2個とも一致」は試行Bのほうが起こりにくいとわかります。1要素になってしまうケースがあるぶん、2個一致のチャンスが減るのです。
【検算】 \(6^{4}=1296\) 通りを総当たりしたところ \(P(B_{2})=\dfrac{5}{108}\) ✓。
【定石】 「戻す」試行では、集合の要素数が減る場合を必ず場合分けする。取り出した「枚数」と集合の「要素数」は一致しない。
(2)(ii) 場合分けして \(P(B_{0})\) を求める
花子さんと太郎さんは、事象 \(B_{0}\) が起こる確率 \(P(B_{0})\) の求め方について考えている。花子「事象 \(B_{0}\) を、私が2回とも同じ自然数が書かれたカードを取り出す場合とそうでない場合に分けて考えたらどうかな。」太郎「その二つの事象は決して同時に起こらないね。」 花子さんが2回とも同じ自然数が書かれたカードを取り出し、かつ事象 \(B_{0}\) が起こる確率は \(\dfrac{\boxed{\text{シス}}}{\boxed{\text{セソタ}}}\) である。また、確率 \(P(B_{0})\) は \(\dfrac{\boxed{\text{チツ}}}{\boxed{\text{テト}}}\) である。
【型】排反な場合に分けて足す
【なぜこうするか】 花子さんの提案どおり、\(G\) の要素数で場合分けします。この2つは同時には起こらない(排反)ので、確率をそのまま足せます。
【場合1】花子さんが2回とも同じ数 確率は \(\dfrac{6}{36}=\dfrac{1}{6}\)。このとき \(G=\{x\}\) の1要素です。
太郎さんの \(H\) が \(x\) を含まないためには、2回とも \(x\) 以外を引けばよい。
\[\dfrac{5}{6}\times\dfrac{5}{6}=\dfrac{25}{36}\]
したがって、この場合の確率は
\[\dfrac{1}{6}\times\dfrac{25}{36}=\dfrac{25}{216}\]
シスは25、セソタは216です。
【場合2】花子さんの2回が異なる数 確率は \(\dfrac{5}{6}\)。このとき \(G=\{x_{1},x_{2}\}\) の2要素。
太郎さんがどちらも引かないためには、2回とも残り4枚から引けばよい。
\[\dfrac{4}{6}\times\dfrac{4}{6}=\dfrac{16}{36}=\dfrac{4}{9}\]
この場合の確率は
\[\dfrac{5}{6}\times\dfrac{4}{9}=\dfrac{20}{54}=\dfrac{10}{27}\]
2つを足して
\[P(B_{0})=\dfrac{25}{216}+\dfrac{10}{27}=\dfrac{25}{216}+\dfrac{80}{216}=\dfrac{105}{216}=\dfrac{35}{72}\]
チツは35、テトは72です。
【検算】 \(1296\) 通りの総当たりで \(P(B_{0})=\dfrac{35}{72}=0.486111\) ✓。「花子さんが2回とも同じ、かつ \(B_{0}\)」だけを数えると \(\dfrac{25}{216}=0.115741\) で、これも一致しました ✓。ついでに \(P(B_{1})=\dfrac{101}{216}\) も確認でき、3つの合計はちょうど1でした。
【定石】 場合分けは「排反であること」を必ず確認してから足す。太郎さんの「決して同時に起こらないね」というセリフは、その確認そのもの。
(3) どちらの試行でも「最も起こりやすい」のはどれか
(1)で定めた事象 \(A_{0}\)、\(A_{1}\)、\(A_{2}\) が起こる確率 \(P(A_{0})\)、\(P(A_{1})\)、\(P(A_{2})\) のうち、最大のものはナである。また、(2)で定めた事象 \(B_{0}\)、\(B_{1}\)、\(B_{2}\) が起こる確率 \(P(B_{0})\)、\(P(B_{1})\)、\(P(B_{2})\) のうち、最大のものはニである。(ナの解答群)⓪ \(P(A_{0})\) ① \(P(A_{1})\) ② \(P(A_{2})\) (ニの解答群)⓪ \(P(B_{0})\) ① \(P(B_{1})\) ② \(P(B_{2})\)
【型】残り1つは「1から他を引く」で出し、3つを比較する
【なぜこうするか】 \(A_{0}\)、\(A_{1}\)、\(A_{2}\) は全事象を分けているので、和は1。すでに2つ出ているので3つ目は引き算で出ます。
試行Aの場合
\[P(A_{0})=\dfrac{6}{15},\qquad P(A_{2})=\dfrac{1}{15},\qquad P(A_{1})=1-\dfrac{6}{15}-\dfrac{1}{15}=\dfrac{8}{15}\]
分母がそろっているので一目瞭然。最大は \(P(A_{1})=\dfrac{8}{15}\) でナは①です。
試行Bの場合 分母を216にそろえます。
\[P(B_{0})=\dfrac{35}{72}=\dfrac{105}{216},\qquad P(B_{2})=\dfrac{5}{108}=\dfrac{10}{216}\]
\[P(B_{1})=1-\dfrac{105}{216}-\dfrac{10}{216}=\dfrac{101}{216}\]
最大は \(P(B_{0})=\dfrac{105}{216}\) でニは⓪です。
ここが本問の結論です。「同じ2枚を取り出す」という一見同じ操作でも、
- 試行A(同時に2枚)では1個だけ共通が最も起こりやすい(\(\dfrac{8}{15}=0.533\))
- 試行B(1枚ずつ2回、戻す)では共通が1個もないが最も起こりやすい(\(\dfrac{105}{216}=0.486\))
と、答えが変わってしまう。試行Bでは集合が1要素になることがあり、そのぶん「かぶりにくい」方向に確率が動くためです。
なお \(P(B_{0})=0.486\) と \(P(B_{1})=0.468\) の差はごくわずか(\(\dfrac{4}{216}\))。感覚では判定できず、きちんと計算しないと答えが出せないように作られています。
【検算】 両方とも総当たりで確認しました。試行A(225通り)は \(0.400,\ 0.533,\ 0.067\) で最大は \(P(A_{1})\) ✓。試行B(1296通り)は \(0.486,\ 0.468,\ 0.046\) で最大は \(P(B_{0})\) ✓。どちらも合計はちょうど1でした。
【よくあるミス】 試行Aの結果につられて \(P(B_{1})\) を選ぶこと。差が \(0.486\) 対 \(0.468\) と小さいので、両方を分母216にそろえて比較するまで判断を保留すべきです。
【定石】 排反で全体を尽くす事象なら、面倒な1つは「1から残りを引く」。比較するときは分母を必ずそろえる。
- 「同時に取り出す」は組合せ、「1枚ずつ戻して2回」は重複順列。全事象の数え方が変わる。
- 「戻す」試行では集合の要素数が1個になる場合がある。取り出した枚数=要素数ではない。
- 独立な2人の試行は、片方を固定してもう片方だけ数える。
- 排反であることを確認してから場合分けの確率を足す。
- 面倒な1つは「1から残りを引く」。全体を尽くしているかの確認にもなる。
- 比較は分母をそろえてから。差がわずかなときに感覚で答えると外す。

