2025年(令和7年度)大学入学共通テスト 追試験の数学Ⅱ・数学B・数学Cについて、問題文をTeXで再掲したうえで、全問の解答と解説を掲載します。執筆は数強塾代表・藤原進之介です。
追試験は本試験とは異なる問題で、追加の演習や解法の確認に利用できます。本試験を解いた後に、同じ出題範囲を別の題材で復習したい方に適しています。
この冊子は第1問〜第3問が必答、第4問〜第7問から3問を選択して解答します。この記事では、選択問題を含む第1問から第7問までをすべて解説します。
出題主体は大学入試センターです。解答に必要な問題文・条件・図の選択肢は、この記事だけで確認できるよう本文中に再掲しています。
この記事の目次
- 第1問(必答・配点15) を1次式・その2乗で割った余り
- 第2問(必答・配点15) x軸に接する円が動くとき、中心が描く図形
- 第3問(必答・配点22) 絶対値を含む定積分と、値が一定になる区間
- 第4問(選択・配点16) 等比数列から2次の漸化式へ
- 第5問(選択・配点16) くじの得点と損得点(期待値・分散・信頼区間)
- 第6問(選択・配点16) 空間の2直線が交わる条件をベクトルで捉える
- 第7問(選択・配点16) 複素数平面上の楕円と回転
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第1問(必答・配点15) \(x^{n}\) を1次式・その2乗で割った余り
\(n\) を3以上の自然数とする。\(x^{n}\) を \(x-2\) や \(2x-1\)、さらに \((x-2)^{2}\) や \((2x-1)^{2}\) で割ったときの余りについて考える。
(1)(i) ア4 イ5 / (ii) ウ8
(2)(i) エ4 オ0 カ4 キ3 / (ii) ク8 ケ7
(1)(i) 剰余の定理を「割り算の式」から導く
\(x^{n}\) を \(x-2\) や \(2x-1\) で割ったときの余りについて考えよう。(i) \(x^{n}\) を \(x-2\) で割ったときの商を \(Q(x)\)、余りを \(k\) とおく。\(x^{n}\) を \(Q(x)\) と \(k\) を用いて表すと \(x^{n}=\)ア…① となる。①の両辺の \(x\) に2を代入すると、\(k=\)イであることがわかる。(アの解答群)⓪ \(kQ(x)+x-2\) ① \(kQ(x)-(x-2)\) ② \(k(x-2)+Q(x)\) ③ \(k(x-2)-Q(x)\) ④ \((x-2)Q(x)+k\) ⑤ \((x-2)Q(x)-k\) (イ、ウの解答群。同じものを繰り返し選んでもよい。)⓪ \(0\) ① \(1\) ② \(2\) ③ \(-1\) ④ \(-2\) ⑤ \(2^{n}\) ⑥ \((-1)^{n}\) ⑦ \(-2^{n}\) ⑧ \(\dfrac{1}{2^{n}}\) ⑨ \(-\dfrac{1}{2^{n}}\)
【型】(割られる式)=(割る式)×(商)+(余り)
【なぜこうするか】 整数の割り算とまったく同じ形です。\(17=5\times 3+2\) と書くのと同じで
\[x^{n}=(x-2)Q(x)+k\]
アは④です。選択肢には \(k\) と \(Q(x)\) の役割を入れ替えたものが並んでいますが、余りは定数、商は多項式という区別で判別できます。
ここで \(x=2\) を代入すると、\((x-2)\) の項が消えて
\[2^{n}=0\cdot Q(2)+k\quad\Longleftrightarrow\quad k=2^{n}\]
イは⑤です。これが剰余の定理で、証明の中身がこの2行に凝縮されています。
【検算】 \(n=3,4,5,7\) で実際に多項式の割り算をしたところ、余りは \(8,\ 16,\ 32,\ 128\)。それぞれ \(2^{3},2^{4},2^{5},2^{7}\) と一致 ✓。
【定石】 剰余の定理:\(f(x)\) を \(x-a\) で割った余りは \(f(a)\)。「割り算の式を書いて、割る式が0になる値を代入」が原理。
(1)(ii) \(2x-1\) で割るときは \(x=\dfrac{1}{2}\) を代入
(ii) (i)と同様に考えると、\(x^{n}\) を \(2x-1\) で割ったときの余りは、ウであることがわかる。
【型】1次式の係数が1でなくても、「割る式=0」となる値を代入
【なぜこうするか】 \(x^{n}=(2x-1)Q_{1}(x)+k_{1}\) と書き、\(2x-1=0\) すなわち \(x=\dfrac{1}{2}\) を代入します。
\[\left(\dfrac{1}{2}\right)^{n}=k_{1}\quad\Longleftrightarrow\quad k_{1}=\dfrac{1}{2^{n}}\]
ウは⑧です。
1次式の係数が1でないので \(x=2\) や \(x=1\) を代入してしまいがちですが、代入すべきは「割る式を0にする値」。ここを外すと以降すべて崩れます。
【検算】 \(n=3,4,5,7\) で割り算すると余りは \(\dfrac{1}{8},\dfrac{1}{16},\dfrac{1}{32},\dfrac{1}{128}\)。確かに \(\dfrac{1}{2^{n}}\) です ✓。
【定石】 \(ax+b\) で割った余りは \(f\left(-\dfrac{b}{a}\right)\)。係数が1でない1次式でも剰余の定理は使える。
(2)(i) \(X=x-2\) と置換して、2次式で割った余りを出す
次に、\(x^{n}\) を \((x-2)^{2}\) や \((2x-1)^{2}\) で割ったときの余りについて考えよう。(i) \(x^{n}\) を \((x-2)^{2}\) で割ったときの余りを \(R(x)\) とおく。太郎「(1)と同じように考えても、余りをうまく求められないね。」花子「\(X=x-2\) とおいてみるのはどうだろう。」 \(X=x-2\) とおくと \(x^{n}=(X+2)^{n}\) である。\((X+2)^{n}\) を展開すると、\(X\) の項の係数はエ、定数項はオとなる。これら以外の項は \(X^{2}\) で割り切れるので、\((X+2)^{n}\) は、ある多項式 \(A(X)\) を用いて \((X+2)^{n}=A(X)\cdot X^{2}+\)エ\(X+\)オと表すことができる。このことから \(R(x)=\)カ\(x+\)キであることがわかる。(エ〜ケの解答群。同じものを繰り返し選んでもよい。)⓪ \(2^{n}\) ① \(\dfrac{1}{2^{n}}\) ② \(n\cdot 2^{n}\) ③ \((-n+1)\cdot 2^{n}\) ④ \(n\cdot 2^{n-1}\) ⑤ \((-n+1)\cdot 2^{n-1}\) ⑥ \(\dfrac{n}{2^{n}}\) ⑦ \(\dfrac{-n+1}{2^{n}}\) ⑧ \(\dfrac{n}{2^{n-1}}\) ⑨ \(\dfrac{-n+1}{2^{n-1}}\)
【型】割る式が \((x-a)^{2}\) なら \(X=x-a\) と置換して、二項定理で低次の2項だけ拾う
【なぜこうするか】 \((x-2)^{2}\) で割った余りは1次以下の式なので、剰余の定理(1回の代入)だけでは決まりません。そこで花子さんの置換が効きます。
\(X=x-2\) とおくと、割る式は \(X^{2}\) といういちばん単純な2次式になります。\(X^{2}\) で割った余りは「\(X\) の1次以下の項」、つまり展開したときの \(X\) の項と定数項をそのまま読めばよいのです。
二項定理で展開します。
\[(X+2)^{n}=\sum_{r=0}^{n}{}_{n}\mathrm{C}_{r}X^{r}2^{n-r}\]
定数項(\(r=0\))は \({}_{n}\mathrm{C}_{0}2^{n}=2^{n}\)。オは⓪です。
\(X\) の項(\(r=1\))は \({}_{n}\mathrm{C}_{1}2^{n-1}=n\cdot 2^{n-1}\)。エは④です。
\(r\geqq 2\) の項はすべて \(X^{2}\) を因数にもつので、まとめて \(A(X)X^{2}\) と書けます。したがって
\[(X+2)^{n}=A(X)X^{2}+n\cdot 2^{n-1}X+2^{n}\]
最後に \(X=x-2\) を戻します。
\[R(x)=n\cdot 2^{n-1}(x-2)+2^{n}=n\cdot 2^{n-1}x-n\cdot 2^{n}+2^{n}=n\cdot 2^{n-1}x+(-n+1)\cdot 2^{n}\]
カは④、キは③です。
【検算】 \(n=3,4,5,7\) で \(x^{n}\) を \((x-2)^{2}\) で割った余りを計算し、公式 \(n\cdot 2^{n-1}x+(-n+1)\cdot 2^{n}\) と比べました。\(n=3\):\(12x-16\)(公式も \(12x-16\))、\(n=4\):\(32x-48\)、\(n=5\):\(80x-128\)、\(n=7\):\(448x-768\)。4例すべて差がちょうど0で一致 ✓。
【定石】 \((x-a)^{k}\) で割った余りは、\(X=x-a\) と置換して \((X+a)^{n}\) を展開し、\(X^{k-1}\) 以下の項を読む。二項定理と組み合わせるのが定番。
(2)(ii) 同じ手を \((2x-1)^{2}\) に適用する
(ii) (i)と同様に考えると、\(x^{n}\) を \((2x-1)^{2}\) で割ったときの余りは、ク\(x+\)ケである。
【型】(i)の \(2\) を \(\dfrac{1}{2}\) に置き換えるだけ
【なぜこうするか】 \((2x-1)^{2}=4\left(x-\dfrac{1}{2}\right)^{2}\) なので、\(Y=x-\dfrac{1}{2}\) とおけば話は(i)とまったく同じ形になります。
\[x^{n}=\left(Y+\dfrac{1}{2}\right)^{n}=B(Y)Y^{2}+n\left(\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}Y+\left(\dfrac{1}{2}\right)^{n}\]
\(Y\) の項の係数は \({}_{n}\mathrm{C}_{1}\left(\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}=\dfrac{n}{2^{n-1}}\)、定数項は \(\dfrac{1}{2^{n}}\)。
ここで注意。\((2x-1)^{2}=4Y^{2}\) であって \(Y^{2}\) ではありませんが、\(B(Y)Y^{2}=\dfrac{B(Y)}{4}\cdot 4Y^{2}\) と書き直せるので、\(4Y^{2}\) で割っても余りは変わりません(商が \(\dfrac{1}{4}\) 倍になるだけ)。
\(Y=x-\dfrac{1}{2}\) を戻して
\[\dfrac{n}{2^{n-1}}\left(x-\dfrac{1}{2}\right)+\dfrac{1}{2^{n}}=\dfrac{n}{2^{n-1}}x-\dfrac{n}{2^{n}}+\dfrac{1}{2^{n}}=\dfrac{n}{2^{n-1}}x+\dfrac{-n+1}{2^{n}}\]
クは⑧、ケは⑦です。
(i)の答えと見比べると、\(2^{n-1}\to\dfrac{1}{2^{n-1}}\)、\(2^{n}\to\dfrac{1}{2^{n}}\) と分母分子が入れ替わった形。(1)で \(2^{n}\) と \(\dfrac{1}{2^{n}}\) が対になっていたのと同じ構造で、大問全体がきれいに対応しています。
【検算】 \(n=3,4,5,7\) で割り算すると余りは \(\dfrac{3}{4}x-\dfrac{1}{4}\)、\(\dfrac{1}{2}x-\dfrac{3}{16}\)、\(\dfrac{5}{16}x-\dfrac{1}{8}\)、\(\dfrac{7}{64}x-\dfrac{3}{64}\)。公式 \(\dfrac{n}{2^{n-1}}x+\dfrac{-n+1}{2^{n}}\) に代入した値と4例すべて完全一致 ✓(例:\(n=4\) なら \(\dfrac{4}{8}x+\dfrac{-3}{16}=\dfrac{1}{2}x-\dfrac{3}{16}\))。
【よくあるミス】 \((2x-1)^{2}\) を \(\left(x-\dfrac{1}{2}\right)^{2}\) と混同して、係数の \(4\) の扱いを誤ること。余り自体は変わりませんが、割り算の式を書くときは \(4\) をどちらに寄せたか意識しておくこと。
第2問(必答・配点15) x軸に接する円が動くとき、中心が描く図形
同一平面上にある二つの円を考える。二つの円がただ一つの共有点をもつとき、二つの円は接するという。二つの円が外側で接するとき外接、一方が他方の内部にあって接するとき内接するという。
実数 \(s\) は \(-2\lt s\lt 2\) を満たし、実数 \(t\) は \(t\gt 0\) を満たすとする。O を原点とする座標平面において、方程式 \(x^{2}+y^{2}=4\) が表す円を \(C_{0}\)、方程式 \(x^{2}-2sx+y^{2}-2ty+s^{2}=0\) …① が表す円を \(C\) とする。
(1) ア3 イ6 ウ6 エ0 / (2)(i) オ1 カ2 キ1 / (ii) ク2
(3) ケ1 コ2 サ3 シ2 ス2 セ3 ソ3
(1) 平方完成すると、半径がそのまま \(y\) 座標になっている
\(C\) は、中心 \(\left(\boxed{\text{ア}},\ \boxed{\text{イ}}\right)\)、半径ウの円である。また、\(C\) は \(s\) や \(t\) の値によらずエと接している。(ア〜ウの解答群。同じものを繰り返し選んでもよい。)⓪ \(0\) ① \(s^{2}\) ② \(t^{2}\) ③ \(s\) ④ \(2s\) ⑤ \(4s\) ⑥ \(t\) ⑦ \(2t\) ⑧ \(4t\) (エの解答群)⓪ \(x\) 軸 ① \(y\) 軸 ② 直線 \(y=x\) ③ 直線 \(y=-x\)
【型】\(x\)、\(y\) それぞれで平方完成して \((x-p)^{2}+(y-q)^{2}=r^{2}\) の形に
【なぜこうするか】 ①を \(x\) と \(y\) それぞれで平方完成します。
\[x^{2}-2sx+y^{2}-2ty+s^{2}=(x-s)^{2}-s^{2}+(y-t)^{2}-t^{2}+s^{2}=0\]
整理すると
\[(x-s)^{2}+(y-t)^{2}=t^{2}\]
中心 \((s,\,t)\)、半径 \(|t|=t\)(\(t\gt 0\) より)。アは③、イは⑥、ウは⑥です。
ここにこの大問の仕掛けがあります。中心の \(y\) 座標が \(t\)、半径も \(t\)。ということは
(中心から \(x\) 軸までの距離)\(=t=\)(半径)
なので、\(C\) は\(s\)、\(t\) の値によらず必ず \(x\) 軸に接します。エは⓪です。
もとの①の式で定数項が \(s^{2}\) だけ(\(t^{2}\) がない)ことが、この性質を作り出しています。
【検算】 \((x-s)^{2}+(y-t)^{2}-t^{2}\) を展開したものと①の左辺の差を数式処理で計算するとちょうど0 ✓。
【定石】 円 \((x-p)^{2}+(y-q)^{2}=r^{2}\) が \(x\) 軸に接する ⟺ \(|q|=r\)、\(y\) 軸に接する ⟺ \(|p|=r\)。
(2)(i) 外接か内接かを見きわめ、\(t\) を \(s\) で表す
\(C\) と \(C_{0}\) が接する場合を考える。\(C\) と \(C_{0}\) が接したまま実数 \(s\) が \(-2\lt s\lt 2\) の範囲を動くとき、\(C\) の中心が描く図形について考えよう。(i) \(-2\lt s\lt 2\) に注意すると、\(C_{0}\) と \(C\) はオしていることがわかる。いま、\(C_{0}\) の半径を \(r_{0}\)、\(C\) の半径を \(r\) とし、\(C_{0}\) の中心と \(C\) の中心との間の距離 \(d\) を \(r_{0}\) と \(r\) で表すと、\(d=\)カとなる。したがって、\(t\) を \(s\) で表すと \(t=\)キとなる。(オの解答群)⓪ 外接 ① 内接 (カの解答群)⓪ \(r+r_{0}\) ① \(r-r_{0}\) ② \(r_{0}-r\) ③ \(r\cdot r_{0}\) ④ \(\dfrac{r}{r_{0}}\) ⑤ \(\dfrac{r_{0}}{r}\) (キの解答群)⓪ \(\dfrac{4+s^{2}}{4}\) ① \(\dfrac{4-s^{2}}{4}\) ② \(\dfrac{\sqrt{4+s^{2}}}{2}\) ③ \(\dfrac{\sqrt{4-s^{2}}}{2}\) ④ \(\dfrac{(2+s)^{2}}{4}\) ⑤ \(\dfrac{(2-s)^{2}}{4}\)
【型】2円の接触条件:外接なら \(d=r_{1}+r_{2}\)、内接なら \(d=|r_{1}-r_{2}|\)
【なぜこうするか】 どちらの接触か決めるため、両方を仮定して矛盾を探します。\(r_{0}=2\)、\(r=t\)、\(d=\sqrt{s^{2}+t^{2}}\) です。
外接だと仮定すると \(d=t+2\)。両辺2乗して
\[s^{2}+t^{2}=t^{2}+4t+4\quad\Longleftrightarrow\quad s^{2}=4t+4\quad\Longleftrightarrow\quad t=\dfrac{s^{2}-4}{4}\]
ところが \(-2\lt s\lt 2\) なら \(s^{2}\lt 4\) なので \(t\lt 0\)。\(t\gt 0\) に反します。外接はありえない。
内接だと仮定すると \(d=|t-2|\)。2乗して
\[s^{2}+t^{2}=t^{2}-4t+4\quad\Longleftrightarrow\quad s^{2}=4-4t\quad\Longleftrightarrow\quad t=\dfrac{4-s^{2}}{4}\]
\(-2\lt s\lt 2\) なら \(0\lt t\leqq 1\) で、確かに \(t\gt 0\) を満たします。オは①(内接)、キは①です。
そして \(t\leqq 1\lt 2=r_{0}\) なので、\(C\) のほうが小さい。したがって \(d=r_{0}-r\) でカは②です。
【検算】 \(s=-1.9,\,-1,\,0,\,1,\,1.9\) の5通りで \(t=\dfrac{4-s^{2}}{4}\) を計算し、\(d=\sqrt{s^{2}+t^{2}}\) と \(2-t\) を比べました。すべて小数第12位まで一致し、確かに内接しています ✓(例:\(s=0\) なら \(t=1\)、\(d=1\)、\(2-t=1\))。
【定石】 2円の位置関係は中心間距離 \(d\) と半径の和・差の比較で決まる。どちらか迷ったら両方仮定して矛盾を探すのが確実。
(2)(ii) 中心の軌跡は放物線
(ii) \(C\) の中心が描く図形の概形を実線で表したものはクである。最も適当なものを次の⓪〜⑤から一つ選べ。各選択肢では、中心が原点、半径が2である円 \(C_{0}\) の上半円を破線で表し、同じ座標平面に次の実線を描いている。
- ⓪ \((-2,0)\) から右上へ進み、\(y=1\) の水平線を経て \((2,0)\) へ下がる台形状の折れ線
- ① \((0,1)\) 付近を最下点とし、左右の端へ向かって高くなる、下に凸の滑らかな曲線
- ② \((0,1)\) を頂点とし、\(x\to\pm2\) で \(y\to0\) となる、上に凸の滑らかな曲線
- ③ \((0,1)\) に尖った頂点があり、\(x\to\pm2\) で \(y\to0\) となる曲線
- ④ \((-2,0)\)、\((0,1)\)、\((2,0)\) を結ぶ三角形状の折れ線
- ⑤ \((0,1)\) 付近を頂点とし、\(x\to\pm2\) で \(y\to0\) となるベル型の滑らかな曲線
【型】媒介変数表示から \(y\) を \(x\) の式に直す
【なぜこうするか】 \(C\) の中心は \((s,\,t)\) で、(i)より \(t=\dfrac{4-s^{2}}{4}\)。中心の座標を \((x,\,y)\) と書き直すと
\[y=\dfrac{4-x^{2}}{4}=1-\dfrac{x^{2}}{4}\qquad(-2\lt x\lt 2)\]
これは上に凸の放物線です。特徴を押さえます。
- 頂点は \((0,\,1)\)
- \(x\to\pm 2\) で \(y\to 0\)(ただし端点 \(x=\pm 2\) は含まない)
- \(y\) 軸に関して対称で、なめらかな曲線(角がない)
選択肢には折れ線(台形状・三角形状)や尖点をもつ曲線、ベル型の曲線も並んでいますが、上の3条件を満たすなめらかな放物線は1つだけ。クは②です。
破線で描かれている \(C_{0}\) の上半分(半径2の半円)と比べると、放物線は半円の内側を通って \(y\) 軸上で \(y=1\) に達する形。半円の高さは2なので、ちょうど半分の高さです。
【検算】 \(t=1-\dfrac{s^{2}}{4}\) は頂点 \((0,1)\)、\(s=\pm 2\) で \(t=0\) となる上に凸の放物線。数値でも \(s=0\to t=1\)、\(s=\pm 1\to t=0.75\)、\(s=\pm 1.9\to t=0.0975\) と、なめらかに0へ近づいています ✓。折れ線なら \(s=\pm 1\) で \(t=0.5\) になるはずで、\(0.75\) とは明確に違います。
【定石】 軌跡の問題は動点の座標を媒介変数で書き、その関係式を求める。図の選択肢は「頂点・端点・なめらかさ」の3点で絞る。
(3) 直線と円の両方に接する円の半径を最大にする
実数 \(k\) は \(-2\lt k\lt 2\) を満たすとする。①が表す円のうち、直線 \(x=k\) と \(C_{0}\) の両方に接する円は二つある。そのうち、中心が不等式 \(x\lt k\) の表す領域にある円を \(C_{1}\)、中心が不等式 \(x\gt k\) の表す領域にある円を \(C_{2}\) とする。(1)と(2)の(ii)を考慮すると、\(k=\)ケのとき \(C_{1}\) の半径は最大値をとることがわかる。また、\(k=\)ケのとき、\(C_{2}\) の中心の座標は \(\left(\boxed{\text{コ}}\sqrt{\boxed{\text{サ}}}-\boxed{\text{シ}},\ \boxed{\text{ス}}\sqrt{\boxed{\text{セ}}}-\boxed{\text{ソ}}\right)\) である。
【型】条件を2本の式にして連立、平方根を含む式は置換して最大を探す
【なぜこうするか】 中心 \((s,\,t)\)、半径 \(t\) の円が満たすべき条件を2本書きます。
条件1:直線 \(x=k\) に接する 中心から直線までの距離が半径に等しいので \(|s-k|=t\)。
条件2:\(C_{0}\) に内接する (2)(i)より \(s^{2}=4-4t\)。
\(C_{1}\) は \(s\lt k\) なので \(k-s=t\)、すなわち \(s=k-t\)。条件2に代入すると
\[(k-t)^{2}=4-4t\quad\Longleftrightarrow\quad t^{2}+(4-2k)t+k^{2}-4=0\]
これを \(t\) について解き、\(t\gt 0\) の解をとると
\[t=(k-2)+2\sqrt{2-k}\]
この最大を求めます。\(u=\sqrt{2-k}\) と置換するのが有効です(\(-2\lt k\lt 2\) なので \(0\lt u\lt 2\))。\(k=2-u^{2}\) を代入すると
\[t=\left(2-u^{2}-2\right)+2u=-u^{2}+2u=-(u-1)^{2}+1\]
これは \(u=1\) で最大値1。\(u=1\) は \(\sqrt{2-k}=1\)、つまり
\[k=1\]
ケは1です。平方根を含む式は、根号の中身を新しい文字にして平方完成に持ち込む——これが型です。
次に \(k=1\) のときの \(C_{2}\)。こちらは \(s\gt k\) なので \(s-k=t\)、すなわち \(s=1+t\)。条件2に代入して
\[(1+t)^{2}=4-4t\quad\Longleftrightarrow\quad t^{2}+6t-3=0\]
\[t=\dfrac{-6\pm\sqrt{36+12}}{2}=-3\pm 2\sqrt{3}\]
\(t\gt 0\) より \(t=2\sqrt{3}-3\)。そして
\[s=1+t=1+2\sqrt{3}-3=2\sqrt{3}-2\]
したがって \(C_{2}\) の中心は \(\left(2\sqrt{3}-2,\ 2\sqrt{3}-3\right)\)。コは2、サは3、シは2、スは2、セは3、ソは3です。
【検算】 まず \(t=(k-2)+2\sqrt{2-k}\) の最大を数式処理で求めると最大値1、\(k=1\) ✓。数値でも \(k=0\) で \(0.828\)、\(k=0.5\) で \(0.949\)、\(k=1\) で \(1.000\)、\(k=1.5\) で \(0.914\) と、\(k=1\) が山でした ✓。
【検算その2】 得られた \(C_{2}\) の中心 \((1.464102,\ 0.464102)\) で2つの接触条件を確かめます。直線 \(x=1\) までの距離は \(|1.464102-1|=0.464101615\)、半径 \(t=0.464101615\) で完全一致(直線に接する)✓。原点までの距離は \(1.535898385\)、\(2-t=1.535898385\) でこれも完全一致(\(C_{0}\) に内接)✓。
【定石】 \(\sqrt{\ }\) を含む関数の最大最小は、根号の中身を \(u\) と置換して2次関数に帰着させる。\(u\) のとり得る範囲を必ず確認すること。
【よくあるミス】 \(t^{2}+6t-3=0\) の解 \(-3\pm 2\sqrt{3}\) のうち、負のほう \(-3-2\sqrt{3}\) を捨て忘れること。半径は正なので \(t=2\sqrt{3}-3\fallingdotseq 0.464\) だけが有効です。
- 剰余の定理の原理は「割り算の式に、割る式を0にする値を代入」(第1問(1))。
- \((x-a)^{2}\) で割った余りは、\(X=x-a\) と置換して二項展開の低次2項を読む(第1問(2))。
- 円が \(x\) 軸に接する ⟺ 中心の \(y\) 座標の絶対値=半径(第2問(1))。
- 2円の接触は \(d\) と半径の和・差で判定。迷ったら両方仮定して矛盾を探す(第2問(2)(i))。
- 軌跡は媒介変数で書いて関係式に直す。図の選択肢は頂点・端点・なめらかさで絞る(第2問(2)(ii))。
- \(\sqrt{\ }\) を含む最大最小は根号の中身を置換して2次関数にする(第2問(3))。
第3問(必答・配点22) 絶対値を含む定積分と、値が一定になる区間
関数 \(F(x)=\displaystyle\int_{0}^{x}t(t-2)\,dt\) と、絶対値をつけた \(G(x)=\displaystyle\int_{0}^{x}|t(t-2)|\,dt\) について考える。さらに一般化して、\(\alpha\lt\beta\) を満たす定数 \(\alpha\)、\(\beta\) に対する \(H(x)\) の性質を調べる。
(1) ア2 イ0 ウ0 エ2 オ- カ4 キ3
(2)(i) ク2 ケ0 / (ii) コ2 サ9 シ0 ス2 / (iii) セ2 / (3) ソ3 タ2
(1) 積分で定義された関数は、微分すると被積分関数に戻る
関数 \(F(x)=\displaystyle\int_{0}^{x}t(t-2)\,dt\) について考える。\(F'(x)=x^{2}-\)ア\(x\) である。\(x=\)イのとき、\(F(x)\) は極大値ウをとる。\(x=\)エのとき、\(F(x)\) は極小値 \(\dfrac{\boxed{\text{オカ}}}{\boxed{\text{キ}}}\) をとる。
【型】\(\dfrac{d}{dx}\displaystyle\int_{a}^{x}f(t)\,dt=f(x)\)
【なぜこうするか】 微分積分学の基本定理そのものです。積分を実行してから微分する必要はありません。
\[F'(x)=x(x-2)=x^{2}-2x\]
アは2です。増減を調べます。\(F'(x)=x(x-2)\) は下に凸の放物線なので
- \(x\lt 0\):\(F’\gt 0\)(増加)
- \(0\lt x\lt 2\):\(F’\lt 0\)(減少)
- \(x\gt 2\):\(F’\gt 0\)(増加)
したがって \(x=0\) で極大、\(x=2\) で極小。イは0、エは2です。
極大値は、積分区間の幅が0なので
\[F(0)=\int_{0}^{0}t(t-2)\,dt=0\]
ウは0です。極小値は実際に積分します。
\[F(2)=\int_{0}^{2}\left(t^{2}-2t\right)dt=\left[\dfrac{t^{3}}{3}-t^{2}\right]_{0}^{2}=\dfrac{8}{3}-4=-\dfrac{4}{3}\]
オカは \(-4\)、キは3です。
【検算】 積分を実行すると \(F(x)=\dfrac{x^{3}}{3}-x^{2}\)。微分すると \(x^{2}-2x\) ✓。\(F”(x)=2x-2\) で \(F”(0)=-2\lt 0\)(極大)、\(F”(2)=2\gt 0\)(極小)✓。\(F(2)=\dfrac{8}{3}-4=-\dfrac{4}{3}\) も一致しました ✓。
【定石】 \(\displaystyle\int_{a}^{x}f(t)\,dt\) の形は微分すれば \(f(x)\)。積分を実行するのは値が必要なときだけ。\(x=a\) を代入すると必ず0になることも押さえる。
(2)(i) 絶対値を、符号で場合分けして外す
\(x\geqq 0\) のとき、関数 \(G(x)=\displaystyle\int_{0}^{x}|t(t-2)|\,dt\) のグラフの概形を考えよう。(i) \(t(t-2)\leqq 0\) を満たす \(t\) の値の範囲は \(0\leqq t\leqq 2\) であり、\(t(t-2)\geqq 0\) を満たす \(t\) の値の範囲は \(t\leqq 0\)、\(2\leqq t\) である。よって、\(0\leqq t\leqq 2\) のとき \(|t(t-2)|=\)ク、\(t\leqq 0\)、\(2\leqq t\) のとき \(|t(t-2)|=\)ケである。(ク、ケの解答群。同じものを繰り返し選んでもよい。)⓪ \(t(t-2)\) ① \(t(t+2)\) ② \(\left\{-t(t-2)\right\}\) ③ \(\left\{-t(t+2)\right\}\)
【型】\(|A|=A\)(\(A\geqq 0\))、\(|A|=-A\)(\(A\lt 0\))
【なぜこうするか】 絶対値は中身が負のときだけ符号を反転させる。それだけです。
\(0\leqq t\leqq 2\) では \(t(t-2)\leqq 0\) なので符号を反転して \(|t(t-2)|=-t(t-2)\)。クは②です。
\(t\leqq 0\) または \(2\leqq t\) では \(t(t-2)\geqq 0\) なのでそのまま。ケは⓪です。
【検算】 \(t=1\) では \(t(t-2)=-1\) なので絶対値は1、\(-t(t-2)=1\) と一致します。\(t=3\) では \(t(t-2)=3\) なので、そのまま外して3となります。
【定石】 絶対値つきの定積分は、まず中身の符号が変わる点で積分区間を分割する。この問題では \(t=0\) と \(t=2\) が分割点。
(2)(ii) 区間を分けて、\(F(x)\) の言葉で書き直す
(ii) (i)により、\(G(x)\) を(1)の \(F(x)\) を用いて表すと、\(0\leqq x\leqq 2\) のとき \(G(x)=\displaystyle\int_{0}^{x}\boxed{\text{コ}}\,dt=\)サ、\(2\leqq x\) のとき \(G(x)=\displaystyle\int_{0}^{2}\boxed{\text{コ}}\,dt+\displaystyle\int_{2}^{x}\boxed{\text{シ}}\,dt=\)スである。(コ、シの解答群は(i)と同じ。サ、スの解答群。同じものを繰り返し選んでもよい。)⓪ \(F(x)-\dfrac{8}{3}\) ① \(-F(x)-\dfrac{8}{3}\) ② \(F(x)+\dfrac{8}{3}\) ③ \(-F(x)+\dfrac{8}{3}\) ④ \(F(x)-\dfrac{4}{3}\) ⑤ \(-F(x)-\dfrac{4}{3}\) ⑥ \(F(x)+\dfrac{4}{3}\) ⑦ \(-F(x)+\dfrac{4}{3}\) ⑧ \(F(x)\) ⑨ \(-F(x)\)
【型】区間ごとに符号を決め、\(F\) の値に翻訳する
【なぜこうするか】 積分区間全体が \(0\leqq t\leqq 2\) に収まるかどうかで場合分けします。
\(0\leqq x\leqq 2\) のとき 区間全体で \(|t(t-2)|=-t(t-2)\) なのでコは②。
\[G(x)=\int_{0}^{x}\left\{-t(t-2)\right\}dt=-\int_{0}^{x}t(t-2)\,dt=-F(x)\]
サは⑨です。
\(2\leqq x\) のとき \(t=2\) で区間を切ります。\(2\leqq t\) では絶対値がそのまま外れるのでシは⓪。
\[G(x)=\int_{0}^{2}\left\{-t(t-2)\right\}dt+\int_{2}^{x}t(t-2)\,dt\]
第1項は \(-F(2)\)。第2項は \(\displaystyle\int_{2}^{x}=\int_{0}^{x}-\int_{0}^{2}\) と分解して \(F(x)-F(2)\)。合わせて
\[G(x)=-F(2)+F(x)-F(2)=F(x)-2F(2)\]
ここで \(F(2)=-\dfrac{4}{3}\) を代入すると
\[G(x)=F(x)-2\left(-\dfrac{4}{3}\right)=F(x)+\dfrac{8}{3}\]
スは②です。
\(x\gt 2\) では、\(G\) と \(F\) は定数 \(\dfrac{8}{3}\) だけ上下にずれた同じ形になります。これは、負だった部分を絶対値によって正に変えた差に対応します。
【検算】 \(x=0,1,2,3,4\) で \(G(x)\) を直接積分して求め、公式と比べました。\(G(0)=0\)、\(G(1)=\dfrac{2}{3}\)、\(G(2)=\dfrac{4}{3}\)、\(G(3)=\dfrac{8}{3}\)、\(G(4)=8\)。一方 \(x\leqq 2\) では \(-F(x)\)、\(x\geqq 2\) では \(F(x)+\dfrac{8}{3}\) を計算すると5点すべて完全一致 ✓。\(x=2\) で両方の式が \(\dfrac{4}{3}\) となり、つながっていることも確認できます。
【定石】 \(\displaystyle\int_{a}^{b}=\int_{0}^{b}-\int_{0}^{a}\) で、区切った積分を \(F\) の値に直す。境界で両方の式が一致することを確かめると検算になる。
(2)(iii) グラフの概形は、導関数の符号で決まる
(iii) (ii)により、\(x\geqq0\) における関数 \(y=G(x)\) のグラフの概形はセである。最も適当なものを次の⓪〜⑤から一つ選べ。
- ⓪ 原点から増加するが、\(x=2\) で傾きが急に大きくなる折れ線
- ① 原点で接線が水平になり、その後は傾きが増え続ける下に凸の曲線
- ② 原点から単調に増加し、\(x=2\) でいったん接線が水平になった後、再び傾きが増すS字状の曲線
- ③ \(G(0)\gt0\) から減少し、\(x=2\) で極小となった後に増加する曲線
- ④ 原点から増加して \(x=2\) 付近で極大となり、その後いったん \(x\) 軸まで減少してから増加する曲線
- ⑤ 原点から負の側へ減少し、\(x=2\) で極小となった後に増加して \(x\) 軸を横切る曲線
【型】\(G'(x)=|x(x-2)|\geqq 0\) からグラフの形を読む
【なぜこうするか】 図を選ぶ前に、\(G\) の性質を3つ書き出します。
性質1:\(G\) は単調増加 \(G'(x)=|x(x-2)|\geqq 0\) なので、\(G\) は減少しません。下がる図(③⑤)は除外できます。また \(G(0)=0\) から出発するので、\(y\) 軸より右で常に \(y\geqq 0\)。負の値をとる図(⑤)も除外。
性質2:\(x=0\) と \(x=2\) で接線が水平 \(G'(0)=0\)、\(G'(2)=0\) なので、この2点で接線の傾きは0です。グラフは角を作らず滑らかにつながるため、\(x=2\) で折れている図(⓪)や、\(x=2\) で \(x\) 軸に触れて折り返す図(④)は不適です。
性質3:\(x=2\) の前後で増加が続く \(0\lt x\lt 2\) と \(2\lt x\) のどちらでも \(G’\gt 0\) です。したがって、\(x=2\) では接線が水平になりますが極値にはならず、その前後で増加が続きます。
この3条件を満たすのは、\(x=0\) から立ち上がって \(x=2\) 付近でいったん傾きが緩み、その後また急になるS字状の単調増加曲線。セは②です。
①のような単純な放物線状の増加曲線は、\(x=2\) での平坦部がないので不適。
【検算】 数値で傾きを見ます。\(G'(x)=|x(x-2)|\) は \(x=0\) で0、\(x=1\) で1(この区間の最大)、\(x=2\) で再び0、\(x=3\) で3、\(x=4\) で8。確かに\(x=2\) で傾きが0に戻り、その後急激に大きくなるという②の形です ✓。値のほうも \(G(0)=0,\ G(1)=\dfrac{2}{3},\ G(2)=\dfrac{4}{3},\ G(3)=\dfrac{8}{3},\ G(4)=8\) と単調増加でした。
【定石】 グラフの概形は①符号(正負)②増減(\(G’\) の符号)③接線が水平になる点の3点で絞る。全部の値を計算する必要はない。
(3) 値が一定になる区間と、その値の正体
\(\alpha\)、\(\beta\) は \(\alpha\lt\beta\) を満たす定数とする。\(x\geqq\alpha\) のとき、次の関数 \(H(x)\) について考える。\(H(x)=\displaystyle\int_{\alpha}^{x}\left|(t-\alpha)(t-\beta)\right|dt-\displaystyle\int_{\alpha}^{x}(t-\alpha)(t-\beta)\,dt\) \(H(x)\) の値が \(x\) の値によらず一定となるような \(x\) の値の範囲はソである。ソにおける \(H(x)\) の値はタに等しい。(ソの解答群)⓪ \(\alpha\leqq x\leqq\dfrac{\alpha+\beta}{2}\) ① \(\dfrac{3\alpha+\beta}{4}\leqq x\leqq\dfrac{\alpha+3\beta}{4}\) ② \(\dfrac{\alpha+\beta}{2}\leqq x\leqq\beta\) ③ \(\beta\leqq x\) (タの解答群)⓪ \(0\) ① 関数 \(y=(x-\alpha)(x-\beta)\) のグラフと \(x\) 軸で囲まれた図形の面積 ② その面積の2倍 ③ その面積の \(\dfrac{1}{2}\) 倍 ④ その面積の \(-\dfrac{1}{2}\) 倍 ⑤ その面積の \(-1\) 倍 ⑥ その面積の \(-2\) 倍
【型】2つの積分を1つにまとめ、被積分関数の差を調べる
【なぜこうするか】 積分区間が同じなので、1つの積分にまとめられます。
\[H(x)=\int_{\alpha}^{x}\left\{\left|(t-\alpha)(t-\beta)\right|-(t-\alpha)(t-\beta)\right\}dt\]
中カッコの中身を、\(t\) の位置で場合分けします。\(f(t)=(t-\alpha)(t-\beta)\) とおきましょう。
\(\alpha\leqq t\leqq\beta\) のとき \(f(t)\leqq 0\) なので \(|f(t)|=-f(t)\)。したがって
\[|f(t)|-f(t)=-f(t)-f(t)=-2f(t)\geqq 0\]
\(t\geqq\beta\) のとき \(f(t)\geqq 0\) なので \(|f(t)|=f(t)\)。したがって
\[|f(t)|-f(t)=f(t)-f(t)=0\]
\(t\geqq\beta\) では被積分関数が0です。積分区間を右へ伸ばしても新たな寄与がないため、\(H(x)\) は変化しません。したがって \(H(x)\) が一定になるのは
\[\beta\leqq x\]
ソは③です。
その一定値は \(H(\beta)\) に等しく
\[H(\beta)=\int_{\alpha}^{\beta}\left\{-2f(t)\right\}dt=2\int_{\alpha}^{\beta}\left\{-(t-\alpha)(t-\beta)\right\}dt=2\int_{\alpha}^{\beta}\left|f(t)\right|dt\]
最後の積分は、\(y=(x-\alpha)(x-\beta)\) のグラフと \(x\) 軸で囲まれた図形の面積です。したがって \(H(\beta)\) はその面積の2倍です。タは②です。
意味を考えると納得できます。\(|f|\) は「\(f\) の負の部分を折り返したもの」なので、\(|f|-f\) は負の部分では「もとの深さ+折り返した高さ」で深さの2倍、正の部分では0。つまり \(H\) は「\(x\) 軸より下にはみ出した部分の面積の2倍」を測っているのです。
【検算】 記号計算で \(H(\beta)=\dfrac{(\beta-\alpha)^{3}}{3}\)、面積 \(S=\dfrac{(\beta-\alpha)^{3}}{6}\) を得ました。比はちょうど2 ✓(有名な \(\dfrac{1}{6}\) 公式です)。数値でも \((\alpha,\beta)=(0,3),\,(-1,2),\,(1,5)\) の3通りで数値積分し、\(H(\beta)\) と \(2S\) がそれぞれ \(9.000000\)、\(9.000000\)、\(21.333333\) で一致 ✓。さらに \(x=\beta+3\) まで積分しても値がまったく変わらないことを確認しました ✓。
【よくあるミス】 「一定になる範囲」を \(\alpha\leqq x\leqq\beta\) と勘違いすること。この区間では被積分関数が正なので \(H\) は増え続けます。一定になるのは \(\beta\) を過ぎてからです。
【定石】 \(|f|-f\) は「負の部分の深さの2倍、正の部分では0」。同じ区間の2つの積分は1つにまとめてから被積分関数を調べる。
- \(\displaystyle\int_{a}^{x}f(t)\,dt\) は微分すれば \(f(x)\)。\(x=a\) では必ず0。
- 絶対値つきの積分は、中身の符号が変わる点で区間を分割する。
- \(\displaystyle\int_{a}^{b}=\int_{0}^{b}-\int_{0}^{a}\) で、分けた積分を1つの関数の値に翻訳する。
- グラフの概形は「符号・増減・接線が水平になる点」の3点で絞る。
- \(|f|-f\) は負の部分で \(-2f\)、正の部分で0。積分が途中から一定になる仕掛け。
- \(\displaystyle\int_{\alpha}^{\beta}\left|(x-\alpha)(x-\beta)\right|dx=\dfrac{(\beta-\alpha)^{3}}{6}\)(\(\dfrac{1}{6}\) 公式)。
第4問(選択・配点16) 等比数列から2次の漸化式へ
公比が負の等比数列から出発し、定数項のついた漸化式、さらに2乗を含む漸化式へと進み、項の符号や範囲がどうなるかを調べていく。
(1) ア- イ3 ウ- エ1 オ2 カ0 キ2
(2) ク6 ケ3 コ- サ1 シ2 ス6 セ1 ソ0
(3)(i) タ0 チ4 / (ii) ツ5
(1) 公比が負の等比数列は、符号が交互に入れかわる
数列 \(\{a_{n}\}\) を次の式で定める。\(a_{1}=-3\)、\(a_{n+1}=-\dfrac{1}{2}a_{n}\)(\(n=1,2,3,\ldots\)) このとき、\(\{a_{n}\}\) の一般項は \(a_{n}=\)アイ\(\left(\dfrac{\boxed{\text{ウエ}}}{\boxed{\text{オ}}}\right)^{n-1}\) である。\(n\) が奇数であれば \(a_{n}\)カ\(0\) が成り立つ。また、\(n\) が偶数であれば \(a_{n}\)キ\(0\) が成り立つ。(カ、キの解答群。同じものを繰り返し選んでもよい。)⓪ \(\lt\) ① \(=\) ② \(\gt\)
【型】\(a_{n+1}=ra_{n}\) は等比数列、\(a_{n}=a_{1}r^{n-1}\)
【なぜこうするか】 漸化式が「前の項の定数倍」の形なので等比数列。初項 \(-3\)、公比 \(-\dfrac{1}{2}\) です。
\[a_{n}=-3\left(-\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}\]
アイは \(-3\)、ウエは \(-1\)、オは2です。
符号を調べるときは、指数が \(n-1\) であることに注意します。
- \(n\) が奇数のとき \(n-1\) は偶数なので \(\left(-\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}\gt 0\)。よって \(a_{n}\) は「\(-3\)×正」で \(a_{n}\lt 0\)。カは⓪です。
- \(n\) が偶数のとき \(n-1\) は奇数なので \(\left(-\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}\lt 0\)。よって \(a_{n}\) は「\(-3\)×負」で \(a_{n}\gt 0\)。キは②です。
「\(n\) が奇数だから負」と直感で答えると逆になりかねません。指数は \(n\) ではなく \(n-1\) という一点で符号が反転します。
【検算】 有理数のまま第8項まで計算すると \(-3,\ \dfrac{3}{2},\ -\dfrac{3}{4},\ \dfrac{3}{8},\ -\dfrac{3}{16},\ \dfrac{3}{32},\ -\dfrac{3}{64},\ \dfrac{3}{128}\)。一般項の式と全項一致 ✓。奇数番目はすべて負、偶数番目はすべて正でした ✓。
【定石】 公比が負の等比数列は符号が交互。一般項の指数が \(n\) か \(n-1\) かで符号の対応が入れかわるので、\(n=1,2\) を代入して確かめるのが安全。
(2)前半 定数項つきの漸化式は「特性方程式」で等比に持ち込む
数列 \(\{b_{n}\}\) を次の式で定める。\(b_{1}=-3\)、\(b_{n+1}=-\dfrac{1}{2}b_{n}-9\)(\(n=1,2,3,\ldots\)) このとき \(b_{n+1}+\)ク\(=-\dfrac{1}{2}\left(b_{n}+\boxed{\text{ク}}\right)\)(\(n=1,2,3,\ldots\))が成り立つ。したがって、\(\{b_{n}\}\) の一般項は \(b_{n}=\)ケ\(\left(\dfrac{\boxed{\text{コサ}}}{\boxed{\text{シ}}}\right)^{n-1}-\)スである。
【型】\(b_{n+1}=pb_{n}+q\) は \(x=px+q\) を解いて \(b_{n}-x\) を等比に
【なぜこうするか】 定数項 \(-9\) があるので、そのままでは等比数列になりません。そこで特性方程式を解きます。
\[x=-\dfrac{1}{2}x-9\quad\Longleftrightarrow\quad \dfrac{3}{2}x=-9\quad\Longleftrightarrow\quad x=-6\]
この \(-6\) が「ずらすべき量」。\(b_{n}-(-6)=b_{n}+6\) を新しい数列と見ます。クは6です。
実際に確かめると
\[b_{n+1}+6=-\dfrac{1}{2}b_{n}-9+6=-\dfrac{1}{2}b_{n}-3=-\dfrac{1}{2}\left(b_{n}+6\right)\]
確かに \(\{b_{n}+6\}\) は公比 \(-\dfrac{1}{2}\) の等比数列です。初項は \(b_{1}+6=-3+6=3\) なので
\[b_{n}+6=3\left(-\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}\quad\Longleftrightarrow\quad b_{n}=3\left(-\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}-6\]
ケは3、コサは \(-1\)、シは2、スは6です。
【検算】 漸化式から直接第8項まで計算すると \(-3,\ -\dfrac{15}{2},\ -\dfrac{21}{4},\ -\dfrac{51}{8},\ -\dfrac{93}{16},\ -\dfrac{195}{32},\ -\dfrac{381}{64},\ -\dfrac{771}{128}\)。一般項の式と全項一致 ✓。また \(b_{n+1}+6=-\dfrac{1}{2}(b_{n}+6)\) が全項で成り立つことも確認しました ✓。
【定石】 \(b_{n+1}=pb_{n}+q\)(\(p\neq 1\))は特性方程式 \(x=px+q\) の解 \(x=\dfrac{q}{1-p}\) を使って \(b_{n+1}-x=p(b_{n}-x)\) の形に。あとは等比数列。
(2)後半 最大値を押さえて、符号を確定させる
すべての自然数 \(n\) について \(\left(\dfrac{\boxed{\text{コサ}}}{\boxed{\text{シ}}}\right)^{n-1}\leqq A\) が成り立つような最小の実数 \(A\) は、\(A=\)セである。以上のことから、数列 \(\{b_{n}\}\) に関する記述として、次の⓪〜②のうち、正しいものはソである。(ソの解答群)⓪ すべての自然数 \(n\) について \(b_{n}\lt 0\) が成り立つ。① すべての自然数 \(n\) について \(b_{n}\gt 0\) が成り立つ。② \(b_{k}\lt 0\) となる自然数 \(k\) があり、\(b_{\ell}\gt 0\) となる自然数 \(\ell\) もある。
【型】符号が交互に変わる数列の最大値は、正の側の先頭
【なぜこうするか】 \(\left(-\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}\) の値を並べてみます。
\[1,\quad -\dfrac{1}{2},\quad \dfrac{1}{4},\quad -\dfrac{1}{8},\quad \dfrac{1}{16},\ \ldots\]
正の項は \(1,\dfrac{1}{4},\dfrac{1}{16},\ldots\) と減っていく一方。負の項はもちろん正の項より小さい。したがって最大値は\(n=1\) のときの1です。「すべての \(n\) で \(\leqq A\)」を満たす最小の \(A\) は、この最大値そのもの。セは1です。
この上限を使うと、\(b_{n}\) の符号を不等式から決められます。
\[b_{n}=3\left(-\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}-6\leqq 3\cdot 1-6=-3\lt 0\]
したがってすべての \(n\) で \(b_{n}\lt 0\)。ソは⓪です。
(1)の \(a_{n}\) は符号が交互だったのに、\(b_{n}\) は同じ「公比 \(-\dfrac{1}{2}\)」を持ちながら常に負。\(-6\) だけ下にずれていることで、振動が \(x\) 軸を越えられなくなったわけです。
【検算】 \(b_{n}\) の第9項までの最大値を計算すると \(-3\)(\(n=1\))。確かにすべて負でした ✓。数列は \(-6\) に収束していきます。
【定石】 「すべての \(n\) で \(x_{n}\leqq A\) を満たす最小の \(A\)」=\(\{x_{n}\}\) の最大値。符号が交互の数列なら、正の項のうち先頭を見ればよい。
(3)(i) 2乗が入ると、片側の不等式だけが無条件で成り立つ
\(\alpha\) を実数とする。数列 \(\{c_{n}\}\) を \(c_{1}=\alpha\)、\(c_{n+1}=-\dfrac{1}{2}c_{n}^{2}+4\)(\(n=1,2,3,\ldots\))…① で定める。花子「一般項 \(c_{n}\) を求めてみようか。」太郎「一般項を式で表すのは難しそうだから、\(\alpha\) と \(n\) をいろいろ変えてみて、\(c_{n}\) の具体的な値を調べてみよう。」花子「コンピュータでたくさん計算してみたけれど、\(-4\leqq c_{n}\leqq 4\) が成り立つことが多いね。」太郎「\(-4\leqq c_{k}\leqq 4\) が成り立つと、\(-4\leqq c_{k+1}\leqq 4\) も成り立つように見えるね。」 (i) 【命題1】\(k\) を自然数とする。\(-4\leqq c_{k}\leqq 4\) が成り立つならば、\(-4\leqq c_{k+1}\leqq 4\) が成り立つ。 数列 \(\{c_{n}\}\) は①を満たすので、次が成り立つ。・すべての自然数 \(k\) について、\(c_{k+1}\leqq 4\) はタ。・すべての自然数 \(k\) について、\(-4\leqq c_{k+1}\) はチ。(タ、チの解答群。同じものを繰り返し選んでもよい。)⓪ \(c_{k}\) の値によらず成り立つ ① \(c_{k}\) の値によらず成り立たない ② \(c_{k}\leqq 4\) ならば成り立ち、\(4\lt c_{k}\) ならば成り立たない ③ \(-4\leqq c_{k}\) ならば成り立ち、\(c_{k}\lt -4\) ならば成り立たない ④ \(-4\leqq c_{k}\leqq 4\) ならば成り立ち、\(c_{k}\lt -4\) または \(4\lt c_{k}\) ならば成り立たない
【型】上からの評価と下からの評価を、別々に条件へ翻訳する
【なぜこうするか】 \(c_{k+1}=-\dfrac{1}{2}c_{k}^{2}+4\) の右辺を、上と下から別々に評価します。
上から:\(c_{k+1}\leqq 4\) か \(c_{k}^{2}\geqq 0\) はどんな実数でも成り立つので
\[c_{k+1}=-\dfrac{1}{2}c_{k}^{2}+4\leqq 0+4=4\]
つまり \(c_{k}\) の値によらず \(c_{k+1}\leqq 4\)。タは⓪です。したがって、2項目以降は4を超えません。
下から:\(-4\leqq c_{k+1}\) か こちらは条件つきです。
\[-4\leqq-\dfrac{1}{2}c_{k}^{2}+4\ \Longleftrightarrow\ \dfrac{1}{2}c_{k}^{2}\leqq 8\ \Longleftrightarrow\ c_{k}^{2}\leqq 16\ \Longleftrightarrow\ -4\leqq c_{k}\leqq 4\]
「\(-4\leqq c_{k}\leqq 4\) ならば成り立ち、それ以外では成り立たない」。チは④です。
この2つを合わせると命題1が示せます。仮定 \(-4\leqq c_{k}\leqq 4\) から、下側はチにより \(-4\leqq c_{k+1}\)、上側はタにより無条件で \(c_{k+1}\leqq 4\)。よって \(-4\leqq c_{k+1}\leqq 4\) ✓。
【検算】 境界の \(c_k=4\) と \(c_k=-4\) では、どちらも \(c_{k+1}=-4\) となり範囲内です。一方、範囲外の \(c_k=5\) では \(c_{k+1}=-8.5\lt-4\) となり、下側の条件が必要であることも確認できます。
【定石】 \(A\leqq x\leqq B\) の形の主張は、上側と下側を別々に調べる。片方が無条件、片方が条件つきというパターンはよくある。
(3)(ii) 3つの命題を、反例と証明で仕分ける
(ii) 表1は、コンピュータによる計算結果の一部をまとめたものである(\(c_{4}\) の値は小数第4位を四捨五入)。\(\alpha=1\) のとき \(c_{1}=1,\ c_{2}=3.5,\ c_{3}=-2.125,\ c_{4}=1.742\)。\(\alpha=5\) のとき \(c_{1}=5,\ c_{2}=-8.5,\ c_{3}=-32.125,\ c_{4}=-512.008\)。 \(\alpha\) を変えて得られる数列 \(\{c_{n}\}\) に関する次の命題(Ⅰ)、(Ⅱ)、(Ⅲ)について、真偽の組合せとして正しいものはツである。(Ⅰ) \(\alpha\gt 4\) ならば、すべての自然数 \(n\) について \(c_{n}\gt 4\) が成り立つ。(Ⅱ) \(\alpha\leqq 4\) ならば、すべての自然数 \(n\) について \(c_{n}\leqq 4\) が成り立つ。(Ⅲ) \(\alpha\lt 0\) ならば、すべての自然数 \(n\) について \(c_{n}\lt 0\) が成り立つ。(⑤は (Ⅰ)偽 (Ⅱ)真 (Ⅲ)偽。)
【型】「すべての〜」の否定は反例1つ。表はそのために用意されている
【なぜこうするか】 「すべての \(n\) について〜」という主張を崩すには、反例を1つ挙げれば十分。表1はまさにそのために置かれています。
(Ⅰ) \(\alpha\gt 4\) ならば、すべての \(n\) で \(c_{n}\gt 4\) 表の \(\alpha=5\) の行を見ます。\(c_{2}=-8.5\) で、これは4より小さい。反例が表に載っているので(Ⅰ)は偽です。
そもそも(i)のタで「\(c_{k}\) の値によらず \(c_{k+1}\leqq 4\)」と示したばかりなので、\(n\geqq 2\) では \(c_{n}\gt 4\) はありえません。表を見るまでもなく偽と分かります。
(Ⅱ) \(\alpha\leqq 4\) ならば、すべての \(n\) で \(c_{n}\leqq 4\) これは真です。\(c_{1}=\alpha\leqq 4\) は仮定そのもの。\(n\geqq 2\) についてはタより、\(c_{n}\) の値がどうであれ \(c_{n+1}\leqq 4\) が無条件で成り立ちます。したがってすべての \(n\) で成立。
(Ⅲ) \(\alpha\lt 0\) ならば、すべての \(n\) で \(c_{n}\lt 0\) 反例を探します。\(\alpha=-1\) とすると
\[c_{2}=-\dfrac{1}{2}(-1)^{2}+4=-\dfrac{1}{2}+4=3.5\gt 0\]
負から出発したのに、2項目で正になってしまいました。(Ⅲ)は偽です。
実は \(-\dfrac{1}{2}c^{2}+4\) は \(|c|\lt 2\sqrt{2}\fallingdotseq 2.83\) のとき正になるので、\(\alpha\) が0に近い負の数なら必ず正に転じます。
以上より (Ⅰ)偽、(Ⅱ)真、(Ⅲ)偽。ツは⑤です。
【検算】 まず表1の値を再現しました。\(\alpha=1\) では \(1,\ 3.5,\ -2.125,\ 1.7421875\)、\(\alpha=5\) では \(5,\ -8.5,\ -32.125,\ -512.0078125\)。問題文の表と完全一致 ✓(\(c_{4}\) は四捨五入して \(1.742\)、\(-512.008\))。
【検算その2】 (Ⅱ)を \(\alpha=4,\ 0,\ -10,\ 3\) の4通りで第12項まで計算し、最大値を調べたところ \(4.0000,\ 4.0000,\ -10.0000,\ 3.8750\) で、すべて4以下でした ✓。(Ⅲ)は \(\alpha=-1\) で \(c_{2}=3.5\gt 0\) の反例を確認 ✓。
【よくあるミス】 \(\alpha=5\) の行で値がどんどん小さくなるのを見て「(Ⅲ)も真では」と考えてしまうこと。(Ⅲ)は\(\alpha\lt 0\) から出発する場合の話で、\(\alpha=5\) とは無関係です。反例は自分で作る必要があります。
【定石】 「すべての〜」の真偽判定は偽なら反例1つ、真なら証明。表やデータが与えられているときは、まず反例が載っていないかを探す。
- 公比が負の等比数列は符号が交互。指数が \(n\) か \(n-1\) かで対応が入れかわるので \(n=1,2\) で確認。
- \(b_{n+1}=pb_{n}+q\) は特性方程式 \(x=px+q\) で等比数列に持ち込む。
- 「すべての \(n\) で \(x_{n}\leqq A\)」を満たす最小の \(A\) は最大値。
- \(A\leqq x\leqq B\) は上側と下側を別々に調べる。片方が無条件成立というパターンに注意。
- \(c_{n+1}=-\dfrac{1}{2}c_{n}^{2}+4\leqq 4\) は無条件。2乗の項の符号が効いている。
- 「すべての〜」を崩すには反例1つ。表が与えられていたら、まず反例を探す。
第5問(選択・配点16) くじの得点と損得点(期待値・分散・信頼区間)
次のように設定されているくじを考える。くじを1回引いて得られる点を得点と呼ぶ。
くじの設定:中身の見えない箱の中に \(000,\ 001,\ 002,\ \ldots,\ 998,\ 999\) の番号が、それぞれ一つずつ書かれたカードが1枚ずつ合計1000枚入っている。この箱の中から無作為に1枚のカードを取り出して番号を確認し、そのカードを箱の中に戻す試行を繰り返し行う。取り出したカードに書かれた番号によって、以下の点が得られる。
・番号が「777」ならば2000点 ・番号の下二桁が「22」ならば800点 ・番号の下一桁が「1」ならば100点 ・上記以外ならば0点
(1) ア1 イ8 ウ8 エ9 オ2 カ0
(2)(i) キ2 ク5 ケ1 コ0 / (ii) サ5 シ0 / (3) ス1 セ2
(1)前半 条件に当てはまるカードの枚数を数える
得点を確率変数 \(X\) で表す。このとき、\(X\) のとり得る値は \(x_{1}=2000\)、\(x_{2}=800\)、\(x_{3}=100\)、\(x_{4}=0\) である。ここで \(p_{1}=P(X=2000)=\dfrac{1}{1000}\)、\(p_{2}=P(X=800)=\dfrac{\boxed{\text{ア}}}{100}\)、\(p_{3}=P(X=100)=\dfrac{1}{10}\)、\(p_{4}=P(X=0)=\dfrac{\boxed{\text{イウエ}}}{1000}\) である。
【型】条件を満たす番号の個数を、桁ごとに数える
【なぜこうするか】 条件が上から順に適用される点に注意します。「777」はまず2000点になるので、下一桁が7でも100点にはなりません。
2000点:番号が「777」の1枚のみ。\(p_{1}=\dfrac{1}{1000}\)。
800点:下二桁が「22」なので \(\ast 22\) の形。百の位が0〜9の10通りで10枚。「777」とは重ならないので
\[p_{2}=\dfrac{10}{1000}=\dfrac{1}{100}\]
アは1です。
100点:下一桁が「1」なので \(\ast\ast 1\) の形で \(10\times 10=100\) 枚。上の2条件とは重ならない(「777」も \(\ast 22\) も下一桁は1でない)ので \(p_{3}=\dfrac{100}{1000}=\dfrac{1}{10}\)。
0点:残り全部です。
\[1000-1-10-100=889\quad\Longrightarrow\quad p_{4}=\dfrac{889}{1000}\]
イウエは889です。
【検算】 000から999まで1000通りすべてに得点を割り当てて数えたところ、\(2000\) 点が1枚、\(800\) 点が10枚、\(100\) 点が100枚、\(0\) 点が889枚。合計1000枚でぴったり ✓。
【定石】 条件が「上から順に」適用されるルールでは重複を必ず確認する。最後のカテゴリは「全体から引く」のが速く、検算にもなる。
(1)後半 期待値を定義どおり計算する
確率変数 \(X\) の平均(期待値)\(E(X)\) は \(E(X)=x_{1}p_{1}+x_{2}p_{2}+x_{3}p_{3}+x_{4}p_{4}\) であるから \(E(X)=\)オカ…① となる。また、確率変数 \(X\) の分散 \(V(X)\) は \(V(X)=\left\{x_{1}-E(X)\right\}^{2}p_{1}+\left\{x_{2}-E(X)\right\}^{2}p_{2}+\left\{x_{3}-E(X)\right\}^{2}p_{3}+\left\{x_{4}-E(X)\right\}^{2}p_{4}\) であるから \(V(X)=11000\)…② となる。
【型】\(E(X)=\sum x_{k}p_{k}\)
【なぜこうするか】 定義に代入するだけです。
\[E(X)=2000\cdot\dfrac{1}{1000}+800\cdot\dfrac{1}{100}+100\cdot\dfrac{1}{10}+0\cdot\dfrac{889}{1000}\]
\[=2+8+10+0=20\]
オカは20です。
期待値への寄与は、3種類の当たりについてそれぞれ2点、8点、10点です。当選確率と得点の両方を掛けて比較することが重要です。
分散 \(V(X)=11000\) は問題文が与えてくれていますが、確かめておくと
\[V(X)=1980^{2}\cdot\dfrac{1}{1000}+780^{2}\cdot\dfrac{1}{100}+80^{2}\cdot\dfrac{1}{10}+20^{2}\cdot\dfrac{889}{1000}\]
\[=3920.4+6084+640+355.6=11000\]
標準偏差は \(\sqrt{11000}\fallingdotseq 104.9\)。平均が20なのに標準偏差が100を超える——ばらつきが極端に大きいのがくじの特徴です。
【検算】 有理数のまま計算すると \(E(X)=20\)、\(V(X)=11000\)。問題文の②と完全一致 ✓。
【定石】 期待値は「値×確率」の総和。分散は \(V(X)=E(X^{2})-\left\{E(X)\right\}^{2}\) でも計算できるので、両方で出して照合すると安全。
(2)(i) 定数を引くと、平均はずれるが分散は変わらない
くじの参加者にはあらかじめ十分な持ち点が与えられている。くじを1回引くたびに25点を引かれるとする。1回のくじ引きに対して、得点から25点を引いた差を損得点と呼ぶ。(i) 損得点を確率変数 \(Y\) で表す。\(Y\) は(1)の確率変数 \(X\) を用いて \(Y=X-\)キクと表せる。キク\(=c\) とおく。確率変数 \(Y\) の平均(期待値)\(E(Y)\) は、(1)の \(E(X)\) を用いて \(E(Y)=\)ケとなる。また、確率変数 \(Y\) の分散 \(V(Y)\) は、(1)の \(V(X)\) を用いて \(V(Y)=\)コとなる。(ケの解答群)⓪ \(E(X)\) ① \(E(X)-c\) ② \(E(X)+c\) ③ \(cE(X)\) ④ \(\dfrac{E(X)}{c}\) (コの解答群)⓪ \(V(X)\) ① \(V(X)-c\) ② \(V(X)+c\) ③ \(V(X)-c^{2}\) ④ \(V(X)+c^{2}\)
【型】\(E(X+b)=E(X)+b\)、\(V(X+b)=V(X)\)
【なぜこうするか】 「得点から25点引く」なので \(Y=X-25\)、\(c=25\) です。キクは25。
平均は全部の値が25ずつ下がるので、平均も25下がります。
\[E(Y)=E(X)-25=E(X)-c\]
ケは①です。実際の値は \(20-25=-5\)。1回引くごとに平均5点の損という設定です。
分散は「平均からのずれ」を測る量です。全部の値を一律に25下げても、平均も同じだけ下がるのでずれ方は変わりません。
\[V(Y)=V(X)\]
コは⓪です。分布の形はそのままに、横に平行移動しただけと考えればわかります。
【検算】 \(X=2000,800,100,0\) に対する \(Y\) は \(1975,775,75,-25\) です。平均も20から \(-5\) へ25だけ下がり、各値の「平均からの差」は \(1980,780,80,-20\) のままなので、分散は変わりません。
【よくあるミス】 \(V(X)-c^{2}\)(選択肢③)を選ぶこと。分散が変わるのは定数倍したとき(\(V(aX)=a^{2}V(X)\))で、定数を足し引きしても変わりません。
【定石】 \(E(aX+b)=aE(X)+b\)、\(V(aX+b)=a^{2}V(X)\)。平行移動(\(b\))は平均だけを動かし、分散には影響しない。
(2)(ii) 標本平均の分布から確率を求める
(ii) くじ引きを400回繰り返すとき、各回の得点を表す確率変数を \(X_{1},X_{2},\ldots,X_{400}\) とし、\(Y_{1}=X_{1}-c,\ \ldots,\ Y_{400}=X_{400}-c\) とすると、\(Y_{1},\ldots,Y_{400}\) は母平均 \(E(Y)\)、母標準偏差 \(\sqrt{V(Y)}\) の母集団から無作為に抽出した大きさ400の無作為標本とみなせる。標本の大きさ400は十分に大きいから、標本平均 \(\overline{Y}=\dfrac{1}{400}\left(Y_{1}+Y_{2}+\cdots+Y_{400}\right)\) は近似的に正規分布 \(N\left(E(Y),\ \boxed{\text{サ}}\right)\) に従う。このことから、くじ引きを400回繰り返すとき、損得点の合計 \(Y_{1}+Y_{2}+\cdots+Y_{400}\) が0以上となる確率は、①と②から \(P\left(Y_{1}+\cdots+Y_{400}\geqq 0\right)=\)シである。ただし、シの計算においては \(\sqrt{110}=10.5\) とする。(サの解答群)⓪ \(\dfrac{\sqrt{V(Y)}}{20}\) ① \(\sqrt{V(Y)}-c\) ② \(V(Y)\) ③ \(V(Y)+c^{2}\) ④ \(V(Y)-c^{2}\) ⑤ \(\dfrac{V(Y)}{400}\) ⑥ \(\dfrac{V(Y)-c^{2}}{400}\) ⑦ \(\dfrac{V(Y)+c^{2}}{400}\) (シについては、最も適当なものを次の⓪〜⑤のうちから一つ選べ。)⓪ \(0.17\) ① \(0.33\) ② \(0.47\) ③ \(0.68\) ④ \(0.82\) ⑤ \(0.97\)
【型】標本平均の分散は \(\dfrac{\sigma^{2}}{n}\)
【なぜこうするか】 大きさ \(n\) の標本平均は、平均が母平均のまま、分散が \(\dfrac{1}{n}\) 倍になります。\(n=400\) なので
\[\overline{Y}\sim N\left(E(Y),\ \dfrac{V(Y)}{400}\right)\]
サは⑤です。第2引数は分散である点に注意(標準偏差ではありません)。
次に確率を求めます。合計が0以上 ⟺ 平均が0以上(400で割るだけ)なので
\[P\left(Y_{1}+\cdots+Y_{400}\geqq 0\right)=P\left(\overline{Y}\geqq 0\right)\]
①②より \(E(Y)=20-25=-5\)、\(V(Y)=V(X)=11000\)。したがって \(\overline{Y}\) の分散は
\[\dfrac{11000}{400}=27.5=\dfrac{110}{4}\]
標準偏差は \(\sqrt{\dfrac{110}{4}}=\dfrac{\sqrt{110}}{2}\)。問題文の指示どおり \(\sqrt{110}=10.5\) とすると \(\dfrac{10.5}{2}=5.25\)。
標準化します。
\[Z=\dfrac{\overline{Y}-(-5)}{5.25}\]
\(\overline{Y}=0\) のとき \(Z=\dfrac{5}{5.25}\fallingdotseq 0.95\) です。
正規分布表から \(P(0\leqq Z\leqq 0.95)=0.3289\) なので
\[P\left(\overline{Y}\geqq 0\right)=P(Z\geqq 0.95)=0.5-0.3289=0.1711\fallingdotseq 0.17\]
シは⓪です。
したがって、400回の損得点の合計が0以上になる確率は約17%です。平均だけでなく、分散も含めて確率を評価する必要があります。
【検算】 問題文の指定 \(\sqrt{110}=10.5\) を使うと標準偏差は5.25、\(z=\dfrac{5}{5.25}=0.9524\) で上側確率は約 \(0.17045\) です。丸めずに \(\sqrt{27.5}=5.244044\) を使うと約 \(0.17018\) となります。どちらも選択肢では \(0.17\) が最も近く、正規分布表による \(0.1711\) とも整合します。
【定石】 「合計が \(a\) 以上」は「平均が \(\dfrac{a}{n}\) 以上」に読み替える。標本平均の分布は \(N\left(m,\ \dfrac{\sigma^{2}}{n}\right)\)。
(3) 小さすぎる確率と、信頼区間による検証
花子さんがくじを3回引いたところ、得点の合計は1000点であった。くじを3回引いて得点の合計が1000点となる確率はスである。また、くじを3回引いて得点の合計が1000点以上となる確率は \(0.0036\) より小さい。このことから、太郎さんは「くじの設定どおりに行われておらず、(1)で求めた \(X\) の確率分布と異なるのではないか」と疑問をもった。 くじ引きを \(n\) 回繰り返すとき、各回の得点を表す確率変数を \(W_{1},\ldots,W_{n}\) とし、これらを母平均 \(m\)、母標準偏差 \(\sigma\) の母集団から無作為に抽出した大きさ \(n\) の無作為標本とみなす。くじを400回引いた結果、得点の平均は \(16.75\) 点、標本の標準偏差は75点であった。標本の大きさ400は十分に大きいので、母平均 \(m\) に対する信頼度95%の信頼区間はセである。(スの解答群)⓪ \(0.0001\) ① \(0.0003\) ② \(0.0005\) ③ \(0.0010\) ④ \(0.0024\) ⑤ \(0.0030\) (セについては、最も適当なものを次の⓪〜⑤のうちから一つ選べ。)⓪ \(6.46\leqq m\leqq 27.04\) ① \(9.34\leqq m\leqq 30.66\) ② \(9.40\leqq m\leqq 24.10\) ③ \(9.71\leqq m\leqq 30.29\) ④ \(10.60\leqq m\leqq 22.90\) ⑤ \(13.85\leqq m\leqq 26.15\)
【型】合計を作る組合せを全部書き出す/信頼区間は「標本平均 \(\pm 1.96\times\dfrac{s}{\sqrt{n}}\)」
【なぜこうするか】 まず確率から。得点は \(2000,\ 800,\ 100,\ 0\) の4種類。3回で合計1000点になる組合せを探します。
- 2000点が入ると1回で超えるので不可
- 800点を使うなら、残り2回で200点。\(100+100=200\) なので\(\{800,100,100\}\) が可能
- 800点を使わないなら、100点3回で最大300点。不可
したがって \(\{800,\,100,\,100\}\) のみ。800点が何回目かで3通りの並びがあります。
\[P=3\times\dfrac{1}{100}\times\dfrac{1}{10}\times\dfrac{1}{10}=\dfrac{3}{10000}=0.0003\]
スは①です。3回で合計1000点となる確率は \(0.03\%\) です。
そこで信頼区間で確かめます。標本平均 \(\overline{W}=16.75\)、標本の標準偏差 \(s=75\)、\(n=400\)。信頼度95%なので係数は \(1.96\)。
\[\overline{W}\pm 1.96\times\dfrac{s}{\sqrt{n}}=16.75\pm 1.96\times\dfrac{75}{20}=16.75\pm 1.96\times 3.75\]
\[=16.75\pm 7.35\]
したがって
\[9.40\leqq m\leqq 24.10\]
セは②です。
そしてこの区間は(1)で求めた \(E(X)=20\) を含んでいます。つまり「くじの設定どおりでない」という太郎さんの疑いは、400回のデータからは支持されない。3回で1000点という珍しい出来事はたまたま起きただけ、という結論です。
珍しい出来事が1回起きただけでは、仕組みがおかしいとは言えない——大量のデータで確かめて初めて判断できる、という統計の基本姿勢を示した締めくくりです。
【検算】 合計1000点になる組を全列挙すると \((800,100,100)\)、\((100,800,100)\)、\((100,100,800)\) の3通りだけ。確率は \(\dfrac{3}{10000}=0.000300\) ✓。信頼区間は \(9.4000\leqq m\leqq 24.1000\) で選択肢②とぴったり一致 ✓。\(E(X)=20\) がこの区間に含まれることも確認しました ✓。
【よくあるミス】 信頼区間で \(\dfrac{s}{\sqrt{n}}\) の \(\sqrt{n}\) を忘れて \(16.75\pm 1.96\times 75\) としてしまうこと。\(\sqrt{400}=20\) で割るのを忘れないこと。
【定石】 信頼度95%の信頼区間は\(\overline{X}\pm 1.96\times\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}\)。\(n\) が大きければ \(\sigma\) の代わりに標本の標準偏差を使ってよい。信頼度99%なら \(2.58\)。
- 条件が上から順に適用されるルールでは重複を確認。最後は「全体から引く」。
- \(E(aX+b)=aE(X)+b\)、\(V(aX+b)=a^{2}V(X)\)。平行移動は分散を変えない。
- 標本平均の分布は \(N\left(m,\ \dfrac{\sigma^{2}}{n}\right)\)。第2引数は分散。
- 「合計が \(a\) 以上」は「平均が \(\dfrac{a}{n}\) 以上」に読み替える。
- 信頼度95%の信頼区間は \(\overline{X}\pm 1.96\times\dfrac{s}{\sqrt{n}}\)。\(\sqrt{n}\) を忘れない。
- 珍しい出来事が1回起きただけでは仕組みを疑えない。大きな標本で検証する。
第6問(選択・配点16) 空間の2直線が交わる条件をベクトルで捉える
O を原点とする座標空間に、2点 \(\mathrm{A}(0,\,-3,\,1)\)、\(\mathrm{B}(1,\,0,\,3)\) がある。M を空間内の点とし、点 M を通り、直線 OB と平行な直線を \(\ell\) とする。直線 OA と直線 \(\ell\) が交わるかどうかを考えよう。\(\overrightarrow{\mathrm{OA}}=\vec{a}\)、\(\overrightarrow{\mathrm{OB}}=\vec{b}\)、\(\overrightarrow{\mathrm{OM}}=\vec{m}\) とおく。
(1)(i) ア3 / (ii) イ3 ウ1 エ5 オ- カ1 キ- ク2 ケ0 コ3 サ- シ1 / (iii) ス7
(2)(i) セ- ソ1 タ2 チ0 / (ii) ツ1 テ0 ト- ナ1 ニ0 / (iii) ヌ0 ネ3
(3) ノ0 ハ1 ヒ1
(1)(i) 「交わる」をベクトルの等式に翻訳する
空間の2直線が交わることについて、ベクトルを用いて考えてみよう。(i) 点 P が直線 OA 上にあるとき \(\overrightarrow{\mathrm{OP}}=s\vec{a}\) を満たす実数 \(s\) がある。点 Q が直線 \(\ell\) 上にあるとき、\(\overrightarrow{\mathrm{MQ}}=t\vec{b}\) を満たす実数 \(t\) があり \(\overrightarrow{\mathrm{OQ}}=\)アとなる。したがって \(s\vec{a}=\)ア…① を満たす実数 \(s\)、\(t\) があることは、直線 OA と直線 \(\ell\) が交わるための必要十分条件である。(アの解答群)⓪ \(\vec{b}+t\vec{m}\) ① \(\vec{b}-t\vec{m}\) ② \(-\vec{b}+t\vec{m}\) ③ \(\vec{m}+t\vec{b}\) ④ \(\vec{m}-t\vec{b}\) ⑤ \(-\vec{m}+t\vec{b}\)
【型】\(\overrightarrow{\mathrm{OQ}}=\overrightarrow{\mathrm{OM}}+\overrightarrow{\mathrm{MQ}}\)
【なぜこうするか】 ベクトルの分割です。原点から Q へ行くには、いったん M を経由すればよい。
\[\overrightarrow{\mathrm{OQ}}=\overrightarrow{\mathrm{OM}}+\overrightarrow{\mathrm{MQ}}=\vec{m}+t\vec{b}\]
アは③です。
直線 \(\ell\) は「M を通り \(\vec{b}\) 方向」なので、この形が \(\ell\) のベクトル方程式そのもの。同様に直線 OA は「原点を通り \(\vec{a}\) 方向」で \(s\vec{a}\)。
2直線が交わるとは共通の点をもつこと。つまり
\[s\vec{a}=\vec{m}+t\vec{b}\]
を満たす \(s\)、\(t\) が存在すること。これで「交わるか」という図形の問いが、「連立方程式に解があるか」という代数の問いに置き換わりました。
【検算】 次の小問の \(\vec m=(2,3,5)\) では \(s=-1\)、\(t=-2\) とすると、\(s\vec a=(0,3,-1)\) と \(\vec m+t\vec b=(0,3,-1)\) が一致します。この共通ベクトルが実際の交点を表します。
【定石】 直線のベクトル方程式は「通る点+(実数)×(方向ベクトル)」。2直線が交わる ⟺ 2つの式を等しくおいた方程式に解がある。
(1)(ii) 成分ごとに比べて、解の有無を確かめる
(ii) \(\vec{m}=(2,\,3,\,5)\) とする。①を満たす実数 \(s\)、\(t\) があると仮定すると、次が成り立つ。\((0,\,-3s,\,s)=\left(\boxed{\text{イ}},\ \boxed{\text{ウ}},\ \boxed{\text{エ}}\right)\)…② ②の両辺の \(x\) 成分と \(y\) 成分がそれぞれ一致するので、\(s=\)オカ、\(t=\)キクである。このとき②の両辺の \(z\) 成分も一致する。したがって、直線 OA と直線 \(\ell\) は交わり、交点の座標は \(\left(\boxed{\text{ケ}},\ \boxed{\text{コ}},\ \boxed{\text{サシ}}\right)\) となる。(イ〜エ、スの解答群。同じものを繰り返し選んでもよい。)⓪ \(2\) ① \(3\) ② \(5\) ③ \(2+t\) ④ \(2-t\) ⑤ \(5+3t\) ⑥ \(5-3t\) ⑦ \(-5+3t\) ⑧ \(-5-3t\)
【型】ベクトルの等式は、成分ごとの連立方程式
【なぜこうするか】 ①の左辺と右辺を成分で書き下します。
\[s\vec{a}=s(0,\,-3,\,1)=(0,\,-3s,\,s)\]
\[\vec{m}+t\vec{b}=(2,\,3,\,5)+t(1,\,0,\,3)=(2+t,\ 3,\ 5+3t)\]
イは③、ウは①、エは⑤です。
未知数は \(s\)、\(t\) の2個ですが、成分を比較すると \(x\)、\(y\)、\(z\) の3本の式ができます。そのため、2成分から求めた \(s,t\) が残りの成分も満たすかを確認する必要があります。
まず \(x\) 成分と \(y\) 成分から2つを決めます。
\(x\) 成分から
\[0=2+t\quad\Longrightarrow\quad t=-2\]
\(y\) 成分から
\[-3s=3\quad\Longrightarrow\quad s=-1\]
オカは \(-1\)、キクは \(-2\) です。残った \(z\) 成分でつじつまが合うかを確認します。
左辺は \(s=-1\)、右辺は \(5+3t=5-6=-1\)。
一致しました。したがって2直線は交わります。交点は
\[s\vec{a}=-1\cdot(0,\,-3,\,1)=(0,\,3,\,-1)\]
ケは0、コは3、サシは \(-1\) です。
【検算】 数式処理で \(x,y\) 成分から \(s=-1\)、\(t=-2\) を求め、\(z\) 成分の差を計算するとちょうど0 ✓。交点は \((0,\,3,\,-1)\) でした ✓。
【定石】 空間の2直線は「2成分で \(s,t\) を決め、残り1成分で検算」。一致すれば交わり、しなければねじれの位置(または平行)。
(1)(iii) \(z\) 成分がずれると交わらない
(iii) \(\vec{m}=(2,\,3,\,-5)\) とする。①を満たす実数 \(s\)、\(t\) があると仮定すると、次が成り立つ。\((0,\,-3s,\,s)=\left(\boxed{\text{イ}},\ \boxed{\text{ウ}},\ \boxed{\text{ス}}\right)\)…③ ③の両辺の \(x\) 成分と \(y\) 成分がそれぞれ一致するので、\(s=\)オカ、\(t=\)キクである。しかし、このとき③の両辺の \(z\) 成分は一致しないので、③が成り立つことに矛盾する。したがって、直線 OA と直線 \(\ell\) は交わらない。
【型】(ii)と同じ計算で、最後の検算だけが変わる
【なぜこうするか】 \(\vec{m}=(2,\,3,\,-5)\) なので \(z\) 成分だけが変わります。
\[\vec{m}+t\vec{b}=(2+t,\ 3,\ -5+3t)\]
スは⑦です。\(x\)、\(y\) 成分は前と同じなので \(s=-1\)、\(t=-2\)。ところが \(z\) 成分は
左辺は \(s=-1\)、右辺は \(-5+3(-2)=-11\)。
\(-1\neq -11\) で一致しません。したがって①を満たす \(s\)、\(t\) は存在せず、2直線は交わりません。
点 M が \(z\) 方向に10だけずれただけで、交わるか交わらないかが変わる。空間では2直線が「ねじれの位置」にあるのが普通で、交わるほうが特別なのです。
【検算】 数式処理で \(z\) 成分の差を計算すると10(0ではない)✓。実際に連立方程式を解かせても解なしでした ✓。\(\vec{m}\) の \(z\) 成分が \(5\to -5\) と10ずれたことが、そのまま差の10に対応しています。
【定石】 空間の2直線は「交わる」「平行」「ねじれの位置」の3通り。方向ベクトルが平行でなく、かつ連立が解けなければねじれの位置。
(2)(i)(ii) \(\vec{m}\) を \(\vec{a},\vec{b},\vec{e}\) で分解する
直線 OA と直線 \(\ell\) が交わるための \(\vec{m}\) の条件について考えよう。\(\vec{e}=(0,\,0,\,1)\) とする。M が空間内のどのような点であっても、\(\vec{m}\) は、実数 \(\alpha\)、\(\beta\)、\(\gamma\) を用いて \(\vec{m}=\alpha\vec{a}+\beta\vec{b}+\gamma\vec{e}\)…④ の形でただ一通りに表すことができる。(i) \(\vec{m}=(2,\,3,\,5)\) とする。(1)の(ii)より、\(s=\)オカ、\(t=\)キクのとき \(s\)、\(t\) は①を満たす。したがって、④を満たす実数 \(\alpha\)、\(\beta\)、\(\gamma\) は、\(\alpha=\)セソ、\(\beta=\)タ、\(\gamma=\)チである。(ii) \(\vec{m}=(2,\,3,\,-5)\) とする。\(\vec{m}=(2,\,3,\,5)-\)ツテ\(\vec{e}\) より、④を満たす実数 \(\alpha\)、\(\beta\)、\(\gamma\) は、\(\alpha=\)セソ、\(\beta=\)タ、\(\gamma=\)トナニである。
【型】3つの基底ベクトルへの分解は、成分の連立方程式
【なぜこうするか】 \(\vec{a}\)、\(\vec{b}\)、\(\vec{e}\) は同一平面上にないので、空間のどんなベクトルもこの3本でただ一通りに表せます(1次独立な基底)。
\[\alpha\vec{a}+\beta\vec{b}+\gamma\vec{e}=\alpha(0,-3,1)+\beta(1,0,3)+\gamma(0,0,1)=\left(\beta,\ -3\alpha,\ \alpha+3\beta+\gamma\right)\]
(i) \(\vec{m}=(2,3,5)\) のとき 成分を比べます。
\[\beta=2,\qquad -3\alpha=3\ \Longrightarrow\ \alpha=-1\]
\[\alpha+3\beta+\gamma=5\ \Longrightarrow\ -1+6+\gamma=5\ \Longrightarrow\ \gamma=0\]
セソは \(-1\)、タは2、チは0です。
\(\gamma=0\) になったのは、(1)(ii)で2直線が交わった場合と一致します。
(ii) \(\vec{m}=(2,3,-5)\) のとき \(z\) 成分だけが10小さいので
\[(2,\,3,\,-5)=(2,\,3,\,5)-10\vec{e}\]
ツテは10です。\(\vec{e}\) の係数だけが10減るので
\[\alpha=-1,\qquad \beta=2,\qquad \gamma=0-10=-10\]
トナニは \(-10\) です。こちらは交わらなかったケースで、\(\gamma\neq 0\) になっています。
【検算】 連立方程式を数式処理で解くと、\((2,3,5)\) では \((\alpha,\beta,\gamma)=(-1,\,2,\,0)\)、\((2,3,-5)\) では \((-1,\,2,\,-10)\) ✓。交わったほうだけ \(\gamma=0\) です。
【定石】 3本の1次独立なベクトルへの分解は成分ごとの3元連立方程式。同じ \(\vec{m}\) を少しずらしたケースは、差の分だけ係数をずらすと速い。
(2)(iii) 交わる ⟺ \(\gamma=0\) を証明する
(iii) 直線 OA と直線 \(\ell\) が交わるとき、①を満たす実数 \(s\)、\(t\) があるので、\(\vec{m}=\)ヌ\(\vec{a}+\)ネ\(\vec{b}\) となる。したがって、\(\vec{m}\) を④の形で表すとき、\(\gamma=0\) である。逆に、\(\gamma=0\) であるとき、直線 OA と直線 \(\ell\) が交わることが確かめられる。以上のことから「実数 \(\alpha\)、\(\beta\) を用いて \(\vec{m}=\alpha\vec{a}+\beta\vec{b}\) と表せる」ことは、直線 OA と直線 \(\ell\) が交わるための必要十分条件である。(ヌ、ネの解答群。同じものを繰り返し選んでもよい。)⓪ \(s\) ① \((-s)\) ② \(t\) ③ \((-t)\) ④ \((s+t)\) ⑤ \((s-t)\) ⑥ \((-s+t)\) ⑦ \((-s-t)\)
【型】①を \(\vec{m}\) について解く
【なぜこうするか】 交わるなら①が成り立つので、それを \(\vec{m}\) について整理するだけです。
\[s\vec{a}=\vec{m}+t\vec{b}\quad\Longleftrightarrow\quad \vec{m}=s\vec{a}-t\vec{b}\]
ヌは⓪(\(s\))、ネは③(\(-t\))です。
これは④で \(\alpha=s\)、\(\beta=-t\)、\(\gamma=0\) とした形。分解がただ一通りである(\(\vec{a},\vec{b},\vec{e}\) が1次独立)ことから、\(\gamma=0\) が確定します。
逆も成り立ちます。\(\gamma=0\) なら \(\vec{m}=\alpha\vec{a}+\beta\vec{b}\) と書け、\(s=\alpha\)、\(t=-\beta\) とおけば①が満たされるからです。
まとめると、この大問の結論は
直線 OA と直線 \(\ell\) が交わる ⟺ \(\vec{m}\) が \(\vec{a}\) と \(\vec{b}\) の張る平面上にある(\(\gamma=0\))
図形的にも納得できます。直線 OA も直線 \(\ell\) の方向も、ともに \(\vec{a},\vec{b}\) の張る平面に関わる。M がその平面から浮いていると(\(\gamma\neq 0\))、\(\ell\) は平面の外を通ってしまい、平面上の直線 OA とは交われないのです。
【検算】 \(\vec m=(2,3,5)\) は \(-\vec a+2\vec b\) と表せて \(\gamma=0\)、実際に2直線は交わります。\(\vec m=(2,3,-5)\) は \(-\vec a+2\vec b-10\vec e\) で \(\gamma=-10\)、連立方程式の第3成分が一致せず交わりません。
【定石】 空間で「交わる条件」を求めたら、\(\gamma=0\) のような1本の等式に帰着させる。以降はこの1本を確かめるだけで判定できる。
(3) 得られた判定法を、3つのケースに適用する
\(\vec{c}=(2,\,3,\,5)\)、\(\vec{d}=(2,\,3,\,-5)\) とおく。(1)の(ii)と(iii)から、\(\vec{m}=\vec{c}\) のとき、直線 OA と直線 \(\ell\) は交わるが、\(\vec{m}=\vec{d}\) のときは、直線 OA と直線 \(\ell\) は交わらない。(2)を利用すると、次のことがわかる。(Ⅰ) \(\vec{m}=13\vec{c}\) のとき、直線 OA と直線 \(\ell\) はノ。(Ⅱ) \(\vec{m}=\vec{b}+9\vec{d}\) のとき、直線 OA と直線 \(\ell\) はハ。(Ⅲ) \(\vec{m}=8\vec{a}-11\vec{d}\) のとき、直線 OA と直線 \(\ell\) はヒ。(ノ〜ヒの解答群。同じものを繰り返し選んでもよい。)⓪ 交わる ① 交わらない
【型】\(\gamma\) だけを追いかける
【なぜこうするか】 (2)で得た分解を再掲します。
\[\vec{c}\ \to\ (\alpha,\beta,\gamma)=(-1,\ 2,\ 0),\qquad \vec{d}\ \to\ (-1,\ 2,\ -10)\]
さらに \(\vec{a}\)、\(\vec{b}\) 自身は
\[\vec{a}\ \to\ (1,\ 0,\ 0),\qquad \vec{b}\ \to\ (0,\ 1,\ 0)\]
分解は線形(定数倍と和がそのまま係数に反映される)なので、あとは \(\gamma\) だけ計算すれば十分です。
(Ⅰ) \(\vec{m}=13\vec{c}\) \(\gamma=13\times 0=0\)。よって交わる。ノは⓪です。
\(\vec{c}\) を13倍しても、\(\vec{a},\vec{b}\) の張る平面上にあることは変わりません。
(Ⅱ) \(\vec{m}=\vec{b}+9\vec{d}\) \(\gamma=0+9\times(-10)=-90\neq 0\)。よって交わらない。ハは①です。
(Ⅲ) \(\vec{m}=8\vec{a}-11\vec{d}\) \(\gamma=8\times 0-11\times(-10)=110\neq 0\)。よって交わらない。ヒは①です。
この3問は、\(\gamma\) が0かどうかを調べれば判定できます。(2)で一般的な条件を作ったため、各場合で連立方程式を最初から解き直す必要がありません。
【検算】 3つとも成分から直接分解し直し、さらに連立方程式に解があるかを数式処理で判定しました。(Ⅰ) \(\vec{m}=(26,39,65)\)、\((\alpha,\beta,\gamma)=(-13,26,0)\)、解あり ✓。(Ⅱ) \(\vec{m}=(19,27,-42)\)、\((-9,19,-90)\)、解なし ✓。(Ⅲ) \(\vec{m}=(-22,-57,63)\)、\((19,-22,110)\)、解なし ✓。\(\gamma=0\) かどうかと、実際の交差判定が3例とも完全に一致しました。
【定石】 基底への分解は線形なので、\(\vec{m}=p\vec{u}+q\vec{v}\) の係数は各々の係数の \(p,q\) 倍の和。必要な成分(ここでは \(\gamma\))だけ追えばよい。
- 直線のベクトル方程式は「通る点+実数×方向ベクトル」。交わる ⟺ 等式に解がある。
- 空間では未知数2に対し成分が3。2成分で \(s,t\) を決め、残り1成分で検算する。
- 空間の2直線は「交わる・平行・ねじれ」の3通り。交わるほうが特別。
- 1次独立な3ベクトルへの分解はただ一通り。これが「\(\gamma=0\)」を確定させる根拠。
- 交わる ⟺ \(\vec{m}\) が \(\vec{a},\vec{b}\) の張る平面上にある(\(\gamma=0\))。
- 判定条件を先に作れば、以降は係数を追うだけ。分解の線形性を使う。
第7問(選択・配点16) 複素数平面上の楕円と回転
複素数平面上で方程式 \(|z-1|+|z+1|=4\) を満たす点 \(z\) 全体が表す図形を調べる。さらに、その図形上の点を原点のまわりに回転したとき、回転後の点が満たす方程式を考える。
(1)(i) ア1 / (ii) イ4 ウ2 エ3 オ1 / (iii) カ2
(2) キ7 ク4 / (3) ケ5
(1)(i) 絶対値を複素数平面上の距離として読む
方程式 \(|z-1|+|z+1|=4\) は、何が一定であることを表すか。
【型】\(|z-a|\) は、点 \(z\) と点 \(a\) の距離
【なぜこうするか】 複素数平面では、複素数の差の絶対値が2点間の距離を表します。したがって \(|z-1|\) は点 \(z\) と点1の距離、\(|z+1|=|z-(-1)|\) は点 \(z\) と点 \(-1\) の距離です。
よって方程式は、点 \(z\) と点1の距離と、点 \(z\) と点 \(-1\) の距離の和が4であることを表します。アは①です。
【検算】 実軸上の点 \(z=2\) では \(|2-1|+|2+1|=1+3=4\) となり、実際に図形上の点です。一方、焦点の \(z=1\) では距離の和が \(0+2=2\) なので図形上にはありません。
【定石】 \(|z-a|+|z-b|=\text{一定}\) を見たら、2点 \(a,b\) からの距離の和が一定である図形、すなわち楕円を考える。
(1)(ii)(iii) 実部・虚部で楕円の方程式を導く
\(x,y\) を実数として \(z=x+yi\) とおき、\(|z-1|+|z+1|=4\) を座標平面上の方程式に直し、表す図形を選ぶ。
【型】根号を一つずつ孤立させて2回平方する
【なぜこうするか】 距離の式には平方根が二つあるため、片方を右辺へ移してから平方すると、余分な展開を減らせます。
まず
\[\sqrt{(x-1)^2+y^2}=4-\sqrt{(x+1)^2+y^2}\]
です。したがってイは④、ウは②です。両辺を平方し、共通項を整理すると
\[-4x=16-8\sqrt{(x+1)^2+y^2}\]
より
\[x+4=2\sqrt{(x+1)^2+y^2}\]
となるので、エは③です。もう一度平方すると
\[(x+4)^2=4\{(x+1)^2+y^2\}\]
\[3x^2+4y^2=12\quad\Longleftrightarrow\quad \dfrac{x^2}{4}+\dfrac{y^2}{3}=1\]
を得ます。オは①です。この楕円は焦点が \(1,-1\)、長軸の長さが4なので、カは②です。
【検算】 元の式で確認した \((x,y)=(2,0)\) を \(\dfrac{x^2}{4}+\dfrac{y^2}{3}=1\) に代入すると1になります。また、半長軸 \(a=2\)、半短軸 \(b=\sqrt3\) なので焦点距離は \(\sqrt{a^2-b^2}=1\) となり、焦点 \(\pm1\) と一致します。
【よくあるミス】 \(|z+1|\) の焦点を1と読むこと。\(|z+1|=|z-(-1)|\) なので、対応する点は \(-1\) です。
【定石】 楕円 \(\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1\)(\(a\gt b\))の焦点は \(\pm\sqrt{a^2-b^2}\)、長軸の長さは \(2a\)。
(2) \(\dfrac{\pi}{4}\) 回転後の焦点を求める
点 \(w\) は点 \(z\) を原点のまわりに \(\dfrac{\pi}{4}\) だけ回転した点である。点 \(w\) と点 \(z\) の関係式、および点 \(w\) が満たす方程式を選ぶ。
【型】原点中心の回転は \(e^{i\theta}=\cos\theta+i\sin\theta\) を掛ける
【なぜこうするか】 複素数に絶対値1、偏角 \(\theta\) の複素数を掛けると、原点からの距離を保ったまま偏角だけが \(\theta\) 増えます。
\(w\) は \(z\) を \(\dfrac{\pi}{4}\) 回転した点なので
\[w=\left(\cos\dfrac{\pi}{4}+i\sin\dfrac{\pi}{4}\right)z\]
したがって
\[z=\left(\cos\dfrac{\pi}{4}-i\sin\dfrac{\pi}{4}\right)w\]
であり、キは⑦です。回転によって焦点 \(1,-1\) もそれぞれ
\[\dfrac{\sqrt2}{2}+\dfrac{\sqrt2}{2}i,\qquad -\dfrac{\sqrt2}{2}-\dfrac{\sqrt2}{2}i\]
へ移ります。よって回転後の方程式は
\[\left|w-\left(\dfrac{\sqrt2}{2}+\dfrac{\sqrt2}{2}i\right)\right|+\left|w+\left(\dfrac{\sqrt2}{2}+\dfrac{\sqrt2}{2}i\right)\right|=4\]
で、クは④です。
【検算】 元の楕円の頂点 \(z=2\) を回転すると \(w=\sqrt2+\sqrt2 i\) です。回転後の二つの焦点までの距離は1と3で、和は4のままです。
【定石】 図形全体を原点のまわりに回転するときは、点だけでなく中心・焦点・頂点も同じ角だけ回転させると方程式を作りやすい。
(3) 回転で得られる方程式を条件から選ぶ
点 \(\alpha\) は、楕円上の点 \(z\) を原点のまわりに一定の角 \(\theta\) だけ回転した点である。\(\theta\) を適切に定めることで、点 \(\alpha\) が満たし得る方程式を選ぶ。
【型】回転で変わるものと変わらないものを分ける
【なぜこうするか】 原点中心の回転では、図形の中心は原点のまま、焦点の原点からの距離は1のまま、長軸の長さは4のままです。変わるのは焦点を結ぶ直線の向きだけです。
\(\theta=\dfrac{\pi}{2}\) とすれば、焦点 \(1,-1\) は \(i,-i\) に移ります。したがって
\[|\alpha-i|+|\alpha+i|=4\]
が得られ、ケは⑤です。
【検算】 \(\alpha=iz\) とおくと \(|\alpha-i|=|i(z-1)|=|z-1|\)、\(|\alpha+i|=|i(z+1)|=|z+1|\) です。したがって二つの距離の和は確かに4のままです。
【よくあるミス】 焦点間の距離や長軸の長さが異なる選択肢を選ぶこと。回転は距離を変えないため、この二つの量が元の楕円と異なる図形にはなりません。
【定石】 回転の選択問題では、中心、焦点距離、長軸・短軸の長さなどの回転で不変な量を先に比べる。
- \(|z-a|\) は複素数平面上の2点 \(z,a\) の距離。
- 2焦点からの距離の和が一定なら楕円。
- 根号を含む方程式は、根号を一つ孤立させてから平方する。
- 原点中心の \(\theta\) 回転は \(\cos\theta+i\sin\theta\) を掛ける。
- 回転では距離・長さ・中心からの位置関係が保たれる。

