指導事例 / 授業ドキュメント

【授業のこだわり実例】「実数x, y」の一言に反応できるか──対称式と実数条件、プロ講師の授業実況

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今日の一問
扱った問題は、次のタイプの応用問題です。
実数 x, y が x² − 2xy + y² − 4x − 4y + 6 = 0 を満たすとき、x + y および xy の最小値をそれぞれ求めよ。
講師はまず、問題文の読み方から入ります。
「1行目をよく読んで。“実数 x, y が”と書いてあるよね。ここで反応してほしい。使わない条件をわざわざ書く必要はないんだから、これは“実数であることを使いなさい”というメッセージ。つまり“判別式 D ≧ 0 を使ってください”と言っている。入試問題の中に実数という表現を見たら、判別式を使うかもしれない──それくらいの感覚を、疑う気持ちとして持っておいてくれ」
——さて、どこから手をつける?
答えと考え方は、この記事の中で順を追って解説します。

【本記事について】本記事は、数強塾グループのプロ講師が実際に行った授業の録音記録をもとに、個人が特定されないよう一部の表現・構成を編集して再構成したものです。数式・指導内容・生徒への語りかけは、実際の授業に基づいています。

こんにちは。株式会社数強塾 代表の藤原進之介です。

入試問題の1行目に「実数 x, y が」と書いてあったとき、お子様は何かを感じ取れるでしょうか。

「感じ取れるはずがない」と思われるかもしれません。しかし、上位大学の入試では、この何気ない一言が出題者からのメッセージになっています。今回は、当グループのプロ講師がこの「読み取り方」を教えた授業の記録を公開します。前回の記事(実数条件の回)の続きにあたる、同じ90分授業の応用パートです。

問題文の「実数」は、出題者からのメッセージである

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扱った問題は、次のタイプの応用問題です。

実数 x, y が x² − 2xy + y² − 4x − 4y + 6 = 0 を満たすとき、x + y および xy の最小値をそれぞれ求めよ。

講師はまず、問題文の読み方から入ります。

「1行目をよく読んで。“実数 x, y が”と書いてあるよね。ここで反応してほしい。使わない条件をわざわざ書く必要はないんだから、これは“実数であることを使いなさい”というメッセージ。つまり“判別式 D ≧ 0 を使ってください”と言っている。入試問題の中に実数という表現を見たら、判別式を使うかもしれない──それくらいの感覚を、疑う気持ちとして持っておいてくれ」

問題文は「読む」ものではなく「読み取る」もの。出題者の意図をメッセージとして受信する訓練は、演習量だけでは身につきません。何百という入試問題を分析してきた講師が、経験則を言語化して手渡すからこそ伝わるものです。

x + y はできる。では xy は?──生徒を「困らせて」から教える

x + y の最小値は、前半の授業でやった通りです。x + y = k とおき、y = −x + k を関係式に代入すれば x の2次方程式ができる。x は実数だから判別式が使える。

ところが講師は、あえて生徒を立ち止まらせます。

「こっちはできるよね。じゃあ、xy の方はできるかい? xy = k とおいて y = k/x として代入したところで、x の2次方程式、できる? ──できないでしょ。2次方程式ができなければ判別式は使えない。つまり実数条件が使えない。さっきのやり方では詰む。じゃあ、アプローチを変えよう

わざと壁にぶつからせてから、突破口を示す。この「困る経験」こそが、解法を記憶に焼き付けます。

「この式、全部○○ですよね」──気づきの一言

講師は問いかけます。「この関係式と、x + y と、xy。3つに共通していることは何でしょう。気づけないなら、まだ入試問題を解いた経験が少なすぎる。私はこの問題を見た瞬間に“あっ”と思ったのよ」

答えは──すべて対称式

「対称式とは、文字を入れ替えても同じ式のこと。x と y をチェンジしても、この関係式は変わらない。x + y も xy も変わらない。そして対称式には決定的な特性がある。すべての対称式は、必ず和(x + y)と積(xy)で表せる。これから対称式を必ずチェックする習慣をつけてください」

余弦定理も、相加相乗平均も、実は対称式だった

ここからが、この授業の白眉でした。講師は「対称式」を抽象概念で終わらせず、生徒が既に知っている公式の中に潜んでいることを次々に示していきます。

「三角形の2辺が 4 と 3、間の角が 60° のとき、x² = 4² + 3² − 2・4・3・cos60° と計算するよね。これ、4 と 3 を入れ替えても同じ式でしょ。つまり余弦定理の右辺は対称式。面積公式 (1/2)・4・3・sin60° もそう。sin²θ + cos²θ = 1 という相互関係も、sin と cos を入れ替えて成り立つ。もっとズバリ言えば、相加相乗平均の大小関係──(a + b)/2 ≧ √(ab)──は和と積の比較そのもの。今まで学んできた公式の中に、対称式はこんなに潜んでいる。これからは意識を持って見てほしい」

「知っている公式」が「対称式」という一本の糸でつながる瞬間、生徒の中でバラバラだった知識が体系になります。これが、単元を越えて数学全体を見渡せるプロ講師の授業です。

基本対称式の「定義」に立ち返る──2次方程式から作られる

さらに講師は、和と積を「基本対称式」と呼ぶ理由、その定義まで掘り下げます。

「基本対称式は、実は2次方程式から作られる。x, y を解に持つ2次方程式 (X − x)(X − y) = 0 を展開すると、X² − (x + y)X + xy = 0。ここに解の和と解の積が現れる。この和と積を基本対称式と定義したんだ。──ということは逆に、和と積が分かっていれば、x, y を解に持つ2次方程式が作れるよね?」

これが解答の核心になります。

  1. 対称式だから和と積で表す。関係式は (x + y)² − 4xy − 4(x + y) + 6 = 0 と変形できる
  2. s = x + y、t = xy とおくと s² − 4t − 4s + 6 = 0。複雑だった式が驚くほどシンプルになり、t について解けば t = (1/4)s² − s + 3/2
  3. ここで基本対称式の定義が効く。x, y を解に持つ2次方程式 X² − sX + t = 0 を作る
  4. 問題文の「実数 x, y」を引き継ぐ。この方程式の解 x, y が実数だから、判別式 D = s² − 4t ≧ 0
  5. t を消去すると 4s − 6 ≧ 0、すなわち s ≧ 3/2。x + y の最小値は 3/2
  6. xy の最小値は t = (1/4)(s − 2)² + 1/2 を s ≧ 3/2 の範囲で考え、頂点 s = 2 で最小値 1/2

講師はこの手順の意味を、前週の授業とつなげて念を押します。

「なんでこんなことをやるのか。私たちは今、x, y を s, t に置き換えたよね。置き換えたなら、元の文字が持っていた条件を引き継がなければいけない。x, y が実数だという条件を、s と t の世界に引き継ぐ道具が、この2次方程式と判別式なんだ」

置換したら条件を引き継ぐ──これは対称式に限らず、高校数学全体を貫く原理です。個別の解法ではなく原理で教えるから、初見の問題に応用が利きます。

「実数と書いていなくても、実数である」──もう一段深い読解

授業の終盤、講師は一度進んだ板書をわざわざ戻して、こう補足しました。

「一言言い忘れた。この問題には“実数 x, y”と書いてあったけど、書いていない問題もある。じゃあ使えないのか? ──考えてみて。虚数の世界に大小関係はある? 2i と 3i、どちらが大きいなんて概念自体がない。ということは、最大や最小を出しなさいと言われた瞬間に、x や y は実数で確定なんだ。丁寧に“実数”と書いてあれば実数条件を使うんだろうなと反応する。書いていなくても、実数なんだと自分で見抜く。両方できて初めて本物だ」

たった一言の補足ですが、ここには「なぜそう言えるのか」という数学的な根拠(虚数に大小関係がないこと)が必ず添えられています。根拠のない暗記を一切させない。これが当グループの授業の共通姿勢です。

保護者様へ──「対称式を見ようとする目」は、一生ものの思考力です

この授業で生徒が持ち帰ったのは、「対称式の問題の解き方」ではありません。

  • 問題文の一語(実数)を出題者のメッセージとして読む力
  • 既知の公式群を「対称式」という上位概念で束ね直す力
  • 置換したら条件を引き継ぐ、という数学の原理
  • 定義(基本対称式は2次方程式から作られる)に立ち返って考える姿勢

これらはすべて、目先の1問を越えて、初見の問題・さらには数学以外の学問にまで転移する思考の型です。数強塾が「点数以上の価値=思考の体力」を掲げるのは、まさにこうした授業を日々積み重ねているからです。

マンツーマン指導では、この内容をお子様の理解度に合わせて分解し、「どこまで分かっていて、どこから曖昧か」を対話で確かめながら進めます。学校の体系数学の進度に合わせた導入も可能です。


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