答案の減点辞典|数学で点を失う25の型と、その直し方

模試が返ってきて、答えは合っているのに三角がついている。あるいは、方針は合っていたのに半分しか点が来ていない。その失点には、はっきりした型があります。このページは、数学の答案で点を失う25の型を、減点される答案と直した答案の対比で辞書にしたものです。

このページの使い方

  1. まず✗ 減点される答案を読み、どこが穴か自分で当ててから先に進みます。
  2. 赤枠の「なぜ減点されるのか」を読みます。ここを飛ばすと、この辞書の価値は半分以下になります。
  3. ○ 直した答案と見比べ、増えた一行だけに注目します。点はその一行で戻ります。
  4. 末尾の直前チェックリストを、試験前に上から読んでください。

掲載した例題と解はすべて数強塾のオリジナルで、答えは全44項目を計算機で検証済みです。

「論理と証明の要点辞典」との使い分け

このページは全単元の失点を、原因で分類した索引です。ひととおり見渡して、自分がどの型で落としているかを見つけるために使ってください。

一方、論理そのもの(命題・必要十分・すべてとある・逆裏対偶・背理法・同値変形・帰納法)を腰を据えて学ぶなら、論理と証明の要点辞典(全8章)が本体です。章ごとに定石・つまずきポイント・例題・チェックリストがそろっています。

本ページの 03・10・11・12・13・22 は論理の型なので、ここでは要点だけを示し、詳しい解説はそちらへ渡します。二重に読む必要はありません。

全体地図:6部25型

減点は「単元ごと」に起きるのではありません。原因ごとに起きます。だからこの辞典は原因で分類しました。

失点の原因
第I部 存在と条件 あるはずのものを確かめていない 01〜05
第II部 範囲 範囲を持ち歩いていない 06〜09
第III部 論理の向き 矢印が逆、または一方通行 10〜13
第IV部 記述 頭の中にあるが紙の上に無い 14〜18
第V部 数式の扱い 操作に伴う条件を落とす 19〜22
第VI部 最後の詰め あと一手で満点を逃す 23〜25
  1. 変数で割って解を落とす
  2. 2乗して無縁解が混ざる
  3. 必要条件で絞って十分性を確かめない
  4. 真数・分母・根号の条件を書かない
  5. 場合分けの境界が重複・欠落
  6. 置きかえて新しい範囲を出さない
  7. 「少なくとも」の否定を取り違える
  8. 絶対値で右辺の符号を確認しない
  9. 解の配置で端点を書かない
  10. 逆を確かめず「したがって」でつなぐ
  11. 必要条件と十分条件を取り違える
  12. 「すべて」と「ある」の否定
  13. 示したい式を途中で使う
  14. 文字の定義を書かない
  15. 図に描いただけで本文に書かない
  16. 「同様に」で本質を飛ばす
  17. 使った定理の名前を書かない
  18. 問いの形に答えていない
  19. 等号成立条件を書かない
  20. 置換積分で区間を変え忘れる
  21. 不定形のまま極限を計算する
  22. 帰納法で仮定の使い所を書かない
  23. 求めたもので止まっている
  24. 明らかに範囲外の答えを出す
  25. 写し間違いに気づかない

第I部 存在と条件を確かめていない(01〜05)

01 変数で割って解を落とす

出る場所:方程式全般/三角関数/指数対数/ベクトル(内積が0の場合)

✗ 減点される答案

を解く。
両辺を で割って 。 答 

なぜ減点されるのか:作法の問題ではなく、本当に解が1つ消えています。正しい解は の2つ。
「両辺を で割る」という操作が同値変形になるのは のときだけです。 かもしれないのに割ると、 という場合を最初から考えないことにしてしまう。だから解が消えます。
割りたくなったら移項して因数分解する——これで場合分けそのものが要らなくなります。
○ 直した答案

より 、すなわち
よって

合言葉:割る前に「それ、0かもしれない」

02 2乗して無縁解が混ざる

出る場所:無理方程式/絶対値を含む方程式/絶対値を含む不等式

✗ 減点される答案

を解く。
両辺を2乗して
答 

なぜ減点されるのか:2乗は同値変形ではありません なら は言えますが、逆は言えない( でも になる)。つまり2乗した式は元の式より条件がゆるいので、元を満たさない解が紛れ込みます。
実際 を代入すると左辺 、右辺 で一致しません。これが無縁解です。
防ぐ方法は2つ。①元の式に代入して確かめるか、②2乗する前に「左辺≧0だから右辺も≧0」と条件を書いておく。②のほうが速い。
○ 直した答案

…① において、左辺 だから が必要。
このとき①の両辺を2乗して
より 。( は①を満たす。)
答 

合言葉:2乗したら、必ず元に戻って確かめる

03 必要条件で絞ったのに十分性を確かめない

出る場所:整数問題/恒等式の係数決定/方程式の整数解

✗ 減点される答案

が3の倍数となる自然数 をすべて求めよ。
を3で割った余りで分類すると、余り1のときだけ が3の倍数になる。
答  は0以上の整数)

なぜ減点されるのか:この答案がやったのは「3の倍数になるなら である」という向きの議論、つまり必要条件を出しただけです。
本当に問われているのは「 なら必ず3の倍数になるか」——逆向き(十分性)です。
今回はたまたま両方成り立ちますが、それは確かめて初めて言えること。「余りで分類した」という手続きは、分類の各場合を検証したときにだけ双方向になります。一行「逆に」と書けば満点です。
○ 直した答案

は整数)で場合分けする。

のとき → 余り1
のとき 3の倍数
のとき → 余り1

よって3の倍数となるのは のときに限り、逆にこのとき確かに3の倍数である。
答  は0以上の整数)

この型を腰を据えて学ぶなら:論理と証明の要点辞典 第6章「同値変形と必要条件で絞る」(定石・つまずきポイント・例題・チェックリストがそろっています)

合言葉:「絞った」だけでは終わらない。「逆に」を書く

04 真数・分母・根号の条件を書かない

出る場所:対数方程式/分数方程式/無理関数/定義域を問う問題

✗ 減点される答案

を解く。
より
答 

なぜ減点されるのか: のとき となり、そもそも式が定義されていません。存在しない数を答えにしています。
真数条件は「気をつけるべき決まり」ではなく、その式が意味を持つための前提です。前提を書かずに変形すると、変形の途中で前提が消え、意味のない解が残ります。
条件は変形の前に書く。後から代入して確かめる方法もありますが、先に書くほうが速く、答案としても強い。
○ 直した答案

真数は正だから かつ 、すなわち …①

このとき より
より

①より 。 答 

合言葉:定義域は、解く前に書く

05 場合分けの境界が重複・欠落している

出る場所:絶対値/ガウス記号/区分的に定義された関数/積分区間

✗ 減点される答案

を解く。
のとき、 のとき、 のときで場合分けする。……

なぜ減点されるのか:この分け方だと がどこにも入っていません。実数全体を覆えていないので、論理として「すべての場合を尽くした」と言えない。
逆に と分けると境界が重なりますが、こちらは減点されません。重なった点でどちらの式を使っても同じ値になるからです。
漏れは致命傷、重なりは無害。迷ったら等号を両方に付けてください。
○ 直した答案

[1] のとき  より 。これは を満たす。

[2] のとき  となり、 は成り立たない。解なし。

[3] のとき  より 。これは を満たす。

答 

合言葉:漏れは致命傷、重なりは無害

第II部 範囲を持ち歩いていない(06〜09)

06 置きかえたのに新しい変数の範囲を出さない

出る場所:三角関数の最大最小/指数対数/2次関数への帰着/積分の置換

✗ 減点される答案

の最大値を求めよ。
とおくと だから

これは について下に凸だから、最大値はない

なぜ減点されるのか:好きな実数を取れるわけではありません。

なので 。この範囲を書かないと、元の問題とは別の問題を解いたことになります。
置きかえは「変数を取り替える」操作ですが、同時に取りうる値の集合も取り替わる。範囲を書き忘れると、その対応が切れます。
置きかえた瞬間に範囲を書く——順番を固定してください。後から思い出すのでは遅い。
○ 直した答案

とおくと …①

より だから

①の範囲で、これは のとき最大。

答 最大値

合言葉:置きかえたら、その場で範囲

07 「少なくとも」の否定を取り違える

出る場所:確率(余事象)/整数(存在の否定)/論理

✗ 減点される答案

さいころを3回投げるとき、少なくとも1回6の目が出る確率を求めよ。
余事象は「3回とも6が出る」だから、求める確率は

なぜ減点されるのか:否定の作り方を間違えています。「少なくとも1回出る」の否定は「1回も出ない」であって、「3回とも出る」ではありません。
記号で書くと明快です。「少なくとも1回」は (ある回で出る)。その否定は (すべての回で出ない)。 の否定は の否定は で、量化子がひっくり返ります。
「3回とも出る」は元の主張を強めただけで、否定ではありません。
○ 直した答案

「少なくとも1回6が出る」の余事象は「3回とも6が出ない」。

1回で6が出ない確率は で、各回は独立だから、3回とも出ない確率は

よって求める確率は

合言葉:「少なくとも1つ」の裏は「1つもない」

08 絶対値で右辺の符号を確認しない

出る場所:絶対値を含む不等式/方程式

✗ 減点される答案

を解く。
より、左側から 、右側から
よって (答えは合っているが減点)

なぜ減点されるのか:答えは合っていますが、途中の一行が論理的に成立していません。
という同値変形が使えるのは のときだけです。 なら は解なしで、 という書き方自体が意味を持ちません。
今回の という文字を含む式。正とは限らないのに、正であるかのように使っています。 すなわち が必要」の一行があれば完璧です。
答えが合っていても論理が飛んでいれば減点される——ここが記述式の本質です。
○ 直した答案

左辺は0以上だから、不等式が成り立つには右辺が正、すなわち が必要。…①

①のもとで

より  /  より

①と合わせて

合言葉:絶対値を外す前に、右辺の符号

09 解の配置で端点を含むかを書かない

出る場所:2次方程式の解の配置/2次関数と区間/文字係数の不等式

✗ 減点される答案

の範囲に異なる2つの実数解をもつような の範囲を求めよ。
判別式 より または 。軸が範囲内だから
よって

なぜ減点されるのか:条件が足りません。 かつ 」を落としています。
グラフで考えると、2解がともに に入るには次の4つが同時に必要です。
(2解が異なる実数)/② 軸が /③ /④
③④を落とすと、片方の解が区間の外に飛び出している場合を排除できません。実際、 のとき で、解の1つは3より大きくなります。
また、端点で だと解が 自身になり、」(等号なし)を満たさない。だから ではなく です。等号の有無は問題文の不等号がそのまま決めます。
○ 直した答案

とおく。下に凸だから、 に異なる2実解をもつ条件は

 すなわち  より または
② 軸
 より
 より

①〜④の共通範囲は

合言葉:解の配置は、判別式・軸・両端の4点セット

第III部 論理の向きを間違えている(10〜13)

10 逆を確かめずに「したがって」でつなぐ

出る場所:証明全般/同値変形/十分性の確認

✗ 減点される答案

ならば である。したがって ならば である。

なぜ減点されるのか:命題とその逆は別物です。 からは または しか言えません。
記述答案でこれが最も危険な形で現れるのが、「〜を満たすとすると、変形して〜が得られる。よって答えは〜」という書き方です。この論法は必要条件を出したにすぎないのに、結論のように書いてしまっている。
救う方法は2つ。①各ステップを同値(⟺)で結ぶか、②最後に「逆に、これは条件を満たす」と確かめる。答案では②のほうが書きやすく、確実です。
○ 直した答案

または

よって から言えるのは であり、 に限らない。
は真だが、その逆は偽である。)

この型を腰を据えて学ぶなら:論理と証明の要点辞典 第4章「逆・裏・対偶」(定石・つまずきポイント・例題・チェックリストがそろっています)

合言葉:矢印は一方通行。戻れるかを毎回確かめる

11 必要条件と十分条件を取り違える

出る場所:集合と命題/範囲の包含/「〜であるための条件」

✗ 減点される答案

」は「」であるための必要条件である。

なぜ減点されるのか:逆です。 であるための十分条件
判定は矢印の向きだけで決まります。 は真、 は偽( が反例)。
矢印の根元が十分条件、矢先が必要条件。集合で見ると、 で、小さい集合のほうが十分条件です。
「十分=きつい条件=集合が小さい」「必要=ゆるい条件=集合が大きい」と、集合の大小に翻訳して覚えると間違えません。
○ 直した答案

は真。逆に は偽( が反例)。

よって「」は「」であるための 十分条件であるが必要条件ではない

この型を腰を据えて学ぶなら:論理と証明の要点辞典 第2章「必要条件・十分条件」(定石・つまずきポイント・例題・チェックリストがそろっています)

合言葉:矢印の根元が十分、矢先が必要。集合が小さいほうが十分

12 「すべて」と「ある」の否定を間違える

出る場所:命題の否定/背理法/反例を挙げる問題

✗ 減点される答案

「すべての実数 」の否定は
「すべての実数 である。

なぜ減点されるのか:否定すると量化子もひっくり返ります。

正しい否定は「ある実数
意味で考えれば当然です。「全員が背が高い」を否定するのは「全員が背が低い」ではなく、「背が低い人が1人でもいる」
実際、 となるので元の命題は偽であり、否定が真になっています。否定を作ったら反例を1つ挙げると、自分の否定が正しいかを検算できます。
○ 直した答案

「すべての実数 」の否定は
「ある実数 が存在して

実際 のとき だから、否定が成り立つ。
よって元の命題は偽である。

この型を腰を据えて学ぶなら:論理と証明の要点辞典 第3章「すべてとある」(定石・つまずきポイント・例題・チェックリストがそろっています)

合言葉:否定で「すべて」と「ある」は入れ替わる

13 示したい式を証明の途中で使う(循環論法)

出る場所:不等式の証明/等式の証明/図形の証明

✗ 減点される答案

のとき を示せ。
 両辺を2乗して
 整理して  これは成り立つ。よって示された。

なぜ減点されるのか:示したい式を1行目から「成り立つもの」として使っています。これでは「 を仮定すると正しいことが導けた」と言っただけで、 自体は示せていません。
救う道は2つ。①向きを逆にして、成り立つことが分かっている式から出発する。②各行を で結び、同値変形であることを明示する(このときは2乗が同値になる根拠——両辺が0以上——も要ります)。
入試では①が安全です。「 から出発する」と決めておけば、循環論法にはなりません。
なお等号成立条件も必ず書きます(→19)。
○ 直した答案

のとき、 が成り立つ。

展開して  すなわち

等号が成り立つのは 、すなわち のときである。 (証明終)

この型を腰を据えて学ぶなら:論理と証明の要点辞典 第8章「答案の論理チェック」(定石・つまずきポイント・例題・チェックリストがそろっています)

合言葉:結論から出発しない。成り立つ式から降りてくる

第IV部 書いていないから伝わらない(14〜18)

14 文字の定義を書かない

出る場所:文章題/figure問題/自分で文字を置くすべての問題

✗ 減点される答案

(いきなり) より

なぜ減点されるのか:採点者には が何個なのか、何円なのか、誰のことなのかが分かりません。式が正しくても、何を表す式かが不明なら「たまたま数が合っている紙」でしかない。
これは作法ではなく情報の欠落です。答案は採点者に読ませる文章であり、定義されていない記号は意味を持ちません。
を…の個数とする」の一行は5秒で書けて、しかも自分の思考も整理されます。単位まで書けば18の失点も同時に防げます。
○ 直した答案

りんごの個数を 個、みかんの個数を 個とする( は0以上の整数)。

代金の関係から  …①
個数の関係から  …②

①②を連立して 。これは を満たす。

答 りんご300個、みかん200個

合言葉:置いた文字は、必ず日本語で定義する

15 図に描いただけで本文に書かない

出る場所:図形/グラフの位置関係/領域/解の配置

✗ 減点される答案

(グラフを描いて)図より、交点は2個。よって

なぜ減点されるのか:図は根拠にはなりません。図はあくまで理解を助ける補助で、「図がそう見える」ことと「そうである」ことは違います。手描きの図でぎりぎり接しているのか交わっているのか、採点者には判断できません。
必要なのは図から読み取ったことを、式や言葉で本文に書き写すことです。「頂点の 座標が負」「判別式が正」「」——図で見たことは、必ず不等式に翻訳できます。
逆に言えば、翻訳できないなら、まだ根拠を掴めていないということ。図は描くべきですが、図で終わってはいけません。
○ 直した答案

とおくと、グラフは下に凸で頂点は

軸と異なる2点で交わる条件は、頂点の 座標が負であること、すなわち
 よって

(判別式で書いても同じ: より 。)

合言葉:図で見たことを、不等式に翻訳して本文へ

16 「同様に」で本質部分を飛ばす

出る場所:場合分けの2つ目以降/対称性のある証明/帰納法

✗ 減点される答案

[1] のとき …(詳しく書く)…
[2] のとき 同様にして

なぜ減点されるのか:「同様に」が許されるのは、本当に議論の構造が同じときだけです。絶対値の場合分けでは符号が変わるので、式そのものが変わります。構造が違うのに「同様に」で済ませると、その場合を検討していないと判断されます。
判断の基準は明確です。「置き換えれば一字一句同じになるか」——なるなら「同様に」でよい(例: が完全に対称な式で を入れ替えるだけの場合)。ならないなら書く。
2行増えるだけで確実に点になるなら、書いたほうが期待値が高い。試験時間の使い方としてもこちらが正解です。
○ 直した答案

[1] のとき  だから
より

[2] のとき  だから
より

[1][2] より

合言葉:「同様に」は、一字一句同じになるときだけ

17 使った定理の名前を書かない

出る場所:図形と計量/平面図形/数列/微積分の定理

✗ 減点される答案

(三角形 、外接円の半径

なぜ減点されるのか:結果だけがあって根拠がありません。採点者は「何を使ったのか」で理解度を測っているので、そこが空白だと点の付けようがない。
一方で、教科書に載っている定理は名前を書けば証明不要です。つまり「正弦定理より」の6文字が、証明を丸ごと肩代わりしてくれる。これほど費用対効果の高い一行はありません。
名前が思い出せないときは「〜の関係より」と書いて式を添えるだけでも、無記述よりはるかに良い。使った道具を明示するという原則が大事です。
○ 直した答案

正弦定理より だから

合言葉:定理の名前は、証明を肩代わりしてくれる

18 問いの形に答えていない

出る場所:全単元/とくに文章題・確率・図形の計量

✗ 減点される答案

(問) の最小値を求めよ。
(答)

なぜ減点されるのか:聞かれているのは最小値で、最小値をとる の値です。答えるべきものが違う。
これは「うっかり」で片づけられがちですが、模試で最も多い失点のひとつです。原因は、解いている途中で目的を見失うこと。
対策は単純で、解き始める前に問いの最後の一文に線を引く。そして答えを書くとき、問いの言葉をそのまま使って書く(「最小値は3」「〜通り」「〜個」「〜」)。
単位も同じです。「12」ではなく「12cm²」。問いの言葉で答えると、単位も自然に付いてきます。
○ 直した答案

よって のとき最小値 3 をとる。

答 最小値 3( のとき)

合言葉:問いの言葉で答える

第V部 数式の扱いで条件を落とす(19〜22)

19 等号成立条件を書かない

出る場所:相加相乗平均/コーシー・シュワルツ/最大最小の評価

✗ 減点される答案

のとき の最小値を求めよ。
相加相乗平均より
よって最小値は 4

なぜ減点されるのか:不等式が示したのは「4以上である」ことだけです。4以上であっても、4という値を実際に取れるとは限りません(たとえば も正しいが、3は最小値ではない)。
「最小値が4である」と言うには、4を実際に取る が存在することを示す必要があります。それが等号成立条件です。
相加相乗の等号は2数が等しいときなので 、すなわち より 。この が定義域に入っているからこそ、4は最小値になります。
等号が定義域内で成立しないなら、その値は最小値ではありません。ここが本当の落とし穴です。
○ 直した答案

より かつ だから、相加相乗平均の関係より

等号が成り立つのは 、すなわち より
これは定義域 に含まれる。

答  のとき最小値 4

合言葉:不等式で最小値を言うなら、等号成立を必ず示す

20 置換積分で区間を変え忘れる

出る場所:数III 置換積分/定積分の計算全般

✗ 減点される答案

を求めよ。
とおくと だから

なぜ減点されるのか:変数を から に変えたのに、積分区間を のままにしています。区間の 0 と 1 は「 が0から1まで」という意味であって、 の値ではありません。
のとき のとき なので、正しい区間は 1から2
定積分は「区間 × 被積分関数」の組で1つの値です。変数を取り替えたら、区間も一緒に引っ越す。置きかえで範囲を書き忘れる06と、まったく同じ構造の失点です。
不定積分に直してから に戻す方法なら区間の変換は不要ですが、戻し忘れという別の失点が生まれます。どちらでもよいので、自分の型を1つに決めてください。
○ 直した答案

とおくと

のとき

合言葉:変数が引っ越したら、区間も引っ越す

21 不定形のまま極限を計算する

出る場所:数III 極限/数列の極限/はさみうち

✗ 減点される答案

を求めよ。
のとき だから
。 答 0

なぜ減点されるのか:0ではありません。値が決まらない形(不定形)です。両方が無限に大きくなっても、どちらがどれだけ速く大きくなるかで答えは変わります。
実際この極限は です。 は数ではないので、数のように引き算できません。
不定形を見たら形を変えて不定形を崩すのが定石で、根号の差なら有理化が第一手。分母・分子に を掛けると差が積に化けて解消します。
(速算辞典の27で「有理化は近似を安定させるためにやる」と書きましたが、極限でも同じ理由——近い2数の差を消すためです。)
○ 直した答案

の不定形なので、分子を有理化する。

分母・分子を で割って

合言葉:∞−∞ は0ではない。崩してから代入する

22 帰納法で仮定をどこで使ったか書かない

出る場所:数学的帰納法/漸化式の証明/整数の証明

✗ 減点される答案

を示す。
のとき成立。
のとき成立すると仮定すると、 のときも同様に成立する。(証明終)

なぜ減点されるのか:帰納法の心臓は「仮定をどこで、どう使ったか」です。そこが空白なら、証明したのは の場合だけになります。
帰納法は「ドミノが1枚倒れる」ことと「1枚倒れれば次も倒れる」ことの2つで全部を示す論法です。2つ目こそが本体で、そこを「同様に」で飛ばすのは、証明の本体を書いていないのと同じ。
書き方は決まっています。 の左辺を、 の左辺+新しい項に分解し、そこで仮定を代入する。この「代入した瞬間」を式で見せてください。
(16の「同様に」と同じ失点ですが、帰納法ではほぼ確実に大幅減点になります。)
○ 直した答案

[1] のとき 左辺 、右辺 で成立。

[2] のとき成立すると仮定する。すなわち
 …(*)

のとき、左辺は

これは のときの右辺に一致するから、 でも成立する。

[1][2] より、すべての自然数 で成立する。(証明終)

この型を腰を据えて学ぶなら:論理と証明の要点辞典 第7章「数学的帰納法」(定石・つまずきポイント・例題・チェックリストがそろっています)

合言葉:仮定を代入した瞬間を、式で見せる

第VI部 最後の詰めで落とす(23〜25)

23 求めたもので止まっている

出る場所:全単元/とくに(1)(2)と続く小問の最終問

✗ 減点される答案

(問)2桁の自然数のうち、7で割ると3余る数の総和を求めよ。
(答)10, 17, 24, …, 94 の13個

なぜ減点されるのか:18と似ていますが、こちらは「途中まで正しく、最後の一手だけ抜けている」型です。個数を出したところで力尽きて、総和を書いていない。
配点で見ると最も損な失点です。正答までの9割の作業を終えていて、点は0という場合すらある。
対策は、答えを書いた直後に問題文へ戻って読み直すこと。10秒で終わります。とくに「〜の和」「〜の個数」「〜の最大値」「〜のとき の値」は取り違えやすいので、問題文の最後の語に線を引く習慣をつけてください。
○ 直した答案

7で割ると3余る2桁の自然数は、初項10、末項94、公差7の等差数列

項数は より

総和は

答 676

合言葉:答えを書いたら、問題文に戻る

24 明らかに範囲外の答えを出して気づかない

出る場所:確率/長さ・面積・体積/三角比/個数

✗ 減点される答案

(確率の問題で) / (辺の長さで) / (三角形の3辺が)2, 3, 6

なぜ減点されるのか:減点というより、気づけば直せた失点です。量には取りうる範囲があります。
・確率は  ・長さ・面積・体積は正 ・ ・個数・通り数は自然数
・三角形の3辺は「2辺の和 > 残り1辺」( なので上の3数では三角形にならない)
これらを外れた答えが出たら、計算のどこかが必ず間違っています。答えを書く前に範囲を確かめるだけで、失点が実際に減ります。
数強塾がこれを「検算」と呼んで重視するのは、難問を1問増やすより、解けた問題を確実に取るほうが点が伸びるからです。
○ 直した答案(確かめ方)

確率を求めたら 0以上1以下かを見る。1を超えたら、たいてい重複して数えている。

長さ・面積を求めたら 正かを見る。負なら符号か引き算の向きを間違えている。

三角形の辺を求めたら 2辺の和 > 残り1辺を確かめる。

合言葉:答えを書く前に、取りうる範囲を思い出す

25 写し間違いに気づかない

出る場所:全単元/計算用紙から答案へ書き写す場面

✗ 減点される答案

計算用紙では 2961 と正しく出したのに、答案には 2691 と書いた。

なぜ減点されるのか:内容は完璧なのに、桁の入れ替えだけで点を失います。しかもこの誤りは9去法では検出できません。
9去法は各位の和で調べるので、2961 も 2691 も和は18で同じ。桁を入れ替えても和は変わらないから、すり抜けます。
これを捕まえるのが11去法(一の位から交互に足し引き)です。2961 は 、2691 は 値が変わるので検出できます。
性質の違う2つの検算を重ねる——9と11は互いに素なので、両方をすり抜けるには差が99の倍数である必要があり、そんな写し間違いはまず起きません。
○ 直した答案(確かめ方)

答えを書き写したら、元の数と写した数の交互和を比べる。

2961: / 2691: → 一致しないので写し間違いと分かる。

(9去法だけでは、どちらも各位の和が18で気づけない。)

合言葉:桁の入れ替えは、11でしか捕まらない

試験直前チェックリスト(25型を1行ずつ)

  1. 変数で割った? → 0の場合を書いたか
  2. 2乗した? → 元の式に戻して確かめたか
  3. 条件を絞った? → 「逆に」を書いたか
  4. log・分数・根号がある? → 定義域を先に書いたか
  5. 場合分けした? → 境界に漏れはないか
  6. 置きかえた? → 新しい変数の範囲を出したか
  7. 「少なくとも」? → 否定は「1つもない」にしたか
  8. 絶対値を外した? → 右辺の符号を確認したか
  9. 解の配置? → 判別式・軸・両端の4点を書いたか
  10. 「したがって」で結んだ? → 逆も言えるか
  11. 必要/十分? → 矢印の向きを書いて確かめたか
  12. 否定を作った? → 「すべて」と「ある」を入れ替えたか
  13. 不等式の証明? → 結論から出発していないか
  14. 文字を置いた? → 日本語で定義したか
  15. 図を描いた? → 読み取ったことを式にしたか
  16. 「同様に」と書いた? → 本当に一字一句同じか
  17. 定理を使った? → 名前を書いたか
  18. 答えを書いた? → 問いの言葉と単位で書いたか
  19. 不等式で最大最小? → 等号成立を示したか
  20. 置換積分? → 区間を変えたか
  21. 極限? → 不定形のまま代入していないか
  22. 帰納法? → 仮定を使った瞬間を式で見せたか
  23. 最後の一手 → 問題文に戻って読み直したか
  24. 答えの値 → 取りうる範囲に入っているか
  25. 書き写した? → 交互和で確かめたか

理解できているかの自己診断

  • 01の「 で割る」が作法違反ではなく解の消失である理由を説明できる
  • 02の2乗と08の絶対値が、どちらも「同値でない変形」という同じ型だと説明できる
  • 06の置きかえと20の置換積分が、どちらも「範囲が一緒に引っ越す」という同じ型だと説明できる
  • 07の余事象と12の否定が、どちらも量化子の反転だと説明できる
  • 19で等号成立を書く必要があるのは、「4以上」と「最小値4」が別の主張だからだと説明できる

5つすべてに「はい」と言えるなら、25の型は暗記ではなく理解として身についています。25の型は、実は6つの原因に集約されます。原因で覚えれば、初めて見る問題でも自分で穴に気づけます。どれか1つでも詰まるなら、その型の赤い枠に戻ってください。

作成:数強塾編集部。掲載した例題と解答はすべて数強塾のオリジナルです。公開前に、例題の解・場合分けの網羅性・極限や積分の値など44項目を計算機で検証しました。市販教材や他サイトの問題文・数値・解説文は転載していません。最終更新:2026年8月14日。

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