なぜ三角形の重心は中線を2:1に分けるのか

問い:三角形の重心は、中線のどちら側を長く分けますか。

答え:頂点側が2、中点側が1です。中線の長さが9なら、頂点から重心まで6、重心から中点まで3になります。三角形は3頂点が一直線上にないものとします。

三角形の3本の中線は1点で交わり、その点は中線を\(2:1\) に分けます。

なぜちょうど \(2:1\) になるのでしょうか。

2辺の中点を結んでください。その線分は底辺と平行で長さが半分です。この \(1:2\) が、そのまま出てきます。

結論:中点を結ぶ線分が底辺の半分だから。そこから相似比 \(1:2\) の三角形ができ、交点が \(2:1\) に分けます。

中点連結定理から出てくる

\(\triangle\mathrm{ABC}\) で、辺 \(\mathrm{BC}\) の中点を\(\mathrm{M}\)、辺 \(\mathrm{AC}\) の中点を\(\mathrm{N}\) とします。

中線 \(\mathrm{AM}\) と\(\mathrm{BN}\) の交点を\(\mathrm{G}\) とします。

【中点どうしを結ぶ】

\(\mathrm{M}\) と \(\mathrm{N}\) を結ぶと、中点連結定理から

\(\mathrm{MN}\parallel\mathrm{AB}\)、\(\mathrm{MN}=\dfrac12\mathrm{AB}\)

【相似な三角形が現れる】

\(\mathrm{MN}\parallel\mathrm{AB}\) なので錯角が等しくなります。

等しい角 理由
\(\angle\mathrm{GMN}=\angle\mathrm{GAB}\) 錯角
\(\angle\mathrm{GNM}=\angle\mathrm{GBA}\) 錯角

2組の角が等しいので

\(\triangle\mathrm{GMN}\sim\triangle\mathrm{GAB}\)

【相似比を読む】

対応する辺は \(\mathrm{MN}\) と\(\mathrm{AB}\)。その比は \(1:2\) でした。

相似比 \(=1:2\)

だから他の対応する辺もすべて \(1:2\)。

\(\mathrm{GM}:\mathrm{GA}=1:2\)
\(\mathrm{AG}:\mathrm{GM}=2:1\) ∎

【もう1本の中線も同じ】

\(\mathrm{BG}:\mathrm{GN}=2:1\)

2本の中線が、どちらも交点で \(2:1\) に分かれています。

中点どうしを結ぶと、相似比 1 : 2 の三角形ができるGABCMN21MN ∥ ABMN = AB ÷ 2△GMN ∽ △GAB相似比 1 : 2AG : GM = 2 : 1錯角が等しいので相似 ── その比がそのまま中線の分かれ方になる3本目の中線も、同じ理由で同じ点を通る
中点を結ぶ線分が底辺の半分。その1:2が中線の分かれ方になる。

3本目も、同じ点を通る

ここまでは2本の中線の話でした。3本目はどうでしょうか。

3本とも同じ点を通る

これは当たり前ではありません。3本の直線がたまたま1点で交わることはふつう起きないからです。

【示し方】

いま示したことを別の組で使います

交点 分かること
\(\mathrm{AM}\) と \(\mathrm{BN}\) \(\mathrm{G}\) \(\mathrm{AG}:\mathrm{GM}=2:1\)
\(\mathrm{AM}\) と \(\mathrm{CL}\) \(\mathrm{G}’\) \(\mathrm{AG}’:\mathrm{G}’\mathrm{M}=2:1\)

(\(\mathrm{L}\) は \(\mathrm{AB}\) の中点)

【同じ点になる】

\(\mathrm{G}\) も \(\mathrm{G}’\) も、中線 \(\mathrm{AM}\) を\(2:1\) に分ける点です。

そんな点は1つしかない
\(\mathrm{G}=\mathrm{G}’\) ∎

3本の中線は1点で交わります。

【この論法の型】

2本ずつの交点が同じ場所だと示す

「3本が1点で交わる」を直接示すのは難しい。そこで2本の交点を2通り作って、一致を見るのです。

この手は他の点でも使われます。

名前 交わる3本
重心 中線
内心 角の二等分線
外心 辺の垂直二等分線
垂心 頂点からの垂線

4つとも「1点で交わる」ことが定理になっています。五心と呼ばれる(傍心を含めて)ものです。

座標では、3頂点の平均になる理由を見る

座標を使うと、重心の位置が計算で出ます。

\(\mathrm{G}=\left(\dfrac{x_1+x_2+x_3}3,\;\dfrac{y_1+y_2+y_3}3\right)\)

3頂点の平均です。

【なぜ平均になるのか】

\(\mathrm{BC}\) の中点 \(\mathrm{M}\) は2点の平均でした。

\(\mathrm{M}=\dfrac{\mathrm{B}+\mathrm{C}}2\)

\(\mathrm{A}\) から \(\mathrm{M}\) へ\(\dfrac23\) 進んだ点を計算します。

\(\mathrm{G}=\mathrm{A}+\dfrac23(\mathrm{M}-\mathrm{A})\)
\(=\dfrac13\mathrm{A}+\dfrac23\mathrm{M}\)

\(\mathrm{M}\) を代入します。

\(=\dfrac13\mathrm{A}+\dfrac23\cdot\dfrac{\mathrm{B}+\mathrm{C}}2\)
\(=\dfrac{\mathrm{A}+\mathrm{B}+\mathrm{C}}3\)

3つとも同じ係数になりました。

【対称性が見える】

式が \(\mathrm{A},\;\mathrm{B},\;\mathrm{C}\) について対称です。

どの頂点から出発しても同じ

だから3本目の中線もこの点を通るとすぐ分かります。

図形で示すと「2通り作って一致を見る」という手間がかかりましたが、座標なら式の形で一目です。

【なぜ \(2:1\) なのかも見える】

\(\mathrm{G}=\dfrac13\mathrm{A}+\dfrac23\mathrm{M}\)

\(\mathrm{A}\) の重みが \(1\)、\(\mathrm{M}\) の重みが \(2\)。重みのが距離の比になります。

\(\mathrm{AG}:\mathrm{GM}=2:1\)

これは加重平均の考え方そのものです。てんびんで支点に近いほうが重い——それと同じ。

「重心」という名前の由来

この点を重心と呼ぶのには理由があります。

厚紙で三角形を作ると、この点で支えられる

実際に試せます。三角形に切った厚紙を指1本で支えるとき、つり合う場所が重心です。

【なぜつり合うのか】

三角形を細長い短冊に切って考えます。底辺に平行に切ると、各短冊の中点は中線の上に並びます

短冊はどれも中線でつり合う

だから三角形全体も中線でつり合います。3本の中線すべてでつり合うので、その交点が重心です。

【面積が6等分される】

3本の中線で、三角形は6つの小三角形に分かれます。

6つとも面積が等しい

これも計算で確かめられます(演習4)。

【なぜ等しいのか】

中線は底辺を二等分するので、その両側の三角形は底辺が等しく高さも共通

面積が等しい

これを3本の中線でくり返すと、6等分になります。

【中線が「面積を分ける線」】

中線1本で三角形は2等分されます。

引く線 面積
中線1本 \(2\) 等分
中線2本 \(4\) つに(等しくない)
中線3本 \(6\) 等分

2行目に注意してください。2本では等分になりません。3本そろってはじめて6等分です。

面積6等分を、数値と色で確かめる

形が違っても、6つとも面積4形が違っても、6つとも面積4444444GA(1,6)B(0,0)C(8,0)MNL
底辺BC=8、高さ6なので全体の面積は24。L・M・Nは各辺の中点、G=(3,2)です。6つの小三角形は合同とは限りませんが、面積はすべて4です。

GからBCまでの高さは2で、Aからの高さ6の1/3です。そのため三角形GBCの面積は \(8\times2/2=8\) で、全体24の1/3になります。ほかの辺を底辺にしても同じく1/3です。

各辺の中点で、その三角形をさらに半分に分けます。例えばBM=MC=4なので、GBMとGMCはどちらも \(4\times2/2=4\)。残りの4つも同じ理由です。まず3つが全体の1/3、さらに各々を半分にするので、6等分になります。

ベクトルで書くと、もっと短い

高校ではベクトルで扱います。書き方が変わるだけで、中身は同じです。

\(\overrightarrow{\mathrm{OG}}=\dfrac{\overrightarrow{\mathrm{OA}}+\overrightarrow{\mathrm{OB}}+\overrightarrow{\mathrm{OC}}}3\)

座標の式と同じ形です。3点の平均

【いちばんきれいな式】

重心を基準にすると、次が成り立ちます。

\(\overrightarrow{\mathrm{GA}}+\overrightarrow{\mathrm{GB}}+\overrightarrow{\mathrm{GC}}=\vec0\)

3頂点へ向かうベクトルの和がゼロ

これが「つり合う点」の数式による表現です(演習5)。

【証明】

\(\overrightarrow{\mathrm{GA}}=\overrightarrow{\mathrm{OA}}-\overrightarrow{\mathrm{OG}}\)

3つ足すと

\((\overrightarrow{\mathrm{OA}}+\overrightarrow{\mathrm{OB}}+\overrightarrow{\mathrm{OC}})-3\overrightarrow{\mathrm{OG}}\)

\(\overrightarrow{\mathrm{OG}}\) の定義から、これは \(\vec0\) ✓

【逆に、これを定義にする】

大学では「\(\overrightarrow{\mathrm{GA}}+\overrightarrow{\mathrm{GB}}+\overrightarrow{\mathrm{GC}}=\vec0\) を満たす点」を重心の定義にすることがあります。

点が何個でも同じ形
\(\mathrm{G}=\dfrac{\mathrm{P}_1+\mathrm{P}_2+\cdots+\mathrm{P}_n}n\)

三角形でなくても、何個の点でも重心が定まります

【四面体でも】

4頂点の平均が四面体の重心です。このとき頂点と向かいの面の重心を結ぶ線分を\(3:1\) に分けます。

図形 頂点の数 分ける比
三角形 \(3\) \(2:1\)
四面体 \(4\) \(3:1\)
\(n\) 点 \(n\) \((n-1):1\)

\(2:1\) の \(2\) は「自分以外の頂点の数」だった——そう見ると納得できます。

「3点の平均」は、3点の重さが等しいとき

Aの重さを2倍にすると、Aへ近づくAの重さを2倍にすると、Aへ近づくP(2.5,3)G(3,2)A:重さ2B:重さ1C:重さ1MG:3頂点とも重さ1の場合
BとCの重さを中点Mにまとめると合計2です。Aの重さも2なので、新しい重心PはAMの中点。通常の重心GよりAに近くなります。

同じ3頂点でも、重さがA:B:C=2:1:1なら、重心は \(P=(2A+B+C)/4=(2.5,3)\) です。3点の重さが等しいときの \(G=(A+B+C)/3=(3,2)\) とは違います。

一様な三角形の薄い板と同じ位置になるのは、厚さと密度が一様な場合です。一般の四角形では、板の重心と頂点の平均は一致するとは限りません。ただし長方形や平行四辺形のように一致する場合もあります。

大学数学への入口:平均という操作

重心の正体は座標の平均でした。

\(\mathrm{G}=\dfrac{\mathrm{A}+\mathrm{B}+\mathrm{C}}3\)

「点を足して割る」という操作が意味を持つのは、点をベクトルとして扱っているからです。

【重みをつけると】

各点に重さをつけて平均をとることもできます。

\(\dfrac{m_1\mathrm{P}_1+m_2\mathrm{P}_2+m_3\mathrm{P}_3}{m_1+m_2+m_3}\)

これが物理の重心です。重さが等しいときが三角形の重心にあたります。

【確率でも同じ形】

\(E(X)=\sum x_ip_i\)

期待値も加重平均でした。確率が重さになっています。

分野 重さ 平均するもの
図形 等しい 座標
物理 質量 位置
確率 確率
統計 度数 データ

4つとも同じ式です。名前と場面が違うだけ。

【平均の位置】

平均には共通の性質があります。

必ず「もとのもののあいだ」に入る

重心が三角形の内部にあるのも、期待値が最小値と最大値のあいだにあるのも、混ぜた食塩水の濃度が2つのあいだに入るのも、すべて同じ理由です。

中学で「重心は三角形の中にある」と習うことが、平均の一般的な性質の1つの現れ——そう見ておいてください。

数強塾オリジナル演習問題

数強塾が作った自作問題です。手を動かしてから解答を開いてください。答えが合うことより、上で読んだ理由がそのまま使えることを確かめるのが目的です。

問1

3点 \(\mathrm{A}(0,\;0)\)、\(\mathrm{B}(6,\;0)\)、\(\mathrm{C}(3,\;6)\) を頂点とする三角形について答えよ。

(1) 辺 \(\mathrm{BC}\) の中点\(\mathrm{M}\) の座標
(2) 重心 \(\mathrm{G}\) の座標
(3) \(\mathrm{G}\) が線分\(\mathrm{AM}\) を \(2:1\) に分けることを確かめよ

答え:(1)M=(4.5,3)、(2)G=(3,2)、(3)AG:GM=2:1。

解答と考え方を開く

(1) 中点

\(\mathrm{M}=\left(\dfrac{6+3}2,\;\dfrac{0+6}2\right)=(4.5,\;3)\)

(2) 重心

3頂点の平均です。

\(\mathrm{G}=\left(\dfrac{0+6+3}3,\;\dfrac{0+0+6}3\right)=(3,\;2)\)

(3) \(2:1\) の確認

\(\mathrm{A}\) から \(\mathrm{M}\) へ\(\dfrac23\) 進んだ点を計算します。

\(x=0+\dfrac23(4.5-0)=3\)
\(y=0+\dfrac23(3-0)=2\)
\((3,\;2)\) = \(\mathrm{G}\) ✓

【長さでも確かめる】

\(\mathrm{AG}=\sqrt{3^2+2^2}=\sqrt{13}\fallingdotseq3.606\)
\(\mathrm{GM}=\sqrt{1.5^2+1^2}=\sqrt{3.25}\fallingdotseq1.803\)
\(3.606\div1.803=2.000\) ✓

【答】(1) \((4.5,\;3)\) (2) \((3,\;2)\) (3) 上のとおり

【座標を使う利点】

図形の性質を数値で確かめられます

証明はできませんが(1つの例だけなので)、自分の理解が合っているかの確認には十分です。

手が止まったら、具体的な座標を入れて計算してみる——有効な手です。

問2

\(\triangle\mathrm{ABC}\) で、辺 \(\mathrm{BC}\) の中点を \(\mathrm{M}\)、辺 \(\mathrm{AC}\) の中点を \(\mathrm{N}\) とする。中線 \(\mathrm{AM}\) と \(\mathrm{BN}\) の交点を \(\mathrm{G}\) とする。

\(\mathrm{AG}:\mathrm{GM}=2:1\) であることを証明せよ。

答え:MNとABの比1:2から、相似でGM:GA=1:2。

解答と考え方を開く

【補助線】

\(\mathrm{M}\) と \(\mathrm{N}\) を結ぶ

【中点連結定理】

\(\mathrm{M}\)、\(\mathrm{N}\) はそれぞれ \(\mathrm{BC}\)、\(\mathrm{AC}\) の中点なので

\(\mathrm{MN}\parallel\mathrm{AB}\)、\(\mathrm{MN}=\dfrac12\mathrm{AB}\)

【相似を示す】

\(\mathrm{MN}\parallel\mathrm{AB}\) より錯角が等しい。

等しい角 理由
\(\angle\mathrm{GMN}=\angle\mathrm{GAB}\) 錯角
\(\angle\mathrm{GNM}=\angle\mathrm{GBA}\) 錯角

2組の角が等しいので

\(\triangle\mathrm{GMN}\sim\triangle\mathrm{GAB}\)

【相似比】

\(\mathrm{MN}:\mathrm{AB}=1:2\)

対応する辺の比なので

\(\mathrm{GM}:\mathrm{GA}=1:2\)
\(\mathrm{AG}:\mathrm{GM}=2:1\) ∎

【対応をまちがえない】

相似ではどの辺とどの辺が対応するかがいちばん大事です。

△GMN △GAB
\(\mathrm{G}\) \(\mathrm{G}\)
\(\mathrm{M}\) \(\mathrm{A}\)
\(\mathrm{N}\) \(\mathrm{B}\)

だから \(\mathrm{GM}\) に対応するのは \(\mathrm{GA}\)。

頂点の順番をそろえて書けば、対応を間違えません。

【なぜ中点連結定理か】

中線を2本引いた時点では、交点の位置が分かりません。

中点どうしを結ぶと、平行線ができて錯角が使え、相似に持ち込めます。

「使いたい定理が使える形を作る」——補助線の考え方です。

問3

\(\triangle\mathrm{ABC}\) の3本の中線をすべて引くと、三角形は6つの部分に分かれる。

この6つの面積がすべて等しいことを、\(\mathrm{A}(0,0)\)、\(\mathrm{B}(6,0)\)、\(\mathrm{C}(3,6)\) の場合について確かめよ。

答え:全体の面積18、小三角形6つは各3。

解答と考え方を開く

【必要な点を求める】

座標
\(\mathrm{L}\)(AB の中点) \((3,\;0)\)
\(\mathrm{M}\)(BC の中点) \((4.5,\;3)\)
\(\mathrm{N}\)(AC の中点) \((1.5,\;3)\)
\(\mathrm{G}\)(重心) \((3,\;2)\)

【全体の面積】

\(\dfrac12\times6\times6=18\)

底辺 \(\mathrm{AB}=6\)、高さ \(6\)。

【6つの面積を計算】

\(\triangle\mathrm{ALG}\) を例に計算します。\(\mathrm{A}(0,0)\)、\(\mathrm{L}(3,0)\)、\(\mathrm{G}(3,2)\)。

\(\dfrac12\times3\times2=3\)

同じように計算すると、6つとも \(3\) になります。

三角形 面積
\(\mathrm{ALG}\) \(3\)
\(\mathrm{LBG}\) \(3\)
\(\mathrm{BMG}\) \(3\)
\(\mathrm{MCG}\) \(3\)
\(\mathrm{CNG}\) \(3\)
\(\mathrm{NAG}\) \(3\)
合計 \(3\times6=18\) ✓

【なぜ等しいのか】

座標を使わなくても示せます。

中線は底辺を二等分するので、その両側の三角形は底辺が等しく、高さも共通

\(\triangle\mathrm{ALG}=\triangle\mathrm{LBG}\)

この事実だけでは3組の面積が等しいことまでは決まりません。Gと各辺でできる3つの三角形の面積が全体の1/3になることと合わせると、6つすべてが1/6と分かります。

【2本では等分にならない】

中線2本で4つに分けても、面積は等しくなりません。

3本そろってはじめて6等分です。「中線を引けば等分」と覚えると間違えます。

問4

\(\triangle\mathrm{ABC}\) の重心を\(\mathrm{G}\) とする。

(1) \(\overrightarrow{\mathrm{GA}}+\overrightarrow{\mathrm{GB}}+\overrightarrow{\mathrm{GC}}\) を求めよ。
(2) \(\mathrm{A}(0,0)\)、\(\mathrm{B}(6,0)\)、\(\mathrm{C}(3,6)\) で確かめよ。

答え:\(\overrightarrow{GA}+\overrightarrow{GB}+\overrightarrow{GC}=\vec0\)。例では成分和(0,0)。

解答と考え方を開く

(1) 一般に示す

基準点 \(\mathrm{O}\) をとって書き直します。

\(\overrightarrow{\mathrm{GA}}=\overrightarrow{\mathrm{OA}}-\overrightarrow{\mathrm{OG}}\)

3つ足すと

\((\overrightarrow{\mathrm{OA}}+\overrightarrow{\mathrm{OB}}+\overrightarrow{\mathrm{OC}})-3\overrightarrow{\mathrm{OG}}\)

重心の定義から

\(\overrightarrow{\mathrm{OG}}=\dfrac{\overrightarrow{\mathrm{OA}}+\overrightarrow{\mathrm{OB}}+\overrightarrow{\mathrm{OC}}}3\)

代入すると

\(3\overrightarrow{\mathrm{OG}}-3\overrightarrow{\mathrm{OG}}=\vec0\)
\(\vec0\) ∎

(2) 座標で確かめる

\(\mathrm{G}(3,\;2)\) です。

ベクトル 成分
\(\overrightarrow{\mathrm{GA}}\) \((-3,\;-2)\)
\(\overrightarrow{\mathrm{GB}}\) \((3,\;-2)\)
\(\overrightarrow{\mathrm{GC}}\) \((0,\;4)\)
合計 \((0,\;0)\)

\(x\) 成分:\(-3+3+0=0\) ✓
\(y\) 成分:\(-2-2+4=0\) ✓

【この式の意味】

3方向の「引っぱり」がつり合っている

重心という名前のとおり、物理的なつり合いを表しています。

【逆に使う】

この式を重心の定義とすることもできます。

\(\overrightarrow{\mathrm{PA}}+\overrightarrow{\mathrm{PB}}+\overrightarrow{\mathrm{PC}}=\vec0\) → \(\mathrm{P}\) は重心

入試ではこの形の条件から「\(\mathrm{P}\) は重心」と見抜く問題が出ます。

問5

四面体 \(\mathrm{ABCD}\) の重心を\(\mathrm{G}\) とする。

(1) \(\mathrm{G}\) の位置を式で表せ。
(2) 頂点 \(\mathrm{A}\) と、\(\triangle\mathrm{BCD}\) の重心\(\mathrm{G}_1\) を結ぶ線分を、\(\mathrm{G}\) はどんな比に分けるか。

答え:\(G=(A+B+C+D)/4\)、\(AG:GG_1=3:1\)。

解答と考え方を開く

(1) 4頂点の平均

\(\mathrm{G}=\dfrac{\mathrm{A}+\mathrm{B}+\mathrm{C}+\mathrm{D}}4\)

(2) 分ける比

まず \(\mathrm{G}_1\) を求めます。

\(\mathrm{G}_1=\dfrac{\mathrm{B}+\mathrm{C}+\mathrm{D}}3\)

これを使って \(\mathrm{G}\) を書き直します。

\(\mathrm{G}=\dfrac{\mathrm{A}+3\mathrm{G}_1}4\)
\(=\dfrac14\mathrm{A}+\dfrac34\mathrm{G}_1\)

係数が \(1:3\) なので、距離の比はその逆

\(\mathrm{AG}:\mathrm{GG}_1=3:1\)

【三角形と比べる】

図形 頂点
三角形 \(3\) \(2:1\)
四面体 \(4\) \(3:1\)

【なぜこうなるのか】

\(n\) 個の点の重心では

\(\mathrm{G}=\dfrac1n\mathrm{A}+\dfrac{n-1}n\mathrm{G}_1\)

ここで \(\mathrm{G}_1\) は\(\mathrm{A}\) 以外の\(n-1\) 個の重心

分ける比は \((n-1):1\)

三角形の \(2:1\) の \(2\) は「自分以外の頂点の数」だったのです。

【重みの逆になる理由】

\(\mathrm{G}=\dfrac14\mathrm{A}+\dfrac34\mathrm{G}_1\) では、\(\mathrm{G}_1\) の重みが大きい。

重いほうに引き寄せられるので、\(\mathrm{G}\) は\(\mathrm{G}_1\) の近くに来ます。

近い = 距離が小さい

だから距離の比は重みの逆。てんびんで支点に近いほうが重いのと同じ話です。

つまずくのはここ:

比の向きを取り違える。頂点側が \(2\)、中点側が \(1\) です。\(\mathrm{AG}:\mathrm{GM}=2:1\)。

相似の対応をまちがえる。\(\triangle\mathrm{GMN}\sim\triangle\mathrm{GAB}\) では\(\mathrm{M}\leftrightarrow\mathrm{A}\)。頂点の順をそろえて書いてください(演習2)。

中線2本で面積が等分されると思う。3本そろって6等分です(演習3)。

重心と外心・内心を混同する。重心は中線の交点。角の二等分線なら内心、垂直二等分線なら外心です。

四面体で \(2:1\) としてしまう。頂点が4つなので\(3:1\) です(演習5)。

確認問題6:中線2本だと何が残る?

上の面積24の三角形で、中線AMとBNだけを引きます。できる4つの領域の面積を求めてください。

答え:4、4、8、8。

ヒント:3本目CLを消すと、どの2つがつながるか見ます。

解説:ANGとBMGは各4のまま。ABGはALGとLBGを合わせて8、四角形GMCNはGMCとGCNを合わせて8です。合計24ですが、4等分ではありません。

確認問題7:重さを変えた重心

A(1,6)、B(0,0)、C(8,0)に重さ2、1、1を置きます。重心Pの座標と、AP:PMを求めてください。MはBCの中点です。

答え:P=(2.5,3)、AP:PM=1:1。

ヒント:BとCの重さをMへまとめます。

解説:\(P=((2\cdot1+0+8)/4,(2\cdot6+0+0)/4)=(2.5,3)\)。M=(4,0)の重さは2、Aも2なので、PはAMの中点です。\(((1+4)/2,(6+0)/2)=(2.5,3)\) と一致します。

よくある質問

なぜ3本の中線が1点で交わると言えるのですか。

2本ずつの交点が同じ場所だからです。

3本が1点で交わることを直接示すのは難しい。そこで順番に示します

手順 内容
1 \(\mathrm{AM}\) と \(\mathrm{BN}\) の交点を \(\mathrm{G}\) とする
2 \(\mathrm{G}\) は \(\mathrm{AM}\) を\(2:1\) に分ける
3 \(\mathrm{AM}\) と \(\mathrm{CL}\) の交点も \(2:1\) に分ける
4 そんな点は1つなので同じ

【座標なら一目】

\(\mathrm{G}=\dfrac{\mathrm{A}+\mathrm{B}+\mathrm{C}}3\)

この式は \(\mathrm{A},\;\mathrm{B},\;\mathrm{C}\) について対称です。

どの頂点から出発しても同じ点になる——だから3本とも通ります。

【他の心でも同じ論法】

内心・外心・垂心も「3本が1点で交わる」定理です。どれも2本ずつの交点が一致することを示します。

ただし使う性質は違います。

使う性質
重心 中点連結定理
外心 垂直二等分線上の点は2点から等距離
内心 角の二等分線上の点は2辺から等距離

「重心」は物理の重心と同じものですか。

同じです。厚みと密度が一様な三角形の薄い板なら、この点で支えるとつり合います。

【なぜつり合うのか】

三角形を底辺に平行な細い短冊に切って考えます。

各短冊の中点は、すべて中線の上に並びます。

短冊はどれも中線の位置でつり合う

だから三角形全体も中線でつり合う。3本すべてでつり合う点が重心です。

【頂点だけに重さがある場合】

3頂点に等しい重りを置いた場合も、重心の位置は同じです。

\(\dfrac{\mathrm{A}+\mathrm{B}+\mathrm{C}}3\)

板でも3点でも同じ——これは三角形だからうまくいく偶然です。

一般の四角形では一致するとは限りません。板の重心と4頂点の平均が別の点になる例があります。長方形や平行四辺形では一致します。

【重さが違う場合】

各点に重さ \(m_i\) をつけると

\(\dfrac{m_1\mathrm{P}_1+m_2\mathrm{P}_2+m_3\mathrm{P}_3}{m_1+m_2+m_3}\)

加重平均の形です。重いほうへ引き寄せられます。

重心は高校でも使いますか。

ベクトルと座標でよく出ます。

分野 使い方
ベクトル \(\frac{\vec a+\vec b+\vec c}3\)
図形と方程式 重心の座標
空間図形 四面体の重心
統計 データの平均

【頻出の型】

\(\overrightarrow{\mathrm{PA}}+\overrightarrow{\mathrm{PB}}+\overrightarrow{\mathrm{PC}}=\vec0\)

この条件から「\(\mathrm{P}\) は重心」と見抜く問題が出ます。

係数がそろっていない場合もあります。

\(\overrightarrow{\mathrm{PA}}+2\overrightarrow{\mathrm{PB}}+3\overrightarrow{\mathrm{PC}}=\vec0\)

このときは重みつきの重心。\(\mathrm{P}\) は

\(\dfrac{\mathrm{A}+2\mathrm{B}+3\mathrm{C}}6\)

にあります。係数の比がそのまま重さです。

【面積比としても現れる】

じつは係数の比は、向かい合う三角形の面積比にもなっています。

\(\triangle\mathrm{PBC}:\triangle\mathrm{PCA}:\triangle\mathrm{PAB}=1:2:3\)

重心(\(1:1:1\))で6等分になるのは、この特別な場合です。

中学で見た「6等分」が、高校の一般形の入口になっています。

「なぜそうなるのか」を対話で確かめたい方へ

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中学数学図形
2026年9月13日の図2点・確認2問追加と関連校正:Codex。今回の人間講師による個別監修は未確認です。掲載している演習問題はすべて数強塾の自作問題です。実在の入試問題の再現ではありません。

📚 この「なぜ」が効いてくる単元

ここで扱った理由づけは、次の単元で公式・定石・つまずきポイントとして整理してあります。理由が腑に落ちたあとに単元の定石をひと通り見ておくと、問題を解いているときに思い出せる形になります。

数学I・Aの要点辞典 第9章 図形の性質 を読む

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