二次方程式の文章題では、計算より前の「何を文字にするか」「割合をどの量に掛けるか」が重要です。売買、売上、表面積、食塩水の5題を、数量の意味、定義域、解の吟味まで一段ずつ解説します。
割合を倍率に直す表
| 表現 | 割合 | 掛ける倍率 |
|---|---|---|
| x割増し | x/10 | 1+x/10 |
| x割引き | x/10 | 1-x/10 |
| x%増加 | x/100 | 1+x/100 |
| x%減少 | x/100 | 1-x/100 |
「増えた量」だけを求めるときは元の量×割合ですが、「増減後の全体」は元の量×倍率です。この二つを混同しないようにします。
問題1:同じx割の利益と値引き
原価800円の商品に x割の利益を見込んで定価を付け、その定価から x割引きして売ったところ、1個につき32円の損になりました。xを求めます。
定価を表す
x割は x/10です。原価800円に利益を加えた定価は、
売価を表す
その定価から x割引くので、売価は、
(1+a)(1-a)=1-a2を使うと、
32円の損なので、売価は800-32=768円です。
xは利益率・割引率を表し、問題では正の値です。また割引後の倍率が正となる0<x<10を満たす必要があります。したがって-2は不適です。
答え:x=2
金額で検算する
2割の利益を見込むと定価は800×1.2=960円です。そこから2割引くと960×0.8=768円で、原価800円より32円少なくなります。
なぜ同じ割合を上げ下げしても元に戻らないか
2割増しは原価800円を基準に160円増やしますが、2割引きは定価960円を基準に192円減らします。基準が異なるので、増加と減少は打ち消し合いません。
問題2:値下げと販売個数から売上を作る
800円で100個売れる商品があります。10円値下げするごとに販売個数が2個増える見込みです。売上総額を定価販売時より5%増やす販売価格を求めます。
値下げ回数を文字にする
10円値下げする回数を n回と置きます。nは0以上の整数です。
| 数量 | 定価時 | n回値下げ後 |
|---|---|---|
| 1個の価格 | 800円 | 800-10n円 |
| 販売個数 | 100個 | 100+2n個 |
| 売上総額 | 80,000円 | (800-10n)(100+2n)円 |
目標売上は80,000×1.05=84,000円です。
20で割ってから展開すると、
n=10、20はいずれも0以上の整数で、価格も正です。
- n=10:800-100=700円、販売120個、売上84,000円
- n=20:800-200=600円、販売140個、売上84,000円
答え:600円または700円
二つの価格が出る理由
価格を少し下げると個数増加によって売上が増えます。しかし下げすぎると、個数が増えても1個の価格低下が大きくなり、売上は再び減ります。売上を nの式にすると下に開く二次関数なので、最大値より小さい84,000円になる点が左右に二つあります。
問題3:球の表面積と長さの倍率
半径10 cmの球の半径を x%大きくしたところ、表面積が44%増えました。xを求めます。
球の表面積は4πr2です。半径が k倍になると、表面積は k2倍になります。
半径の倍率は1+x/100、表面積の倍率は1.44です。
平方根を取ると±1.2が考えられますが、1+x/100は正の長さの倍率で、さらに「大きくした」ので1より大きい値です。
答え:20%
公式へ直接代入して検算
半径は10×1.2=12 cmです。元の表面積は400π、変更後は576πです。増加率は(576π-400π)/400π=176/400=0.44で、44%に一致します。
問題4:1回目に残る食塩
10%の食塩水100 gから x gを取り出し、同じ x gの水を入れます。1回目の操作後に残る食塩量を求めます。
最初の食塩は100×0.10=10 gです。よく混ざった食塩水を x g取り出すと、全体の x/100を取り出すため、食塩も同じ割合だけ減ります。
答え:10-x/10 g
後から入れるのは水だけなので、食塩量は増えません。全体量は100 gへ戻ります。
問題5:2回の取り出しと水の補充
問題4の操作後、さらに1回目の2倍である2x gの食塩水を取り出し、同量の水を入れました。最終濃度が4.8%のとき、1回目に取り出した量を求めます。
2回目も「残る割合」を掛ける
1回目の補充後も全体は100 gです。2回目に2x gを取り出すと、食塩は1-2x/100倍残ります。
最終的な食塩水100 gの4.8%は4.8 gです。
10で割り、分母を払います。
方程式の解は20と130です。しかし2回目に2x gを100 gの容器から取り出すため、0<2x<100、すなわち0<x<50です。x=130は取り出せない量で不適です。
答え:20 g
濃度を段階的に検算する
最初の食塩は10 gです。20 g取り出すと8 g残り、水20 gを入れた後の濃度は8%です。次に40 g取り出すと、食塩は8×0.6=4.8 g残ります。水40 gを補充すると全体100 g、濃度4.8%です。
5題の答えと不適解
| 問題 | 答え | 除いた解・条件 |
|---|---|---|
| 利益・値引き | x=2 | -2は正の割合でない |
| 売上総額 | 600円、700円 | 2解とも条件を満たす |
| 球の表面積 | 20% | 負の長さ倍率を除く |
| 1回目の食塩 | 10-x/10 g | 水の補充で食塩は増えない |
| 2回の食塩水 | 20 g | 130 gは取り出せない |
よくある誤り
| 誤り | 直し方 |
|---|---|
| x割を x/100とする | 1割=10%なので x/10 |
| 利益率と割引率を足し引きする | 基準が変わるため倍率を順に掛ける |
| 価格だけを変えて個数を変えない | 値下げ回数 nで両方を表す |
| 表面積44%増を半径44%増とする | 面積倍率は長さ倍率の2乗 |
| 食塩水を取り出しても食塩量を変えない | よく混ざっていれば食塩も同じ割合で減る |
| 二次方程式の2解を両方答える | 正の割合、価格、取り出せる量を確認する |
確認問題
- 1000円の商品を3割増しの定価にし、その定価から3割引きすると、売価はいくらですか。
- 価格500円で80個売れる商品を、20円下げるごとに5個多く売れるとします。2回値下げした売上を求めてください。
- 正方形の一辺を10%増やすと、面積は何%増えますか。
- 12%の食塩水200 gから50 g取り出した直後、食塩は何g残りますか。
- 食塩水100 gから60 g取り出す操作をするなら、xを「取り出す量」としたときの定義域を答えてください。
確認問題の解答
- 1000×1.3×0.7=910円です。
- 価格460円、個数90個なので、41,400円です。
- 1.12=1.21より、21%増です。
- 最初の食塩24 gのうち3/4が残るので、18 gです。
- 容器内の量より多く取れないため、0<x≦100です。問題5のように2xを取るなら、さらに x≦50です。
よくある質問
文章題で文字は何に置けばよいですか。
問題が最後に求めている量を直接置けるなら、それを文字にします。ただし問題2のように価格と個数が同時に変わるときは、両方を簡単に表せる「変化の回数」を置く方が立式しやすくなります。
二次方程式の二つの解は、必ず一つを捨てますか。
いいえ。問題2では600円と700円の両方が条件を満たします。解を機械的に一つへ減らすのではなく、各解を元の条件へ代入して判断します。
食塩水へ水を戻した後、濃度を先に求めてもよいですか。
可能ですが、複数回の操作では食塩の重さを追う方が安定します。「食塩量×残る割合」とし、最後に全体量で割ると、濃度変化を一つずつ計算するより式が短くなります。
学習範囲の根拠
本記事は、中学校数学の二次方程式の利用に沿って、割合・面積・濃度の文章題をサイト用に再構成したものです。教材画像や紙面は転載していません。
