中高一貫校の高1で扱う「2次関数の最大・最小」は、軸と定義域の位置関係が見えれば一通り解けます。しかし大学入試で出るのは、その一段上です。文字が2つある、最大値と最小値の差を条件として与えられる、絶対値がついている——見た目は難しそうですが、実は使う道具は高1の夏と同じです。
この記事では、基本型を終えた人が次に越えるべき3つの発展テーマを、「なぜその操作をするのか」「いま何を対象に考えているのか」まで踏み込んで解説します。ここを通過すると、2次関数は「解ける単元」から「他の単元を支える道具」に変わります。
この記事で扱う3つの発展テーマ
- 発展1 文字が2つある最大・最小(1文字消去と、消したあとの変域)
- 発展2 最大値と最小値の差が与えられる逆算(4区間の場合分け)
- 発展3 絶対値のついた2次関数(折り返しと、方程式の解の個数)
基本型がまだの人は、先に高1の夏課題「2次関数の最大・最小」5つの型を読んでから戻ってきてください。
1.発展の前に、土台を1行で確認する
どれだけ複雑に見える問題でも、2次関数で使う道具はこれだけです。
y = a ×(軸からの距離)2 +(頂点の高さ)
下に凸なら軸に近いほど低く、上に凸なら軸に近いほど高い。あとは「見てよい範囲の中で、その距離が最小・最大になる点はどこか」を選ぶだけ。発展問題が難しく感じるのは、この道具が使えないからではなく、道具を使う前の準備が増えるからです。
発展問題の正体
発展問題はすべて「2段構え」になっています。
第1段:調べる対象(関数と変域)を自分で作る。
第2段:作ったものを、いつも通りのやり方で調べる。
難しいのは第1段だけです。第2段は高1の夏にやったことと1ミリも変わりません。
2.発展1|文字が2つあるとき、消したあとに何が残るか
【例題1】
、、 のとき、 の最大値と最小値を求めよ。
文字が2つあるままでは、2次関数として扱えません。そこで条件式を使って1文字を消します。 より なので、
これで だけの2次関数になりました。平方完成します。 の係数が なので、まず でくくります。
ここで手を止める。変域はどうなったか
多くの人が、ここで「頂点が だから最小値2、最大値なし」と答えて終わります。しかしそれは半分しか使っていません。
条件には と がありました。 を代入すると、
かつ
すなわち 。消した文字 の条件が、生き残った文字 の変域に化けたのです。
1文字消去の鉄則
消した文字の条件は、消えずに「変域」として残る。
これを引き継がないと、存在しない の組で計算した値を答えてしまいます。
置き換え型で「 の変域を必ず調べる」と習ったのと、まったく同じ原理です。名前が違うだけで、やっていることは同じ。
図1: と、条件から出てきた変域 (青い帯)。軸 は帯の中にあるので頂点が最小。最大は軸から遠い端だが、両端が軸から等距離なので2か所で同時に最大になる。
軸 は変域の中にあるので、最小は頂点の (このとき )。最大は軸から遠いほうの端ですが、 で両端が同じ距離。したがって と の両方で最大となり、値は 。
【答】
最大値 ( または のとき)、最小値 ( のとき)
【検算】 なら 。 なら 。 なら で、確かに と の間に入っています。具体的な組を3つ入れて挟み込むだけで、答えの妥当性はほぼ確認できます。
もし が無かったら
条件が だけなら、 はすべての実数を動けます。すると変域は制限なしになり、最小値は のまま、最大値は存在しません(いくらでも大きくなる)。
【本質】同じ式でも、条件が1つ変わるだけで答えが「最大値4」から「最大値なし」に変わる。問題文の条件は飾りではなく、変域を決めるための情報だということが、ここではっきりします。入試問題で条件が1行増えていたら、それは必ず変域に効いています。
3.発展2|「最大値と最小値の差」から係数を逆算する
【例題2】
2次関数 ()について、最大値と最小値の差が となるような定数 の値をすべて求めよ。
この問題が「発展」である理由は、最大値も最小値も、まだ数ではなく の式だからです。つまり2つの関数を自分で作り、その差をとって、さらにもう1つの関数を作るという三段構えになります。
ステップ1:最小値 を作る
平方完成すると 。軸は 、下に凸。最小値は「軸が変域の中なら頂点、外なら軸に近いほうの端」で決まります。
| 軸の位置 | の範囲 | 最小をとる | 最小値 |
|---|---|---|---|
| 変域の左の外 | |||
| 変域の中 | |||
| 変域の右の外 |
ステップ2:最大値 を作る
最大値の判定基準は違います。下に凸の最大は軸から遠いほうの端なので、変域の中点 と軸 を比べます。
| 軸と中点の関係 | の範囲 | 最大をとる | 最大値 |
|---|---|---|---|
| 軸が中点より左 | |||
| 軸が中点より右 |
ステップ3:差 を作る
ここが山場です。 の分かれ目は 、 の分かれ目は 。両方の分かれ目をすべて使うので、区間は4つになります。
| の範囲 | 差 | ||
|---|---|---|---|
【検算:つなぎ目を必ず見る】: と 。: と 。: と 。3か所すべてで一致。差の関数は途切れずつながっています。ここがずれていたら、必ずどこかで場合分けを間違えています。
ステップ4: を解く
いよいよ条件を使います。各区間で方程式を解き、出てきた値がその区間に入っているかを毎回確認します。
区間1 : より 。
これは を満たさないので不適。
区間2 : より 、すなわち 。
なので は範囲内で適する。 は範囲外で不適。
区間3 : より 。
は範囲内で適する。 は範囲外で不適。
区間4 : より 。
は を満たさないので不適。
【答】
図2:差 のグラフ(4区間でつながった1本の曲線)と、条件の高さ を表す赤い横線。交点がちょうど2つあり、それが答えの と 。「解が2つある」ことが、絵として先に分かる。
【検算】 のとき、軸は変域の中なので最小値は 、軸は中点1より右なので最大値は の 。差はちょうど です。 のときは最小値 、最大値は 。差は 。両方とも合っています。
この問題が教えている「一段上の視点」
最大値・最小値は、ふつう「答えとして出てくる数」です。しかしここでは、それらが を入力すると値が返ってくる関数として扱われています。
関数を作って、その関数をまた調べる。この視点の切り替えができるかどうかが、高1と入試の分かれ目です。
4.発展3|絶対値がついたら、グラフを折り返す
【例題3】
の における最大値と最小値を求めよ。
絶対値は「符号を取り払って正にする」記号です。グラフで言えば、 軸より下にある部分を、 軸を鏡にして上へ折り返すという操作にあたります。
まず中身を調べます。。頂点は 、 軸との交点は より 。
つまり の部分だけが 軸より下にあり、そこが折り返されます。折り返すと、もとの谷底 は という山の頂上に変わります。
図3:点線がもとの 、実線が 。 軸より下の部分()が折り返され、谷底が高さ1の山に変わっている。
この形で の最大・最小を読み取ります。候補になるのは、両端・折り返し点・折り返してできた山の頂上の4種類だけです。
| もとの値 | 絶対値をとった値 | 意味 | |
|---|---|---|---|
| 左端 | |||
| 折り返し点 | |||
| 山の頂上 | |||
| 折り返し点 | |||
| 右端 |
【答】
最大値 ( のとき)、最小値 ( のとき)
【なぜ最小値が0だと即断できるのか】絶対値は必ず 以上です。そして中身が になる ()が変域に入っています。「0以上」かつ「0になる点がある」なら、最小値は0で確定。計算せずに言い切れます。この論法は数学IIIまでずっと使います。
もう一歩深く: の解の個数
絶対値つきのグラフが描けると、方程式の解の個数という別ジャンルの問題がそのまま解けます。
。 軸との交点は 、頂点は 。折り返すと、高さ の山ができます。この形に水平線 を引いて、交点の数を数えるだけです。
| の範囲 | 水平線の位置 | 解の個数 |
|---|---|---|
| グラフより下(交わらない) | 個 | |
| ちょうど折り返し点を通る | 個 | |
| 山も両側の谷も横切る | 個 | |
| 山の頂上に接する | 個 | |
| 山を越えて外側だけ横切る | 個 |
【本質】方程式を「解く」のではなく、グラフと水平線の交点を「数える」。この発想の転換ができると、解の個数の問題は暗算に近くなります。数学IIの3次関数、数学IIIの微分でも、まったく同じ図を描くことになります。
5.3つの発展に共通する構造
発展問題の読み方
| テーマ | 第1段:作る | 第2段:調べる |
|---|---|---|
| 2変数 | 1文字消去して変域を引き継ぐ | 変域つきの最大・最小(基本) |
| 差の逆算 | 、、 を作る | を区間ごとに解く(基本) |
| 絶対値 | 折り返してグラフを描き直す | 端・折り返し点・頂点を比べる(基本) |
第2段はすべて高1の夏と同じ作業です。発展問題で問われているのは、第1段を自力で組み立てられるか——ただそれだけです。
6.この先、どこで再会するか
ここで身につけた考え方は、2次関数の単元が終わっても消えません。
| 今回のテーマ | 次に出会う場所 |
|---|---|
| 消した文字の条件が変域になる | 数学II「軌跡と領域」(条件を満たす点の集まりを求める) |
| 最大値・最小値を文字の関数として扱う | 数学II・III「文字を含む関数の最大最小」、微分法 |
| グラフと水平線の交点で解を数える | 数学II「3次方程式の実数解の個数」、数学III |
| 置き換えたら変域 | 数学II「三角関数・指数対数の最大最小」( と置く型) |
2次関数が「最初の分岐点」と言われるのは、難しいからではありません。ここで身につけた見方を、その後2年半ずっと使い続けるからです。逆に言えば、ここを丸暗記で通過した人は、同じ場所で何度もつまずくことになります。
7.演習問題(解答つき)
【演習1】
、、 のとき、 の最大値と最小値を求めよ。
【解答1】
を代入して 。
変域は かつ より 。
上に凸で軸 は変域の中なので、最大値は頂点の ()。最小は軸から遠い端で、両端が等距離なので と の両方、値は 。
最大値 ()、最小値 ()
和が一定のとき積は「等しいとき最大」。これも公式ではなく、 という式から出てくる結果です。
【演習2】
()の最大値と最小値の差が となる をすべて求めよ。
【解答2】
例題2で作った をそのまま使います。
・: より 。範囲外で不適。
・: より 。範囲内は のみ。適する。
・: より 。範囲内は 。適する。
・: より 。範囲外(等号を含まない)で不適。
検算: なら で最大 ・最小 、差4。 なら で最大 ()・最小 ()、差4。両方とも成立。
【演習3】
の実数解の個数を、定数 の値で場合分けして求めよ。
【解答3】
なので 軸との交点は 。頂点は 。折り返すと高さ の山ができます。
・ → 個 ・ → 個 ・ → 個 ・ → 個 ・ → 個
絶対値の方程式を式変形で場合分けすると符号処理が煩雑になります。グラフを描いて水平線を上下させるほうが速く、間違いにくい。
8.入試ではどう出るか
ここまでの3テーマは、大学入試で単独出題されることもあれば、誘導つきの大問の一部として出ることもあります。とくに私立大の理系・国公立2次では、「 で場合分けして最小値を求めよ」→「その最小値の最大値を求めよ」という二段構えが定番です。
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9.「解けた」で止まらないために
発展問題は、答えが合っていても再現性がないことがあります。たまたま場合分けが当たったということが起こりうるからです。次の3つに答えられるか、確認してください。
再現性があるかを確かめる3つの問い
- 区間の分かれ目が の3つになった理由を言えるか
- つなぎ目で値が一致することを自分で確かめたか
- 出てきた解を、その区間の仮定と照らして捨てたか
この3つは、そのまま記述式答案の採点基準でもあります。答えの数値より、この3点が書けているかで点が決まります。
10.一人で詰まったときに
発展問題は、独学でいちばん時間を溶かしやすい場所です。基本型と違って「どこで間違えたか」が自分では見えにくく、解答を読んでも「なぜその場合分けを思いついたのか」が書かれていないことが多いからです。
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11.よくある質問
Q. 1文字消去するとき、どちらの文字を消せばよいですか?
A. 消したあとの式が簡単になるほうです。今回は の形にできたので を消しました。どちらでも同じ答えになりますが、次数が上がらない選び方を優先してください。
Q. 差 の区間が4つになるのは、いつもそうですか?
A. いいえ。最小値の分かれ目と最大値の分かれ目を合わせた数で決まります。今回は が3区間、 が2区間で、分かれ目が の3つあったので4区間になりました。問題ごとに数えてください。
Q. 絶対値は、場合分けで外すのとグラフを描くのと、どちらがよいですか?
A. 最大・最小や解の個数を聞かれたらグラフ、等式や不等式を厳密に変形したいときは場合分け、が目安です。グラフのほうが速く、全体像が見えるぶん間違いに気づきやすくなります。
Q. 発展問題は、いつごろ手をつけるべきですか?
A. 基本型(軸と定義域の位置関係)が図なしで説明できるようになってからで十分です。順番を飛ばすと、場合分けの丸暗記になってしまい、かえって遠回りになります。
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