場合分けは、面倒な作業の代名詞のように扱われます。けれども場合分けとは、「1本の式では書けないものを、書ける単位に切り分ける」作業です。切る場所を私たちが好きに決めているわけではありません。切れ目は式の側が指定してきます。絶対値の中身がゼロになる場所、軸が区間からはみ出す瞬間、被積分関数の符号が変わる点――どれも「何かがゼロになる」か「二つの量の大小が入れ替わる」場所です。ここが見えていれば、場合分けは勘ではなく手続きになります。逆に苦手な人の答案は、切る場所は合っているのに切ったあとの管理――もれがないか、境界はどちらに入れたか、各場合の答えがその場合の条件を満たしているか――で落としています。このページは、場合分けが発生する原因と、その処理・検算・答案化までを12の型に分けて並べた辞典です。必要な分だけ正確に切って、要らない分は堂々と消す技術としてまとめました。
このページの位置づけ——概観は第1層、深掘りはここ
場合分けは2次関数の解法パターン全20型(軸と区間・解の配置)や数と式の解法パターン全12型(絶対値のはずし方)でも扱っています。あちらが「単元を一望する地図」なら、こちらは「場合分けというテーマだけを掘り下げる坑道」です。単元の中での位置づけを先に確かめたい方は第1層からご覧ください。ここでは単元をまたいで、場合分けが発生する原因そのものを並べ直します。
このページの12型
- 絶対値(中身の符号)
- ガウス記号
- 軸と区間
- 解の配置
- 文字係数の方程式・不等式(最高次が0かどうか)
- 図形の位置関係
- 積分区間と被積分関数の符号
- 数列の n の偶奇
- 確率の n による違い
- 場合分けの「もれなく重なりなく」の確認
- 場合分けを避ける工夫
- 場合分けの答案の書き方
1. 背骨——場合分けは「切りたいから切る」のではなく「1本で書けないから切れる」
場合分けが出てくる問題は、単元がばらばらです。絶対値つきの方程式、ガウス記号、区間つきの2次関数の最大最小、解の配置、文字係数の不等式、円と直線の位置関係、絶対値つきの定積分、数列の偶奇、確率の 依存。章はまるで違うのに、答案の見た目はそっくりで、どれも「(i) …のとき」と枝分かれし、最後に一つにまとまります。場合分けが必要になる理由が、単元によらず一つしかないからです。
場合分けが必要になる条件は、ただ一つ
いま扱っている式(あるいは条件)が、文字の値によって別の顔をする――すなわち1本の式では書けない。このときに限って、場合分けが要ります。
そして顔が変わる境目は、必ず「何かがゼロになる場所」か「二つの量の大小が入れ替わる場所」にあります。どちらも等式です。だから場合分けの第一歩は、等号が成り立つ場所を全部書き出すことになります。
この見方で並べ直すと、場合分けの原因は三つしかありません。
原因1:式そのものが区分定義になっている。絶対値 は定義が最初から2本に分かれています。ガウス記号 は整数ごとに値が飛び、 や も同じ仲間。この型では境目が「中身がゼロになる点」で、こちらの都合と無関係に決まります。折れ目が 個なら区間は 個――ここは数えるだけの作業です。
原因2:二つの量の大小が、文字のせいで決まらない。「軸が区間の中か外か」「根が区間の内か外か」「符号の変わり目が積分区間の中か外か」「中心からの距離が半径より大きいか」。文面は違っても、やっているのは二つの量の差をとり、その符号が動くかを見ることだけです。差の符号が動かないなら場合分けは要りません。のちほど扱う東北大学 2003年度では、 というたった一行で、根の大小による場合分けが丸ごと消えます。
原因3:文字の役割そのものが切り替わる。 は なら2次方程式ではありません。 は両辺を で割る瞬間に符号で不等号の向きが変わり、数列で が出れば偶奇で式が変わる。共通するのは、「割る」「最高次を仮定する」といった操作が、こっそり前提を置いていることです。場合分けは、その前提を明るみに出す作業でもあります。
次は「切ったあと」です。場合分けは論理的には全体集合の分割ですから、正しさの条件は二つだけ。合併がもとの全体を覆っていることと、重なった部分で結論が食い違わないことです。よく「重なってはいけない」と言われますが、正確には境界を両方に入れても構いません。境界ではどちらの式も同じ値を返すからで、むしろ両方に入れておけば値の一致が自動的なチェックになります。害があるのは個数を数える問題で二度数えたときだけです。
そして失点がいちばん集中するのは、各場合で出した答えが、その場合の条件を満たしているかの確認です。「 のとき」と宣言して解いたのに が出たなら、それは答えではありません。場合分けとは、仮定つきで解いて仮定に合うものだけを拾う手続きです。
合体させたら、境界での値の一致を見ます。のちほど扱う横浜国立大学 2013年度では が4本に分かれますが、 で両側の値が と一致します。ここが合わなければ手前のどこかが間違っている。場合分けは検算の仕掛けを内蔵しているのです。
つまり場合分けは、書けないものを書ける形に落とす翻訳であり、同時に自分の答案を検査する装置です。だからこそ必要のない場合分けは堂々と消すべきで、偶関数だと気づけば右半分だけ調べればよく、 と置けば絶対値が消えます。減らす工夫は手抜きではなく、間違える機会を減らすという意味で精度そのものです。
場合分けで落とすのは、切り方ではなく管理
①境界をどちらにも入れ忘れた( と で分けて が消える)。②各場合の解が条件を満たすか確かめていない。③文字定数の全域を調べていない。④最後に合併していない。切る場所はたいてい合っていて、落ちるのは切ったあとの管理です。
型についても一言だけ。「絶対値の中身がゼロになるのは 、だから2区間」と手が動く人は、頭の回転が速いのではありません。過去に何百回も使われてきた「型」から予想して、思考する量を減らすことで、手際よく解法を思い付いている場合もあるのです。型は考えなくて済ませるための道具ではなく、考える範囲を狭めるための道具です。狭めたあとに、本当にその境界でよいのか、そもそも場合分けが要るのかを考えるのは、結局その都度自分の仕事になります。以下の12型も、そのつもりで読んでください。
2. 手順——切る前と切ったあとに、必ずやること
1「1本の式で書けない原因」を名指しする。絶対値かガウス記号か、大小の分からない二つの量か、符号の分からない係数か。原因が言えれば、境界は自動的に決まります。
2境界を全部書き出し、数直線に印を付ける。境界は「中身がゼロ」「二つの量が等しい」という等式から出ます。印が 個なら場合は 通り。ここで本当に場合分けが要るかを一度疑ってください(型11)。差が平方や定数なら、印は動きません。
3各場合で式を確定し、その場合の中だけで解く。解いたら必ず「その解は、いま仮定した範囲に入っているか」を確かめ、入っていないものは捨てます。最大最小なら候補の値を、条件なら文字の範囲を、その場合ごとに書き切ります。
4合併して、境界で検算する。各場合の結論を一つにまとめ、もれと重なりを点検します。関数なら境界で両側の値が一致するか、確率なら合計が になるか。ここで合わなければ、必ず手前に誤りがあります。
3. 解法パターン全12型
型01 絶対値(中身の符号)
01折れ目を数直線に並べれば、区間の個数が決まる
顔つき を含む方程式・不等式・関数・積分。 や も同じ。
中身 。境界は 。複数あるときは折れ目を全部数直線に並べ、区間ごとに同時にはずす。折れ目が 個なら区間は 個。
なぜ効くか 絶対値は符号を捨てる操作なので、符号さえ決めれば式はただの多項式に戻ります。裏を返せば、符号が決まらないうちは何も計算できない。最初にやることは計算ではなく、折れ目を書き出すことです。
型02 ガウス記号
02整数部と小数部に分けると、無限個の場合分けが2文字に化ける
顔つき ( を超えない最大の整数)を含む式。「整数部分」「小数部分」。
中身 と置く( は整数、、)。これで式は と の1本になる。
なぜ効くか 素朴にやると と無限に場合分けすることになります。整数部と小数部に分ければ、無限個の区間が「 が から まで動く1本」に圧縮され、 は定数として外に出る。増やすのではなく、構造を見抜いて畳むのです。
型03 軸と区間
03最小は「軸が中か外か」、最大は「区間の中央と軸のどちら側か」
顔つき 「 における2次関数の最大最小」。軸か区間に文字が入っている。
中身 下に凸のとき、最小は軸が区間の左・中・右の3通り。最大は端点のうち軸から遠い方だから、軸が区間の中点より左か右かの2通り。上に凸なら役割が入れ替わる。
なぜ効くか 2次関数の値は軸からの距離だけで決まります。だから場合分けは「軸と区間の位置関係」に完全に翻訳でき、最小は3通り、最大は2通りと個数が違う理由もこの一言から出ます。
型04 解の配置
04判別式・軸・端点の値の3点セットに翻訳する
顔つき 「2解がともに正」「区間 に解を2個もつ」「解の1個だけが より大きい」。
中身 グラフで考え、①判別式 ②軸の位置 ③端点の値 の符号を並べる。区間内にちょうど1個なら が主役。
なぜ効くか 「解がどこにあるか」は目に見えませんが、放物線の高さと軸の位置は式で書けます。急所は境界の等号で、閉区間なら 、開区間なら 。取り違えると答えの端が1点ぶんずれます。のちほど東北大学 2009年度で、それが何を壊すかを見ます。
型05 文字係数の方程式・不等式(最高次が0かどうか)
05割る前に「それはゼロでないか」を問う
顔つき 、 のように係数に文字が入り、「2次方程式」と書いていない。
中身 と で分ける。不等式は の3通りで、負なら不等号の向きが変わる。因数分解できたら次は2根の大小。
なぜ効くか 「2次方程式だから判別式」と書いた瞬間に、私たちは を仮定しています。場合分けとは、この隠れた仮定を表に出す作業です。割る前に分母がゼロでないかを問う癖がつけば、この型の失点はほぼ消えます。
型06 図形の位置関係
06「接する瞬間」が境界を教えてくれる
顔つき 円と直線、2つの円、点が図形の内部か外部か、動く直線と線分の共有点。
中身 中心と直線の距離 と半径 の大小で3通り。2円なら中心間距離と 。動く直線なら端点を通る瞬間と接する瞬間が境界。
なぜ効くか 図形の場合分けも結局は二つの量の差の符号です。しかも図形では境界が目で見える。図で境界を見つけ、式で確定するという二段構えにすると、場合の個数を数え落としません。
型07 積分区間と被積分関数の符号
07絶対値つきの積分は「符号の変わり目が区間の中か外か」で分かれる
顔つき 、面積、区間側に文字が入った定積分。
中身 ① を解いて符号の変わり目を出す ②それが積分区間の内か外かで分ける ③内なら区間を切って絶対値をはずし足す。区間側に文字があるときは区間の端と変わり目の大小が境界。
なぜ効くか のままでは原始関数が書けません。符号が一定の区間でだけ絶対値がはずれるので、切る場所は の点に決まり、選ぶ余地がない。迷うのは「その点が区間に入るか」だけです。
型08 数列の n の偶奇
08偶数番と奇数番に分け、最後に1本へ戻せるか試す
顔つき を含む数列、交代和、 だけを結ぶ漸化式、周期数列。
中身 と に置き換えて別々に一般項を出す。最後に を使って1本にまとめられるかを試し、まとまらなければ2本のまま答える。
なぜ効くか は符号が交互に変わる、いちばん小さな場合分けです。偶奇で置き換えると符号が定数に固定され、ふつうの数列に戻る。置き換えたら添字の範囲も直すのが要点です。
型09 確率の n による違い
09一般の n で立てた式が、小さい n でも正しいかを確かめる
顔つき 「 回の試行」「 個の箱」。答えに や という但し書きが付きそうな問題。
中身 一般の で立てたら、 を代入して意味が通るか確かめる。漸化式は からか からかを明示する。「少なくとも1回」型は余事象で回避できることが多い。
なぜ効くか 確率で場合分けが要るのは、小さい では起こりえない事象があるからです。一般項や漸化式は「十分大きい 」を暗黙に仮定していることが多く、その仮定が破れる最小の が境界になります。
型10 場合分けの「もれなく重なりなく」の確認
10合併が全体か、境界はどちらに入れたか、二度数えていないか
顔つき すべての場合分け。とくに答えの端に を書くか を書くかで迷ったとき。
中身 ①合併が全体を覆っているか ②境界をどちらの場合に入れたか ③個数や確率を数える問題で二度数えていないか。等号を両方に入れるのは、値が一致する限り安全。
なぜ効くか 場合分けは論理的には全体集合の分割なので、正しさの条件は「もれがない」と「重なっても矛盾しない」の二つだけ。個数を数える問題でだけ重なりが致命傷になるのは、和の法則が「重ならないこと」を前提にしているからです。
型11 場合分けを避ける工夫
11差の符号・対称性・置き換えで、切らずに済むかを先に疑う
顔つき 場合分けが3通り以上になりそうなとき。同じ計算を2度やりそうなとき。
中身 ①差をとって符号を見る(平方や定数なら大小は動かない) ②対称性で半分だけ調べる ③置き換え() ④2乗する() ⑤。
なぜ効くか 場合分けは増えるほど間違えます。減らす工夫は手抜きではなく、精度を上げる操作です。ただし順序が大切で、怖いから避けるのではなく、必要かどうかを確かめた結果として要らなかったという順に書いてください。証明を伴わない省略だけが減点になります。
型12 場合分けの答案の書き方
12切った理由・各場合の結論・合併の3つを必ず書く
顔つき すべての場合分け。とくに記述式の答案。
中身 ①切る理由と境界を先に宣言 ②各場合に (i)(ii) と番号を振り、その場合の結論を必ず1行で書く ③最後に合併する ④関数なら境界で値が一致することを添える。
なぜ効くか 採点者が確かめたいのは、もれなく重なりなく分けたかと各場合を正しく処理したかの二つ。答案の形をこの二つに合わせると、自分の点検項目と採点項目が一致します。境界での一致を書き添えるのは、礼儀ではなく検算の公開です。
4. 実際の入試で確かめる
この単元の解法パターンは全12型で、下にある入試の実例6問で確かめているのは8型です。残りの4型は、下にある実例では扱っていません。1問が複数の型にまたがることも、同じ型を複数の実例で扱うこともあるため、実例の数と型の数は必ずしも一致しません。
ここからは実際に出題された問題で型を確かめます。問題文は各大学が公表した入試問題を、解説のために引用したものです。解答・解説は数強塾が独自に作成したもので、大学公表の解答ではありません。掲載した数値は当塾で独立に解いたうえで Python(sympy による厳密計算と数値計算)で検算し、別の担当者が別ルートで解き直して照合しています。場合分けの問題は境界の等号を一つ取り違えるだけで答えが変わるので、検算の記録も具体的に書きました。
群馬大学 2016年度 ―― 型01・型04・型11。偶関数だと気づくと、調べる範囲が半分になる
【問題】群馬大学 2016年度 前期日程(教育学部 第1問)
とする。関数 と について、次の問いに答えよ。
(1) のときの2つの関数のグラフをかけ。
(2) 2つの関数のグラフが2つの共有点をもつときの の値を求めよ。
(3) 2つの関数のグラフが共有点をもつとき、それらの 座標の絶対値がすべて1以上かつ3以下になるような の値の範囲を求めよ。
【解答】
(1) は頂点 の2つの放物線をつないだ形()、 は頂点 で傾き の V 字。共有点は4個 (2) (3)
準備。差をとると 。ここで に気づくのが急所で、 と置けば絶対値が消えます。
①の正の解1個につき の共有点が2個。2解の和 、積 なので実数解をもてば2解はともに正( が解になるのは のときだけで、 より起こりません)。判別式は 。
(1) だから、どちらも 軸対称。 では で、 はこれを折り返すだけ。共有点は①で として だから と の4個です。
(2) 共有点は 軸対称に現れ、 は共有点ではありません()。よって共有点2個 ①が正の解をちょうど1個 ①が重解。 より 、共有点は の2個です。
(3) 条件は「①が実数解をもち、解がすべて 」。 は下に凸で軸は だから、解の配置の3点セットを並べます。
軸の条件と は によらず成立するので、残るのは と です。
境界の確認も忘れずに。 では 、 では で、どちらも条件をみたします。
この問題で使った型
型01 絶対値の中身の符号で分けるのが素直な入り口で、(1) はその2分割がそのまま答案の骨格になります。
型11 ところが はどちらも が の形でしか現れない偶関数。 と置けば絶対値も左右の場合分けも同時に消えます。対称性に気づかず左右を別々に解くと、同じ計算を2度やったうえで解の重複を数え間違えます。
型04 (3) は の解の配置。3点セットの4条件がそろい、うち2つは自動成立と分かる形です。
検算のしかた
(2) を数値で を動かして共有点の個数を数えると、 で4個、 で2個、 で0個。境界の左右 まで詰めました。別ルートとして を400万分割して の符号変化を数えると で4回、 では0回で の点が 付近に集中(=接触、重解)。
(3) を総当たりで を から まで刻み幅 で全走査し、「共有点が存在し、かつすべての が 以上 以下」となる範囲を拾うと 。 と に一致しました。
東北大学 2003年度 ―― 型05・型11・型10。差が平方になった瞬間、場合分けが消える
【問題】東北大学 2003年度 前期日程(文系 第1問)
実数 に対して、集合 を
は実数
は実数
と定める。共通部分 が空集合でないための の範囲を求めよ。
【解答】
または
方針。2次不等式は因数分解して数直線上の区間に直します。あとは2つの区間の端点の大小だけの問題です。
第1段: を区間にする。定数項は 。和が 、積が となる2数は と なので
ここで2根の大小による場合分けが要るように見えます。どちらが大きいか決まらないと解の区間が書けないからです。ところが差をとると と平方になり、符号が動きません。つねに なので場合分けは不要で (両端を含む)。 のときだけ の1点になりますが、この表示のままで正しく、 が空になることはありません。
第2段: を区間にする。定数項は なので 。差が と定数だから (両端を含まない、長さ )。こちらも空になりません。
第3段:重なる条件。 とおくと (閉)、(開)で
かつ
( なら と 。逆も と の間に点がとれます。 が開区間なので、どちらの不等号にも等号は入りません。ここが答えの分かれ目です。)
後者は または 。両方をみたす は または です。
境界の点検(等号を入れると間違えます)。 では で、 の右端と の左端がどちらも ですが、 は開区間なのでその点は属さず共通部分は空。 も で、 も が で接するだけで空です。具体例では で と空でなく、 では で空。答えの範囲と整合しています。
この問題で使った型
型05 文字係数の2次不等式そのものです。因数分解まで来たところで「2根はどちらが大きいのか」という壁に必ずぶつかります。ここが場合分けを要求される瞬間です。
型11 その場合分けが1行で消えます。差が という平方だから符号が動かない。 側も差が定数 。怖いから避けたのではなく、必要かどうかを確かめた結果として要らなかった――この順序で書けるのがこの問題の良さです。
型10 消えない場合分けが最後に残ります。 が閉区間、 が開区間なので、等号を入れるかどうかで答えが3か所ずれます。 で が1点に退化しても例外扱いが要らないのも、「余計な場合分けを作らない」判断です。
検算のしかた
場合分けが不要であることの確認 「 が負になる 」を解かせると空集合で、等号成立は のみ。場合分けが要らないことを機械的にも裏づけました。因数分解そのものも、展開して差が になることで確認しています。
判定則と答えの総当たり を から まで等間隔に87点とり、各 について を有理数で20001点走査して共通部分を直接探す方法と、 かつ という判定を突き合わせて不一致0件。さらに から までを 刻みですべて有理数で厳密計算し、「 かつ 」と比べても不一致0件でした。
境界 は共通部分が空、すぐ外側の は空でない区間でした。
岡山大学 2014年度 ―― 型02・型07・型11。無限個の場合分けを2文字に畳む
【問題】岡山大学 2014年度 前期日程(文系 第3問)
関数 を と定める。ここで、 は を満たす最大の整数 を表す。
(1) であることを示せ。
(2) であることを示せ。
(3) において のグラフを描け。
(4) とするとき、 を求めよ。
【解答】
(1)(2) 以下で証明 (3) をつなぐ、合同な上に凸の放物線弧2本(切れ目なし) (4)
準備。 とおくと( は整数、、)、。この一手がこの問題のすべてです。無限個あった区間が「 が から まで動く1本」に畳まれ、 は定数として外に出ます。
(1) 。 より かつ だから 。ゆえに (等号は 、すなわち が整数のとき)。
(2) 、 と小数部が変わらないのがポイントで
(3) では より (上に凸、頂点 )。 では より (上に凸、頂点 )。 では 。 と の左極限が に一致するので切れ目はありません。グラフは をつなぐ合同な弧2本で、直線 より上、各弧の中点で差が最大 。
(4) なので、積分区間 は整数点 をまたぎます( のときだけ端点で接します)。そこで切り、後半は と置換して (2) を使います。
したがって となり、 なので 。答えが の1次式になる理由も (2) が説明しています。
この問題で使った型
型02 ガウス記号の場合分けの、いちばん教育的な形です。 と に分ける置き換えは、場合分けを機械的に増やすのではなく、構造を見抜いて畳む操作になっています。
型07 (4) は積分区間が整数点をまたぐので区間を切ります。切る場所は の式が変わる点――選ぶ余地がありません。
型11 (2) の は、(4) で場合分けを最小にするための布石。切った片方を平行移動で戻せ、結局 1本に帰着します。誘導が「避ける工夫」を先に用意してくれている典型例です。
検算のしかた
定義どおり実装して走査 を床関数で実装し の20万点で検査。(1) は の最小値が 、最大値が で のときの と一致。(2) は の最大値が (丸め誤差のみ)。
(4) を数値積分と別ルートで について を200万分割した台形則で計算すると順に で、 と誤差 以内。さらに平行移動を使わず を記号のまま計算してもちょうど 。(2) を使う道と使わない道の両方で同じ答えになりました。
神戸大学 2005年度 ―― 型01・型07・型12。二重の絶対値を、偶関数で半分にする
【問題】神戸大学 2005年度 前期日程(文科系 第3問)
を正の実数とする。次の問に答えよ。
(1) のグラフをかけ。
(2)
(3)
【解答】
(1) 以下で説明 (2)
(1)
前者は上に凸で頂点
(2) 偶関数なので
(i)
(ii)
(3) 2本の式それぞれで最小を調べ、最後に比べます。(i) では
(ii) では
この問題で使った型
型01 絶対値が二重にかかっています(外側の
型07 (2) では積分区間の端
型12 (3) は場合分けで得た2本の式のそれぞれで最小を調べ、最後に比べるという締め方そのものです。片方だけ調べて終わると答えになりません。
検算のしかた
定義式を直接積分
つなぎ目と最小値
横浜国立大学 2013年度 ―― 型01・型07・型12。折れ目が2つ、場合は4つに増える
【問題】横浜国立大学 2013年度(A1 冊子 第2問)
関数
で定める。次の問いに答えよ。
(1)
(2)
【解答】
(1)
(1)
(真ん中の
つなぎ目で検算します。
(2) 4つの区間それぞれで最小を出して比べます。
これは
この問題で使った型
型01 絶対値が2つあり、しかも折れ目の位置が別々に動きます。入る条件が食い違うので実軸は4通りに切れ、各区間で式の形(1次式・3次式・3次式・1次式)まで変わります。
型07 境界が「問題文に与えられた文字の条件」ではなく、積分変数と定数の大小から自分で発生するタイプです。どこで切るかは自分で見つけるしかありません。
型12 4本の式がつなぎ目で一致することの確認が、そのまま検算になります。最小値は2番目の区間の内部にあるので、各場合の結論を全部書き出してから合併するという型を守らないと落とします。
検算のしかた
場合分けを使わずに直接積分 定義式のまま
最小値
東北大学 2009年度 ―― 型01・型04・型10。文字の全域を調べないと、答えを一つ落とす
【問題】東北大学 2009年度 前期日程(理系 第6問)
実数
が、相異なる4つの実数解をもつような
【解答】
第1段:区間を切る。折れ目は
(順に
第2段:各区間で解の個数を数える。解の配置(型04)の出番です。
すなわち
第3段:合計が4になる
端点の等号を落とすと、答案が自分と矛盾する
閉区間
この問題で使った型
型01 折れ目は
型04 各区間に解が何個入るかを、判別式・軸・端点の値という解の配置の道具で数えます。「分ける」「数える」「足す」が全部登場する、このテーマの最終形です。
型10 境界の
検算のしかた
個数を直接数える 3本の2次方程式を解いて各区間内の相異なる実数解を数える関数を作り、
内訳を厳密に
別ルート 元の式を
5. よくある質問
Q1. 場合分けの境界は、どちらの場合に入れるのが正しいですか。
A. 値が一致するなら、どちらに入れても、両方に入れても構いません。絶対値なら中身がゼロのところで両方の式が同じ値になるからです。害があるのは、場合の数や確率のように個数を数える問題で二度数えたときだけです。ただし答案には、境界をどちらに入れたかを必ず書いてください。区間を閉じて数えると宣言したのに端点の条件を等号なしで書く、という食い違いが起きなくなります。
Q2. 場合分けが多すぎて、途中で何をしているか分からなくなります。
A. 切る前に、一本の式で書けない原因を言葉にしてください。絶対値なのか、大小の分からない二つの量なのか、符号の分からない係数なのか。原因が言えれば境界は自動的に決まり、場合の個数も先に数えられます。原因を言わないまま切り始めると、境界がぶれて場合が増えていきます。
Q3. 場合分けをしなくて済む方法はありますか。
A. あります。二つの量の差をとって、それが平方や定数なら大小は動かないので場合分けは不要です。対称性があれば半分だけ調べれば済み、絶対値は置き換えや二乗で消えることもあります。ただし、怖いから避けるのではなく、必要かどうかを確かめた結果として要らなかった、という順序で書いてください。確かめずに省略したものだけが減点になります。
Q4. 場合分けをして解いたのに、答えが合いません。どこを見ればよいですか。
A. 三つ確かめてください。一つ目は、その場合で出した解がその場合の条件を満たしているかどうか。満たさない解は捨てます。二つ目は、境界で両側の式の値が一致するかどうか。関数の問題ならここでほとんどのミスが見つかります。三つ目は、文字定数の全域を調べたかどうか。ゼロの近くだけ見て、遠くに隠れた範囲を落としていることがよくあります。
Q5. 型を覚えれば初見の場合分けの問題も解けますか。
A. 型は考えなくて済ませる道具ではなく、考える範囲を狭めるための道具です。過去に何百回も使われてきた型から予想して、思考する量を減らすことで、手際よく解法を思い付いている場合もあるのです。狭めたあと、本当にその境界でよいのか、そもそも場合分けが要るのかを考えるのは、結局その都度自分の仕事になります。
6. 次に読むページ
- 2次関数の解法パターン全20型 ―― このページの親。軸と区間、解の配置を単元全体の中で概観できます。
- 数と式の解法パターン全12型 ―― もう一つの親。絶対値のはずし方と、文字係数の不等式の基本。
- 積分法(数II)の解法パターン全14型 ―― 型07の土台。絶対値つきの定積分と、積分区間に文字が入る問題。
- 数列・漸化式の解法パターン全16型 ―― 型08の詳細。偶奇で分かれる数列。
- 確率の解法パターン全12型 ―― 型09の詳細。もれなく重なりなく数える道具。
- 解法パターン事典(総索引)
場合分けで手が止まってしまう人へ
場合分けが苦手な生徒の答案は、切る場所はたいてい合っています。落ちているのは切ったあとの管理で、境界をどちらに入れたかを書いていない、出た解がその場合の条件を満たすか確かめていない、文字定数の全域を調べていない、最後に合併していない。数強塾では、切る前に「一本の式で書けない原因は何か」を口に出させ、切ったあとに「もれはないか」を毎回確認させます。手順が決まると、場合分けは面倒な作業ではなく答案を検算する装置に変わります。オンラインの完全1対1で、プロ講師のみが担当します。
床関数を整数の層から実数へ戻す|fiber持ち上げと端点監査
数強塾オリジナル教材
床関数を含む方程式・不等式では、整数部分だけを解いても答えはまだ半分です。\(\lfloor x\rfloor=n\) と置いた瞬間、\(n\) は整数であり、元の \(x\) は半開区間 \([n,n+1)\) に属するという二つの条件が同時に生まれます。この数強塾オリジナル教材では、まず整数 \(n\) の候補を解き、次に各候補を半開区間へ持ち上げ、最後に式中に残った \(x\) の条件と共通部分を取ります。この三段階を「fiber監査」と呼び、負数、等号の向き、端点の二重計上を一つずつ防ぎます。
到達目標
- \(\lfloor x\rfloor=n\) と \(n\leqq x<n+1,\ n\in\mathbb{Z}\) を双方向に使える。
- 整数 \(n\) について得た解を、実数 \(x\) の半開区間の和集合へ正確に持ち上げられる。
- 床関数の外にも \(x\) が残る問題で、fiberと残条件の共通部分を取れる。
- 負の数に床関数を作用させたとき、端点の開閉が反転する理由を不等式から説明できる。
- 整数点と非整数点で値が変わる恒等式を、場合分けの重複や欠落なく証明できる。
前提診断|一つの整数値に一つの半開区間が対応する
床関数の定義を一覧として暗記し直す必要はありません。解法の中心は、任意の整数 \(n\) に対する次の同値だけです。
\lfloor x\rfloor=n
\quad\Longleftrightarrow\quad
n\leqq x<n+1,\qquad n\in\mathbb{Z}.
\]
右辺の区間 \([n,n+1)\) は、床関数によって整数 \(n\) へ送られる実数全体です。本教材ではこの一層を \(n\) のfiberと呼びます。左端を含み右端を含まないため、隣り合うfiberは重ならず、しかも全実数を覆います。この「排反」と「全体を覆う」の二条件が、答えの端点を自動的に管理します。
| 段階 | 書くもの | 検査する問い |
|---|---|---|
| 1 整数化 | \(n=\lfloor x\rfloor,\ n\in\mathbb{Z}\) | 整数条件を明記したか。 |
| 2 整数側を解く | \(n\) の方程式・不等式 | 実数解をそのまま整数候補にしていないか。 |
| 3 持ち上げ | 各 \(n\) に対する \([n,n+1)\) | 左閉右開を維持したか。 |
| 4 交差 | 式に残る \(x\) の条件との共通部分 | 整数候補だけで終了していないか。 |
| 5 帰還 | 元の式への代入と境界確認 | 端点で床の値が変わらないか。 |
前提診断ミニテスト
- \(\lfloor x\rfloor=-2\) のとき、\(x\) の範囲を答えてください。
- \(n^2-3n\leqq0\) の実数解が \(0\leqq n\leqq3\) なら、\(n\in\mathbb{Z}\) のもとで候補はいくつですか。
- \(\lfloor x\rfloor=4\) の解に \(x=5\) は含まれますか。
- \(\lfloor -x\rfloor=-3\) を解くとき、不等式全体へ負の数を掛けた後も不等号の向きは同じですか。
診断の答え:1は \(-2\leqq x<-1\) です。2は \(n=0,1,2,3\) の四個です。3は含まれません。\(x=5\) は次のfiberに入り、床の値は \(5\) です。4は向きが逆になります。さらに、もとの左閉右開は変形後に右閉左開として現れるため、数直線上の端点を個別に確認します。
学習順|整数化・持ち上げ・交差を混ぜない
- 床の値に名前を付ける:\(n=\lfloor x\rfloor\) と置き、同じ行に \(n\in\mathbb{Z}\) を書きます。
- 離散問題を解く:まず \(n\) だけの方程式や不等式を解き、整数候補を列挙します。
- fiberへ戻す:各候補 \(n\) を \([n,n+1)\) に戻し、連続する区間は和集合としてまとめます。
- 残った条件と交差する:式に \(x\) が残るなら、整数側から得たfiber内でのみ連続条件を解きます。
- 端点を代入する:閉じた端点と開いた端点の直前・直後を確認し、解集合を元の式へ戻します。
数強塾オリジナル・完全新作例題|六つのfiber監査
例題1|整数不等式を連続した実数区間へ持ち上げる
次の不等式を満たす実数 \(x\) の範囲を求めてください。
\lfloor x\rfloor^2-5\lfloor x\rfloor+4\leqq0
\]
段階ヒント
ヒントを開く
- \(n=\lfloor x\rfloor\) と置くと、まず整数 \(n\) の二次不等式になります。
- \((n-1)(n-4)\leqq0\) の実数範囲を出した後、整数だけを選びます。
- 四つの隣接するfiberを和集合にし、内側の境界をまとめます。
完全解答
\(n=\lfloor x\rfloor,\ n\in\mathbb{Z}\) と置くと、
n^2-5n+4=(n-1)(n-4)\leqq0
\]
です。実数としては \(1\leqq n\leqq4\) であり、整数候補は \(n=1,2,3,4\) です。各候補をfiberへ持ち上げると、
[1,2)\cup[2,3)\cup[3,4)\cup[4,5)=[1,5).
\]
したがって答えは \(\boxed{1\leqq x<5}\) です。\(x=4\) は床の値が \(4\) なので含み、\(x=5\) は床の値が \(5\) なので含みません。
別解・独立検算
整数 \(n\) の符号表では、根 \(1,4\) の間で積が非正です。持ち上げ後の内部境界 \(2,3,4\) は、左側fiberでは開いていても右側fiberの左端として含まれるため、穴はありません。試しに \(x=1,\ 49/10,\ 5\) を代入すると床の値は \(1,4,5\)、左辺は順に \(0,0,4\) となり、左端を含み右端を除く答えと一致します。
誤答分析:\(1\leqq\lfloor x\rfloor\leqq4\) から \(1\leqq x\leqq4\) とする答案は、整数の値域を実数へそのまま写しています。最後の整数 \(4\) のfiberは \([4,5)\) なので、実数の解は \(5\) の直前まで続きます。
例題2|負号で端点の開閉が左右反転する
方程式 \(\lfloor -x\rfloor=-3\) を満たす実数 \(x\) の範囲を求めてください。
段階ヒント
ヒントを開く
- 床の中身全体を一つの文字 \(y=-x\) と見ると、\(\lfloor y\rfloor=-3\) です。
- \(-3\leqq -x<-2\) の全体へ \(-1\) を掛けます。
- 得た二つの端点を小さい順へ並べ直し、どちらを含むか確認します。
完全解答
fiberの定義から、
-3\leqq -x<-2
\]
です。全体へ \(-1\) を掛けると不等号が逆転し、
3\geqq x>2
\]
となります。小さい順へ並べれば、答えは \(\boxed{2<x\leqq3}\) です。もとの左端 \(-3\) を含む条件は変形後の \(x=3\) を含み、もとの右端 \(-2\) を含まない条件は \(x=2\) を含まない条件へ移りました。
別解・独立検算
\(y=-x\) と置けば、\(y\in[-3,-2)\) です。写像 \(x=-y\) は数直線の向きを反転するので、像は \((2,3]\) です。端点を直接代入すると、\(x=3\) では \(\lfloor-3\rfloor=-3\) で成立し、\(x=2\) では \(\lfloor-2\rfloor=-2\) で不成立です。不等式変形と写像の二方向から開閉が一致しました。
誤答分析:\(-3\leqq-x<-2\) から \(-3\leqq x<-2\) とする誤りは、負号を外すときの向きと端点を同時に失っています。「符号反転」「不等号反転」「小さい順へ並べ直す」の三操作を一行ずつ分けてください。
例題3|床の外に残る \(x\) とfiberを交差させる
方程式
x+2\lfloor x\rfloor=\frac72
\]
を満たす実数 \(x\) をすべて求めてください。
段階ヒント
ヒントを開く
- \(n=\lfloor x\rfloor\) と置いても \(x\) は式に残ります。まず \(x\) を \(n\) で表します。
- 得た \(x=7/2-2n\) を、同じ \(n\) のfiber条件 \(n\leqq x<n+1\) に代入します。
- 不等式を解いた後に \(n\in\mathbb{Z}\) を使います。
完全解答
\(n=\lfloor x\rfloor,\ n\in\mathbb{Z}\) と置くと、方程式から
x=\frac72-2n
\]
です。この \(x\) が \(n\) のfiberへ入る条件は、
n\leqq\frac72-2n<n+1.
\]
左側から \(3n\leqq7/2\)、右側から \(5/2<3n\) を得ます。したがって \(5/6<n\leqq7/6\) で、整数条件から \(n=1\) だけです。よって、
x=\frac72-2=\frac32
\]
となり、答えは \(\boxed{x=3/2}\) です。
別解・独立検算
\(x=3/2\) では \(\lfloor x\rfloor=1\) なので、左辺は \(3/2+2=7/2\) です。またfiberごとに左辺を見ると、\([n,n+1)\) 上では \(x+2n\) であり、値の範囲は \([3n,3n+1)\) です。\(7/2\) を含むのは \(n=1\) の範囲 \([3,4)\) だけなので、解が一つであることも独立に確認できます。
誤答分析:\(\lfloor x\rfloor=x\) と置いて \(3x=7/2\) とするのは、床の値と元の実数を同一視しています。整数 \(n\) と実数 \(x\) を別の欄に置き、\(x\) を求めた後で \(n\leqq x<n+1\) を必ず課してください。
例題4|一次式のfiberを係数の符号まで含めて戻す
不等式ではなく床の値そのものが指定された方程式
\left\lfloor 2x-\frac13\right\rfloor=4
\]
を解いてください。
段階ヒント
ヒントを開く
- 床の中身 \(2x-1/3\) がfiber \([4,5)\) に入ると翻訳します。
- 三辺へ \(1/3\) を足した後、正の数 \(2\) で割ります。
- 求めた両端を元の床の中身へ代入して、含む側と含まない側を確認します。
完全解答
定義から、
4\leqq2x-\frac13<5
\]
です。三辺へ \(1/3\) を足し、正の数 \(2\) で割ると、
\frac{13}{6}\leqq x<\frac83.
\]
したがって答えは \(\boxed{13/6\leqq x<8/3}\) です。係数 \(2\) が正なので不等号の向きは変わりません。
別解・独立検算
下端 \(x=13/6\) では床の中身が \(4\) で、値は確かに \(4\) です。上端 \(x=8/3\) では中身が \(5\) になり、床の値も \(5\) へ変わるので除きます。一般に \(\alpha>0\) なら \(\lfloor\alpha x+\beta\rfloor=m\) の解は \((m-\beta)/\alpha\leqq x<(m+1-\beta)/\alpha\) となり、今回の数値を入れても同じ範囲です。
誤答分析:床の値が \(4\) だから中身も \(4\) と等置すると、一点 \(x=13/6\) しか残りません。床の値は一点ではなく幅 \(1\) のfiberを表します。最初の翻訳を等式ではなく二重不等式で書いてください。
例題5|整数点だけで値が変わる反転公式
実数 \(x\) に対し、
\lfloor x\rfloor+\lfloor -x\rfloor
\]
の値を、\(x\) が整数の場合と整数でない場合に分けて求めてください。
段階ヒント
ヒントを開く
- \(x\) が整数 \(n\) なら、二つの床の値を直接書けます。
- \(x\) が整数でなければ、ただ一つの整数 \(n\) を用いて \(n<x<n+1\) と書きます。
- 二重不等式全体へ \(-1\) を掛け、\(-x\) がどのfiberへ入るか調べます。
完全解答
\(x=n\in\mathbb{Z}\) なら、\(\lfloor x\rfloor=n\)、\(\lfloor-x\rfloor=-n\) なので和は \(0\) です。
一方、\(x\notin\mathbb{Z}\) なら、ある整数 \(n\) により \(n<x<n+1\) と書けます。負号を付けると、
-n-1<-x<-n
\]
です。したがって \(\lfloor x\rfloor=n\)、\(\lfloor-x\rfloor=-n-1\) で、和は \(-1\) です。結論は、
\lfloor x\rfloor+\lfloor-x\rfloor=
\begin{cases}
0 & (x\in\mathbb{Z}),\\
-1 & (x\notin\mathbb{Z}).
\end{cases}
\]
別解・独立検算
\(x=n+r\)、ただし \(n\in\mathbb{Z},\ 0\leqq r<1\) と書きます。\(r=0\) なら \(-x=-n\) で和は \(0\) です。\(0<r<1\) なら \(-x=-n-r=(-n-1)+(1-r)\) で、\(0<1-r<1\) より床は \(-n-1\)、和は \(-1\) です。fiberによる証明と小数部分による証明が一致します。
誤答分析:\(\lfloor-x\rfloor=-\lfloor x\rfloor\) を常に使えると思うと、非整数で一つずれます。整数点はfiberの左端であり、符号反転すると別のfiberの右端へ移るため、整数か非整数かを先に分ける必要があります。
例題6|小数部分の方程式を有限個のfiberへ絞る
方程式
x-\lfloor x\rfloor=\frac{x}{3}
\]
を満たす実数 \(x\) をすべて求めてください。
段階ヒント
ヒントを開く
- 左辺は \(x\) の小数部分なので、まず \(0\leqq x/3<1\) という粗い範囲も得られます。
- \(n=\lfloor x\rfloor\) と置き、方程式から \(x\) を \(n\) で表します。
- 得た \(x=3n/2\) とfiber条件を交差させ、整数 \(n\) を絞ります。
完全解答
\(n=\lfloor x\rfloor,\ n\in\mathbb{Z}\) と置くと、
x-n=\frac{x}{3},\qquad x=\frac{3n}{2}.
\]
この \(x\) がfiber \([n,n+1)\) に入る条件は、
n\leqq\frac{3n}{2}<n+1.
\]
左側から \(n\geqq0\)、右側から \(n<2\) を得ます。整数候補は \(n=0,1\) なので、
\boxed{x=0,\ \frac32}
\]
です。
別解・独立検算
左辺は常に \(0\) 以上 \(1\) 未満なので、方程式から \(0\leqq x<3\) が先に分かります。この範囲の三つのfiberを直接調べると、\([0,1)\) では \(x=x/3\) から \(x=0\)、\([1,2)\) では \(x-1=x/3\) から \(x=3/2\)、\([2,3)\) では \(x-2=x/3\) から \(x=3\) ですが右端なので除外されます。二解を元の式へ代入しても、両辺はそれぞれ \(0,\ 1/2\) で一致します。
誤答分析:小数部分が \([0,1)\) に入ることだけから \(0\leqq x<3\) を得て終了してはいけません。それは必要条件であって十分条件ではありません。各fiberで床の値を固定し、等式そのものを満たす点まで絞ってください。
fiber監査の検算|局所・境界・全体の三方向を見る
| 検算の方向 | 行うこと | 見つかる誤り |
|---|---|---|
| 局所 | 各fiber内で床の値を固定し、残った式を解く | \(n\) と \(x\) の同一視 |
| 境界 | 左端、右端、その直前・直後を代入する | 閉区間と開区間の逆転 |
| 全体 | 得たfiberが重ならず、必要な範囲を覆うか確認する | 整数候補の欠落や二重計上 |
| 整数性 | 連続不等式の解から整数だけを抜き出す | 非整数の \(n\) を採用する誤り |
| 帰還 | 全候補を元の床関数へ代入する | 変形途中で混入した余分な解 |
練習|整数解を実数集合へ戻す
- \(\lfloor x\rfloor^2-3\lfloor x\rfloor-4\geqq0\) を満たす実数 \(x\) の範囲を求めてください。
- \(\lfloor-2x\rfloor=1\) を解いてください。
- \(2x-\lfloor x\rfloor=5/2\) を満たす実数 \(x\) をすべて求めてください。
- \(\lfloor3x+1/2\rfloor=-2\) を解いてください。
- \(\lfloor x\rfloor+\lfloor1-x\rfloor\) の値を、\(x\) が整数かどうかで分類してください。
- \(x-\lfloor x\rfloor=2x/5\) を満たす実数 \(x\) をすべて求めてください。
練習の完全解答と検算
-
\(n=\lfloor x\rfloor\) と置くと \((n-4)(n+1)\geqq0\) です。整数候補は \(n\leqq-1\) または \(n\geqq4\)。fiberをまとめると \(\boxed{x<0\ \text{または}\ x\geqq4}\) です。境界 \(x=0\) では床が \(0\) で左辺は \(-4\) だから除き、\(x=4\) では左辺が \(0\) なので含みます。
-
\(1\leqq-2x<2\) から、負の数で割って \(\boxed{-1<x\leqq-1/2}\) です。\(x=-1/2\) では中身が \(1\) なので含み、\(x=-1\) では中身が \(2\) なので除きます。
-
\(n=\lfloor x\rfloor\) と置けば \(x=5/4+n/2\) です。\(n\leqq x<n+1\) から \(n\leqq2\) かつ \(n\geqq1\) を得るので、\(n=1,2\) です。よって \(\boxed{x=7/4,\ 9/4}\)。代入するとそれぞれ \(2(7/4)-1=5/2\)、\(2(9/4)-2=5/2\) です。
-
\(-2\leqq3x+1/2<-1\) を解くと、\(-5/2\leqq3x<-3/2\) です。したがって \(\boxed{-5/6\leqq x<-1/2}\)。両端で床の中身は \(-2,-1\) となるので、左端だけを含みます。
-
\(x=n\in\mathbb{Z}\) なら和は \(n+(1-n)=1\) です。非整数なら \(x=n+r,\ 0<r<1\) と書け、\(\lfloor1-x\rfloor=-n\) なので和は \(0\) です。したがって値は整数点で \(1\)、非整数点で \(0\) です。\(x=2\) と \(x=23/10\) を代入すると、それぞれ \(1,0\) となり境界分類も確認できます。
-
\(n=\lfloor x\rfloor\) と置くと \(x-n=2x/5\) から \(x=5n/3\) です。fiber条件 \(n\leqq5n/3<n+1\) より \(n\geqq0\) かつ \(n<3/2\)。よって \(n=0,1\) で、\(\boxed{x=0,\ 5/3}\) です。元へ戻すと小数部分と右辺は順に \(0\)、\(2/3\) で一致します。
誤答分析|端点の一文字が解集合全体を変える
| 答案の症状 | 原因 | 修復方法 |
|---|---|---|
| \(\lfloor x\rfloor=n\) から \(x=n\) とした | 整数値とその逆像を混同した | \(n\leqq x<n+1\) を同じ行に必ず書く。 |
| \(n\) の連続区間をそのまま採用した | \(n\in\mathbb{Z}\) を失った | 整数候補を列挙してからfiberへ戻す。 |
| 右端も含む閉区間にした | 次の整数へ値が跳ぶ点を見ていない | 右端を元の床へ代入し、値が一つ増えることを確認する。 |
| 負号を外しても端点の開閉が同じ位置にある | 数直線の向きを反転していない | 不等号を逆転し、小さい端から並べ直す。 |
| 床の外に残る \(x\) を無視した | 整数問題だけで終了した | 求めた \(x(n)\) とfiberの共通部分を取る。 |
| 整数点と非整数点の公式を一つにした | fiberの境界を独立に調べていない | 小数部分が零か正かで場合を分ける。 |
東大水準への橋渡し|fiberを逆像の分割として使う
床関数は不連続ですが、各fiberの内部では値が一定です。したがって複雑な式も、全実数上で一度に扱うのではなく、\([n,n+1)\) ごとの通常の方程式・不等式へ分解できます。大切なのは、局所問題を解いた後に全体を再構成することです。各fiberが互いに重ならず全実数を覆うため、正しく持ち上げれば解の重複も欠落もありません。これは、写像の逆像で定義域を分割する考え方そのものです。
パラメータを含む問題では、解の個数が変わる境界もfiberから組織的に作れます。ある連続式から得た候補 \(x(n,a)\) が \([n,n+1)\) に入る条件を \(a\) について解けば、個数が変わるのは等号 \(x(n,a)=n\) または \(x(n,a)=n+1\) が起こる場所です。右端は含まれないので、同じ等号でも採否が左右で異なります。図の見た目ではなく半開区間の論理で境界を管理できると、解の個数を問う入試問題にも耐えられます。
また、\(\lfloor\alpha x+\beta\rfloor=m\) のような一次式では、\(\alpha\) の符号が写像の向きを決めます。\(\alpha>0\) なら左閉右開のままですが、\(\alpha<0\) なら \(x\) の小さい順に直したとき左開右閉になります。これは特別な暗記事項ではなく、fiberを一次写像で引き戻した結果です。この原理へ戻れば、係数や定数が変わっても端点を安全に復元できます。
自己採点表|24点でfiber監査の完成度を測る
| 採点項目 | 4点 | 2点 | 0点 |
|---|---|---|---|
| 整数化 | \(n=\lfloor x\rfloor,\ n\in\mathbb{Z}\) を宣言した | \(n\) は置いたが整数条件がない | \(n\) と \(x\) を同一視した |
| 整数候補 | 連続範囲から整数だけを正確に選んだ | 候補は合うが根拠がない | 非整数候補を含めた |
| 持ち上げ | 全候補を左閉右開のfiberへ戻した | 区間は合うが端点が曖昧 | 整数の答えで終了した |
| 残条件との交差 | \(x(n)\) とfiberを両方満たした | 一方だけを確認した | 床の外の \(x\) を無視した |
| 負数・境界 | 不等号反転と端点代入を行った | 答えは合うが境界検査がない | 開閉が逆または両端を含めた |
| 独立検算 | 局所・境界・元式の三方向で確認した | 解の代入だけを行った | 検算がない |
20点以上なら、パラメータによる解の個数や複数の床関数へ進めます。14点から18点なら、答えを出す前に整数候補と対応fiberの二列表を作ってください。12点以下なら、\(\lfloor x\rfloor=n\) と \([n,n+1)\) の往復だけを、正負両方の \(n\) で練習しましょう。
次の学習へ|論理・整数・二次不等式へ接続する
場合分けの排反性と網羅性を論理から確認するには命題と集合の仕上げ講座へ進んでください。床関数を含む式で使う整数・実数の基本語彙は数学I用語辞典で確認できます。整数化した後に二次式の符号を正確に処理する練習は二次不等式の解法へ接続します。本教材では場合分けの一般一覧を繰り返さず、整数解を半開区間へ戻すfiber操作と境界監査だけを深く扱いました。
企画・構成・例題・解答・検算:数強塾編集部。文章・数値・図・解説順を独立に制作したオリジナル教材です。教材版 42a12ef43a2ed284
要点辞典この単元の公式・定石・つまずきやすい所は 数学I・Aの要点辞典:数と式 にまとめてあります。
